説明

スラリー用配管

【課題】配管内面へのスラリーの付着・堆積による管路の詰りを適切に防止することができるスラリー用配管を提供する。
【解決手段】鋼管1の接続部に取り付けられているフランジ2、2の間に、鋼管1の内径Dよりも小さな径dの穴4aを有する円環板4が鋼管1と同心状に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスラリー用配管に関し、特に管路の詰りの発生を適切に防止することができるスラリー用配管に関する。
【背景技術】
【0002】
スラリー用配管においては、スラリー中の固体粒子が配管内面へ付着・堆積して管路の詰りが発生することが問題となる。
【0003】
例えば、電磁鋼板のコイル焼鈍時に鋼板の焼鈍密着を防止するために、MgO粉を鋼板に塗布して焼鈍する。その際に、焼鈍後の鋼板を水洗するのだが、スラリーになった排水中に含まれるMgO粉が排水配管内に付着・堆積して、管路の詰りが発生する。そのため、流量の低下等が生じ、度々配管を清掃することが必要になっている。
【0004】
これに対して、従来のスラリー用配管の管路の詰りを防止する技術としては、内面にライニングを施す方法(例えば、特許文献1参照)や流体に圧力変動を与える方法などが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、閉塞防止剤を配管内に注入する方法(例えば、特許文献3参照)や配管外から振動、回転運動を付与する方法もある(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開昭56−61226号公報
【特許文献2】特開平3−33587号公報
【特許文献3】特開昭62−240221号公報
【特許文献4】特開平4−159919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように内面にライニングを施す方法では、通常の鋼管に比べると付着や詰りを軽減できるが、長期間使用すると、配管内面へ薄膜状にスラリーが固着し、一旦固着すると付着防止効果がなくなって、詰りを生じるようになるという問題点があった。また、特許文献2のように流体に圧力変動を与える方法や、特許文献3のように閉塞防止剤を配管内に注入する方法、あるいは特許文献4のように配管外から振動、回転運動を付与する方法では、配管内面への付着防止効果は得られるものの、圧縮空気、閉塞防止剤の供給装置、振動発生装置や駆動装置等の付帯設備を設置するため、既存の配管設備の大規模な改造が必要となるという問題点があった。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、配管内面へのスラリーの付着・堆積(正確には、スラリー中の固体粒子の付着・堆積)による管路の詰りを適切に防止することができるスラリー用配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、スラリーの付着・堆積による配管の詰り状態を詳細に観察した。その結果、バルブや曲がり管の近傍および水平な直管の下面にはスラリーの付着・堆積は無く、水平な直管の上面や側面あるいは鉛直な直管にはスラリーの付着・堆積が多いことを知見し、このことから、流れが乱されて乱流になる個所では、スラリーの付着・堆積が起き難いことに気が付いた。そこで、配管内面へのスラリーの付着・堆積を低減して、管路の詰りを防止するためには、管壁付近のスラリーが乱流状態になって攪拌されてようにすればよいとの考えに至った。
【0008】
本発明は、上記の知見に立脚し、前記課題を解決するために、以下の特徴を有している。
【0009】
[1]スラリー用配管において、配管のフランジ接合部に配管の内径よりも小さな径の穴を有する円環板が取り付けられていることを特徴とするスラリー用配管。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、管路中に円環板を取り付けたことによって、管壁付近のスラリーが乱流状態となって撹拌され、配管内面へのスラリーの付着・堆積が低減して、管路の詰りが防止される。その結果、詰りによる流量低下の防止や配管の清掃周期の大幅な延長が可能になる。しかも、配管のフランジ接合部に円環板を取り付けるのみなので、付帯設備が必要でなく、既存の配管設備を簡単に改造することで容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態を図面に基づいて以下に述べる。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るスラリー用配管の部分断面図であり、図2は、円環板の平面図である。
【0013】
図1に示すように、この実施形態に係るスラリー用配管においては、鋼管1の端部(接続部)に取り付けられているフランジ2、2の間に、パッキン3を介して、円環板4がボルト5で挟み込まれて鋼管1と同心状に取り付けられている。そして、円環板4は、図1、図2に示すように、鋼管1の内径Dよりも小さな径dの穴4aを有している。なお、図2中の4bはボルト穴である。
【0014】
これによって、図1に示すように、円環板4の下流側において、鋼管1の管壁付近が乱流状態となって渦が発生し、この渦によりスラリー中の固体粒子が攪拌分散されて、鋼管1内面に付着・堆積することが抑制され、管路の詰りが防止される。
【0015】
なお、円環板4の穴4aの径dおよび円環板4の取り付け間隔は、配管全長に渡って管壁部分を攪拌できるように、管内流速と円環板4下流側の渦発生領域の長さ等に基づいて定めればよい。
【0016】
このようにして、この実施形態においては、管路中に円環板4を取り付けたことによって、管壁付近のスラリーが撹拌され、スラリーの配管内面への付着・堆積による管路の詰りが防止される。その結果、詰りによる流量低下の防止や配管の清掃周期の大幅な延長が可能になる。しかも、配管のフランジ接合部2に円環板4を取り付けるのみなので、付帯設備が必要でなく、既存の配管設備を簡単に改造することで容易に実施することができる。
【実施例】
【0017】
コイル焼鈍した電磁鋼板を水洗した後のMgO粉を含んだ排水を流す排水配管に、前述の本発明の一実施形態に係るスラリー用配管を適用した。
【0018】
その結果、排水中のMgO粉が排水配管内に付着・堆積することが抑制されて、管路の詰りが起こり難くなった。その結果、排水配管の清掃周期の大幅な延長が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す部分断面図である。
【図2】円環板の穴の形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 鋼管
2 フランジ
3 パッキン
4 円環板
4a 穴
4b ボルト穴
5 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー用配管において、配管のフランジ接合部に配管の内径よりも小さな径の穴を有する円環板が取り付けられていることを特徴とするスラリー用配管。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−133912(P2008−133912A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321120(P2006−321120)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】