説明

スペックル低減のためのシステム及び方法

システムコントローラ、可視光源及び光攪乱素子を備えるレーザ投影システムが提供される。可視光源は少なくとも1つのレーザを有し、レーザ投影システムは可視光源の走査光信号を複数の画像ピクセルにかけて走査するようにプログラムされる。走査光信号は低空間周波数ビーム及び高空間周波数ビームを含み、低空間周波数ビームは閾空間周波数より低い空間周波数を有する低空間周波数画像を生成し、高空間周波数ビームは閾空間周波数より高い空間周波数を有する高空間周波数画像を生成し、走査レーザ画像は高空間周波数画像と低空間周波数画像の和である。低空間周波数ビームは焦点外光攪乱素子によって変えられる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2008年3月27日に出願された、名称を「スペックル低減のためのシステム及び方法(Systems and Methods For Speckle Reduction)」とする、米国特許出願第12/079613号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は走査画像におけるスペックルを低減するためのシステム及び方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、レーザ投影画像に見ることができるスペックルの存在感を減じるための、可視光源及びレーザ投影システムの構成及び動作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
画像に存在するスペックルは画像品質をはなはだしく劣化させ得る。スペックルは、コヒーレント光が粗表面、例えばスクリーン、あるいは乱反射または乱透過を生じる他のいずれかの物体を照射するために用いられる場合は必ず生じ得る。
【0004】
詳しくは、スクリーンまたはその他の反射性物体の多数の小領域が光を散乱して、波源点が異なり、伝搬方向が異なる、多数の反射ビームにする。観測点において、例えば観察者の眼またはカメラのセンサにおいて、これらのビームは増加的に干渉して輝点を形成するかあるいは減殺的に干渉して暗点を形成することで、スペックルとして知られる無秩序な斑点状強度パターンを生じさせることができる。スペックルは、斑点の大きさ及び、観測面における平均光強度に対する標準偏差の比として通常定められる、コントラストによって識別される。十分に大きな照射面積及び十分に小さい個々の散乱点の大きさに対し、スペックルは「完全発現」して、輝度標準偏差は100%になるであろう。例えば、レーザビームを用いて画像がスクリーン上に形成される場合、そのような斑点構造は雑音、すなわち画像品質の重大な劣化を表すであろう。
【0005】
スペックルを最小限に抑えるために拡散板を用いることの全般概念は、小寸拡散表面上への中間画像の投影及び最終スクリーン上への中間画像の投影のための投影光学系の使用からなる。小寸拡散板を動かすことによって電場の位相が時間軸で攪乱され、この結果、認識されるスペックルパターンが変化する。拡散板が十分に高速で動いていれば、認識されるスペックルパターンは高周波数で変化し、眼によって時間平均される。高効率で作用させるためには眼の積分時間にかけて多数のスペックルフレームがつくりだされる必要があり、これは一般に50Hz程度である。この概念はフレーム毎ベースで画像を表示する投影システムに容易に適用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、レーザ走査型投影機システムにおいて認識されるスペックルを低減するために拡散板を導入することは、走査スポットが極めて高速で移動しており、40ns程度の継続時間しかほぼ同じ場所にとどまらないため、さらに一層困難である。そのような短い継続時間にかけて多数のスペックルパターンを表示することは、相異なるスペックルパターンが表示され得る最大速度はフルフレームが表示される周波数であるから、非常に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態にしたがえば、システムコントローラ、可視光源及び光攪乱素子を備えるレーザ投影システムが提供される。レーザ投影システムは、コード化された画像データの光放射のためにレーザを動作させ、複数の画像ピクセルにかけて可視光源の光信号を走査するために走査素子を制御することによって、走査レーザ画像の少なくとも一部を生成するようにプログラムされる。走査光信号は低空間周波数ビーム及び高空間周波数ビームを含み、低空間周波数ビームは閾空間周波数より低い空間周波数を有する低空間周波数画像を生成し、高空間周波数ビームは閾空間周波数より高い空間周波数を有する高空間周波数画像を生成する。走査レーザ画像は高空間周波数画像と低空間周波数画像の和である。レーザ投影システムは低空間周波数ビームを焦点外光攪乱素子上に向けて集束させることによって低空間周波数ビームを変えるようにプログラムされ、光攪乱素子は低空間周波数ビームの走査及び集束によって形成される中間画像に対して焦点外にある。
