説明

スライディングノズル装置、及びその面圧解除方法

【課題】構造の複雑化やコストの上昇を抑えながらも、面圧負荷解除機構に異常が発生した際に、面圧解除を行うことが可能なSN装置及びその面圧解除方法を提供する。
【解決手段】摺動金枠20に設けられた傾斜ブロックとコッター60とを摺動接触させ、押圧部材50を介して弾性体52を圧縮し、固定金枠10と開閉金枠30とを連結部材40で連結させて面圧を負荷するSN装置において、押圧部材50を、コッターと接する接触部51と、弾性体を圧縮する圧縮部53と、接触部と圧縮部とを連結する連結部54と、接触部又は圧縮部と連結部を固定する固定解除可能な固定部55とを備えて構成する。面圧負荷解除機構に異常が発生した際は、固定部55の固定を解除して、接触部51と開閉金枠30との間に冶具を挿入し、固定部55を固定することによって、連結部材40と開閉金枠30側の係合部56との間に隙間を生じさせ、連結部材40を係合部56から外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の流量を制御するスライディングノズル装置(以下、「SN装置」という)に関し、特に、自動面圧負荷解除機構に異常が発生した際に、面圧を解除することが可能な機構を備えたSN装置、及びその面圧解除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属容器から流出する溶鋼の流量を制御するSN装置では、スライディングノズルプレート(以下、「SNプレート」という)を摺動させて溶鋼の流量を制御しており、SNプレートの交換時には、面圧の負荷や解除、金枠の開閉といった作業が必要となる。
【0003】
このような作業の負荷を軽減する方法としては、例えば、SNプレートを摺動させる摺動機構を利用して、面圧の負荷や解除を行う機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、摺動金枠側面に傾斜ブロックが設けられており、スプリングを圧縮する押圧部材と傾斜ブロックの間にコッターを差し込み、摺動機構で摺動金枠を摺動させることによって、傾斜ブロックでコッターを介して押圧部材を押し上げ、開閉金枠との間でスプリングを圧縮する。
【0005】
ここで、固定金枠に設けられたフックを押圧部材の係合部に係合させ、摺動金枠を引き戻すと、スプリングの圧縮が緩み、当該スプリングの弾性力によって、固定プレートと摺動プレートとの間に面圧が負荷される。また、コッターを抜き取ることによって、プレート摺動時にスプリングが圧縮され、面圧が解除されることが防止される。
【0006】
一方、面圧を解除する際には、面圧負荷時と同様にスプリングを圧縮することによって、フックと係合部との間に隙間を生じさせ、係合部からフックを外す。
【0007】
このようなSNプレートの摺動機構を利用した面圧負荷解除機構では、摺動機構等にトラブルが発生すると、SNプレートの面圧も解除できなくなる。そこで、非常時の面圧解除方法として、例えば、SNプレートの摺動機構とは別のシリンダーやジャッキを取り付けて面圧を解除する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】国際公開02/090017号パンフレット
【特許文献2】特開平11−254126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の方法では、非常時用のシリンダーやジャッキを別に準備する必要があり、しかもこの非常時用のシリンダーやジャッキを金枠に取り付け及び取り外しする必要があるので、SN装置の構造が複雑になり、コストの上昇にも繋がっていた。
【0009】
そこで、本発明では、構造の複雑化やコストの上昇を抑えながらも、面圧負荷解除機構に異常が発生した際に、面圧解除を行うことが可能なSN装置及びその面圧解除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るSN装置は、摺動金枠に設けられた傾斜ブロックとコッターとを接触させながら摺動(以下、「摺動接触」という)させ、開閉金枠に取り付けられた押圧部材を介して弾性体を圧縮し、固定金枠と開閉金枠とを連結部材で連結させた後、前記弾性体の圧縮を緩めて面圧を負荷するSN装置において、前記押圧部材は、前記コッターと接する接触部と、前記弾性体を圧縮する圧縮部と、前記接触部と前記圧縮部とを連結する連結部と、前記接触部又は前記圧縮部と前記連結部を固定する固定解除可能な固定部とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るSN装置の面圧解除方法は、摺動金枠に設けられた傾斜ブロックとコッターとを摺動接触させ、開閉金枠に取り付けられた押圧部材を介して弾性体を圧縮し、固定金枠と開閉金枠とを連結部材で連結させた後、前記弾性体の圧縮を緩めて面圧を負荷するスライディングノズル装置の面圧解除方法において、前記押圧部材は、前記コッターと接する接触部と、前記弾性体を圧縮する圧縮部と、前記接触部と前記圧縮部とを連結する連結部と、前記接触部又は前記圧縮部と前記連結部を固定する固定解除可能な固定部とを備えて構成