説明

スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置

【課題】熱侵入の問題や高電圧電気絶縁に大きな障害となる可能性がある測定リード線、極低温で動作する超電導送電ケーブルからの電源確保などが必要のない、簡単な構成の、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置を提供すること。
【解決手段】スラッシュ流体を挟んだ1対の電極板で構成したコンデンサと並列に接続されたコイルとで共振回路を構成し、その共振回路を挟んで上流側と下流側とに送信アンテナ及び受信アンテナ設ける。そして送信アンテナに送信回路で周波数が変化する間欠的高周波パルスを送り、この周波数が変化する間欠的高周波により、共振回路が共振することで発せられたエコー信号を受信アンテナを介して受信回路で受信し、該受信回路が受信したエコー信号が最大となる前記高周波パルスの周波数から共振回路の共振周波数を求め、前記電極間を流れるスラッシュ流体の固相率を制御回路で算出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒化された固体の窒素や水素と、液体の窒素や水素との混合物のスラリーからなるスラッシュ流体により冷却する超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置に係り、特に、高電圧機器である超電導送電ケーブルにおける、スラッシュ流体の冷却状態を最適に保つために必要な、固体冷媒の含有率である固相率と流速とをモニターリングできるようにした、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、超電導技術の電力分野への応用の一つとして、超電導送電ケーブルの開発、実用化が進んでいる。これは、電気抵抗がゼロとなる超電導体を電力送電線に適用するものであり、超電導送電ケーブルは極低温の冷却を必要とするが、大量の電力を効率良く輸送できるので将来の送電技術として有望視されている。この超電導送電ケーブルの超電導体には、液体ヘリウム冷却を伴う金属系の超電導体と、液体窒素や液体水素冷却を伴う酸化物系の超電導体が存在するが、中でも、安価で安全な液体窒素や液体水素を冷媒とする高温超電導体が注目されつつある。
【0003】
例えば液体窒素は77Kであるが、超電導体は動作温度を下げるほど特性が向上するため、液体窒素よりも65K程度の過冷却液体窒素の方が、更には、微粒化された固体窒素と液体窒素の混合物のスラリーで、より温度の低い63Kのスラッシュ窒素冷却の方が超電導送電ケーブルの寒冷として優れている。特にスラッシュ流体は、固体窒素や水素の融解熱も寒冷として作用するので超電導送電ケーブル冷却寒冷としての期待が大きく、本願出願人も、特許文献1においてスラッシュ窒素を超電導送電ケーブルの寒冷として使用した、超電導送電ケーブル、及びそのシステムを提案した。
【0004】
こういったスラッシュ流体を超電導送電ケーブルの寒冷として使用する場合、できる限り多くの融解熱を利用するには固体冷媒の含有率(固相率)を大きくする方法があるが、こうすると、流動特性が低下して超電導送電ケーブルの寒冷としては不適切になる。そのため、スラッシュ流体冷却ケーブルでは、スラッシュ流体の冷却状態を最適に保つため、常に固相率と流速を監視(モニターリング)し、超電導送電ケーブルが常に一定温度に保たれるよう冷媒状態を監視する必要がある。
【0005】
スラッシュ流体の固相率測定には、スラッシュ流体の密度を計測して重量流量を求めるため、従来から二枚のコンデンサ極板間に電界を発生させ、コンデンサ極板間を流れるスラッシュ流体による静電容量変化から誘電率を計測し、誘電率を基に、その密度を求めるようにした静電容量方式のものがある。しかしこの方式の場合、二枚のコンデンサ極板間に生じる電気力線が外方へ拡がるのを阻止することができないため、検出精度が下がるという問題があった。
【0006】
そのため例えば特許文献2には、一対の平行なコンデンサ極板から成るコンデンサに、誘電率を得るための検出器と誘電率から密度を求めるための演算装置を接続し、一対のコンデンサ極板をスラッシュ流体の流れ方向と平行に配置すると共に、コンデンサ極板と平行な側面を有して底面を全面開口し、流れ方向の前後の面に多数の大径開口部と、上面と側面に多数の小径開口部を設けた直方体状のシールドで覆い、電気力線が外方へ拡がるのを極力阻止するようにしたスラッシュ流体密度測定装置が示されている。
【0007】
さらに特許文献3には、磁性体のコア本体に巻回して高周波電源により駆動する励磁コイルと励磁コンデンサとで共振回路を形成し、その励磁コイルと電磁的、静電的に結合して、励磁コイルと同様、コア本体に巻回されて検出側コンデンサとで共振回路を形成する検出コイルとでセンサを形成し、励磁コイルに誘起される電圧がコア本体の磁気ギャップを備えた検出端近傍で、被検出体の静電的、電磁的に影響を受け変化することで被検出体の含有水分、溶融物濃度等を測定することができるようにしたセンサが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−9908号公報
【特許文献2】特開平10−10073号公報
