説明

スライド機構

【課題】ベースプレートに対してスライドプレートを二方向にスライド可能としたスライド機構に関し、異なる二方向に対するスライド動作を安定して行う。
【解決手段】スライドプレート20がベースプレート40に対して閉位置と第1の開位置との間でスライドすると共に、開位置と反対側に位置する第2の開位置との間でもスライドするよう構成されたスライド機構であって、X1,X2方向に往復動可能な構成でスライドプレート20に取り付けられた第1及び第2のプランジャー50A,50Bと、各プランジャー50A,50Bを互いに広がる方向に向け移動付勢する第1及び第2のワイヤーばね70A,70Bと、各プランジャー50A,50Bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライド機構に係り、特にベースプレートに対してスライドプレートを二方向にスライド可能にしたスライド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、テンキー等が配設された第1の筐体に対して液晶表示装置等が配設された第2の筐体をスライド可能な構成とした携帯電話機が提供されている。この種の携帯電話機には、筐体のスライド動作を可能とするためにスライド機構が内設されている。この種のスライド機構としては、例えば特許文献1に開示された機構が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたスライド機構は、第1の筐体と第2の筐体が重なった状態である閉位置を中心として、第1の筐体に対して第2の筐体を上方向及び下方向の二方向にスライド可能な構成としている。このように、第1の筐体に対して第2の筐体が二方向にスライド可能な構成とすることにより、携帯電話機の使用態様の多様化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−005076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許部件1に開示されたスライド機構は、第1又は第2の筐体の内、いずれか一方の筐体にカム部を形成すると共に、他方の筐体にカム部に係合するカムローラ体を設け、このカムローラ体を弾性付勢手段を用いてカム部に押圧する構成としていた。カム部には三箇所の谷部が形成されており、この三箇所の谷部にカムローラ体が係合可能な構成とすることにより、第1の筐体に対して第2の筐体が異なる3つの位置で位置決めされる構成とされていた。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたスライド機構では、カム部は一方の筐体の片側にのみ設けられており、従って弾性付勢手段により付勢されたカムローラ体も1方向からのみカム部と係合する。このため、弾性付勢手段による弾性力は常に一方向にのみ作用し、これにより第1の筐体と第2の筐体の間には偶力が作用することとなる。よって従来のスライド機構では、この偶力の作用により第1の筐体に対して第2の筐体が円滑にスライドできなくなるおそれがあるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、異なる二方向に対するスライド動作を円滑かつ安定して行いうるスライド機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、第1の観点からは、
スライドプレートがベースプレートに対して閉位置と第1の開位置との間でスライドすると共に、前記閉位置を中心として前記第1の開位置の反対側に位置する第2の開位置との間でもスライドするよう構成されたスライド機構であって、
前記スライドプレートのスライド方向と直行する方向に往復動可能な構成で前記スライドプレートに取り付けられた第1及び第2のプランジャーと、
前記第1及び第2のプランジャーを互いに広がる方向に向け移動付勢する第1及び第2のワイヤーばねと、
前記第1及び第2のプランジャーの外側縁部に形成されており、閉位置に対応する第1の谷部と、前記第1の開位置に対応する第2の谷部と、前記第2の開位置に対応する第3の谷部とが形成されたカム部と、
前記ベースプレートの両側部に設けられており、前記第1及び第2のプランジャーに形成された前記カム部と係合する第1及び第2のローラーとを有することを特徴とするスライド機構により解決することができる。
【0009】
また上記発明において、前記第1及び第2のプランジャーは、前記ワイヤーばねを覆うことにより前記ワイヤーばねに座屈が発生するのを抑制するカバー部が形成されてなることが望ましい。
【0010】
また上記発明において、前記スライドプレートに前記ベースプレーと摺接することにより、前記スライドプレートのスライドを案内するガイド部材を設けることが望ましい。
