説明

スライディング・モード制御方式において、制御器を構成する方法、プログラム及びシステム

【課題】 プラントにおいて、スライディング・モード制御を適用すべきかどうかを、必要最小限の計測実験データから自動判別すること。
【解決手段】 システムは先ず、プラントを、オープン制御的に計測し、その計測データを用いて、既存のシステム同定手法と次数決定法により、プラントの状態方程式を記述する。スライディング・モード制御の切換超平面を設計する。次に、超平面に拘束された時の線形モデルの制御入力のみを用いた場合の出力と、スライディング・モードの制御入力を用いた場合の出力との間の差分について、3次モーメントと、4次モーメントという高次統計量を計算する。3次モーメントの値が所定の閾値より大きいかまたは、4次モーメントの値が所定の閾値より大きい場合、線形制御入力項と、非線形制御入力項の和として、制御器を構成する。3次モーメントの値と4次モーメントの値がどちらも、所定の閾値より小さいと判定した場合、システムは、線形制御入力項のみを用いて制御器を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライディング・モード制御方式に関し、より詳しくは、スライディング・モード制御方式において、制御器を構成する方法、プログラム及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、システムに含まれる非線形特性やパラメータ変動・負荷変動に対しても制御器(コントローラ)は十分にロバストであることが求められることが多い。これに対応する一つの解決策として、制御入力をスイッチングしながら制御対象の状態をあらかじめ設定した超平面に到達、拘束させ、その状態を平衡点に滑らせることにより、パラメータの不確定性、非線形性、雑音などに対して制御対象を安定化させるスライディング・モード制御(SMC) が多く用いられてきた。
【0003】
例えば、衛星の位置・姿勢制御は、3次元空間での並進・回転の6自由度運動を行なうため、観測ターゲットの姿勢に衛星の姿勢を一致させ、その周りを一定の距離を保って周回するように位置制御するといった非線形方程式に対して、その変動不確定性に対応できる制御の必要がある。
【0004】
また、エンジンの排ガス規制に伴い、排気ガス再循環(EGR)機構などの精度良い制御のためにはオープン制御に基づく設計ではなく、多入力多出力系のフィードバック制御に基づくプラントモデルによる設計が必要となり、制御入力の区分的切替による可変構造系制御が必要とされる。
【0005】
しかし、目標とする制御のためのSMCの導入決定についてはモデル設計者に依存することが多く、またその決定のためには多くの実験結果に基づいて非線形性が存在することを検証しなければならないことが課題であった。さらにSMCにおいて、非線形性は超平面への到達制御則で利用されるが、制御入力スイッチングの理想的瞬時切替を前提とした設計では制御入力にチャタリングが生じてしまう。これを回避するために各種の平滑化が用いられてきたが、空間を規定する非線形性が用いられていないことも問題であった。
【0006】
物理法則記述は一般に非線形となることが多いが、それを根拠に制御ストラテジーも非線形であるとして設計を進めることは制御器に無駄なコストを費やしかねない。また、SMCの必要性を検証するための実験データを多数収集する必要があることもコストを増加させる要因となっていた。さらに、非線形特性が生かされない到達制御則では十分な制御効果が得られない場合があり問題であった。
【0007】
特開平5−80805号公報は、従来の線形制御の技術を利用し、スライディングモード制御および適応制御を導入できるようにするために、スライディング・モードの位相面を、従来の線形制御で求められるトルク指令を積分ゲインK2で除した形とし、リアプノフ関数を制御対象のイナーシャ、動摩擦係数、重力項の推定値を考慮したものとし、該リアプノフ関数が常に負になるように、線形制御各ゲインKp,K1,K2を決め、上記各推定値を変化させて、補助入力を決める技法を開示する。
【0008】
特開2003−15703号公報は、制御対象であるプラントをモデル化してモデルパラメータの同定を行い、同定したモデルパラメータを用いてスライディングモード制御を行う場合の制御をより安定化することができるプラントの制御装置を提供するために、モデルパラメータ同定器が、モデルパラメータの基準ベクトルθbaseに更新ベクトルdθを加算する形式でモデルパラメータベクトルθの算出を行い、更新ベクトルdθの少なくとも1つの要素の過去値に0より大きく1より小さい所定値を乗算することにより、更新ベクトルdθを修正し、修正後の更新ベクトルdθを基準ベクトルθbaseに加算して、モデルパラメータベクトルθを算出することを開示する。
【0009】
また、「スライディングモード制御」野波健蔵、田宏奇著、コロナ社、1994年10月20日第1刷の3.1章には、切換超平面の設計技法が記述されており、3.2章には、スライディングモードコントローラの設計技法が記述されている。
【0010】
