説明

スマートな負荷平衡のための変圧器構造

【課題】PEVの大負荷に給電できる負荷平衡システムを備えた配電システムを構築する。
【解決手段】負荷平衡システムには、複数の統合センサを有する変圧器12が含まれている。変圧器12の中に埋め込むことができる制御システムは、複数のセンサと電気通信している。制御システムは、変圧器12の健全性の状態を推定し、あるいは決定するように構成されている。変圧器12の健全性の状態は、複数のセンサによって生成される信号に基づいている。受け取ることができる負荷要求は、変圧器12がその負荷要求をサポートすることができるかどうかを決定するために、変圧器12の健全性の状態と比較される。制御システムは、変圧器12の健全性の推定状態に基づいて、また、負荷要求に応答して、変圧器12が電力を提供することができるか否かを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に配電網負荷制御に関し、より詳細には配電網の安定性を改善し、かつ、老朽化資産に対するストレスを軽減する近隣の変圧器のための通信および制御アーキテクチャに関する。
【背景技術】
【0002】
配電網上の負荷の制御は、スマートグリッドアーキテクチャの重要な部分である。負荷と発電をより良好に平衡させることによって配電網の安定を促進することができ、また、負荷シフトにより、老朽化資産に対するストレスの軽減ならびに公益事業の経済性の向上を促進することができる。
【0003】
ごく近い将来、もう1つの新しく、かつ、重要な負荷が出現するものと思われる。より具体的には、この新しく、かつ、重要な負荷は、プラグイン電気車両(PEV)として識別することができる。PEV上の電池は、最大約18kW(SAE、レベル2仕様)の定格で充電することができる。ほとんどの家庭用充電器設備の範囲は、約1.1kWから最大約7.7kWまでである。したがって米国中の多くの地域では、これは、平均的な家庭にとって負荷の大幅な増加を意味しており、可能性としてはその典型的な定格の1〜3倍、負荷が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0029146号明細書
【発明の概要】
【0005】
PEVの充電を観察/感知することになる最初の資産は、近隣の変圧器であろう。以上の観点から、複数の車両が電源回路に差し込まれ、充電されている時間期間の間、近隣の変圧器に対するストレスを制限するシステムおよび方法が必要である。提供されるシステムおよび方法によって配電網の安定性が改善され、かつ、老朽化資産に対するストレスが軽減されることが有利である。
【0006】
一実施形態によれば、変圧器負荷平衡システムは、
複数のセンサが統合された変圧器と、
複数のセンサと電気通信している制御システムであって、複数のセンサによって生成される信号に応答して変圧器の健全性の状態を推定し、あるいは決定するように構成され、さらに、1つまたは複数の負荷から受け取った負荷要求と変圧器健全性の状態とを比較して、その変圧器がその負荷要求をサポートすることができるかどうかを決定し、さらに、負荷要求を満たすために電力を提供することに同意または合意する、あるいは負荷要求を修正することに合意するよう1つまたは複数の負荷に要求するように構成された制御システムと
を備えている。
【0007】
他の実施形態によれば、負荷平衡システムは、
複数のセンサが統合された変圧器と、
変圧器の中に埋め込まれた通信および制御システムであって、複数のセンサと電気通信し、また、状態推定器に応答して、これらの複数のセンサによって生成される信号に基づいて変圧器の健全性の状態を推定し、かつ、負荷要求と推定状態とを比較して変圧器がその負荷要求をサポートすることができるか否かを決定し、さらに、変圧器の健全性の推定状態に基づいて、また、負荷要求に応答して、電力を提供するように構成された通信および制御システムと、
変圧器健全性の推定状態に基づいて配電網負荷を平衡させるように構成された配電管理システムと
を備えている。
【0008】
さらに他の実施形態によれば、変圧器の負荷を平衡させるための方法には、
複数のセンサが統合された変圧器を提供するステップと、
複数のセンサと電気通信している状態推定器制御システムを提供するステップと、
制御システム状態推定器に応答して、複数のセンサによって生成される信号に基づいて変圧器の健全性の状態を推定するステップと、
変圧器が負荷要求をサポートすることができるかどうかを決定するために、電力線搬送を介した負荷要求と健全性の推定状態とを比較するステップと、
変圧器の健全性の推定状態に基づいて、また、負荷要求に応答して、電力を提供するステップ
が含まれている。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様ならびに利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことによってより深く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態による変圧器負荷平衡システムを示す高水準の線図である。
【図2】他の実施形態による変圧器負荷平衡システムを示す高水準の線図である。
【図3】図1および2に示されている負荷平衡システムと共に使用するのに適した制御システムを示す図である。
