説明

スプレーガン用塗料容器取付具及びスプレーガン用塗料容器

【課題】容器をワンタッチで高いシール性をもってスプレーガンに取り付け可能とし、塗料容器の洗浄作業や調色カップから塗料容器への移し変えの手間を省いて作業効率を向上させ得るスプレーガン用塗料容器を提供する。
【解決手段】容器取付具1を、使い捨て可能な塗料容器2の上端開口部を覆うように被嵌されて内部に塗料流通路を有する蓋体3と、蓋体をスプレーガンのニップルに連結させる連結部材4と、蓋体との間で容器の上端開口部周縁の鍔21を挟持するリング状の挟持部材5とからなり、蓋体と挟持部材は、蓋体周面に設けられた溝35と挟持部材周面に突設されたピン51との噛み合いにより連結され、溝は、下端部が開放された垂直方向溝と、垂直方向溝の上端部と連続して周方向に延びる周方向溝から形成され、周方向溝は終端部に向けて上り勾配に形成され、ピンが上り勾配に沿って移動したときに鍔が蓋体と挟持部材の間で圧縮されるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーガンに対して紙コップ等の使い捨て可能な塗料容器を取り付けるための容器取付具及びこの取付具を備えたスプレーガン用塗料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体修理等に使用される塗装用のスプレーガンは、重力式のものと吸上げ式のものに大別することができ、いずれもアルミ製の塗料容器を備えている。
現在、車体修理に使用されている殆どの塗料は、硬化剤を別途添加することによって塗膜を効果させる2液性の塗料であるため、使用後においてはスプレーガンの塗料容器を速やかに洗浄する必要がある。
また、塗装前に整面・防錆のために車体に塗布されるプライマーサーフェーサーも従来は1液性であったが、最近では2液性のものが増えてきており、やはり使用後においてはスプレーガンの塗料容器を速やかに洗浄する必要がある。
更に、最近の傾向として、少量の塗料で少ない面積を塗装する用途が増えてきており、塗料を頻繁に変えるために塗料容器の洗浄回数も増加している。
【0003】
このように、従来のスプレーガンを用いた塗装作業においては、必ず塗料容器の洗浄を行わなくてはならないが、塗料容器の洗浄は面倒で手間のかかる作業であるため、塗装作業の効率を大きく低下させていた。
【0004】
また、スプレーガンの塗料容器への塗料の供給は、通常、最初に数種類の塗料を調色用カップに入れて攪拌して調色した後、この調色された塗料をストレーナーで濾しながらスプレーガンの塗料カップに移し変えることにより行われているが、この作業も非常に面倒であり、塗装作業の効率を低下させていた。
更に、スプレーガンに容器を取り付けた状態では中の塗料が見えないため、塗料の残量や状態を確認することができず、作業性が悪かった。
【0005】
上記した容器洗浄に関する問題点に鑑みて提案された技術としては、例えば下記特許文献1の開示技術が存在している。
特許文献1の開示技術は、スプレーガンに蓋体を連結し、廃棄処理可能な紙コップに液体を収容した後、蓋体に装着し、蓋体と接合部材との間の所定の間隙に容器の開口周縁部を挟持するように、接合部材を蓋体に接合するものである。
【0006】
この開示技術によれば、通常のアルミ製容器に代えて、廃棄処理可能な紙コップをスプレーガンに取り付けて使用することができるので、面倒な塗料容器の洗浄作業を省くことが可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、この特許文献1の開示技術は、蓋体と接合部材とを螺合により接合する構造を採っているため、接合作業が面倒で手間がかかり、作業効率の向上を妨げていた。
しかも、螺合による締め付けが不十分であると、使用時に容器と蓋体及び接合部材との隙間から塗料が漏れ出すおそれがあった。
また、吸上げ式のスプレーガンにしか適用できないという欠点があった。
また、上述したような、調色カップから塗料容器への移し変えのための手間を省くことはできないため、作業効率を大きく向上させるには至らなかった。
