スペーサ
【課題】間隙部に設置されたスペーサに亀裂・割れ等を生じることなく、強固に固定することができるスペーサを提供すること。
【解決手段】スペーサ1は、骨と骨との間隙部に設置して固定されるものであり、間隙部に設置されるブロック体2と、ブロック体2を間隙部に固定する板状体3とを有し、板状体3は、この板状体3に一体化されブロック体2を保持する保持部5を備え、この保持部5は、板状体3の保持部5を支持する面から突出し、互いに対向配置された一対の腕部51と、腕部51に設けられた係止部52とを備えており、係止部52がブロック体2を係止することにより、ブロック体2が板状体3により保持される。
【解決手段】スペーサ1は、骨と骨との間隙部に設置して固定されるものであり、間隙部に設置されるブロック体2と、ブロック体2を間隙部に固定する板状体3とを有し、板状体3は、この板状体3に一体化されブロック体2を保持する保持部5を備え、この保持部5は、板状体3の保持部5を支持する面から突出し、互いに対向配置された一対の腕部51と、腕部51に設けられた係止部52とを備えており、係止部52がブロック体2を係止することにより、ブロック体2が板状体3により保持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ、特に、棘突起、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起、椎弓スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、頚椎脊椎症性脊髄症や、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、椎間板ヘルニア等に対する治療として、正中縦割式頚椎拡大椎弓形成術、片側侵入片開き式脊柱管拡大術が行われている。
【0003】
正中縦割式拡大椎弓形成術の場合では、棘突起の正中部(中央部)を切断し、正中部を境にして、両側の椎弓を、ヒンジのようにして開くことにより、脊柱管を拡大する。この際、棘突起を切断して形成された間隙部(骨欠損部)には、スペーサが挿入される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このスペーサは、椎弓または棘突起の切断端部と、スペーサが有する一対の当接面とが接触するように前記間隙部に挿入され、前記切断端部に設けられた貫通孔と、前記一対の当接面を貫通して設けられた貫通孔とに糸を挿通して縛る結紮固定により、間隙部内に固定される。
【0005】
しかしながら、この結紮固定は操作が煩雑であり、また糸が体液で膨潤することで、貫通孔に糸を通すのが困難になるおそれがある。さらに、骨を削る時に発生する骨粉が貫通孔を塞ぐことによっても糸の挿通を困難にするおそれがある。
【0006】
さらに、金属製のプレートを用いて、スペーサと切断端部とをスクリューで固定することで、スペーサを間隙部内に固定する方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
しかしながら、このプレートを用いた方法では、スクリューで固定するために、スペーサに穴を形成する必要があり、この穴の形成の際にスペーサに亀裂・割れ等が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−638号公報
【特許文献2】特許第4482445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、間隙部に設置されたスペーサに亀裂・割れ等を生じることなく、強固に固定することができるスペーサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 骨と骨との間隙部に設置して固定されるスペーサであって、
前記間隙部に設置されるブロック体と、該ブロック体を前記間隙部に固定する板状体とを有し、
前記板状体は、該板状体に一体化され前記ブロック体を保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記板状体の当該保持部を支持する面から突出し、互いに対向配置された一対の腕部と、該腕部に設けられた係止部とを備えており、該係止部が前記ブロック体を係止することにより、前記ブロック体が前記板状体に保持されることを特徴とするスペーサ。
【0011】
これにより、間隙部に設置されたスペーサ(ブロック体)に亀裂・割れ等を生じることなく、スペーサを間隙部に強固に固定することができる。
【0012】
(2) 前記係止部は、前記腕部の対向する方向に突出している爪である上記(1)に記載のスペーサ。
【0013】
これにより、ブロック体を引っ掛けて固定することができ、その結果、板状体にブロック体が固定される。
【0014】
(3) 前記係止部は、前記支持する面側の端部とは反対側の端部に設けられている上記(1)または(2)に記載のスペーサ。
【0015】
これにより、ブロック体を係止部で固定することができ、その結果、板状体にブロック体が固定される。
【0016】
(4) 前記ブロック体は、複数の角部を有しており、前記係止部は、前記角部に係止する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスペーサ。
これにより、板状体にブロック体が固定されることとなる。
【0017】
(5) 前記ブロック体は、前記腕部の突出方向に設けられた貫通孔を有しており、前記係止部は、前記貫通孔の縁部に係止する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスペーサ。
これにより、板状体にブロック体が固定されることとなる。
【0018】
(6) 前記係止部は、前記ブロック体に形成された穴の内周面に係止する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスペーサ。
これにより、板状体にブロック体が固定されることとなる。
【0019】
(7) 前記ブロック体は、前記腕部により挾持される上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のスペーサ。
これにより、ブロック体を板状体により、より強固に保持することができる。
【0020】
(8) 前記ブロック体は、セラミックス材料を主材料として構成される上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のスペーサ。
【0021】
セラミックス材料は安定かつ無機質な材料のため、有機物の溶出という生体への負荷がない。
【0022】
(9) 前記板状体は、金属材料または高分子材料を主材料として構成される上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のスペーサ。
【0023】
金属材料または高分子材料は、優れた強度と弾性を有しているため、ブロック体をより強固に間隙部に固定することができる。
【0024】
(10) 棘突起の切断・縦割、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起スペーサもしくは椎弓スペーサである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のスペーサ。
【0025】
本発明のスペーサは、棘突起スペーサまたは椎弓スペーサとして特に好ましく適用される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、糸を用いることなく間隙部にスペーサを固定することができ、さらに、スペーサにスクリュー挿通用の穴を形成することなくプレートで固定することができる。その結果、間隙部に設置されたスペーサに亀裂・割れ等を生じることなく、スペーサが強固に固定されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のスペーサの第1実施形態を示す図である。
【図2】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図3】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図4】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図5】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図6】本発明のスペーサの第1実施形態を製造するための製造方法を示す図である。
【図7】本発明のスペーサの第2実施形態を示す図である。
【図8】本発明のスペーサの第3実施形態を示す図である。
【図9】本発明のスペーサの第4実施形態を示す図である。
【図10】本発明のスペーサの第5実施形態を示す図である。
【図11】本発明のスペーサの第6実施形態を示す図である。
【図12】本発明のスペーサの第7実施形態を示す図である。
【図13】本発明のスペーサの第8実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のスペーサを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、本発明のスペーサを正中縦割式拡大椎弓形成術に用いられる椎弓スペーサに適用した場合を一例に説明する。
【0029】
<第1実施形態>
図1は、本発明のスペーサの第1実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)、図2〜図5は、それぞれ、正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【0030】
<<正中縦割式拡大椎弓形成術>>
まず、本発明のスペーサの第1実施形態を説明するのに先立って、図2〜図5を参照して、正中縦割式拡大椎弓形成術について説明する。なお、図2〜図5中の上側が背側、下側が腹側、である。
【0031】
