説明

スライド式電子部品用ケース及び電子部品用ケースの製造方法

【課題】構造が簡単で、曲面状のスライド式電子部品用ケースへの複数の電子部品の取り付けが容易に行えるスライド式電子部品用ケース及び電子部品用ケースの製造方法を提供する。
【解決手段】摺動型物60をスライド自在に収納する合成樹脂製の収納部11を具備し、収納部11の上部には摺動型物60のスライド方向と同一方向を向いて延びる開口17を設け、さらに収納部11の上部の開口17のスライド方向に直交する両外側方向に向けて円弧状に湾曲するように収納部11と一体にケース上面板20を延設して設け、延設したケース上面板20の収納部11の両外側部分に、それぞれ摺動型物60のスライド方向と同一方向を向いて延びる開口21,23,25を設け、これによってスライド式電子部品用ケース10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式電子部品用ケース及び電子部品用ケースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子機器、例えばビデオカメラにおいて、曲面状の外装ケースに複数のスライド式電子部品を装着する場合がある。
【0003】
しかしながらスライド式電子部品を曲面状の外装ケースに装着する場合、例えば特許文献1に示すように、摺動型物自体を外装ケースの曲面形状に合わせて曲面状に形成するなど、その構造が複雑になっていた。さらにこのスライド式電子部品を一枚の外装ケースに複数設置しようとすると、さらにその構造が複雑になってしまう。
【特許文献1】特開平8−273484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、構造が簡単で、曲面状の電子部品用ケースへの複数の電子部品(特にスライド式電子部品)の取り付けが容易に行えるスライド式電子部品用ケース及び電子部品用ケースの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の発明は、摺動型物をスライド自在に収納する合成樹脂製の収納部を具備し、前記収納部の上部には前記摺動型物のスライド方向と同一方向を向いて延びる開口を設け、さらに前記収納部の上部の開口の前記スライド方向に直交する方向に向けて弧状に湾曲して前記収納部と一体に延設しているケース上面板を具備し、前記ケース上面板の前記収納部の外側部分に、前記摺動型物のスライド方向と同一方向を向いて延びる開口を設けたことを特徴とするスライド式電子部品用ケースにある。
【0006】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスライド式電子部品用ケースにおいて、前記ケース上面板は、前記収納部の上部の開口の前記スライド方向に直交する両外側方向に向けて延設され、且つ延設された両外側部分にそれぞれ前記開口が設けられていることを特徴とするスライド式電子部品用ケースにある。
【0007】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のスライド式電子部品用ケースにおいて、前記ケース上面板の外周側壁部の下面側の辺に凹部を設け、この凹部にこのスライド式電子部品用ケース成形用の樹脂注入部を設けたことを特徴とするスライド式電子部品用ケースにある。
【0008】
本願請求項4に記載の発明は、平板を一方の方向に向けて弧状に湾曲変形してなる形状であって、且つ前記湾曲している方向に向けて並列に複数の電子部品用の開口を設けてなる構造の電子部品用ケースの製造方法において、前記弧状の突部を有する第一金型と、弧状の凹部を有する第二金型とを接合することで、前記突部と凹部との間の隙間に前記電子部品用ケースの外形形状と同一形状のキャビティーを形成すると共に、前記キャビティー内に前記開口形成用のスライドピンを前記第二金型側から突出するキャビティー形成工程と、前記キャビティー内に溶融成形樹脂を充填して硬化させる工程と、前記各スライドピンをキャビティー内から引き抜いた後に第一,第二金型の接合を開いて電子部品用ケースを取り出す工程とを具備し、前記各スライドピンは、前記キャビティーの湾曲形状に合わせて、その湾曲形状に略垂直な方向にスライドするように構成していることを特徴とする電子部品用ケースの製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、スライド式電子部品用の摺動型物をスライド自在に収納する収納部の上部の開口の前記スライド方向に直交する方向に向けて弧状に湾曲して収納部と一体に延設しているケース上面板を具備し、ケース上面板の収納部の外側部分に、摺動型物のスライド方向と同一方向を向いて延びる開口を設けたので、一部品で前記摺動型物を用いたスライド式電子部品の収納部とその他の電子部品も同時に取り付けることができるケース上面板とが構成できて部品点数が削減できる。