【0008】
別の実施形態にしたがえば、少なくとも1つのレーザを有する可視光源及び光攪乱素子を備えるレーザ投影システムを制御する方法が提供される。方法は、コード化された画像データの光放射のために少なくとも1つのレーザを構成し、複数の画像ピクセルにかけて可視光源の出力ビームを走査するように走査素子を制御することによって、走査レーザ画像の少なくとも一部を生成する工程を含む。走査光信号は低空間周波数ビーム及び高空間周波数ビームを含む。低空間周波数ビームは閾空間周波数より低い空間周波数を有する低空間周波数画像を生成し、高空間周波数ビームは閾空間周波数より高い空間周波数を有する高空間周波数画像を生成する。方法は低空間周波数ビームを焦点外光攪乱素子上に向けることによって低空間周波数ビームを選択的に攪乱する工程をさらに含み、光攪乱素子は低空間周波数ビームの走査及び集束によって形成される中間画像に対して焦点外にある。
【0009】
本発明の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照数字で示される、添付図面とともに読まれたときに最善に理解され得る。
【0010】
図面に示される実施形態は本質的に説明のためのものであり、特許請求の範囲で定められる本発明の限定は目的とされていない。さらに、図面及び本発明の個々の特徴は詳細な説明からさらに十分に明らかになり、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はスペックル低減構成の略図である。
【図2】図2はスペックル低減構成の略図である。
【図3】図3はスペックル低減構成の略図である。
【図4】図4は本発明の一実施形態にしたがうレーザ投影システムの略図である。
【図5】図5は本発明の一実施形態にしたがうレーザ投影システムの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
全般に、本発明の発明者等は投影面上に走査されているレーザの経路内に光攪乱素子を置くと人間の眼または検出器に見えるスペックルの排除に役立つことに気付いた。さらに詳しくは、本発明の実施形態では拡散面の概念が用いられるが、拡散板を極端に高速で動かす代わりに、実施形態は、レーザ走査型投影システムにおいてはスポットが極めて高速で移動しているという事実を利用する。特定の実施形態の動作を十分に理解するためには、走査レーザ源及び光攪乱面並びに走査レーザ源及び光攪乱面の走査レーザ画像内のスペックルとの関係に関する技術情報の再吟味が役立ち得る。
【0013】
説明の目的のため、レーザ走査型投影システム10において焦点外拡散面または焦点外回折面を用いることの全般的概念が図1に示される。特定の説明図において、レーザで発生させることができる、光信号20が走査ミラー22上に放射される。走査ミラー22は次いで光信号20を投影面またはスクリーン28上で2つの方向に走査し、よって画像を形成する。画像内のスペックルを排除するため、走査光信号24の経路内で投影面28に比較的近い距離に光攪乱素子26を配置することができる。光攪乱素子26には、例えば回折光学素子または拡散光学素子を含めることができる。光攪乱素子26は次いで入り走査光信号24を散乱させていくつかの散乱成分(例えば、27a,27b及び27c)にする。したがって、光攪乱素子26上の走査光信号のそれぞれの位置に対して、新しいスペックルパターンが投影面28にわたって生成され、この結果、スペックルの形状は極めて高速で変化する。これらのパターンは次いで投影面28上で平均され、スペックルの出現を最小限に抑える。
【0014】
光攪乱素子26及び図1の構成は走査レーザ画像内のスペックルを低減できるが、光攪乱素子26が投影面28からいくらかの距離に配置されるため、画像がぼける。ぼけの強さは光攪乱素子26の距離及び散乱角の関数である。さらに、光攪乱素子26は、本質的に光攪乱素子26に表面に関連付けられる、低空間周波数の、非一様な照射を発生する。この非一様照射はスペックルと等価ではないが、予測可能であり、観察者の位置にかかわらず見ることができる。