【特許文献3】特開2003−194960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に示されたスラッシュ流体密度測定装置、及び特許文献3に示されたセンサでは、スラッシュ流体の密度は測定できても流速は測定できない。また、通常の計測においては計測用のリード線が必要であるが、超電導送電ケーブルは全長に亘って極低温状態なので、測定リード線からの熱侵入が冷却状態を最適に保つためには障害となってしまう。さらに、実際の超電導送電ケーブルは高電圧機器であり、リード線が高電圧電気絶縁に大きな障害を与える可能性もある。
【0010】
このような場合、トランスミッターによるデータ転送が一般的であるが、超電導送電ケーブルは極低温で動作しているため、極低温動作可能なトランスミッターが必要になる上に、トランスミッターの電源確保のためには超電導送電ケーブルから直接電力を抽出しなければならない。仮にそのようなトランスミッターや超電導送電ケーブルから直接電力を抽出することが実現できても、計測系が複雑になって信頼性が低くなる。
【0011】
そのため本発明においては、熱侵入の問題や高電圧電気絶縁に大きな障害となる可能性がある測定リード線を必要とせず、かつ、極低温で動作する超電導送電ケーブルから電源も確保する必要のない、簡単な構成の、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明になるスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置は、
超電導送電ケーブルに添ってスラッシュ流体を流して冷却するスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置であって、
前記超電導送電ケーブルに添って流れるスラッシュ流体を挟んだ1対の電極板からなるコンデンサと、前記電極板に並列に接続されたコイルとで構成される共振回路と、該共振回路を挟んで前記スラッシュ流体流路の上流側と下流側とに設けられた送信アンテナ及び受信アンテナと、前記送信アンテナに周波数が変化する間欠的高周波パルスを送る送信回路と、該送信回路から送られる間欠的高周波パルスのOFF状態でON状態となり、前記送信回路から送られる周波数が変化する間欠的高周波により、前記共振回路が共振することで発せられたエコー信号を前記受信アンテナを介して受信する受信回路と、該受信回路が受信したエコー信号が最大となる前記高周波パルスの周波数から、前記共振回路における共振周波数を求めて前記電極間を流れるスラッシュ流体の固相率を算出する制御回路とからなり、
前記スラッシュ流体の固相率によって定まる前記共振回路の共振周波数によりスラッシュ流体の固相率をワイヤレスで算出することを特徴とする。
【0013】
このようにスラッシュ流体を間に挟み、電極板でコンデンサを形成してコイルを並列に接続して共振回路を構成すると、この共振回路を構成するコンデンサはスラッシュ流体の固相率でその静電容量が変化し、その変化、すなわち固相率の違いに対応して共振回路の共振周波数も変化する。従って、この共振回路の共振周波数はスラッシュ流体の固相率を反映したものとなる。
【0014】
一方、この共振回路に送信アンテナから周波数が変化する間欠的高周波パルスを送り出すと、共振回路の共振周波数と同一の周波数のパルスを送り出したとき、共振回路に高周波電流が流れ、共振回路からエコー信号が放出される。そのため、このエコー信号を受信アンテナで受信して最大となる高周波パルス周波数を検出すれば、現在の共振回路の共振周波数、すなわちスラッシュ流体の固相率に対応した静電容量が判明し、それからスラッシュ流体の固相率を知ることができる。なお、受信回路は、送信アンテナから送り出される間欠的高周波パルスのOFF状態でON状態となるから、送信アンテナから送り出されるパルスを受信することがなく、エコー信号のみを受信することができる。
【0015】
従って、非常に簡単な構成で、スラッシュ流体の固相率により変化するコンデンサの静電容量、すなわちスラッシュ流体の固相率をワイヤレスで測定することができ、測定リード線を用いることで熱侵入の問題や高電圧電気絶縁に大きな障害となる可能性がなくなると共に、電源を極低温で動作する超電導送電ケーブルから確保する必要もない、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置を提供することができる。
【0016】
また同様に前記課題を解決するため、本発明になるスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置は、
超電導送電ケーブルに添ってスラッシュ流体を流して冷却するスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置であって、
前記超電導送電ケーブルに添って流れるスラッシュ流体を挟み、コンデンサを形成する1対の電極板を2組、前記超電導送電ケーブル長手方向に互いに離間させて設け、それぞれ前記電極板に並列に接続されたコイルとで共振周波数を異ならせて構成した2つの共振回路と、該2つの共振回路を挟んで前記スラッシュ流体流路の上流側と下流側とに設けられた送信アンテナ及び受信アンテナと、前記送信アンテナに周波数が変化する間欠的高周波パルスを送る送信回路と、該送信回路から送られる間欠的高周波パルスのOFF状態でON状態となり、前記送信回路から送られる周波数が変化する間欠的高周波により、前記それぞれの共振回路が共振することで発せられたエコー信号を前記受信アンテナを介して受信する受信回路と、該受信回路が受信したエコー信号が最大となる前記高周波パルスの周波数から、前記2つの共振回路のそれぞれを構成する電極間を流れるスラッシュ流体の固相率を算出すると共に、前記電極板位置に対応する固相率が同一となった時間間隔と前記2つの電極板間隔とから、前記スラッシュ流体の流速を算出する制御回路とからなり、
