説明

スライス食品の整列装置

【課題】 切断工程の後工程として、食品のスライス片を水平方向に寝かせた状態でかつ姿勢をそろえた状態で一定方向に整列させることができて、スライスされた食品の自動化された加工ラインを可能にするとともに、スライス片を能率よく高速度で搬送、供給することができる整列装置を提供する。
【解決手段】 食品を切断したスライス片sを受け取り水平方向にして一定の時間間隔で回動して下方に落とす一対の受け取り板2を備えた送り出し装置1と、同受け取り板の下方に左右で搬出速度が異なるローラコンベア13,14が配置され、搬出速度が遅いコンベア13側にスライス片sを当接させるとともに、一定方向に姿勢をそろえるガイド板25が設けられた搬出装置11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品をスライスしたスライス片をパックしたり、あるいは加工する場合にこれらの作業を自動化することを可能とする整列装置に係り、詳しくは、たとえば原木パンをスライスした食パンを加工してサンドイッチをつくる場合などに適用して好適である。
【背景技術】
【0002】
従来焼き上がった直方体状の原木パンをスライスしてスライス片からサンドイッチ等をつくる作業は、ほとんど人手で行なわれている。また焼き上がった直後の原木パンは切断が難しく、焼いてから12〜24時間たったパンを切断して加工しているが、パンは、焼き立て後時間がたつほどおいしさが減少していく傾向にあり、できるだけ焼き上げ後4〜8時間以内に加工することが望まれている。
【0003】
従来食パンを薄く切ってパックしたり、あるいはサンドイッチ用パンを自動的に作る製造ラインでは、バンドソーなどを用いたレシプロタイプのパン切断装置が主流であるが、レシプロタイプの切断装置は、パンの切り屑が多く出て不評であった。
最近では切り屑の少ない丸刃切断機を用いた装置も出てきているが、レシプロタイプと違って1枚々々切断する方式であるため、切断した後の姿勢がばらばらで自動化ラインを構築するのが難しいのが現状である。
【0004】
たとえば特許文献1(特開2000−219316号公報)には、スライスされた食パンを所定枚数ずつ分割して供給する装置が開示されている。この装置は、コンベア上を各スライス片が立ったまま積層されて送られてきたスライス片を所定の枚数に分割した後、送られてきた状態のまま搬送するものであり、サンドイッチを作る場合のように、スライス片を1枚ずつ寝かせた状態で姿勢をそろえるようにする必要がある場合には適用できない。
【0005】
また特許文献2(特開2002−68122号公報)には、スライスした食パンを1枚ずつ寝かせた状態で姿勢をそろえて供給する方法が開示されているが、この方法は、仕切りによって複数個に仕切られた仕切り箱を搬送路に横方向に並べ、スライスした食パンを順々に同仕切り箱に挿入した後、同仕切り箱から順々にコンベアに押し出していくのものであり、1枚ずつ姿勢をそろえることができるが、装置の構造が複雑になるとともに、供給速度を速めることができないという問題点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−219316号公報
【特許文献2】特開2002−68122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、従来の方法では、スライスした食パンを1枚ずつ寝かせた状態で姿勢をそろえて加工工程に供給速度を高めて搬送する手段はなく、これらの条件をすべて具備した装置の出現が待たれていた。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、切断工程の後工程として、スライス片を水平方向に寝かせた状態でかつ姿勢をそろえた状態で一定方向に整列させることができて、スライスされた食品の自動化された加工ラインを可能にするとともに、スライス片を能率よく高速度で搬送、供給することができる整列装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するもので、食品を切断したスライス片を受け取り水平方向にして一定の時間間隔で下方に落とす送り出し装置と、同送り出し装置の下方に左右で搬出速度が異なるコンベアが配置され搬出速度が遅いコンベア側に前記スライス片を当接させ一定方向に姿勢をそろえるガイド板が設けられた搬出装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明においては、前記送り出し装置において切断されたスライス片を一定の時間間隔で同送り出し装置の下方に配置されたコンベア上に水平に落とす。このコンベアは左右で搬出速度が異なるたとえばローラコンベア等のコンベアで構成されているため、落とされたスライス片は左右コンベアの搬出速度の差から搬出速度の遅いコンベア側に偏向していく。
【0011】
搬出速度の遅いコンベア側には、スライス片を当接させ一定方向に姿勢をそろえるガイド板が設けられているため、スライス片が同ガイド板に当接した段階で、同スライス片がストッパとなってスライス片が所定位置に位置決めされるとともに、姿勢がそろえられ、送り出し装置によって送り出される時間間隔をもって整列した状態でコンベア上を搬送される。
【0012】
なお通常送り出し装置の上方又は近傍に食品の切断装置を設け、切断されたスライス片が同送り出し装置に落下するように配置する。
また好ましくは、前記送り出し装置を一対の受け取り板を備え、同受け板が水平方向で前記スライス片を受け取り、同受け板を下方に回転させて同スライス片を下方に落とすように構成する。
