説明

スペーサー

【課題】単体で使用するブロック型のスペーサーには種々のものが開発されているが、複数個を積み重ねて使用する場合、その位置ずれを阻止する手段を含んだ型式のスペーサーは見当たらない。
【解決手段】本主体部(1)は外形が互いに背向する一面(2)と他面(3)を有する正多角柱、円柱、円錐台及び角錐台の内の一つのブロック状で、該一面(2)に鉄筋(T)を受ける互いに交わる複数本の凹条(4)が設けられ、該他面(3)に型枠(F)に当接する互いに交わる複数本の突条(5)が設けられ、該突条(5)は該凹条(4)と同じ断面形状を有しかつ該凹条(4)の垂直投影面上に位置していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート製品における鉄筋と製品外面間のコンクリートのかぶり寸法を所定に保つために使用されるスペーサーに関し、殊にブロック型で複数個を積み重ねて使用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
単体で使用するブロック型のスペーサーには種々のものが開発されているが、複数個を積み重ねて使用する型式のスペーサーは見当たらない。
特開2002−106114号には正六面体や正八角柱型のものが開示されている。正六面体はその一つの面を型枠に当て、又は捨てコンクリート上に置き、この面と平行の他の面に鉄筋を支持するようになっている。また、正八角柱型のものは、軸線上で相対する平行二面の一面を型枠に当て、又は捨てコンクリート上に置き、他面に鉄筋を支持するものである。
【特許文献1】特開2002−106114号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開2002−106114号のスペーサーを上下に重ねた場合の位置ずれを阻止する手段を講じれば重合使用可能であるが、余計な手段の付加はコスト高となって実質的でない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかるスペーサーは、主体部は外形が互いに背向する一面と他面を有する正多角柱、円柱、円錐台及び角錐台の内の一つのブロック状となっている。該一面に鉄筋を受ける互いに交わる複数本の凹条が設けられ、該他面に型枠に当接する互いに交わる複数本の突条が設けられる。該突条は該凹条と同じ断面形状を有しかつ該凹条の垂直投影面を含む面上に位置している。
【0005】
このスペーサーは、二つ以上で使用するのに適している。即ち、該突条が該凹条と同じ断面形状を有しかつ該凹条の垂直投影面を含む面上に位置しているので、正多角柱や円柱の場合はこのスペーサーを複数個採用し、それぞれの位相を同じに保って重ねると、接触する上のスペーサーの突条が下のスペーサーの凹条に嵌合して上下のスペーサーが密接に重なり、全体としてあたかも一つのスペーサーとして機能する。余計な位置ずれ防止手段は不要である。この場合のかぶり寸法は各スペーサーのかぶり寸法の合計となるので、かぶり寸法を大きく採れる。該凹条及び該突条はそれぞれ互いに交わる複数本となっているので、配筋状態に応じて凹条や突条を選択的に供用することにより、スペーサーの最適な配置ができ、交差する複数本の突条によりスペーサーは型枠面もしくは捨てコンクリート面に自立可能となる。
【0006】
円錐台や角錐台の場合は、それぞれ相似形の二つ以上を用意し、互いに同位相で、即ち、上側のスペーサーの突条を下側のスペーサーの凹条に嵌合させれば、上下に位置するスペーサーが密接に重なり、単一スペーサーのように機能する。従って、正多角柱と円柱、円錐台と角錐台の何れの場合も、スペーサーの軸線上の寸法を変えた何種類かをそれぞれ複数個用意しておき、同寸法又は異なる寸法のスペーサーを適宜組み合わせて重合使用することにより、必要なかぶり寸法を簡単に確保できる。
「背向する一面と他面を有する」という意味は、「背向する」を「対向する」の反意語として使用することにより、一面と他面の背面同士が向き合っている状態を保っていることを意味している。凹条はこの一面に設けられており、突条はこの他面に設けられている。この凹条は鉄筋を安定させるためのもので、通常使われる鉄筋径より大きな径の凹条溝となっている。
【0007】
(請求項2)該複数本の凹条及び突条はそれぞれ該一面及び該他面の中心で交わっていてもよい。
こうすると、配筋状態に応じてスペーサーの向きを変えても、鉄筋荷重がスペーサーの中心を通って型枠に伝達することになるので、スペーサーが傾いたりせず、安定した支持を果たせる。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかるスペーサーによれば、主体部が互いに背向する一面と他面を有する正多角柱、円柱、円錐台及び角錐台の内の一つのブロック状となっており、該一面に鉄筋を受ける互いに交わる複数本の凹条が設けられ、該他面に型枠に当接する互いに交わる複数本の突条が設けられ、該突条は該凹条と同じ断面形状を有しかつ該凹条の垂直投影面上に位置しているので、位相を同じに保って別のスペーサーを重ねると上のスペーサーの突条が下のスペーサーの凹条に嵌合して上下のスペーサーが密接に重なり、あたかも一つのスペーサーとして機能させることができ、この場合のかぶり寸法は二つのスペーサーのかぶり寸法の合計となるので、かぶり寸法を大きく採れ、スペーサーの軸線上の寸法を変えて何種類かを適宜組み合わせて重合使用することにより、必要なかぶり寸法を簡単に確保でき、異なる寸法のスペーサーを組み合わせて使用することにより、種々のかぶり寸法に適合させることもできる。又、該凹条及び該突条はそれぞれ互いに交わる複数本となっているので、配筋状態に応じて凹条を選択的に供用することにより、スペーサーの最適な配置ができ、突条によりスペーサーは設置面に自立可能となる。
