説明

スライス装置及び方法

【課題】作業者に負担を強いることなく、ブロック状対象物からスライスされたスライス片を確実に容器まで搬送することができる安価なスライス装置等を提供すること。
【解決手段】本発明のスライス装置は、ブロックをスライスするスライス装置であって、ブロック2を上方部分がステージ10から突出させた状態で固定するブロック固定手段4と、ステージから突出しているブロックの上方部分をスライスしてスライス片を作成するスライス手段12と、スライス片を保持する保持手段14と、スライス片を収容する容器手段18と、保持手段を移動させスライス片を容器に搬送するスライス片搬送手段34とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライス装置及び方法に関し、より詳細には、ブロック状対象物を厚さ数mm程度のスライス片にスライスするスライス装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂ブロック等のブロック状対象物をスライスして厚さ数mm以下の薄いスライス片を得るミクロトーム等のスライス装置が知られている。このようなスライス装置としては、例えば特許文献1に記載された装置がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−226324号公報
【0004】
特許文献1に記載されたスライス装置は、例えば、異なる核酸等の生体高分子が固定化された多数の生体高分子固定化ゲル保持中空繊維を規則的に配列することによって形成された繊維集合体(ブロック状対象物)を、繊維軸と直交する方向にスライスしてキャピラリー・アレイ・シートを製造する際に使用される。
【0005】
繊維集合体をスライスすることによって製造されたキャピラリー・アレイ・シートは、容器に収容して保管されるので、このようなスライス装置では、スライス作業後に、スライス片であるキャピラリー・アレイ・シートを一枚ずつ、容器まで搬送する必要がある。
【0006】
スライス片であるキャピラリー・アレイ・シートは、スライス装置の刃から脱落した後の位置や角度、又は表裏が一定ではないため、特許文献1の装置を用いたスライス作業では、作業者がキャピラリー・アレイ・シートを目視し、ピンセット等を用いてキャピラリー・アレイ・シートを保持し、容器まで搬送していた。
しかしながら、このような搬送方法は、作業者にとって負担であり、スライス作業の効率を悪化させていた。
【0007】
また、画像認識装置に連動したマニュピレータを用いてスライス片の位置、角度等を認識し、所定の駆動部の先端に固定された保持具を用いてスライス片を搬送する装置も提案されている。
しかしながら、このような搬送装置は、高価な画像認識装置を導入し、さらに画像認識装置を制御するために複雑なプログラムを作成する必要があり、コスト面が高くなり、かつ保守整備に手間がかかる等の種々の問題を有している。
【0008】
ブロック状の生体試料(ブロック状対象物)を顕微鏡観察用薄片にスライスするスライス装置および方法等においても同様の問題が生じている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、作業者に負担を強いることなく、ブロック状対象物からスライスされたスライス片を確実に容器まで搬送することができる安価なスライス装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
ブロックをスライスするスライス装置であって、
前記ブロックを上方部分がステージから突出させた状態で固定するブロック固定手段と、
前記ステージから突出している前記ブロックの上方部分をスライスしてスライス片を作成するスライス手段と、
前記スライス片を保持する保持手段と、
前記スライス片を収容する容器手段と、
前記保持手段を移動させ、前記スライス片を前記容器に搬送するスライス片搬送手段と、を備えている、
ことを特徴とするスライス装置が提供される。
【0011】
このような構成によれば、作業者の目視、又は画像認識装置等によらず、ブロックからスライスされたスライス片を確実に保持することができ、さらに、保持手段を移動させることによってスライス片を容器まで、確実に搬送することができる。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、前記保持手段とともに移動可能に配置され前記容器に液体を分注する液体分注手段を備えている。
