説明

スマートアンテナ

【解決手段】 スマートアンテナ装置は,駆動モノポールエレメントと,駆動モノポールエレメントの周りに環状配列で配置される寄生モノポールエレメントの配列を含む。そこでの寄生モノポールエレメントは曲がっているか湾曲する立体配置をとり,駆動モノポールエレメントに向かって曲がっているか湾曲している。この装置は,コンパクトな操縦可能なアンテナ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,アンテナに関するものであり,好ましい実施形態においては,リアクタンス負荷(reactive load)されたパラサイトアレイアンテナ(parasitic array radiator)から形成される低価格で小さなスマートアンテナに関する。好ましい実施形態は,Wi−Fi通信や無線LAN(WLAN),WiMAX,及びRFIDアプリケーション等である。好ましい実施形態は,ビーム形成のための位相シフターを使用しない。
【背景技術】
【0002】
スマートアンテナは当業者において公知であり,それらはある特定のユーザーの位置を見つけ,そして,そのユーザーに向かってそれらの主ビームを向けることを可能にする性質を有する。他のアンテナとの比較においてスマートアンテナをユニークなものとしているのは,それらのビーム形成能力である。ビーム形成は,位相合成の過程によって成し遂げられる。位相アレイで形成される従来のスマートアンテナは,位相合成を成し遂げるために,位相シフターを使用する。しかし,アナログ位相シフターとデジタル位相シフターの両方とも,高価な部品であり,結果として高コストのスマートアンテナになってしまう。それ故に,そのようなアンテナは経済的に成り立たない。
【0003】
米国特許第5,235,343号は,請求項1の前提部分におけるような特徴を含むアンテナ装置を開示している。他のアンテナ装置は,米国特許第2004/257,292号,米国特許第2008/266,190号,そしてOjiro,Y等の「“Improvement of Elevation Directivity for espar antennas with Finite Ground Plant”, IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium. 2001 digest. APS. Boston, MA, July 8−13, 2001」,及び,「[IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium], New York, NY: IEEE, US, 8 July 2001 (2001−07−08), pages 18−21, XP001072118, DOI: DOI:10.1109/APS.2001.959390 ISBN: 978−0−7803−7070−8」の全文章において,開示されている。
【0004】
電子走査導波器アレイ(ESPAR)アンテナは,位相器コンポーネントを使用せずに,位相合成を成し遂げることができるスマートアンテナを特徴づける一般的な名前である。位相シフターを回避することで,そのようなアンテナの価格を下げることができる。ここで教示される発明の好ましい実施形態は,スマートアンテナのESPAR群に属すると言われる。
【0005】
ESPARアンテナは,位相合成を提供するために,可変容量ダイオード(varactors)のような可変同調型リアクタンス負荷を利用する。典型的なESPARアンテナは,1つの駆動エレメントといくつかの寄生エレメントで形成される。駆動エレメントは無線周波(RF)フロントに接続され,そして,寄生エレメントは可変容量ダイオード(varactors)に接続される。寄生エレメントは,駆動エレメントから結合されるエネルギーによって励起される。
【0006】
理論的に,ESPARアンテナは,1/4波長によって互いに分離される一連の1/4波長の放射体(radiators)から構成される。これらの理論的なパラメータは,結果として単純なデザインとアンテナサイズの大型化をもたらす。
【0007】