しかし、上記先行技術文献には、スライディング・モード制御の設計技法を開示するものの、スライディング・モード制御を適用すべきかどうかを簡易に判別する技法は示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−80805号公報
【特許文献2】特開2003−15703号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「スライディングモード制御」野波健蔵、田宏奇著、コロナ社、1994年10月20日刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明の目的は、プラントにおいて、スライディング・モード制御を適用すべきかどうかを、必要最小限の計測実験データから自動判別することを可能ならしめる技法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に従うシステムは先ず、プラントを、オープン制御的に計測する。そして、その計測データを用いて、既存のシステム同定手法と次数決定法により、プラントの状態方程式を記述する。さらにシステムは、システム同定されたプラントの状態方程式に基づき、スライディング・モード制御の切換超平面を設計する。
【0015】
システムは次に、超平面に拘束された時のノミナル・モデル、すなわち線形モデルの制御入力のみを用いた場合の出力と、スライディング・モードの制御入力を用いた場合の出力との間の差分について、高次統計量を計算する。そこでは特に、3次モーメントと、4次モーメントが計算される。そして、3次モーメントの値が所定の閾値より大きいかまたは、4次モーメントの値が所定の閾値より大きい場合、スライディング・モード制御が妥当であると判定して、4次モーメントの値を用いて、サンプリング時刻毎に係数が更新される非線形制御入力項を計算する。そしてシステムは、線形制御入力項と、非線形制御入力項の和として、制御器を構成する。
【0016】
一方、3次モーメントの値と4次モーメントの値がどちらも、所定の閾値より小さいと判定した場合、システムは、線形制御入力項のみを用いて制御器を構成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スライディング・モード制御導入の妥当性を、必要最小限の計測データから判別できるため、データ収集実験を繰り返す必要がなくなる。また、それを判別する際に利用する統計量に基づき、従来よりも適切な制御器の設計が可能となる。
【0018】
さらに、本発明によれば、衛星など高速スイッチング機能などの搭載が難しいシステムに対しても、チャタリングを回避でき、不測の擾乱に対しても安価な制御器で安定した制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明で使用される一例のコンピュータの概要ブロック図である。
【図2】本発明に従い制御器を決定する処理を実行するためのプログラム等の機能ブロック図である。
【図3】本発明に従い制御器を決定する処理を実行するためのフローチャートを示す図である。
【図4】プラントと制御器の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に従って、本発明の実施例を説明する。これらの実施例は、本発明の好適な態様を説明するためのものであり、発明の範囲をここで示すものに限定する意図はないことを理解されたい。また、以下の図を通して、特に断わらない限り、同一符号は、同一の対象を指すものとする。
【0021】
図1を参照すると、本発明に従い制御器118を制御するための制御コンピュータのハードウェアのブロック図が示されている。図1において、システム・バス102には、CPU104と、主記憶(RAM)106と、ハードディスク・ドライブ(HDD)108と、キーボード110と、マウス112と、ディスプレイ114が接続されている。CPU104は、好適には、32ビットまたは64ビットのアーキテクチャに基づくものであり、例えば、インテル社のPentium(商標)4、インテル社のCore(商標) 2 DUO、AMD社のAthlon(商標)などを使用することができる。主記憶106は、好適には、2GB以上の容量、より好ましくは、4GB以上の容量をもつものである。
【0022】
ハードディスク・ドライブ108には、個々に図示しないが、オペレーティング・システム及び本発明に係る処理プログラムなどが、予め格納されている。オペレーティング・システムは、Linux(商標)、マイクロソフト社のWindows(商標) 7、Windows XP(商標)、Windows(商標)2000、アップルコンピュータのMac OS(商標)などの、CPU104に適合する任意のものでよい。
【0023】
キーボード110及びマウス112は、オペレーティング・システムが提供するグラフィック・ユーザ・インターフェースに従い、ディスプレイ114に表示されたアイコン、タスクバー、ウインドウなどのグラフィック・オブジェクトを操作するために使用される。キーボード110及びマウス112はまた、後述するデータは記録用プログラムを操作するためにも使用される。
【0024】