【0010】
特にケース上面板の収納部の外側部分に設けた開口は、摺動型物のスライド方向と同一方向を向いて延びるので、この開口にスライド式電子部品を取り付けた際はそのスライド方向がケース上面板の湾曲方向に直交する方向に向かって平行で直線状になり、つまり何れのスライド式電子部品も通常の直線状のスライド式電子部品として構成でき、各スライド式電子部品の構造を簡単にできる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ケース上面板の収納部の両外側部分にそれぞれ開口を設けたので、収納部の両側部分に容易にバランス良く他の電子部品を取り付けることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、ケース上面板の外周側壁部の下面側の辺に設けた凹部に樹脂注入部を設けたので、この樹脂注入部がケース上面板の外周側壁部よりも外側に向けて突出せず、従ってスライド式電子部品用ケースを上から見たときの見栄えが良くなる。
【0013】
請求項4にかかる製造方法を用いて電子部品用ケースを製造すれば、製造される電子部品用ケースの各開口を何れも電子部品用ケースの湾曲面に対して略垂直方向を向くように形成することができる。これによって各開口に取り付ける電子部品の向きを、容易に電子部品用ケースの湾曲面に対して略垂直方向を向くように設置することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態を適用してなるスライド式電子部品集合体1を示す分解斜視図である。同図に示すようにこのスライド式電子部品集合体1は、円弧状に湾曲変形してなる電子部品用ケース(以下この実施形態においては「スライド式電子部品用ケース」という)10の上面側に四つのスライドつまみ40,45,50,55を取り付けると共に、スライド式電子部品用ケース10の下面側に一つの摺動型物60及び各種電子部品を搭載した取付板90を取り付けて構成されている。以下各構成部品について説明する。なお以下の説明で、スライド式電子部品用ケース10のスライドつまみ40,45,50,55側を上、取付板90側を下と定義する。
【0015】
図2は前記スライド式電子部品用ケース10を下面側から見た斜視図である。また図3はスライド式電子部品用ケース10の断面図(図1のA−A断面)である。これらの図に示すようにスライド式電子部品用ケース10は合成樹脂の一体成形品であり、図1に示す摺動型物60をスライド自在に収納する合成樹脂製の収納部11を具備し、前記収納部11の上部に前記摺動型物60のスライド方向と同一方向を向いて延びる開口17を設け、さらに前記収納部11の上部の開口17の前記スライド方向に直交する方向、本実施形態では両外側方向に向けて円弧状に湾曲して前記収納部11と一体に延設しているケース上面板20を具備し、さらに前記ケース上面板20の前記収納部11の外側部分、本実施形態では両外側部分に、前記摺動型物60のスライド方向と同一方向を向いて延びる開口21,23,25を設けて構成されている。
【0016】
収納部11は、下面が開放されたコ字状の側壁部13(四つの辺の内のスライド方向にある一つの辺のみは側壁部13が設けられず、開放されている形状)と、ケース上面板20の側壁部13の上部を覆う部分とによって構成されており、上述のようにケース上面板20の前記側壁部13の中央に位置する部分には、この収納部11内に収納される摺動型物60のスライド方向に向けて延びる矩形状の開口17が設けられている。側壁部13の下辺の所定位置からは三つの小突起からなる固定部15が一体に突出しており、また側壁部13のスライド方向に向く一側辺にはこれを矩形状に切り欠いてなる弾発手段係止部16が設けられている。ケース上面板20の上面の開口17の周囲には、スライドつまみ40をスライド自在に収納する凹状で矩形状のつまみ挿入部19が設けられ、またケース上面板20の下面の開口17の両側部(図では一方のみ示す)にはロック係止用凹部27が設けられている。
