説明

スラブの幅狭側面から冷却水を導出するための装置

【課題】 本発明は、連続鋳造設備内におけるそのスラブの鋳造の後に、基本的に垂直方向に二次冷却装置を通って案内された該スラブ200の幅狭側面210から、冷却水を導出するための装置100に関する。
【解決手段】 そのスラブの縁部における該スラブの部分的な過冷却を防止するために、本発明による装置100は、垂直方向に、幅狭側面210の長さにわたって分配された状態で設けられている、多数の水導出装置110−nを備えている。これら多数の水導出装置110−nは、垂直方向に設けられた収集落下管体120によって支持されている。この収集落下管体120は、更に、多数の水導出装置110−nから導出された冷却水の収集および分散的な導出のために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、連続鋳造設備の二次冷却装置内における、スラブの幅狭側面から冷却水を導出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳込みストランド、即ちスラブが、二次冷却装置を垂直方向に通過する場合、冷却水が、この二次冷却装置の案内ロールとストランド表面との間の楔状部内において収集される。この楔状部内において一時的に収集された冷却水は、次いで、典型的に、このスラブの幅狭側面の表面に沿って、下方へと流出する。
【0003】
冒頭に記載した様式の冷却水を収集および導出するための装置は、例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第1 558 239号明細書(特許文献1)に記載されている。この明細書で開示されている装置は、単に、スラブのそれぞれの幅狭側面に沿って、唯一の水導出装置を備えており、その際、これら水導出装置が、それぞれに、二次冷却装置、およびこの二次冷却装置の案内ロールの基部の下方、もしくはこの基部に設けられている。それぞれの水導出装置によって収容された冷却水を導出するために、これら水導出装置の後に、それぞれに1つの水導管が接続されている。それぞれに、幅狭側面当たり、単に1つだけの水導出装置および水導管が設けられているので、これら水導出装置は、それぞれに、より高くに位置する全ての案内ロールの楔状部から、このスラブのそれぞれの幅狭側面の表面に沿って流出する、全ての冷却水を収集する。それぞれのこれら水導出装置は、これら水導出装置に所属する、このスラブの幅狭側面に向かって、またはこの幅狭側面から離れて、位置調節装置を使って移動可能である。
【0004】
水導出装置が、単に、基部、即ち二次冷却装置の下方に設けられているので、スラブの幅狭側面から冷却水を導出するための、この公知技術の装置は、しかしながら、幅狭側面のそれぞれの面積単位を、それぞれに、全てのより高くに位置する楔状部から流出する全ての冷却水量が、傍らを流れ過ぎることの欠点を有している。従って、この冷却水量の不均等な分布、および、このことから結果として生じる、幅狭側面の長さにわたっての冷却作用の不均等な分布が生じる。何故ならば、より下方に位置する、この幅狭側面の領域は、より高くに位置する領域内におけるよりも、より多くの楔状部からのより多くの冷却水が傍らを流れ過ぎるからである。まさに、この幅狭側面のより下方に位置する領域内において、即ち、この二次冷却装置の端部において、その際に、面積単位当たりの過度に大きな傍らを流れ過ぎる冷却水量に基づいての、この幅狭側面のそこの領域の不都合な過冷却の危険が存在する。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第1 558 239号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、この公知技術を出発点として、本発明の根底をなす課題は、スラブの幅狭側面から冷却水を導出するための公知の装置を、スラブ縁部、即ちこのスラブ縁部の側面からの過冷却が防止されるように改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の対象によって解決される。
従って、この解決策により、本発明による装置の場合、
多数の水導出装置が、垂直方向に、幅狭側面の長さにわたって分配された状態で設けられており、および、
上記水導管が収集落下管体として形成されており、
この収集落下管体が、
これら多数の水導出装置を支持しており、且つ、多数の水導出装置から導出された冷却水の収集および中心的な導出のために、互いに結合されている。
【発明の効果】
【0007】
以下の説明において、冷却されるべき対象物として、単にスラブという言葉が用いられる。但し、本願発明は、どんな場合にも単にスラブに限定されてなく、むしろ、このスラブの概念は、ここで、他の可能な、二次冷却装置内において冷却されるべき、例えば鋼ストランド、鋳塊、または例えばブロックのスラブまたは薄スラブのようなスラブの種々の形材のような対象物のために使用される。
【0008】
本願によって請求された装置は、冷却水が、スラブの幅狭側面の、多数の種々の部位において、局部的に、水導出装置を使って導出され得ることを可能にする。このことは、このスラブの幅狭側面において、不都合に多くの冷却水量の部分的な集積を誘起せず、且つ、この方法で、このスラブの縁部領域における不都合で部分的なこのスラブの過冷却が回避されるという利点を有する。
【0009】
第1の有利な実施形態により、上記のことは、スラブのそれぞれの幅狭側面で、有利には、二次冷却装置のそれぞれの案内ロール対に個別の水導出装置が所属して設けられている、ことによって達成される。1つの案内ロール対は、本願説明の意味において、二次冷却装置の、固定側における第1の案内ロール、並びに、第2の、この第1の案内ロールに向かい合って位置して設けられた、可動側における案内ロールから成っている。