ディスプレイ114は、これには限定されないが、好適には、1024×768以上の解像度をもち、32ビットtrue colorのLCDモニタである。ディスプレイ114は、例えば、制御器118の制御によるプラント120の動作の波形などを表示するために使用される。
【0025】
ハードディスク・ドライブ108にはさらに、後述する計測モジュール204、システム同定モジュール206、高次統計量計算モジュール208、非線形制御入力項計算モジュール210、制御器構成モジュール212及び、全体の処理を統合するメイン・プログラム202が格納されている。これらのモジュールは、C、C++、C#、Java(R)などの既存の任意のプログラミング言語で作成することができる。これらのモジュールは、オペレーティング・システムの働きで適宜主記憶106にロードされて実行される。図示しないが、メイン・プログラム202は、適当なGUIにより、オペレータが操作するためのウィンドウをディスプレイ114に表示し、オペレータがキーボード110及びマウス112などを使って処理を開始し、あるいは停止することができる。
【0026】
バス102にはさらに、PCI、USBなどの適当なインターフェース・ボード116を介して、制御器118と、プラント120が接続されている。制御器118は、インターフェース・ボード116を通じて、計算の結果得られた制御入力を設定可能なレジスタをもつ。
【0027】
計測モジュール204は、バス102及びインターフェース・ボード116を介して、プラント120に対して一連の信号を供給し、その応答を計測する機能をもつ。
【0028】
システム同定モジュール206は、これには限定されないが、例えば、パラメトリック・モデルで状態方程式を用いるシステム同定法を使用する。パラメトリック・モデルの場合、構造決定ステップとして、モデル次数決定処理も併せて行われる。次に、予測誤差法によりパラメータを推定したり、部分空間法などによって状態空間モデルを推定するなどの処理を行う。システム同定モジュール206として、これには限定されないが、MATLAB(R)のSystem Identification Toolboxを利用することができる。システム同定モジュール206は、システム同定の結果、状態空間方程式を生成する。システム同定処理の詳細は例えば、「システム同定の基礎」足立修一著、東京電機大学出版局、2009年9月10日刊などを参照されたい。
【0029】
さらにこの実施例では、システム同定モジュール206は、生成された状態空間方程式から、スライディング・モード制御用の切換長平面の式を設計する。なお、スライディング・モード制御用の切換長平面の設計については、「スライディングモード制御」野波健蔵、田宏奇著、コロナ社、1994年10月20日刊の3.1章などを参照されたい。
【0030】
高次統計量計算モジュール208は、プラント120の出力信号の高次統計量、特に3次モーメント及び4次モーメントを計算する機能を有する。
【0031】
非線形制御入力項計算モジュール210は、スライディング・モード制御特有の非線形制御入力項をサンプリング時刻毎に計算する機能を有する。この計算の際、高次統計量計算モジュール208で計算された4次モーメントの値が使用される。
【0032】
制御器構成モジュール212は、システム同定されたノミナル・モデル、すなわち、超平面に拘束された場合の線形モデルに基づく制御入力項のみ、または、超平面に拘束された場合の線形モデルに基づく制御入力項及び非線形制御入力項の両方を使って、制御器118を構成する機能をもつ。
【0033】
プラント120は例えば、自動車のエンジン、ブレーキ、エアコン、人工衛星など制御対象の機構装置である。
【0034】
プラント120は、典型的には実機であるが、Simulink(R)、Modelicaなどのシミュレーション・モデリング・ツールで作成されたソフトウェア的なモデルであってもよい。プラント120がソフトウェア的なモデルである場合、ハードディスク・ドライブ108に格納されたモジュールとなり、すると、制御器118もハードディスク・ドライブ108に格納されたモジュールとなるので、インターフェース・ボード116を介したインターフェースは不要である。
【0035】
次に、図3のフローチャートを参照して、図2の機能論理構成により実行される処理の詳細を説明する。
【0036】
ステップ302では、メイン・プログラム202は、計測モジュール204を呼び出して、所定のサンプリング周期で計測信号を供給することにより、プラント120に対するオープン計測を行う。閉ループ計測だと、ある信号入力に対する因果関係が把握しにくいので、単純に計測信号に対する応答出力を把握するという意味で、オープン計測の方が望ましい。
【0037】
こうして応答出力が蓄積されると、メイン・プログラム202は、システム同定モジュール206を呼び出して、好適にはパラメトリック・モデルの使用と、それに続く次数決定技法により、プラント120の状態空間方程式を同定する。システム同定モジュール206は、こうして得られたプラント120の状態空間方程式から、スライディング・モード制御用の切換超平面を設計する。こうして、下記の式で記述されるモデルが得られる。
【数1】