【0017】
収納部11上部の両側から外側方向に向けて延設され、これによって帯状の平板を略円弧状に湾曲した形状となっているケース上面板20の一方の側には二つの開口21,23が設けられ、また他方の側には一つの開口25が設けられている。そしてこれら開口21,23,25も前述の開口17と同様に、前記摺動型物60のスライド方向と同一方向を向いて延びている。つまり開口17,21,23,25は、ケース上面板20に一列で且つ平行に設けられている。そしてケース上面板20の上面の各開口21,23,25の周囲にも、スライドつまみ45,50,55をスライド自在に収納する凹状で矩形状のつまみ挿入部22,24,26が設けられている。
【0018】
ケース上面板20の下面の円弧方向に向かう両端近傍部分には、平板状に突出する取付部材29,31がケース上面板20と一体に設けられている。取付部材29,31の下辺からは小突起状の固定部33,35が突出している。これら取付部材29,31の突出方向と、前記収納部11を構成する側壁部13の突出方向とは、何れも同一方向となるように形成されている。
【0019】
ケース上面板20の円弧状に湾曲する一対の外周側壁部37a,37bの内の一方の外周側壁部37aは、斜め上方向を向くように屈曲されることで、下方向且つスライド式電子部品用ケース10側に向かって斜めに傾斜するテーパ面を形成してなる凹部38を設けている。そしてこの凹部38にこのスライド式電子部品用ケース10成形用の樹脂注入部39が設けられている。樹脂注入部39はこのスライド式電子部品用ケース10成形時に成形用樹脂を注入するゲートの先端の成形樹脂が残った部分をいう。
【0020】
図4,図5,図6はスライド式電子部品用ケース10の製造方法説明図である。スライド式電子部品用ケース10を製造するには図4に示すように、円弧状の突部(凸面)201を有する第一金型200と、円弧状の凹部(凹面)301を有する第二金型300とを用意する。この実施形態では、第一金型200が可動側、第二金型300が固定側である。第一金型200の突部201は前記スライド式電子部品用ケース10の下面の形状と同一形状の円弧状に形成されており、突部201の面にはスライド式電子部品用ケース10の側壁部13と取付部材29,31となる凹部203,205,207が形成されている。凹部203,205,207の突出方向は何れも同一方向で、第一金型200の移動方向と同一方向を向くように形成されている。一方第二金型300の凹部301は前記スライド式電子部品用ケース10の上面の形状と同一形状の円弧状に形成されている。また凹部301の面の前記スライド式電子部品用ケース10の各開口17,21,23,25に対向する位置にはスライドピン収納孔303,305,307,309が設けられ、それぞれのスライドピン収納孔303,305,307,309内にはスライドピン311,313,315,317がスライド自在に収納されている。各スライドピン収納孔303,305,307,309とスライドピン311,313,315,317は、直線状に形成され、その直線方向、即ちスライドピン311,313,315,317のスライド方向は、凹部301の湾曲形状(即ち下記するキャビティーC1の湾曲形状)に合わせて、その湾曲形状に略垂直な方向にスライドする方向を向くように形成されている。各スライドピン311,313,315,317の先端には、スライドピン収納孔303,305,307,309の内径よりもその外径を小さくしてなる小突起部304,306,308,310が設けられている。これら小突起部304,306,308,310はスライド式電子部品用ケース10の各開口17,21,23,25を形成し、また小突起部304,306,308,310の第二金型300側の外径の大きくなっている部分(キャビティーC1内に露出している部分)はスライド式電子部品用ケース10の各つまみ挿入部19,22,24,26を形成する。
【0021】
