説明

スポンジゴム成形用組成物、スポンジゴム成形体、及びウェザーストリップ

【課題】メタリック塗装体と当接してシール効果を発揮するスポンジゴム成形体を長期間反復継続して使用しても、塗装体がスポンジゴム成形体と当接する箇所が黒化現象を起こすのを防止する。
【解決手段】質量部で、EPDM100部、カーボンブラック70部、軽質炭酸カルシウム30部、パラフィン系プロセスオイル50部、ステアリン酸1部、亜鉛華5部,アゾジカルボン酸アミド3部、発泡助剤1.5部、硫黄1.5部、加硫促進剤(シクロへキシルベンゾチアジルスルホンアミド)1.8部、加硫促進剤(ジンクジブチルチオカーバメート) 0.3部及びゼオライト100部から成るスポンジゴム用配合物を、通常の成型法によりウェザーストリップにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジゴム成形用組成物、スポンジゴム成形体、及びウェザーストリップに関する。より詳細に述べると、本発明は、メタリック塗料塗装体と長期間当接させても当接箇所に黒化現象を発生させないスポンジゴム成形体を製造するためのスポンジゴム成形用組成物、及びスポンジゴム成形体、並びに斯かるスポンジゴム成形体から成る自動車用ウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製の薬缶や鍋を長期間使用していると、底が黒くなることがある。この現象を「アルミの黒化現象」という。これは、アルミニウムと空気中の酸素がアルミニウムの表面で酸化反応を起こしAlの極薄い皮膜を生成し、さらにAlが周囲の化合物と複雑な化学反応を起こすことが主たる原因である。
【0003】
これに類似した「黒化現象」が、自動車の開口部に装着したウェザーストリップが、車体パネルと当接する箇所にも発生することがある。以下、自動車の車体パネルの黒化現象に関して説明する。
【0004】
自動車の開口部の板金フランジには、防水、防音、防塵等の目的でウェザーストリップが嵌合・装着されている。自動車のドアの周囲に取り付けられているウェザーストリップの車体パネルとの状態の数例を図1及び図4を参照して説明する。
【0005】
図1は、ドアの周囲にウェザーストリップを装着した自動車の斜視図である。図2は図1のA−A面の断面図である。車体パネル1のフランジ2には、オープニングウェザーストリップインナ3が嵌合・装着されている。オープニングウェザーストリップインナ3は、ソリッド部4とスポンジシール部5から構成されていて、フロントドア6Fを開閉する度に、スポンジシール部5が、フロントドア6Fのパネルと当接して、ドア開閉時の衝撃を吸収すると同時に、防水、防音、防塵等の効果を奏功するようになっている。一方、フロントドア6Fには、オープニングウェザーストリップアウタ7が装着されている。オープニングウェザーストリップアウタ7は、ソリッド部8とスポンジシール部9から構成されていて、フロントドア6Fを開閉する度に、スポンジシール部9が、車体パネル1当接して、ドア開閉時の衝撃を吸収すると同時に、防水、防音、防塵等の効果を奏功するようになっている。
【0006】
図3は、図1のB−B面の断面図である。車体パネル10のフランジ11には、オープニングウェザーストリップインナ12が嵌合・装着されている。オープニングウェザーストリップインナ12は、ソリッド部13とスポンジシール部14から構成されていて、フロントドア6Fを開閉する度に、スポンジシール部14が、フロントドア6のパネル15と当接して、ドア開閉時の衝撃を吸収すると同時に、防水、防音、防塵等の効果を奏功するようになっている。一方、フロントドア6Fには、フロントドア6Fのパネル15と一体に成形されているリテーナ16に、オープニングウェザーストリップアウタ17が嵌合・装着されている。オープニングウェザーストリップアウタ17は、取付基部18と、スポンジシール部19から構成されていて、フロントドア6Fを開閉する度に、スポンジシール部19が、車体パネル10に当接して、ドア開閉時の衝撃を吸収すると同時に、防水、防音、防塵等の効果を奏功するようになっている。なお、20はフロントドア・ガラスである。
【0007】