【0015】
例としてであって限定ではなく、図2は走査レーザ画像内のスペックルを低減するための光攪乱素子26としての回折素子の使用をさらに示し、投影面28までの回折素子26の距離、眼または検出器の視野角Φ及び回折次数間の角度θの効果も示す。図2の簡略化した説明図においては、N次回折を有する回折光学素子26がスペックルを最小限に抑えるために用いられる。明解にする目的のため、3次の回折(0,−1及び+1)が例として用いられる。その他のさらに複雑な回折素子については、光が散乱される角度によって回折角θが置き換えられるべきである。
【0016】
図示されるように、光信号20は、走査光信号24a,24b及び24cで表されるように、走査素子30によって回折光学素子26上を二次元走査される。走査光信号24a〜24cはそれぞれ代表点31a,31b及び31cにおいて回折光学素子26に到達する。投影面28上の例示的な点35が回折光学素子26上の点31a,31b及び31cから発する3つの異なる光線によって照射される。照射点35を、また投影面28上の他の点も、相異なる照射角で照射することによって、3つのスペックルパターンが生成される。生成される3つのスペックルパターンは、回折光学素子26の回折次数間の角度である、回折次数角θの2倍に等しい角度だけ角シフトされている以外は相互に同等である。
【0017】
スペックルの出現を十分に最小化するためには、生成されて人間の眼で認識される3つのパターンに相関があってはならない。パターンに相関がないことを保証するためには2つの条件が満たされるべきである。第1に、式(1.1):
【数1】

【0018】
で与えられるように、回折次数角θを、眼またはセンサ32によって定められる角である、ひとみ角Φの1/2以上となるべきである。ここで、θは回折光学素子の回折次数角であり、Φはひとみ角である。
【0019】
第2に、式(1.2):
【数2】

【0020】
で与えられるように、回折次数間の空間離隔dyはビームスポット径以上となるべきである。ここで、dyは回折次数案の空間離隔であり、Dは回折光学素子と投影面の間の距離であり、θは回折光学素子の回折次数角であり、Sは光信号によってつくられるスポットの直径である。
【0021】
式(1.1)及び(1.2)は、スペックルを排除するために満たされるべき最小回折距離D及び最小回折次数角θを与える。しかし、回折光学素子26から投影面28までの距離D及び回折次数角θは、画像ぼけを最小限に抑え、焦点深度を維持するために、可能な限り小さくするべきである。したがって、式(1.1)及び(1.2)の不等号を置き換えることで画像解像度及び焦点深度を損じすぎることなくスペックルを最小限に抑える理想システムが得られる。
【0022】
図2に示される光学構成はスペックルの出現を最小限に抑えるが、光攪乱素子26を投影面28にかなり近づける必要があることから、実用上の問題が生じる。例えば、レーザ投影システムのユーザが画像を投影しようとする毎に拡散光学素子26を投影面28からの設定距離におく必要があり、これは非常に負担になり、時間がかかるであろう。
【0023】
発明者等はレーザ源及び走査素子に近づけて焦点外の小さな中間画像を生成してもスペックルを低減できることに気付いた。図3は、拡散素子または回折素子とすることができる光攪乱素子26から距離D'におかれた平面Πに中間画像を形成する全般概念を説明する。したがって光攪乱素子26は中間画像からやや焦点外に配置される。図3の説明図において、走査素子30は、走査光信号24a及び24bで表されるように、光信号20を二次元走査する。第1のテレセントリックレンズ40が平面Πに中間画像をつくる。走査光信号(例えば24a及び24b)は、走査光信号24a,24bを拡散または回折する、光攪乱素子26を通過する。次いで投影レンズ42が中間画像を投影面28上に再結像させる。式(1.1)及び(1.2)を近軸近似とともに用いれば、そのような説明のためのシステムのパラメータは式(1.3):
【数3】

【0024】
及び式(1.4):
【数4】

【0025】
から演繹することができる。ここで、θ'は回折次数角、D'は光攪乱素子からの平面Πの距離、Mは投影レンズの倍率、Sは光信号でつくられるスポットの直径である。
【0026】