前記スラッシュ流体の固相率によって定まる前記共振回路の共振周波数により、スラッシュ流体の流速をワイヤレスで算出することを特徴とする。
【0017】
このように、離間して設けた2つの共振回路のそれぞれで前記したようにスラッシュ流体の固相率を測定し、その測定結果から、2つの共振回路で同一固相率が検出された時間間隔と2組の電極板の距離とからスラッシュ流体の流速を測定することで、これも非常に簡単な構成で、スラッシュ流体の流速をワイヤレスで測定することができ、測定リード線を用いることで熱侵入の問題や高電圧電気絶縁に大きな障害となる可能性がなくなり、かつ、電源を極低温で動作する超電導送電ケーブルから確保する必要もない、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置を提供することができる。
【0018】
そして、前記制御回路は、2つの共振回路から放出されるエコー信号の強度信号をX(t)、Y(t)、前記2つの共振回路のそれぞれを構成する電極板位置に対応する固相率が同一となった時間間隔をτ、期待値(具体的には積分における総和(Σ)のイメージ)をEとしたとき、下記(8)式で求められる相互相関関数が極大値を示す時間τによりスラッシュ流体の流速を算出することで、固相率(密度)の検出のために共振回路にコンデンサが使われているため、インピーダンスが極めて高くなってノイズの影響を受けやく、エコー信号にはホワイトノイズが多く含まれてエコー信号の最大となる点の検出を難しくしている。しかしながらこのように、それぞれの共振回路から得られるエコー信号の相互相関関数を求め、それによって得られた相互相関関数がピーク値を示す周波数を共振周波数とすることで、こういった問題も解決できる。
【0019】
【数4】

【0020】
また、前記制御回路は、予め求めた、前記共振回路の共振周波数とスラッシュ流体の固相率との関係を記憶していることで、固相率を容易に算出することができる。
【0021】
さらに、前記制御回路は、求めたスラッシュ流体の固相率が超電導送電ケーブルの冷却に適した値となるよう、スラッシュ流体生成装置を制御することで、常にスラッシュ流体の固相率を超電導送電ケーブルの冷却に適した値に保つことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上記載のごとく本発明になるスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置は、熱侵入の問題や高電圧電気絶縁に大きな障害となる可能性がある測定リード線を必要とせず、かつ、極低温で動作する超電導送電ケーブルから電源を確保する必要もなくて簡単な構成で、また相互相関関数を用いることで正確な、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の冷媒状態監視装置に用いる計測システム全体のイメージ図で、スラッシュ流体の固相率を測定する場合である。
【図2】本発明の冷媒状態監視装置に用いる計測システム全体のイメージ図で、スラッシュ流体の流速を測定する場合である。
【図3】本発明の冷媒状態監視装置に用いるコンデンサとインダクタンスの(A)が構成概念図、(B)がその等価回路である。
【図4】本発明の冷媒状態監視装置に用いる計測システムにおける、共振回路内の最大電流が生じる条件の説明図である。
【図5】本発明の計測系において、センサたる共振回路に流れる高周波エコー電流の一例を示したグラフである。
【図6】本発明の計測系において、センサたる共振回路に流れる高周波エコー電流の一例を示したグラフである。
【図7】本発明の冷媒状態監視装置により測定した固相率の測定データの一例である。
【図8】本発明の冷媒状態監視装置により測定した固相率の測定データから、相互相関関数を用いて算出した固相率の測定データの一例である。
【図9】本発明の冷媒状態監視装置に用いるコンデンサの具体例である。
【図10】極低温状態における窒素の誘電率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0025】
最初に本発明の概略を簡単に説明すると、まず前記した特許文献2と同様に、1対の電極板で超電導送電ケーブルに添って流れるスラッシュ流体を間に挟んだコンデンサを用意する。一般的に、コンデンサCの静電容量測定は、LCR測定器を用いた直接計測か、既知の抵抗Rとを組み合わせた発振器の発振周波数を計測する方法が使われる。しかしこれらの測定方法では、測定リード線が必要になり、前記したように超電導送電ケーブルは全長に亘って極低温状態なので、測定リード線からの熱侵入の問題や、高電圧電気絶縁に大きな障害を与えるという問題がある。
【0026】
そのため本発明においては、そのコンデンサを構成する電極板に並列にコイルを接続して共振回路を形成する。すると、コンデンサはその静電容量がスラッシュ流体の固相率で変化するから、この共振回路の共振周波数がスラッシュ流体の固相率を反映したものとなる。そのため、予め、静電容量(共振周波数)とスラッシュ流体の固相率との関係を調べておき、共振回路の共振周波数を検出することで、間接的にスラッシュ流体の固相率を検出できるようにする。
