説明

スプレーガン

【課題】 液体の供給を循環させておき、俊敏な切替え動作で液体の噴霧に切替えを行うスプレーガンを提供する。
【解決手段】 液体噴霧口4を開閉するニードル弁5の移動方向で位置をずらせて液体供給口7と液体戻し口8とを形成し、液体供給口7と液体戻し口8を連通する流路の途中に弁機構47を設けて、液体供給口7から供給される液体を、液体戻し口8側と液体噴霧口4側とにニードル弁の移動で切替えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴出し、この噴出と同時にエアーを混合することにより前記液体を噴霧し、塗装や医薬用固形製剤に被膜を形成するスプレーガンに関する。
【背景技術】
【0002】
塗装や医薬用固形製剤に被膜を形成するスプレーガンに液体供給するものにあって、液体の瞬時の提供と、液体が混合液体の場合に配管経路で液体が分離するのを防止する観点から、液体を循環させておき、必要な時にスプレーガンの噴霧ノズルから液体を噴霧するコーテイングシステムがあった(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−159907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1においては、噴霧停止状態から噴霧状態、噴霧状態から噴霧停止状態に切替えるのに、スプレーガンを介して液体が循環させられているが、液体の切替え弁機構がスプレーガンとは別個の場所に設けられているため、液体の循環配管内に液体が滞留することが避けられない構造であった。そのため、液体が混合液体の場合分離してしまい、噴霧開始時に要求される噴霧状態を提供することができないことがあった。
【0004】
本発明は、液体の供給を循環させておき、俊敏な切替え動作で液体の噴霧に切替えを行うスプレーガンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明のスプレーガンは、液体を供給する液体供給口と、ニードル弁により液体を噴霧する液体噴霧口と、液体噴霧口が閉塞されている時に液体を戻す液体戻し口とを備えたものであって、液体供給口と液体戻し口との間の通路に、前記ニードル弁が液体噴霧口を開いている時に液体戻し口へ液体が流れるのを阻止し、前記ニードル弁が液体噴霧口を閉じている時に液体戻し口へ液体を流す弁機構を設けたものである。
【0006】
このことにより、スプレーガン内部に切替弁を有しているので外部に弁を設ける必要がなくなる。
【0007】
また、弁機構が、ニードル弁に形成された端面と、通路に設けたシール部材とから形成されたもので、ニードル弁の移動で確実にシール部材の開閉が行える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスプレーガンは、弁機構が内蔵されているので、瞬時に切替えて噴霧状態と循環状態に入ることができ、切替えのタイムラグがなくなる。さらに、スプレーガンに弁機構を内蔵することによって、スプレーガンを含むシステム全体の簡素化とコストダウンが図れる。
【0009】
また、液体が常に循環または噴霧させられているので、配管経路に滞留することがなく、混合液体を噴霧する場合、噴霧の停止状態においても液体が分離することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図を参考に本発明の実施の形態1を説明する。
【0011】
図1、図2、図3、図4は本発明の実施の形態を示すもので、図1はスプレーガンの液体噴霧口が開口した状態を示す断面図である。図2はスプレーガンの液体噴霧口が閉塞した状態を示す断面図である。図3は要部分解斜視図である。図4はスプレーガンへの液体、エアーの配管状態を示す斜視図である。
【0012】
図において、スプレーガン1は、胴部2の先端側(図1中左側)に配置した噴霧部3と、前記胴部2の先端側から後端側にまたがって設けられ前記噴霧部の液体噴霧口4を開閉するニードル弁5と、胴部2の後端側(図1中右側)に配置したニードル開閉機構6と、前記胴部2に形成された噴霧部に液体を供給する液体供給口7と液体の液体戻し口8と、前記胴部2に形成された前記噴霧部3とニードル開閉機構6にエアーを供給するニードル弁作動エアー供給口9aと、アトマイズエアー供給口9bと、パターンエアー供給口9c(図1〜図4参照)とから構成されている。