図4は、図1のC−C面の断面図である。フロントドア6のFパネルにクリップ21によって、オープニングウェザーストリップアウタ22が装着されている。オープニングウェザーストリップアウタ22は、取付基部23と、スポンジシール部24から構成されていて、フロントドア6Fを開閉する度に、スポンジシール部24が、ピラー25に当接して、ドア開閉時の衝撃を吸収すると同時に、防水、防音、防塵等の効果を奏功するようになっている。一方、ピラー25に設けられたフランジ26には、オープニングウェザーストリップインナ27が嵌合・装着されている。オープニングウェザーストリップインナ27は、ソリッド部28とスポンジシール部29から構成されていて、フロントドア6Fを開閉する度に、スポンジシール部29が、フロントドア6のパネルと当接して、ドア開閉時の衝撃を吸収すると同時に、防水、防音、防塵等の効果を奏功するようになっている。同じように、ウェザーストリップがリアドア6Rにも設けられているが、構造と作用が同じであるので、説明は割愛する。
【0008】
上述したような構造を有するウェザーストリップが、自動車の開口部の周縁に装着されていて、開口部が開閉される度に、ウェザーストリップのスポンジシール部が、スポンジシール部が、車体パネルに当接して、ドア開閉時の衝撃を吸収すると同時に、防水、防音、防塵等の効果を奏功するようになっている。
【0009】
なお、図では、ウェザーストリップを、リテーナ、クリップにより取り付ける方法を示したが、そのほかにサッシュに嵌合する方法等があり、本発明では、ウェザーストリップを、取り付ける方法は限定されない。
【0010】
自動車の使用期間の殆どにおいてウェザーストリップのスポンジシール部が、車体パネルと当接しており、その長さは通常の乗用車で約4メートルにも及ぶ。また、反復継続して当接する回数は数万回になるものと推断される。
【0011】
近年、自動車を長期間使用する間に、スポンジシール部が、車体パネルに当接する箇所の塗装膜が、黒色に変化することがある。特に、この問題は、メタリック塗装をしている塗膜に多く発生している。この事実は、メタリック塗装をした鋼板と、メタリック塗装をしてない鋼板との対照試験により確認されている。また、スポンジゴムと、ソリッドゴムとの対照試験の結果、この現象はスポンジゴムに発生すること、即ち、スポンジゴムの製造に使用する発泡剤が影響していることも確認されている。
【0012】
この問題を解決する方法が提案されており、特開平9−310036号公報は、概略、メタリックベ−スのアルミニウム顔料の含有量が、0.05重量%以下である自動車用メタリック上塗り塗膜を開示している。
【0013】
然しながら、この従来法は、自動車用塗料の改良からの視点であり、自動車用塗料を直接製造しないウェザ−ストリップ業者、及び自動車製造業者にとっては、実施が困難で現実的でない方法である。
【0014】
【特許文献1】9−310036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、メタリック塗装した塗被体と当接してシール効果を発揮するスポンジゴム成形体を長期間反復継続して使用しても、塗装体がスポンジゴム成形体と当接する箇所に黒化現象が発生するのを防止することである。
【0016】
本発明が解決しようとする別の課題は、メタリック塗装した塗被体と当接してシール効果を発揮するスポンジゴム成形体であって、長期間反復継続して使用しても、塗装体がスポンジゴム成形体と当接する箇所に黒化現象が発生しないゴム成形体を製造するための組成物を提供することである。
【0017】
本発明が解決しようとするさらに別の課題は、メタリック塗装した塗被体と当接してシール効果を発揮するスポンジゴム成形体であって、長期間反復継続して使用しても、塗装体がスポンジゴム成形体と当接する箇所に黒化現象が発生させないスポンジゴム成形体を自動車用ウェザーストリップとして使用することを提案することである。
【0018】
本発明者は、課題を解決する手段を策定するために、スポンジゴムの製造に使用する発泡剤が、自動車塗膜に及ぼす影響を先ず理論解析した。
【0019】
図5は、自動車の塗装膜の一例を示す断面図である。自動車ボディー用鋼板30には、水性塗料を主展色剤としたカチオン電着塗料の約20μmの下塗り塗膜31が形成されている。下塗り塗膜31の表面には、約1〜2μmの中塗り塗膜32が形成されている。中塗り塗膜32の表面には約20μmのメタリック塗膜33が形成されている。メタリック塗膜33の表面には約50μm以下のクリア塗膜34が形成されている。このようにして、鋼板41は、総厚約0.1mm以下の塗膜が形成されている。
【0020】