【0027】
さらに、この共振回路の共振周波数をリード線を用いずにワイヤレスで検出するため、スラッシュ流体流路におけるこの共振回路を挟んだ上流側と下流側に、周波数が変化する間欠的高周波パルスを共振回路に送る送信アンテナと、共振周波数の高周波パルスによって共振回路に流れる高周波電流により放出されるエコー信号を、受信アンテナを介して受信する受信回路とを設ける。またこの受信回路は、送信アンテナから送り出される間欠的高周波パルスのOFF状態のときにON状態となるようにする。
【0028】
このようにすると、送信アンテナから共振回路の共振周波数と同一の周波数のパルスが送り出されたとき、共振回路に高周波電流が流れてエコー信号が放出されるから、このエコー信号を受信アンテナで受信する。そして、その受信強度が最大となる送信周波数を検出すると、そのときの共振回路の共振周波数、すなわちスラッシュ流体の固相率に対応した静電容量が判明するから、それによってスラッシュ流体の固相率を知ることができる。なお、受信回路は、前記したように送信アンテナから送り出される間欠的高周波パルスのOFF状態のときにON状態となるから、送信アンテナから送り出されるパルスを受信することはなく、エコー信号のみを受信することができる。
【0029】
このようにすることで、非常に簡単な構成でスラッシュ流体の固相率により変化するコンデンサの静電容量、すなわちスラッシュ流体の固相率をワイヤレスで測定することができ、測定リード線を用いることで熱侵入の問題や高電圧電気絶縁に大きな障害となる可能性がなくなると共に、極低温で動作する超電導送電ケーブルから電源を確保する必要もない、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置を提供することが可能となる。
【0030】
また、この共振回路が1つの構成ではスラッシュ流体の固相率が測定できるだけであるが、共振周波数の異なる2つの共振回路をスラッシュ流体流路に距離をおいて設け、それぞれの共振回路でスラッシュ流体の固相率を求めて、同一固相率がそれぞれの共振回路で検出されたとき、その同一固相率が検出された時間間隔と2つの共振回路の距離とから、スラッシュ流体の流速も求めることができる。
【0031】
すなわちスラッシュ流体は常に同一の固相率で送り出されているわけではなく、実際の冷却系では圧縮機の圧力変動や局部的な重力分離により固体粒子の分布が変化する。そのため、この変化パターンが流れに乗って移動するので、固相率の変化パターン、すなわち固相率の移動速度を検出することで流速を求めることができるわけである。
【0032】
これを実現するため、共振周波数を異ならせて設ける2つの共振回路のそれぞれにおける、スラッシュ流体の固相率と共振周波数との関係を予め調べておく。そして固相率検出の場合と同様、2つの共振回路に送信アンテナから、スラッシュ流体流路を通して周波数が変化する間欠的高周波パルスを送出する。
【0033】
すると前記したようにそれぞれの共振回路からエコー信号が放出されるが、それぞれの共振回路は共振周波数が異なるからエコー信号を分離することができ、それによって別個に、それぞれの共振回路近傍を流れるスラッシュ流体の固相率を算出できる。そのため、それぞれの共振回路で同一の固相率が算出されたとき、その算出時間間隔と共振回路の距離とから、スラッシュ流体の流速が算出できるわけである。
【0034】
なお、このスラッシュ流体の流速の検出にあたっては、このエコー信号にホワイトノイズが多く含まれていて、エコー信号の最大となる点の検出を難しくしている。そのため本発明においては、それぞれの共振回路から得られるエコー信号の相互相関関数を求め、それによって得られた相互相関関数がピーク値を示す周波数を共振周波数としてスラッシュ流体の流速の検出を行うようにした。
【0035】
このようにすることで、非常に簡単な構成でスラッシュ流体の流速もワイヤレスで測定することができ、測定リード線を用いることで熱侵入の問題や高電圧電気絶縁に大きな障害となる可能性がなくなり、かつ、電源を極低温で動作する超電導送電ケーブルから確保する必要もない、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置を提供することができる。
【0036】
以上が本発明の概略であるが、極低温状態における窒素の誘電率は、横軸に55〜80Kの温度、縦軸に誘電率(Dielectric Constant)をとり、1気圧(1 Atmosphere)の状態における窒素(Nitrogen)の温度に対する誘電率をプロットした図10のグラフに示すように、窒素が固体(SOLID)、液体(LIQUED)両方共存する63Kで、誘電率εが液体窒素の1.455から固体窒素の1.514に不連続にジャンプする。
【0037】
スラッシュ窒素の誘電率εは固相率に比例し、100%の液体窒素から100%の固体窒素に変化すると、誘電率εが約4%変化する。またスラッシュ窒素は固体と液体の混合流体で非圧縮性流体なので、圧力の影響を殆ど受けずに密度が固相率に比例する。従ってコンデンサで誘電率を測定し、スラッシュ窒素の密度ρを求めれば、固相率を測定できることになる。
【0038】