【0010】
有利には、水導出装置の幅は、処理されるべきスラブの最大に可能な厚さに相応している。これら水導出装置の幅この様式の形態は、まさに、最も厚いスラブの場合にも、冷却水の導出が、このスラブの全幅にわたって、即ち、このスラブの幅狭側面の全幅にわたって保証されていることの利点を与える。このことは、しかしながら、より僅かの厚さを有するスラブの場合にも、この冷却水が、これら水導出装置を使って、効果的に局部的に導出され得ることを排除せず、且つ、このことは、特に、これら水導出装置が、収集落下管体との協働で、それぞれに、冷却されるべきスラブの幅狭側面の中心に対して対称的に芯合わせされている場合に言えることである。
【0011】
それらスラブの厚さが最大に可能な厚さより少ない、該スラブが冷却される場合、この水導出装置は、有利には、右側および左側に対称的に、それぞれの幅狭側面を越えて突出している。これら水導出装置のこの突出は、しかしながら、ただ、これら水導出装置が右側および左側に向かってこのスラブ厚さを越えて回避可能である場合にだけ可能である。このことを保証するために、これら水導出装置は、有利には、それぞれに、二次冷却装置の、垂直方向に重なり合って設けられた2つの案内ロール対の間の、半分の高さに設けられている。
【0012】
異なる厚さ、および幅を有するスラブが冷却されねばならない場合のために、本発明による装置を、それぞれに、適当に移動することは必要である。この目的のために、この装置は、位置調節装置を有しており、この位置調節装置が、有利には、水導出装置を備える収集落下管体の、収集管体の2次元的な移動を可能にする。このスラブの幅方向内におけるこの装置の移動は、冷却されるべきスラブの変化された幅の場合の、この水導出装置の適当な位置調節を保証するために有利である。同様に、厚さ方向における、これらスラブの移動は、冷却されるべきスラブの変化された厚さの場合の、これら水導出装置の対称的な芯合わせを可能とするために有利である。
【0013】
水導出装置を備える収集落下管体は、有利には、間挿された保持装置を介して、位置調節装置と結合されている。このことは、このスラブの幅狭側面から見て、位置調節装置が、収集管体もしくは保持装置の後方に位置し、従って、この位置調節装置が、この収集管体もしくは保持装置によって、この幅狭側面に沿って流出する冷却水から保護されていることの利点を有している。
【0014】
収集管体が、この収集落下管体内における冷却水の落下速度を減速するための、例えば部分的に曲線状案内部の様式の減速要素を有している場合、更に有利である。
この減速要素によって、冷却水の過度に高い落下速度に基づいての、この収集落下管体の損傷が回避される。
【0015】
最後に述べれば、特に適当な費用という理由で、水導出装置が、ウォーターシュートとして、薄板の様式で形成されている場合、有利である。
【0016】
次に、本発明を、明細書に添付された唯一の図の参照のもとで、実施例の様式において詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図は、連続鋳造設備内におけるそのスラブの鋳造の後に、基本的に垂直方向に二次冷却装置を通って案内された該スラブ200の、幅狭側面210から冷却水を導出するための、本発明による装置100を示しており、且つその際に、この二次冷却装置において、ただ案内ロール310だけが図示されており、しかしながら、特に、スラブ200の幅広側面上に冷却水を塗布するための噴霧ノズルは、図示されていない。
この図内において、本発明によるこの装置が、多数の水導出装置110−n、ここでn=1〜N、を有しており、これら水導出装置が、収集管体120によって支持された状態で、垂直方向にこのスラブ200の幅狭側面210の長さにわたって、分配された状態で設けられていることが認識され得る。これら水導出装置110は、有利には、以下で同様にシュートとしても示されている、ウォーターシュートの様式で形成されている。このスラブの幅狭側面の異なる位置における、これら全てのシュートから導出された冷却水は、開口部124を経て、収集落下管体の入口内へと到達し、この収集落下管体内において、この冷却水が横方向導水路126を経てこのスラブから離れるように案内される前に、この冷却水は、先ず第一に、垂直方向に、下方へと落下する。
【0018】
収集落下管体120、およびこの収集落下管体に固定された水導出装置を有する本発明による装置100は、位置調節装置150を使って、有利には2次元的に、即ち、スラブ200の厚さDの方向、及び/または、このスラブの幅Bの方向に移動可能である。この装置の移動可能性は、二次冷却装置を通過するスラブの、変化された幅サイズおよび厚さサイズに対する、この装置の個々の適合を可能にする。
変化されたスラブ幅に対する適合は、この装置がこのスラブ幅の方向Bに、
水導出装置110が同様に変化されたスラブ幅の場合にも、冷却水をそこで最適に導出可能とするために、可能な限りこのスラブの幅狭側面のそれぞれの新しい位置の直ぐ近くに設けられているように移動される、
という方法で行われる。
変化されたスラブ厚さに対する適合は、本発明により、この装置がこのスラブの厚さDの方向に、
この水導出装置の不変に予め与えられた幅が、その都度、このスラブの幅狭側面に対して対称的に芯合わせされるように移動される、
という方法で行われる。
【0019】
水導出装置110の幅は、本発明により、有利には、この水導出装置が、このスラブための最大に可能な幅に相応するように寸法を設定されている。
この方法で、
先ず第一に自体最も厚いスラブの場合、これら水導出装置が、このスラブの幅狭側面の全幅を覆うことが保障されており、および、即ち、
