説明

スライド式建具のガタツキ防止用具

【課題】
スライド式建具の耐久性と汎用性に優れたガタツキ防止用具を提供する。
【解決手段】
スライド式建具(D)の上端首部(2)に埋設される一定深さ(S1)の固定ハウジング(M)と、その内部へ差し込みセットされるほぼ倒立L字型をなす可動羽根(A)の対称な正背一対とから成り、その可動羽根(A)における取付脚板(10)の下端部をハウジング(M)側の水平な支点リブ(7)へ各々回動自在に枢支させると共に、その取付脚板(10)同志が向かい合う相互間に第1圧縮コイルバネ(15)と、ほぼ水平な羽根板(9)同志が向かい合う相互間に第2圧縮コイルバネ(17)とを各々介挿設置して、その羽根板(9)を鴨居(B)の溝レール(1)へ突っ張り拡開状態に弾圧付勢して、その溝レール(1)と上記首部(2)とのクリヤランスを自づと吸収するように定めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鴨居の溝レールに対するスライド式建具のガタツキ防止用具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鴨居の溝レールに沿ってスライドされる引き戸の上端首部と、これを受け入れる溝レールとの相互間には、引き戸の出し入れ操作と開閉作用の必要上、その正背(表裏)両側に約0.5〜1.0mmづつのクリヤランスが確保されているが、この寸法はあくまでも通例であり、一定に規格化されているわけではない。
【0003】
その結果、例えば建物の吹き抜け風力や、使用中にある換気扇の吸引力などを受けた場合、その引き戸の上端首部が鴨居の溝レールと繰り返し当接して、不快なガタツキ騒音を発する憂いがある。
【0004】
このようなスライド式建具のガタツキ防止手段として、特開平11−303520号が提案されており、これによれば緩衝材(5)を建具(1)の上端首部(3)へ、上方からかぶせ付け状態に固定するだけで足りるため、既存の建具(1)へ特別の溝加工を施す必要なく、簡単・低コストに適用実施できる利点があると言える。
【特許文献1】特開平11−303520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公知発明の構成では、その建具(1)のガタツキを防止する緩衝材(5)が、「塩化ビニルやポリエチレン等をはじめとする樹脂材、特に軟質系の樹脂材や、或いは合成ゴム、合成皮革、革等によって形成されている。また、バネ板等の弾性を有する金属板によって形成することも可能である。」と説明されており、その緩衝材(5)自身が持つ「材質的又は構造(形状)的な弾力性乃至可撓性」によって、上記クリヤランスを自動調節(吸収)するようになっている。
【0006】
ところが、上記クリヤランスが建具(1)の正背(表裏)両側において、通例約0.5〜1.0mmづつの僅かな寸法であることを考えると、理論的にはともかく、実際上そのクリヤランスを建具(1)の上面(3a)へかぶせ付け状態に固定された緩衝材(5)のみによって、自動調節(吸収)することは至難の業である。
【0007】
つまり、緩衝材(5)を軟質材から形成すると、その当接縁部(7)(8)を溝内部(4)の対向内面(4a)(4b)へ接触させやすいが、その対向内面(4a)(4b)との滑りが悪く、建具(1)における開閉始動時の抵抗が過大となる。
【0008】
上記当接縁部(7)(8)の摩擦制動力を緩和するために、これを断面三角形や部分的な厚肉に造形したり、まして中空部(10)(11)を確保すべく薄肉化したりすれば、その当接縁部(7)(8)の早期な摺り切れや降伏を生じ、ガタツキ防止作用の安定性と耐久性を維持することができない。
【0009】
他方、緩衝材(5)を硬質材から形成すると、その溝内部(4)の対向内面(4a)(4b)に対する当接縁部(7)(8)の滑りは良くなるが、上記クリヤランスを自動調節(吸収)することが困難であり、その当接縁部(7)(8)を少しでも対向内面(4a)(4b)へ接触させ過ぎれば、摺擦音を発生することになるため、上記クリヤランスの広狭変化に応じた形状と高精度な寸法の各種緩衝材(5)を作成準備して、これを使い分けなければならず、汎用性に劣る。
【0010】