そして図4に示すように第一,第二金型200,300を接合することで、突部201と凹部301との間の隙間にスライド式電子部品用ケース10の外形形状と同一形状のキャビティーC1を形成する。同時に図4に示すように前記キャビティーC1内に前記スライド式電子部品用ケース10の各開口17,21,23,25形成用のスライドピン311,313,315,317を第二金型300側から突出してその小突起部304,306,308,310の先端面を第一金型200の突部201表面に当接する。
【0022】
次に、キャビティーC1内に熱可塑性樹脂からなる溶融成形樹脂を充填する。ここで図5は接合した第一,第二金型200,300の前記図4のスライドピン311の部分の紙面手前・奥方向の断面図(図2のB−B線部分に相当する部分の断面図)である。同図に示すようにキャビティーC1への樹脂注入口(サイドゲート)250は、キャビティーC1の凹部38(図2参照)となる部分a、即ち外周側壁部37a(図1参照)となる部分より下面側のキャビティーC1側に向かうテーパ状の面の部分、に接続されており、この樹脂注入口250から熱可塑性樹脂からなる溶融成形樹脂が充填される。
【0023】
そして前記溶融成形樹脂が硬化した後に図6に示すように、前記各スライドピン311,313,315,317をキャビティーC1から第二金型300側に引き抜き、次に第一,第二金型200,300の接合を開いてスライド式電子部品用ケース10を取り出す。各スライドピン311,313,315,317は、キャビティーC1の湾曲形状に合わせて、その湾曲形状に略垂直な方向にスライドするように構成されているので、成形された各開口17,21,23,25及びつまみ挿入部19,22,24,26はそれぞれスライド式電子部品用ケース10の湾曲形状に略垂直な方向を向く。一方前述のように第一金型200側に形成される収納部11の側壁部13と取付部材29,31の突出方向は、何れも第一金型200を引き抜く方向と同一方向となる。またこのとき図5に示す樹脂注入口250内に成形されている成形樹脂は、その先端近傍で切断され、その際図2に示すように樹脂注入部39が残るが、この樹脂注入部39は凹部38の部分に位置するので、ケース上面板20の外周側壁部37よりも外方に向けて突出しないようにすることができる。
【0024】
以上のようにしてスライド式電子部品用ケース10を製造すれば、開口形成用の各スライドピン311,313,315,317を、キャビティーC1の湾曲形状に合わせて、その湾曲形状に略垂直な方向にスライドするように構成したので、形成されるスライド式電子部品用ケース10の各開口17,21,23,25を何れもスライド式電子部品用ケース10の湾曲面に対して略垂直方向を向くように形成することができる。これによって各開口17,21,23,25に取り付ける電子部品の向きを、容易にスライド式電子部品用ケース10の湾曲面に対して略垂直方向を向くように設置することができる。
【0025】
図1に戻ってスライドつまみ40は、略矩形状の一体成形品であり、その内部に長円形状の貫通孔41を設け、さらにその下面から二本の取付部43を突出して構成されている。取付部43は開口17内に挿入できる外形寸法に形成されている。
【0026】
またスライドつまみ45,50,55はそれぞれ略矩形状の一体成形品であり、その下面からそれぞれ取付部47,51,57(図7参照)を突出して構成されている。各取付部47,51,57はそれぞれ開口21,23,25内に挿入できる外形寸法に形成されている。
【0027】
摺動型物60は、摺動型物本体部61の上部にロック機構部71を積層配置して構成されており、その全体が前記スライド式電子部品用ケース10の収納部11内に、前記スライドつまみ40のスライド方向にスライド自在となるように収納される寸法形状に形成されている。摺動型物本体部61は矩形状の成形品であってその下面に摺動子63(図7参照)を取り付け、またその内部に収納したコイルバネの両端65をその側面から外部に突出して構成されている。ロック機構部71は前記摺動型物本体部61の外形形状と同一の矩形状の本体部73の中央に形成した凹部75内にロック部材81の基部83を収納して構成されている。ロック部材81は、本体部73内に収納したコイルスプリング等の図示しない弾発手段によって上方向に弾発されている。ここでロック部材81は、前記本体部73に形成した凹部75内に収納される矩形状の基部83と、基部83の上面から突出して前記スライドつまみ40の貫通孔41に挿入される押圧部85とを具備して構成されている。基部83の前記押圧部85のスライド方向に向かう両側には、前記スライドつまみ40の二本の取付部43をそれぞれ挿入して基部83の裏面側で熱カシメするための一対の開口87が設けられている。また基部83の前記押圧部85のスライド方向に直交する方向に向かう両側には、小突起状のロック用突起89が設けられている。