このような構成によれば、スライス片を容器まで搬送するときに、液体分注手段が搬送手段とともに移動するので、液体分注手段を、容器に対して位置決めする機構を別途に設ける必要がなくなる。
【0013】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、
前記容器を複数個収納可能な容器収納手段と、
前記容器を、前記容器収納手段と、前記スライス片搬送手段がアクセス可能な位置との間で搬送する容器搬送手段と、を備えている。
【0014】
さらに、本発明の他の態様によれば、
ブロックをスライスするスライス方法であって、
前記ブロックを上方部分がステージから突出させた状態で固定するブロック固定ステップと、
前記ステージから突出している前記ブロックの上方部分をスライスしてスライス片を作成するスライスステップと、
前記スライス片を保持する保持ステップと、
前記保持されたスライス片を前記容器に搬送するスライス片搬送ステップと、を備えている、
ことを特徴とするスライス方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態のスライス装置について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
本実施形態のスライス装置は、ブロック状のスライス対象物を厚さ数mm以下のスライス片にスライスする装置である。ここでスライスされるブロック状のスライス対象物は、特に限定されるものではない。
【0017】
ブロック状のスライス対象物として、例えば、顕微鏡観察用薄片を得るための生体試料が挙げられる。一般的には生体試料は、柔軟で崩壊し易く、損傷を防止する必要があり、さらに薄片の連続的な変化を観察することを目的として多数の薄片を管理する必要がある。本実施態様のスライス装置及び方法は、このような生体試料からスライス片を作成する際に適している。
【0018】
また、ブロック状のスライス対象物の他の例として、生体関連物質マイクロアレイの製造工程で作成される樹脂ブロックが挙げられる。
生体関連物質マイクロアレイの製造方法として、樹脂ブロックに形成した複数の貫通孔に生体関連物質を保持し、貫通孔と直交する方向に樹脂ブロックをスライスして、生体関連物質マイクロアレイを得る方法(特開2000−78998号公報参照)や、生体関連物質を保持した複数本の中空繊維を収束して樹脂で一体化した樹脂ブロックを繊維方向と直交する方向に該樹脂ブロックをスライスすることで生体関連物質マイクロアレイを得る方法(WO00/53736号公報参照)が知られているが、本実施態様のスライス装置及び方法は、このような樹脂ブロック(ブロック状対象物)をスライスする場合にも適している。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態のスライス装置1を概略的に示す斜視図である。スライス装置1は、ブロック(ブロック状対象物)2をスライスしてスライス片を作成する装置であり、スライスするブロック(ブロック状対象物)2をクランプして固定する開閉クランプ4と、開閉クランプ4の下方に配置されブロック2が載置される上下動可能なZ軸ステージ6と、Z軸ステージ6をX軸に沿って前後動させるX軸駆動機構8と備えている。
【0020】
開閉クランプ4は、板状のステージ10を有するとともに、図示しない連結機構によってX軸駆動機構8に連結され、X軸駆動機構8によって、Z軸ステージ6とともにX軸方向に移動可能とされている。
【0021】
スライス装置1は、また、ブロック2をスライスするブレード12を備えている。ブレード12は、刃先が開閉クランプ4のステージ10の上面とほぼ同じ高さ位置に配置されるように、固定されている。
【0022】
スライス装置1は、さらに、ステージ10の上方に配置された真空吸引パッド14と、真空吸引パッド14に連通した真空発生器16と、スライス片を収容する容器18を備えている。真空吸引パッド14のX軸方向位置は、ブレード12の刃先のX軸方向位置に隣接している。
真空吸引パッド14と真空発生器16は、ブロック2からスライスされたスライス片を保持する保持手段を構成する。
【0023】