既存の位相アレイスマートアンテナの問題は,それらの高コストと,現在のESPARアンテナがサイズ的に大きく,それらの適用を制限しているという事実である。このことが,それらをいろいろな最新装置に用いるのを不適当なものにしている。例えば,無線HDビデオサービスのような,より高いデータレート,及び,より高品質なサービスを提供している無線通信システムに対して,操縦できるパターンを有するアンテナが,大きなリンクバジェット(link budget)利得を提供するよう要求されている。次世代無線ネットワークにおいて,システムは,通信を成立させるべき個人または団体の位置に応じて,個々の無線回線を必要とする。従って,方向探知能力があり,要件に従って空間分割を提供するアンテナが,必要とされる。しかし,標準的な1/4波長のモノポールESPARアンテナは,携帯機器としては十分に小さくない。特に,6つの寄生的な1/4波長のモノポールが,1/4波長の半径を有する中央駆動の1/4−波長モノポールを,最適化することなく囲んでいる時,入力インピーダンスは,それら6つの寄生モノポールによって導入されるキャパシタンス負荷のために,中央駆動のモノポールで,適合しないであろう。いろいろな最適化方法が示唆されたが,ほとんどは,駆動エレメントでインピーダンス整合を成し遂げるために寄生モノポールの長さを増加させるような,寄生エレメントによって導入されるキャパシタンス負荷を減らすことに集中しており,それは,ESPARアンテナのサイズを増加させてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,235,343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は,改善されたスマートアンテナを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば,駆動モノポールエレメントと,駆動モノポールエレメントの周りに環状に配置される寄生モノポールエレメントを含むアンテナが提供される。ここでは,寄生モノポールエレメントは屈曲した構造である。
本発明の一態様によれば,請求項1で規定されるアンテナ装置が提供される。
【0011】
寄生モノポールエレメントを曲げることの長所は,これらのエレメントの高さを減らすことができ,それによって,アンテナ装置自体の高さを減らすことである。
【0012】
好都合なこととして,寄生モノポールエレメントは,駆動モノポールエレメントの方に向かって曲げられる。好ましい実施形態において,各々の寄生モノポールエレメントは,駆動モノポールエレメントに平行または実質的に平行である部分を持っている。寄生エレメントと駆動モノポールエレメントの間の距離を減らすことによって,及び/又は,駆動エレメントに平行である各々の寄生エレメントの一部を提供することによって,駆動及び寄生モノポールエレメントの間の容量性カップリングが,最適化され得る。
【0013】
好都合なこととして,駆動モノポールエレメントが,その先端にディスクを備えている。ディスクは,結合のキャパシティを改善し,それによって,アンテナ装置のサイズの減少を可能にする。
【0014】
好ましい実施形態において,6つの寄生モノポールエレメントが提供される。好都合なこととして,寄生結合エレメントが,実質的に60°の放射間隔で,相互に間隔を置いて配置される。
【0015】
好都合なこととして,アンテナ装置は,接地スリーブを含み,その上にモノポールエレメントを装備している。
【0016】
好ましい実施形態において,接地スリーブはそのスリーブのどちらの端にも第1および第2の接地板を含み,各々の接地板は駆動及び寄生モノポールエレメントのそれぞれのセットを含む。このように,一つの接地スリーブは,異なる方向で異なるビームを生み出すことができる,2つの異なる効果的なアンテナエレメントを支え得る。別の実施形態において,それら2つのアンテナエレメントが,類似したビームを生み出すことができる。
【0017】
好ましくは,接地スリーブは波長の1/4の深さと波長の3/16の半径を持ち,それに対して装置は調節される。好ましくは,駆動モノポールエレメントは,チューブの1/8の高さを持ち,寄生モノポールエレメントは,異なる方向の波長の1/4の長さを持し,駆動モノポールエレメントの最大の高さと均衡を保つために屈曲する。
【0018】
いくつかの実施形態において,誘電体天板が駆動及び寄生モノポールエレメントの先端(上端)と接触して置かれてもよいとされている。そのような誘電体被覆は,モノポールエレメントを保護する機能を有し,特にアンテナ装置の実際的利用の間,お互いの相対的な位置を保護する機能を有する。
【0019】