又、緩衝材(5)を弾性の金属板から形成すると、硬質材から成る緩衝材(5)の上記問題のみならず、その金属板の緩衝材(5)によって木質材のレール部材(2)が切削されてしまうおそれもあり、経時的にクリヤランスが広がって、ガタツキ騒音を発する原因となる。
【0011】
更に、図1、2の第1実施形態や図6の第3実施形態から明白なように、上記緩衝材(5)は建具(1)の上面(3a)へ被冠状態として後付け固定されるようになっているため、その建具(1)をレール部材(2)の溝内部(4)へ出し入れ操作することが困難となり、その制約される分だけ建具(1)の上面(3a)を予じめ低く加工しておく必要がある。
【0012】
そして、このことは緩衝材(5)を建具(1)の全体長さ分に亘って取り付ける場合や、その緩衝材(5)を硬質材から形成する場合に、ますます顕著となることが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこのような諸問題の解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1ではスライド式建具の上端首部に埋設一体化される一定深さの硬質な合成樹脂製固定ハウジングと、
【0014】
上記固定ハウジングの開口上面から鴨居の溝レール内へ張り出すほぼ水平な羽根板と、その羽根板の基端部から固定ハウジング内へ垂下する取付脚板とを備えたほぼ倒立L字型の硬質な合成樹脂製可動羽根とから成り、
【0015】
上記可動羽根を向かい合う対称な正背一対として、その取付脚板の下端部を上記固定ハウジングの対応的な中途深さ位置から内向き一体に突出する水平な支点リブへ、各々回動自在に枢支させると共に、
【0016】
上記取付脚板同志が向かい合う相互間に第1圧縮コイルバネと、上記羽根板同志が向かい合う相互間に第2圧縮コイルバネとを各々介挿設置して、その羽根板を上記鴨居の溝レールへ突っ張り拡開状態に弾圧付勢したことを特徴とする。
【0017】
又、上記請求項1に従属する請求項2では、可動羽根における羽根板の張り出し先端部を、鴨居の溝レールと点接触し得る平面視の円弧凸曲面に造形したことを特徴とする。
【0018】
上記請求項1に従属する請求項3では、固定ハウジングから内向きに突出する支点リブを円弧凸曲面に造形する一方、
【0019】
可動羽根における取付脚板の下端部をその可動羽根同志での交互する千鳥状態となる一対のフックとして、上記支点リブと咬み合う円弧凹曲面に造形したことを特徴とする。
【0020】
上記請求項1に従属する請求項4では、可動羽根をナイロンやポリアセタールなどの耐摩耗性と潤滑性に富む硬質な合成樹脂から、厚肉な羽根板と薄肉な取付脚板とを備えたほぼ倒立L字型に一体成形して、
【0021】
その取付脚板の中途深さ位置から内向きに突出するバネ受け凸子同志の相互間へ、第1圧縮コイルバネを介挿設置する一方、
【0022】
上記羽根板の基端部に切り欠いたバネ受け凹溝同志の向かい合う相互間へ、上記第1圧縮コイルバネよりも弱い張力の第2圧縮コイルバネを介挿設置したことを特徴とする。
【0023】
更に、上記請求項1に従属する請求項5では、固定ハウジングをナイロンやポリアセタールなどの耐摩耗性と潤滑性に富む硬質な合成樹脂から、建具の長手方向に沿って延在する平・底面視の細長い楕円形に造形し、
【0024】
その楕円形の長辺壁とこれを仕切る短辺壁との向かい合う一対づつにより、上記固定ハウジングの中央部に平・底面視の長方形な可動羽根受け入れ室を区画すると共に、
【0025】
上記仕切り短辺壁が固定ハウジングの開口上面から一定高さだけ垂立する延長部を、その固定ハウジングの開口上面から張り出す羽根板のガイド片として機能させるように定めたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の構成によれば、スライド式建具の上端首部に埋設一体化される固定ハウジングから張り出す可動羽根の羽根板が、その対称な正背一対の向かい合う相互間に介在する圧縮コイルバネの突っ張り拡開付勢力を受けて、鴨居の溝レールへ常時弾圧するようになっているため、その溝レールと上端首部とのクリヤランスを、これが広狭変化するも自づと吸収することができ、建具のガタツキ騒音を確実に防止し得るのである。