【0011】
また、上記発明において、前記第1のプランジャーの外側縁部に形成されたカム部の形状と、前記第2のプランジャーの外側縁部に形成されたカム部の形状が、前記スライドプレートの中心線に対して対象な形状とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
開示のスライド機構は、第1及び第2のプランジャーにより、スライドプレートはベースプレートに対してスライド方向に直行する方向の両側部においてスライド付勢されるため、安定したガタツキのないスライドを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(A)は本発明の一実施形態であるスライド機構の正面図、図1(B)は本発明の一実施形態であるスライド機構の背面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態であるスライド機構を構成するスライドプレートの分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態であるスライド機構を構成するベースプレートの分解斜視図である。
【図4】図4(A)はスライドプレートが第1の開位置にある状態を示す斜視図、図4(B)はスライドプレートが閉位置にある状態を示す斜視図、図4(C)はスライドプレートが第2の開位置にある状態を示す斜視図である。
【図5】図5(A)は第2筐体が第1の開位置にある状態を示す斜視図、図5(B)は第2筐体が閉位置にある状態を示す斜視図、図5(C)は第2筐体が第2の開位置にある状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、スライド機構の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0015】
図1乃至図3は本発明の一実施形態であるスライド機構10を説明するための図であり、図4乃至図6はスライド機構10の動作を説明するための図である。本実施形態に係るスライド機構10は、図5に示されるような電子機器1に搭載される。尚、以下の説明において上方とは図中矢印Y1方向をいい、下方とは図中矢印Y2方向をいうものとする。
【0016】
電子機器1は、第1筐体2と第2筐体3とを有している。図5(B)は第1筐体2と第2筐体3が重なり合った閉状態を示している(この時の第2筐体3の位置を閉位置という)。
【0017】
これに対して図5(A)は、スライド機構10により第2筐体3が第1筐体2に対して上方向(図中矢印Y1方向)にスライドした状態を示している。第2筐体3が上方向に移動することにより、第1筐体2の下部に設けられているキーボード4が外部に露出することになり、このキーボード4を用いた入力処理が可能となる。以下、スライド機構10により第2筐体3が第1筐体2に対して上方向に移動した位置を第1の開位置というものとする。
【0018】
また図5(C)は、スライド機構10により第2筐体3が第1筐体2に対して下方向(図中矢印Y2方向)にスライドした状態を示している。第2筐体3が下方向に移動することにより、第1筐体2の上部に設けられているカソールキー5及びファンクションキー6等が外部に露出することになり、この各キー5,6を用いた入力処理が可能となる。以下、スライド機構10により第2筐体3が第1筐体2に対して下方向に移動した位置を第2の開位置というものとする。
【0019】
上記のように、本実施形態に係るスライド機構10を設けることにより、第2筐体3は第1筐体2に対して閉位置と第1の開位置との間でスライドすると共に、閉位置を中心として前記第1の開位置の反対側に位置する第2の開位置との間でもスライドする。これにより、電子機器1を異なる二つのモードにおいて使用することが可能となり、電子機器1の使用態様の多様化を図ることができる。
【0020】
次に、電子機器1に搭載した際に上記のような機能を奏するスライド機構10の構成について説明する。
【0021】
スライド機構10は、スライドプレート20、ベースプレート40、プランジャー50A,50B、ワイヤーばね70A,70B、及びガイド板80A,80B等を有している。
【0022】
先ず、図1及び図2を用いてスライドプレート20について説明する。図1はスライド機構10の正面図及び背面図であり、図2はスライドプレート20の分解斜視図である。
【0023】
スライドプレート20は、図5に示す第2筐体3に固定されるものである。このスライドプレート20は、スライドプレート本体21、上部ばね固定孔22A,22B、下部ばね固定孔23A,23B、上部ストッパピン固定孔24A,24B、下部ストッパピン固定孔25A,25B、上部プランジャー装着孔26A,26B、及び下部プランジャー装着孔27A,27B、上部ガイド装着部28A,28B、及び下部ガイド装着部29A,29B等を有している。