好ましい実施形態は,密接に結合した駆動エレメントと寄生エレメントによって導入されるコンデンサの負荷を用いることにより、小さなESPARアンテナを提供することができる。さらに,特定の実施形態においては,2.4GHzから2.5GHzまでの周波数帯をカバーする,コンパクトな電子走査導波器アレイ(ESPAR)アンテナを提供し得る。上部のディスクを装填したモノポールと折り曲げられたモノポールの構造は,ESPARアンテナの高さを減らすために使用される。上部のディスクを装填したモノポールと折り曲げられたモノポールの高さは,従来のESPARアンテナの高さである1/4波長よりかなり小さく,1/8波長未満になるよう減らされてきた。さらにまた,駆動エレメントと寄生エレメントの間の距離,すなわちESPARモジュールの半径も減らされる。好ましいESPARモジュールは,そのコンパクトさにもかかわらず,4.01dBiの利得と13.9dBの前後比を成し遂げる。ビーム形成は,寄生エレメントが中央駆動エレメントを囲む一連の可変容量ダイオード(varacters)のリアクタンス負荷を調節することによって,達成される。
【0020】
ここで教示される好ましい実施形態は,キャパシタンス負荷を除く代わりに,アンテナの寸法を減らすため,キャパシタンス負荷の長所を活かす折り曲げられたモノポールESPARアンテナデザインを利用する。
【0021】
本発明の実施形態は,添付図面を参照にして,例としてのみ,以下に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は,スマートアンテナの好ましい実施形態の側面図である。
【図2】図2は図1の実施形態の平面図である。
【図3】図3は,図1および2のアンテナの実施形態についての90°での放射パターンを表す。
【図4】図4は,図1および2のアンテナの実施形態についての120°での放射パターンを表す。
【図5】図5は,図1および2のアンテナの実施形態についての90°での測定された放射パターンを表す。
【図6】図6は,アンテナ構造の好ましい実施形態についての180°で形成される消失(null)と90°での望ましい信号とを表す。
【図7】図7は,6つの主要パターンまたは副主要パターンからの直立面での放射パターンの例を表す。
【図8】図8は,図1および2の装置のモノポールセットの1つから信号を導きそして引き出すように利用される回路の実施形態を,ブロックダイアグラム形式で表す。そして,
【図9】図9は,図8に示されるバッファー58の回路の実施形態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
平行な,垂直な,そして,まっすぐな等の特徴への言及は,実質的に平行な,実質的に垂直な,実質的にまっすぐであることなどを含むことが,以下の記述で理解される。
【0024】
図1を参照すると,ESPAR構造に基づく小さなスマート電気アンテナであるスマートアンテナ10の好ましい実施形態が示されている。好ましい実施形態において,アンテナ10は,銅でおおわれた中空円筒形体である接地スリーブ12を含む。実質的に平らな端板(end plates)14,16は,接地スリーブ12のどちらかの端に備わり,反対の方向に向けられている。端板(end plates)14,16は,実質的に円形でディスク型の形である。
【0025】
各々の端板(end plates)14,16の上に,複数のモノポール構造18,20,22,24が備わっている。図1および2で見られるように,上部の端板(end plates)14を参照にすると,ディスク14の中心に,上部のディスク14の平面に対し垂直にまっすぐのびる中央駆動アンテナモノポールエレメント18が提供される。そのアンテナエレメント18の先端に,接地面14に平行な上部のディスクエレメント19が提供される。
【0026】
中央のモノポールアンテナエレメント18は,アンテナ構造10の駆動エレメントを形成する。一連の寄生モノポールエレメント20は,中央のモノポールエレメント18のまわりに,規則的な配列で配置されている。この実施形態において,6つの寄生モノポールエレメント20が提供され,放射状に60°に相互に間隔を置いて配置され,中央のエレメント18のまわりに円形配列で配置される。
【0027】
各々のモノポールエレメント20は,中央駆動エレメント18の方へ曲げられている。示されている実施形態において,各々の曲がったエレメント20は,折り曲げられた立体配置であり,(i)接地ディスク14から垂直にのびて,それ故に,駆動モノポール18と並んでいる基底エレメント26,(ii)中央モノポール18の方へ放射状にのびており,接地面14に平行であるアーム部分28,及び,(iii)基底エレメント26と中央モノポール18に平行なディペンディングフィンガー(depending finger)30を含んでいる。
【0028】