ここで、Xは入力、Yは、出力、Uは制御入力で、システム同定によって決定されたA、B、Cは係数行列である。また、σは切換超平面で、Sは、A、B、Cに基づき決定された、切換超平面を規定する行列である。
【0038】
ここで、メイン・プログラム202は、高次統計量計算モジュール208を呼び出し、ノミナル・モデル、すなわち超平面に拘束された場合の線形モデルの出力を
ylinear、当座のスライディング・モード制御モデルの出力をytempSMCとしたときの、データ観測列{s} = ytempSMC - ylinearを計算する。
【0039】
さらに、データ観測列{s}の平均値を計算して
【数2】


とし、次のような平均値をゼロ化したデータ列{x}を計算する。
【数3】

【0040】
そして、高次統計量計算モジュール208は、データ列{x}を用いて、3次モーメント
【数4】


と、
4次モーメント
【数5】


を計算する。ここで、E[]は期待値であり、d1、d2、d3は、ラグまたは遅れである。
d1、d2、d3は、予め適当な値に決められており、例えば、d1 = d2 = d3 = 0でもよい。
【0041】
メイン・プログラム202は、このように計算された3次モーメントの値、及び4次モーメントの値を用いて、ステップ308で、スライディング・モード制御モデルの妥当性を判定する。
【0042】
すなわち、メイン・プログラム202は、3次モーメントの値c3に対して閾値Th3を予め決め、4次モーメントの値c4に対しても閾値Th4を予め決め、
|c3| > Th3または、|c4| > Th4であると判定した場合に、スライディング・モード制御モデルを使用することが妥当であると判定する。一方、|c3| <= Th3且つ|c4| <= Th4である場合に、スライディング・モード制御モデルを使用することは妥当でないと判定する。
【0043】
メイン・プログラム202がステップ310で、スライディング・モード制御モデルを使用することは妥当でないと判定した場合、ステップ316に進み、メイン・プログラム202は、制御器構成モジュール212を呼び出して、下記の式に示す、超平面に拘束された場合の線形モデルの制御入力で制御器118を構成する。
【数6】

【0044】
メイン・プログラム202がステップ310で、スライディング・モード制御モデルを使用することが妥当であると判定した場合、ステップ312に進み、メイン・プログラム202は、非線形制御入力項計算モジュール210を呼び出し、ステップ306で計算した4次モーメントを用いて、次の式に従い、サンプリング時間t毎に係数tが更新される制御入力の係数ktを計算する。
【数7】


ここで、μはステップ定数で、例えば0.17である。sign()は、符号を返す関数である。また、κ4は、ステップ306で計算した4次モーメントであり、
一例では、κ4 = c4(0,0,0)である。この式は漸化式であり、サンプリング時刻の終了時にktが確定し、その値がkとして非線形制御入力項に使用される。
【0045】
なお、係数ktは、サンプリング時間t毎の計算でなく、下記のようにtについて間引いて計算してもよい。
【数8】


このような式は、超平面に至るまでの空間特性は高次モーメントの意味で偏りがあるので、それを考慮した勾配によって超平面に近づけるように制御すると、チャタリングが生じにくくなるという考察の下に決定されたものである。これは、ネゲントロピーの偏微分を近似した更新式という意味もある。説明を追加すると、これは、ノミナル・モデルからのスライディング・モード制御モデルとの乖離は、ガウス分布のエントロピーと状態量Xのノルムがもつエントロピーの差をゼロに近づけることに相当すると考慮した結果に基づく式である。この結果、非線形制御入力項は、次のように決定される。
【数9】

【0046】
メイン・プログラム202は、ステップ314で、制御器構成モジュール212を呼び出して、下記の式に示す、超平面に拘束された場合の線形モデルの制御入力項と、ステップ312で計算された非線形制御入力項の和で、制御器118を構成する。
【数10】