され、前記固定部の固定を解除して、前記接触部と前記開閉金枠との間に冶具を挿入し、前記固定部を固定することによって、前記連結部材と前記開閉金枠側の係合部との間に隙間を生じさせ、該連結部材を該係合部から外すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、面圧負荷解除機構の複雑化やコスト上昇を抑えながら、面圧負荷解除機構に異常が発生した際に、面圧解除を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るSN装置、及び当該SN装置を用いた非常時の面圧解除方法について、添付図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す本発明を実施するための形態は、本発明の具体的態様の一例であり、当該形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係るSN装置の構成の一例を示す概略断面図であり、同図(a)は、摺動方向に対して垂直に切断した断面図(同図(b)のA−A断面)であり、同図(b)は、摺動方向に沿って切断した断面図(同図(a)のB−B断面)である。
【0015】
図1に示すように本発明に係るSN装置は、取鍋やタンディッシュなどの溶融金属容器に設置され、固定プレート11を保持する固定金枠10と、摺動プレート21を保持し、摺動機構によって摺動する摺動金枠20と、開閉金枠30と、フック(連結部材)40と、押圧部材50とを具備して構成されている。
【0016】
そして、図2に示すように、摺動金枠20の摺動方向側面には、コッターと摺動接触させる傾斜ブロック22が設けられている。ここで、傾斜ブロック22は、摺動プレート21のノズル孔21aを全閉とする方向(閉方向)に向けて摺動することで、押圧部材を押し上げるように、前方に向かって低く形成されている。
【0017】
なお、摺動接触とは、コッターと傾斜ブロックの摺動面(平滑面)を直接接触させて摺動させる方法に限られるものではなく、例えば、傾斜ブロックの摺動面にローラーを設け、当該ローラーをコッターの摺動面と接触させて摺動させる方法など、傾斜ブロックとコッターの摺動面を間接的に接触させて摺動させてもよい。
【0018】
図1に戻って、押圧部材50は、開閉金枠30に取り付けられており、コッター60と接触する接触部51と、コイルスプリングなどの弾性体52を圧縮する圧縮部53と、接触部51と圧縮部53を連結する連結部54と、接触部51又は圧縮部53を連結部54に固定する固定部55と、フック40と係合する係合部56とを備えている。
【0019】
ここで固定部55は、接触部51や圧縮部53と連結部54との距離が任意の距離以上に離れないように固定すると共に、当該固定を解除可能としている。具体的には、例えば、連結部54の端部にネジ溝をきり、ナットで接触部51や圧縮部53と連結部54を固定する方法や、連結部54の端部を雌ネジとし、ボルトで接触部51や圧縮部53と連結部54を固定する方法など、接触部51や圧縮部53と連結部54との固定を緩め、開閉金枠30と接触部51との間の隙間を広げることが可能な任意の方法を用いることができる。なお、接触部51と圧縮部53の少なくとも一方を固定解除可能とすればよい。
【0020】
上記構成において、通常操業時における面圧の負荷及び解除の動作を図3を用いて説明する。面圧を負荷する際は、まず、摺動金枠20を開方向に摺動させ、スプリング52を圧縮する押圧部材50の接触部51と傾斜ブロック22の間にコッター60を差し込む(図3(a)参照)。
【0021】
次に、摺動機構で摺動金枠20を閉方向に摺動させることによって、傾斜ブロック22でコッター60を押し上げる。この時、コッター60が押し上げられることに伴って、押圧部材50が押し上げられ、開閉金枠30との間でスプリング52が圧縮される(図3(b)参照)。
【0022】
ここで、固定金枠10に設けられたフック40を押圧部材50の係合部56に係合させ(図3(c)参照)、摺動金枠20を引き戻すと、スプリング52の圧縮が緩み、当該スプリング52の弾性力によって、固定プレート11と摺動プレート21との間に面圧が負荷される(図3(d)参照)。また、コッター60を抜き取ることによって、プレート摺動時にスプリング52が圧縮され、面圧が解除されることが防止される。
【0023】
一方、面圧を解除する際は、まず、面圧負荷時と同様に、押圧部材50と傾斜ブロック22の間にコッター60を差し込み、摺動機構で摺動金枠20を閉方向に摺動させ、スプリング52を圧縮する。これによって、フック40と係合部56との間に隙間が生じ、フック40を外すことが可能となり、フック40を外した後に摺動金枠20を開方向に摺動させ、コッター60を抜き取る。
【0024】
次に、摺動金枠の摺動機構等にトラブルが発生した場合の非常時の面圧解除動作を説明する。図4は、この非常時の面圧解除動作を示す概略断面図であり、図1(a)の右側フック近傍を拡大した図である。なお、図4では、固定部55としてナットを利用しているが、固定部は、ナットに限られるものではない。
【0025】
