説明

スライディングノズル装置

【課題】プレート間に負荷する面圧を簡単に変更することができるスライディングノズル装置を提供すること。
【解決手段】弾性体8の弾発力によってプレート間に面圧を負荷するスライディングノズル装置において、弾性体8の伸縮方向に進退可能であり、その進退により弾性体8を伸縮させて弾性体8の弾発力を変化させる弾発力調整部材9を設け、さらに、この弾発力調整部材の前進限を規定する第1ストッパー9aと、後退限を規定する第2ストッパー9bと設けた。弾発力調整部材9を第1ストッパー9aで規定される前進限まで前進させることで相対的に高い面圧を負荷し、弾発力調整部材9を第2ストッパー9bで規定される後退限まで後退させることで相対的に低い面圧を負荷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライディングノズル装置(以下「SN装置」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
SN装置は、溶融金属の流量制御を正確に行うことができるという利点を有することから、溶鋼鍋やタンディッシュなどで広く利用されている。このSN装置は、2枚又は3枚のプレートを備え、これらのプレート間に面圧を負荷して使用される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようにSN装置はプレート間に面圧を負荷して使用されるものの、複数のプレートの接合部が存在することから、その接合部からの空気の進入が懸念され、従来一般的には、高級鋼の流量制御にはSN装置ではなく、耐火物の接合部がないストッパー装置が使用されていた。
【0004】
SN装置を高級鋼の流量制御に使用するには、プレートの接合部からの空気の進入を低減する必要があり、その方策として、面圧を増大させることが検討されている。一方で、面圧を増大させると、プレートに掛かる曲げ応力が増大するので、高級鋼以外の流量制御を行う場合は、従来レベルの面圧とすることが好ましい。すなわち、一台のSN装置で高級鋼と高級鋼以外の一般鋼の流量制御を行うには、SN装置の面圧を変更可能とすることが望まれる。
【0005】
従来、SN装置の面圧を変更する方法としては、面圧を発生させるコイルスプリングを交換する方法が一般的である。しかし、コイルスプリングの交換は、SN装置を一旦分解し、コイルスプリング交換後、再度組み立てるといったオーバーホールに匹敵するような大掛かりな作業であり、プレート交換作業とは別にSN装置を、鋳造→プレート交換→鋳造の一連の作業の流れより切り離すことが必要で、製鉄所から運び出し外部の鉄工所などで行うこともある。
【0006】
このように、従来のSN装置では、機動的に面圧を変更することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開02/090017号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、プレート間に負荷する面圧を簡単に変更することができるSN装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、弾性体の弾発力によってプレート間に面圧を負荷するSN装置において、弾性体の伸縮方向に進退可能であり、その進退により弾性体を伸縮させて弾性体の弾発力を変化させる弾発力調整部材を設け、さらに、この弾発力調整部材の前進限を規定する第1ストッパーと、後退限を規定する第2ストッパーと設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弾発力調整部材を進退させることによってプレート間に負荷する面圧を簡単に変更することができる。しかも、弾発力調整部材の前進限を規定する第1ストッパーと、後退限を規定する第2ストッパーと設けているので、例えば、高級鋼用に相対的に高い面圧を負荷する位置を前進限として第1ストッパーで規定し、高級鋼以外の一般鋼用に相対的に低い面圧を負荷する位置を後退限として第2ストッパーで規定でき、面圧の切り替えを簡単かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例を示す。(a)、(b)は相対的に高い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。(c)、(d)は相対的に低い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す。(a)、(b)は相対的に高い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。(c)、(d)は相対的に低い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明のさらに他の実施例を示す。(a)、(b)は相対的に高い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。(c)、(d)は相対的に低い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施例の形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に本発明の一実施例を示す。同図の(a)、(b)は相対的に高い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。(c)、(d)は相対的に低い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【0014】
図1に示すSN装置は、タンディッシュから排出される溶鋼の流量制御に使用されるもので、上プレート1、下プレート2及び摺動プレート3を有する3枚プレート式である。上プレート1は固定金枠4に、下プレート2は開閉金枠5に、摺動プレート3は図示しない摺動金枠に、それぞれ保持されている。
【0015】
固定金枠4はタンディッシュの底部に固定され、開閉金枠5は固定金枠4に開閉可能に連結され、上記の摺動金枠は開閉金枠5に摺動可能に配置される。
【0016】
固定金枠4には、フック6が揺動可能に取り付けられている。フック6は、面圧負荷時に先端部分を押圧ブロック7に引っ掛け、固定金枠4と開閉金枠5との距離を規定する。
【0017】
開閉金枠3は、プレート間に面圧を負荷するための弾発力を発生させる弾性体としてのコイルスプリング8と、このコイルスプリング8を押圧する押圧ブロック7を備える。
【0018】