容器18は、容器用X軸駆動機構20によってX軸に沿って移動可能な容器用ステージ22に載置される。容器用ステージ22は、クランプ4のステージ10に隣接した載置位置(図1)と、容器ラック24内の収納位置との間を容器用X軸駆動機構20によって往復動可能にされている。
【0024】
真空吸引パッド14に隣接して、分注ノズル26が配置されている。分注ノズル26は、分注バルブ28が設けられた管路30によって液体タンク32と連通されて分注装置を構成し、液体タンク32内の液体を、容器18の所定箇所に所定量づつ供給する。
【0025】
真空吸引パッド14と分注ノズル26は、パッド用Z軸駆動機構34によって、Z軸に沿って上下動可能なパッド用Z軸ステージ34に取付けられている。また、パッド用Z軸駆動機構34は、パッド用Y軸駆動機構36によって、Y軸に沿って往復動可能に構成されている。
【0026】
即ち、真空吸引パッド14と分注ノズル26は、パッド用Y軸駆動機構36によって、開閉クランプ4にクランプされたブロック2の上方位置と、載置位置に配置された容器ステージ22の上方位置との間を往復動することができるように構成されている。
【0027】
また、真空吸引パッド14と分注ノズル26は、パッド用Z軸駆動機構34によって、真空吸引パッド14が、開閉クランプ4にクランプされたブロック2の上面を吸引する下方位置と、開閉クランプ4にクランプされたブロック2の上面から上方に離間した上方位置との間を上下方向に往復動することができるように構成されている。
【0028】
開閉クランプ4は、スライス時に生じる圧縮および剪断荷重によるブロック2の逃げ・変形・崩壊を防ぐ保持機能を有している。本実施態様のようにスライスするブロック2の断面形状が、一定である場合には、開閉クランプ4の開口部形状をブロック2の形状と合わせることによって、保持機能を高めることができる。また、スライスするブロックの断面形状が、一定でない場合には、開閉クランプ4の形状は汎用性の高い万力形状とするのがよい。
【0029】
開閉クランプ4への荷重印加の方法として、空気圧や油圧を駆動源とするアクチュエータを用いれば、空気圧や油圧の圧力調整でクランプ荷重の調整が容易となり、さらに汎用性が高くなり好ましい。
【0030】
Z軸ステージ6をZ軸に沿って駆動する駆動機構、X軸駆動機構8、容器用X軸駆動機構20、パッド用Z軸駆動機構34、パッド用Y軸駆動機構36は、送りねじをモータで駆動される機構で構成されると、制御性や位置決め精度に優れ好ましい。これらの駆動機構は、図示しない制御装置に記憶されたプログラムよって、所定の動作をするように設定されている。
【0031】
また、制御目標点数が2点に限られる場合は、アクチュエータを用いるとスライス装置を簡素化でき好ましい。
スライス装置の要求仕様に応じて、制御目標点数を限定した簡素な構造、制御方式による安価且つ軽量なステージ駆動機構を適宜選択してもよい。
しかしながら、X軸ステージ8は、スライス時に生じる圧縮および剪断荷重を全て受けることを考慮して、十分な推力・荷重容量を有する機種を選定するのが好ましい。
【0032】
真空吸着パッド14は、材質・形状・寸法等それぞれ特徴を有する多種多様なものが安価に入手可能で、薄片の性状に最適なものを適宜選定可能である。
【0033】
また、真空発生器16としては、真空破壊バルブや、真空スイッチとコンポーネントになった装置、または、汎用の真空ポンプが使用される。
スライス片の寸法、質量に応じて異なるスライス片を保持するための吸引力を発生できるように、真空吸引パッド14および真空発生器16の仕様が決定される。
【0034】
真空吸引パッド14および真空発生器16による保持手段に代えて、スライス片を針状のもので刺して保持する保持手段、スライス片をピンセットやチャックで掴むことによって保持する保持手段、あるいはスライス片が磁力で吸着可能である場合は電磁石で吸着することによって保持する保持手段を用いることができる。また、保持手段の種類に関係なく、スライス片の寸法や質量に対して十分な保持力を持たせるために、スライス片の複数箇所を保持するように保持手段を構成してもよい。
【0035】
容器18は、スライス片の形状や寸法によって、最適なものが適宜選択される。本実施態様では、板状の本体に、スライス片が収容される複数の凹部(収容区画)が形成された所謂ウェルプレートが容器18として使用されている。
【0036】
本実施態様では、容器用X軸駆動機構20、容器用ステージ22等によって構成される交換手段によって、ステージ10に隣接して配置される容器18が交換されるため、交換手段の仕様に合致した容器18が選定されている。
