説明

スプーン

【課題】納豆を短時間で十分に粘り気が出るように撹拌することができ、加えて、タレやからし等の入った調味料袋の開封時にこれらが手に付着することを防止し、さらに、これらを小袋から十分に絞りだすことができるスプーンを提供する。
【解決手段】納豆容器に収納された納豆を撹拌するスプーン1において、板状の撹拌掬い部10と、撹拌掬い部10に接続された柄部20とを備え、撹拌掬い部10は、撹拌掬い部10を表裏方向に貫通するとともに、撹拌掬い部10の周縁部10cに開口して撹拌掬い部10の内側10dに延びて調味料袋を挿入し得るスリット状の切断溝11と絞り溝12とを有し、切断溝11は、間隙G1を介して相互に対向する一方の対向面11bから他方の対向面11cに向かって突設された切断刃13を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、納豆や玉子豆腐等の食品を食する際に使用されるスプーンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、家庭等で食する納豆は、一般に、1人分ずつ発泡スチロールの納豆容器に小分けされている。納豆を食するに際しては、付属の2つの小袋にそれぞれ入ったタレとからしを納豆容器内の納豆にかけて、箸でよく撹拌して十分に粘り気を出した後、ご飯にかけてご飯と混ぜる。あるいは、納豆容器内の納豆をご飯の上にかけ、さらにタレとからしをかけた後、ご飯とともにかき混ぜる。
【0003】
ところで、箸は棒状に形成されていて、納豆の撹拌に実際に供される部分の面積が小さいため、十分に撹拌して粘り気を出すためには、多くの時間を要する。
【0004】
そこで、納豆の短時間での十分な撹拌を可能にすべく、納豆専用の撹拌具が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
これらはいずれも、実際に撹拌に供される部分の面積が大きく形成されているため、短時間の撹拌で、十分な粘り気を出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−291602号公報
【0007】
【特許文献2】特開2003−304963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1,2のものは、納豆を短時間で十分に撹拌することは可能であるものの、タレやからし等の調味料が入った小袋(調味料袋)を開封する際に、これらタレやからしが手に付着する、調味料袋から絞り出す際に手に付着する、納豆を掬ったりするのに不便である、といった問題を解消することはできない。
【0009】
すなわち、タレやからしの調味料袋は、ビニル等の合成樹脂で形成されており、切れ目やマジックカット部が設けられていて、それなりに開封がしやすいように工夫がされてはいるものの、これらは小さい調味料袋にかなり詰まった状態で入っていて、さらに、開封時には、調味料の上から指で調味料袋を抑えることになるため、開封されたとたんに中のタレやからしが噴き出して手に付着してしまう。また、開封後の調味料袋から調味料を手で十分に絞り出そうとすると、このときにも手に付着する、さらには、撹拌後の納豆を掬うのに適した形状に形成されていないという問題がある。
【0010】
つまり、上述の特許文献1,2のものは、その構造上、これら調味料袋を開封したり絞り出したりするための機能は全く有していないため、開封時にタレやからしが手に付着する、絞り出し時に手に付着する、掬うのに不便である、といった問題に対しては、何ら寄与するものではない。
【0011】
なお、タレ等の調味料が開封時(切断時)に手に付着したり、十分に絞り出せないといった問題は、上述の納豆の以外に、例えば、玉子豆腐のタレ、コーヒーや紅茶用に液体のシュガー等についても発生する。