上の説明のための構成は走査レーザ画像内のスペックルの出現を最小限に抑えることができるが、上述した説明では画像品質及び焦点深度が犠牲になる。走査光信号及び走査画像全体を焦点外光攪乱素子26で攪乱することにより、走査レーザ画像はぼけて見えるであろう。ぼけ効果は、走査ビームの焦点がもはやスクリーン上にはなく、画像を生成しているスポットの径が回折次数間の空間離隔dyの2倍であるという事実による。この結果、最大画像解像度は空間離隔dyの2倍に等しい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態にしたがえば、閾空間周波数より低い空間周波数を有する走査レーザ画像の部分または領域に対応する走査光信号の部分だけが攪乱される。一般的な画像は、画像ぼけが問題にならない低空間周波数とぼけが許容されない光空間周波数の和からなる。光信号は、走査レーザ画像が閾空間周波数より低いかまたは高い空間周波数を含んでいるかに基づいて、低空間周波数ビームまたは高空間周波数ビームに選択的に分割することができる。発明者等は、走査レーザ画像において、スペックル現象は低空間周波数(すなわち閾空間周波数より低い空間周波数)を有する走査レーザ画像部分において最も顕著であり、高空間周波数(すなわち閾空間周波数より高い空間周波数)を有する走査レーザ画像部分においてはスペックルがそれほど強く見えないことに気付いた。光信号を、一方は焦点外の拡散面または回折面を有し、他方は拡散面または回折面を有していない、2本の光路を進む2本のビームに分割するかまたは2本のビームをつくるために個別のレーザを用いることにより、実施形態は、一方は無スペックル低解像でであり、他方は高解像度のためスペックル補償がなされていない、2本の異なるビームを発生することができる。閾空間周波数は光学構成に依存することができ、ぼけ周波数(1/2dy)の近くとすることができる。変調法を採用することにより、2本のビームの間の相対パワーを調節して、画像の低空間周波数に必要なパワーと高空間周波数に必要なパワーを局所的に調節することができる。
【0028】
低空間周波数を含むレーザ走査画像部分に対応する光信号の成分は光攪乱素子に向けることができ、そこで成分は攪乱またはぼけさせられ、よって走査レーザ画像からスペックルが除去される。比較的低い空間周波数に対応する画像部分(すなわち低空間周波数画像)だけを攪乱し、比較的高い空間周波数に対応する画像(すなわち高空間周波数画像)を攪乱せずに透過させることによって、画像品質を維持しながら(すなわち画像をぼけさせずに)スペックルが低減される。焦点外光攪乱素子によって生じる画像ぼけをさらに回避するため、攪乱される光と攪乱されずに透過する光の比を連続的に調節することができる。
【0029】
次に図4を参照すれば、コンパクトなパッケージ、維持された焦点深度及び最小限に抑えられた画像ぼけを確保するレーザ投影システム10の実施形態例が示されている。図示される実施形態にしたがえば、レーザ投影システム10は、複数のピクセルにかけて走査され、よって投影面28(図示せず)上に画像を形成する光信号20を、少なくとも1つのレーザ5を有することができる可視光源が生成するようにプログラムされる。光信号20はいくつかの色を含むことができ、いくつかのレーザで生成することができる。例えば、1つのレーザは赤色ビームを発生することができ、別のレーザは青色ビームを発生することができ、また別のレーザは緑色ビームを発生することができる。走査素子30は、走査光信号24a及び24bで表されるように、二次元で光信号20を走査するようにプログラムされる。
【0030】
図4に示される実施形態にしたがえば、(24a及び24bで表されるような)走査光信号24を、光攪乱素子80に向けられる低空間周波数ビーム75aまたは75bと投影面28に直接に向けられる高空間周波数ビーム79aまたは79bに分割するために、偏光ビームスプリッタ72を用いることができる。光攪乱素子26は、その上に向けられた光を受動的に攪乱する、受動光学素子80として構成することができる。受動光学素子80には、例えば、光を散乱させるように構成された拡散光学素子または回折光学素子を含めることができる。
【0031】