更に、紙コップを使用した場合でも、上述したスプレーガンに容器を取り付けた状態で塗料の残量や状態を確認することができないという問題点は、依然として解決できないものであった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−335643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、使い捨て可能な容器をスプレーガンに取り付けて使用することが可能であって、塗料容器の洗浄作業や調色カップから塗料容器への移し変えのための手間を省くことができて塗装作業効率を大幅に向上させることが可能となり、しかも使い捨て可能な容器をワンタッチで高いシール性をもって取り付けることができて塗料の漏れを簡単に確実に防止することが可能であり、更に重力式と吸上げ式の両方式のスプレーガンへの適用を可能とでき、使用中に塗料残量等の確認を可能とし得るスプレーガン用塗料容器取付具及びこの取付具を備えたスプレーガン用塗料容器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、スプレーガンに対して使い捨て可能な塗料容器を取り付けるための容器取付具であって、前記容器の上端開口部を覆うように被嵌されるとともに内部に塗料流通路を有する蓋体と、該蓋体をスプレーガンのニップルに連結して前記流通路をスプレーガン内部と連通させる連結部材と、前記蓋体との間で前記容器の上端開口部周縁に設けられた鍔を挟持するリング状の挟持部材とからなり、前記蓋体と挟持部材は、蓋体周面に設けられた溝と挟持部材周面に突設されたピンとの噛み合いにより連結され、前記溝は、下端部が開放された垂直方向溝と、該垂直方向溝の上端部と連続して周方向に延びる周方向溝から形成され、該周方向溝は終端部に向けて上り勾配に形成され、前記ピンが該上り勾配に沿って移動したときに前記鍔が蓋体と挟持部材との間で圧縮されることを特徴とするスプレーガン用塗料容器取付具に関する。
請求項2に係る発明は、前記蓋体の下面に取り付けられて前記流通路と連通するパイプを備えてなり、該パイプは蓋体に対して着脱可能とされていることを特徴とする請求項1記載のスプレーガン用塗料容器取付具に関する。
請求項3に係る発明は、前記流通路が逆L字状に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のスプレーガン用塗料容器取付具に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記蓋体の下面と前記パイプの上端部との間にフィルタが介装され、前記パイプの上端部には該フィルタの下面を押さえるフィルタ押え部材が一体に設けられてなり、該フィルタ押え部材が前記蓋体に対して着脱可能とされていることを特徴とする請求項2又は3記載のスプレーガン用塗料容器取付具に関する。
請求項5に係る発明は、前記フィルタが前記パイプの内断面積よりも広い面積を有するシート状フィルタからなり、該フィルタの上面と前記蓋体の下面の間及び該フィルタの下面と前記フィルタ押え部材の上面の間には、夫々隙間が形成されていることを特徴とする請求項4記載のスプレーガン用塗料容器取付具に関する。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記フィルタの周縁部のみを覆うリング状のフィルタ押え部材を更に備えていることを特徴とする請求項5記載のスプレーガン用塗料容器取付具に関する。
請求項7に係る発明は、前記パイプの下端部に該パイプの内断面積よりも広い面積を有するフィルタが一体に取り付けられ、該フィルタと前記パイプとの間及び該フィルタと前記容器の底面との間には、夫々隙間が形成されてなることを特徴とする請求項2又は3記載のスプレーガン用塗料容器取付具に関する。
【0013】
請求項8に係る発明は、前記蓋体と挟持部材との間に周縁部が挟持されるフィルタを備えてなり、該フィルタと前記蓋体下面との間には隙間が形成されてなることを特徴とする請求項1記載のスプレーガン用塗料容器取付具に関する。