【図4】一実施形態による、負荷要求に応答して電力を提供するための制御システムと変圧器の統合を示すシステムレベル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上で識別した図面は特定の実施形態を示したものであるが、説明の中で言及されているように本発明の他の実施形態も同じく企図されている。あらゆる場合において、本開示は、本発明を代表例によって実例実施形態で示したものであり、本発明を制限するものではない。当業者は、本発明の原理の範囲および精神の範疇である多くの他の変更態様および実施形態を創案することが可能である。
【0012】
図1は、一実施形態による変圧器負荷平衡システム10を示す高水準の線図である。より具体的には、変圧器負荷平衡システム10は、近隣の変圧器のための通信および制御アーキテクチャを具体化している。変圧器負荷平衡システム10は、家庭用負荷、とりわけプラグイン電気車両(PEV)を制御する局所手段を提供している。
【0013】
一実施形態によれば、システム10アーキテクチャは、通信および局所制御論理を変圧器に結合してスマート変圧器を提供している。通信および局所制御論理は、日々の負荷、1つまたは複数の変圧器温度、および所望の用途に基づく他の重要なパラメータを記録するように構成されている。したがってこのような通信および局所制御論理を備えた変圧器は、将来の状態を推定し、かつ、負荷要求を処理することができる。例えば、オイル温度などの将来の状態が十分に低い場合、スマート変圧器は、1つまたは複数の新しい負荷要求を承認することができる。そうでない場合、変圧器は、変圧器の推定された将来の状態に最良適合させるために1つまたは複数の負荷要求を拒絶するか、あるいは1つまたは複数の負荷要求を修正することができる。
【0014】
引き続いて図1を参照すると、変圧器負荷平衡システム10は、一実施形態によれば、電力線搬送16を介して1つまたは複数のPEV14と通信するスマート変圧器12を備えている。変圧器12には、それには限定されないが熱電対などの1つまたは複数のセンサが統合されている。一態様によれば、スマート変圧器12通信および局所制御論理は、1つまたは複数のセンサと電気通信している状態推定器制御システムを備えている。本明細書においてさらに詳細に説明されている状態推定器制御システムは、制御システム状態推定器に応答して、1つまたは複数のセンサによって生成される信号に基づいて変圧器12の健全性の状態を推定する。次に、変圧器12の健全性のこの推定状態が、一実施形態によれば電力線搬送(PLC)16を介して受け取られる負荷要求と比較され、それにより変圧器がその負荷要求をサポートすることができるかどうか決定される。一実施形態によれば、スマート変圧器12は、次に、それらに限定されないが、温度情報、負荷情報および健全性の状態情報などの情報を、変圧器の健全性の推定状態に基づいて、また、負荷要求に応答して電力の配電を制御している配電管理システム(DMS)18に通信する。
【0015】
図2は、他の実施形態による変圧器負荷平衡システム20を示す高水準の線図である。変圧器負荷平衡システム20は、図1を参照して本明細書において説明されている変圧器負荷平衡システム10と同様の方法で動作する。しかしながら、負荷要求を承認するか否か、あるいは負荷要求を修正するかどうかに関する決定は、変圧器負荷平衡システム20の配電管理システム18のレベルでなされる。この実施形態では、スマート変圧器12は、それらに限定されないが、温度データ、時間データ、負荷データ、変圧器健全性の推定状態データ、等々を含む必要な変圧器情報をDMS18に通信し、それによりDMS18による、1つまたは複数の負荷要求を承認するか否か、あるいは1つまたは複数の負荷要求を修正するかどうかの決定を可能にしている。
【0016】
図3は、図1および2にそれぞれ示されている負荷平衡システム10、20と共に使用するのに適した制御システム30を示したものである。制御システム30は、一実施形態によれば、図1および2に示されている変圧器12に統合された小型埋設システム制御基板を備えている。一態様によれば、制御基板は、少なくとも一ヶ月間の変圧器履歴データを記憶するだけの十分なオンボードメモリ32を備えている。制御システム30は、さらに、熱電対などの様々なセンサ35に接続するように構成された入力/出力ポート31、33およびA/D変換素子34を備えている。それには限定されないがFPGAなどの小型プロセッサ36は、計算および処理の発生を可能にすることができる。一態様によれば、メモリ32には、次の12〜24時間にわたる変圧器の健全性の状態を推定するための状態推定器などの制御アルゴリズムを含んだアルゴリズムソフトウェアが記憶されている。負荷要求は、変圧器がその追加負荷をサポートすることができるかどうかを決定するために推定状態と比較される。変圧器がその追加負荷をサポートすることができない場合、変圧器制御システム30は、新しい代替スケジュールまたは要求を通信することができる。PEV機能を備えた住宅37への通信は、制御システム基板30に統合された電力線搬送(PLC)通信ユニット38によってサポートされているPLC33を介して実施される。一態様によれば、PLCは、変圧器12の一次側または二次側に限定することができ、したがって家庭および負荷への隔離された通信を可能にしている。また、他の態様によれば、PLCは、既存の配線を伝送媒体として使用することも可能である。PLCを介して伝送され、かつ、受け取られるメッセージは、一態様によれば、SAEおよびNIST機構によって開発された現行の規格に従っている。