【0028】
取付板90は矩形状で帯状に長い金属板を、前記スライド式電子部品用ケース10の四つの開口21,23,17,25部分の円弧状の面に対してそれぞれ略平行な平面となるように、屈曲させて四つの平面91,93,95,97を設けている。取付板90の前記スライド式電子部品用ケース10の各固定部15,33,35(図2参照)に対向する位置には、これらを挿入する貫通する小孔からなる固定部取付部99を設けている。
【0029】
そして取付板90の上面(スライド式電子部品用ケース10側の面)には、一枚のフレキシブル回路基板100が載置・固定されている。フレキシブル回路基板100は、四つの矩形状の基板部110,120,130,140を、連結部150,160,170によって一列に連結し、基板部110側からは引出部180を引き出して構成されている。基板部110上にはケース210内に摺動型物220をスライド自在に収納してなるスライド式電子部品本体部200が取り付けられている。ケース210の側面からは摺動型物220のレバー221が突出している。摺動型物220はスライドつまみ45のスライド方向に向けてスライド移動する。同様に、基板部120上にはケース240内に摺動型物250をスライド自在に収納してなるスライド式電子部品本体部230が取り付けられている。ケース240の側面からは摺動型物250のレバー251が突出している。摺動型物250はスライドつまみ50のスライド方向に向けてスライド移動する。同様に、基板部140上にはケース270内に摺動型物280をスライド自在に収納してなるスライド式電子部品本体部260が取り付けられている。ケース270の側面からは摺動型物280のレバー281が突出している。摺動型物280はスライドつまみ55のスライド方向に向けてスライド移動する。一方基板部130上には、前記摺動型物60の下面に取り付けた摺動子63が摺接する摺接パターン290が形成されている。摺接パターン290はこの実施形態では二組の平行に形成されたスライドスイッチ用のパターンである。摺接パターン290の周囲の面は絶縁層によって覆われている。なお各ケース210,240,270は、図示はしないがその下面から突出する小突起をフレキシブル回路基板100と取付板90にそれぞれ設けた貫通孔に挿入し、その先端を取付板90の下面に固定することで、スライド式電子部品本体部200,230,260とフレキシブル回路基板100と取付板90とを一体に固定している。なお基板部130の前記固定部取付部99に対向する位置には、貫通する小孔からなる取付部131が設けられている。
【0030】
そして以上のように構成されている各部品を組み立てるには、まずスライド式電子部品用ケース10の上面側のつまみ挿入部19内にスライドつまみ40を挿入する。次にスライド式電子部品用ケース10の下面側に設けた収納部11内にロック部材81を収納した本体部73(本体部73とロック部材81間には図示しない弾発手段を設置する)を収納し、その際スライドつまみ40に設けた取付部43をロック部材81に設けた開口87に挿入し、その先端を本体部73の下面側で熱カシメする。これによってスライドつまみ40は本体部73と一体化し、同時にロック部材81はスライドつまみ40に対して上下動自在であって且つロック部材81は図示しない弾発手段によって上方向に弾発されているので、ロック部材81の押圧部85の先端はスライドつまみ40の貫通孔41からスライドつまみ40の上部に突出する。そして本体部73の下面に摺動型物本体部61を図示しない固定手段によって一体に固定する。このとき摺動型物本体部61から突出するコイルバネの両端65は、収納部11の弾発手段係止部16内に収納され、従って摺動型物60はその中立位置として開口17のほぼ中央に位置する。
