説明

スラグ回収装置およびそれを用いた燃焼炉

【課題】 従来の塵芥の溶融システムは二次燃焼炉における飛灰の溶融付着量は少ないものの、扱う廃棄物の性状によっては比較的多くの飛灰の溶融付着が認められることがある。飛灰の溶融付着はその成長を放置すると二次燃焼炉の閉塞を引き起こすことがある。特に廃車のシュレッダーダストのように細かく切断された樹脂、紙、繊維等を多く含む廃棄物を処理する際にこの現象が見られる。
【解決手段】 下部に出口を備える燃焼室1と、シュート2と、壁面10および水面4aによって画定されるスラグ分離室11を有しスラグ分離室11に臨む壁面10に排ガス導入口10aおよび下端が前記水面4aの水位以下に達する排ガス出口10bを設けたスラグ回収装置20とを備え、前記燃焼室1の出口に前記シュート2を接続し、前記シュート2の出口に前記スラグ回収装置20の排ガス導入口10aを接続する燃焼炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塵芥を炉内で燃焼及びガス化しその残さである焼却灰を溶融して溶融スラグとして炉外に排出する塵芥の燃焼炉に関し、特に溶融スラグの回収効率を向上することのできるスラグ回収装置およびそれを用いた燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より塵芥はストーカー炉や流動床炉で焼却処理して、その焼却灰を埋め立て処分することが一般的に行なわれていた。しかし最近埋め立て処分する際に焼却灰の容積が未だ充分に減少していないこと、焼却灰を埋め立て処分するに際に飛散して周囲の環境に悪影響を及ぼすこと等から、焼却灰を溶融スラグ化してそれを埋め立て処分することが推奨されている。
そこで塵芥を溶融処理する方法としては、従来の焼却炉から排出された焼却灰を別途の溶融炉で溶融スラグ化するものと、塵芥を一つの炉内で溶融スラグ化までするものとの2種類のものがある。
【0003】
塵芥を炉内で溶融スラグ化するものとしては、例えば特公平2−56565号公報に記載されたものがある。当該公報に記載の技術はコークス層を羽口から吹き込まれる空気で燃焼させて高温炉床を形成し、高温炉床上で塵芥をガス化及び燃焼し、その残さを溶融スラグ化して炉外に排出するものである。そして発生した可燃性ガスをシャフト炉体に複数段に分割して配置した空気供給口から供給される空気で完全燃焼させて炉から放出するものである。すなわち空気供給口を複数段に分割することによって、未燃ガスの燃焼域を上下に長くできると共に、未燃ガスの燃焼速度を小さくでき、その結果未燃ガスの火焔温度を低く且つ変化の少ない状態にできるので、NOの発生が抑えられるとしている。
【0004】
前記した先行技術においては、複数段の空気供給口を設けて、それにより空気を供給することは未燃ガスの火焔温度を低く抑えることには有効でありNOの抑制には効果的に作用する。しかし本先行技術では可燃性ガスの燃焼温度を比較的低く抑えることや排ガスの一部を再び炉内に供給する(空塔速度の上昇を招く)ことを行っているので燃焼排ガス中のダイオキシン濃度は必ずしも十分抑制された値にはならない。
【0005】
本願出願人は上記の課題を解決して、NOおよびダイオキシンの発生を抑制でき、また飛灰の溶融付着が少ない塵芥の溶融システムとして、特許文献1の塵芥の処理装置を提案している。この塵芥の処理装置は、シャフト炉内に塵芥及びコークスを供給して、それらの可燃物質に対する化学量論的空気量以下の雰囲気下で塵芥を燃焼及びガス化し、残さを溶融スラグとして炉外に排出する塵芥の処理装置であって、炉底部にコークス層を形成し、前記コークス層の上に堆積した塵芥層を形成し、シャフト炉に連接して二次燃焼炉を設け、シャフト炉内の塵芥層より上部の空間と二次燃焼炉の入り口近傍に、それぞれ第一の空気供給口と第二の空気供給口を設け、前記第一の空気供給口からシャフト炉内を化学量論的空気量以下に維持するように燃焼支持ガスを供給してガスを燃焼させ、第二の空気供給口から二次燃焼炉内を化学両論的空気量以上に維持するように燃焼支持ガスを供給してガスを更に燃焼させることを特徴とするものである。