スラッシュ窒素の密度ρは、固体窒素、液体窒素の誘電率をそれぞれε、εとし、ρを固体窒素の密度、ρを液体窒素の密度、コンデンサで測定した誘電率をεとすると、下記(1)式で求められる。
ε=ρS+(ρ−ρS)( ε−ε)/( ε−ε) ………(1)
【実施例1】
【0039】
図3は、本発明に用いる共振回路を構成する、コンデンサC14に既知インダクタンスL(コイルL)16を並列接続した共振回路12の、(A)が構成概念図、(B)がその等価回路である。スラッシュ窒素は非磁性流体なので、コイル16を極低温領域に設置でき、図3の概念図に示したようにコイルL16をコンデンサC14と直近で並列接続できる。コイルL16をコンデンサC14とを並列に接続した回路は、図3(B)に示したように、並列共振回路12となって下記(2)式で表せる共振周波数fを有する。
【数1】

【0040】
そして本発明では、流速測定にあたり、この図3に示した共振回路12を2つ、距離を離して設置し、固相率変化パターンの移動時間を計測するわけであるが、同じ寸法のコンデンサC14を使っても、既知インダクタンス16、16(図2参照)をL、Lと異なった値のものとすれば、下記(3)式のように異なった共振周波数に設定できるため、分離測定が可能となる。
【数2】

【0041】
このスラッシュ窒素の固相率測定に使用するコンデンサC14は、スラッシュ窒素の流れに障害を与えさえしなければどのような構造であっても良い。例えば平行平板型コンデンサを用いるとすれば、スラッシュ窒素におけるεを真空中の誘電率、εを比誘電率とし、Sをコンデンサの電極面積、dを電極間距離とすると、静電容量Cは下記(4)式のようになる。
C=(εεS)/d ……………………………………………(4)
【0042】
図9は、このコンデンサC90(図1乃至図3では14)の具体例であり、例えば銅板(電極)92、92の周りにFRPなどで形成した電極固定部材94を設け、横50mm、縦40mmの電極面積が20cmで、銅板92、92の間隔が0.53mmのコンデンサであれば、大気中で約50pFの容量となる。このコンデンサを2つ用意して、それぞれのコンデンサに、L=10μH、L=20μHのリアクトルを並列接続した場合、各々の共振周波数f、fは、前記(3)式から、f=7.121MHz、f=5.035MHzの2つの共振回路を構成できる。ただしリアクトルの巻線抵抗は共に10mΩとした。なお、この図9に示したコンデンサC90の構成、寸法、リアクトルの値は一例であり、このような構成や寸法、リアクトルの値に限定されないことは自明である。
【0043】
そして前記し、図1に計測システム全体のイメージを示したように、センサーであるこの図3に示した共振回路12を超電導送電ケーブル10内に設置し、かつ、超電導送電ケーブル10の一端に送信アンテナ18を、反対側の端末に受信アンテナ20を設置する。
【0044】
この図1において10は、例えば前記特許文献1やその先行技術などに示されているような超電導送電ケーブル、12は図3で説明した共振回路で、14はコンデンサ、16はインダクタンス、18は可変周波数高周波送信回路28からの周波数が変化する間欠的高周波パルスを共振回路12に向けて送る送信アンテナ、20は共振回路12が可変周波数高周波送信回路28から送られる高周波に共振して発した、エコー信号を受信するための受信アンテナ、22はスラッシュ流体の生成装置装置で、例えばスラッシュ窒素の場合、固体窒素は液体窒素より若干比重が大きいので、図示したように固体窒素がタンク下側に集まる。24は液体窒素を送り出す上部出口バルブ、26は固体窒素を送り出す下部出口バルブである。
【0045】
30は可変周波数高周波送信回路28から送られる間欠的高周波パルスのOFF状態でON状態となり、受信アンテナ20が受信したエコー信号を増幅する受信回路、32は、予め調べた、コンデンサ14の静電容量(共振周波数)とスラッシュ流体の固相率との関係を記憶し、可変周波数高周波送信回路28の間欠動作と周波数の変化の指示、受信回路30を可変周波数高周波送信回路28のOFF状態でON状態とし、受信したエコー信号から固相率を算出する制御回路である。なお、この制御回路32は、後記する図2の場合は共振回路12、共振回路12の距離l、それぞれがエコー信号を発した時間とその時の可変周波数高周波送信回路28が送り出した高周波の周波数などから、スラッシュ流体の流速も算出する。
【0046】
このように構成した計測システムにおいて、送信アンテナ18から、可変周波数高周波送信回路28で発生した間欠的な高周波パルスを超電導送電ケーブル10内に送り込む。反対側の端末に設置した受信アンテナ20は、超電導送電ケーブル10内の電波を検出するが、センサーである図3に示した共振回路12の、コンデンサC14とインダクタンスL16の値を十分小さく設定すれば、共振周波数を高くできてワイヤレスでの情報伝送が可能になる。
【0047】
ここで、受信アンテナ20に接続された受信回路30は、送信アンテナ18の可変周波数高周波送信回路28がOFF状態のときだけONとなるから、通常の状態では、受信アンテナ20側が信号を検出することがない。しかし、超電導送電ケーブル10内に高周波パルスに共鳴する共振回路12があると、送信アンテナ18側からの高周波エネルギーをこの共振回路12が吸収し、共振回路12内に高周波電流が流れる。いま、Iを送信アンテナ18側がOFFになった瞬間に共振回路12に流れる高周波電流、Lを既知のインダクタンス16、Rをインダクタンス16の抵抗、ωをセンサーである共振回路12の共振周波数とし、送信アンテナ18側をOFFにすると、共振回路12は下記の(5)式で示すエコー信号を放出する。しかしこの時、送信アンテナ18側はOFF状態なので、受信アンテナ20側はセンサー12のエコー信号のみを検出することになる。