図2に示すように、椎骨100は、椎体110と、椎体110の後方(図2中の上側)に延び、脊柱管(椎孔)140を形成する椎弓120と、椎弓120の中央部から後方に突出する棘突起130とを有している。
【0032】
[1] まず、図2に示すように、椎骨100における棘突起130を、椎弓120から切断線131において切離(切断)する。
【0033】
[2] 次に、図3に示すように、椎弓120の中央部(正中部)を、例えばエアドリル等を用いて切断する。
【0034】
また、正中面200を境にして椎弓120の根元部の外側に、例えばエアドリル等を用いて溝121a、121bを形成する。
【0035】
この溝121a、121bの深さは、外板のみ削り、内板を削らない程度とする。この溝121a、121bを形成した部位は、ヒンジ部(蝶番)122a、122bとなる。
【0036】
[3] 次に、図4に示すように、ヒンジ部122a、122bを中心に、椎弓120を回動させ、椎弓120の切断した部分を広げる。これにより、切断端部(骨)120a、120b同士の間に間隙部150が形成される。
【0037】
なお、必要に応じて、椎弓120の間隙部150に臨む切断端部120a、120bを整形する。
【0038】
[4] 次に、図5に示すように、間隙部150に、本発明のスペーサ1を挿入した後、スペーサ1が備える貫通孔32にネジ(スクリュー)4を、挿通した状態で切断端部120a、120bの後面124a、124bにネジ止めすることで、スペーサ1を間隙部150内に固定する。これにより、患者の椎弓120と、スペーサ1とで、拡大された椎弓160が形成される。
【0039】
なお、スペーサ1を切断端部120a、120bにネジ4でネジ止めし、スペーサ1を間隙部150内に固定する構成とすることにより、術後早期に、スペーサ1が椎弓120に対して位置ズレするのを防止することができ、切断端部120a、120bと側面12との間における骨癒合を確実に生じさせることができる。
【0040】
また、前述した結紮固定のように、スペーサに形成した貫通孔に糸を挿通して縛る場合と比較して、貫通孔32にネジ4を挿通した状態で後面124a、124bにネジ止めするという単純な作業で、スペーサ1を間隙部150内に強固に固定することができる。
【0041】
さらに、後に詳述するように、ブロック体2が保持部5により板状体3に予め保持(固定)されていることから、ブロック体2にネジで穴を形成する必要がないため、ブロック体2に亀裂・割れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0042】
なお、前記工程[1]において切離された棘突起130を、スペーサ1の後面13の中央(正中)に戻し、スペーサ1に糸等により固定してもよい。
【0043】
また、棘突起130を椎弓120から切離することなく、前記工程[2]において、棘突起130ごと正中面200に沿って切断してもよい。
【0044】
<<スペーサ>>
次に、本発明のスペーサの第1実施形態について、図1および図5を参照して説明する。
【0045】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、スペーサ1を患者の施術部位(間隙部150)に挿入(設置)した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側(脊柱管140側)を「前」、背側(脊柱管140と反対側)を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。
【0046】
図1および図5に示すように、スペーサ1は、間隙部(欠損部)150に設置(挿入)されるブロック体(スペーサ本体)2と、このブロック体2を間隙部150に固定する板状体3とを有している。
【0047】
ブロック体2は、間隙部150に挿入され、拡大された椎弓160を形成するためのものである。
【0048】
このブロック体2は、本実施形態では、図5に示すように、上面視または下面視で、前面11側に凹部を備える略台形状をなしており、複数の角部を有している。
【0049】
このブロック体2において、前面11は、湾曲凹面で構成されており、前面11に対向する後面13は、平面で構成されている。前面11を湾曲凹面で構成することにより、脊柱管140をより大きく(広く)拡大することができ、脊髄神経の圧迫を確実に防止することができる。
【0050】
また、ブロック体2の一対の側面12は、それぞれ、間隙部150に挿入した状態で、椎弓120の切断端部120a、120bが当接する当接面を構成する。
【0051】
なお、このようなブロック体2において、各部の寸法は、それぞれ、次のように設定される。
【0052】
ブロック体2の前後方向の長さ(図1中L)は、5〜12mm程度であるのが好ましく、5〜7mm程度であるのがより好ましい。
【0053】
また、ブロック体2の上下方向の長さ(図1中H)は、5〜12mm程度であるのが好ましく、5〜7mm程度であるのがより好ましい。
【0054】
また、ブロック体2の左右方向の長さ(図1中W1)は、6〜23mm程度であるのが好ましく、10〜21mm程度であるのがより好ましい。
【0055】
また、ブロック体2の左右方向の長さ(図1中W2)は、4〜21mm程度であるのが好ましく、6〜18mm程度であるのがより好ましい。
【0056】
また、前面11の湾曲凹面の平均曲率半径は、20〜120mm程度であるのが好ましく、23〜53mm程度であるのがより好ましい。
【0057】
スペーサ1における各部の寸法を上述した範囲内に設定することにより、ブロック体2に優れた機械的強度をより確実に付与することができる。
【0058】
このようなブロック体2は、セラミックス材料を主材料として構成されたものが好ましい。セラミックス材料は安定かつ無機質な材料のため、有機物の溶出という生体への負荷がない。
【0059】
セラミックス材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等のバイオセラミックスが好ましい。なかでもリン酸カルシウム系化合物は、優れた生体親和性を備えているため、ブロック体2の構成材料として特に好ましい。
【0060】
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのリン酸カルシウム系化合物のなかでもCa/P比が1.0〜2.0のものが好ましく用いられる。
【0061】
このようなリン酸カルシウム系化合物のうち、ハイドロキシアパタイトがより好ましい。ハイドロキシアパタイトは、骨の無機質主成分と同様の構造であるため、優れた生体適合性を有している。また、ブロック体2自体と切断端部120a、120bとの癒合を期待することもできる。
【0062】
また、ブロック体2は、緻密体であっても、多孔質体であってもよいが、多孔質体であるのが好ましい。ブロック体2を多孔質体で構成することにより、ブロック体2内への骨芽細胞の侵入を可能とし、ブロック体2内において骨新生を行うことができ、特にブロック体2を、ハイドロキシアパタイトを主材料として構成する場合、ブロック体2自体と切断端部120a、120bとの確実な癒合を期待することができる。
【0063】
また、多孔質体の気孔率は、0〜90%程度であるのが好ましく、15〜60%程度であるのがより好ましい。これにより、ブロック体2の機械的強度が低下するのを防止しつつ、ブロック体2内への骨芽細胞のより円滑な侵入を可能とし、ブロック体2内における骨新生が促進することとなる。その結果、切断端部120a、120bと側面12との間における骨癒合をより確実かつ早期に生じさせることができる。
【0064】
なお、ブロック体2の構成材料としては、上記セラミックス材料の他、該セラミックス材料とチタン等の生体為害性の小さい金属材料との複合材料等を用いることも可能である。
【0065】
板状体3は、ブロック体2の後面13に接するように配置され、ブロック体2を間隙部150に固定するためのものである。
【0066】
この板状体3は、本体部34と、この本体部34に一体化され、ブロック体2を保持する保持部5とを備えている。
【0067】
本体部34は、その全体形状が、左右方向に長い平板状をなしており、ブロック体2の後面13側において、ブロック体2の2つの端部から共に突出するようになっている。
【0068】
この突出する部分が、ブロック体2を間隙部150に挿入した際に、椎弓120の切断端部120a、120bの後面124a、124bに係合する係合部31として機能する。これにより、ブロック体2(スペーサ1)が脊柱管140側に移動するのが阻止され、ブロック体2による脊髄神経の圧迫を確実に防止することができるため、安全性が高い。
【0069】
また、係合部31は、その厚さ方向に貫通する貫通孔32を有している。この貫通孔32にネジ4を、挿通した状態で切断端部120a、120bの後面124a、124bにネジ止めすることで、ブロック体2が間隙部150内に固定される。
【0070】
さらに、本実施形態のように、本体部34の後面33を平面で構成することにより、例えば、手術の手技として、切離された棘突起130を元の位置に戻す場合には、後面33に対する棘突起130の位置ずれを好適に防止することができる。
【0071】
保持部5は、本体部34の前面35、すなわちこの保持部5を支持する面から突出する一対の腕部51と、これら腕部51の前面35側の端部(基端)と反対側の端部(先端)に設けられた係止部52とを有している。
【0072】
本実施形態では、一対の腕部51は、その全体形状が四角柱状をなしており、互いに対向配置するように、前面35の長手方向における中央付近の縁部にそれぞれ設けられている。
【0073】
また、係止部52は、腕部51と同様に全体形状が四角柱状をなしており、一対の腕部51が対向する方向(前面35の短手方向)に突出して設けられている。かかる構成の係止部52が、ブロック体2を引っ掛けることにより固定する爪として機能する。
【0074】
本実施形態では、この係止部52が、ブロック体2の前面11と上面14とで形成される角部の中央付近およびブロック体2の前面11と下面15とで形成される角部の中央付近において、ブロック体2を係止し、これにより、ブロック体2が板状体3により保持(固定)される。