【0009】
(請求項2)該複数本の凹条及び突条がそれぞれ該一面及び該他面の中心で交わっているので、配筋状態に応じてスペーサーの向きを変えても、鉄筋荷重がスペーサーの中心を通って型枠に伝達することになるので、スペーサーが傾いたりせず、安定した支持を果たせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面は本発明にかかるスペーサーの具体例を示すもので、全図を通し、同一符号は同一若しくは相応部分を示す。
【0011】
図1は本発明にかかるスペーサーの具体例で本体部が正多角柱型のブロックとなったものの上から見た斜面図、図2は同じく上下を反転して示した斜面図、図3は円柱型の上から見た斜面図、図4は同じく上下反転して示した斜面図で、いずれも三段重ねの使用状態を示している。また、図5は円錐台型の上から見た斜面図、図6は角錐台型の上から見た斜面図で、いずれも二段重ねの使用状態を示している。
【0012】
(請求項1)1は主体部で、互いに背向する一面2と他面3を有するブロック状となっている。この主体部1は外形が正多角柱、円柱、円錐台及び角錐台のうちの一つとなっている。この一面2に鉄筋Tを受ける互いに交わる複数本の凹条4が設けられ、他面3に型枠Fに当接する互いに交わる複数本の突条5が設けられる。この突条5は凹条4と同じ断面形状を有しかつ凹条4の垂直投影面を含む面上に位置している。
【0013】
このスペーサーは、その他面3の突条5で型枠F面上に置かれ、一面2の凹条4で鉄筋Tを支持する。凹条4及び突条5がそれぞれ互いに交わる複数本となっているので、配筋状態に応じて凹条4を選択的に供用することにより、スペーサーの最適な配置ができる。凹条4の底点から突条5の頂点までの垂直寸法hがコンクリートのかぶり寸法となる。主体部1はブロック状なので強度は十分であり、鉄筋Tの重量によって変形したり崩壊することはない。型枠F内に充填したコンクリートが固化して型枠Fを外すと、スペーサーは製品内に埋設され、製品の外面に露出することはない。スペーサーのこの他面3はコンクリートによって覆われているので、異常な振動や衝撃等の外力が加わらない限り、スペーサーが製品から抜け出る恐れはない。
【0014】
主体部1はその形状により、鉄筋荷重に対する支持均衡が良好で、製作も容易である。同じ構成のスペーサーを三つ採用し、互いの位相を同じに保って三つのスペーサーを重ねると、それぞれ上位のスペーサーの突条5が下位のスペーサーの凹条4に嵌合して上中下の三つのスペーサーが密接に重なり、あたかも一つのスペーサーとして機能する。この場合のかぶり寸法Hは三つのスペーサーのそれぞれのかぶり寸法h、h、hの合計となる。
【0015】
従って、正多角柱や円柱の場合はスペーサーの軸線上の寸法を変えて何種類かを用意しておき、スペーサーを適宜組み合わせて重合使用することにより、必要なかぶり寸法を簡単に確保できる。また、円錐台や角錐台の場合はそれぞれ相似形でかつ異なる寸法のスペーサーを組み合わせて使用することにより、種々のかぶり寸法に適合させることもできる。
【0016】
(請求項2)複数本の凹条4及び突条5がそれぞれ一面2及び他面3の中心で交わっている。この場合、配筋状態に応じてスペーサーの向きを変えても、鉄筋荷重がスペーサーの中心を通って型枠Fに伝達することになるので、スペーサーが傾いたりせず、安定した支持を果たせる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかるスペーサーの具体例の正多角柱型を、三段重ねの状態で示す、上からみた斜面図である。
【図2】同、上下反転した状態の上からみた斜面図である。
【図3】別の態様の円柱型の図1と同様の斜面図である。
【図4】同、上下反転した状態の上から見た斜面図である。
【図5】更に別の態様の円錐台の図1と同様の斜面図である。
【図6】更に別の態様の角錐台の図1と同様の斜面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 主体部
2 一面
3 他面
4 凹条
5 突条
F 型枠
T 鉄筋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主体部(1)は外形が互いに背向する一面(2)と他面(3)を有する正多角柱、円柱、円錐台及び角錐台の内の一つのブロック状で、該一面(2)に鉄筋(T)を受ける互いに交わる複数本の凹条(4)が設けられ、該他面(3)に型枠(F)に当接する互いに交わる複数本の突条(5)が設けられ、該突条(5)は該凹条(4)と同じ断面形状を有しかつ該凹条(4)の垂直投影面上に位置していることを特徴とするスペーサー。
【請求項2】
該複数本の凹条(4)及び突条(5)はそれぞれ該一面(2)及び該他面(3)の中心で交わっている請求項1に記載のスペーサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−270591(P2010−270591A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176077(P2010−176077)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【分割の表示】特願2004−251230(P2004−251230)の分割
【原出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(591116885)ジャパンライフ株式会社 (28)
【Fターム(参考)】