【0027】
又、上記可動羽根の羽根板は圧縮コイルバネの突っ張り拡開付勢力によって、鴨居の溝レールへ弾力的に当接するため、建具のスライド作用に過大な抵抗を与えるおそれがなく、その正背方向への均等な突っ張り拡開付勢力により、常時安定なガタツキ吸収作用を営なむことができ、建具の上端首部から不慮に脱落するおそれもない。
【0028】
特に、請求項2の構成を採用するならば、可動羽根の羽根板が鴨居の溝レールと点接触するため、建具における開閉始動時の抵抗を抑制することができ、その開閉操作を軽く円滑に行なえる効果がある。
【0029】
請求項3の構成を採用するならば、正背一対の可動羽根を同一構成としつつも、固定ハウジングへ対称な並列状態に組立一体化することにより、その可動羽根における取付脚板のフックを固定ハウジング側の支点リブへ、干渉し合うことなく確実に安定良く枢支させることができ、しかも可動羽根の量産効果に優れる。
【0030】
又、請求項4の構成を採用するならば、鴨居の溝レールと摺擦する可動羽根が、ナイロンやポリアセタールなどの耐摩耗性と潤滑性に富む硬質な合成樹脂から成るため、その摺り切れや降伏などを起すおそれがなく、耐久性を向上でき、それにも拘らず圧縮コイルバネの弾圧付勢力により、クリヤランスの吸収効果を発揮し得るのである。
【0031】
更に、請求項5の構成を採用するならば、固定ハウジングの耐久性も向上させることがてき、これを建具の上端首部にルーター加工された対応的な楕円形の埋込み凹溝へ、確固に安定良く埋め込み使用し得るほか、可動羽根受け入れ室の仕切り短辺壁から一定高さだけ垂立するガイド片の一対によって、可動羽根における羽根板の不正な歪みや撓みを防ぐことができ、これを正背一対としての均等に安定良く鴨居の溝レールへ当接させ得る効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、その本発明のガタツキ防止用具は図1〜5のような鴨居(B)の溝レール(1)に沿うスライド式建具(D)の狭幅な上端首部(2)へ埋め込み使用されて、その上端首部(2)と溝レール(1)とのクリヤランス(C)を自づと吸収し、不快なガタツキ騒音の発生を防止するものである。
【0033】
茲に、スライド式建具(D)としては図示の引き戸に限らず、戸襖や可変間仕切り、衝立などを採用することもでき、又溝レール(1)も例えば引き違い戸用として、平行な2列に形成されることがある。
【0034】
上記建具(D)のガタツキ防止用具を示した図6〜14において、(M)はナイロンやポリアセタール、その他の耐摩耗性と潤滑性に富む硬質な合成樹脂から、平・底面視の細長い楕円形(例えば幅:約8mm×長さ:約30mm)に射出成形された固定ハウジングであり、一定の深さ(S1)(例えば約14mm)を有するが、その向かい合う正背一対の長辺壁(3)と直交する向かい合う左右一対の仕切り短辺壁(4)を介して、中央部が平・底面視の長方形(例えば幅:約5.6mm×長さ:約16.7mm)に貫通する可動羽根受け入れ室(R)として区画されている。
【0035】
しかも、その可動羽根受け入れ室(R)を区画している左右一対の仕切り短辺壁(4)が、上記固定ハウジング(M)の開口上面を楕円形に縁取る張り出しフランジ(5)から一定高さ(H)(例えば約5mm)だけ垂立する延長部は後述する可動羽根(A)のガイド片(6)として、その可動羽根(A)の不正な歪みや撓みを規制し得るようになっている。
【0036】
又、(7)は同じく固定ハウジング(M)における向かい合う長辺壁(3)の中途深さ位置から、上記可動羽根受け入れ室(R)への内向き一体に突出された正背一対の水平な支点リブであり、その1条づつが長辺壁(3)に沿って延在しており、しかもその突出表面は円弧凸曲面を呈している。
【0037】
尚、(8)は上記固定ハウジング(M)の周辺に点在分布する複数(図例では合計4個)として、その胴面から外向き一体に突設された垂直な楔リブであり、建具(D)の上端首部(2)に対する埋め込み固定力を昂める。
【0038】