クリア塗膜45は、アルミ箔等を含まず、白及び各種の着色顔料の配合により色彩設計されたソリッドカラーである。ソリッドカラーに使用される樹脂は、通常、アクリルメラミン樹脂、メラミンアルキッド樹脂等である。クリア塗膜45は、塗膜の外観品質として、塗布面の鮮映性、平滑性、肉持感など、塗膜の物理的品質として、塗膜の硬さ、付着性、可撓性、耐衝撃性、耐候性など、塗膜の化学的品質として、塗膜の耐水性、耐湿性、耐薬品性、防食性などが優れていることが要求される。
【0021】
メタリック塗膜44は、主として、鱗片状のアルミ箔、或いはアルミフレーク、若しくは顔料をコーティングしたアルミ箔、或いはアルミフレークを、通常、アクリルメラミン樹脂に分散した塗料で、色彩に金属感、光輝感度を持たせた塗膜である。
【0022】
ところで、メタリック塗料に使用されているアルミニウムは、本来、酸及びアルカリに溶解し、腐食しやすい金属である。一般に、アルミニウムが、錆びにくいとされているのは、空気中で、酸にもアルカリにも侵されない酸化物(Al)の薄い膜を形成し、内部を保護するからである。然しながら、空気中で自然に形成されるAl膜は、極めて薄く、高々5μmの厚さであり、十分な耐食性をもつものではない。
【0023】
そこで、アルミニウムを陽極酸化して厚さ5〜100μmのAlの耐食性被膜を形成することが行われている。電解酸化直後の被膜は、γ−Alで多孔質であるため、4−5気圧の水蒸気で30〜60分間処理して、γ−Al−Hにして封孔処理されている。
【0024】
メタリック塗料に使用されているアルミニウム箔或いはフレークが、アルミニウムをこのようにし処理して厚さ5〜100μmのγ−Al−Hの耐食性被膜を形成したものか否かは不分明であるが、たとえアルミニウムの表面に厚さ5〜100μmのγ−Al−Hの耐食性被膜を形成したものを使用していたとしても、長期間使用している間に、下記のような現象が発生することが考えられる。
【0025】
アルミニウムが、外観が金属光沢、可撓性に富む、比重(d20)が約2.7、熱膨張率(10−4−1)が0.2313で良伝導体であるのに反し、γ−Al−Hの耐食性被膜は、外観が無色透明、極めて硬い、比重(d20)が約4.0、熱膨張率(10−4−1)が0.0080で、絶縁体という物性をもっている。
【0026】
このように、アルミニウムと、γ−Al−Hの耐食性被膜は、全く異種の材料で、それらが貼り合わされた状態である。従って、長期使用による寒熱サイクルによる寸法変化の違いにより、硬いγ−Al−Hの耐食性被膜にクラックが発生したり、或いは層間剥離を起こし、耐食性が劣化することが考えられる。
【0027】
ところで、スポンジゴムの成形体を製造するには、添加剤として発泡剤、発泡助剤、加硫促進剤を配合している。
【0028】
発泡剤としては、無機系発泡剤として下記のものが例示される。
(1)炭酸アンモニア、正確には重炭酸アンモニアとアンモニウムカーバイドのダブルソルト(NH)HCO=(NH)(NH)CO。これは、炭酸ガス(CO)、アンモニア(NH)と、水を発生する。
(2)重炭酸ソーダ(NaHCO)。これは、炭酸ガス、水を発生し、固体として炭酸ソーダが残る。
(3)亜硝酸ソーダ(NaNO)と塩化アンモニウム(NHCl)の等モル混合物。
(4)ニトロユリア(NHCONHNO
【0029】
有機機系発泡剤として下記のものが例示される。
(イ)ジニトロソペンタメチレンテトラミン(Dinitroso Pentamethylene Tetramine)
略称:DPTまたはDNPT
化学式:(CH(NO)
発生ガスの成分:N 91.4%、CO 1.8%、その他 5.8%
発生ガス量:200〜270mL/g
【0030】
(ロ)N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタールアミド(N,N'-Dimethyl-N,N'-Dinitrosoterephthalamide)
化学式:(CH(NO) (CO)(C
発生ガスの成分:N
発生ガス量:115mL/g
【0031】
(ハ)ベンゼンスルホニルヒドラジド(Benzenesulfonyl-hydraside)
化学式:C−SONHNH
発生ガスの成分:N
発生ガス量:130mL/g
【0032】
(ニ)(P−P’)-オキシビス(ベンゼントルエンスルホニルヒドラジド)(P−P’)Oxybis(benzenesulfonyl-hydraside)