【0037】
交換手段としては、理化学実験機器の試料保管装置や試料分注装置に備えられるウェルプレート自動交換装置を使用してもよい。この装置は、多数のウェルプレートを収納したラックから、制御プログラムに基づき所望のウェルプレートを搬送する公知の装置である。
【0038】
容器18の収容区画に所定量の液体を分注する分注手段としては、市販の液剤分注装置から、用いる液剤の性状や量によって最適な装置が適宜選定される。選定の際に勘案すべき液剤の性状としては、粘度、温度、毒性、腐食性等が挙げられる。
分注ノズル26は、分注の際に容器18の収容区画上への位置決めが必要となるが、本実施態様のように、真空吸着パッド14に隣接して設けることにより、分注ノズル14を収容区画上に位置決めするための専用機器が不要となり、スライス装置を簡素化できる点で好ましい。
【0039】
次に、本実施形態のスライス装置1の動作を説明する。
駆動機構等の動作は、図示しない制御装置に記憶されたプログラムによって制御される。まず、スライスするブロック2をZ軸ステージ6上に載置する。次いで、開閉クランプ10を開いた状態で、Z軸ステージ6を適宜上下動させ、ステージ10の上面から上方に突出するブロック2の高さを、製作するスライス片の厚さに合わせる。ブロック2の突出高さをスライス片のする厚さと同一に設定した後、開閉クランプ4を閉じ、ブロック2を固定する。
【0040】
次いで、X軸駆動機構8を作動させ、Z軸ステージ6をブレード12に向けて移動させることによって、ステージ10から上方に突出しているブロック2の上方部分を、ブレード12で切断してスライス片を作成する。
【0041】
ブレード12によるステージ片作成の際、保持手段を、パッド用Z軸駆動機構34およびパッド用Y軸駆動機構36によって真空吸引パッド14がブロックからスライスされたスライス片を吸着保持できる位置に配置しておき、真空発生器16からの減圧吸引により、作成されたスライス片を真空吸引パッド14で吸着保持する。
【0042】
真空吸引パッド14の配置タイミング、真空発生器の作動タイミングは特に限定されるものではないが、ブロック2からスライス片が完全に切り離される前に、ブロック2の頂面のスライス後にステージ片となる領域が、真空吸着パッド14で吸引保持された状態となっていることが必要である。
【0043】
このようにして真空吸着パッド14で吸引保持スライス片を、パッド用Z軸駆動機構34およびパッド用Y軸駆動機構36を作動させ、容器18の所定の収容区画(凹部)上に搬送し、真空吸引を停止して収容区画内に落下させる。
このとき容器18は、容器用X軸駆動機構20によって、クランプ4のステージ10に隣接した載置位置(図1)に配置された容器用ステージ22上に配置されている。
【0044】
スライス片を収容する収納区画への搬送は、あらかじめ入力したシーケンスプログラムに基づいてパッド用Z軸駆動機構34、パッド用Y軸駆動機構36を作動させる自動制御による。しかしながら、作業者がその都度、選定する構成でもよい。
【0045】
スライス片を乾燥させることが好ましくない場合には、分注手段によって、容器18の収容区画(凹部)に所定量の液体を分注する。本実施態様は、容器にスライス片を収容する前または後に、分注ノズル26から所定量の水等を容器18の収容区画内に分注し、スライス片の乾燥を防止できるように構成されている。
【0046】
容器18を交換する場合には、容器用X軸駆動機構20を作動させ、容器18が載置されている容器用ステージ22を、クランプ4のステージ10に隣接した載置位置(図1)から、容器ラック24内の収納位置に移動させ、容器ラック24内に容器18を収容する。次いで、容器ラック24内の他の容器18を容器用ステージ22に載置した後、容器用ステージ22を、クランプ4のステージ10に隣接した載置位置(図1)に配置する。
【0047】
連続的にスライス作業を行う場合は、X軸ステージ6をスライス前の初期位置に戻し、一連の動作を繰り返す。また、ブロックを全長に渡ってスライスする場合には、ブロックの長さ(高さ)をスライス装置自身が判断して自動的にスライスを終了するプログラムに設計すれば、作業者が長時間監視する必要がないので好ましい。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示す実施態様に沿ってスライス装置を製作した。