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8いずれかに記載の取付具に、使い捨て可能な塗料容器が取り付けられてなるスプレーガン用塗料容器であって、前記塗料容器が、周側面高さ方向に延びる開口部を有する紙コップと、該開口部に貼着された透明な樹脂シートから構成されていることを特徴とするスプレーガン用塗料容器に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、使い捨て可能な容器をスプレーガンに取り付けて使用することが可能であるため、塗料容器の洗浄作業の手間を省くことができて塗装作業効率を大幅に向上させることが可能となる。また、使い捨て可能な容器をワンタッチで高いシール性をもって取り付けることができるため、使用時において塗料の漏れを容易に且つ確実に防止することが可能である。
請求項2に係る発明によれば、蓋体に対して着脱可能なパイプを有するため、重力式と吸上げ式のいずれの方式のスプレーガンにも適用することができる汎用性に優れたスプレーガン用塗料容器取付具が得られる。
請求項3に係る発明によれば、スプレーガン側方に設けられたニップルに対して蓋体を容易に連結することができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、蓋体の下面とパイプの上端部との間にフィルタが介装されているため、調色カップから塗料容器への移し変えのための手間を省くことができて、塗装作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
請求項5に係る発明によれば、使用開始時においてスプレーガンから塗料を迅速に出すことができる上に、フィルタの目詰まりが生じにくいスプレーガン用塗料容器取付具が得られる。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、フィルタを備えた吸上げ式のスプレーガンを、フィルタを備えた重力式のスプレーガンに変更して使用することが可能となる。
請求項7に係る発明によれば、使用開始時においてスプレーガンから塗料を迅速に出すことができる上に、フィルタの目詰まりが生じにくいフィルタを備えた吸上げ式のスプレーガンが得られる。
【0017】
請求項8に係る発明によれば、使用開始時においてスプレーガンから塗料を迅速に出すことができる上に、フィルタの目詰まりが生じにくいフィルタを備えた重力式のスプレーガンが得られる。
請求項9に係る発明によれば、スプレーガンに取り付けた状態で、塗料の残量や状態を把握することができて作業効率がよいスプレーガン用塗料容器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るスプレーガン用塗料容器取付具及びスプレーガン用塗料容器の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係るスプレーガン用塗料容器を示す断面図である。
本発明に係るスプレーガン用塗料容器は、スプレーガンに対して塗料を供給するために取り付けられるものであって、スプレーガン用塗料容器取付具(1)に、使い捨て可能な塗料容器(2)を取り付けたものである。
【0019】
本発明における使い捨て可能な塗料容器(以下、使い捨て容器と称す)(2)は、金属以外の材料から構成されるものである。具体的には、安価且つ軽量で耐溶剤性を有し、廃棄処理が容易である紙コップが最も好適に用いられるが、ポリプロピレンやポリエチレン等の安価で短時間内であれば溶剤に耐え得る合成樹脂製カップを用いることもできる。
合成樹脂製カップは、インジェクション成型、ブロー成型、真空成型等の公知の成型法により製造することができるが、ブロー成型、真空成型を利用すれば紙コップと同等の低コストでの製造が可能となる。
【0020】
本発明において用いられる使い捨て容器(2)は、上端開口部の周縁に鍔(21)が形成されたものである。
使い捨て容器(2)として紙コップを使用する場合には、図2に示すような、市販の紙コップに見られる上端開口部の周縁に形成されたカール部分が鍔(21)に相当する。
使い捨て容器(2)として合成樹脂製カップを使用する場合にも、同様のカール部分を鍔(21)として設けることが好ましいが、カール状の鍔を形成することが困難な場合には、図3(a)〜(c)に示したような形状の鍔(21)を形成してもよい。
【0021】
使い捨て容器(2)として合成樹脂製コップを使用する場合、透明又は半透明の材質が使用可能となり、容器内の塗料の残量や状態を外から確認することができ、作業性が向上するという効果が得られる。