化学式:NHNHSO−C−O−C−SONHNH
発生ガスの成分:Nと水
発生ガス量:120〜125mL/g
【0033】
(ホ)アゾビスイソブチロニトリル(Azobisiso butyronitril)
化学式:NCC(CHN=N(CHCCN
発生ガスの成分:N
発生ガス量:130〜155mL/g
【0034】
(ヘ)アゾジカルボンアミド(Azodicarbonamide)
化学式:HN−CO−N=N−CO−NH
発生ガスの成分:N、CO、CO
発生ガス量:250〜300mL/g
【0035】
発泡助剤としては、
(A)尿素系発泡助剤
尿素系発泡助剤は、DPTにもACにも利用される。
(B)有機系発泡助剤
ゴム用にDPTを使用するときは、サリチル酸を使用することもある。また、加硫促進助剤として有用なステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸も有効な助剤である。
(C)金属塩系発泡助剤
主としてACに使用され、主に脂肪酸の亜鉛、カルシウム、鉛、バリウム等の塩が使用される。
【0036】
以上を総覧すると、無機系、或いは有機系発泡剤の殆どは、それ自体がアンモニア、或いは尿素に変化する官能基を有していること、或いは成形工程中の熱分解によりアンモニア或いは尿素を発生することが分かる。
【0037】
ところで、A(1mol)+B(1mol)→AB(1mol)+HO(1mol)のような反応を行わせた場合、化学量論的にいえば、A1molとB1molからAB1molと水1molが生成されていることを示しているが、実際の反応では、あたかも反応が途中で停止したかのように、A、B、AB、及び水の混合物が生成される。この場合、反応を行う際の条件(たとえば、温度)によっても異なるが、反応が左辺、或いは右辺に一方的にかたよることはない。これが、いわゆる化学平衡理論である。
【0038】
この化学平衡理論を、たとえば、DPTと発泡助剤である尿素との反応に適用する。DPTに尿素を添加し、これをゴム組成物中で熱分解させるときの反応は下記の通りである:
3(CH(NO) +8CO(NH→5/2(CH
+6N+6HO+4NHCONHCOHH
この場合も、化学量論的にいえば、DPT3モルと尿素8モルから、(CHが5/2モルと、Nが6モル、水が6モル、ビュレット(NHCONHCOHH )が4モル生成されることを示しているが、実際の反応では、DPTと、尿素と、(CH)6N4と、Nと、水と、ビュレット(NHCONHCOHH )の混合物が生成されている。
【0039】
このように考えると、上述した無機系及び有機系発泡剤をゴム組成物中で熱分解させると、熱分解を起こして、炭酸ガスや、アンモニア、或いはアンモニアに変化するガスを発生するが、反応系に、アンモニア変化する官能基を含んだ無機系及び有機系発泡剤、或いは発泡助剤が、そのまま残留することが分かる。
【0040】
ところで、メタリック塗料に使用されているアルミニウム箔或いはフレークの表面に形成されているγ−Al−Hの耐食性被膜は、金属アルミニウムとは全く異種の材料で、長期使用による寒熱サイクルによる寸法変化の違いにより、硬いγ−Al−Hの耐食性被膜にクラックが発生し、或いは層間剥離を起こし、耐食性が低下すると考えられることは前述した通りである。また、アルミニウムが、本来、酸及びアルカリに溶解し、腐食しやすい金属であることは前述した通りである。
従って、メタリック塗料に使用されているアルミニウム箔或いはフレークの表面にクラックが発生し、或いは層間剥離が発生し、さらにメタリック塗膜12を保護しているクリア塗膜13が何らかの原因で破壊され、水が介在すると、前記のアンモニア(NH)が、水との反応により、耐食性が低下したアルミニウム箔或いはフレークを侵食すると考えられる。
【0041】
また、たとえ、メタリック塗膜12を保護しているクリア塗膜13が物理的な原因で破壊されなくても、前述した無機系及び有機系発泡剤が、スポンジ製造工程中の熱分解により発生するアンモニア(NH)及び前記化学平衡理論により明らかにした反応系に残留している無機系及び/又は有機系発泡剤、発泡助剤との相乗的な化学作用により、クリア塗膜13が化学的に侵食され、クリア塗膜の直下のメタリック塗膜との間にボアが形成され、その結果、同じように黒化現象が発生する。
【0042】