【0024】
スライドプレート本体21は矩形状を有しており、その材質として本実施形態ではステンレス等の金属を用いている。しかしながら、スライドプレート20の材質は金属に限定されるものではなく、硬質樹脂等の金属以外の材質により形成することも可能である。
【0025】
このスライドプレート本体21の両側には、後述するベースプレート40とスライド可能に係合する側縁部30A,30Bが形成されている。この側縁部30A,30Bは、スライド方向(図中、矢印Y1,Y2方向をスライド方向という)に延在している。またスライドプレート20の剛性を高めるため、スライドプレート本体21の中央にはスライド方向に延在する凸部21aが形成されている。また凸部21aの背面側には、第1筐体2と第2筐体3の電気系統を繋ぐフレキシブル配線基板(FPC)が配設される。
【0026】
上部ばね固定孔22A,22Bは、スライドプレート本体21の上部で凸部21aの両側位置に形成されている。また、下部ばね固定孔23A,23Bは、スライドプレート本体21の下部で凸部21aの両側位置に形成されている。この各ばね固定孔22A,22B,23A,23Bには、ワイヤーばね70A,70Bが取り付けられる。
【0027】
ワイヤーばね70A,70Bは、ばね材或いは鋼材等の弾性変形可能な金属ワイヤー材料により形成されている。各ワイヤーばね70A,70Bは、上方向の端部が環状に折曲形成されることにより上部固定分71A,71Bが形成されると共に、下方向の端部も環状に折曲形成されることにより下部固定分72A,72Bが形成されている。
【0028】
また、各ワイヤーばね70A,70Bの上部固定分71A,71Bと下部固定分72A,72Bの中央位置には、スライドプレート本体21に取り付けられた状態で側縁部30A,30B側に向けて突出した山部73A,73Bが形成されている。即ち、ワイヤーばね70Aの山部73Aは矢印X1方向に突出し、またワイヤーばね70Bの山部73Bは矢印X2方向に突出した山形状となるよう構成されている。
【0029】
ワイヤーばね70A,70Bをスライドプレート本体21に固定するには、バネ固定ピン92Aを上部固定分71Aに挿通して上部ばね固定孔22Aに固着し、バネ固定ピン92Bを上部固定分71Bに挿通して上部ばね固定孔22Bに固着する。また、バネ固定ピン93Aを下部固定分72Aに挿通して下部ばね固定孔23Aに固着し、バネ固定ピン93Bを下部固定分72Bに挿通して下部ばね固定孔23Bに固着する。これにより、ワイヤーばね70A,70Bはスライドプレート本体21に固定される。
【0030】
上部ストッパピン固定孔24A,24Bは、スライドプレート本体21の上部両側端部に形成されている。また、下部ストッパピン固定孔25A,25Bは、スライドプレート本体21の下部両側端部に形成されている。このストッパピン固定孔24A,24B,25A,25Bには、ストッパナット94A,94B,95A,95Bが取り付けられる。
【0031】
ストッパナット94A,94Bは、スライドプレート20がベースプレート40に対して上方(Y1方向)への移動限界までスライドした際、スライドプレート20と当接してそれ以上のスライドを規制する。同様に、ストッパナット95A,95Bは、スライドプレート20がベースプレート40に対して下方(Y2方向)への移動限界までスライドした際、スライドプレート20と当接してそれ以上のスライドを規制する。
【0032】
上部及び下部プランジャー装着孔26A,26B,27A,27B及び上部及び下部ガイド装着部28A,28B,29A,29Bは、プランジャー50A,50Bをスライドプレート20に装着するために設けられている。ここで、プランジャー50A,50Bについて説明する。
【0033】
プランジャー50A,50Bは樹脂成型品であり、互いに対称な構成とされている。尚、プランジャー50A,50Bを金属材により形成することも可能である。
【0034】
このプランジャー50A,50Bは、本体部51A,51Bの上部に上部長孔52A,52Bが形成されると共に、下部に下部長孔53A,53Bが形成されている。この各長孔52A,52B,53A,53Bは、X1,X2方向に長い長孔とされている。また、プランジャー50A,50Bの各内側には、カバー部54A,54Bが形成されている。このカバー部54A,54Bは、本体部51A,51Bから内側に鍔状に延出するよう構成されている。
【0035】
更に、プランジャー50A,50Bの外側縁部には、カム部が形成されている。このカム部は、前記した閉位置に対応する第1の谷部55A,55Bと、前記した第1の開位置に対応する第2の谷部56A,56Bと、前記した第2の開位置に対応する第3の谷部57A,57Bとを有している。