(t)=Iexp(−R×t/L)sinωt ……………(5)
【0048】
今、Lを送信コイル18のインダクタンス、Eを送信アンテナ側の最大振幅、Lを共振回路12のインダクタンス、kを送信コイル18と受信コイル20の結合係数、Cを共振回路12の静電容量、Rを共振コイル12の抵抗、ωを送信アンテナ18側からの高周波信号周波数、ωを共振回路12の共振周波数、ωをω=1/(LC)とすると、共振回路12内の電流Iは、受信時間が十分長く、ほぼ平衡状態であると見なせれば下記(6)式のように表せる。
【数3】

【0049】
この(6)式から明らかなように、可変周波数高周波送信回路28の送信周波数が共振回路12の共振周波数に一致する、ω=ω0の時、エコー電流が最大になる。ただし共振回路12内の最大電流は、送信側の間欠的な高周波40が、図4のようにゼロクロス点44で終了し、再開時も必ずゼロクロス点42から開始する場合である。
【0050】
この図1に示した回路におけるコンデンサ14の静電容量の測定は、可変周波数高周波送信回路28の周波数を徐々に変化させ、受信回路30で受信したエコー信号を制御回路32で解析して、最大になる点を求めて行う。共振回路12内の高周波電流が最大になるのは、可変周波数高周波送信回路28の送信周波数が共振回路12の共振周波数に一致した点なので、そのとき共振回路の共振周波数が求まったことになる。共振回路の共振周波数が分かれば、インダクタンスL16が既知なので、静電容量はC=1/(ωL)で求められ、予め、前記したように静電容量(共振周波数)とスラッシュ流体の固相率との関係を求め、制御回路32に記憶させておくことで、静電容量Cが分かれば前記(1)式から、スラッシュ窒素の密度がわかって最終的にスラッシュ窒素の固相率が計測できることになる。
【0051】
そしてこのようにしてスラッシュ流体の固相率が求まったら、その固相率が超電導送電ケーブル10の冷却に適した値であるか否かを制御回路32で判断し、適していないと判断された場合は制御回路32で、スラッシュ流体生成装置22の上部出口バルブ24、下部出口バルブ26の開度を制御し、超電導送電ケーブル10の冷却に適した固相率とするわけである。
【実施例2】
【0052】
図2は、本発明の冷媒状態監視装置の実施例2の計測システム全体のイメージ図で、スラッシュ流体の流速を測定する場合である。この図2において図1と同様な構成要素には同一番号が付してあるが、この図2ではスラッシュ流体の流速を測定するため、共振回路12が、異なった共振周波数となるように設定された共振回路12、共振回路12の2つが距離lをおいて設置されている。こうすると、共振周波数、すなわちエコー信号が最大になる点が2つで異なるため、前記したように分離測定が可能となる。そのため、それぞれの共振回路で同一の固相率が算出されたとき、その算出時間間隔と共振回路の距離とから、スラッシュ流体の流速が算出できるわけである。
【0053】
なお、このエコー信号にはホワイトノイズが含まれ、エコー信号の最大となる点の検出を難しくしている。このため本発明においては、後記するようにそれぞれの共振回路から得られるエコー信号の相互相関関数を求め、それによって得られた相互相関関数が最初にピーク値を示す時間τから、超電導送電ケーブル内のスラッシュ窒素流速Uを、U=L/τによって求めるようにしている。
【0054】
本発明では、このようにスラッシュ窒素超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置を構成することで、熱侵入の問題や、高電圧電気絶縁に大きな障害となる可能性がある測定リード線を必要とせず、かつ、極低温で動作する超電導送電ケーブルから電源を確保する必要もなく、スラッシュ窒素の固相率及び流速をワイヤレスで計測できる。そのため、電力機器に特有な高電圧電気絶縁問題を根本的に解決できると共に、従来のワイヤレス方式であるトランスミッターとは異なり、センサー部分の構造が簡単なので計測系の信頼性を低下させることがない、という特徴をも有する。
【0055】
次に、図1、図2に示した計測系において、超電導送電ケーブル端末に設置された送信アンテナ18から、1m秒のインターバルで1m秒の間、高周波信号を送信した場合のシミュレーション結果について説明する。送信アンテナ18に相当する送信コイルのインダクタンスを10μHとし、送信コイルと共振回路12のコイル16との結合係数kは、超電導送電ケーブル10の端末部の送信コイル(送信アンテナ18)とセンサーコイル16までの距離が十分離れていると想定し、k=0.001と仮定する。送信側の高周波出力を約30Wとし、送信コイルから約10m離れた位置に設置された共振回路12に流れる高周波エコー電流を求めると、横軸に時間、縦軸に共振回路12内の電流(単位:mA)を取った図5のグラフのようになる。
【0056】