また、表面にクラックが発生、或いは層間剥離が発生して耐食性が低下し、メタリック塗膜12を保護しているクリア塗膜13が何らかの原因で破壊されると、当然、アルミニウム箔或いはフレークが直接空気中の酸素と化合して、酸化反応を起こしAlの極薄い皮膜を生成し、さらにAlが周囲の化合物と複雑な化学反応を起こし、黒化現象を起こすと考えられる。この酸化現象と前述した腐食現象が複合的に発生し、一層黒化現象が昂進することが考えられる。
【0043】
前述したメタリック塗料に使用されているアルミニウム箔或いはフレークの黒化現象を防止するには、前述した無機系、或いは有機系発泡剤が、スポンジ製造工程中の熱分解により発生するアンモニア及び反応系に残留している無機系、又は有機系発泡剤、発泡助剤としての尿素等アルミニウムを腐食させるガス、化合物を除去することである。
【0044】
発明者等は、従来から吸着剤として使用されているゼオライト、活性炭等無機系多孔質吸着剤を、スポンジゴム成形体を製造する工程でゴム配合物に添加して、熱分解の初期段階でその吸着効果を確認した。その結果、ゼオライト、活性炭、セピオライト、ハイドロタルサイト等無機系多孔質吸着剤、特に、アンモニアの場合、それが塩基性であることから、表面を改質して酸性官能基を付加した無機系多孔質吸着剤が効果的であることを確認し、本発明を完成した。
【0045】
本発明で使用される無機系多孔質吸着剤は、ゼオライト、活性炭、セピオライト、ハイドロタルサイト、セラミックス等従来からガスの吸着に使用されているものである。従って、無機系多孔質吸着剤に関する詳細な説明は割愛する。
【0046】
本発明で使用する無機系多孔質吸着剤の配合量は、通常のゴム用添加剤を配合したスポンジゴム用組成物に、5〜200phr、好ましくは60〜150phr、最も好ましくは90〜120phrである。ただし、この配合比率は、発泡剤、発泡助剤の種類、発生ガスの吸着量、未加硫生地の粘度、諸物性を勘案して決定されるべきである。
【0047】
本発明で無機系多孔質吸着剤の配合量を5〜200phrとすることにより、成形後のアンモニア、尿素の残存量を300mg/kg以下とすることができ、アルミニウムの腐食による塗装の黒化現象を防止できる。
【0048】
本発明において、無機系多孔質吸着剤の配合量が5phr以下の場合、アンモニアガス、或いは尿素の吸着効果がよくない。逆に、無機系多孔質吸着剤の配合量が200phr以上の場合、成形加工性がわるくなるので好ましくない。
【0049】
本発明において、無機系多孔質吸着剤をゼオライトとした場合、同じ比重の製品を得るための発泡剤と発泡助剤との最も好ましい例は、ADCA:発泡助剤=3phr:1.5phrである。OBSHとした場合、6phr、DPTの場合DPT:発泡助剤=2.5phr:2.5phrである。
【課題を解決するための手段】
【0050】
従って、上記課題は、下記により解決される。
(1)発泡剤、及び発泡助剤並びに通常のゴム用添加剤を配合したスポンジゴム用配合物に、少なくとも1種の無機系多孔質吸着剤を5〜200phr配合し、成形後の金属アルミニウム腐食物質の残存量を300mg/kg以下としたスポンジゴム用組成物。
【0051】
(2)上記(1)において、金属アルミニウム腐食物質が、アンモニア及び/又は尿素とすること。
【0052】
(3)上記(1)又は(2)のスポンジゴム用組成物を成形してスポンジゴム成形体とすること。
【0053】
(4)上記(1)又は(2)のスポンジゴム成形体を自動車用ウェザーストリップとして使用すること。
【発明の効果】
【0054】
請求項1の発明により、成形後の金属アルミニウム腐食物質の残存量を300mg/kg以下であって、それ自体が独立した商品として商取引の対象になりうるスポンジゴム用組成物が提供される。
【0055】
請求項2の発明により、発泡剤並びに通常のゴム用添加剤を配合したスポンジゴムを熱分解したときに発生する金属アルミニウム腐食物質が、主としてアンモニア及び/又は尿素であるので、金属アルミニウムの腐食を未然に防止できる。
【0056】
請求項3の発明により、スポンジゴム成形後、メタリック塗装した金属或いはプラスチックに、シール材として長期間反復継続して当接させても、当接箇所の黒化現象を発生させないので用途が拡大する。
【0057】
請求項4の発明により、成形後、自動者用ウェザーストリップとして使用することにより、メタリック塗装した車体パネルと長期間反復継続して当接させても、車体パネルの当接箇所の黒化現象が発生しない。