ブレードとして、住友電工ハードメタル製超硬合金AF1を材質とし、刃渡り150mm、刃厚さ0.9mm、刃先角度20°のものを用いた。真空吸着パッドとして、FIPA製φ1.5フラットパッド102.001.002.2を用いた。真空発生器として、日本ピスコ製真空発生器VUH07−66Jを用いた。バッド用Z軸ステージとして、SMC製エアスライドテーブルMXS6−50を用いた。
【0050】
真空吸着パッドと真空発生器は、パッド用Z軸ステージに取り付けられている。パッド用Y軸駆動機構として、IAI製ロボシリンダRCP2−SA5−I−PM−6−200−P1−R05を用いた。パッド用Z軸ステージはパッド用Y軸駆動機構に取り付けられている。
【0051】
容器として、ナルジェヌンクインターナショナル製マルチディッシュ150687を用いた。容器の材質はポリスチレン、外形寸法は縦128×横86×厚さ15mm、収納区画数は縦8×横6=48区画である。
【0052】
容器用X軸駆動機構として、IAI製ロボシリンダRCP2−SA5−I−PM−6−500−P1−R05を用いた。開閉クランプとして、SMC製デュアルロッドシリンダCXSL20−20を2台とSMC製レギュレータAR25を組み合わせて用いた。
【0053】
Z軸ステージとして、THK製LMガイドアクチュエータKR3306A+400LPと三菱電機製サーボモータHC−KFS053Bを組み合わせて用いた。X軸駆動機構として、THK製LMガイドSHS20V2SSC0−640Lを2台とTHK製ボールねじBNT1605−2.6ZZ+640Lと三菱電機製サーボモータHC−KFS053を組み合わせて用いた。
【0054】
交換手段として、開口幅128×高さ32×奥行90mmの開口部を24箇所設けたラックを製作し、ラック位置決め用にTHK製LMガイドアクチュエータKR3306A+600Lと三菱電機製サーボモータHA−FF13Bを組み合わせたものを用いた。
【0055】
分注ノズルとして、武蔵エンジニアリング製プラスチックニードルPN−15G−Bを用い、真空吸着パッドから10mm離した位置に取り付けた。分注バルブとして、武蔵エンジニアリング製ダイアフラムバルブDCV−3を用いた。液体タンクとして、武蔵エンジニアリング製ストレートワンタッチタンクSOT−3Lを用いた。
【0056】
装置の運転プログラムとして、ブロックを全長に渡ってスライスし終えた場合と、容器が満量になった場合に、自動的に運転終了する設計とした。
【0057】
このような構成を有するスライス装置を用いて、ブロックのスライスを実施した。
ブロックとして、外径0.28/内径0.2×長さ140mmのポリカーボネート中空糸を縦19×横12本の碁盤目状に配列し、その周囲を日本ポリウレタン製コロネート4403とニッポラン4276を58:42の質量比で混合したもので包埋して縦12×横7×長さ140mmの四角柱状に成型したポリウレタンブロックを用いた。
スライスした薄片の厚さは0.25mmに設定した。
【0058】
容器を交換手段の開口部に10個装填した。
また、収容区画への収容順序を、各容器のA1、A2・・・A7、A8、B1、B2・・・F7、F8の順に選定し、満量になった容器を空の容器へ交換した後再びA1、A2・・・の順に選定するよう、シーケンスプログラムに設定した。
液体タンクに水を1000cc装填し、1収納区画あたりの分注量を1.5ccに設定した。
ブロック2、長さ方向と直交する方向に、ブロック全長に渡ってスライスした。その間、スライス装置は以下の通りに動作した。
【0059】
まず開閉クランプを開いた状態で、Z軸ステージを適宜上下動して、スライスする厚さを0.25mmに調節し、開閉クランプを閉じ、ブロックを固定する。続いて、パッド用Z軸ステージとパッド用Y軸駆動機構を動かして、ブロックの表面に真空吸着パッドを接触させ、真空発生器により減圧吸引し、ブロックの表面に真空吸着パッドを吸着させた状態を得る。
【0060】
続いてX軸駆動機構を作動させ、ステージをブレードの方向に動かしてブロックをスライスして、真空吸着パッドが縦12×横7×0.25mmのスライス片を把持した状態を得る。続いて、パッド用Z軸ステージとパッド用Y軸駆動機構と容器用X軸駆動機構を作動させ、容器の目的とする収納区画にスライス片を搬送し、同時に、収容区画に分注ノズルから水を1.5cc分注する。続いてX軸駆動機構によってステージをスライス前の位置に戻し、一連の動作を繰り返す。