押圧ブロック7には、弾発力調整部材9がコイルスプリング8の伸縮方向に進退可能に装着(螺合)されている。弾発力調整部材9は、その進退によりコイルスプリング8の弾発力を変化させる。すなわち、弾発力調整部材9を前進させるとコイルスプリング8の弾発力が増大しプレート間の面圧が増大する。逆に、弾発力調整部材9を後退させるとコイルスプリング8の弾発力が減少しプレート間の面圧が減少する。弾発力調整部材9には、その前進限を規定する第1ストッパー9aと後退限を規定する第2ストッパー9bが押圧ブロック7を挟んで設けられている。
【0019】
このような構成において、使用時には各プレート間に面圧を負荷した状態で、摺動プレート3を摺動させることにより、溶鋼の流量制御を行う。なお、摺動プレート3の摺動方向は、図1(b)において紙面に垂直な方向である。
【0020】
以下、本実施例のSN装置による面圧負荷方法及び面圧の変更方法について説明する。まず、フック6の先端を引っ掛けることができる位置まで、図示しない押圧手段で押圧ブロック7を固定金枠4側に押し付ける。このとき、コイルスプリング8は、押圧ブロック7で摺動時以上に圧縮(過圧縮)される。
【0021】
次に、フック6の先端部分を押圧ブロック7に引っ掛け、上記の押圧手段による押圧ブロック7の押し付けを解除する。これにより、コイルスプリング11の過圧縮が解かれ、コイルスプリング8の弾発力に応じた押し付け力でプレート間に面圧が負荷される。
【0022】
プレート間に負荷する面圧を変更するには、弾発力調整部材9を進退させる。すなわち、弾発力調整部材9を第1ストッパー9aで規定される前進限まで前進させることで相対的に高い面圧を負荷する(図1(a)、(b)の状態)。また、弾発力調整部材9を第2ストッパー9bで規定される後退限まで後退させることで相対的に低い面圧を負荷する(図1(c)、(d)の状態)。
【0023】
このように本実施例によれば、弾発力調整部材9を進退させるだけで、簡単にプレート間に負荷する面圧を変更することができる。また、弾発力調整部材9の前進限及び後退限がそれぞれ第1ストッパー9a及び第2ストッパー9bで規定されるので、面圧の切り替えを簡単かつ正確に行うことができる。
【0024】
本実施例では、弾発力調整部材9を第1ストッパー9aで規定される前進限まで前進させたときに高級鋼用として相対的に高い面圧(60kN)を負荷し、弾発力調整部材9を第2ストッパー9bで規定される後退限まで後退させたときに高級鋼以外の一般鋼用として相対的に低い面圧(40kN)を負荷するようにしている。この相対的に高い面圧及び相対的に低い面圧の具体的な値は、第1ストッパー9a及び第2ストッパー9bの位置を変更することで、変更可能である。
【実施例2】
【0025】
図2に本発明の他の実施例を示す。同図の(a)、(b)は相対的に高い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。(c)、(d)は相対的に低い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【0026】
先に説明した図1の実施例では、弾発力調整部材9を押圧ブロック7に装着したが、図2の実施例では、弾発力調整部材9を開閉ブロック5に装着している。その他の構成は図1の実施例と同一である。したがって、図2において図1のSN装置と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0027】
本実施例においても、弾発力調整部材9を第1ストッパー9aで規定される前進限まで前進させることで相対的に高い面圧を負荷することができ(図2(a)、(b)の状態)、弾発力調整部材9を第2ストッパー9bで規定される後退限まで後退させることで相対的に低い面圧を負荷することができる(図2(c)、(d)の状態)。
【実施例3】
【0028】
図3に本発明のさらに他の実施例を示す。同図の(a)、(b)は相対的に高い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。(c)、(d)は相対的に低い面圧を負荷した状態を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【0029】
図3に示すSN装置は、面圧を負荷する機構が図1のSN装置と異なるのみで、その他の構成は図1のSN装置と同一である。したがって、図3において図1のSN装置と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0030】
本実施例では、開閉金枠3にコイルスプリング8と、このコイルスプリング8を押圧する押圧ブロック10を配置し、面圧フレーム11に弾発力調整部材9を装着(螺合)し、その先端で押圧ブロック10を押し込むことによってコイルスプリング8を圧縮してプレート間に面圧を負荷するようにしている。
【0031】
本実施例においても、弾発力調整部材9を第1ストッパー9aで規定される前進限まで前進させることで相対的に高い面圧を負荷することができ(図3(a)、(b)の状態)、弾発力調整部材9を第2ストッパー9bで規定される後退限まで後退させることで相対的に低い面圧を負荷することができる(図3(c)、(d)の状態)。
【0032】
なお、以上の実施例では、3枚のプレートを有する3枚プレート式のSN装置を用いて説明したが、例えば、上プレートと摺動プレートを用いて構成される2枚プレート式のSN装置に本発明を適用できることは言うまでもない。また、面圧の負荷に使用する弾性体は、コイルスプリングに限られるものではなく、例えば板バネなど、押し付けにより弾発力を発生させるものであればよい。
【符号の説明】
【0033】
1 上プレート
2 下プレート
3 摺動プレート
4 固定金枠
5 開閉金枠
6 フック
7 押圧ブロック
8 コイルスプリング
9 弾発力調整部材
9a 第1ストッパー
9b 第2ストッパー
10 押圧ブロック
11 面圧フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体の弾発力によってプレート間に面圧を負荷するスライディングノズル装置において、
弾性体の伸縮方向に進退可能であり、その進退により弾性体を伸縮させて弾性体の弾発力を変化させる弾発力調整部材を設け、
さらに、この弾発力調整部材の前進限を規定する第1ストッパーと、後退限を規定する第2ストッパーと設けたことを特徴とするスライディングノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−212703(P2011−212703A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81953(P2010−81953)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】