【0006】
ガス化溶融炉では、投入された廃棄物は酸素比を抑制された雰囲気中で加熱されて可燃性ガスと固形カーボンに熱分解され、固形カーボンは高温炉床部において燃焼し、残った焼却灰は加熱されて溶融スラグとして炉底部から排出される。一方、可燃性ガスはガス化溶融炉に連設する二次燃焼炉に導入して高温燃焼する。ここで、従来の二次燃焼炉を図7に示す。図示省略したガス化溶融炉で生成した可燃性ガスgはガス化溶融炉からダスト、固形カーボン、焼却灰等の比重の小さい粒子状固形分oを伴って二次燃焼炉1に旋回流を形成する方向に導入される。二次燃焼炉1の入り口近傍に設けた空気供給口(図示省略)から空気の供給を受けた可燃性ガスgは燃焼して1200〜1300℃の燃焼ガスhとなる。燃焼ガスhは絞り部1aを介して接続するシュート2に導入される。粒子状固形分oに含まれる可燃成分は燃焼し残った灰分は溶融してスラグミストとなる。スラグミストは旋回流の効果により二次燃焼炉1の耐火材製の内周面に付着し、自重で流下して絞り部1aを経てシュート2に達する。シュート2の内壁面は耐火材で構成され底面は水槽3に貯留された水4によって封止され、シュート2の内壁面と水面4aとでスラグ分離室2aを構成する。内壁面を流下したスラグミストは水面4aによって捕捉され水槽3内に沈み燃焼ガスhから分離回収される。内壁面を流下せず燃焼ガスhの流れに乗ってスラグ分離室2aまで達したスラグミストも水面4aによって捕捉され分離回収される。水槽3内のスラグは搬送装置によって排出される。スラグミストを分離した後の燃焼ガスhは水面4aより上がった位置のシュート2の内壁に接続される煙道5を通って後続の排ガス処理設備6に導入され熱回収や無害化処理の後、大気中に排出される。
【特許文献1】特開2001−289418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の塵芥の溶融システムは二次燃焼炉における飛灰の溶融付着量は少ないものの、扱う廃棄物の性状によっては比較的多くの飛灰の溶融付着が認められることがある。飛灰の溶融付着はその成長を放置すると二次燃焼炉の閉塞を引き起こすことがある。特に廃車のシュレッダーダストのように細かく切断された樹脂、紙、繊維等を多く含む廃棄物を処理する際にこの現象が見られる。
【0008】
二次燃焼炉1の内周面に付着したスラグミストは溶融スラグpとなり自重で流下して絞り部1aを経てシュート2に達する。溶融スラグpはシュート2の内面を更に流下して水面4a近くで壁面に固着することがある。この固着したスラグは後続の溶融スラグpと合わさって大きなスラグ塊qに成長する。これを放置すると水面4aにおけるスラグの捕捉ができなくなる。
【0009】
この現象をシミュレーションで解析した。図8は絞り部1a、スラグ分離室2a、煙道5の内部表面温度をシミュレーションで求めた結果である。全体的には1300℃以上でありスラグは溶融状態が保たれ壁面を流下すると考えられるが、水面4aの真上で且つ点線より下に1300℃以下の温度領域がある。スラグの溶融温度はその成分により異なるため1100〜1500℃程度の範囲がある。したがって溶融スラグは成分によっては水面4aに達する前に溶融温度以下になりそこで凝固することが考えられる。
【0010】
図9は燃焼ガスの絞り部1a、スラグ分離室2a、煙道5における内部表面流速をシミュレーションで求めた結果である。絞り部1aとスラグ分離室2aでは流速は斜め下方向であり二次燃焼炉の旋回流の影響が残っているが全体としては澱みなく下方向に向かって流れている。水面4aの真上では斜め上方向の流れや渦流が発生しており流れが澱んでいることがわかる。図8,10に示す結果から水面4aの真上近傍の壁面でスラグ塊が形成されることが予想される。これは図7に示す従来の二次燃焼炉におけるスラグ塊の実際の形成箇所とよく一致することが確認された。
【0011】