【0031】
次にスライド式電子部品用ケース10の上面側の各つまみ挿入部22,24,26内に各スライドつまみ45,50,55を挿入する。次にスライド式電子部品用ケース10の下面側に突出するスライドつまみ50の取付部51に、図7に示すように、板状の取付台52を固定する。そしてスライド式電子部品用ケース10の下面側に前記フレキシブル回路基板100を取り付けた取付板90を設置し、その際スライド式電子部品用ケース10の下面に設けた各固定部15,33,35を取付板90に設けた固定部取付部99に挿入し、それらの先端を取付板90の下面で熱カシメし、これによって上記各部材を一体化してスライド式電子部品集合体1が完成する。図7は完成したスライド式電子部品集合体1の側面図である。
【0032】
このとき図7に示すように、スライドつまみ45の取付部47にはスライド式電子部品本体部200のレバー221が係合する。またスライドつまみ50の取付部51に固定した取付台52の下面に設けた係止部52aにはスライド式電子部品本体部230のレバー251が係合する。またスライドつまみ55の取付部57にはスライド式電子部品本体部260のレバー281が係合する。また摺動型物60は収納部11内にスライド自在に収納され、同時にその摺動子63は摺接パターン290上に弾接している。またスライドつまみ40が開口17の中央(中立位置)に位置するときは、ロック部材81のロック用突起89は、スライド式電子部品用ケース10のロック係止用凹部27に係合している。
【0033】
スライド式電子部品集合体1は、スライドつまみ40、ケース上面板20、収納部11、摺動型物60、基板部130、取付板90によって第一スライド式電子部品A1が構成され、スライドつまみ45、ケース上面板20、スライド式電子部品本体部200、基板部110、取付板90によって第二スライド式電子部品A2が構成され、スライドつまみ50、ケース上面板20、スライド式電子部品本体部230、基板部120、取付板90によって第三スライド式電子部品A3が構成され、スライドつまみ55、ケース上面板20、スライド式電子部品本体部260、基板部140、取付板90によって第四スライド式電子部品A4が構成される。
【0034】
そして前記ロックされているスライドつまみ40から突出するロック部材81の押圧部85を押圧してロック部材81を弾発手段の弾発力に抗して下降させると、前記ロック用突起89とロック係止用凹部27との係合が外れ、この状態のままスライドつまみ40をスライドすれば前記摺接パターン290上を摺動子63が摺動してその出力が変化する。前記スライドつまみ40への押圧を解除すれば、前記摺動型物60内に設置したコイルバネの弾発力によってスライドつまみ40は元の中立位置に自動復帰し、ロックされる。一方スライドつまみ45,50,55をスライドすれば、それぞれスライド式電子部品本体部200,230,260が操作されてそれぞれの出力が変化する。
【0035】
以上のようにこの実施形態にかかるスライド式電子部品用ケース10は、ストッパー機能が付く等してその構造が複雑な第一スライド式電子部品A1用の摺動型物60をスライド自在に収納する収納部11と、その他のスライド式電子部品A2,A3,A4をも同時に取り付けることができるケース上面板20とを一部品で構成したので、部品点数が削減できる。また湾曲するケース上面板20を有するスライド式電子部品用ケース10に、容易に摺動型物60による第一スライド式電子部品A1を含む複数の電子部品を取り付けることができるようになる。特に延設したケース上面板20の収納部11の両側部分にそれぞれ設けた開口21,23,25は、摺動型物60のスライド方向と同一方向を向いて延びるので、これら開口21,23,25にスライド式電子部品A2,A3,A4を取り付けた際は何れもそのスライド方向がケース上面板20の湾曲方向に直交する方向に向かって平行で直線状になり、つまり何れのスライド式電子部品A1,A2,A3,A4もケース上面板20の湾曲形状に合わせることなく、通常の直線状のスライド式電子部品A1,A2,A3,A4として構成でき、その構造を簡単にすることができる。
【0036】