【0013】
胴部2に設けた、液体供給口7,液体戻し口8,ニードル弁作動エアー供給口9a,アトマイズエアー供給口9b,パターンエアー供給口9cの位置は、図1、図2,図4を参照して説明しやすくするために、液体戻し口8,ニードル弁作動エアー供給口9a,アトマイズエアー供給口9b,パターンエアー供給口9cをニードル弁5の移動方向に直線的に配置して示しているが、液体供給口7と液体戻し口8とを図中上下方向に設け、ニードル弁作動エアー供給口9a、アトマイズエアー供給口9b、パターンエアー供給口9cを両口7,8に対して角度をもって設ける方が配管の作業性がよい。これらは、設計に応じて設ける位置を決めることができる。
【0014】
胴部2は,円筒状であるが,その内径はすべて同じ径で形成されているものでなく、少なくとも3つの径から形成している。胴部2は、前端側に液室10(図1,図2の左側)、後端側にピストン室11(図1、図2の右側)を形成するための比較的大きな径と、ピストン室11から液室10側へ延びたシール機構12を収納する通路13とから構成されている。前記ピストン室11は胴部2に形成されたニードル弁作動エアー供給口9aと通路9dで連結されている。
【0015】
シール機構12は、通路13の内壁と当接する環状のスペーサ15,16と、スペーサ15,16の内面に設けたシール18,19と、スペーサ16にシール部を取付ける押え17から構成されている。
【0016】
液体供給口7と液体戻し口8とは胴部2の軸方向に対して直角に形成されており、前後(前とは図1〜3において左側を示す)にずらせて配置している。液体供給口7は、噴霧部3側に近く配置され前記液室10と連通している。液体戻し口8は、ニードル開閉機構6側に近く配置され前記シール機構12の噴霧部3側と通路13により連通している。
【0017】
噴霧部3は、液体噴霧用のノズル20と、このノズル20から噴出される液体にエアーを噴射するエアーキャップ21とより構成されている。このエアーキャップ21を胴部2の先端に配置するため、胴部2の外周に形成されたネジ部22に螺合するリング23で締付け固定している。
【0018】
胴部2の液室10には、液室10の奥側(図1中右側)にフッ素樹脂からなるパッキング24を設けた後に、先端側に溝25を有したフッ素樹脂からなるパッキングハウジング26を設けている。これらのパッキング24、パッキングハウジング26の中心軸部には、前記ニードル弁5が貫通するために前記液室10と同じ径の孔29、30が形成されている。
【0019】
このパッキングハウジング26の溝25には、液封パッキング27を内装したノズル20の外周がネジ止めされている。
【0020】
エアーキャップ21は、図1に示すように、外周に段部28が形成されている。この段部28には、リング23のフランジ14が当接して胴部2に密着させている。
【0021】
ノズル20は、先端付近の外周を円錐台形に形成して、その先端中心に液体噴霧口4を設け、液体噴霧口4の内方に弁座31を設けている。また、ノズル20の円錐台形の終端あたりから外方へ延びたフランジ32が形成されている。
【0022】
ノズル20の内面には、前記液封パッキング27が設けられ、液体噴霧口4と連続する前記液封パッキング27の開口27aに前記ニードル弁5の先端5aが進退自在に設けられるものである。
【0023】
エアーキャップ21は、ノズル20の前端部に軸線を含む上下方向の平面を対称面として対称に前方突出部33を有している。この前方突出部33には、前後方向(図1中左右方向)に延びたエアー通路34およびエアー通路35の前端に連通する斜め内向きのエアー孔36を設けている。
【0024】
エアー通路34,35は、胴部2側で環状の通路で連結されており、パターンエアー供給口9cと胴部2内に形成された通路9fにより連結している。エアー孔36から吹出されるエアーは、後述するエアー孔39と液体噴霧口4とで形成される噴霧流に吹付けられるようにエアー孔36の方向が決められていて、主に噴霧形状(噴霧パターン)を形成する。
【0025】
