説明

スラリー流体用配管

【課題】本発明は、管体に設けたT字型管部を介してスラリー流体を脱水スクリーン又は濾過器へ供給することにより、脱水スクリーン又は濾過器の損傷を防ぐことを目的とする。
【解決手段】本発明によるスラリー流体用配管は、脱水スクリーン(9)又は濾過器に接続された管体(8)にT字型管部(30)を接続し、このT字型管部(30)の入口管(31)から入ったスラリー流体(14)を折り返し管(32)の端板(34)に衝突させて折り返すことにより、スラリー流体(14)の勢いを弱め、脱水スクリーン(9)又は濾過器の損傷を防止する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー流体用配管に関し、特に、管体に設けたT字型管部を介してスラリー流体を脱水スクリーン又は濾過器へ供給することにより、脱水スクリーン又は濾過器の損傷を防ぐための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のペレット製造装置におけるスラリー流体用配管としては、例えば、特許文献1等におけるペレット製造装置における構成と同等の構成を図3に示し、この図3に用いられるスラリー流体用配管を図4及び図5に示している。
【0003】
図3において符号1で示されるものは、混練押出機であり、この混練押出機1の吐出側には、ダイバータバルブ2及びスクリーンチェンジャ3を介してカッタ装置4を有する循環箱5が接続され、このカッタ装置4のカッタ刃4aはモータ6によって回転され、かつ、軸方向移動可能に構成されている。
【0004】
前記循環箱5に接続されスラリー流体用配管7をなす管体8は脱水スクリーン9(又は濾過器)に接続され、この脱水スクリーン9は遠心乾燥機10に接続されている。
前記循環箱5には、三方弁11を介してペレット搬送水ポンプ12及びペレット搬送水タンク13が接続され、前記循環箱5へのペレット搬送水(通称PCWと云う)の循環供給が行われるように構成されている。
【0005】
以上の構成によるペレット製造装置において、まず、ペレット搬送水ポンプ12を作動させると、ペレット搬送水タンク13からのペレット搬送水が三方弁11を介して循環箱5、管体8、脱水スクリーン9を介して再びペレット搬送水タンク13に戻り、ペレット搬送水が循環する。
【0006】
前述の状態で、混練押出機1から押出された溶融樹脂は、ストランドとしてカッタ刃4aで切断されてペレット化し、循環箱5内でペレット40とペレット搬送水42からなるスラリー流体14として、管体8を経て脱水スクリーン9に送られて脱水され、ペレット搬送水はペレット搬送水タンク13に戻り、脱水したペレット40は遠心乾燥機10に送られて乾燥されて製品となる。
【0007】
前記脱水スクリーン9に接続された管体8は、具体的には図4及び図5で示されるように構成され、スラリー流体用配管7をなす管体8はL字型に形成されてその出口管20が脱水スクリーン9に接続されている。
【0008】
前記L字型の管体8内を経たスラリー流体14は、そのままの勢いで脱水スクリーン9のスリット板21を通過、落下して水受け板48に衝突する。その際の衝撃は大きく、溶接構造物である脱水スクリーン9が損傷する事も有る。スラリー流体14とはペレット40とペレット搬送水42の混合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−95015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のペレット製造装置のスラリー流体用配管は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、従来のスラリー流体用配管7は出口管20との接合部がL字型であるため、内部流体の流れる方向が1つに制限されている。従って多量のスラリー流体14が一気に脱水スクリーン9内に突入する衝撃が大きく、薄板、溶接構造の脱水スクリーン9は変形することがあり、その為にできた隙間から継続的な水漏れが発生することがあり、最悪の場合は脱水スクリーン9の接合部に裂傷が発生することがあった。
さらに、スラリー流体用配管7の分解が困難で、配管内の清掃を行う場合、重く長い、曲がりくねった配管をクレーンで吊る作業が必要となる。それの準備作業として足場の組立もしなければならなかった。