紙製コップを使用した場合、通常このような効果は得られないが、図4に示すように、紙コップの周側面の一部に高さ方向に延びる開口部(22)を形成し、この開口部(22)に透明な合成樹脂シート(23)を貼着する構成を採用することによって、同様の効果を得ることが可能となる。
【0022】
スプレーガン用塗料容器取付具(1)は、スプレーガンに対して上記した使い捨て容器(2)を取り付けるための取付具である。
取付具(1)は、使い捨て容器(2)の上端開口部を覆うように被嵌される蓋体(3)と、この蓋体(3)をスプレーガンのニップルに連結する連結部材(4)と、蓋体(3)との間で使い捨て容器(2)の鍔(21)を挟持する挟持部材(5)と、蓋体(3)の下面に取り付けられて使い捨て容器(2)内に挿入されるパイプ(6)を備えている。
尚、本明細書において、取付具(1)に関する「上」「下」「垂直」「水平」という表現は、使い捨て容器(2)が正立している状態(図1の如く開口部が上に向いている状態)を基準としている。
【0023】
蓋体(3)は、図示の如く、使い捨て容器(2)の上端開口部を覆う円形面(32)と、その外縁部に沿って下向きに突出形成された円筒状部分(33)を有している。
円筒状部分(33)は、使い捨て容器(2)の外周面の上方部分を外側から覆うように取り付けられ、円形面(32)と円筒状部分(33)の境界部分には、使い捨て容器(2)の鍔(21)が嵌入される環状溝(34)が形成されている。
【0024】
蓋体(3)は、内部に塗料の流通路(31)を有している。
流通路(31)は、蓋体(3)の下面において開口され、この開口部を入口として垂直上方に延びた後、直角に曲がって水平方向に延び、その終端において開口した出口を有する逆L字状の通路とされている。
流通路(31)の入口には、後述するようにパイプ(6)の上端部がフィルタ(7)を介して接続され、出口には、蓋体(3)をスプレーガンのニップルに連結するための連結部材(4)が接続されている。
【0025】
連結部材(4)は、スプレーガンのノズル側方に設けられたニップル(11)(図5参照)に対して連結可能な公知の構造のものであって、基端が蓋体(3)の流通路(31)出口に螺着されて先端に円錐台状の拡径部を有する第一部材(41)と、この第一部材(42)に対してその拡径部を内部に収容するように取り付けられた袋ナット状の第二部材(43)とから構成される。
この連結部材(4)を利用して蓋体(3)をニップル(11)に連結することによって、蓋体(3)の流通路(31)をスプレーガン内部の塗料流通路と連通させることができる。
【0026】
挟持部材(5)は、蓋体(3)の円筒状部分(33)の内側に配置されて、蓋体(3)の環状溝(34)底面(上面)との間で使い捨て容器(2)の鍔(21)を挟持するリング状の部材である。
【0027】
蓋体(3)と挟持部材(5)は、蓋体(3)の周面に設けられた溝(35)と、挟持部材(5)の周面に突設されたピン(51)との噛み合いにより連結される。
図6はこの連結方法を説明する図であって、(a)は正面図、(b)は(a)の線Aに沿った断面図である。尚、これらの図では蓋体(3)の上方部分を省略している。
【0028】
蓋体(3)の周面に設けられた溝(35)は、下端部が開放された垂直方向溝(35a)と、この垂直方向溝(35a)の上端部と連続して周方向に延びる周方向溝(35b)とから形成されており、周方向溝(35b)は溝終端部に向けて上り勾配をもつように傾斜して形成されている。
【0029】
溝(35)は、蓋体(3)の円筒状部分(33)が形成する円に沿った複数箇所に形成されており、ピン(51)は、挟持部材(5)が形成する円に沿った複数箇所において溝(35)と対応する位置に形成されている。
図示例では、溝(35)及びピン(51)は、円の中心を挟んで対向する2箇所に形成されている。
【0030】
蓋体(3)と挟持部材(5)の連結操作は、先ず蓋体(3)の環状溝(34)に鍔(21)を嵌入させた後、挟持部材(5)に突設されたピン(51)を蓋体(3)に形成された溝(35)の下端部から垂直方向溝(35a)に挿入し、続いて蓋体(3)と挟持部材(5)を反対方向に回転させ、ピン(51)を周方向溝(35b)の上り勾配に沿って上昇させることにより行われる(図6(a)参照)。