【0075】
したがって、ブロック体2にネジで穴を形成することなく、板状体3にブロック体2を固定することができるため、ブロック体2に亀裂・割れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0076】
また、本実施形態では、一対の腕部51により、ブロック体2が挾持されるように、腕部51同士の離間距離が設定されている。これにより、ブロック体2を板状体3によりより強固に保持(固定)することができるようになる。
【0077】
さらに、一対の腕部51によりブロック体2を挾持する場合、本体部34、腕部51および係止部52が一体となった板を用意し、この板を、本体部34から腕部51への移行部、および、腕部51から係止部52への移行部で折り曲げることにより板状体3を得る構成とすることによっても、腕部51(保持部5)の弾性を利用することで、ブロック体2を挟みこむことができる。
【0078】
このような板状体3は、金属材料または高分子材料を主材料として構成されたものが好ましい。金属材料と高分子材料は、優れた強度と弾性を有しているため、ブロック体2をより強固に間隙部150内に固定することができる。
【0079】
金属材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、チタンまたはチタン合金であるのが好ましい。チタンまたはチタン合金は、生体適合性が高く、また、優れた強度を有することから板状体3の構成材料として好ましく用いられる。なお、チタン合金としては、特に限定されないが、例えば、Ti−6Al−4Vや、Ti−29Nb−13Ta−4.6ZrのようなTiを主成分とし、Al、Sn、Cr、Zr、Mo、Ni、Pd、Ta、Nb、V、Pt等が添加されたものが挙げられる。また、金属材料としては、形状記憶合金であってもよい。板状体3を形状記憶合金で構成して、体温付近(35度前後)でブロック体を保持可能な形状になるよう設計することで、外的負荷によって万が一、腕部51あるいは係止部52等が変形したとしても、板状体3は、ブロック体2を保持可能な元の形状に復帰する。
【0080】
また、高分子材料としては、各種のものが挙げられるが、特にポリエーテルエーテルケトンが好ましい。この他にもポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸など臨床で使用されているものが挙げられる。
【0081】
また、スペーサ1を構成する各部は、その全体に亘って、角部が丸みを帯びた形状をなしている(R付けがなされている)ものであってもよい。かかる構成とすることにより、スペーサ1を間隙部150に挿入する際に、周辺組織を傷付けるのを防止することができるという利点が得られる。
【0082】
なお、本明細書中において、上述した「間隙部」とは、本実施形態のように椎弓拡幅のために形成される空間の他、例えば、腸骨などの自家骨採取によって形成される空間や、事故や病気で骨を失った空間等を含むこととする。
【0083】
また、貫通孔32は、本実施形態のように、後面13側から見たときの形状が真円をなすものの他、例えば、三角形、四角形のような外角形や、楕円のような長円をなすものであってもよい。なお、長円をなすものとした場合には、ネジ4によりネジ止めする後面124a、124bの位置の選択の幅が広がるという利点が得られる。
【0084】
以上のようなスペーサ1は、例えば、次のようにして製造することができる。
なお、以下では、ブロック体2がセラミックス材料で構成され、板状体3が金属材料で構成されるスペーサ1を製造する場合を一例に説明する。
【0085】
図6は、本発明のスペーサの第1実施形態を製造するための製造方法を示す図であり、(a)はブロック体および板状体の構成を示す斜視図、(b)ブロック体を板状体で固定する方法を説明するための斜視図である。
【0086】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、図6に示すスペーサ1を患者の施術部位(間隙部150)に挿入(装着)した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側(脊柱管140側)を「前」、背側(脊柱管140と反対側)を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。
【0087】
[A]まず、図6(a)に示すような、ブロック体2および板状体3をそれぞれ用意する。
【0088】
[A−1]ブロック体2は、その形状に対応する成形体を得た後、成形体を焼成することにより得ることができる。
【0089】
成形体は、例えば、I:セラミックス原料粉末を含むスラリーを、所定の型内に充填して、成形する方法、II:前記スラリーに対して、沈殿または遠心分離により固形分を偏在させる方法、III:前記スラリーを所定の型内に入れ、脱水処理し、固形分を型内に残す方法、IV:圧縮成形法(粉末の場合、圧粉成形)、V:セラミックス原料粉末と水状の糊とを混ぜ、これを型に入れ乾燥させる方法等、種々の方法により製造することができる。
【0090】
なお、前記スラリーは、予めスプレードライ法などにより造粒した二次粒子をセラミックス原料粉末として含むものであっても良い。
【0091】
また、必要に応じて、成形体を、旋盤、ドリル等を用いた切削加工によりその形状、大きさ等を調整するようにしてもよい。
【0092】
成形体を焼成する際の焼成温度は、例えば、セラミックス材料がリン酸カルシウム系化合物である場合、700〜1300℃程度であるのが好ましい。
【0093】
[A−2]板状体3は、ブロック状をなす金属製の緻密体を用意し、この緻密体を、板状体3の形状、大きさ等に成形することで容易に得ることができる。
【0094】
この緻密体の成形には、例えば、レーザーカット、ウォータージェット、放電ワイヤー加工、超音波切断のような薄片切断加工法を用いることができる。
【0095】
なお、本実施形態では、係止部52を、図6(a)に示すように、腕部51が対向する方向に突出させることなく、腕部51の長手方向に腕部51と一体的に形成しておく。
【0096】
また、板状体3は、平板状をなす金属製の緻密体を用意し、この平板状の緻密体を、所望の形状に切り出すとともに、図6(a)のように腕部51を折り曲げ成形することで得るようにしても良い。
【0097】
[B]次に、図6(b)に示すように、ブロック体2の後面13と板状体3(本体部34)の前面35とが互いに接するように、一対の腕部51同士の間に、ブロック体2を配置し、その後、係止部52を、一対の腕部51が対向する方向に折り曲げることで爪を形成する。これにより、係止部52によりブロック体2が係止されることとなる。
以上のようにして、ブロック体2が板状体3により保持されたスペーサ1が得られる。
【0098】
<第2実施形態>
次に、本発明のスペーサの第2実施形態について説明する。
【0099】
図7は、本発明のスペーサの第2実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0100】
以下、第2実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0101】
図7に示すスペーサ1は、ブロック体2および保持部5の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0102】
すなわち、第2実施形態のスペーサ1において、係止部52は、腕部51の端部ではなく、そのほぼ中央に設けられている。また、ブロック体2の上面14および下面15の係止部52に対応する位置に穴21がそれぞれ設けられている。
【0103】
そして、これら穴21に係止部52が挿入されることで、穴21の内周面に係止部52が係止し、これにより、ブロック体2が板状体3により保持(固定)される。
【0104】
このような第2実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0105】
<第3実施形態>
次に、本発明のスペーサの第3実施形態について説明する。
【0106】
図8は、本発明のスペーサの第3実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0107】
以下、第3実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0108】
図8に示すスペーサ1は、ブロック体2および保持部5の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0109】
すなわち、第3実施形態のスペーサ1において、一対の腕部51は、本体部34の短手方向に沿って互いに対向配置するように、前面35の中央付近にそれぞれ設けられている。また、係止部52は、一対の腕部51が対向する方向の逆方向(前面35の長手方向)に突出して設けられている。さらに、ブロック体2の腕部51に対応する位置には、後面13と前面11とを貫通する貫通孔22が設けられている。
【0110】
そして、貫通孔22に腕部51が挿入され、貫通孔22の縁部に係止部52が係止することで、ブロック体2が板状体3により保持(固定)される。
【0111】
このような第3実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0112】
<第4実施形態>
次に、本発明のスペーサの第4実施形態について説明する。
【0113】
図9は、本発明のスペーサの第4実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0114】
以下、第4実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0115】
図9に示すスペーサ1は、板状体3が備える保持部5の数が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0116】