なお収納部11の両側に開口21,23,25を設けるようにケース上面板20を設けたのは、このように構成することによって収納部11の位置をケース上面板20の中央付近に位置させるためである。即ち収納部11を湾曲するケース上面板20の中央付近に設けると、ケース上面板20の湾曲面に対して側壁部13が略垂直になり、略矩形状の収納部11を構成できるが、収納部11を湾曲するケース上面板20の端の方に設けると、ケース上面板20の湾曲面に対して側壁部13が斜めに大きく傾斜し、略矩形状の収納部11が構成できずに摺動型物60を収納しにくくなるからである。
【0037】
またこの実施形態にかかるスライド式電子部品集合体1によれば、一部品で収納部11とケース上面板20とが構成できて部品点数が削減できるばかりか、湾曲するケース上面板20を有するスライド式電子部品用ケース10に、容易に前記摺動型物60によるスライド式電子部品を含む複数のスライド式電子部品A1,A2,A3,A4を取り付けることができる。
【0038】
以上本明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では、ケース上面板20の円弧状に湾曲する湾曲面は、前記ケース上面板20の厚み方向に向かって、収納部11側(ケース上面板20の下面側)から見て上方向に凸となる湾曲面(即ちケース上面板20の上面側から見て凸となる湾曲面)であるが、これとは逆に、収納部11側(ケース上面板20の下面側)から見て下方向に凸となる湾曲面(即ちケース上面板20の上面側から見て凹となる湾曲面)であってもよい。
【0039】
また上記実施形態においてはケース上面板20を円弧状に湾曲させたが、円弧状以外の弧状(弓なり)に湾曲させたものでも良い。また上記実施形態では収納部11の上部の開口17のスライド方向に直交する両外側方向に向けてケース上面板20を設けたが、ケース上面板20は収納部11の上部の開口17のスライド方向に直交する一方の方向のみに向けて延設してもよい。要はケース上面板20は、収納部11の上部の開口17のスライド方向に直交する方向に向けて弧状に湾曲するように延設するものであればどのような形状・構造であってもよい。またスライド式電子部品用ケース10や開口17,21,23,25や収納部11の形状・構造に種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0040】
上記実施形態ではケース上面板20に凹部38を形成するために、その外周側壁部37aの下面側の辺に下方向に向かい且つケース上面板20側に向けて斜めに傾斜するテーパ面を設けたが、本発明はテーパ面による凹部38の形状に限定されず、例えば階段状に凹む凹部等、他の各種形状・構造の凹部38であっても良い。要は外周側壁部37aの下面側の辺を外周側壁部37aの面よりも内側(ケース上面板20側)に窪ませる凹部であれば良い。また上記実施形態ではケース上面板20の外周辺を構成する外周側壁部37(37a)の一辺全体を凹部38に構成し、この凹部38に樹脂注入部39を設けたが、凹部38は必ずしも一辺全体に設ける必要はなく、少なくとも樹脂注入部39を設ける部分に凹部38を設ければ良い。
【0041】
上記実施形態では各々のスライドピン311,313,315,317をそれぞれキャビティーC1の湾曲形状に合わせて、その湾曲形状に略垂直な方向にスライドするように構成したが、隣接する二本以上のスライドピンが接近しているような場合は、図8に示す二本のスライドピン313,315のように、これら複数のスライドピン313,315を平行にスライドするように構成しても良い。このように構成すれば、これらによって形成される開口21,23の向きがスライド式電子部品用ケース10の湾曲面に対して垂直な方向から少しずれるが、一方でスライドピン313,315の駆動構造が簡素化され、製造コストの低減化が図れる。
【0042】
上記実施形態にかかる製造方法によって製造される電子部品用ケースに設ける開口21,23,25には、必ずしもスライド式電子部品を装着する必要はなく、例えば押釦式電子部品等、他の種々の電子部品を装着する形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を適用してなるスライド式電子部品集合体1の分解斜視図である。
【図2】スライド式電子部品用ケース10を下面側から見た斜視図である。
【図3】スライド式電子部品用ケース10の断面図(図1のA−A断面図)である。