したがって本発明の目的は、廃棄物処理設備の二次燃焼炉または溶融炉で生じる溶融スラグを燃焼ガスから水槽を使って分離するにあたり、水面の真上近傍の壁面でスラグ塊が形成されることを防ぐことのできるスラグ回収装置およびそれを用いた燃焼炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者は、スラグを捕捉する水面の真上に燃焼ガスの澱みができることによりスラグ塊が成長しやすくなるものと考えた。この澱みができないように燃焼ガスを流すことでスラグ塊の成長が抑制されることを見出し本発明に想到した。
【0013】
すなわち、本願第一の発明は、壁面および水面によって画定されるスラグ分離室を有し、スラグ分離室に臨む壁面に排ガス導入口および下端が前記水面の水位以下に達する排ガス出口を設けることを特徴とするスラグ回収装置である。
【0014】
本願第二の発明は、夫々が壁面および水面によって画定される第一のスラグ分離室と第二のスラグ分離室とを有し、第一のスラグ分離室に臨む壁面に排ガス導入口および下端が前記水面の水位以下に達する排ガス出口を設け、第二のスラグ分離室に臨む壁面に下端が前記水面の水位より上に位置する排ガス排出口を設け、前記排ガス出口が第二のスラグ分離室に連通することを特徴とするスラグ回収装置である。
【0015】
第一,二の発明においては、前記排ガス出口をアーチ型形状とすることが好ましい。
【0016】
本願第三の発明は、下部に出口を備える燃焼室と、シュートと、壁面および水面によって画定されるスラグ分離室を有しスラグ分離室に臨む壁面に排ガス導入口および下端が前記水面の水位以下に達する排ガス出口を設けたスラグ回収装置とを備え、前記燃焼室の出口に前記シュートを接続し、前記シュートの出口に前記スラグ回収装置の排ガス導入口を接続することを特徴とする燃焼炉である。
【0017】
本願第四の発明は、下部に出口を備える燃焼室と、シュートと、夫々が壁面および水面によって画定される第一のスラグ分離室と第二のスラグ分離室とを有し第一のスラグ分離室に臨む壁面に排ガス導入口および下端が前記水面の水位以下に達する排ガス出口を設け第二のスラグ分離室に臨む壁面に下端が前記水面の水位より上に位置する排ガス排出口を設け、前記排ガス出口が第二のスラグ分離室に連通するスラグ回収装置とを備え、前記燃焼室の出口に前記シュートを接続し、前記シュートの出口に第一のスラグ回収装置の排ガス導入口を接続することを特徴とする燃焼炉である。
【0018】
第三,四の発明においては、前記シュートは断面が多角形の内部空間を有することが好ましい。
【0019】
第四の発明においては、第二のスラグ分離室の排ガス排出口に水平方向に対して40°以上の角度の煙道を接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
上述のように、本発明のスラグ回収装置およびそれを用いた燃焼炉によれば、廃棄物処理設備の二次燃焼炉または溶融炉で生じる溶融スラグを燃焼ガスから水槽を使って分離するにあたり、水面の真上近傍の壁面でスラグ塊が形成されることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
【0022】
本発明のスラグ回収装置及びそれを用いた燃焼炉の概略図を図1に示す。図1と図7とで互いに相当する部分には同一の符号を付す。二次燃焼炉1は内面が耐火材で構成され可燃性ガスを燃焼させてその熱で可燃性固形分や灰分を燃焼、溶融させる。端部は絞り部1aとなり絞り部1aは内面が耐火材で構成されたシュート2と接続する。シュート2はその下端部がスラグ分離室11の排ガス導入口10aに接続する。スラグ分離室11は壁面10および水面4aによって画定される空間である。スラグ分離室11に臨む壁面10には排ガス導入口10aおよび下端が水面4aの水位以下に達する排ガス出口10bを設ける。スラグ分離室11の下流側には第二のスラグ分離室13がある。第二のスラグ分離室13は壁面12および水面4aによって画定される空間である。第二のスラグ分離室13に臨む壁面12には下端が水面4aの水位より上に位置する排ガス排出口12aを設ける。排ガス出口10bは第二のスラグ分離室13に連通しているためスラグ分離室(第一のスラグ分離室)11と第二のスラグ分離室13は繋がった空間となる。ここでスラグ回収装置20はスラグ分離室11、壁面10、水面4a、排ガス導入口10aおよび排ガス出口10bによって構成される。又はスラグ回収装置20は第一のスラグ分離室11、第二のスラグ分離室13、壁面10,12、水面4a、排ガス導入口10a、排ガス出口10bおよび排ガス排出口12aによって構成される。排ガス排出口12aは煙道5に連接し、煙道5は排ガス処理設備6に連接する。