すなわち、第4実施形態のスペーサ1おいて、図9に示すように、板状体3は、左右方向、すなわちその長手方向に沿って、保持部5を2つ(複数)備えている。
【0117】
このような第4実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0118】
<第5実施形態>
次に、本発明のスペーサの第5実施形態について説明する。
【0119】
図10は、本発明のスペーサの第5実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0120】
以下、第5実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0121】
図10に示すスペーサ1は、ブロック体2および保持部5の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0122】
すなわち、第5実施形態のスペーサ1において、一対の腕部51は、その全体形状が平板状をなしており、本体部34の短手方向に沿って互いに対向配置するようにそれぞれ設けられている。また、係止部52は、一対の腕部51が対向する方向の逆方向(前面35の長手方向)に突出して設けられている。さらに、ブロック体2の腕部51に対応する位置には、後面13と前面11とを貫通する貫通孔22が、各腕部51に対応して2つ設けられている。
【0123】
そして、貫通孔22に腕部51が挿入され、貫通孔22の縁部に係止部52が係止することで、ブロック体2が板状体3により保持(固定)される。
【0124】
このような第5実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0125】
<第6実施形態>
次に、本発明のスペーサの第6実施形態について説明する。
【0126】
図11は、本発明のスペーサの第6実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0127】
以下、第6実施形態のスペーサ1について、前記第5実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0128】
図11に示すスペーサ1は、板状体3、特に本体部34の構成が異なる以外は、図10に示すスペーサ1と同様である。
【0129】
すなわち、第6実施形態のスペーサ1において、本体部34は、一対の腕部51が形成されている位置よりも内側(係合部31と反対側)の領域で、その形成が省略されている。
【0130】
このように本体部34の一部の形成を省略したとしても、貫通孔22の縁部に係止部52が係止することで、ブロック体2を板状体3により保持(固定)することができる。
【0131】
このような第6実施形態のスペーサ1によっても、前記第5実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0132】
<第7実施形態>
次に、本発明のスペーサの第7実施形態について説明する。
【0133】
図12は、本発明のスペーサの第7実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0134】
以下、第7実施形態のスペーサ1について、前記第6実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0135】
図12に示すスペーサ1は、保持部5、特に係止部52の構成が異なる以外は、図11に示すスペーサ1と同様である。
【0136】
すなわち、第7実施形態のスペーサ1において、一対の係止部52は、各側面12を越えて、ブロック体2の端部から共に突出するように設けられている。この突出する部分が、ブロック体2を間隙部150に挿入した際に、椎弓120の切断端部120a、120bに係合する係合部として機能するため、ブロック体2を間隙部150内により強固に固定することができる。
【0137】
このような第7実施形態のスペーサ1によっても、前記第6実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0138】
<第8実施形態>
次に、本発明のスペーサの第8実施形態について説明する。
【0139】
図13は、本発明のスペーサの第8実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0140】
以下、第8実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0141】
図13に示すスペーサ1は、ブロック体2および本体部34の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0142】
すなわち、第8実施形態のスペーサ1において、本体部34の中央付近に、前面35と後面33とを貫通する貫通孔36が設けられている。また、ブロック体2の貫通孔36に対応する位置には、後面13から突出する凸部23が設けられている。
【0143】
そして、貫通孔36内に凸部23が配置され、貫通孔36と凸部23とが係合することで、板状体3に対するブロック体2の位置ズレ、特に、ブロック体2の左右方向に対する位置ズレをより的確に防止または抑制することができる。なお、貫通孔36と凸部23とはそれぞれ複数設けても良い。
【0144】
このような第8実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0145】
以上、本発明のスペーサを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0146】
例えば、本発明のスペーサにおいて、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0147】
例えば、本発明では、前記第1〜第8実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【0148】
さらに、前記実施形態のスペーサでは、いずれもブロック体2の上面視での形状がほぼ台形状のものについて示したが、本発明のスペーサは、挿入部の全体形状が円柱状や四角柱状のような柱状をなすものであってもよい。
【0149】
なお、ブロック体2として、前記実施形態のように後面13が平面ではなく、湾曲凹面をなす前面11に対応する湾曲凸面で構成される場合には、かかる湾曲凸面の形状に追従するように、板状体3(本体部34)の上面および下面を、直線状ではなく湾曲状(円弧状)の形状をなすものとすればよい。
【0150】
また、前記実施形態では、スペーサ1を正中縦割式拡大椎弓形成術に用いる場合について示したが、本発明では、スペーサを、椎弓の一方側(片側)を切断し、他方側をヒンジのようにして椎弓を開くことにより脊柱管を拡大する片側侵入片開き式脊柱管拡大術に用いるようにしてもよい。
【0151】
さらに、スペーサ1を、椎弓に形成された間隙部に設置して固定する他、腸骨、大腿骨、頭蓋骨等の各種骨に形成された間隙部に配置して固定することもできる。
【符号の説明】
【0152】
1 スペーサ
11 前面
12 側面
13 後面
14 上面
15 下面
2 ブロック体
21 穴
22 貫通孔
23 凸部
3 板状体
31 係合部
32 貫通孔
33 後面
34 本体部
35 前面
36 貫通孔
4 ネジ
5 保持部
51 腕部
52 係止部
100 椎骨
110 椎体
120 椎弓
120a、120b 切断端部
121a、121b 溝
122a、122b ヒンジ部
124a、124b 後面
130 棘突起
131 切断線
140 脊柱管
150 間隙部
160 拡大された椎弓
200 正中面
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ、特に、棘突起、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起、椎弓スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、頚椎脊椎症性脊髄症や、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、椎間板ヘルニア等に対する治療として、正中縦割式頚椎拡大椎弓形成術、片側侵入片開き式脊柱管拡大術が行われている。
【0003】
正中縦割式拡大椎弓形成術の場合では、棘突起の正中部(中央部)を切断し、正中部を境にして、両側の椎弓を、ヒンジのようにして開くことにより、脊柱管を拡大する。この際、棘突起を切断して形成された間隙部(骨欠損部)には、スペーサが挿入される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このスペーサは、椎弓または棘突起の切断端部と、スペーサが有する一対の当接面とが接触するように前記間隙部に挿入され、前記切断端部に設けられた貫通孔と、前記一対の当接面を貫通して設けられた貫通孔とに糸を挿通して縛る結紮固定により、間隙部内に固定される。
【0005】
しかしながら、この結紮固定は操作が煩雑であり、また糸が体液で膨潤することで、貫通孔に糸を通すのが困難になるおそれがある。さらに、骨を削る時に発生する骨粉が貫通孔を塞ぐことによっても糸の挿通を困難にするおそれがある。
【0006】
さらに、金属製のプレートを用いて、スペーサと切断端部とをスクリューで固定することで、スペーサを間隙部内に固定する方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
しかしながら、このプレートを用いた方法では、スクリューで固定するために、スペーサに穴を形成する必要があり、この穴の形成の際にスペーサに亀裂・割れ等が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−638号公報
【特許文献2】特許第4482445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、間隙部に設置されたスペーサに亀裂・割れ等を生じることなく、強固に固定することができるスペーサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 骨と骨との間隙部に設置して固定されるスペーサであって、