【0047】
図4は、このようにして構成された制御器118で、プラントを制御する様子を示す模式図である。制御器118の制御入力uが、プラント120にフィードバックされる。
【0048】
以上本発明の実施例を説明してきたが、本発明は、特定のハードウェア、ソフトウェアなどのプラット・フォームに限定されず、任意のプラット・フォーム上で実現可能であることを、この分野の当業者は理解するであろう。
【符号の説明】
【0049】
102 システム・バス
104 CPU
106 主記憶
108 ハードディスク・ドライブ
114 ディスプレイ
116 インターフェース・ボード
118 制御器
120 プラント
202 メイン・プログラム
204 計測モジュール
206 システム同定モジュール
208 高次統計量計算モジュール
210 非線形制御入力項計算モジュール
212 制御器構成モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライディング・モード制御方式において、コンピュータの処理により、所定のプラントに対する制御器を構成する方法であって、
前記プラントのオープン制御的計測によって、計測観測データ列を得るステップと、
前記計測値に基づき、システム同定技法により、前記プラントの状態空間方程式を記述し、スライディング・モード制御モデルのための切換超平面を設計するステップと、
前記観測データ列における、前記超平面上の線形モデルの出力と前記スライディング・モード制御モデル出力との間の差分について、3次統計量及び4次統計量を計算するステップと、
前記3次統計量及び前記4次統計量のどちらかが、所定の閾値より大きいことに応答して、4次モーメントに基づいて、非線形制御入力項を計算し、前記超平面上での線形制御入力と、前記非線形制御入力との和によって制御器を構成するステップと、
前記3次統計量または前記4次統計量の両方が所定の閾値より小さいことに応答して、前記超平面上での線形制御入力によって、線形制御器を構成するステップとを有する、
スライディング・モード制御のための制御器を構成する方法。
【請求項2】
前記非線形制御入力は、前記観測データ列の前記差分の4次統計量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非線形制御入力は、サンプリング時刻毎に係数が更新される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非線形制御入力は、サンプリング時刻を間引いて係数が更新される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記非線形制御入力は、前記超平面に近づける勾配をあらわす、ネゲントロピーの偏微分を近似した式を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
スライディング・モード制御方式において、コンピュータの処理により、所定のプラントに対する制御器を構成するプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記プラントのオープン制御的計測によって、計測観測データ列を得るステップと、
前記計測値に基づき、システム同定技法により、前記プラントの状態空間方程式を記述し、スライディング・モード制御モデルのための切換超平面を設計するステップと、
前記観測データ列における、前記超平面上の線形モデルの出力と前記スライディング・モード制御モデル出力との間の差分について、3次統計量及び4次統計量を計算するステップと、
前記3次統計量及び前記4次統計量のどちらかが、所定の閾値より大きいことに応答して、4次モーメントに基づいて、非線形制御入力項を計算し、前記超平面上での線形制御入力と、前記非線形制御入力との和によって制御器を構成するステップと、
前記3次統計量または前記4次統計量の両方が所定の閾値より小さいことに応答して、前記超平面上での線形制御入力によって、線形制御器を構成するステップを実行させる、
スライディング・モード制御のための制御器を構成するプログラム。
【請求項7】
前記非線形制御入力は、前記観測データ列の前記差分の4次統計量を含む、請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記非線形制御入力は、サンプリング時刻毎に係数が更新される、請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記非線形制御入力は、サンプリング時刻を間引いて係数が更新される、請求項7に記載のプログラム。
【請求項10】
前記非線形制御入力は、前記超平面に近づける勾配をあらわす、ネゲントロピーの偏微分を近似した式を含む、請求項7に記載のプログラム。
【請求項11】
スライディング・モード制御方式において、コンピュータの処理により、所定のプラントに対する制御器を構成するシステムであって、
前記プラントのオープン制御的計測によって、計測観測データ列を得る手段と、
前記計測値に基づき、システム同定技法により、前記プラントの状態空間方程式を記述し、スライディング・モード制御モデルのための切換超平面を設計する手段と、
前記観測データ列における、前記超平面上の線形モデルの出力と前記スライディング・モード制御モデル出力との間の差分について、3次統計量及び4次統計量を計算する手段と、
前記3次統計量及び前記4次統計量のどちらかが、所定の閾値より大きいことに応答して、4次モーメントに基づいて、非線形制御入力項を計算し、前記超平面上での線形制御入力と、前記非線形制御入力との和によって制御器を構成する手段と、
前記3次統計量または前記4次統計量の両方が所定の閾値より小さいことに応答して、前記超平面上での線形制御入力によって、線形制御器を構成する手段を有する、
スライディング・モード制御のための制御器を構成するシステム。
【請求項12】
前記非線形制御入力は、前記観測データ列の前記差分の4次統計量を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記非線形制御入力は、サンプリング時刻毎に係数が更新される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記非線形制御入力は、サンプリング時刻を間引いて係数が更新される、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記非線形制御入力は、前記超平面に近づける勾配をあらわす、ネゲントロピーの偏微分を近似した式を含む、請求項12に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−118718(P2012−118718A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267280(P2010−267280)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】