【0058】
請求項1〜4の発明により、成形後、アンモニアガス、或いは尿素の残存量が300mg/kg以下となるので、アルミニウムの腐食による塗装の黒化現象を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、発明を実施するための最良の形態を、参考例及び実施例をもって説明する。
【実施例1】
【0060】
下記の組成によりコ−ナ用ウェザーストリップを製造するための配合物を、ゼオライト無添加で製造した。
成 分 部
EPDM(日本合成ゴム(株)製「EPDM EP35」) 100
カーボンブラック(東海カーボン製「FEF」) 70
軽質炭酸カルシウム(白石工業製) 30
パラフィン系プロセスオイル(出光製) 50
ステアリン酸(日本油脂製) 1
亜鉛華(正同化学製) 5
発泡剤(ADCA)(永和化成製「AC#3」) 3
発泡助剤(永和化成製「M3」) 1.5
ゼオライト 100
硫黄(鶴見化学) 1.5
加硫促進剤(シクロへキシルベンゾチアジルスルホンアミド) 1.8
加硫促進剤(ジンクジブチルチオカーバメート) 0.3
【0061】
参考例1の配合物を、ウェザーストリップを製造すると同じ条件で成型し、ゴム中のアンモニア、尿素の残存量を測定した。この試験を5回繰り返し、その平均値をとった所、100mg/kgであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
上述したように、発泡剤、及び発泡助剤並びに通常のゴム用添加剤を配合したスポンジゴム用配合物に、少なくとも1種の無機系多孔質吸着剤を5〜200phr配合することにより、成形後のアンモニアガス或いは尿素の残存量を300mg/kg以下としたので、アルミニウムの腐食による塗装の黒化現象を発生させない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ウェザーストリップ車体に取り付けた位置の1例を示す斜視図。
【図2】第1図のA−A断面図。
【図3】第1図のB−B断面図。
【図4】第1図のC−C断面図。
【図5】自動車の塗装膜の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0064】
1 車体パネル
2 フランジ
3 オープニングウェザーストリップインナ
4 ソリッド部
5 スポンジシール
6F フロントドア
6R リアドア
7 オープニングウェザーストリップアウタ
8 ソリッド部
9 スポンジシール部
10 車体パネル
11 フランジ
12 オープニングウェザーストリップインナ
13 ソリッド部
14 スポンジシール部
15 フロントドアパネル
16 リテーナ
17 オープニングウェザーストリップアウタ
18 取付基部
19 スポンジシール部
20 フロントドア・ガラス
21 クリップ
22 オープニングウェザーストリップアウタ
23 取付基部
24 スポンジシール部
25 ピラー
26 フランジ
27 オープニングウェザーストリップインナ
28 ソリッド部
29 スポンジシール部
30 自動車ボディー用鋼板
31 下塗り塗膜
32 中塗り塗膜
33 メタリック塗膜
34 クリア塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤並びに通常のゴム用添加剤を配合したスポンジゴム用配合物に、少なくとも1種の無機系多孔質吸着剤を5〜200phr配合し、成形後の金属アルミニウム腐食性物質の残存量を300mg/kg以下としたスポンジゴム用組成物。
【請求項2】
金属アルミニウム腐食物質が、アンモニア及び/又は尿素である請求項1のスポンジゴム用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2のスポンジゴム用組成物を成形したスポンジゴム成形体。
【請求項4】
請求項1又は2のスポンジゴム成形体から成る自動車用ウェザーストリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−249358(P2006−249358A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70930(P2005−70930)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】