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、タレやからしやシュガー等の入った調味料袋の開封時や絞り出し時にこれらが手に付着することを防止し、加えて納豆やコーヒー,紅茶の撹拌に有効で、また、玉子豆腐等を掬って食する際にも使用可能なスプーンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、食品を撹拌したり掬ったりするのに供されるスプーンにおいて、板状の撹拌掬い部と、前記撹拌掬い部に接続された柄部と、を備え、前記撹拌掬い部は、前記撹拌掬い部の表面側と裏面側とを貫通するとともに前記撹拌掬い部の周縁部の内側から延びて前記周縁部に開口する、調味料袋を挿入し得るスリット状の切断溝と絞り溝とを有し、前記切断溝は、間隙を介して相互に対向する一方の対向面から他方の対向面に向かって突設された切断刃を有する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るスプーンにおいて、前記撹拌掬い部は、前記表面側が凹状に湾曲して腹部を構成し、前記裏面側が凸状に湾曲して背部を構成する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項2に係るスプーンにおいて、前記柄部を使用者の左右方向に向けて略水平にして、前記柄部が使用者の利き手側に位置し、前記撹拌掬い部が前記利き手と反対側に位置し、かつ前記背部が手前側に位置するように、前記柄部を前記利き手で把持した基準姿勢において、前記切断溝及び前記絞り溝が、前記利き手と反対側の斜め下方に向かって開口する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3に係るスプーンにおいて、前記切断溝及び前記絞り溝は、前記基準姿勢において、上方に向かって凸状に湾曲して形成されている、ことを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項4に係るスプーンにおいて、前記絞り溝は、前記切断溝の上方に形成されていて、前記切断溝の全長よりも長い、ことを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に係るスプーンにおいて、前記切断溝は、前記他方の対向面に、前記一方の対向面から突出された前記切断刃が入り込む凹部を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、撹拌掬い部は、板状に形成されていて、例えば、箸等と比較して納豆の撹拌に供される部分の面積が大きいため、納豆を短時間に十分な粘り気が出るまで撹拌することができる。また、タレやからし等の調味料袋を切断溝に挿入することにより、その一部を切断刃によって切断することができ、切断後、さらに、調味料袋をその切断部分と反対側を持って絞り溝に通すことにより、調味料を絞り出すことができる。つまり、指や手を汚すことなく、調味料袋を切断してその中から調味料を絞り出すことができる。なお、納豆以外に、例えば、玉子豆腐のタレの入った調味料袋の切断,絞り、さらに、コーヒーや紅茶用の液体のシュガーの入った袋、プリンやヨーグルトにかけるジャムの入った袋を切断し、これらから中身(タレ,からし,シュガー,ジャム等を絞り出すのにも有効である。つまり、液状の調味料の入った調味料袋を、調味料が手に付着することなく、調味料袋を切断したり、切断後に、中身(収納物)の調味料を絞りだしたりするのに有効である。さらに、納豆、コーヒーや紅茶の撹拌、玉子豆腐やプリン等を食する際にも使用することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、撹拌掬い部が一般的なスプーンのボール部と同様に凹状の腹部と凸状の背部とを有しているので、スプーン全体をスプーンと同様に使用して、撹拌後の納豆を掬ってご飯の上にかけるのに好適である。
【0021】
請求項3の発明によれば、基準姿勢においては、切断刃は、切断溝の開口部よりも、手前側に位置することになるので、調味料袋を切断する際の作業性が向上する。また、切断溝及び絞り溝は、基準姿勢において、切断溝及び絞り溝が利き手と反対側の斜め下方に向かって開口しているので、調味料袋の切断や絞りに際して、利き手と反対の手で調味料袋を持ち、利き手でスプーンの柄部を持ち、スプーンを利き手と反対側の斜め下方に移動させて、切断作業や絞り作業を行うことができる。