【0036】
また、第1の谷部55A,55Bと第2の谷部56A,56Bとの間には第1の山部58A,58Bが形成され、第1の谷部55A,55Bと第3の谷部57A,57Bとの間には第2の山部59A,59Bが形成されている。即ち、カム部は、下部から第2の谷部56A,56B、第1の山部58A,58B、第1の谷部55A,55B、第2の山部59A,59B、第3の谷部57A,57Bの順で形成されている。
【0037】
上記構成とされたプランジャー50A,50Bをスライドプレート20に取り付けるには、次の手順で行う。先ず、スライドプレート20に形成されている上部ガイド装着部28A,28Bにプランジャーガイド90A,90Bを固定すると共に、下部ガイド装着部29A,29Bにプランジャーガイド91A,91Bを固定する。各プランジャーガイド90A,90B,91A,91Bは、摩擦係数が小さく耐久性の高い樹脂により形成されている。この各プランジャーガイド90A,90B,91A,91Bは、上部ガイド装着部28A,28B及び下部ガイド装着部29A,29Bに固定される。
【0038】
プランジャー50A,50Bをスライドプレート20に取り付けるには、スライドプレート20の表面に沿ってプランジャー50A,50Bを各ガイド装着部28A,28B,29A,29Bに挿入させる。具体的には、プランジャー50Aは、スライドプレート本体21に対向するよう配置された一対のプランジャーガイド90Aとプランジャーガイド91Aとの間に矢印X2方向に挿入される。またプランジャー50Aは、スライドプレート本体21に対向するよう配置された一対のプランジャーガイド90Aとプランジャーガイド91Aとの間に矢印X1方向に挿入される。
【0039】
上記のように取り付けられることにより、プランジャー50Aはプランジャーガイド90A,91Aにスライド方向とは直行する方向、即ち矢印X1,X2方向に往復動可能に保持される。同様に、プランジャー50Bはプランジャーガイド90B,91Bにスライド方向とは直行する方向(X1,X2方向)に往復動可能に保持される。
【0040】
また、プランジャー50A,50Bが各プランジャーガイド90A,90B,91A,91Bに保持された状態で、各プランジャー50A,50Bに形成された上部長孔52A,52Bは上部プランジャー装着孔26A,26Bに、また下部長孔53A,53Bは下部プランジャー装着孔27A,27Bに対向するよう構成されている。
【0041】
そして、プランジャー固定ピン96Aを上部長孔52Aを挿通して上部プランジャー装着孔26Aに固着すると共に、プランジャー固定ピン97Aを下部長孔53Aを挿通して下部プランジャー装着孔27Aに固着することにより、プランジャー50Aはスライドプレート20に取り付けられる。同様に、プランジャー固定ピン96Bを上部長孔52Bを挿通して上部プランジャー装着孔26Bに固着すると共に、プランジャー固定ピン97Bを下部長孔53Bを挿通して下部プランジャー装着孔27Bに固着することにより、プランジャー50Bもスライドプレート20に取り付けられる。
【0042】
上記のようにスライドプレート20に取り付けられたプランジャー50A,50Bは、各長孔52A,53A,52B,53Bの長さ範囲にわたり、スライドプレート20に対して矢印X1,X2方向に往復動可能な構成となる。
【0043】
また、前記したワイヤーばね70A,70Bは、プランジャー50A,50Bをスライドプレート20に装着する前に、予めスライドプレート20に取り付けられている。そしてプランジャー50A,50Bがスライドプレート20に取り付けられた状態で、ワイヤーばね70A,70Bの山部73A,73Bは、プランジャー50A,50Bの内側側縁60A,60B(カム部が形成された側縁に対して反対側の側縁、図6(A)参照)に当接する。
【0044】
これにより、プランジャー50A,50Bは、ワイヤーばね70A,70Bにより互いに広がる方向に向け移動付勢される。即ち、プランジャー50Aはワイヤーばね70Aにより矢印X1方向に移動付勢され、プランジャー50Bはワイヤーばね70Bにより矢印X2方向に移動付勢される。
【0045】
また、プランジャー50A,50B及びワイヤーばね70A,70Bがスライドプレート20に装着された状態において、ワイヤーばね70A,70Bの一部(主に山部73A,73Bの近傍)はカバー部54A,54Bに覆われた構成となる。よって、プランジャー50A,50BがX1,X2方向に往復動しても、ワイヤーばね70A,70Bはカバー部54A,54Bとスライドプレート本体21との間に挟まれた状態で弾性変形することとなり、よってワイヤーばね70A,70Bに座屈が発生するのを抑制することができる。
【0046】