同様に最も厚いスラブの場合にも同じ割合になるために、冷却水が、所属するロールとこのスラブとの間の楔状部から、固定側および可動側で導出されることが保障されている。
【0020】
最も厚いスラブ200に対して適合された幅を有する水導出装置110を、比較的に薄いスラブの冷却の際に交換する必要が無いことのために、および、
同時に、しかも同様に比較的に薄いスラブに対する適合のために厚さDの方向に移動する案内ロール310による、これら水導出装置の押し潰しをも回避するために、
本発明により典型的に、薄板の様式で形成されたシュートが、それぞれに、収集落下管体120に、これらシュートが、
冷却水を、それぞれに、2つの垂直方向に重なり合って設けられたロール310−1−Aと、310−2−Aとの間の半分の高さで捕らえることが可能であるように固定されている。
比較的に小さなスラブ厚さに対する適合の目的での、この厚さ方向Dにおけるこれら案内ロール310の移動の場合、基本的に水平方向に延在する水導出装置110−nは、その場合に、押し潰されることの危険を冒すこと無しに、2つの重なり合って設けられた水導出装置310−1−Aと、310−2−Aとの間の中間スペース内へと回避する。
【0021】
有利には、収集落下管体120は、冷却水の落下速度を局部的に減少させるために、図内において示されているような、エルボまたは迂回路の様式の、減速要素122を有している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態による装置の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造設備内におけるそのスラブの鋳造の後に、基本的に垂直方向に二次冷却装置を通って案内された該スラブ(200)の幅狭側面(210)から、冷却水を導出するための装置(100)であって、その際、
この装置が、有利には、それぞれの幅狭側面(210)において、
少なくとも1つの、この幅狭側面(210)の直ぐ近くに設けられた、この幅狭側面(210)において流出する冷却水の導出のための水導出装置(110−n)と、および、
この水導出装置に後置された、この水導出装置によって収容された冷却水の導出のための水導管とを備えている様式の上記装置において、
多数の水導出装置(110−n)が、垂直方向に、幅狭側面(210)の長さにわたって分配された状態で設けられており、および、
上記水導管が収集落下管体(120)として形成されており、
この収集落下管体が、
これら多数の水導出装置(110−n)を支持しており、且つ、多数の水導出装置(110−n)から導出された冷却水の収集および中心的な導出のために、互いに結合されている、
ことを特徴とする装置(100)。
【請求項2】
少なくとも一方の幅狭側面で、有利には、二次冷却装置のそれぞれの案内ロール対(310−x−A、310−x−B)に個別の水導出装置が所属して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
水導出装置(110−n)の幅は、処理されるべきスラブ(200)の最大に可能な厚さ(D)に相応していることを特徴とする請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項4】
水導出装置(110−n)は、この水導出装置の幅でもって、幅狭側面(210)の中心に対して対称的に芯合わせされていることを特徴とする請求項3に記載の装置(100)。
【請求項5】
水導出装置(110−n)は、それぞれに、
冷却水が、二次冷却装置の、垂直方向に重なり合って設けられた2つの案内ロール対(310−1、310−2)の間の半分の高さで取り出すように設けられていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一つに記載の装置(100)。
【請求項6】
水導出装置(110−n)を備える収集落下管体(120)は、
有利にはスラブ(200)の幅方向(B)及び/または厚さ方向(D)内におけるこの装置の2次元的な移動のために、
有利には、間挿された保持装置(140)を介して、位置調節装置と結合されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の装置(100)。
【請求項7】
保持装置(140)は、スラブ平面内において見て、収集落下管体(120)と位置調節装置(150)との間に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の装置(100)。
【請求項8】
収集落下管体(120)は、冷却水の落下速度を減速するための、減速要素(122)を有していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の装置(100)。
【請求項9】
水導出装置は、ウォーターシュートとして、薄板の様式で形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の装置(100)。

【図1】
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【公表番号】特表2009−514682(P2009−514682A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539279(P2008−539279)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009979
【国際公開番号】WO2007/054181
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】