別の接地面ディスク16のモノポール構造は,ディスク14のそれらに類似しており,それ故,ここでは,これ以上詳細には記述しない。
【0029】
ここで教示されるような,上部ディスクが載っているモノポール18と折り曲げられたモノポール20を用いることによって,アンテナ構造10のコンパクトサイズ化が成し遂げられ得る。上部ディスクが載っているモノポール18は,折り曲げられたモノポール20が寄生エレメントとして使われている間,中央駆動エレメントとして使われる。折り曲げられたモノポール20は,強結合とキャパシタンス負荷を提供するために,中央駆動モノポールの方へ曲がっている。
【0030】
RF前端は,180°の電力分割器を通して上部ディスクを装填したモノポール18と22につながっている。上部ディスクを装填したモノポール18,22は駆動エレメントとして動く。それらは,1/8波長の高さを有する。その旋回半径は1/4波長未満で,この例においては3/16の波長である。
【0031】
各々の中央駆動エレメント18,22,即ち,上部にディスクを装填したモノポール18,22は,50オームのRFポートにつながっている。
【0032】
折り曲げられたモノポール20,24は,中央駆動エレメントに対して60°の分離角度で,それらのそれぞれの駆動エレメント18,22を旋回する寄生エレメントとして働く。接地スリーブ12は,1/4波長の高さと3/16波長の半径を持つ。
【0033】
従って,図1で示され得るように,アンテナ10の好ましい実施形態は,上部にディスクを装填したモノポール18,22と1/8波長未満の折り曲げられたモノポール20,24のための高さを有する。ここで,折り曲げられたモノポール20,24の全長は,1/4波長よりわずかに長く,駆動エレメント18,22と寄生エレメント20,24の間の距離は,1/4波長未満である。
【0034】
アンテナ10は,その部品の寸法の選択によって,特定の周波数に調節される。それは,関連する波長に設計されることによって,周波数の大きな範囲にまで調節され得る。
【0035】
図2の平面図を参照にすると,制御電圧は,各々の寄生モノポール20,24に備えられる直流供給系統(DC−feeding network)30を通して,可変容量ダイオード(varactors)のようなリアクタンス性成分(reactive components)に印加される。折れ曲がった寄生モノポールを地面に直列でつなぐ可変容量ダイオード(varactors)上に印加される電圧を調節することによって,パターン操縦(pattern steering)とビーム形成が実行される。このことは,以下でさらに詳細に記述される。
【0036】
寄生エレメント20,24は,パターン多様性に寄与するだけでなく,サイズの減少にも寄与する。提案したアンテナのアイデアは,大きなキャパシタンス負荷を提供することによって,モノポールのサイズを減らすことである。キャパシタンス負荷を増やすために,駆動エレメントと寄生エレメントの間の距離は縮められ,そして,それ故,ESPARアンテナの半径は減らされる。
【0037】
駆動エレメント18,22と寄生エレメント20,24の間の短縮された距離のために,最大利得は犠牲にされてきた。しかし,駆動エレメントと寄生エレメントの間の距離が1/4波長である時,利得は最適化される。
【0038】
接地スリーブ平面12の高さは,1/4波長であり,そして,これはESPARアンテナの主ビームを水平面に向けて調節するのに用いられる。接地スリーブ平面12が無い場合は,主ビームは垂直面で仰角になる。
【0039】
図1および2で示されるアンテナ装置10の実施形態は,上下のモノポールセットが異なるアンテナ機能を提供するように作動し得る二重アンテナ構造であることが認識されている。例えば,より下のモノポール構造が他のユーザーの方向に第二のビームを向けるために用いられる間,上部のモノポール構造は通信基地局の方向にビームを向けるために用いられる。そのような二重アンテナ設計は,共通の接地スリーブ12を使用している間,同時に異なるビームを操縦することを提供するのに非常に役立ち,それ故に,アンテナ構造によって占有される空間をさらに最小化している。
【0040】
他の実施形態において,アンテナ装置10は接地スリーブ12の一端で1セットのモノポールだけを備えることができ,それ故に一つの操縦可能なビームを提供し,そしてそれにより,より単純な構造を提供する。同様に,2セットのモノポールを有する配置は,それらに類似した電気信号を供給することによって同一形式のビームを発生するために準備される。
【0041】
シミュレーションと測定