他方、先に一言した可動羽根(A)はやはりナイロンやポリアセタールなどの耐摩耗性と潤滑性に優れた硬質な合成樹脂から、図12〜14のようなほぼ倒立L字型に射出成形されており、その互いに同じ構成の正背一対として、上記固定ハウジング(M)の可動羽根受け入れ室(R)へ上方から対称な並列状態に差し込み一体化されるようになっている。
【0039】
即ち、可動羽根(A)は上記固定ハウジング(M)の開口上面から張り出すことになる一定幅(W)(例えば約9.2mm)のほぼ水平な羽根板(9)と、その羽根板(9)の基端部から固定ハウジング(M)の可動羽根受け入れ室(R)内へ一定深さ(S2)(例えば約12mm)だけ垂下する取付脚板(10)とを備え、その羽根板(9)と取付脚板(10)との一定長さ(L)(例えば約16mm)は同一として、上記可動羽根受け入れ室(R)の長さ(先に例示した約16.7mm)よりも若干短かい。
【0040】
しかも、取付脚板(10)の下端部は左右一対のフック(11a)(11b)として、上記固定ハウジング(M)側の水平な支点リブ(7)と対応合致し得る円弧凹曲面に造形されている。その左右一対のうち、一方のフック(11a)は一定長さ(L)を有する取付脚板(10)の中途部に、他方のフック(11b)は同じく取付脚板(10)の端部に各々振り分け配置されている。
【0041】
そこで、このような可動羽根(A)の取付脚板(10)を上記固定ハウジング(M)の可動羽根受け入れ室(R)内へ上方から差し込み、その下端部のフック(11a)(11b)を固定ハウジング(M)側の水平な支点リブ(7)へ係合させることにより、その固定ハウジング(M)と組立一体化するのである。
【0042】
その場合、可動羽根(A)の正背一対は互いに同じ構成を備えているため、これらを上記可動羽根受け入れ室(R)へ対称な並列状態に差し込むことにより、その取付脚板(10)の上記フック(11a)(11b)を図8から明白なように、可動羽根(A)同志での交互する千鳥状態として、干渉のおそれなく上記支点リブ(7)へ係合させることができる。
【0043】
そうすれば、その支点リブ(7)が円弧凸曲面をなし、これにフック(11a)(11b)が円弧凹曲面として咬み合うため、正背一対の可動羽根(A)はその水平な支点リブ(7)の長手軸線を中心として、図10のような各別に回動し得る枢着状態に保たれることとなり、その全体として一緒に傾き振れる如く回動するおそれはない。
【0044】
又、可動羽根(A)の羽根板(9)は図14のように、上記固定ハウジング(M)の開口上面から垂立するガイド片(6)の一定高さ(H)(先に例示した約5mm)とほぼ同じ厚み(T1)として、取付脚板(10)の一定厚み(T)(例えば約1.2mm)よりも厚く、しかもその固定ハウジング(M)の開口上面から張り出す先端部が、図3や図12の平面図に示すような円弧凸曲面(12)として、鴨居(B)の溝レール(1)へ点接触し得るように造形されており、建具(D)のスライド作用に過大な抵抗を与えるおそれがない。
【0045】
(13)は同じく羽根板(9)における張り出し先端部の上端コーナーに切り欠かれた傾斜勾配面であり、その正背一対での全体的なハ字型によって、建具(D)の上端首部(2)を鴨居(B)の溝レール(1)へ円滑に出し入れ操作できるようになっている。
【0046】
更に、(14)は上記可動羽根(A)を形作る取付脚板(10)の中途深さ位置から内向き一体に突設されたバネ受け凸子であって、その正背一対として向かい合う相互間にはステンレス鋼線から成る第1圧縮コイルバネ(15)が介挿設置されており、これによって取付脚板(10)を上記可動羽根受け入れ室(R)の長辺壁(3)へ押し付け、その取付脚板(10)の下端部をなすフック(11a)(11b)が固定ハウジング(M)側の支点リブ(7)から、不慮に脱落することを防止している。
【0047】
(16)は同じく可動羽根(A)を形作る羽根板(9)の基端部に切り欠かれたバネ受け凹溝であって、その正背一対として向かい合う相互間にはやはりステンレス鋼線の第2圧縮コイルバネ(17)が介挿設置されており、これによって可動羽根(A)の就中羽根板(9)を鴨居(B)の溝レール(1)へ押し付けるべく、常時突っ張り拡開状態に弾圧付勢している。
【0048】