投影面28に向けられるビーム及び受動光学素子80に向けられるビームのパワーは、光信号20の経路内で走査素子30の前に配置された偏光変調器(例えば電気光学変調器)70を制御することによって連続的に調節することができる。走査光信号24が、走査レーザ画像の、スペックルが最も強く見える、閾空間周波数より低い空間周波数を含む部分に対応するときには、偏光変調器70は第1の偏光状態と第2の偏光状態の間で、2つの偏光状態が直交するように、光信号20を変調することができる。光信号24が閾空間周波数より高い空間周波数を有する画像成分にともなう偏光状態を有しているときには、光信号24は偏光ビームスプリッタ72から、受動光学素子80を含んでいない経路で投影面28に向けて、反射される(走査光信号24aの成分は点73aにおいて高空間周波数ビーム79aとして反射され、走査光信号24bの成分は点73bにおいて高空間周波数ビーム79bとして反射される)。逆に、光信号24が閾空間周波数より低い空間周波数を有する画像成分にともなう偏光状態を有しているときには、光信号24は受動光学素子80に向けて偏光ビームスプリッタ72を透過する(走査光信号24aは点73aにおいて低空間周波数ビーム75aとして透過し、走査光信号24bの成分は点73bにおいて低空間周波数ビーム75bとして透過する)。この概念を説明するため、画像I(x,y)が低空間周波数画像I低周波(x,y)の和と高空間周波数画像I高周波(x,y)の和に分解することができるとする。この場合、レーザはIに比例する振幅で変調され、偏光変調器はビームを、比I低周波/I高周波が保証されるような態様で、2つの光路に分割する。
【0032】
走査レーザ画像内のスペックルのほとんどには普通、光信号20内の緑色ビームが寄与するから、偏光変調器70は赤色ビーム、緑色ビーム及び青色ビームの色混合の前に、緑色レーザビームの経路だけに配置することができる。したがって、いくつかの実施形態においては、光信号20の緑色ビームだけが偏光変調器70に入る。あるいは、ダイクロイックビームスプリッタを偏光ビームスプリッタ72とともに用い、よって偏光に無関係に赤色ビーム及び青色ビームはビームスプリット面71から反射され(ダイクロイックビームスプリッタから反射され)、緑色ビーム部分は偏光の関数として透過及び反射される。
【0033】
例えば、緑色ビームだけが変調されていれば、一方の偏光状態を有する緑色ビームはビームスプリット面71から反射されるが、他方の偏光状態を有する緑色ビームはビームスプリット面を通過する。受動光学素子80で攪乱される光と攪乱されずに透過する光の間の比は偏光モジュレータ70によって与えられる変調のレベルを制御することによって連続的に調節することができる。光信号20の偏光は、走査光信号24のx%が受動光学素子80に向けられ、走査光信号の(1−x)%が投影面28に向けられるように、変調することができる。レーザ投影システム10は、走査レーザ画像でスペックルが問題ではない場合に、あるいは焦点深度が大きな要件であれば、偏光変調器70を稼働させないことで光攪乱機能を停止させ、よって走査光信号の0%が受動光学素子80に向けられるようにプログラムすることができる。
【0034】
レーザ投影システム10はレンズ74及び2枚の1/4波長板76,78も備えることができる。低空間周波数ビーム75a,75bは、拡散及び/または回折によって低空間周波数ビーム75a,75bを攪乱する、受動光学素子80に向けてレンズ74で結像させることができる。得られた攪乱低空間周波数ビーム75a,75bは受動光学素子80から反射されて、偏光ビームスプリッタ72に向けて戻される。攪乱低空間周波数ビーム75a,75bの偏光が回転されるように、第1の1/4波長板76が攪乱低空間周波数ビーム75a,75bの経路に挿入される。攪乱低空間周波数ビーム75a,75bは次いで偏光ビームスプリッタ72から反射されて第2の1/4波長板78に向けられ、第2の1/4波長板78は攪乱低空間周波数ビームを再び回転させて、攪乱低空間周波数ビームを反射し、偏光ビームスプリッタ72に向けて戻す。攪乱低空間周波数ビームは次いで偏光ビームスプリッタ72において高空間周波数ビーム79a,79bと再結合され、偏光ビームスプリッタ72を透過して投影面28に向かう。このようにすれば、光を、2つの異なる経路に分割して、攪乱される部分と攪乱されない部分にすることができる。
【0035】
図4は透過ビームが攪乱され、反射成分は攪乱されない実施形態を示すが、他の実施形態は、ビームスプリット面71から反射されたビームが攪乱されて、ビームスプリット面71を透過した光は攪乱されないレーザ投影システム10を含み得ることに注意すべきである。さらに、別の実施形態は同じ色を発生するために2つのレーザを利用することがきる。一方のレーザが低空間周波数ビームを発生し、他方のレーザが高空間周波数ビームを発生する。この場合、偏光変調器70及び偏光ビームスプリッタ72は必要ではない。詳しくは、1つの色の1つのレーザを用い、低空間周波数と高空間周波数に光を分割するために変調器を用いるのではなく、別の実施形態は直交偏光を有する2つの個別レーザ源を用いることができる。これらのレーザ源は画像の低空間周波数成分と高空間周波数成分をそれぞれ生成するように制御することができる。