前記間隙部に設置されるブロック体と、該ブロック体を前記間隙部に固定する板状体とを有し、
前記板状体は、該板状体に一体化され前記ブロック体を保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記板状体の当該保持部を支持する面から突出し、互いに対向配置された一対の腕部と、該腕部に設けられた係止部とを備えており、該係止部が前記ブロック体を係止することにより、前記ブロック体が前記板状体に保持されることを特徴とするスペーサ。
【0011】
これにより、間隙部に設置されたスペーサ(ブロック体)に亀裂・割れ等を生じることなく、スペーサを間隙部に強固に固定することができる。
【0012】
(2) 前記係止部は、前記腕部の対向する方向に突出している爪である上記(1)に記載のスペーサ。
【0013】
これにより、ブロック体を引っ掛けて固定することができ、その結果、板状体にブロック体が固定される。
【0014】
(3) 前記係止部は、前記支持する面側の端部とは反対側の端部に設けられている上記(1)または(2)に記載のスペーサ。
【0015】
これにより、ブロック体を係止部で固定することができ、その結果、板状体にブロック体が固定される。
【0016】
(4) 前記ブロック体は、複数の角部を有しており、前記係止部は、前記角部に係止する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスペーサ。
これにより、板状体にブロック体が固定されることとなる。
【0017】
(5) 前記ブロック体は、前記腕部の突出方向に設けられた貫通孔を有しており、前記係止部は、前記貫通孔の縁部に係止する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスペーサ。
これにより、板状体にブロック体が固定されることとなる。
【0018】
(6) 前記係止部は、前記ブロック体に形成された穴の内周面に係止する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスペーサ。
これにより、板状体にブロック体が固定されることとなる。
【0019】
(7) 前記ブロック体は、前記腕部により挾持される上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のスペーサ。
これにより、ブロック体を板状体により、より強固に保持することができる。
【0020】
(8) 前記ブロック体は、セラミックス材料を主材料として構成される上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のスペーサ。
【0021】
セラミックス材料は安定かつ無機質な材料のため、有機物の溶出という生体への負荷がない。
【0022】
(9) 前記板状体は、金属材料または高分子材料を主材料として構成される上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のスペーサ。
【0023】
金属材料または高分子材料は、優れた強度と弾性を有しているため、ブロック体をより強固に間隙部に固定することができる。
【0024】
(10) 棘突起の切断・縦割、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起スペーサもしくは椎弓スペーサである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のスペーサ。
【0025】
本発明のスペーサは、棘突起スペーサまたは椎弓スペーサとして特に好ましく適用される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、糸を用いることなく間隙部にスペーサを固定することができ、さらに、スペーサにスクリュー挿通用の穴を形成することなくプレートで固定することができる。その結果、間隙部に設置されたスペーサに亀裂・割れ等を生じることなく、スペーサが強固に固定されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のスペーサの第1実施形態を示す図である。
【図2】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図3】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図4】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図5】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図6】本発明のスペーサの第1実施形態を製造するための製造方法を示す図である。
【図7】本発明のスペーサの第2実施形態を示す図である。
【図8】本発明のスペーサの第3実施形態を示す図である。
【図9】本発明のスペーサの第4実施形態を示す図である。
【図10】本発明のスペーサの第5実施形態を示す図である。
【図11】本発明のスペーサの第6実施形態を示す図である。
【図12】本発明のスペーサの第7実施形態を示す図である。
【図13】本発明のスペーサの第8実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のスペーサを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、本発明のスペーサを正中縦割式拡大椎弓形成術に用いられる椎弓スペーサに適用した場合を一例に説明する。
【0029】
<第1実施形態>
図1は、本発明のスペーサの第1実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)、図2〜図5は、それぞれ、正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【0030】
<<正中縦割式拡大椎弓形成術>>
まず、本発明のスペーサの第1実施形態を説明するのに先立って、図2〜図5を参照して、正中縦割式拡大椎弓形成術について説明する。なお、図2〜図5中の上側が背側、下側が腹側、である。
【0031】
図2に示すように、椎骨100は、椎体110と、椎体110の後方(図2中の上側)に延び、脊柱管(椎孔)140を形成する椎弓120と、椎弓120の中央部から後方に突出する棘突起130とを有している。
【0032】
[1] まず、図2に示すように、椎骨100における棘突起130を、椎弓120から切断線131において切離(切断)する。
【0033】
[2] 次に、図3に示すように、椎弓120の中央部(正中部)を、例えばエアドリル等を用いて切断する。
【0034】
また、正中面200を境にして椎弓120の根元部の外側に、例えばエアドリル等を用いて溝121a、121bを形成する。
【0035】
この溝121a、121bの深さは、外板のみ削り、内板を削らない程度とする。この溝121a、121bを形成した部位は、ヒンジ部(蝶番)122a、122bとなる。
【0036】
[3] 次に、図4に示すように、ヒンジ部122a、122bを中心に、椎弓120を回動させ、椎弓120の切断した部分を広げる。これにより、切断端部(骨)120a、120b同士の間に間隙部150が形成される。
【0037】
なお、必要に応じて、椎弓120の間隙部150に臨む切断端部120a、120bを整形する。
【0038】
[4] 次に、図5に示すように、間隙部150に、本発明のスペーサ1を挿入した後、スペーサ1が備える貫通孔32にネジ(スクリュー)4を、挿通した状態で切断端部120a、120bの後面124a、124bにネジ止めすることで、スペーサ1を間隙部150内に固定する。これにより、患者の椎弓120と、スペーサ1とで、拡大された椎弓160が形成される。
【0039】
なお、スペーサ1を切断端部120a、120bにネジ4でネジ止めし、スペーサ1を間隙部150内に固定する構成とすることにより、術後早期に、スペーサ1が椎弓120に対して位置ズレするのを防止することができ、切断端部120a、120bと側面12との間における骨癒合を確実に生じさせることができる。
【0040】
また、前述した結紮固定のように、スペーサに形成した貫通孔に糸を挿通して縛る場合と比較して、貫通孔32にネジ4を挿通した状態で後面124a、124bにネジ止めするという単純な作業で、スペーサ1を間隙部150内に強固に固定することができる。
【0041】
さらに、後に詳述するように、ブロック体2が保持部5により板状体3に予め保持(固定)されていることから、ブロック体2にネジで穴を形成する必要がないため、ブロック体2に亀裂・割れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0042】
なお、前記工程[1]において切離された棘突起130を、スペーサ1の後面13の中央(正中)に戻し、スペーサ1に糸等により固定してもよい。
【0043】
また、棘突起130を椎弓120から切離することなく、前記工程[2]において、棘突起130ごと正中面200に沿って切断してもよい。
【0044】
<<スペーサ>>
次に、本発明のスペーサの第1実施形態について、図1および図5を参照して説明する。
【0045】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、スペーサ1を患者の施術部位(間隙部150)に挿入(設置)した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側(脊柱管140側)を「前」、背側(脊柱管140と反対側)を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。
【0046】
図1および図5に示すように、スペーサ1は、間隙部(欠損部)150に設置(挿入)されるブロック体(スペーサ本体)2と、このブロック体2を間隙部150に固定する板状体3とを有している。