茲に、第1、2圧縮コイルバネ(15)(17)は上記可動羽根(A)の回動支点リブ(7)と直交する配列関係として、固定ハウジング(M)の幅方向に沿い延在していることは言うまでもない。その場合、第2圧縮コイルバネ(17)の張力は建具(D)の重量に応じて強弱調整できるが、第1圧縮コイルバネ(15)との関係ではその第1圧縮コイルバネ(15)の張力よりも弱く設定することが好ましい。
【0049】
(18)は上記羽根板(9)の厚み(T1)が取付脚板(10)の厚み(T2)よりも厚いことに基き、その羽根板(9)を軽量化するための切欠き凹溝であり、上記バネ受け凹溝(16)の周辺部に並列する一対として付与されている。尚、上記ガタツキ防止用具の固定ハウジング(M)と可動羽根(A)には、これが埋め込み使用される建具(D)と同系統の着色カラーを施すことが望ましい。
【0050】
本発明のガタツキ防止用具は上記のような固定ハウジング(M)と、これに組立一体化された正背一対の可動羽根(A)とから成るため、これを使用するに当っては図1〜5に示す如く、スライド式建具(D)の左右両端側へ偏倚した位置において、その狭幅な上端首部(2)へ固定ハウジング用埋込み凹溝(G)の一対をルーター加工し、その内部へ上方から固定ハウジング(M)を各々埋め込み一体化する。
【0051】
ガタツキ防止用具の固定ハウジング(M)とその埋込み凹溝(G)が、建具(D)の長手方向に沿う細長い楕円形として延在することは言うまでもなく、その際固定ハウジング(M)の縁取り張り出しフランジ(5)を図2、5のように、その対応的な埋込み凹溝(G)の開口縁部へ位置決め係止させて、その固定ハウジング(M)の開口上面から張り出す可動羽根(A)における羽根板(9)の上面を、建具(D)における上端首部(2)の上面とほぼ同一高さか、又はこれよりも低く保つのである。
【0052】
そして、上記建具(D)の上端首部(2)を鴨居(B)の溝レール(1)内へ挿入すれば、そのガタツキ防止用具の第2圧縮コイルバネ(17)により突っ張り拡開状態として付勢された可動羽根(A)の羽根板(9)が、上記溝レール(1)の向かい合う内壁面(19)へ押し付け弾圧されることになる結果、建具(D)の上端首部(2)と鴨居(B)の溝レール(1)との相互間に確保されたクリヤランス(C)を、その建具(D)の正背両側において自づとほぼ均等に吸収することができ、ガタツキ騒音を発するおそれはない。
【0053】
このようなガタツキ防止用具の固定ハウジング(M)は建具(D)の上端首部(2)に埋設一体化されているため、決して脱落するおそれがなく、又正背一対の可動羽根(A)はその羽根板(9)同志の相互間に介在する第2圧縮コイルバネ(17)により、上記溝レール(1)の内壁面(19)へ突っ張り拡開状態に弾圧付勢されているため、上記クリヤランス(C)に広狭変化があっても、その変化に常時対応することができ、汎用性に優れる。
【0054】
更に、上記可動羽根(A)の羽根板(9)における固定ハウジング(M)からの張り出し先端部は、平面視の円弧凸曲面(12)として造形されているため、上記溝レール(1)の内壁面(19)と点接触し、スライド式建具(D)の開閉始動時に受ける抵抗がいたづらに過大となるおそれはない。このことには、可動羽根(A)が耐摩耗性と潤滑性に富む硬質な合成樹脂からの成形品であることも、有機的に働くこととなり、軟質材のような摺り切れや降伏などを起さず、耐久性にも優れる。
【0055】
又、上記羽根板(9)の上面は建具(D)における上端首部(2)の上面と同一高さ以下に保たれており、第2圧縮コイルバネ(17)の突っ張り拡開付勢力を受けているため、その羽根板(9)の上端コーナーが傾斜勾配面(13)として切り欠かれていることとも相俟って、建具(D)の上端首部(2)を鴨居(B)の溝レール(1)へ容易に出し入れ操作することができ、その操作に制約を与えるおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るガタツキ防止用具の取り付け使用状態を示す正面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係るガタツキ防止用具を抽出して示す平面図である。
【図7】図6の正面図である。
【図8】図6の底面図である。
【図9】図7の側面図である。
【図10】図7の10−10線断面図である。