この連結方法は、ねじによる連結方法と比較して、非常に短時間で簡単に、しかも確実に行うことができる。
【0031】
上記連結操作において、ピン(51)が垂直方向溝(35a)に挿入された状態では、鍔(21)は、蓋体(3)の環状溝(34)底面と挟持部材(5)の上面との間に挟まれた状態となる。
続いて、蓋体(3)と挟持部材(5)を反対方向に回転させ、ピン(51)を周方向溝(35b)の上り勾配に沿って上昇させると、鍔(21)は蓋体(3)と挟持部材(5)との間で圧縮されて潰される。
このように、鍔(21)が蓋体(3)と挟持部材(5)の間で圧縮されて潰されることにより、鍔(21)がパッキンの役割を果たし、使用時において塗料の漏れを確実に防止することが可能となる。
【0032】
パイプ(6)は、流通路(31)と連通するように蓋体(3)の下面に取り付けられており、蓋体(3)の下面とパイプ(6)の上端部との間にはフィルタ(7)が介装されている。
パイプ(6)の上端部には、フィルタ(7)の下面を押さえる円板状のフィルタ押え部材(8)が一体に設けられており、このフィルタ押え部材(8)は蓋体(3)に対して着脱可能に取り付けられている。取付方法は、内ねじと外ねじの螺合による方法でもよいし、図6に示したような溝とピンの係合によるものでもよい。
【0033】
フィルタ(7)は、塗料のろ過に用いられる公知の素材、例えば吉野紙やろ布から形成されるシート状(薄板状)のものであって、例えば0.1〜0.2mm程度の厚みのものが用いられる。尚、図面では見易さの為にフィルタ(7)を厚くデフォルメして描いている。
フィルタ(7)は、パイプ(6)の内断面積よりも広い面積を有する。具体的には、例えば、パイプ(6)の内断面積の2〜30倍程度、好ましくは10〜20倍程度とされる。
フィルタ(7)は、その周縁部がフィルタ押え部材(8)と蓋体(3)との間に挟まれることによって固定されており、フィルタ(7)の上面と蓋体(3)の下面の間及びフィルタ(7)の下面とフィルタ押え部材(8)の上面の間には、夫々隙間(9)が形成されている。これらの隙間(9)は、フィルタ(7)の厚みの5〜10倍程度の高さ、例えば1mm程度の高さをもつ薄い空間とされる。
【0034】
吸い上げ式のスプレーガンの場合、吸い上げパイプから塗料ニップルの間に大きな空間を有すると、その空間内に存在する空気が塗料と入れ替わるまでにスプレーガンから塗料が出ない現象が起こる。
これを解決するためには、フィルタの面積を吸い上げパイプの内断面積と同じとすればよいが、そうするとフィルタがすぐに目詰まりするという問題が生じる。
つまり、これら2つの問題は相反するものであった。
【0035】
本発明では、シート状の薄いフィルタ(7)を用いるとともに、フィルタ(7)を大面積とし且つその上下に夫々薄い空間を形成することによって、フィルタ部分に形成される空間を小さくし、同時にフィルタのろ過面積を大きく確保することが可能となり、その結果、上記した2つの相反する問題を同時に解決することができる。
【0036】
図1に示した形態は吸い上げ式のスプレーガンに取り付ける場合の形態であり、重力式のスプレーガンに取り付ける場合には図7に示す形態に変更して使用する。
図7に示す形態は、図1の形態のスプレーガン用塗料容器からパイプ(6)を取り外して逆さまにしたものであり、蓋体(3)への使い捨て容器(2)の取り付け方法や、蓋体(3)のスプレーガンへの取り付け方法については、図1の形態と同様である。
【0037】
図1に示した形態では、パイプ(6)は円板状のフィルタ押え部材(8)と一体に設けられており、フィルタ押え部材(8)はパイプ(6)と共に取り外される。
図7の形態では、取り外された円板状のフィルタ押え部材(8)の代わりに、フィルタ(7)の周縁部のみを覆うリング状のフィルタ押え部材(10)を蓋体(3)に取り付けることによってフィルタ(7)を固定する。
この場合、リング状のフィルタ押え部材(10)の内側に、フィルタ(7)と略同面積の開口部が形成されるので、フィルタ(7)の略全面から塗料を取り入れることができる。
【0038】
図8は本発明に係るスプレーガン用塗料容器の第二実施形態を示す断面図である。