また好ましくは、前記ガイド板が前記スライス片が落下する近辺では同スライス片の意図する整列位置の外側に湾曲し、その下流側で意図する整列位置に保持すべく直線状とする。
【0013】
さらに好ましくは、前記ガイド板の構成に加えて、前記スライス片が前記ガイド板に当接した後の搬送方向下流側が同一速度のコンベアで構成されるとともに、同ガイド板と対向する側に同ガイド板との間で同スライス片を通す搬送路を区画するガイド板を設ける。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、食品を切断したスライス片を受け取り水平方向にして一定の時間間隔で下方に落とす送り出し装置と、同送り出し装置の下方に左右で搬出速度が異なるコンベアが配置され搬出速度が遅いコンベア側に前記スライス片が当接し搬出位置を定めるガイド板が設けられた搬出装置とを備えたことにより、前記スライス片を確実に前記ガイド板に当接した状態で、かつ意図する所定の間隔をもって前記コンベア上に配置できる。これによって、食品を切断したスライス片を加工する場合に自動化された加工ラインを可能とする。
【0015】
また好ましくは、前記送り出し装置を一対の受け取り板を備え、同受け取り板が水平方向で前記スライス片を受け取り、同受け取り板を下方に回転させて同スライス片を下方に落とすように構成することにより、一対の受け取り板とそれを回転駆動する装置のみの簡単な構造で、確実に問う間隔でスライス片をコンベア上に配置することができる。
【0016】
また好ましくは、前記ガイド板を前記スライス片が落下する近辺では同スライス片を受け入れるように外側に湾曲し、その下流側で直線状となるように構成することにより、スライス片をさらに確実にコンベア上に受け入れ、かつガイド板に当接させることができ、意図される位置に位置決めすることができる。
【0017】
前記構成に加えて、さらに前記スライス片が前記ガイド板に当接した後の搬送方向下流側が同一速度のコンベアで構成されるとともに、同ガイド板と対向する側に同ガイド板との間で同スライス片を通す搬送路を区画するガイド板を設けることにより、スライス片をさらに確実にコンベア上の所定の位置で整列させ、下流側に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
図1〜図8は、本発明の整列装置を原木パンをスライスしたスライス片に適用した第1実施例を示し、図1はその平面図、図2は送り出し装置1の立面図、図3は搬送装置11の上部構造を削除した平面図、図4は搬送装置11の立面図、図5は搬送装置11の右側面図、図6は搬送装置11の左側面図、図7の(a)及び(b)は送り出し装置1の作動状態を示す立面図、図8は同じく平面図である。
【0019】
図1において、1は、焼き上がった直方体形状の原木パンを図示しない切断装置で切断されたスライス片sを水平方向の姿勢を修正して下方に配置された搬出装置11に落とす送り出し装置である。このスライス片sは本実施例の整列装置を経て、たとえばパックされたり、サンドイッチなどに加工される。
【0020】
2は、断面がL型形状の一対の受け取り板であり、受け取り面が水平に配置され、図示しないたとえば丸刃切断機などの切断装置で切断されたスライス片sを受け取り、揺動シリンダ3により90度回転して、下方に配置された搬出装置11に落とす。4は受け取り板2と揺動シリンダ3とを接続する回転カップリング、5は揺動シリンダ3が固定されるベースである。
【0021】
図4に示すように、11は、送り出し装置1からスライス片sを受け取り、整列して搬送する装置であり、基台12に搬送速度の異なるローラコンベア13及び14が配置されている。図6に図示されているように、一方のローラコンベア13は、その端部が中継ローラ15及び主中継ローラ16とともに、チェーンベルト17に巻回され、主中継ローラ16の回転をチェーンベルト17から伝達されている。主中継ローラ16はチェーンベルト18により駆動モータ19の回転を伝達されている。
【0022】
同様に、図5に図示されているように、他方のローラコンベア14は、その端部が中継ローラ20及び主中継ローラ21とともに、チェーンベルト22に巻回され、主中継ローラ21の回転をチェーンベルト22から伝達されている。主中継ローラ21はチェーンベルト23により駆動モータ24の回転を伝達されている。
ローラコンベア13及び14は、ローラコンベア14がローラコンベア13より少しだけ速く回転するように回転速度を設定されている。図3を参照して、搬送方向下流側では、1個のローラコンベア14aとなり、ローラコンベア14と同一の回転速度で回転するように構成されている。
【0023】
また25は、ローラコンベア13上に配置されたガイド板であり、その始端部はスライス片sの意図される整列位置よりも外側に湾曲しており、下流側に向ってスライス片sが設定された整列位置に位置決めされるように直線状に配置されている。26はローラコンベア14上に配置されたガイド板であり、スライス片sがガイド板25に当接されて所定の整列位置に位置決めされた後、その位置を保持するためにガイド板25よりやや下流側を始端部としてスライス片sをガイド板25と挟むように配置されている。
なお27及び28は、ガイド板25又は26を支持する支持部材である。
【0024】
かかる第1実施例に装置において、図7〜8に示すように、図示しない切断装置で直方体状の原木パンが切断され、スライス片sとなって送り出し装置1に落下する。落下したスライス片sは一対の受け取り板2で受け止められ、水平方向の姿勢に保持された後、受け取り板2が揺動シリンダ3によって90度回転することにより、下方に配置された搬送装置11上に落下する。
【0025】