【図4】スライド式電子部品用ケース10の製造方法説明図である。
【図5】スライド式電子部品用ケース10の製造方法説明図である。
【図6】スライド式電子部品用ケース10の製造方法説明図である。
【図7】スライド式電子部品集合体1の側面図である。
【図8】スライド式電子部品用ケース10の他の製造方法説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 スライド式電子部品集合体
10 スライド式電子部品用ケース
11 収納部
13 側壁部
15 固定部
16 弾発手段係止部
17,21,23,25 開口
19,22,24,26 つまみ挿入部
20 ケース上面板
27 ロック係止用凹部
29,31 取付部材
33,35 固定部
37(37a,37b) 外周側壁部
38 凹部
39 樹脂注入部
40,45,50,55 スライドつまみ
43,47,51,57 取付部
60 摺動型物
90 取付板
200 第一金型
201 突部
203,205,207 凹部
250 樹脂注入口
300 第二金型
301 凹部
303,305,307,309 スライドピン収納孔
304,306,308,310 小突起部
C1 キャビティー
311,313,315,317 スライドピン
61 摺動型物本体部
63 摺動子
71 ロック機構部
73 本体部
81 ロック部材
90 取付板
91,93,95,97 平面
100 フレキシブル回路基板
110,120,130,140 基板部
200,230,260 スライド式電子部品本体部
210,240,270 ケース
220,250,280 摺動型物
221,251,281 レバー
290 摺接パターン
A1,A2,A3,A4 スライド式電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動型物をスライド自在に収納する合成樹脂製の収納部を具備し、前記収納部の上部には前記摺動型物のスライド方向と同一方向を向いて延びる開口を設け、
さらに前記収納部の上部の開口の前記スライド方向に直交する方向に向けて弧状に湾曲して前記収納部と一体に延設しているケース上面板を具備し、
前記ケース上面板の前記収納部の外側部分に、前記摺動型物のスライド方向と同一方向を向いて延びる開口を設けたことを特徴とするスライド式電子部品用ケース。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド式電子部品用ケースにおいて、
前記ケース上面板は、前記収納部の上部の開口の前記スライド方向に直交する両外側方向に向けて延設され、且つ延設された両外側部分にそれぞれ前記開口が設けられていることを特徴とするスライド式電子部品用ケース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスライド式電子部品用ケースにおいて、
前記ケース上面板の外周側壁部の下面側の辺に凹部を設け、この凹部にこのスライド式電子部品用ケース成形用の樹脂注入部を設けたことを特徴とするスライド式電子部品用ケース。
【請求項4】
平板を一方の方向に向けて弧状に湾曲変形してなる形状であって、且つ前記湾曲している方向に向けて並列に複数の電子部品用の開口を設けてなる構造の電子部品用ケースの製造方法において、
前記弧状の突部を有する第一金型と、弧状の凹部を有する第二金型とを接合することで、前記突部と凹部との間の隙間に前記電子部品用ケースの外形形状と同一形状のキャビティーを形成すると共に、前記キャビティー内に前記開口形成用のスライドピンを前記第二金型側から突出するキャビティー形成工程と、
前記キャビティー内に溶融成形樹脂を充填して硬化させる工程と、
前記各スライドピンをキャビティー内から引き抜いた後に第一,第二金型の接合を開いて電子部品用ケースを取り出す工程とを具備し、
前記各スライドピンは、前記キャビティーの湾曲形状に合わせて、その湾曲形状に略垂直な方向にスライドするように構成していることを特徴とする電子部品用ケースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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