ガイド板80A,80Bは、後述するベースプレート40の移動をガイドする機能を奏するものである。ガイド板80A,80Bはスライド方向に長辺を有する長方形状を有している。このガイド板80A,80Bは、プランジャー固定ピン96A,96B,97A,97Bに固定される。この各プランジャー固定ピン96A,96B,97A,97Bは、スライドプレート20と対向する方向に突出したボスを有すると共に、これと反対側にも突出したボスを有している。ガイド板80A,80Bは、この各プランジャー固定ピン96A,96B,97A,97Bの反対側に突出したボスに固定される。
【0047】
具体的には、ガイド板80Aに形成された上部固定孔82Aにプランジャー固定ピン96Aを固着することにより、また下部固定孔83Aにプランジャー固定ピン97Aを固着することにより、ガイド板80Aはスライドプレート20に固定される。同様に、ガイド板80Bに形成された上部固定孔82Bにプランジャー固定ピン96Bを固着することにより、また下部固定孔83Bにプランジャー固定ピン97Bを固着することにより、ガイド板80Bはスライドプレート20に固定される。
【0048】
各固定孔82A,83A,82B,83Bは長孔ではなく、よって前記した往復動するプランジャー50A,50Bと異なり、ガイド板80A,80Bはスライドプレート20に固定される。また、ガイド板80A,80Bの外側の側縁部81A,81Bは、摩擦係数が小さくなるよう、また高い直線性を有するよう加工されている。
【0049】
次に、ベースプレート40について説明する。このベースプレート40は、図5に示す電子機器1の第1筐体2に固定されるものである。
【0050】
図3は、ベースプレート40を示す分解斜視図である。ベースプレート40はX1,X2方向に長辺を有する長方形状とされた金属板よりなるベースプレート本体41と、このベースプレート本体41の両側部を略U字状に折り曲げ形成した折曲部42A,42Bとを有している。
【0051】
上記のように折曲部42A,42Bが形成されることにより、ベースプレート本体41と折曲部42A,42Bとの間にはスライドプレート20が挿入されるスライドガイド装着部44A,44Bが形成される。ベースプレート本体41と折曲部42A,42Bとの間との間でスライドプレート20を直接保持することも可能であるが、本実施形態ではスライドガイド装着部44A,44Bにスライドガイド105A,105Bを装着し、このスライドガイド105A,105Bを介してスライドプレート20をベースプレート40にスライド方向にスライド可能に保持する構成としている。
【0052】
スライドガイド105A,105Bは、摩擦係数が小さく耐久性の高い樹脂により形成されている。このスライドガイド105A,105Bは、内側にスライド溝106A,106Bが形成されると共に、外側に係止突起107A,107Bが形成されている。
【0053】
スライド溝106A,106Bは、スライドプレート20の側縁部30A,30Bが円滑にかつガタツキがなくスライドできる溝幅に設定されている。また、係止突起107A,107Bは、ベースプレート40に形成された係止孔46A,46Bに係止されるよう設定されている。よって、ベースプレート40に対してスライドプレート20がスライドしてもスライドガイド105A,105Bがベースプレート40から離脱するようなことはない。
【0054】
また、折曲部42A,42Bにはローラ100A,100Bが取り付けられる。具体的には、折曲部42A,42Bにはローラ取付け孔43A,43Bが形成されており、このローラ取付け孔43A,43Bにローラ固定ピン101A,101Bを裏側から挿通し、表に突出した部分にローラ100A,100Bを取り付ける。この際、ローラ100A,100Bはローラ固定ピン101A,101Bに回転可能な構成で取り付けられる。
【0055】
尚、ベースプレート本体41には装着孔44A,44Bが形成されており、この装着孔44A,44Bにはナット108A,108Bが固着される。ナット108A,108Bは、ベースプレート40を電子機器1の第1筐体2に固定するのに用いられる。
【0056】
上記構成とされたベースプレート40にスライドプレート20を装着するにはストッパナット94A,94B,95A,95Bを除き、プランジャー50A,50B、ワイヤーばね70A,70B、及びガイド板80A,80B等が取り付けられたスライドプレート20を、側縁部30A,30Bとスライドガイド105A,105Bと位置決めした上で、ベースプレート40に装着する。これにより、ローラ100Aはプランジャー50Aのカム部(第1乃至第3の谷部55A,56A,57A、第1及び第2の山部58A,59A)と外側から係合し、ローラ100Bはプランジャー50Bのカム部(第1乃至第3の谷部55B,56B,57B、第1及び第2の山部58B,59B)と外側から係合する。
【0057】