送信周波数を変化させると、7.121MHzの共振周波数を有する共振回路12内の最大高周波電流は、横軸に周波数変化量、縦軸に共振回路12を流れる高周波電流の最大電流(単位:mA)を取った図6に示すように変化する。実際の超電導送電ケーブル10の測定系では、受信アンテナ20はセンサーである共振回路12から遠く離れた場所に設置するので、受信コイル(受信アンテナ20)が受ける信号は図6に示す値より微弱になるが、受信アンテナ20側の感度は通常数μV/m程度なので十分検出可能であるし、振幅の周波数に対する変化を観測するだけなので通常の受信回路30で十分対応できる。
【0057】
図6の結果の目視観測ではfの1/10000程度しか読み取れないが、電子的な方法であれば10−5程度の読み取りは可能である。すなわちΔf=0.07121kHzまでは判別できると考えられる。一方、スラッシュ窒素は固相率変化により誘電率εが約最大4%変化するので、その変化量はmaxf=284.84kHzである。これより固相率の測定分解能は、maxf/Δf=0.00025(0.025%)となる。測定分解能を改善するには共振回路12のコイル16の抵抗をより低くして、共振回路12のQ値を大きくするか、共振周波数を数100MHzにすればよい。ちなみにシミュレーションではコイル16の抵抗を10mΩとしており、10〜20μHのコイル抵抗としてはかなり大きく設定している。また、周波数も製作が容易なように、数MHzの短波帯域とした。
【0058】
このようにして固相率を測定したら、図1、図2に示して前記したように、その固相率が超電導送電ケーブル10の冷却に適した値であるか否かを制御回路32で判断し、適していないと判断された場合は制御回路32で、スラッシュ流体生成装置22の上部出口バルブ24、下部出口バルブ26の開度を制御し、超電導送電ケーブル10の冷却に適した固相率とするわけである。
【0059】
一方、流速は前記図2で説明したように、lだけ離れた位置に設置した2つの共振回路12、共振回路12が測定した固相率変化パターンの移動時間から求めることができる。しかしながら、受信回路30が受信したエコー信号から制御回路32が算出した固相率は、図7に示したように、ホワイトノイズが多く含まれていて、エコー信号の最大となる点の検出を難しくしている。
【0060】
このような場合、相互相関関数を使って変化パターンを特定し、相互相関関数が極大値を示す時間τを見つける方法が有効である。すなわち、2つの共振回路12、共振回路12の距離lから、流速Uは、下記(7)式で求められるから、図2に示した2つの共振回路12、共振回路12のからの信号を仮にX(t)、Y(t)とした場合、Eを期待値(具体的には総和(Σ)のイメージ)とすると、X(t)、Y(t)の相互相関関数は下記(8)式のように定義される。
【数4】

【0061】
固相率(密度)の検出では、共振回路12のコンデンサ14が使われているのでインピーダンスが極めて高くなり、ノイズの影響を受けやすい。このノイズの影響は(8)式においては長い時間信号を積分し続ければゼロになる。つまり相互相関関数を使う流速測定法は、大きなノイズを含む信号の取り扱いに非常に有効な計測法である。実際の相互相関関数の計算では、測定データは有限個なのでT→∞を実現できない。そこで2つの共振回路12、共振回路12からの信号の有限数の積分で近似する。例えば、測定データX(t)、Y(t)の値がそれぞれx、x、x、……x10、y、y、y、……y10、と10づつ有ったとすると、積分は下記(9)式のような計算になる。
Φ(1)=[(x×y)+(x×y)+(x10×y)]
Φ(2)=[(x×y)+(x×y)+(x10×y)] ……(9)
Φ(1)=[(x×y)+(x×y)+(x10×y)]
……………………………………………………
【0062】
今、測定データX(t)、Y(t)に同じ変化パターンが含まれているとすると、一方のデータ列を時刻τだけズラして変化パターンを掛算、積分することは、変化パターンを2乗積分する事になり、大きな値になる。一方、それ以外の時は互いに打ち消しあうので小さな値になる。従って、相互相関関数が極大値を示すτを見つけることは、変化パターンの現れる時間差を求めたことになり、2つの共振回路12、共振回路12の距離lが既知量であれば、流速Uを前記(7)式で求めることができる。
【0063】
シミュレーションでは、固相率の変化パターンは0.2%程度変化するとして、更に測定データの5倍の振幅のホワイトノイズがあるとして求めたのが、前記した図7に示したノイズに埋もれた固相率のシミュレーションで描いた測定データである。同図に示すように、ノイズだらけの情報から固相率の変化パターンの移動量を目視で観測することは不可能である。この変化パターンを(8)式で定義される相互相関関数を計算すると、図8を得ることができる。同図は明らかにτ0の点で極大点が存在し、前記したように2つの共振回路12、共振回路12間の距離をlとすれば、スラッシュ流体の流速は(7)式から求めることができる。
【0064】
このようにしてスラッシュ流体の固相率、流速を求めることで、非常に簡単な構成で、スラッシュ流体の流速をワイヤレスで測定することができ、測定リード線を用いることで熱侵入の問題や高電圧電気絶縁に大きな障害となる可能性がなくなり、かつ、電源を極低温で動作する超電導送電ケーブルから確保する必要もなくて簡単な構成で、また相互相関関数を用いることで正確な、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、大量の電力を効率良く輸送できる超電導送電ケーブルを、効率良く、正確に冷却でき、将来の送電技術として利用価値が非常に大きい。