まず初めに,ESPARアンテナの好ましい実施形態が,CST Microwave Studioでシミュレーションされた。その入力インピーダンス整合は,6つの主要パターンと6つの副主要パターンに対して最適化される。主要パターンは,25Vの制御電圧で作動する1つの可変容量ダイオード(varactor)と,1.4Vの制御電圧で作動する他の5つの可変容量ダイオード(varactors)として定義される。6つの寄生エレメント20,24の位置は,30°,90°,150°,210°,270°と330°で定義される。それら6つの主要パターンの方向は,相応して,30°,90°,150°,210°,270°と330°である。
【0042】
副主要パターンは,20Vの制御電圧で作動する2つの可変容量ダイオード(varactors)と,1.4Vの制御電圧で作動する4つの他の可変容量ダイオード(varactors)として定義される。6つの寄生エレメントの位置は,30°,90°,150°,210°,270°と330°で定義される。それら6つの主要パターンの方向は,相応して,0°,60°,120°,180°,240°と300°である。
【0043】
式(1)に自己入力インピーダンスと相互インピーダンスを代入することによって,各々のアンテナエレメントの表面電流Iが計算される。
【0044】
【数1】

【0045】
式(1)において,Zは,リアクタンス負荷無しでの,インピーダンス行列である。ここで,Zは,可変容量ダイオード(varactors)が制御電圧によって調節される時の装荷インピーダンス行列であり,Vはポート電圧である。
【0046】
表面電流ベクトルIを式(2)に代入することによって,距離r及び方位qでのEフィールドパターンが,計算され得る。
【0047】
【数2】

【0048】
ここでのα(q)は,式(3)によって定義されるステアリングベクトルである。
【0049】
【数3】

【0050】
式1〜3は,アンテナの好ましい実施形態の遠視野像を計算してビーム形成アルゴリズムを証明するための数値モデルを創るために,Matlabで実装した。
【0051】
主要パターンプロット
90°に位置する主要パターンの1つは,図3に示される。点線32は,Matlabで数値モデルに基づいた相互インピーダンスと自己インピーダンスから計算される放射パターンである。線34は,CST Microwave Studioでシミュレートされた実現利得を示し,そして,線36は,測定室で測定されたアンテナ利得を示す。
【0052】
図3は,測定されたパターンがシミュレートされたパターンに良く一致し,そして,測定された利得の最大利得が,3.30dBiであることを示している。測定された主要パターンの前後比は,11.30dBである。
【0053】
図3に示されるパターンは,制御電圧を調節することよって,30°,90°,150°,210°,270°及び330°で成し遂げられ得る。
【0054】
副主要パターンプロット
120°に位置する副主要パターンの1つは,図4に示される。点線38は,Matlabで数値モデルに基づく相互インピーダンスと自己インピーダンスから計算される放射パターンである。線40は,CST Microwave Studioでシミュレートされた実現利得を示し,そして,線42は,測定室で実際に測定されたアンテナ利得を示す。
【0055】
副主要パターンの測定された利得は3dBiであり,前後比は10dBである。図4に示されるパターンは,可変容量ダイオード(varactors)に印加される制御電圧を調節することによって,0°,60°,120°,180°,240°,及び300°で成し遂げられ得る。
【0056】
拡張された主要パターンプロット
前後比を増加するために,バックローブキャンセル計算が,Matlabでプログラムされる数値モデルを用いて実行されてきている。同様に,バックローブキャンセル方法が,研究されていきている。
【0057】
計算によると,可変容量ダイオード(varactors)に制御電圧ベクトル[23V 15V 3V 3V 3V 15V]を印加する時,バックローブは減らされる。同時に,利得は最適化される。セットアップされたそのような制御電圧の下で成し遂げられる放射パターンは,「拡張主要パターン」として定義される。
【0058】
拡張主要パターンの放射パターンは,図5で与えられる。拡張モードの最大利得は4.01dBiであり,そして,前後比は13.90dBである。
【0059】
適応ビーム形成