第二実施形態は、吸い上げ式のスプレーガンに適用されるものであって、以下この形態に係るスプレーガン用塗料容器について、図1に示した形態(第一実施形態と称す)と異なる点について説明し、同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
第一実施形態ではフィルタ(7)はパイプ(6)の上端部に取り付けられていたが、第二実施形態ではパイプ(6)の下端部に取り付けられており、パイプ(6)と流通路(31)の入口はフィルタ(7)を介することなく直接連通している。
【0039】
フィルタ(7)は、第一実施形態と同様のシート状のものであって、パイプ(6)の内断面積よりも広い面積を有している。
フィルタ(7)とパイプ(6)との間及びフィルタ(7)と使い捨て容器(2)の内底面との間には、夫々隙間(9)が形成されている。これらの隙間(9)はフィルタ(7)の厚みの5〜10倍程度の高さ、例えば1mm程度の高さをもつ薄い空間とされている。
これによって、第一実施形態と同様の効果、即ち使用開始時においてスプレーガンから塗料を迅速に出すことができる上に、フィルタの目詰まりが生じにくいという効果が得られる。
【0040】
図9(a)は本発明に係るスプレーガン用塗料容器の第三実施形態を示す断面図であり、図9(b)はこの形態で用いられるフィルタの断面図である。尚、(a)図では蓋体(3)の上方部分(流通路上部や連結部材)を省略している。
第三実施形態は、重力式のスプレーガンに適用されるものである。
以下、第三実施形態に係るスプレーガン用塗料容器について、第一実施形態を重力式スプレーガンに適用した図7の形態と異なる点について説明し、同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
第一実施形態では、フィルタ(7)はリング状のフィルタ押え部材(10)によって蓋体に固定されていたが、第三実施形態では、フィルタ(7)は蓋体(3)と挟持部材(5)との間に周縁部が挟持されることによって固定されている。
【0041】
第三実施形態において用いられるフィルタ(7)は、図9(b)に示すように、フィルタ面(ろ過面)の周縁に沿って、フィルタ面から垂直に立ち下がる円筒状部(71)と、該円筒状部の下端から外方に向けてフィルタ面と平行に延出された鍔部(72)を有しており、この鍔部(72)が蓋体(3)と挟持部材(5)との間に挟持固定される。
【0042】
フィルタ(7)のフィルタ面(ろ過面)の面積は、使い捨て容器(2)の上端開口部と略同じ面積を有しており、流通路(31)の横断面積に比べて充分に大きくなっている。
また、フィルタ(7)と蓋体の下面(32)との間には隙間(9)が形成されており、この隙間(9)はフィルタ(7)の厚さの5〜10倍程度の高さ、例えば1mm程度の高さをもつ薄い空間とされている。
これらの構成によって、上述例と同様に、フィルタ(7)の略全面から塗料を取り入れることが可能となって、フィルタの目詰まりが生じにくくなり、しかも使用開始時においてスプレーガンから塗料を迅速に出すことができるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、自動車車体修理等において用いられるスプレーガンに対して紙コップ等の使い捨て可能な塗料容器を取り付けるために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るスプレーガン用塗料容器(吸い上げ式のスプレーガンに取り付ける場合)を示す断面図である。
【図2】本発明においてスプレーガンに取り付けられる使い捨て容器として用いられる紙コップを示す図である。
【図3】使い捨て容器として合成樹脂製カップを使用する場合における鍔の形状の例である。
【図4】本発明においてスプレーガンに取り付けられる使い捨て容器として用いられる紙コップの変更例を示す図である。
【図5】本発明に係るスプレーガン用塗料容器が取り付けられるスプレーガンの図である。
【図6】蓋体と挟持部材の連結方法を説明する図である。
【図7】本発明に係るスプレーガン用塗料容器(重力式のスプレーガンに取り付ける場合)を示す断面図である。
【図8】本発明に係るスプレーガン用塗料容器の第二実施形態を示す断面図である。