【0061】
上記の動作を480回繰り返し、10枚の容器の全収納区画に薄片1枚と水1.5ccを収納した状態で自動停止した。所要時間は2時間40分であり、その間、作業者は何ら操作をすることはなかった。
(比較例1)
上記実施例のスライス装置から、真空吸着パッド、真空発生器、パッド用Z軸ステージ、パッド用Y軸駆動機構、容器用X軸駆動機構、容器ラック、分注ノズル、分注バルブ、液体タンクを取り外して、ブロックのスライスを実施した。
ブロックとして、上記実施例と同じポリウレタンブロックを用いた。
スライスした薄片の厚さは、上記実施例と同じ0.25mmに設定した。
容器を10個用意した。続いて全ての収納区画にスポイトを用いて水を1.5cc分注した。ブロックを、長さ方向と直交する方向に、ブロック全長に渡ってスライスした。その間、スライス装置は以下の通りに動作した。
【0062】
開閉クランプを開いた状態で、Z軸ステージを適宜上下動して、スライスする厚さを0.25mmに調節し、開閉クランプを閉じ、ブロックを固定する。続いてX軸駆動機構をブレードの方向に動かしてブロックをスライスして、縦12×横7×0.25mmのスライス片を得る。続いて、X軸駆動機構によってステージをスライス前の位置に戻し、一連の動作を繰り返す。
【0063】
その間、作業者は、ステージ片が得られる度に、ステージ片をピンセットで把持して、容器の収容区画に収納した。収容区画への収納順序を、各容器のA1、A2・・・A7、A8、B1、B2・・・F7、F8の順に選定し、満量になった容器を水1.5ccが分注された容器へ交換した後再びA1、A2・・・の順に、全ての薄片を収納した。
【0064】
上記の動作を483回繰り返し、10枚の容器の全収納区画に薄片1枚と水1.5ccを収納した状態で運転終了した。途中薄片の把持に失敗して床に落としてしまった3枚は廃棄した。所要時間は2時間50分であった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施態様のスライス装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1:スライス装置
2:ブロック
4:開閉クランプ
6:Z軸ステージ
8:X軸駆動機構
10:ステージ
12:ブレード
14:真空吸引パッド
16:真空発生器
20:容器用X軸駆動機構
22:容器用ステージ
26:分注ノズル
34:パッド用Z軸駆動機構
36:パッド用Y軸駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックをスライスするスライス装置であって、
前記ブロックを上方部分がステージから突出させた状態で固定するブロック固定手段と、
前記ステージから突出している前記ブロックの上方部分をスライスしてスライス片を作成するスライス手段と、
前記スライス片を保持する保持手段と、
前記スライス片を収容する容器手段と、
前記保持手段を移動させ、前記スライス片を前記容器に搬送するスライス片搬送手段と、を備えている、
ことを特徴とするスライス装置。
【請求項2】
前記保持手段とともに移動可能に配置され前記容器に液体を分注する分注手段を備えている、
請求項1に記載のスライス装置。
【請求項3】
前記容器を複数個収納可能な容器収納手段と、
前記容器を、前記容器収納手段と、前記スライス片搬送手段がアクセス可能な位置との間で搬送する容器搬送手段と、を備えている、
請求項1または2に記載のスライス装置。
【請求項4】
ブロックをスライスするスライス方法であって、
前記ブロックを上方部分がステージから突出させた状態で固定するブロック固定ステップと、
前記ステージから突出している前記ブロックの上方部分をスライスしてスライス片を作成するスライスステップと、
前記スライス片を保持する保持ステップと、
前記保持されたスライス片を前記容器に搬送するスライス片搬送ステップと、を備えている、
ことを特徴とするスライス方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−71877(P2010−71877A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241309(P2008−241309)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】