【符号の説明】
【0066】
10 超電導送電ケーブル
12 共振回路
14 コンデンサ
16 インダクタンス
18 送信アンテナ
20 受信アンテナ
22 スラッシュ流体生成装置
24 上部出口バルブ
26 下部出口バルブ
28 可変周波数高周波送信回路
30 受信回路
32 制御回路
40 送信高周波波形
42、44 ゼロクロス点
90 平行平板型コンデンサ
92 銅板
94 電極固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導送電ケーブルに添ってスラッシュ流体を流して冷却するスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置であって、
前記超電導送電ケーブルに添って流れるスラッシュ流体を挟んだ1対の電極板からなるコンデンサと、前記電極板に並列に接続されたコイルとで構成される共振回路と、該共振回路を挟んで前記スラッシュ流体流路の上流側と下流側とに設けられた送信アンテナ及び受信アンテナと、前記送信アンテナに周波数が変化する間欠的高周波パルスを送る送信回路と、該送信回路から送られる間欠的高周波パルスのOFF状態でON状態となり、前記送信回路から送られる周波数が変化する間欠的高周波により、前記共振回路が共振することで発せられたエコー信号を前記受信アンテナを介して受信する受信回路と、該受信回路が受信したエコー信号が最大となる前記高周波パルスの周波数から、前記共振回路における共振周波数を求めて前記電極間を流れるスラッシュ流体の固相率を算出する制御回路とからなり、
前記スラッシュ流体の固相率によって定まる前記共振回路の共振周波数によりスラッシュ流体の固相率をワイヤレスで算出することを特徴とする、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置。
【請求項2】
超電導送電ケーブルに添ってスラッシュ流体を流して冷却するスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置であって、
前記超電導送電ケーブルに添って流れるスラッシュ流体を挟み、コンデンサを形成する1対の電極板を2組、前記超電導送電ケーブル長手方向に互いに離間させて設け、それぞれ前記電極板に並列に接続されたコイルとで共振周波数を異ならせて構成した2つの共振回路と、該2つの共振回路を挟んで前記スラッシュ流体流路の上流側と下流側とに設けられた送信アンテナ及び受信アンテナと、前記送信アンテナに周波数が変化する間欠的高周波パルスを送る送信回路と、該送信回路から送られる間欠的高周波パルスのOFF状態でON状態となり、前記送信回路から送られる周波数が変化する間欠的高周波により、前記それぞれの共振回路が共振することで発せられたエコー信号を前記受信アンテナを介して受信する受信回路と、該受信回路が受信したエコー信号が最大となる前記高周波パルスの周波数から、前記2つの共振回路のそれぞれを構成する電極間を流れるスラッシュ流体の固相率を算出すると共に、前記電極板位置に対応する固相率が同一となった時間間隔と前記2つの電極板間隔とから、前記スラッシュ流体の流速を算出する制御回路とからなり、
前記スラッシュ流体の固相率によって定まる前記共振回路の共振周波数により、スラッシュ流体の流速をワイヤレスで算出することを特徴とする、スラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置。
【請求項3】
前記制御回路は、2つの共振回路から放出されるエコー信号の強度信号をX(t)、Y(t)、前記2つの共振回路のそれぞれを構成する電極板位置に対応する固相率が同一となった時間間隔をτ、期待値(具体的には積分における総和(Σ)のイメージ)をEとしたとき、下記(8)式で求められる相互相関関数が極大値を示す時間τによりスラッシュ流体の流速を算出することを特徴とする、請求項2に記載したスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置。
【数4】

【請求項4】
前記制御回路は、予め求めた、前記共振回路の共振周波数とスラッシュ流体の固相率との関係を記憶していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載したスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置。
【請求項5】
前記制御回路は、求めたスラッシュ流体の固相率が超電導送電ケーブルの冷却に適した値となるよう、スラッシュ流体生成装置を制御することを特徴とする請求項4に記載したスラッシュ流体冷却超電導送電ケーブルの冷媒状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−223740(P2010−223740A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71015(P2009−71015)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 イットリウム系超電導電力機器技術開発 委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】