【0023】
図1で図示省略したガス化溶融炉で生成した可燃性ガスgはガス化溶融炉からダスト、固形カーボン、焼却灰等の比重の小さい粒子状固形分oを伴って二次燃焼炉1に旋回流を形成する方向に導入される。二次燃焼炉1の入り口近傍に設けた空気供給口(図示省略)から空気の供給を受けた可燃性ガスgは燃焼して1200〜1300℃の燃焼ガスhとなる。燃焼ガスhは絞り部1aを介して接続するシュート2に導入される。シュート2で流速を速めた燃焼ガスhは排ガス導入口10aからスラグ分離室(第一のスラグ分離室)11へ入り、更に水面4aに沿って流れ、排ガス出口10bを経て第二のスラグ分離室13へ入る。燃焼ガスhは水面4aより上の位置に開口している排ガス排出口12aへ向かって流れて煙道5を通って排ガス処理設備6に供給される。
【0024】
一方、粒子状固形分oに含まれる可燃成分は燃焼し残った灰分は溶融してスラグミストとなる。スラグミストは旋回流の効果により二次燃焼炉1の耐火材製の内周面に付着して溶融スラグとなり、自重で流下して絞り部1aで集められてシュート2に達する。溶融スラグはシュート2の壁面に続いてスラグ回収装置20の壁面10に沿って流下して水面4aに捕捉される。若しくはシュート2の壁面または壁面10から水面4aに落ちる。シュート2の壁面または壁面10を流下せず燃焼ガスhの流れに乗ってスラグ分離室11,13まで達したスラグミストも水面4aによって捕捉され分離回収される。
【0025】
図2は本発明のスラグ回収装置の内部の燃焼ガスの速度分布をシミュレーションで求めた結果である。シュート2からスラグ分離室11,13に導入された燃焼ガスhは水面4a上では遅い流れであり、水面4aから離れる(高くなる)にしたがって速い流れになる。しかし、スラグ分離室11,13内では水面4aに沿ってほぼ水平に流れ澱みはほとんど認められない。これは排ガス出口10bの開口の下端部が水面4aに対して実質的に同レベルまたはそれより低いレベルにあるためスラグ分離室11の水面4a真上における燃焼ガスhの流れが乱されないことによるものと考えられる。
【0026】
図3は本発明のスラグ回収装置の内部の温度分布をシミュレーションで求めた結果である。スラグ分離室(第一のスラグ分離室)11においては水面4a近傍まで1300℃近い高温状態が保持され水面4aの真上にできる低温領域がスラグの流下方向に対して薄いことがわかる。
【0027】
速度分布のシミュレーション結果と合わせて考えると本発明のスラグ回収装置でスラグ塊の成長が抑制される理由は次のように考えられる。すなわち、シュート2の内壁を流下した溶融スラグはスラグ分離室11の壁面を流下して水面4a近傍に達する。水面4a近傍では燃焼ガスhの流れに澱みがなく低温領域も薄いため溶融スラグは凝固する前に水面4aに達して捕捉されるのである。なお、第二のスラグ分離室13の水面4aの真上にできる低温領域は第一のスラグ分離室11のそれより厚いが、第二のスラグ分離室13まで達する溶融スラグは少ないためここでスラグ塊が大きく成長することはない。
【0028】
第二のスラグ分離室13において排ガス排出口12aは水面4aより上の位置に設置されている。これは燃焼ガスhを水面4a上で一旦上向きに流すことで、燃焼ガスhに同伴して第二のスラグ分離室13まで達した溶融スラグを水面4aに落として捕捉するためである。したがって水面4aと排ガス排出口12aとの鉛直方向の距離Hは大きいほど良い。
【0029】