ノズル20のフランジ32には、エアー孔37が多数円周上に配置されている。エアー孔37は、エアーキャップ21とフランジ32の間に形成される空間38に連通すると共に、エアー孔37がアトマイズエアー供給口9bと通路9eにより連結してエアーを導いている。
【0026】
エアーキャップ21の中心には、エアー孔39が形成されている。このエアー孔39には、前記ノズル20の先端が位置し、このエアー孔39から吹出されるエアーは所謂アトマイズエアーを形成している。すなわち、エアー孔39からのエアーが、ノズル20の先端より導出される液体を負圧で吸い出し、微粒化して噴霧流を形成する。
【0027】
エアーキャップ21は、エアー孔39を中心に十字状の位置に補助エアー孔40を形成している。この補助エアー孔40は、エアーキャップ21の前面に液体の飛沫が付着するのを防止すると共に、補助エアー孔40とエアー孔36とから噴出されるエアーは液体の噴霧形状(噴霧パターン)を調節している。
【0028】
ニードル開閉機構6は、前記ニードル弁5の端部にピストン室11の内壁と当接してシールするシール部材41と座金42とをキャップ43,44で挟んで取付けている。
【0029】
座金42はバネ45の一端が当接している。このバネ45の反対側にはバネ45の他端と当接する支持リング46が胴部2の外周に蝶着されている。前記バネ45はピストン室11にニードル弁作動エアー供給口9aより、エアーが導入されていないとき、バネ45の力で前記ノズル20の液体噴霧口4を閉塞する方向にニードル弁5を移動(図2の状態)させるものである。
【0030】
胴部2には、前記液体の流れを噴霧部3側と液体戻し口8側とに切替える弁機構47が設けられている。この弁機構47は、前記液体供給口7と液体戻し口8との間の通路13に設けられている。
【0031】
ニードル弁5は、通路13と液室10とにまたがった位置に細径部48を形成している。そして、通路13にピストン室11側からニードル弁5の径よりも小さな細径部48よりも大きな径の孔49を有した環状のシール部材50と、中空状で液体戻し口8の開口径と同じ孔51を有したリング52と、環状のシール部材53、シール18、スペーサ15、スペーサ16、シール19、押え17という順番で取付けている。
【0032】
環状のシール部材50の孔49は、前記ニードル弁5の細径部48の端面が当接してシールするもので液体の流れを切替える。すなわち、ピストン室11にエアーが供給されていると、図2の状態からニードル弁5が図中右側へ移動して図1の状態となる。この時、細径部48のうち噴霧部側の端面48aが孔49の周縁と当接して液体の流れを遮断する。同時に、ニードル弁5の先端5aが開口27aから離れて液体噴霧口4を開口して、液体の流れが液体供給口7,液室10へと流れる。
【0033】
また、ピストン室11へのエアーが停止すると、図1の状態からニードル弁5が図中左側へ移動して図2の状態となる。この時、細径部48のうち噴霧部側の端面48aが孔49の周縁から離れて孔49を開口する。同時に、ニードル弁5の先端5aが開口27aに入り込んで開口27aを塞ぐので、液体の流れが液体戻し口8へと流れる。
【0034】
弁機構47は、噴霧部3側と液体戻し口8側とに液体供給口7から流入してくる液体の流れを切替えるためにあるので、液体供給口7を挟んだ液室10内、すなわち、噴霧部3側に弁を設けても、液体の流れを切替えることができる。
【0035】
前記液体供給口7は液体タンク54に液流量計55,ポンプPを介して配管56にて接続されている。また、液体戻し口8は配管57により液体を液体タンク54へ戻して循環経路を構成している。
【0036】
ニードル弁作動エアー供給口9aは、配管58により圧力調整弁59、弁V1を介してコンプレッサCと連結されているとともに、パターンエアー供給口9cが、配管60により圧力調整弁61,弁V2を介してコンプレッサCと接続され、アトマイズエアー供給口9bが、配管62により圧力調整弁63,弁V3を介してコンプレッサCと接続されている。
【0037】
このようなものにおいて、噴霧動作を説明する。
【0038】
噴霧停止状態
【0039】
噴霧停止状態とは、弁V1が閉じてピストン室11にエアーが供給されないとともに、弁V2,V3が閉じてエアー通路34,35並びにエアー孔39,補助エアー孔40にエーが供給されてない状態である。ピストン室11にエアーが供給されないと、ニードル弁5はバネ45の力で液体噴霧口4内を閉じることになる(図2の状態)。したがって、液体の流れは、液体供給口7,通路13,液体戻し口8へと流れて、液体が循環することになる。