つまり、自然な動作として、これらの作業を行うことができるので、作業を効率的に行うことができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、切断溝や絞り溝は、上方に向かって凸状に湾曲しているので、これらが直線状に形成される場合と比較して、調味料袋を切断したり、絞りを行ったりする際に、調味料袋を湾曲させてその姿勢を安定させて、切断作業や絞り出し作業を安定して行うことができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、切断溝よりも絞り溝を上方に配置することにより、これらの溝が斜め下方に開口するようにした場合に、絞り溝の長さを切断溝の長さよりも長く確保しやすい。すなわち、調味料袋の切断は、その一部であれば十分であるのに対して、調味料袋の絞りは、その全幅にわたって行う必要があるため、切断溝よりも絞り溝の全長を長く確保する必要がある。このため、絞り溝を切断溝の上方に配置することが有効である。
【0024】
請求項6の発明によれば、切断溝は、一方の対向面から突出された切断刃が、他方の対向面の凹部に入りこんでいるので、例えば、使用者の指先や舌先が切断溝に入ってしまった場合でも、切断刃に接触しにいため、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】スプーン1を腹部10A側から見た斜視図である。
【図2】スプーン1の正面図である。
【図3】図2中の III−III 線矢視図である。
【図4】図2中のIV−IV線矢視図である。
【図5】図2中のP部分の拡大図である。
【図6】スプーン1の変形例を説明する正面図である。
【図7】スプーン1の他の変形例を説明する正面図である。
【図8】スプーン1のさらに他の変形例を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同一又は類似の構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
<実施形態1>
【0027】
図1〜図5を参照して本発明を適用した実施形態1に係るスプーン1について説明する。ここで、図1は、スプーン1を腹部10A側から見た斜視図である。図2は、スプーン1の正面図である。図3は、図2中の III−III 線矢視図である。図4は、図2中のIV−IV線矢視図である。図5は、図2中のP部分の拡大図である。なお、以下の説明では、スプーン1を使用する使用者は、利き手が右手であり、図2に示すスプーン1の姿勢、すなわち、柄部20を使用者の左右方向に向けて略水平にして、柄部20が使用者の利き手側に位置し、撹拌掬い部10が利き手と反対側(左側)に位置し、かつ背部10Bが手前側に位置する姿勢を、スプーン1の基準姿勢とする。
【0028】
なお、以下の説明では、本発明を適用したスプーンを納豆に使用する、すなわち、納豆に付属された、タレやからしがそれぞれ個別に入った調味料袋を切断したり、タレやからしを絞りだしたり、また、納豆を撹拌したり、さらに、撹拌後の納豆を掬ったりするのに使用する場合を例に説明するが、本発明は、納豆以外に、例えば、玉子豆腐のタレの入った袋(調味料袋)、コーヒーや紅茶用の液体のシュガーの入った袋(調味料袋)、プリンやヨーグルトにかけるジャムや蜜の入った袋(調味料袋)を切断し、さらに、中身(タレ,からし,液体シュガー,ジャム,蜜等の調味料)を絞り出すのにも有効である。さらに加えて、納豆,コーヒー,紅茶,ヨーグルト等の撹拌にも使用することができ、また、納豆,玉子豆腐,プリン,ゼリー等を掬って食べるのにも使用することが可能である。さらに、後述する切断溝11,絞り溝12の幅を、例えば、ご飯粒よりも狭く構成すれば、チャーハン,カレーライス,ピラフ,グラタン等を食する際にも、一般的なスプーンと同様に使用することが可能である。
【0029】
スプーン1は、図1〜図5に示すように、板状の撹拌掬い部10と、この撹拌掬い部10に接続された柄部20とを備えて構成されている。
【0030】
なお、以下の説明では、スプーン1は、後述する切断溝11、絞り溝12を除いて、中心線Cを基準として略線対称な形状に形成されている場合を例に説明するが、必ずしも線対称である必要はない。また、以下の説明では、撹拌掬い部10のうちの、柄部20に近い部分(図2中の右側の部分)を基端部10a、遠い部分(図2中の左側の部分)を先端部10bとする。