この構造を採用してもなお燃焼ガスhに同伴しやすいスラグミストが第二のスラグ分離室13を通過して後段の排ガス処理設備6に持ち込まれる場合がある。このような場合は排ガス排出口12aに接続する煙道5の水平線に対する設置角度θを40°以上とするとよい。一旦、煙道5に進入したスラグミストは煙道5の内壁に付着し内壁を流れ下って第二のスラグ分離室13に戻され、更に壁面12を流下して水面4aに捕捉される。
【0030】
図4は図1に示す二次燃焼炉のA−A断面矢視図である。可燃性ガスgは粒子状固形分oを伴って二次燃焼炉1に旋回流を形成する方向に導入される。可燃性ガスgは燃焼して1200〜1300℃の燃焼ガスhとなる。燃焼ガスhは絞り部1aを介して接続するシュート2に導入される。本発明ではシュート2の内部空間を多角形にすることが好ましい。図4では四角形とした例を示す。旋回流の影響を受けた溶融スラグpは二次燃焼炉1に続いて絞り部1aを斜め下方向に向かって流れ落ちる。シュート2の入口に達した溶融スラグpはシュート2の四隅に集まり太い流れとなって一気にシュート2の内壁を流れ落ちる。四隅以外からシュート2の内壁に達した溶融スラグpはシュート2の内壁を流れ落ちながら四隅に寄せられ流れに合流する。四隅では旋回流の影響が少なく鉛直方向の流れが生じているため四隅に集まった溶融スラグpは鉛直方向に流れやすく水面4aに達し易い。
【0031】
本発明では排ガス出口10bをアーチ型形状とすることが好ましい。図5は排ガス出口10bの形状の選定の経緯である。本図はスラグ分離室11の内部から排ガス出口10bをみた図である。燃焼ガスhは紙面に垂直で奥へ向かって流れる。図4で説明したように溶融スラグはシュート2の主に四隅を伝わって流れ落ちる。図5に示す排ガス出口10bにおいては矢印で示した位置から流れ落ちてくる。四隅以外のところを伝わって流れ落ちる溶融スラグはアーチ形状を伝わって四隅の溶融スラグと合流する。A,Cは図4に対応する。アーチ型形状(1)は両側ともアーチが水面4aに届かない位置で留まる形状である。内壁に沿ってアーチの下部まで流れ落ちた溶融スラグは、そこで燃焼ガスhの流れに曝される。図2で説明した通り排ガス出口10bの高い位置ほど流速が早いため、溶融スラグはA,C両側から燃焼ガスhに同伴して第二のスラグ分離室13側へ飛散する。しかし、飛散した溶融スラグが煙道5まで達することはない。アーチ型形状(2)はアーチの下端がA側では水面4aに届かない位置で留まり、C側では水面4aに届く形状である。この形状ではC側においてはほとんどの溶融スラグが水面4aで捕捉され、燃焼ガスhに同伴して第二のスラグ分離室13側へ飛散する溶融スラグはほとんど認められなかった。排ガス出口10bの低い位置では流速が遅いため、溶融スラグは燃焼ガスhに同伴しにくいのである。A側ではアーチ型形状(1)と同様に飛散が見られた。しかし、飛散した溶融スラグが煙道5まで達することはない。アーチ型形状(3)はアーチの下端が両側とも水面4aに届く形状である。両側においてほとんどの溶融スラグが水面4aで捕捉され、燃焼ガスhに同伴して第二のスラグ分離室13側へ飛散する溶融スラグはほとんど認められなかった。
【0032】
排ガス出口10bをアーチ型形状としたときの効果を詳細に説明する。図6は前述のアーチ型形状(1)を採用したときのスラグ回収装置をA側(図4参照)から見た図である。シュート2の内壁に沿ってアーチの下部まで流れ落ちた溶融スラグpは、そこで燃焼ガスhの流れに曝される。溶融スラグpは燃焼ガスhの流れにより図6で右側方向への風圧を受ける。溶融スラグpはその多くがA側の壁面(図6で手前側の壁面)とB側の壁面(排ガス出口10bを有するアーチ型形状の壁面)とのコーナー部の近くを流れ下るためA側壁面上を広がるようにして第二のスラグ分離室13側へ飛散し、水面4aによって捕捉される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、塵芥を炉内で燃焼及びガス化しその残さである焼却灰を溶融して溶融スラグとして炉外に排出する塵芥の燃焼炉に関し、特に溶融スラグの回収効率を向上することのできるスラグ回収装置およびそれを用いた燃焼炉に利用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のスラグ回収装置及びそれを用いた燃焼炉の概略図である。