上記のようにスライドプレート20がベースプレート40に装着されると、スライドプレート20に形成された各ストッパピン固定孔24A,24B,25A,25Bにストッパナット94A,94B,95A,95Bが固着され、これによりスライド機構10が完成する。
【0058】
この完成状態において、ベースプレート40の折曲部42A,42Bの端部47A,47Bは、ガイド板80A,80Bに形成された側縁部81A,81Bと摺接するよう構成されている。前記したように、ガイド板80A,80Bはスライドプレート20に固定されている。よって、ベースプレート40に対してスライドプレート20がスライド方向(Y1,Y2方向)に移動する際、スライドプレート20はその両側の側縁部30A,30Bをベースプレート40のスライドガイド105A,105Bにガイドされると共に、ガイド板80A,80Bの側縁部81A,81Bが端部47A,47Bと摺接することによってもガイドされる。これにより、スライドプレート20をベースプレート40に対して安定した状態でスライドさせることが可能となる。
【0059】
次に、上記構成とされたスライド機構10の動作について説明する。
【0060】
図4(A)はスライドプレート20が第1の開位置にある状態のスライド機構10を示している。この図4(A)に示す状態は、図5(A)に対応するものである。また、図4(B)はスライドプレート20が閉位置にある状態のスライド機構10を示している。この図4(B)に示す状態は、図5(B)に対応するものである。更に、図4(C)はスライドプレート20が第2の開位置にある状態のスライド機構10を示している。この図4(C)に示す状態は、図5(C)に対応するものである。
【0061】
スライド機構10が図4(A)に示す第1の開位置にあるとき、ベースプレート40に設けられたローラ100A,100Bは、プランジャー50A,50Bの第2の谷部56A,56Bに係合した状態となっている。前記のように、ワイヤーばね70Aはプランジャー50AをX1方向に移動付勢し、ワイヤーばね70Bはプランジャー50BをX2方向に付勢している。即ち、ワイヤーばね70A,70Bは、プランジャー50A,50Bを離間する方向に移動付勢している。また、スライドプレート本体21の下端部に設けられたストッパナット95A,95Bは、折曲部42A,42Bと当接している。
【0062】
従って、ベースプレート40はY2方向への移動が規制され、またローラ100A,100Bは第2の谷部56A,56Bとストッパナット95A,95Bとの間に挟まれた状態となるため、スライドプレート20は第1の開位置にガタツキが発生することなく安定した状態で係止される。従って、第2筐体3を第1の開位置に安定した状態で保持することができる(図5(A)参照)。
【0063】
また、スライド機構10が図4(B)に示す閉位置にあるとき、ベースプレート40に設けられたローラ100A,100Bは、プランジャー50A,50Bの第1の谷部55A,55Bに係合した状態となっている。カム部の第1の谷部55A,55Bの両側は第1の山部58A,58B及び第2の山部59A,59Bに向かう傾斜面となっており、また前記のようにワイヤーばね70A,70Bはプランジャー50A,50Bを離間させる方向に弾性力を付勢している。よって、ローラ100A,100Bが閉位置より容易にY1,Y2方向に移動するようなことはなく、スライドプレート20は閉位置に安定した状態で係止される。従って、第2筐体3を閉位置に安定した状態で保持することができる(図5(B)参照)。
【0064】
更に、スライド機構10が図4(C)に示す第2の開位置にあるとき、ローラ100A,100Bは、プランジャー50A,50Bの第3の谷部57A,57Bに係合した状態となっている。前記のように、各ワイヤーばね70A,70Bはプランジャー50A,50Bを離間する方向に移動付勢し、またスライドプレート本体21の上端部に設けられたストッパナット94A,94Bは折曲部42A,42Bと当接している。
【0065】
従って、ワイヤーばね70A,70Bによりプランジャー50A,50Bが互いに外側に向けて移動付勢されても、ベースプレート40はY2方向への移動が規制される。また、ローラ100A,100Bは第3の谷部57A,57Bとストッパナット94A,94Bとの間に挟まれた状態となっているため、スライドプレート20は第2の開位置にガタツキが発生することなく安定した状態で係止される。従って、第2筐体3を第2の開位置に安定した状態で保持することができる(図5(C)参照)。
【0066】
次に図6を用いて、スライドプレート20が第1の開位置から閉位置を介して第2の開位置まで移動するときの、スライド機構10を構成する各構成要素の動作について説明する。尚、図6では、説明及び図示の便宜上、カバー部54A,54B及びガイド板80A,80Bの図示は省略している。