本発明は、脱水スクリーン9直前の出口管20とスラリー流体用配管7の平行部分と接続する管体8にT字形管部を採用することにより、従来の課題を解消できるようにしたスラリー流体用配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるスラリー流体用配管は、混練押出機からの溶融樹脂をカッタ装置で切断したペレットとペレット搬送水からなるスラリー流体を循環箱から脱水スクリーン又は濾過器内へ導くため、前記循環箱と前記脱水スクリーン又は濾過器との間に設けられた管体から構成されるスラリー流体用配管において、前記脱水スクリーン又は濾過器の近傍に位置する前記管体の一部に形成されT字型をなすT字型管部と、前記T字型管部に形成された入口管、出口管及び折り返し管と、を備え、前記入口管は前記循環箱に接続され、前記出口管は前記脱水スクリーン又は濾過器に接続され、前記折り返し管は前記入口管の軸方向に沿って直線状に延設され、前記折り返し管の端部の管開口は端板により閉鎖され、前記入口管から入って前記端板に衝突した前記スラリー流体は前記出口管を経て前記脱水スクリーン又は濾過器内へ流れるようにした構成であり、また、前記入口管と折り返し管は、直線状に形成され、前記出口管は前記入口管と折り返し管に対して直交配置されている構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるスラリー流体用配管は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、混練押出機からの溶融樹脂をカッタ装置で切断したペレットとペレット搬送水からなるスラリー流体を循環箱から脱水スクリーン又は濾過器内へ導くため、前記循環箱と前記脱水スクリーン又は濾過器との間に設けられた管体から構成されるスラリー流体用配管において、前記脱水スクリーン又は濾過器の近傍に位置する前記管体の一部に形成されT字型をなすT字型管部と、前記T字型管部に形成された入口管、出口管及び折り返し管と、を備え、前記入口管は前記循環箱に接続され、前記出口管は前記脱水スクリーン又は濾過器に接続され、前記折り返し管は前記入口管の軸方向に沿って直線状に延設され、前記折り返し管の端部の管開口は端板により閉鎖され、前記入口管から入って前記端板に衝突した前記スラリー流体は前記出口管を経て前記脱水スクリーン又は濾過器内へ流れる構成としたことにより、スラリー流体は脱水スクリーン、又は濾過器に落ち込む直前で端板に衝突して折り返すため急激に勢いが無くなり、それらの機器を損傷させる事無く穏やかに落下して行く。更に、配管内部の清掃を行う際、配管末端部にボルトで締め付けられている端板を外すだけで容易に清掃が出来、従来のようなクレーンを用いた作業や足場を組み立てる作業、等をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるスラリー流体用配管の外観を示す構成図である。
【図2】図1の要部の拡大断面図である。
【図3】従来一般に用いられているペレット製造装置の全体構成を示すための構成図である。
【図4】従来のスラリー流体用配管の外観を示す構成図である。
【図5】図4の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、管体に設けたT字型管部を介してスラリー流体を脱水スクリーン又は濾過器へ供給することにより、脱水スクリーン又は濾過器の損傷を防ぐようにしたスラリー流体用配管を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明によるスラリー流体用配管の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明すると共に、ペレット製造装置は、スラリー流体用配管7を除いては同一であるため、本発明の説明にも援用するものとする。
【0016】
図1において、循環箱5から送出されたスラリー流体14を搬送するためのスラリー流体用配管7を形成するための管体8は脱水スクリーン9(又は濾過器)の上部に接続されている。
前記管体8は、図4及び図5の従来構成とは異なり、脱水スクリーン9に入る直前、すなわち、この脱水スクリーン9の近傍位置の形状がT字型をなすT字型管部30で構成されており、このT字型管部30は図2で示されるように構成されている。
【0017】
前記T字型管部30には、入口側の入口管31、出口管20及び折り返し管32が形成され、この出口管20は入口管31及び折り返し管32に対して直交配置であり、前記入口管31は前記循環箱5に接続され、前記出口管20は脱水スクリーン9の上部に接続され、前記折り返し管32は入口管31の軸方向Aに沿って直線状に延設され、前記折り返し管32の端部の管開口33は、メクラフランジ等からなる端板34によりメクラ状すなわち、閉鎖されている。
前記脱水スクリーン9には、傾斜配置のスリット板21、このスリット板21の板間を通過、落下するペレット40を遠心乾燥機10に送出するための送出口(図2の断面図には不指示であり、この図2の手前側に存在する。)及びスリット板21を通過したペレット40及びペレット搬送水42を受けるための水受け板43とが設けられている。図2及び図5に示すダンパー41は開閉可能な機構に成っており、造粒立上げ時は開いている。(図中では点線の位置)これは起動直後にスリット板21の上に滞留する樹脂の塊を脱水スクリーン9の外に排出する為の役割を果たす。運転が造粒立上げ後の安定状態に移行した際にこのダンパー41は閉じられる。(図中では実線の位置)そうする事でスラリー流体14が脱水スクリーン9の外に排出される事を防止する。