適応ビームステアリング法は,ESPARアンテナが望ましい信号の方向を推定し,望ましい信号の方へメインローブを形成し,自動的に電波障害の方向で消失を形成することを可能にする。好ましい実施形態において,ESPARアンテナに適用される適応アルゴリズムは,非盲検アルゴリズム(un−blinded algorithm)であり,それについて,適応アルゴリズムを実行するための基準信号が与えられる。記述の効率化と簡略化のために,見通し内伝搬(line of sight propagation)状況だけが記述され,多経路成分は記述されないが,当業者には明らかであろう。
【0060】
まず初めに,その方法は,それら6つの主要パターンから最良の相互相関係数(CCC)値を探索し,後に続く反復の出発点を決定する。出発点を決定した後に,その方法は,次に続くCCCの最大勾配に沿って進むのを繰り返す。
【0061】
最大利得は,望ましい信号の方向に必ずしも向いていない。好ましい方法では,干渉信号の方向での深い消失(deep null)を成し遂げるために,望ましい信号の方向での最大利得が犠牲にされる。
【0062】
制御電圧ベクトルは,測定室で測定される時,記録され,ESPARアンテナ10に印加される。測定室でパターン計測を実行する時,印加されるトレーニング信号はない。セットアップされた同じ制御電圧について,CSTでシミュレートされたパターンと比較する測定パターンが,図6に示される。
【0063】
図6で,点線44は,Matlabで数値モデルに基づく相互インピーダンスと自己インピーダンスから計算される放射パターンである。線46は,CSTでシミュレートされた実現利得を示し,そして,線48は,測定室で測定されたアンテナ利得を示す。
【0064】
制御電圧ベクトルは,以下のとおりであった。
[20V 12V 10V 1.4V 1.4V 5V]
【0065】
図7は,6つの主要パターン又は副主要パターンからの,直立面での放射パターンの例を示す。
【0066】
回路
ここで開示されるアンテナ装置10についての回路は,上記の技術を考慮すれば,当業者には明らかであるに違いない。しかし,完全性のために,図8および9に示す。
【0067】
まず,図8を参照すると,図1および2の装置のモノポールセットの1つから信号を動かし,そして引き出すために使用される回路の実施形態がブロックダイアグラム形式で示されている。回路は,トランシーバー52に結合しているアンテナ装置10のモノポール18,20又は22,24から,供給体(ワイヤー)50を含む。トランシーバー52は,アンテナ10に操縦信号を供給するよう作用するデジタル信号処理コントローラ54に結合しており,6チャンネルデジタルを通して,アナログコンバータ56と6チャンネルバッファー58に結合している。バッファー58についての回路の実施形態は,図9に示されており,そのコンポーネントは当業者には理解可能である。
【0068】
表1は,ここで教示されるアンテナ構造の好ましい実施形態と標準的な1/4波長ESPARアンテナとの間のサイズの比較を示す。スペースの節減が顕著であることがわかる。
【0069】
【表1】

【0070】
上記の実施形態は,6つの寄生モノポールアンテナ配置に関連して記述されてきた。6つのモノポールエレメント20,24の利用は,これがパワーと操作性との間の最適なバランスを与えるので,好ましい。しかし,例えば,3,4,8又は12のような,異なる数のモノポールエレメント20,24が使われてよいことが想定される。他の数の寄生モノポールが,特殊用途に依存して使われても良い。
【0071】
好ましい実施形態は,駆動モノポール18,22に平行な部分といわゆる直角のJ形を有するように曲げられる寄生モノポール20,24を利用することもできる。他の実施形態において,寄生モノポールは,カーブしたような他の形を有することもできる。しかし,寄生モノポール20,24は,駆動モノポール18,22に平行である,少なくとも1つの区間/部分を持つことが好ましい。なぜなら,これが容量結合を最適化するからである。このことに関して,平行部分又は区間が駆動モノポール18,22に最も近いことが好ましい。
【0072】
他の変更及び応用が,以下で詳細に記述されるとおりにすることができる。
【0073】
アンテナサイズを減らす新規技術は,高い誘電率を有する誘電体負荷やメタマテリアル(meta−material)構造等を利用することによって研究されてもよい。
【0074】
さらにサイズを小さくし,スマートアンテナの効率を改善するために,アクティブ集積アンテナ技術が研究されてよく,そこでの,アンテナ,RF増幅回路及びRFミキサ回路が共に集積されて,それによって,システムにおける回路損失が最小となる。