【0047】
ブロック体2は、間隙部150に挿入され、拡大された椎弓160を形成するためのものである。
【0048】
このブロック体2は、本実施形態では、図5に示すように、上面視または下面視で、前面11側に凹部を備える略台形状をなしており、複数の角部を有している。
【0049】
このブロック体2において、前面11は、湾曲凹面で構成されており、前面11に対向する後面13は、平面で構成されている。前面11を湾曲凹面で構成することにより、脊柱管140をより大きく(広く)拡大することができ、脊髄神経の圧迫を確実に防止することができる。
【0050】
また、ブロック体2の一対の側面12は、それぞれ、間隙部150に挿入した状態で、椎弓120の切断端部120a、120bが当接する当接面を構成する。
【0051】
なお、このようなブロック体2において、各部の寸法は、それぞれ、次のように設定される。
【0052】
ブロック体2の前後方向の長さ(図1中L)は、5〜12mm程度であるのが好ましく、5〜7mm程度であるのがより好ましい。
【0053】
また、ブロック体2の上下方向の長さ(図1中H)は、5〜12mm程度であるのが好ましく、5〜7mm程度であるのがより好ましい。
【0054】
また、ブロック体2の左右方向の長さ(図1中W1)は、6〜23mm程度であるのが好ましく、10〜21mm程度であるのがより好ましい。
【0055】
また、ブロック体2の左右方向の長さ(図1中W2)は、4〜21mm程度であるのが好ましく、6〜18mm程度であるのがより好ましい。
【0056】
また、前面11の湾曲凹面の平均曲率半径は、20〜120mm程度であるのが好ましく、23〜53mm程度であるのがより好ましい。
【0057】
スペーサ1における各部の寸法を上述した範囲内に設定することにより、ブロック体2に優れた機械的強度をより確実に付与することができる。
【0058】
このようなブロック体2は、セラミックス材料を主材料として構成されたものが好ましい。セラミックス材料は安定かつ無機質な材料のため、有機物の溶出という生体への負荷がない。
【0059】
セラミックス材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等のバイオセラミックスが好ましい。なかでもリン酸カルシウム系化合物は、優れた生体親和性を備えているため、ブロック体2の構成材料として特に好ましい。
【0060】
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのリン酸カルシウム系化合物のなかでもCa/P比が1.0〜2.0のものが好ましく用いられる。
【0061】
このようなリン酸カルシウム系化合物のうち、ハイドロキシアパタイトがより好ましい。ハイドロキシアパタイトは、骨の無機質主成分と同様の構造であるため、優れた生体適合性を有している。また、ブロック体2自体と切断端部120a、120bとの癒合を期待することもできる。
【0062】
また、ブロック体2は、緻密体であっても、多孔質体であってもよいが、多孔質体であるのが好ましい。ブロック体2を多孔質体で構成することにより、ブロック体2内への骨芽細胞の侵入を可能とし、ブロック体2内において骨新生を行うことができ、特にブロック体2を、ハイドロキシアパタイトを主材料として構成する場合、ブロック体2自体と切断端部120a、120bとの確実な癒合を期待することができる。
【0063】
また、多孔質体の気孔率は、0〜90%程度であるのが好ましく、15〜60%程度であるのがより好ましい。これにより、ブロック体2の機械的強度が低下するのを防止しつつ、ブロック体2内への骨芽細胞のより円滑な侵入を可能とし、ブロック体2内における骨新生が促進することとなる。その結果、切断端部120a、120bと側面12との間における骨癒合をより確実かつ早期に生じさせることができる。
【0064】
なお、ブロック体2の構成材料としては、上記セラミックス材料の他、該セラミックス材料とチタン等の生体為害性の小さい金属材料との複合材料等を用いることも可能である。
【0065】
板状体3は、ブロック体2の後面13に接するように配置され、ブロック体2を間隙部150に固定するためのものである。
【0066】
この板状体3は、本体部34と、この本体部34に一体化され、ブロック体2を保持する保持部5とを備えている。
【0067】
本体部34は、その全体形状が、左右方向に長い平板状をなしており、ブロック体2の後面13側において、ブロック体2の2つの端部から共に突出するようになっている。
【0068】
この突出する部分が、ブロック体2を間隙部150に挿入した際に、椎弓120の切断端部120a、120bの後面124a、124bに係合する係合部31として機能する。これにより、ブロック体2(スペーサ1)が脊柱管140側に移動するのが阻止され、ブロック体2による脊髄神経の圧迫を確実に防止することができるため、安全性が高い。
【0069】
また、係合部31は、その厚さ方向に貫通する貫通孔32を有している。この貫通孔32にネジ4を、挿通した状態で切断端部120a、120bの後面124a、124bにネジ止めすることで、ブロック体2が間隙部150内に固定される。
【0070】
さらに、本実施形態のように、本体部34の後面33を平面で構成することにより、例えば、手術の手技として、切離された棘突起130を元の位置に戻す場合には、後面33に対する棘突起130の位置ずれを好適に防止することができる。
【0071】
保持部5は、本体部34の前面35、すなわちこの保持部5を支持する面から突出する一対の腕部51と、これら腕部51の前面35側の端部(基端)と反対側の端部(先端)に設けられた係止部52とを有している。
【0072】
本実施形態では、一対の腕部51は、その全体形状が四角柱状をなしており、互いに対向配置するように、前面35の長手方向における中央付近の縁部にそれぞれ設けられている。
【0073】
また、係止部52は、腕部51と同様に全体形状が四角柱状をなしており、一対の腕部51が対向する方向(前面35の短手方向)に突出して設けられている。かかる構成の係止部52が、ブロック体2を引っ掛けることにより固定する爪として機能する。
【0074】
本実施形態では、この係止部52が、ブロック体2の前面11と上面14とで形成される角部の中央付近およびブロック体2の前面11と下面15とで形成される角部の中央付近において、ブロック体2を係止し、これにより、ブロック体2が板状体3により保持(固定)される。
【0075】
したがって、ブロック体2にネジで穴を形成することなく、板状体3にブロック体2を固定することができるため、ブロック体2に亀裂・割れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0076】
また、本実施形態では、一対の腕部51により、ブロック体2が挾持されるように、腕部51同士の離間距離が設定されている。これにより、ブロック体2を板状体3によりより強固に保持(固定)することができるようになる。
【0077】
さらに、一対の腕部51によりブロック体2を挾持する場合、本体部34、腕部51および係止部52が一体となった板を用意し、この板を、本体部34から腕部51への移行部、および、腕部51から係止部52への移行部で折り曲げることにより板状体3を得る構成とすることによっても、腕部51(保持部5)の弾性を利用することで、ブロック体2を挟みこむことができる。
【0078】
このような板状体3は、金属材料または高分子材料を主材料として構成されたものが好ましい。金属材料と高分子材料は、優れた強度と弾性を有しているため、ブロック体2をより強固に間隙部150内に固定することができる。
【0079】
金属材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、チタンまたはチタン合金であるのが好ましい。チタンまたはチタン合金は、生体適合性が高く、また、優れた強度を有することから板状体3の構成材料として好ましく用いられる。なお、チタン合金としては、特に限定されないが、例えば、Ti−6Al−4Vや、Ti−29Nb−13Ta−4.6ZrのようなTiを主成分とし、Al、Sn、Cr、Zr、Mo、Ni、Pd、Ta、Nb、V、Pt等が添加されたものが挙げられる。また、金属材料としては、形状記憶合金であってもよい。板状体3を形状記憶合金で構成して、体温付近(35度前後)でブロック体を保持可能な形状になるよう設計することで、外的負荷によって万が一、腕部51あるいは係止部52等が変形したとしても、板状体3は、ブロック体2を保持可能な元の形状に復帰する。
【0080】
また、高分子材料としては、各種のものが挙げられるが、特にポリエーテルエーテルケトンが好ましい。この他にもポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸など臨床で使用されているものが挙げられる。
【0081】
また、スペーサ1を構成する各部は、その全体に亘って、角部が丸みを帯びた形状をなしている(R付けがなされている)ものであってもよい。かかる構成とすることにより、スペーサ1を間隙部150に挿入する際に、周辺組織を傷付けるのを防止することができるという利点が得られる。
【0082】
なお、本明細書中において、上述した「間隙部」とは、本実施形態のように椎弓拡幅のために形成される空間の他、例えば、腸骨などの自家骨採取によって形成される空間や、事故や病気で骨を失った空間等を含むこととする。
【0083】
また、貫通孔32は、本実施形態のように、後面13側から見たときの形状が真円をなすものの他、例えば、三角形、四角形のような外角形や、楕円のような長円をなすものであってもよい。なお、長円をなすものとした場合には、ネジ4によりネジ止めする後面124a、124bの位置の選択の幅が広がるという利点が得られる。
【0084】
以上のようなスペーサ1は、例えば、次のようにして製造することができる。
なお、以下では、ブロック体2がセラミックス材料で構成され、板状体3が金属材料で構成されるスペーサ1を製造する場合を一例に説明する。