【図9】(a)は本発明に係るスプレーガン用塗料容器の第三実施形態を示す断面図であり、(b)はこの形態で用いられるフィルタの断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 スプレーガン用塗料容器取付具
2 使い捨て可能な塗料容器
21 鍔
3 蓋体
31 流通路
32 蓋体の下面(円形面)
35 溝
35a 垂直方向溝
35b 水平方向溝
4 連結部材
5 挟持部材
51 ピン
6 パイプ
7 フィルタ
8 フィルタ押え部材
9 隙間
10 リング状のフィルタ押え部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーガンに対して使い捨て可能な塗料容器を取り付けるための容器取付具であって、前記容器の上端開口部を覆うように被嵌されるとともに内部に塗料流通路を有する蓋体と、該蓋体をスプレーガンのニップルに連結して前記流通路をスプレーガン内部と連通させる連結部材と、前記蓋体との間で前記容器の上端開口部周縁に設けられた鍔を挟持するリング状の挟持部材とからなり、前記蓋体と挟持部材は、蓋体周面に設けられた溝と挟持部材周面に突設されたピンとの噛み合いにより連結され、前記溝は、下端部が開放された垂直方向溝と、該垂直方向溝の上端部と連続して周方向に延びる周方向溝から形成され、該周方向溝は終端部に向けて上り勾配に形成され、前記ピンが該上り勾配に沿って移動したときに前記鍔が蓋体と挟持部材との間で圧縮されることを特徴とするスプレーガン用塗料容器取付具。
【請求項2】
前記蓋体の下面に取り付けられて前記流通路と連通するパイプを備えてなり、該パイプは蓋体に対して着脱可能とされていることを特徴とする請求項1記載のスプレーガン用塗料容器取付具。
【請求項3】
前記流通路が逆L字状に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のスプレーガン用塗料容器取付具。
【請求項4】
前記蓋体の下面と前記パイプの上端部との間にフィルタが介装され、前記パイプの上端部には該フィルタの下面を押さえるフィルタ押え部材が一体に設けられてなり、該フィルタ押え部材が前記蓋体に対して着脱可能とされていることを特徴とする請求項2又は3記載のスプレーガン用塗料容器取付具。
【請求項5】
前記フィルタが前記パイプの内断面積よりも広い面積を有するシート状フィルタからなり、該フィルタの上面と前記蓋体の下面の間及び該フィルタの下面と前記フィルタ押え部材の上面の間には、夫々隙間が形成されていることを特徴とする請求項4記載のスプレーガン用塗料容器取付具。
【請求項6】
前記フィルタの周縁部のみを覆うリング状のフィルタ押え部材を更に備えていることを特徴とする請求項5記載のスプレーガン用塗料容器取付具。
【請求項7】
前記パイプの下端部に該パイプの内断面積よりも広い面積を有するフィルタが一体に取り付けられ、該フィルタと前記パイプとの間及び該フィルタと前記容器の底面との間には、夫々隙間が形成されてなることを特徴とする請求項2又は3記載のスプレーガン用塗料容器取付具。
【請求項8】
前記蓋体と挟持部材との間に周縁部が挟持されるフィルタを備えてなり、該フィルタと前記蓋体下面との間には隙間が形成されてなることを特徴とする請求項1記載のスプレーガン用塗料容器取付具。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかに記載の取付具に、使い捨て可能な塗料容器が取り付けられてなるスプレーガン用塗料容器であって、前記塗料容器が、周側面に高さ方向に延びる開口部を有する紙コップと、該開口部に貼着された透明な樹脂シートから構成されていることを特徴とするスプレーガン用塗料容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−312144(P2006−312144A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136189(P2005−136189)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(591128305)株式会社ビック.ツール (13)
【Fターム(参考)】