【0018】
次に、前述の構成のスラリー流体用配管7を用いてペレット40を含むペレット搬送水42からなるスラリー流体14を脱水スクリーン9に供給する場合について説明する。
前述の図3におけるペレット搬送水タンク13、ペレット搬送水ポンプ12を経て送出されたペレット搬送水(PCW)42は、循環箱5内でペレット40と混合された後、スラリー流体14としてスラリー流体用配管7の管体8における入口管31から内方へ流れ、折り返し管32を経て端板34に衝突する。
【0019】
この端板34に当接したスラリー流体14は、端板34で流れの方向が折り返されるため、この折り返し管32の中で往復するスラリー流体14同志が衝突し、その流れの勢いが弱められ、このT字型管部30を経て脱水スクリーン9内に入るスラリー流体14の勢いは従来の図5の構成の場合に比べると大幅に弱められることにより、脱水スクリーン9内に整然と流れる。
【0020】
従って、前記脱水スクリーン9内に流れ込んだスクリーン流体14は、スリット板21を通過し、ペレット搬送水42は水受け板43に衝突した後、ペレット搬送水42の大部分は前記ペレット搬送水タンク13に戻され、一部のペレット搬送水42とペレット40は遠心乾燥機10に送られる。
【0021】
尚、前述の図2のスラリー流体用配管7の場合、スラリー流体14の勢いが従来よりも大幅に弱められているため、脱水スクリーン9が損傷を受けることが防止され、さらに、配管内部の清掃を行う際には、ボルト34aで締め付けられている端板34を外すだけで容易に清掃ができ、従来のように、重くかつ長い配管をクレーンで吊って降下させて清掃作業を行う必要が無くなる。更に、それの準備行程と成る足場の設置作業も不要と成る。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によるスラリー流体用配管は、ペレット製造装置の配管だけではなく、例えば、食品工場等のスラリー液体を用いる他の分野でも適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 混練押出機
2 ダイバータバルブ
3 スクリーンチェンジャ
4 カッタ装置
5 循環箱
6 モータ
7 スラリー流体用配管
8 管体
9 脱水スクリーン(濾過器)
10 遠心乾燥機
11 三方弁
12 ペレット搬送水ポンプ
13 ペレット搬送水タンク
14 スラリー流体
20 出口管
21 スリット板
A 軸方向
30 T字型管部
31 入口管
32 折り返し管
33 管開口
34 端板
34a ボルト
40 ペレット
41 ダンパー
42 ペレット搬送水
43 水受け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練押出機(1)からの溶融樹脂をカッタ装置(4)で切断したペレット(40)とペレット搬送水(42)からなるスラリー流体(14)を循環箱(5)から脱水スクリーン(9)又は濾過器内へ導くため、前記循環箱(5)と前記脱水スクリーン(9)又は濾過器との間に設けられた管体(8)から構成されるスラリー流体用配管において、
前記脱水スクリーン(9)又は濾過器の近傍に位置する前記管体(8)の一部に形成されT字型をなすT字型管部(30)と、前記T字型管部(30)に形成された入口管(31)、出口管(20)及び折り返し管(32)と、を備え、
前記入口管(31)は前記循環箱(5)に接続され、前記出口管(20)は前記脱水スクリーン(9)又は濾過器に接続され、前記折り返し管(32)は前記入口管(31)の軸方向(A)に沿って直線状に延設され、前記折り返し管(32)の端部の管開口(33)は端板(34)により閉鎖され、
前記入口管(31)から入って前記端板(34)に衝突した前記スラリー流体(14)は前記出口管(20)を経て前記脱水スクリーン(9)又は濾過器内へ流れる構成としたことを特徴とするスラリー流体用配管。
【請求項2】
前記入口管(31)と折り返し管(32)は、直線状に形成され、前記出口管(20)は前記入口管(31)と折り返し管(32)に対して直交配置されていることを特徴とする請求項1記載のスラリー流体用配管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223915(P2012−223915A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91216(P2011−91216)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】