【0085】
図6は、本発明のスペーサの第1実施形態を製造するための製造方法を示す図であり、(a)はブロック体および板状体の構成を示す斜視図、(b)ブロック体を板状体で固定する方法を説明するための斜視図である。
【0086】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、図6に示すスペーサ1を患者の施術部位(間隙部150)に挿入(装着)した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側(脊柱管140側)を「前」、背側(脊柱管140と反対側)を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。
【0087】
[A]まず、図6(a)に示すような、ブロック体2および板状体3をそれぞれ用意する。
【0088】
[A−1]ブロック体2は、その形状に対応する成形体を得た後、成形体を焼成することにより得ることができる。
【0089】
成形体は、例えば、I:セラミックス原料粉末を含むスラリーを、所定の型内に充填して、成形する方法、II:前記スラリーに対して、沈殿または遠心分離により固形分を偏在させる方法、III:前記スラリーを所定の型内に入れ、脱水処理し、固形分を型内に残す方法、IV:圧縮成形法(粉末の場合、圧粉成形)、V:セラミックス原料粉末と水状の糊とを混ぜ、これを型に入れ乾燥させる方法等、種々の方法により製造することができる。
【0090】
なお、前記スラリーは、予めスプレードライ法などにより造粒した二次粒子をセラミックス原料粉末として含むものであっても良い。
【0091】
また、必要に応じて、成形体を、旋盤、ドリル等を用いた切削加工によりその形状、大きさ等を調整するようにしてもよい。
【0092】
成形体を焼成する際の焼成温度は、例えば、セラミックス材料がリン酸カルシウム系化合物である場合、700〜1300℃程度であるのが好ましい。
【0093】
[A−2]板状体3は、ブロック状をなす金属製の緻密体を用意し、この緻密体を、板状体3の形状、大きさ等に成形することで容易に得ることができる。
【0094】
この緻密体の成形には、例えば、レーザーカット、ウォータージェット、放電ワイヤー加工、超音波切断のような薄片切断加工法を用いることができる。
【0095】
なお、本実施形態では、係止部52を、図6(a)に示すように、腕部51が対向する方向に突出させることなく、腕部51の長手方向に腕部51と一体的に形成しておく。
【0096】
また、板状体3は、平板状をなす金属製の緻密体を用意し、この平板状の緻密体を、所望の形状に切り出すとともに、図6(a)のように腕部51を折り曲げ成形することで得るようにしても良い。
【0097】
[B]次に、図6(b)に示すように、ブロック体2の後面13と板状体3(本体部34)の前面35とが互いに接するように、一対の腕部51同士の間に、ブロック体2を配置し、その後、係止部52を、一対の腕部51が対向する方向に折り曲げることで爪を形成する。これにより、係止部52によりブロック体2が係止されることとなる。
以上のようにして、ブロック体2が板状体3により保持されたスペーサ1が得られる。
【0098】
<第2実施形態>
次に、本発明のスペーサの第2実施形態について説明する。
【0099】
図7は、本発明のスペーサの第2実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0100】
以下、第2実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0101】
図7に示すスペーサ1は、ブロック体2および保持部5の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0102】
すなわち、第2実施形態のスペーサ1において、係止部52は、腕部51の端部ではなく、そのほぼ中央に設けられている。また、ブロック体2の上面14および下面15の係止部52に対応する位置に穴21がそれぞれ設けられている。
【0103】
そして、これら穴21に係止部52が挿入されることで、穴21の内周面に係止部52が係止し、これにより、ブロック体2が板状体3により保持(固定)される。
【0104】
このような第2実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0105】
<第3実施形態>
次に、本発明のスペーサの第3実施形態について説明する。
【0106】
図8は、本発明のスペーサの第3実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0107】
以下、第3実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0108】
図8に示すスペーサ1は、ブロック体2および保持部5の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0109】
すなわち、第3実施形態のスペーサ1において、一対の腕部51は、本体部34の短手方向に沿って互いに対向配置するように、前面35の中央付近にそれぞれ設けられている。また、係止部52は、一対の腕部51が対向する方向の逆方向(前面35の長手方向)に突出して設けられている。さらに、ブロック体2の腕部51に対応する位置には、後面13と前面11とを貫通する貫通孔22が設けられている。
【0110】
そして、貫通孔22に腕部51が挿入され、貫通孔22の縁部に係止部52が係止することで、ブロック体2が板状体3により保持(固定)される。
【0111】
このような第3実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0112】
<第4実施形態>
次に、本発明のスペーサの第4実施形態について説明する。
【0113】
図9は、本発明のスペーサの第4実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0114】
以下、第4実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0115】
図9に示すスペーサ1は、板状体3が備える保持部5の数が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0116】
すなわち、第4実施形態のスペーサ1おいて、図9に示すように、板状体3は、左右方向、すなわちその長手方向に沿って、保持部5を2つ(複数)備えている。
【0117】
このような第4実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0118】
<第5実施形態>
次に、本発明のスペーサの第5実施形態について説明する。
【0119】
図10は、本発明のスペーサの第5実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0120】
以下、第5実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0121】
図10に示すスペーサ1は、ブロック体2および保持部5の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0122】
すなわち、第5実施形態のスペーサ1において、一対の腕部51は、その全体形状が平板状をなしており、本体部34の短手方向に沿って互いに対向配置するようにそれぞれ設けられている。また、係止部52は、一対の腕部51が対向する方向の逆方向(前面35の長手方向)に突出して設けられている。さらに、ブロック体2の腕部51に対応する位置には、後面13と前面11とを貫通する貫通孔22が、各腕部51に対応して2つ設けられている。
【0123】
そして、貫通孔22に腕部51が挿入され、貫通孔22の縁部に係止部52が係止することで、ブロック体2が板状体3により保持(固定)される。
【0124】
このような第5実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0125】
<第6実施形態>
次に、本発明のスペーサの第6実施形態について説明する。
【0126】
図11は、本発明のスペーサの第6実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0127】
以下、第6実施形態のスペーサ1について、前記第5実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0128】
図11に示すスペーサ1は、板状体3、特に本体部34の構成が異なる以外は、図10に示すスペーサ1と同様である。
【0129】
すなわち、第6実施形態のスペーサ1において、本体部34は、一対の腕部51が形成されている位置よりも内側(係合部31と反対側)の領域で、その形成が省略されている。
【0130】
このように本体部34の一部の形成を省略したとしても、貫通孔22の縁部に係止部52が係止することで、ブロック体2を板状体3により保持(固定)することができる。
【0131】
このような第6実施形態のスペーサ1によっても、前記第5実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0132】
<第7実施形態>
次に、本発明のスペーサの第7実施形態について説明する。
【0133】
図12は、本発明のスペーサの第7実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0134】
以下、第7実施形態のスペーサ1について、前記第6実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0135】
図12に示すスペーサ1は、保持部5、特に係止部52の構成が異なる以外は、図11に示すスペーサ1と同様である。
【0136】