【0036】
図5は、光攪乱素子26が受動光学素子80ではなく二次元空間光変調器64からなる実施形態を示す。空間光変調器64は、閾空間周波数より低い空間周波数を有する走査レーザ画像の部分に対応する、走査光信号20の部分を局所的に攪乱するように構成することができる。空間光変調器64は走査レーザ画像の空間周波数成分に依存して構成を変更することができる複数の変調ピクセルを有することができる。
【0037】
空間光変調器64は、閾空間周波数より高い空間周波数(すなわち高空間周波数画像)が必要とされる場合にはピクセルを局所的に透明にし、画像の空間周波数のほとんどが閾空間周波数より低い(すなわち低空間周波数画像である)場合にはピクセルを攪乱性(例えば回折性または拡散性)にするようにプログラムすることができる。例えば、走査レーザ画像が明るいエッジを有する物体の画像であり、したがって比較的高い空間周波数を含んでいれば、物体の明るいエッジに対応する空間光変調器64のピクセルは、そのようなピクセルが局所的に透明になるように、構成することができる。他方で、画像内の物体または物体の部分に比較的低い空間周波数が必要であれば、比較的低い空間周波数を有する物体の領域に対応する空間光変調器64のピクセルは、そのようなピクセルが局所的に攪乱性になるように、構成することができる。
【0038】
空間光変調器64には多くの構成及び変形が可能である。一実施形態にしたがえば、空間光変調器64は、光の位相を局所的に変えることができ、したがって構成の変更が可能なホログラムを発生する制御された回折次数光を生成することができる、空間光位相変調器64として構成することができる。詳しくは、空間光位相変調器64は、光信号24が位相変更ピクセルにかけてスキャンされたときに、位相変更ピクセルから反射された走査光信号24の部分の位相が変えられるかまたは切り換えられるように、個々のピクセルの位相を変えるかまたは切り換えることによって、走査光信号のその部分を選択的及び局所的に攪乱することができる。そのような態様においては、個々のピクセルにアドレスすることができる。
【0039】
図5に示されるように、少なくとも1つのレーザ(図示せず)によって生成された光信号20は走査素子30で走査される。光信号20は、赤色ビーム、青色ビーム及び緑色ビームを含めることができる、3本のほぼコリメートされたビームを有することができる。一実施形態において、レーザ投影システムは、コリメートされたビームを走査素子30上に収斂させる集束レンズをさらに備えることができる。走査素子30には、走査ミラーまたはMEMSのような、光信号20を走査することができる素子を含めることができる。光信号20は次いで走査素子30により2つの方向で走査または偏向され、よって24a〜24cで表されるような、走査光信号になる。走査光信号の経路に視野レンズ58を配置して、像面湾曲を補正することができ、また走査光信号24a〜24cを互いに平行にすることもできる。図5に示される実施形態にしたがえば、走査光信号24a〜24cは、赤色ビーム及び青色ビームは反射するが、緑色ビームは通過させるダイクロイックミラー62を用いることにより、少なくとも2本の光路に分けることができる。ダイクロイックミラー62及び空間光変調器64からある距離に中間画像60が形成される。
【0040】
ダイクロイックミラー62を通過した後、緑色ビームは二次元空間光変調器64上で走査され、二次元空間光変調器64は走査光信号24a〜24cの緑色ビームを局所的に攪乱する。上述したように、空間光変調器64は高空間周波数画像を含む走査レーザ画像部分においてピクセルを透過する光を局所的に攪乱するようにプログラムすることができる。空間光変調器64は緑色ビームを反射し、緑色ビームは再びダイクロイックミラーを通過する。低空間周波数画像を含む空間周波数に対応するピクセルだけが緑色ビームを攪乱する。しかし、閾空間周波数より高い空間周波数を有する走査レーザ画像成分を表すピクセルに緑色ビームが対応するときには、ピクセルは緑色ビームを反射するだけで攪乱はしない。本明細書で説明されるように、空間光変調器64は局所位相変調によって緑色ビームを攪乱することができる。ダイクロイックミラー62以外のコンポーネントは赤色ビーム及び青色ビームを選択的に転向させることができ、赤色ビーム及び青色ビームも空間光変調器64上で走査され得るが、赤色ビーム及び青色ビームは攪乱されないことに注意すべきである。
【0041】