【0067】
図6(A)は、スライドプレート20が第1の開位置に位置した状態を示している。この時、ワイヤーばね70A,70Bによりプランジャー50A,50Bが互いに広がる方向に付勢されると共に、ベースプレート40のローラ100A,100Bがカム部の傾斜面(第1の山部58A,58Bと第2の谷部56A,56Bとの間の傾斜面)に係合しているため、スライドプレート20はベースプレート40に対してY1方向に付勢されている。しかしながら、折曲部42A,42Bがスライドプレート20に設けられたストッパナット95A,95Bに当接することにより、スライドプレート20のそれ以上のY1方向への移動が規制されている。
【0068】
ここで、この第1の開位置にあるスライドプレート20を、図中矢印Y2方向に移動操作した場合のスライド機構10の動作を説明する。スライドプレート20をY2方向に移動させることにより、相対的にローラ100A,100Bは第2の谷部56A,56Bから第1の山部58A,58Bに向け移動する。この際、プランジャー50AはX2方向にスライドし、プランジャー50BはX1方向にスライドする。即ち、プランジャー50A,50Bは近寄る方向にスライドする。
【0069】
しかしながら、ローラ100A,100Bが第1の山部58A,58Bに至る前にY2方向に移動操作力を解除すると、ワイヤーばね70A,70Bの弾性力によりプランジャー50A,50Bは互いに外側に向けてスライドし、よってスライドプレート20は第1の開位置に戻ってしまう。
【0070】
図6(B)は、スライドプレート20をY2方向に移動操作することにより、相対的にローラ100A,100Bが第1の山部58A,58B(頂点)まで移動した状態を示している。ローラ100A,100Bがこの第1の山部58A,58Bを越えてY1方向に移動すると、ワイヤーばね70A,70Bの弾性復元力によりプランジャー50A,50Bは互いに離間する方向へスライドする。これにより、ローラ100A,100Bも相対的に第1の谷部55A,55Bに向け移動し、これに伴いスライドプレート20はベースプレート40に対してY2方向に移動する。
【0071】
図6(C)は、ローラ100A,100Bが第1の谷部55A,55Bまで相対的に移動することにより、スライドプレート20が閉位置まで移動した状態を示している。前記のように、第1の谷部55A,55Bの両側は第1の山部58A,58B及び第2の山部59A,59Bに向かう傾斜面となっており、またワイヤーばね70A,70Bによりプランジャー50A,50Bは離間する方向付勢されているため、スライドプレート20は閉位置に安定した状態となっている。
【0072】
この閉状態より、スライドプレート20を更にY2方向に移動操作すると、相対的にローラ100A,100Bは第1の谷部55A,55Bから第2の山部59A,59Bに向け移動する。この際も、プランジャー50AはX2方向にスライドすると共にプランジャー50BはX1方向にスライドする。
【0073】
また、ローラ100A,100Bが第2の山部59A,59Bに至る前にY2方向に移動操作力を解除すると、ワイヤーばね70A,70Bの弾性力によりプランジャー50A,50Bは互いに外側に向けてスライドし、スライドプレート20は閉位置に戻ってしまう。
【0074】
図6(D)は、スライドプレート20をY2方向に移動操作することにより、相対的にローラ100A,100Bが第2の山部59A,59B(頂点)まで移動した状態を示している。ローラ100A,100Bがこの第2の山部59A,59Bを越えてY1方向に移動すると、ワイヤーばね70A,70Bの弾性復元力によりプランジャー50A,50Bは互いに離間する方向へスライドする。これにより、ローラ100A,100Bも相対的に第3の谷部57A,57Bに向け移動し、これに伴いスライドプレート20はベースプレート40に対してY2方向に移動する。
【0075】
図6(E)は、スライドプレート20が第2の開位置に位置した状態を示している。この時、スライドプレート20はワイヤーばね70A,70B及びプランジャー50A,50Bによりベースプレート40に対してY1方向に付勢されている。しかしながら、折曲部42A,42Bがスライドプレート20に設けられたストッパナット94A,94Bに当接することにより、スライドプレート20のそれ以上のY1方向への移動が規制される。
【0076】
尚、スライドプレート20が第2の開位置から閉位置、閉位置から第1の開位置に移動するときのスライド機構10の動作は、上記した動作の逆動作となるため、その説明は省略するものとする。
【0077】