【0075】
リアクタンス素子とその結果のアンテナの放射パターンの最適制御のために,ロバストDSPアルゴリズムが研究されてよく,DSPハードウェア実装はFPGAを利用するであろう。
【0076】
発明者はまた,ここで教示したもののより広い利用若しくは発展を予見している。以下は,低コストでコンパクトなESPRAスマートアンテナに関するターゲットとされるマーケットにおける,適用アイデアを提供しようと目指している。
【0077】
無線通信マーケットの急速な発展は,最も効果的な方法で,利用可能なスペクトルの性能と使用法を改善するように研究されている新技術において,巨大な需要をもたらしてきた。望まれるユーザーの方への最大放射を形成し,電波障害の方向で消失(null)を形成することによって,スマートアンテナ技術は,範囲を広げ,効率を増加させる能力を有する。その結果として,ほとんどすべての無線通信技術に対して無線通信接続の性能を向上させている。技術の取り込みの決定要因は製品の価格でなく,従って,製品の充填度がスマートアンテナの採用を誘発している。無線技術として定義されるソフトウェアと共にスマートアンテナ技術は,Bluetooth(登録商標),Wi−Fi,UWB及びWiMAXを単一装置パッケージに集積することができる。ブロードバンドアクセスソリューションの必要条件が,マーケットに出現し始め,そして,企業は,いくつかの無線プロトコルを同じ装置に集積する可能性を考慮するよう強いられている。今日,ヨーロッパ,アメリカと日本の企業は,スマートアンテナ技術が約束する利益を獲得するために,最高潮の段階にある。以下の適用は,低コストでコンパクトなサイズのESPARアンテナに対して関係づけられる。
【0078】
WiMAX
WiMAXは,今日,スマートアンテナ技術にとって最強の推進力の1つである。さらにまた,3Gと比較してWiMAXスペクトルの低コストは,WiMAXを有する無線サービスの分野に参入するサービスプロバイダにとって明らかな推進力である。コスト/Hzにおけるこの違いは,特にヨーロッパで著しく,そこでの平均3Gスペクトルのコスト/Hzは,平均的なWiMAXスペクトルのコスト/Hzより353倍高い。
【0079】
Wi−Fi通信/無線LAN
スマートアンテナ技術は,範囲の拡張とキャパシティ利得を約束し,それ故に,無線LANホットスポットアプリケーションでのスマートアンテナの採用の推進を約束し得る。さらにまた,MIMOは無線LAN範囲拡張アプリケーションにおいて広まるであろう。
【0080】
3G通信基地局/塔
通信マーケットにおいて,スマートアンテナは,CDMA混信除去と3G送受器と通信基地局/塔へのキャパシティの拡張を提供する。
【0081】
DVB−T−受信
ESPARスマートアンテナは,広帯域特性を持つように改善され,それ故,携帯用の地上デジタルビデオ放送(DVB−T)受信器としての適用に適当である。
【0082】
携帯型無線通信端末
携帯性が携帯型無線通信端末にとって鍵となる必要条件であるので,アンテナの寸法は重要になるであろう。
【0083】
RFIDアプリケーション
ESPARアンテナは,RFIDタグ読取りシステムの領域において,読取り速度,衝突軽減,品目の位置探査とRFIDシステムのキャパシティの改善に,非常に寄与することができるであろう。
【0084】
衛星通信と衛星間通信
本ESPARデザインは,直線偏波を有する。現行のデザインの円偏光な小さなスマートアンテナへの拡張/修正は,衛星通信と衛星間通信に対して,ビーム操縦と空間配備の適用において非常に役立つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モノポールエレメントと,
前記駆動モノポールエレメントのまわりに環状配列で配置される寄生モノポールエレメントの配列を含むアンテナ装置であって,
前記寄生モノポールエレメントは,曲がっている,もしくは,湾曲している立体形状であるアンテナ装置。
【請求項2】
前記寄生モノポールエレメントが,前記駆動モノポールエレメントに向かって曲がっている,もしくは,湾曲している,請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
各々の前記寄生モノポールエレメントが,前記駆動モノポールエレメントと平行である,もしくは,実質的に平行な部分を有する,請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記駆動モノポールエレメントが,その端にディスクを備えている,請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記寄生モノポールエレメントが6つ備えられている,請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