【0040】
噴霧作業状態
【0041】
弁V1を開いてコンプレッサCからエアーをピストン室11に供給すると、ピストン室11にエアーの圧力がかかり、シール部材41を押圧して図2中右側へ移動させる。このシール部材41が移動すると、ニードル弁5が移動して前記ノズル20の液体噴霧口4を開口し、あらかじめ設定されていたノズル20の液体噴霧口4への挿入位置まで移動する(図1の状態となる)。
【0042】
この時、ニードル弁5は端面48aが孔49の周縁と当接し、液体が液体戻し口8側へ流れなくなり、液体の流れが液体供給口7,液室10へと流れ、配管57には液体が滞留していない状態となる。
【0043】
また、弁V1と同時に弁V2,V3を開くことにより、パターンエアー供給口9c、アトマイズエアー供給口9bからエアー孔36並びにエアー孔39,補助エアー孔40にエアーが流れてエアーが噴出し、微粒化した所定の噴霧形状で噴霧する。
【0044】
したがって、従来であれば液体循環用に外部に弁装置を設けていたものが、スプレーガン1に圧力で流路を切替える弁機構47を内蔵しているので、スプレーガンを含むコーティングシステム装置全体の簡素化とコストダウンが図れるとともに、バルブ等の制御装置を必要とせずに俊敏に切替えることができ省資源化が図れる。また、常に液体の循環が行えるので、配管内に液体が滞留して沈殿し、分離してしまうことがない。
【0045】
このことにより、噴霧品質が確保されるので安心して工業的に使用することができる。
【0046】
実施の形態における噴霧部3の噴霧構造やニードル開閉機構6のニードル弁5のシール構造等は従来公知の構造でよく、実施の形態に限定されるものでない。また、液体としては塗料や、固形医薬製剤に対して耐酸性保護コーティングする水系コーティング材であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態を示すスプレーガンの液体噴霧口が開口した状態を示す断面図である。
【図2】本発明のスプレーガンの液体噴霧口が閉塞した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の要部分解斜視図である。
【図4】スプレーガンへの液体、エアーの配管状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 スプレーガン
2 胴部
3 噴霧部
4 液体噴霧口
5 ニードル弁
6 ニードル開閉機構
7 液体供給口
8 液体戻り口
9a ニードル弁作動エアー供給口
9b アトマイズエアー供給口
9c パターンエアー供給口
10 液室
11 ピストン室
20 ノズル
21 エアーキャップ
23 リング
46 支持リング
47 弁機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給する液体供給口と、ニードル弁により液体を噴霧する液体噴霧口と、液体噴霧口が閉塞されている時に液体を戻す液体戻し口とを備えたものであって、液体供給口と液体戻し口との間の通路に、前記ニードル弁が液体噴霧口を開いている時に液体戻し口へ液体が流れるのを阻止し、前記ニードル弁が液体噴霧口を閉じている時に液体戻し口へ液体を流す弁機構を設けたことを特徴とするスプレーガン。
【請求項2】
弁機構が、ニードル弁に形成された端面と、通路に設けたシール部材とから形成されたことを特徴とする請求項1に記載のスプレーガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−218450(P2006−218450A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36484(P2005−36484)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【出願人】(000107767)スプレーイングシステムスジャパン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】