【図11】図9の11−11線断面図である。
【図12】可動羽根を抽出して示す平面図である。
【図13】図12の正面図である。
【図14】図13の14−14線断面図である。
【符号の説明】
【0057】
(1)・溝レール
(2)・上端首部
(3)・長辺壁
(4)・仕切り短辺壁
(5)・縁取り張り出しフランジ
(6)・ガイド片
(7)・支点リブ
(8)・楔リブ
(9)・羽根板
(10)・取付脚板
(11a)(11b)・フック
(12)・円弧凸曲面
(13)・傾斜勾配面
(14)・バネ受け凸子
(15)・第1圧縮コイルバネ
(16)・バネ受け凹溝
(17)・第2圧縮コイルバネ
(18)・切欠き凹溝
(19)・溝レールの内壁面
(A)・可動羽根
(B)・鴨居(引き戸)
(C)・クリヤランス
(D)・建具
(G)・埋込み凹溝
(M)・固定ハウジング
(R)・可動羽根受け入れ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド式建具(D)の上端首部(2)に埋設一体化される一定深さ(S1)の硬質な合成樹脂製固定ハウジング(M)と、
上記固定ハウジング(M)の開口上面から鴨居(B)の溝レール(1)内へ張り出すほぼ水平な羽根板(9)と、その羽根板(9)の基端部から固定ハウジング(M)内へ垂下する取付脚板(10)とを備えたほぼ倒立L字型の硬質な合成樹脂製可動羽根(A)とから成り、
上記可動羽根(A)を向かい合う対称な正背一対として、その取付脚板(10)の下端部を上記固定ハウジング(M)の対応的な中途深さ位置から内向き一体に突出する水平な支点リブ(7)へ、各々回動自在に枢支させると共に、
上記取付脚板(10)同志が向かい合う相互間に第1圧縮コイルバネ(15)と、上記羽根板(9)同志が向かい合う相互間に第2圧縮コイルバネ(17)とを各々介挿設置して、その羽根板(9)を上記鴨居(B)の溝レール(1)へ突っ張り拡開状態に弾圧付勢したことを特徴とするスライド式建具のガタツキ防止用具。
【請求項2】
可動羽根(A)における羽根板(9)の張り出し先端部を、鴨居(B)の溝レール(1)と点接触し得る平面視の円弧凸曲面(12)に造形したことを特徴とする請求項1記載のスライド式建具のガタツキ防止用具。
【請求項3】
固定ハウジング(M)から内向きに突出する支点リブ(7)を円弧凸曲面に造形する一方、
可動羽根(A)における取付脚板(10)の下端部をその可動羽根(A)同志での交互する千鳥状態となる一対のフック(11a)(11b)として、上記支点リブ(7)と咬み合う円弧凹曲面に造形したことを特徴とする請求項1記載のスライド式建具のガタツキ防止用具。
【請求項4】
可動羽根(A)をナイロンやポリアセタールなどの耐摩耗性と潤滑性に富む硬質な合成樹脂から、厚肉な羽根板(9)と薄肉な取付脚板(10)とを備えたほぼ倒立L字型に一体成形して、
その取付脚板(10)の中途深さ位置から内向きに突出するバネ受け凸子(14)同志の相互間へ、第1圧縮コイルバネ(15)を介挿設置する一方、
上記羽根板(9)の基端部に切り欠いたバネ受け凹溝(16)同志の向かい合う相互間へ、上記第1圧縮コイルバネ(15)よりも弱い張力の第2圧縮コイルバネ(17)を介挿設置したことを特徴とする請求項1記載のスライド式建具のガタツキ防止用具。
【請求項5】
固定ハウジング(M)をナイロンやポリアセタールなどの耐摩耗性と潤滑性に富む硬質な合成樹脂から、建具(D)の長手方向に沿って延在する平・底面視の細長い楕円形に造形し、
その楕円形の長辺壁(3)とこれを仕切る短辺壁(4)との向かい合う一対づつにより、上記固定ハウジング(M)の中央部に平・底面視の長方形な可動羽根受け入れ室(R)を区画すると共に、
上記仕切り短辺壁(4)が固定ハウジング(M)の開口上面から一定高さ(H)だけ垂立する延長部を、その固定ハウジング(M)の開口上面から張り出す羽根板(9)のガイド片(6)として機能させるように定めたことを特徴とする請求項1記載のスライド式建具のガタツキ防止用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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