搬送装置11のローラコンベア13及び14上に水平に落下したスライス片sは、ローラコンベア14の回転速度がローラコンベア13の回転速度より若干速いため、図3に示すように、ローラコンベア13側に偏向していき、ガイド板25に当接することにより位置決めされるとともに、一辺がガイド板25に接することにより、姿勢がそろえられ、すべて一定方向に整列する。
ガイド板25に接して一定方向に整列したスライス片sは、ガイド板25とそれに対向して設けられたガイド板26に挟まれた状態で搬送される。
【0026】
このように本装置によれば、スライス片sを一対の受け取り板2で一旦水平状態で受け取り、受け取り板2をそのままローラコンベア13,14上に落とし、ローラコンベア13,14の搬送速度差により、スライス片sをガイド板25に偏向させ、ガイド板25に一辺を接するようにすることで、スライス片sの姿勢制御及び整列を確実に行なうことができる。
またスライス片sの間隔も受け取り板2が回動する時間間隔を調整することで、簡単に所望の間隔にすることができる。
【0027】
またガイド板25をスライス片sが落下する近辺では同スライス片を受け入れるように外側に湾曲し、その下流側で直線状となるように構成することにより、スライス片sを確実にコンベア上に受け入れ、かつガイド板25に当接させることができる。
【0028】
また前記構成に加えて、さらにスライス片sがガイド板25に当接した後の搬送方向下流側が同一速度のコンベアで構成されるとともに、ガイド板25と対向する側に同ガイド板25との間でスライス片sを通す搬送路を区画するガイド板26を設けることにより、スライス片をさらに確実にコンベア14a上の所定の位置で整列させ、下流側に搬送することができる。
【0029】
なお前記第1実施例においては、互いに搬送速度の異なるローラコンベア13及び14の駆動モータ19及び24をそれぞれ別々に設けたが、前記両ローラコンベアを駆動するのに1個の駆動モータを設け、途中の伝達手段で回転速度の異なる2種の回転駆動力を発生させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、食品をスライスしたスライス片をパックしたり、あるいは加工する場合にスライス片を同一間隔で姿勢をそろえてコンベア上に並べることができ、これによって食品の包装又は加工ラインを自動化することを可能とする整列装置に係り、簡単かつ安価な構造で前記スライス片の整列をコンベア上で確実に行なうことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の整列装置を原木パンをスライスしたスライス片に適用した第1実施例を示す平面図である。
【図2】前記第1実施例の送り出し装置1の立面図である。
【図3】前記第1実施例の搬送装置11の上部構造を削除した平面図である。
【図4】前記第1実施例の搬送装置11の立面図である。
【図5】前記第1実施例の搬送装置11の右側面図である。
【図6】前記第1実施例の搬送装置11の左側面図である。
【図7】(a)及び(b)は前記第1実施例の送り出し装置1の作動状態を順を追って示す立面図である。
【図8】前記第1実施例の送り出し装置1の図7の(a)に相当する作動状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 送り出し装置
2 受け取り板
3 揺動シリンダ
4 回転カップリング
5 ベース
11 搬出装置
12 基台
13,14,14a ローラコンベア
15,20 中継ローラ
16,21 主中継ローラ
17,18,22,23 チェーンベルト
19,24 駆動モータ
25,26 ガイド板
27,28 支持部材
s スライス片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を切断したスライス片を受け取り水平方向にして一定の時間間隔で下方に落とす送り出し装置と、同送り出し装置の下方に左右で搬出速度が異なるコンベアが配置され搬出速度が遅いコンベア側に前記スライス片を当接させ一定方向に姿勢をそろえるガイド板が設けられた搬出装置とを備えたことを特徴とするスライス食品の整列装置。
【請求項2】
前記送り出し装置を、一対の受け取り板を備え、同受け取り板が水平方向で前記スライス片を受け取り、同受け取り板を下方に回転させて同スライス片を下方に落とすように構成したことを特徴とする請求項1記載のスライス食品の整列装置。
【請求項3】
前記送り出し装置の上方又は近傍に食品の切断装置を設け、切断されたスライス片が同送り出し装置に落下するようにしたことを特徴とする請求項1記載のスライス食品の整列装置。
【請求項4】
前記ガイド板が前記スライス片が落下する近辺では同スライス片の意図する整列位置の外側に湾曲し、その下流側で意図する整列位置に保持すべく直線状としたことを特徴とする請求項1記載のスライス食品の整列装置。
【請求項5】
前記コンベアがローラコンベアであることを特徴とする請求項1記載のスライス食品の整列装置。
【請求項6】
前記スライス片が前記ガイド板に当接した後の搬送方向下流側が同一速度のコンベアで構成されるとともに、同ガイド板と対向する側に同ガイド板との間で同スライス片を通す搬送路を区画するガイド板を設けたことを特徴とする請求項4記載のスライス食品の整列装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−151583(P2006−151583A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344336(P2004−344336)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】