【0031】
撹拌掬い部10は、表面側が凹状に湾曲して一般的なスプーン同様の腹部10Aを構成し、裏面側が凸状に湾曲して同じく背部10Bを構成している。また、背部10B側から見た形状(腹部10A側から見た形状も同じ。)が、略楕円状に形成されている。なお、この形状については、楕円状に限定されず、他の形状、例えば、楕円形の先端部10b側を細くした形状、円形状、長方形状等であってもよい。
【0032】
撹拌掬い部10には、切断溝11と絞り溝12とが形成されている。
切断溝11は、撹拌掬い部10を表裏方向に貫通するスリット状に形成されている。切断溝11は、撹拌掬い部10の周縁部10cに開口する開口部11aを有するとともに、撹拌掬い部10の内部10d(内側)に向かって延びるように形成されている。さらに、図2に示すように、スプーン1の基準姿勢において、切断溝11は、中心線Cに向かって凸状に湾曲するように形成されている。切断溝11の開口部11aは、切断に供される調味料袋の切断溝11への進入を容易にすべく、外側が広くなるように形成されている。
【0033】
切断溝11は、スリット状の間隙G1を介して相互に対向する一対の対向面11b,11cを有しており、一方の対向面11bには、他方の対向面11cに向かって突出された切断刃13が設けられている。本実施形態においては、切断刃13は、開口部11a側から挿入されてくる調味料袋(不図示)を切断できるように、開口部11aに近い側に、図5に示すように、刃部13aが形成されている。刃部13aの尖端13bと他方の対向面11cとの間には、間隙G1よりもせまい間隙gが形成されている。調味料袋は、この間隙gを通過する際に、刃部13aによって切断されるようになっている。
【0034】
絞り溝12は、撹拌掬い部11を表裏方向に貫通するスリット状に形成されている。絞り溝12は、撹拌掬い部10の周縁部10cに開口する開口部12aを有するとともに、撹拌掬い部12の内部10d(内側)に向かって延びるように形成されている。さらに、図2に示すように、スプーン1の基準姿勢において、絞り溝12は、開口部12a近傍を除き、中心線Cから離れるように上方に向かって凸状に湾曲するように形成されている。絞り溝12の開口部12aは、絞りに供される調味料袋の、絞り溝12への進入を容易にすべく、外側が広くなるように形成されている。
【0035】
絞り溝12は、スリット状の間隙G2を介して相互に対向する一対の対向面12b,12cを有しており、これら対向面12b,12cの間で、切断後の調味料袋の調味料(内容物)を、後述のようにして絞り出すようになっている。この際、絞り溝12は、湾曲しているため、調味料袋の形状が同様に湾曲するため、絞り作業中の調味料袋の姿勢が安定して、内容物の絞り作業が容易となるとともに、調味料を確実に最後まで絞り出すことが可能となる。なお、絞り溝12の間隙G2は、絞りに供される調味料袋の厚さ(調味料袋における内容物が収納されていない周縁部の厚さ)よりもわずかに大きい程度に設定することが好ましい。
【0036】
スプーン1は、上述の基準姿勢において、切断刃13は、切断溝11の開口部11aや終端部(開口部から最も遠くに位置する部分)よりも、手前側に位置することになるので、調味料袋を切断する際の作業性が向上する。また、切断溝11及び絞り溝12は、基準姿勢において、切断溝11及び絞り溝12が利き手と反対側の斜め下方に向かって開口しているので、調味料袋の切断や絞りに際して、利き手(例えば右手)と反対の手(例えば左手)で調味料袋を持ち、利き手でスプーン1の柄部20を持ち、スプーンを利き手と反対側の斜め下方に移動させて、切断作業や絞り作業を行うことができる。つまり、自然な動
【0037】
作として、これらの作業を行うことができるので、作業を効率的に行うことができる。
また、切断溝11や絞り溝12は、スプーン1の基準姿勢において、上方に向かって凸状に湾曲しているので、これらが直線状に形成される場合と比較して、調味料袋を切断したり、絞りを行ったりする際に、調味料袋を湾曲させてその姿勢を安定させて、切断作業や絞り出し作業を安定して行うことができる。なお、切断溝11は、直線状に形成してもよく、また、絞り溝12も図2中の二点鎖線12Aで示すように、直線状に形成してもよい。
【0038】