いくつかの実施形態において、ダイクロイックミラー62及び空間光変調器64は、走査光信号24a〜24cの全てが走査素子30の近傍におかれた点において収斂するように赤色ビーム、緑色ビーム及び青色ビームを反射するために、若干傾けることができる。次いで投影レンズ50が反射された走査光信号24a〜24cを受け取り、走査レーザ画像を投影スクリーン上に投影する。
【0042】
別の実施形態において、図5に示される例示的な二次元空間光変調器64は一次元空間光変調器として構成することができる。一次元空間光変調器(図示せず)は走査レーザ画像の1つの画像線に対応するピクセルを有する。走査素子30は一次元空間変調器上で光信号20を一方向(例えば垂直方向)に走査して画像線を形成する。一次元空間光変調器は次いで走査素子とは逆の方向に(例えば水平方向に)画像線を走査及び反射して、走査レーザ画像を形成することができる。
【0043】
光信号20を2つの経路に転向させ、よって2つのビームスポットにするための他の構成も可能である。別の実施形態において、図4の単偏光変調器70を二次元偏光変調器で置き換えることができる。図4を改めて参照すれば、この二次元偏光変調器(図示せず)は、走査素子30が走査光信号24a,24bを二次元変調偏向器上に走査するかまたは転向させるように、走査素子30の後に配置することができる。閾空間周波数より低い空間周波数を有する走査レーザ画像部分に対応する二次元偏光変調器のピクセルは、そのようなピクセルを通過する走査光信号24の位相を切り換える。逆に、閾空間周波数より高い空間周波数を有する走査レーザ画像部分に対応する二次元偏光変調器のピクセルは透明であり、そのピクセルを通過する走査光信号の偏光を変えない。二次元偏光変調器を通過した後、走査光信号は、(例えば図4に関して)上述したように、いくらかの光を受動光学素子80に転向させ、いくらかの光を投影面に転向させる、偏光ビームスプリッタ72に到達する。
【0044】
「普通に」、「通常」及び「一般に」のような語句は、本明細書に用いられる場合、特許請求される本発明の範囲を限定すると、あるいは特許請求される本発明の構造または機能にある特徴が必須であるか、肝要であるかまたは重要であることさえも意味すると、読み取られるべきではないことに注意されたい。むしろ、これらの語句は、本発明の特定の実施形態に用いられても用いられなくとも差し支えない、別ののまたは追加の特徴を強調することが意図されているに過ぎない。
【0045】
本発明を説明し、定める目的のため、本明細書において語句「ほぼ」は、いずれかの量的比較、値、測定値またはその他の表現に帰因され得る不確定性の固有の大きさを表すために用いられることに注意されたい。本明細書において語句「ほぼ」は、扱われている主題の基本機能に変化を生じさせずに言明された基準から量的表現が変化し得る大きさを表すためにも用いられる。
【0046】
特定の形式で「プログラムされている」か、あるいは特定の特性または機能を特定の態様で具現化するために「構成されている」または「プログラムされている」、本発明のコンポーネントの本明細書における叙述は、目的用途の叙述ではなく、構造の叙述であることに注意されたい。さらに詳しくは、コンポーネントが「プログラムされる」または「構成される」態様への本明細書における言及はコンポーネントの既存の物理的状態を表し、したがってコンポーネントの構造特性の限定された叙述としてとられるべきである。
【0047】
本発明の特定の実施形態を参照して本発明を詳細に説明したが、添付される特許請求の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱しない改変及び変形が可能であることは明らかであろう。さらに詳しくは、本発明のいくつかの態様は本明細書において好ましいまたは特に有利であるとされているが、本発明が本発明のそのような好ましい態様に限定されるとは限らないと考えられる。
【符号の説明】
【0048】
10 レーザ走査型投影システム
20 光信号
22 走査ミラー
24,24a,24b,24c 走査光信号
26 光攪乱素子
27a,27b,27c 走査光信号の散乱成分
28 投影面
30 走査素子
31a,31b,31c 走査光信号の回折光学素子到達点
32 眼またはセンサ
35 投影面上照射点
40 テレセントリックレンズ
42,50 投影レンズ
58 視野レンズ
60 中間画像
62 ダイクロイックミラー
64 空間光変調器
70 偏光変調器
71 ビームスプリット面
72 偏光ビームスプリッタ
74 レンズ
75a,75b 低空間周波数ビーム