上記のように、本実施形態に係るスライド機構10は、スライドプレート20を閉位置を中心としてY1方向とこれと反対方向であるY2方向の二方向にスライドさせることができる。また、本実施形態に係るスライド機構10を構成する各構成部品は、スライド方向に平行なスライドプレート20の中心線(図1(A)に矢印SLで示す一点鎖線)に対して左右対称に配置されている。
【0078】
従って、ベースプレート40に対してスライドプレート20をスライド付勢するのに2本のワイヤーばね70A,70Bと2個のプランジャー50A,50Bを用いている。このため、ベースプレート40に設けられたローラ100A,100Bに対して均等な付勢力が作用することとなり、スライド機構10内に偶力が発生するようなことはない。よって、本実施形態に係るスライド機構10によれば、ベースプレート40に対してスライドプレート20を安定した状態でスライド動作させることができる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0080】
例えば、上記した実施形態では第1の谷部55A,55Bを第1筐体2と第2筐体3とが重なり合う閉位置に設定したが、第2の谷部56A,56Bを第1筐体2と第2筐体3とが重なり合う閉位置に設定に設定し、第1の谷部55A,55Bを第1の開位置に設定し、第3の谷部57A,57Bを第3の開位置に設定することも可能である。この構成とした場合には、第2筐体3を第1筐体2に対して同一方向に2段階に開くことが可能なスライド機構を実現することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 電子機器
2 第1筐体
3 第2筐体
4 キーボード
5 カソールキー
6 ファンクションキー
10 スライド機構
20 スライドプレート
21 スライドプレート本体
30A,30B 側縁部
40 ベースプレート
41 ベースプレート本体
42A,42B 折曲部
44A,44B スライドガイド装着部
47A,47B 端部
50A,50B プランジャー
51A,51B 本体部
54A,54B カバー部
55A,55B 第1の谷部
56A,56B 第2の谷部
57A,57B 第3の谷部
58A,58B 第1の山部
59A,59B 第2の山部
70A,70B ワイヤーばね
73A,73B 山部
80A,80B ガイド板
81A,81B 側縁部
90A,90B,91A,91B プランジャーガイド
100A,100A ローラー
101A,101B ローラー固定ピン
105A,105B スライドガイド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドプレートがベースプレートに対して閉位置と第1の開位置との間でスライドすると共に、前記閉位置を中心として前記第1の開位置の反対側に位置する第2の開位置との間でもスライドするよう構成されたスライド機構であって、
前記スライドプレートのスライド方向と直行する方向に往復動可能な構成で前記スライドプレートに取り付けられた第1及び第2のプランジャーと、
前記第1及び第2のプランジャーを互いに広がる方向に向け移動付勢する第1及び第2のワイヤーばねと、
前記第1及び第2のプランジャーの外側縁部に形成されており、閉位置に対応する第1の谷部と、前記第1の開位置に対応する第2の谷部と、前記第2の開位置に対応する第3の谷部とが形成されたカム部と、
前記ベースプレートの両側部に設けられており、前記第1及び第2のプランジャーに形成された前記カム部と係合する第1及び第2のローラーと
を有することを特徴とするスライド機構。
【請求項2】
前記第1及び第2のプランジャーは、前記ワイヤーばねを覆うことにより前記ワイヤーばねに座屈が発生するのを抑制するカバー部が形成されてなることを特徴とする請求項1記載のスライド機構。
【請求項3】
前記スライドプレートに前記ベースプレーと摺接することにより、前記スライドプレートのスライドを案内するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のスライド機構。
【請求項4】
前記第1のプランジャーの外側縁部に形成されたカム部の形状と、前記第2のプランジャーの外側縁部に形成されたカム部の形状が、前記スライドプレートの中心線に対して対象な形状とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスライド機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−146923(P2011−146923A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6105(P2010−6105)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000176833)三菱製鋼株式会社 (69)
【Fターム(参考)】