さらに、スプーン1の基準姿勢において、切断溝11よりも絞り溝12を上方に配置することにより、これらの溝11,12が斜め下方に開口するようにした場合に、絞り溝12の長さを切断溝11の長さよりも長く確保しやすい。すなわち、調味料袋の切断は、その一部であれば十分であるのに対して、調味料袋の絞りは、その全幅にわたって行う必要があるため、切断溝11よりも絞り溝12の全長を長く確保する必要がある。このため、絞り溝12を切断溝11の上方に配置することが有効である。
【0039】
なお、撹拌掬い部10の形状は、フォークや先割れスプーンのような形状にすることも可能である。
【0040】
柄部20は、一般的なスプーンのそれと同様に形成されている。柄部20は、図2に示す幅Wに対して、図3に示す厚さTが薄い棒状に形成されていて、首部21を介して上述の撹拌掬い部10の基端部10aに接続されている。
【0041】
スプーン1は、材質的には、比較的広範なものを使用することが可能である。例えば、ステンレス,銀等の金属、金属にメッキを施したもの、プラスチック(合成樹脂)、木材等を使用することができ、さらには、撹拌掬い部10と柄部20とを異なる材質の物で構成するようにしてもよい。
【0042】
上述構成のスプーン1は、以下のようにして、調味料袋を切断し、内容物の調味料を絞り出し、さらに納豆を撹拌することができる。
【0043】
基準姿勢のスプーン1を一方の手(例えば、利き手である右手)で持ち、他方の手(例えば、左手)の指で、調味料袋の端部を把持する。スプーン1を左斜め下方に移動させて、調味料袋の把持した端部と反対側の端部を、切断溝11の開口部11aから挿入し、切断溝11に沿って相対的に移動させて間隙gを通過させる。すなわち、切断刃13の尖端13bと他方の対向面11cとの間を通過させる。これにより、調味料袋の端部を切断することができ、調味料の取り出しが可能となる。なお、調味料袋は、必ずしも完全に切断してその一部を切除する必要はなく、調味料の取り出しが可能な程度の切れ目(切り込み)入れるようにしてもよい。
【0044】
このとき、上述のように、調味料袋が小さく、また、詰まった状態で調味料が収納されている際には、調味料がタレのように粘度の低い液体の場合には、調味料袋を安定状態で保持しようとすると、左手の指の一部が調味料袋の上から調味料を押圧してしまうことになり、従来、調味料袋を手で切断(開封)したとたんに、内容物が飛び出して手に付着してしまうという不具合があった。
【0045】
これに対して、本実施形態では、切断時に調味料が飛び出したとしても、調味料が手に付着することはなく、撹拌掬い部10に付着する。この撹拌掬い部10は、後に納豆の撹拌に供されることになるため、飛び出した調味料が撹拌掬い部10に付着することについては、何ら支障がない。
【0046】
つづいて、絞り溝12を使用して、調味料袋から内容物を絞り出して、納豆にかける。左手で調味料袋の端部を摘み、右手に持ったスプーン1を左斜め下方に移動させて、調味料袋の端部近傍を絞り溝12の開口部12aから挿入し、絞り溝12に沿って移動させる。調味料袋全体が絞り溝12に挿入された後、調味料袋を手前に引く、または、スプーン1を前方に押し出す。これにより、調味料が調味料袋から絞り出される。この際も、調味料が手に付着することはない。こうして、タレやからし等の調味料を撹拌前の納豆にかけることができる。なお、タレやからしは、納豆を撹拌した後に納豆にかけるようにしてもよ
い。
【0047】
タレやからし等の調味料がかけられた納豆を、スプーン1の撹拌掬い部10によって撹拌する。撹拌掬い部10は、箸等とは異なり、スプーン状に形成されていて、撹拌に供される部分の面積が大きいため、短時間の撹拌で、納豆をよく撹拌して十分な粘り気を発生させることができる。
【0048】
以上の説明では、絞り溝12が湾曲形状である場合を例に説明したが、絞り溝は、これに限定されるものではなく、例えば、「く」字形に屈曲した形状であったり、図2中の二点鎖線12Aで示すように、直線状であったりしてもよい。
【0049】
また、以上の説明では、撹拌掬い部10がスプーン状に湾曲した例を説明したが、これに代えて、平面状とすることも可能である。
【0050】
図6,図7,図8を参照して、切断刃13のそれぞれ異なる変形例について説明する。