弾性体52によって面圧が負荷された状態において(図4(a)参照)、まず、固定部55を緩め、開閉金枠30の自重を利用して弾性体52をたわませ、開閉金枠30と接触部51との間の隙間70を広げる(図4(b)参照)。なお、接触部51側の固定部を緩めて空間70を広げてもよい。
【0026】
次に、開閉金枠30と接触部51との間の空間70に冶具80を挿入し、固定部55を締めることによって、弾性体52を圧縮する。当該圧縮により、フック40と係合部56との間に隙間が生じ、フック40と係合部56との係合を外すことが可能となる(図4(c)参照)。
【0027】
ここで冶具80は、フック40を係合部56から外すだけの隙間を生じさせる厚みを備え、固定部55を締め付けて弾性体52を圧縮する際の圧力に耐える強度を備えた金属などの任意の材料からなる冶具である。具体的には、面圧負荷時の隙間寸法(正規隙間寸法)に、煉瓦の寸法許容差以上の厚みを加えた厚さとする。すなわち、例えば、煉瓦の寸法許容差が±2mmの時、正規隙間寸法に3mm程度を加えた厚みとする。厚みが厚過ぎると、締め付け時の動作量が増え作業性が低下する。一方薄すぎると寸法公差などによっては、十分な過圧縮ができずフックが外れない恐れがある。
【0028】
通常、プレート間に面圧のかかった状態では、開閉金枠30と接触部51との間に、5〜8mm程度の隙間70がある。本発明では、冶具80が入るところまで(5〜10mm)固定部55(ナット等)を緩め、隙間70の寸法を広げる。そして、広げた隙間70に冶具80を挿入し、固定部55のナットを締め込むことによって、冶具80を挟み込み、弾性体52を過圧縮し、フック40と係合部56の間に隙間が生じさせる。これによって、フック40がフリーとなり、係合部56からフック40を外して面圧を解除することが可能となる。
【0029】
このように本発明では、面圧負荷解除機構に異常が発生した状態において、面圧解除を行うことができる。
【0030】
また、固定部を緩めて冶具を挿入する空間を確保し、冶具挿入後に固定部を締め込むことで弾性体を圧縮してフックを外すための隙間を確保するため、構造の複雑化やコストの上昇を抑えながら、非常時に面圧解除を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るSN装置の構成の一例を示す概略断面図であり、同図(a)は、摺動方向に対して垂直に切断した断面図(同図(b)のA−A断面)であり、同図(b)は、摺動方向に沿って切断した断面図(同図(a)のB−B断面)である。
【図2】摺動金枠の構成の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るSN装置における通常の面圧負荷解除動作を示す概略断面図である。
【図4】本発明に係るSN装置において非常時の面圧解除動作を示す概略断面図であり、図1(a)の右側フック近傍を拡大した図である。
【符号の説明】
【0032】
10…固定金枠、11…固定プレート、20…摺動金枠、21…摺動プレート、21a…ノズル孔、22…傾斜ブロック、30…開閉金枠、40…フック(連結部材)、50…押圧部材、51…接触部、52…弾性体(スプリング)、53…圧縮部、54…連結部、55…固定部、56…係合部、60…コッター、70…隙間、80…冶具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動金枠に設けられた傾斜ブロックとコッターとを摺動接触させ、開閉金枠に取り付けられた押圧部材を介して弾性体を圧縮し、固定金枠と開閉金枠とを連結部材で連結させた後、前記弾性体の圧縮を緩めて面圧を負荷するスライディングノズル装置において、
前記押圧部材は、前記コッターと接する接触部と、前記弾性体を圧縮する圧縮部と、前記接触部と前記圧縮部とを連結する連結部と、前記接触部又は前記圧縮部と前記連結部を固定する固定解除可能な固定部とを備えて構成されていることを特徴とするスライディングノズル装置。
【請求項2】
摺動金枠に設けられた傾斜ブロックとコッターとを摺動接触させ、開閉金枠に取り付けられた押圧部材を介して弾性体を圧縮し、固定金枠と開閉金枠とを連結部材で連結させた後、前記弾性体の圧縮を緩めて面圧を負荷するスライディングノズル装置の面圧解除方法において、
前記押圧部材は、前記コッターと接する接触部と、前記弾性体を圧縮する圧縮部と、前記接触部と前記圧縮部とを連結する連結部と、前記接触部又は前記圧縮部と前記連結部を固定する固定解除可能な固定部とを備えて構成され、
前記固定部の固定を解除して、前記接触部と前記開閉金枠との間に冶具を挿入し、前記固定部を固定することによって、前記連結部材と前記開閉金枠側の係合部との間に隙間を生じさせ、該連結部材を該係合部から外すことを特徴とするスライディングノズル装置の面圧解除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−82652(P2010−82652A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254012(P2008−254012)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】