すなわち、第7実施形態のスペーサ1において、一対の係止部52は、各側面12を越えて、ブロック体2の端部から共に突出するように設けられている。この突出する部分が、ブロック体2を間隙部150に挿入した際に、椎弓120の切断端部120a、120bに係合する係合部として機能するため、ブロック体2を間隙部150内により強固に固定することができる。
【0137】
このような第7実施形態のスペーサ1によっても、前記第6実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0138】
<第8実施形態>
次に、本発明のスペーサの第8実施形態について説明する。
【0139】
図13は、本発明のスペーサの第8実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0140】
以下、第8実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0141】
図13に示すスペーサ1は、ブロック体2および本体部34の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0142】
すなわち、第8実施形態のスペーサ1において、本体部34の中央付近に、前面35と後面33とを貫通する貫通孔36が設けられている。また、ブロック体2の貫通孔36に対応する位置には、後面13から突出する凸部23が設けられている。
【0143】
そして、貫通孔36内に凸部23が配置され、貫通孔36と凸部23とが係合することで、板状体3に対するブロック体2の位置ズレ、特に、ブロック体2の左右方向に対する位置ズレをより的確に防止または抑制することができる。なお、貫通孔36と凸部23とはそれぞれ複数設けても良い。
【0144】
このような第8実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0145】
以上、本発明のスペーサを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0146】
例えば、本発明のスペーサにおいて、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0147】
例えば、本発明では、前記第1〜第8実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【0148】
さらに、前記実施形態のスペーサでは、いずれもブロック体2の上面視での形状がほぼ台形状のものについて示したが、本発明のスペーサは、挿入部の全体形状が円柱状や四角柱状のような柱状をなすものであってもよい。
【0149】
なお、ブロック体2として、前記実施形態のように後面13が平面ではなく、湾曲凹面をなす前面11に対応する湾曲凸面で構成される場合には、かかる湾曲凸面の形状に追従するように、板状体3(本体部34)の上面および下面を、直線状ではなく湾曲状(円弧状)の形状をなすものとすればよい。
【0150】
また、前記実施形態では、スペーサ1を正中縦割式拡大椎弓形成術に用いる場合について示したが、本発明では、スペーサを、椎弓の一方側(片側)を切断し、他方側をヒンジのようにして椎弓を開くことにより脊柱管を拡大する片側侵入片開き式脊柱管拡大術に用いるようにしてもよい。
【0151】
さらに、スペーサ1を、椎弓に形成された間隙部に設置して固定する他、腸骨、大腿骨、頭蓋骨等の各種骨に形成された間隙部に配置して固定することもできる。
【符号の説明】
【0152】
1 スペーサ
11 前面
12 側面
13 後面
14 上面
15 下面
2 ブロック体
21 穴
22 貫通孔
23 凸部
3 板状体
31 係合部
32 貫通孔
33 後面
34 本体部
35 前面
36 貫通孔
4 ネジ
5 保持部
51 腕部
52 係止部
100 椎骨
110 椎体
120 椎弓
120a、120b 切断端部
121a、121b 溝
122a、122b ヒンジ部
124a、124b 後面
130 棘突起
131 切断線
140 脊柱管
150 間隙部
160 拡大された椎弓
200 正中面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨と骨との間隙部に設置して固定されるスペーサであって、
前記間隙部に設置されるブロック体と、該ブロック体を前記間隙部に固定する板状体とを有し、
前記板状体は、該板状体に一体化され前記ブロック体を保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記板状体の当該保持部を支持する面から突出し、互いに対向配置された一対の腕部と、該腕部に設けられた係止部とを備えており、該係止部が前記ブロック体を係止することにより、前記ブロック体が前記板状体に保持されることを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
前記係止部は、前記腕部の対向する方向に突出している爪である請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
前記係止部は、前記支持する面側の端部とは反対側の端部に設けられている請求項1または2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記ブロック体は、複数の角部を有しており、前記係止部は、前記角部に係止する請求項1ないし3のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項5】
前記ブロック体は、前記腕部の突出方向に設けられた貫通孔を有しており、前記係止部は、前記貫通孔の縁部に係止する請求項1ないし3のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項6】
前記係止部は、前記ブロック体に形成された穴の内周面に係止する請求項1ないし3のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項7】
前記ブロック体は、前記腕部により挾持される請求項1ないし6のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項8】
前記ブロック体は、セラミックス材料を主材料として構成される請求項1ないし7のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項9】
前記板状体は、金属材料または高分子材料を主材料として構成される請求項1ないし8のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項10】
棘突起の切断・縦割、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起スペーサもしくは椎弓スペーサである請求項1ないし9のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項1】
骨と骨との間隙部に設置して固定されるスペーサであって、
前記間隙部に設置されるブロック体と、該ブロック体を前記間隙部に固定する板状体とを有し、
前記板状体は、該板状体に一体化され前記ブロック体を保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記板状体の当該保持部を支持する面から突出し、互いに対向配置された一対の腕部と、該腕部に設けられた係止部とを備えており、該係止部が前記ブロック体を係止することにより、前記ブロック体が前記板状体に保持されることを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
前記係止部は、前記腕部の対向する方向に突出している爪である請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
前記係止部は、前記支持する面側の端部とは反対側の端部に設けられている請求項1または2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記ブロック体は、複数の角部を有しており、前記係止部は、前記角部に係止する請求項1ないし3のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項5】
前記ブロック体は、前記腕部の突出方向に設けられた貫通孔を有しており、前記係止部は、前記貫通孔の縁部に係止する請求項1ないし3のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項6】
前記係止部は、前記ブロック体に形成された穴の内周面に係止する請求項1ないし3のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項7】
前記ブロック体は、前記腕部により挾持される請求項1ないし6のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項8】
前記ブロック体は、セラミックス材料を主材料として構成される請求項1ないし7のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項9】
前記板状体は、金属材料または高分子材料を主材料として構成される請求項1ないし8のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項10】
棘突起の切断・縦割、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起スペーサもしくは椎弓スペーサである請求項1ないし9のいずれかに記載のスペーサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−85711(P2013−85711A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229045(P2011−229045)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]