【0017】
図4は、一実施形態による、負荷要求に応答して電力を提供するための制御システム30と局所近隣変圧器12の統合を示すシステムレベル線図40である。複数のプラグイン電気車両42が変圧器12によって供給されている回路に差し込まれている。変圧器一次は主配電網母線44に接続されており、一方、変圧器二次巻線は、一次線搬送デバイス46を介してPEV42と通信している。
【0018】
要約した説明で、複数の実施形態による変圧器負荷平衡システムについて本明細書で説明した。個々の実施形態は、1つまたは複数の状態センサが統合された変圧器を備えている。制御システムは、1つまたは複数のセンサと電気通信しており、状態推定器に応答して変圧器の健全性の状態を推定するように構成されている。状態推定器は、1つまたは複数の状態センサによって生成される信号に基づいて変圧器の健全性の状態を推定する。推定された状態は、電力線搬送を介して負荷/充電要求と比較され、それにより変圧器がその負荷/充電要求をサポートすることができるかどうか決定され、さらには変圧器の健全性の推定状態に基づいて電力が提供され、あるいは負荷/充電要求が修正される。
【0019】
有利には、本明細書において説明されているこれらの実施形態によれば、近隣の電力変圧器を制御し、かつ、保護するための技法が提供され、この技法は、配電管理システム(DMS)、住宅配電管理システム(DRMS)、家庭電気管理システム(EMS)、等々に単独に頼ることによって達成することができる技法より優れている。本明細書において説明されているこれらの実施形態は、局所制御システムとして機能し、大部分の変圧器の健全性の状態に関する知識により、変圧器に対するストレスが制限されるが、このような制限は、DMS、DRMS、家庭EMS、等々に単独に頼った技法を使用しただけでは一般的には不可能である。
【0020】
以上、本発明について、様々な特定の実施形態に関連して説明したが、本発明は、特許請求の範囲の精神および範囲内の修正を加えて実践することができることは当業者には認識されよう。
【符号の説明】
【0021】
10、20 変圧器負荷平衡システム
12 スマート変圧器
14、42 PEV(プラグイン電気車両)
16 電力線搬送
18 配電管理システム
30 制御システム
31、33 入力/出力ポート
32 オンボードメモリ
34 A/D変換素子
35 センサ
36 プロセッサ
37 住宅
38 電力線搬送(PLC)通信ユニット
40 近隣変圧器に統合された制御システム
44 主配電網母線
46 一次線搬送デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷平衡システムであって、
複数のセンサが統合された変圧器と、
前記変圧器の中に埋め込まれた通信および制御システムであって、前記複数のセンサと電気通信し、また、前記複数のセンサによって生成される信号に基づいて前記変圧器の健全性の状態を推定し、あるいは決定するように構成され、かつ、1つまたは複数の負荷からの負荷要求と変圧器健全性の前記状態とを比較して、前記変圧器が前記負荷要求をサポートすることができるかどうかを決定し、さらに、前記負荷要求を満たすために電力を提供することに同意または合意する、あるいは前記負荷要求を修正することに合意するよう前記1つまたは複数の負荷に要求するように構成された通信および制御システムと
を備える負荷平衡システム。
【請求項2】
変圧器健全性の前記状態に基づいて配電網負荷を平衡させるように構成された配電管理システムをさらに備える、請求項1記載の負荷平衡システム。
【請求項3】
前記複数のセンサによって生成される前記信号に基づいて健全性の前記状態を決定するように構成された状態推定器をさらに備える、請求項1記載の負荷平衡システム。
【請求項4】
前記配電管理システムが、負荷要求承認状態に基づいて前記配電網負荷を平衡させるようにさらに構成される、請求項2記載の負荷平衡システム。
【請求項5】
前記負荷要求承認状態が、承認された負荷状態、否認された負荷状態および修正された負荷状態から選択される、請求項4記載の負荷平衡システム。
【請求項6】
前記負荷要求が1つまたは複数のプラグイン電気車両充電システムによって生成される、請求項1記載の負荷平衡システム。
【請求項7】
前記負荷要求が1つまたは複数の住宅負荷に基づく、請求項1記載の負荷平衡システム。
【請求項8】
前記負荷要求が、電力線搬送(PLC)および無線搬送のうちの少なくともいずれかを介して前記制御システムに通信される、請求項1記載の負荷平衡システム。
【請求項9】
前記変圧器が複数の家庭にサービスする住宅近隣の変圧器である、請求項1記載の負荷平衡システム。
【請求項10】
前記制御システムが、
状態推定器、変圧器健全性の状態データおよびセンサ信号データを記憶するように構成された1つまたは複数の記憶装置と、
前記センサ信号に応答して前記センサ信号データを生成するように構成された1つまたは複数のアナログ/ディジタル変換器と、
前記複数のセンサと電気通信している複数の入力/出力ポートと、
前記変圧器健全性の状態データを生成するために前記センサ信号データを処理するように構成されたプロセッサと
を備える、請求項1記載の負荷平衡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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