76,78 1/4波長板
79a,79b 高空間周波数ビーム
80 受動光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムコントローラ、可視光源及び光攪乱素子を備えるレーザ投影システムにおいて、前記可視光源が少なくとも1つのレーザを有し、前記レーザ投影システムが、
コード化された画像データの光放射のために前記レーザを動作させ、複数の画像ピクセルにかけて前記可視光源の光信号を走査するために走査素子を制御することによって、走査レーザ画像の少なくとも一部を生成する、ここで、前記走査光信号は低空間周波数ビーム及び高空間周波数ビームを含み、前記低空間周波数ビームは閾空間周波数より低い空間周波数を有する低空間周波数画像を生成し、前記高空間周波数ビームは前記閾空間周波数より高い空間周波数を有する高空間周波数画像を生成し、前記走査レーザ画像は前記高空間周波数画像と前記低空間周波数画像の和である、及び
前記低空間周波数ビームを焦点外光攪乱素子上に向けて集束させることによって先記低空間周波数ビームを変える、ここで、前記光攪乱素子は前記低空間周波数ビームの走査及び集束によって形成される中間画像に対して焦点外にある、
ようにプログラムされる、
ことを特徴とするレーザ投影システム。
【請求項2】
前記光攪乱素子が受動光学素子を含み、
前記レーザ投影システムが、前記光信号の経路に配置され、前記光信号の偏光を第1の偏光状態と第2の偏光状態の間で変調するようにプログラムされた、偏光変調器をさらに備え、ここで前記第1の偏光状態と前記第2の偏光状態は直交する、及び
前記レーザ投影システムが、前記走査光信号を前記低空間周波数ビームと前記高空間周波数ビームに分割して、前記低空間周波数ビームを前記受動光学素子に向け、前記高空間周波数ビームを投影面に向ける、偏光ビームスプリッタをさらに備え、ここで前記低空間周波数は前記第1の偏光状態を有し、前記高空間周波数は前記第2の偏光状態を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ投影システム。
【請求項3】
前記受動光学素子が前記低空間周波数ビームを攪乱し、反射するように、前記低空間周波数ビームがレンズを通して前記受動光学素子に向けられ、
前記レーザ投影システムが前記受動光学素子と前記レンズの間に配置された第1の1/4波長板をさらに備え、
前記第1の1/4波長板が前記低空間周波数ビームの前記偏光状態を回転させ、
前記低空間周波数ビームが前記前記レンズを通過して前記偏光ビームスプリッタに向かい、
前記偏光ビームスプリッタが前記低空間周波数ビームを、前記低空間周波数ビームの前記偏光を回転させ、前記低空間周波数ビームを前記偏光ビームスプリッタに向けて反射する、第2の1/4波長板に向けて反射し、
前記低空間周波数ビームが前記偏光ビームスプリッタを通過して前記投影面に向かう、
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ投影システム。
【請求項4】
前記低空間周波数ビームが低空間周波数パワーを有し、
前記高空間周波数ビームが高空間周波数パワーを有し、
前記レーザ投影システムが前記偏光変調器によって与えられる変調のレベルを調節することによって前記低空間周波数と前記高空間周波数の間の比を調節するようにプログラムされる、
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ投影システム。
【請求項5】
前記光攪乱素子が空間光変調器を含み、前記空間光変調器が前記走査光信号によって生成される前記複数の画像ピクセルのそれぞれ1つを選択的に攪乱するように構成され、前記レーザ投影システムが、前記低空間周波数画像に対応する前記複数の画像ピクセルのそれぞれ1つを前記空間光変調器が選択的に攪乱するように、プログラムされることを特徴とする請求項1に記載のレーザ投影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−520135(P2011−520135A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501813(P2011−501813)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/001890
【国際公開番号】WO2009/154661
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】