【図2】本発明のスラグ回収装置の内部の燃焼ガスの速度分布をシミュレーションで求めた結果を示した図である。
【図3】本発明のスラグ回収装置の内部の温度分布をシミュレーションで求めた結果を示した図である。
【図4】図1に示す二次燃焼炉のA−A断面矢視図である。
【図5】排ガス出口10bの形状の選定の経緯を纏めた図である。
【図6】排ガス出口10bをアーチ型形状としたときの効果を示す図である。
【図7】従来の二次燃焼炉を示す図である。
【図8】従来の二次燃焼炉のスラグ分離室の内部表面温度をシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図9】従来の二次燃焼炉のスラグ分離室の内部表面流速をシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 二次燃焼炉
1a 絞り部
2 シュート
2a スラグ分離室
3 水槽
4 水
4a 水面
5 煙道
6 排ガス処理設備
10 壁面
11 スラグ分離室(第一のスラグ分離室)
10a 排ガス導入口
10b 排ガス出口
12 壁面
12a 排ガス排出口
13 第二のスラグ分離室
20 スラグ回収装置
g 可燃性ガス
h 燃焼ガス
O 粒子状固形分
p 溶融スラグ
q スラグ塊


【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面および水面によって画定されるスラグ分離室を有し、スラグ分離室に臨む壁面に排ガス導入口および下端が前記水面の水位以下に達する排ガス出口を設けることを特徴とするスラグ回収装置。
【請求項2】
夫々が壁面および水面によって画定される第一のスラグ分離室と第二のスラグ分離室とを有し、第一のスラグ分離室に臨む壁面に排ガス導入口および下端が前記水面の水位以下に達する排ガス出口を設け、第二のスラグ分離室に臨む壁面に下端が前記水面の水位より上に位置する排ガス排出口を設け、前記排ガス出口が第二のスラグ分離室に連通することを特徴とするスラグ回収装置。
【請求項3】
前記排ガス出口をアーチ型形状とする請求項1又は2に記載のスラグ回収装置。
【請求項4】
下部に出口を備える燃焼室と、
シュートと、
壁面および水面によって画定されるスラグ分離室を有しスラグ分離室に臨む壁面に排ガス導入口および下端が前記水面の水位以下に達する排ガス出口を設けたスラグ回収装置とを備え、
前記燃焼室の出口に前記シュートを接続し、前記シュートの出口に前記スラグ回収装置の排ガス導入口を接続することを特徴とする燃焼炉。
【請求項5】
下部に出口を備える燃焼室と、
シュートと、
夫々が壁面および水面によって画定される第一のスラグ分離室と第二のスラグ分離室とを有し第一のスラグ分離室に臨む壁面に排ガス導入口および下端が前記水面の水位以下に達する排ガス出口を設け第二のスラグ分離室に臨む壁面に下端が前記水面の水位より上に位置する排ガス排出口を設け、前記排ガス出口が第二のスラグ分離室に連通するスラグ回収装置とを備え、
前記燃焼室の出口に前記シュートを接続し、前記シュートの出口に第一のスラグ回収装置の排ガス導入口を接続することを特徴とする燃焼炉。
【請求項6】
前記シュートは断面が多角形の内部空間を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の燃焼炉。
【請求項7】
第二のスラグ分離室の排ガス排出口に水平方向に対して40°以上の角度の煙道を接続することを特徴とする請求項5に記載の燃焼炉。


【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−85564(P2007−85564A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271178(P2005−271178)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】