【0051】
図6に示す切断刃13においては、刃部13Aが切断刃13における開口部11a側ではなくこれとは反対側(切断溝11の奥側)に設けられている。したがって、調味料袋を切断するに際しては、調味料袋の切断する側の端部を、一端、開口部11a側から奥側に切断刃13を通過させ、その後、奥側から開口部11a側に向けて移動させる際に、刃部13Aによって調味料袋の端部を切断する。これによると、調味料袋の切断に際し、両手を開く方向にスプーン1と調味料袋とを移動させるので、切断作業がやりやすい。
【0052】
図7に示す切断刃13においては、刃部13Bが切断刃13における切断溝11の開口部11a側に設けられており、さらに、刃部13Bの尖端13Cが、切断溝11の他方の対向面11cに設けられた凹部11Cに入り込むように配置されている。これにより、刃部13Bに対する安全性を向上させることができる。なお、図6と図7とに示すものを組み合わせて、刃部を、切断刃13における切断溝11の奥側に設け、さらに、尖端が凹部11Cに入り込むように設けてもよい。
【0053】
図8に示す例は、切断刃13の刃部13Dを、切断刃13における撹拌掬い部10の腹部10A側に設け、また、刃部13Dの尖端13Eが、他方の対向面11cの凹部11Cに入り込むようにしている。これにより、調味料袋を手前側に引くようにして切断することができるとともに、安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 スプーン
10 撹拌掬い部
10A 腹部
10B 背部
10c 周縁部
11 切断溝
11a 開口部
11b 一方の対向面
11c 他方の対向面
11C 凹部
12 絞り溝
12a 開口部
13 切断刃
20 柄部
G1 切断溝の間隙
G2 絞り溝の間隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を撹拌したり掬ったりするのに供されるスプーンにおいて、
板状の撹拌掬い部と、
前記撹拌掬い部に接続された柄部と、を備え、
前記撹拌掬い部は、前記撹拌掬い部の表面側と裏面側とを貫通するとともに前記撹拌掬い部の周縁部の内側から延びて前記周縁部に開口する、調味料袋を挿入し得るスリット状の切断溝と絞り溝とを有し、
前記切断溝は、間隙を介して相互に対向する一方の対向面から他方の対向面に向かって突設された切断刃を有する、
ことを特徴とするスプーン。
【請求項2】
前記撹拌掬い部は、前記表面側が凹状に湾曲して腹部を構成し、前記裏面側が凸状に湾曲して背部を構成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスプーン。
【請求項3】
前記柄部を使用者の左右方向に向けて略水平にして、前記柄部が使用者の利き手側に位置し、前記撹拌掬い部が前記利き手と反対側に位置し、かつ前記背部が手前側に位置するように、前記柄部を前記利き手で把持した基準姿勢において、前記切断溝及び前記絞り溝が、前記利き手と反対側の斜め下方に向かって開口する、
ことを特徴とする請求項2に記載のスプーン。
【請求項4】
前記切断溝及び前記絞り溝は、前記基準姿勢において、上方に向かって凸状に湾曲して形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のスプーン。
【請求項5】
前記絞り溝は、前記切断溝の上方に形成されていて、前記切断溝の全長よりも長い、
ことを特徴とする請求項4に記載のスプーン。
【請求項6】
前記切断溝は、前記他方の対向面に、前記一方の対向面から突出された前記切断刃が入り込む凹部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスプーン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−100965(P2012−100965A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253586(P2010−253586)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(300089965)
【Fターム(参考)】