寄生エレメントの連結が,規則的な放射間隔によって相互に間隔を置いて配置される,請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナ装置は,接地スリーブを含み,前記接地スリーブの上に前記モノポールエレメントを備えている,請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記接地スリーブが,前記接地スリーブの両端で第1及び第2の接地板を含み,前記第1及び第2の接地板の各々が,前記駆動モノポールエレメント及び前記寄生モノポールエレメントのセットをそれぞれ含む,請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記駆動モノポールエレメント及び前記寄生モノポールエレメントが,類似したビームを発生することができる,請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記接地スリーブが,実質的に波長の1/4の深さと,前記波長の3/16の半径を有し,前記波長に対して前記アンテナ装置が調節される,請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記駆動モノポールエレメントは,実質的にチューブ波長の1/8の高さを有し,
前記寄生モノポールエレメントは,実質的に調節された波長の1/4の長さを有するが,前記寄生モノポールエレメントは,前記駆動モノポールエレメントの最大の高さを有するように,曲がっている,もしくは。湾曲している,請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
誘電天板が,前記駆動モノポールエレメント及び前記寄生モノポールエレメントの端と接触して配置される,請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記アンテナ装置が,密接に結合した駆動エレメントと寄生エレメントによって導入されるコンデンサの負荷を用いることにより、電子走査導波器アレイ(ESPAR)アンテナを提供する,
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項14】
前記アンテナ装置が,コンパクトな前記電子走査導波器アレイ(ESPAR)アンテナを提供する,請求項13に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
前記アンテナ装置が,2.4GHzから2.5GHzまでの周波数帯をカバーする,請求項14に記載のアンテナ装置。
【請求項16】
前記アンテナ装置は,上部と下部のモノポールエレメントのセットが,異なるアンテナ機能を提供するよう作動し得る二重アンテナ構造を備える,請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項17】
第1のモノポール構造が,通信基地局の方向に第1のビームを進めるよう作動でき,その間に,第2のモノポール構造が,他のユーザーの方向に,第2のビームを進めるよう作動できる,請求項16に記載のアンテナ装置。
【請求項18】
望ましい信号の方向を推定し,望ましい信号の方へメインローブを形成し,そして,電波障害の方向で消失を自動的に形成するために,前記アンテナ装置の適応ビーム操縦を提供するステップを含む,アンテナ装置を作動する方法。
【請求項19】
請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のアンテナ装置を含む通信システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−511186(P2013−511186A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538417(P2012−538417)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051900
【国際公開番号】WO2011/058378
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(511256923)
【Fターム(参考)】