説明

スラリー組成物の製造方法

【課題】本発明は、長期に渡って高い分散性を維持することが可能なスラリー組成物を簡便な方法で製造できるスラリー組成物の製造方法を提供する。また、該スラリー組成物の製造方法を用いて製造したスラリー組成物を提供する。
【解決手段】無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有するスラリー組成物の製造方法であって、無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)及び無機分散用有機溶剤を添加、混合して無機分散液を作製する工程、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び樹脂溶液用有機溶剤を添加、混合して樹脂溶液を作製する工程、及び、前記無機分散液に樹脂溶液を添加する工程を有し、前記ポリビニルアセタール樹脂(A)は、アニオン性基とカチオン性基とを有しており、前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、重合度が800〜4000であり、前記無機分散液を作製する工程において、前記ポリビニルアセタール樹脂(A)を無機粉末100重量部に対して0.1〜20重量部添加するスラリー組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期に渡って高い分散性を維持することが可能なスラリー組成物を簡便な方法で製造できるスラリー組成物の製造方法に関する。また、該スラリー組成物の製造方法を用いて製造したスラリー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアセタール樹脂は、強靭性、造膜性、顔料等の無機、有機粉体等の分散性、塗布面への接着性等に優れていることから、例えば、積層セラミックコンデンサを構成するセラミックグリーンシートや導電ペースト、インク、塗料、焼き付け用エナメル、ウォッシュプライマー等の用途に利用されている。
【0003】
なかでも、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、ポリビニルブチラール樹脂等のバインダー樹脂にセラミック原料粉末を加え、均一に混合することでスラリー組成物を得る。得られたスラリー組成物を、離型処理した支持体面に塗工する。これに加熱等を行うことで溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。次いで、得られたセラミックグリーンシート上に、エチルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂等をバインダー樹脂として含有する導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を作製し、脱脂処理を行った後、焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
【0004】
近年では、積層セラミックコンデンサに更なる小型化や高容量化が求められており、より一層の多層化、薄膜化が検討されているが、このような積層セラミックコンデンサにおいては、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでおり、それに伴って用いられるセラミック粉末の粒子径も小さいものが求められている。
【0005】
一般に、スラリー組成物中にセラミック粉末等を分散させる方法としては、特許文献1に記載のように、一方で無機粉末、有機溶剤等からなる無機分散液を調製し、他方でバインダー樹脂を溶解させた樹脂溶液を調製した後、無機分散液と樹脂溶液とを混合する方法が用いられている。
しかしながら、このような方法では、混合液を長時間に渡って撹拌しなければ、セラミック粉末が充分に分散せず、撹拌に過大なエネルギーや時間を要するという問題があった。
また、スラリー組成物中のセラミック粉末の分散性を確保する方法として、特許文献2に記載されているように、分散剤を添加する方法も用いられている。しかしながら、このような方法では、バインダー樹脂との相溶性が悪いと逆に分散性を悪化させるという問題があった。
更に、積層セラミックコンデンサの製造では、セラミックスラリー組成物を作製した後、塗工するまでに数日間の保管期間が設けられる場合があり、長期的なスラリーの分散安定性が不充分であると、分散性低下によって、セラミックグリーンシートの強度が低下したり、表面の凹凸が大きくなったりして、得られる積層セラミックコンデンサの電気特性が低下するという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−139034号公報
【特許文献2】特開平6−325971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記現状に鑑み、長期に渡って高い分散性を維持することが可能なスラリー組成物を簡便な方法で製造できるスラリー組成物の製造方法を提供することを目的とする。また、該スラリー組成物の製造方法を用いて製造したスラリー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有するスラリー組成物の製造方法であって、無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)及び無機分散用有機溶剤を添加、混合して無機分散液を作製する工程、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び樹脂溶液用有機溶剤を添加、混合して樹脂溶液を作製する工程、及び、上記無機分散液に樹脂溶液を添加する工程を有し、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)は、アニオン性基とカチオン性基とを有しており、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、重合度が800〜4000であり、上記無機分散液を作製する工程において、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)を無機粉末100重量部に対して0.1〜20重量部添加するスラリー組成物の製造方法である。
以下、本発明につき詳細に説明する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、一方で無機粉末、無機分散用有機溶剤、分散剤等からなる無機分散液を調製し、他方でバインダー樹脂を溶解させた樹脂溶液を調製した後、無機分散液と樹脂溶液とを混合するスラリー組成物の製造方法において、分散剤として所定の官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を使用することによって、無機粉末の分散性を大幅に改善することができ、長期に渡って高い分散性を維持することが可能なスラリー組成物が製造できることを見出した。
また、このような製造方法を用いて得られるスラリー組成物を用いてセラミックグリーンシートを作製する場合、PET等のシートから小さい力で容易に剥離できることも見出し本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明では、無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)及び無機分散用有機溶剤を添加、混合して無機分散液を作製する工程、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び樹脂溶液用有機溶剤を添加、混合して樹脂溶液を作製する工程、及び、上記無機分散液に樹脂溶液を添加する工程を有する。
本発明では、上記無機分散液を作製する工程において、ポリビニルアセタール樹脂(A)を分散剤として用いる。このように無機分散液を作製する工程において、ポリビニルアセタール樹脂(A)を分散剤として用いることで、ポリビニルアセタール樹脂(A)が無機粉末の表面に付着し、その結果、無機粉末の分散性を高めることができる。その後、無機分散液に、ポリビニルアセタール樹脂(B)を含有する樹脂溶液を添加することで無機粉末の分散性を損なうことなく、例えば、グリーンシートにした場合等において得られるシートの強度を高くすることができる。
【0011】
上記無機分散液を作製する工程では、予めポリビニルアセタール樹脂(A)を無機分散用有機溶剤に混合し溶解させてから、無機粉末を添加することが好ましい。
【0012】
本発明では、無機分散液を作製する工程において、分散剤としてポリビニルアセタール樹脂(A)を用いる。本発明では、分散剤としてバインダー樹脂と同種のポリビニルアセタール樹脂(A)を用いることで、従来のように分散剤添加による悪影響を考慮する必要がない。
なお、本明細書において、ポリビニルアセタール樹脂(A)と、後述するポリビニルアセタール樹脂(B)とを特に区別する必要がない場合は、単にポリビニルアセタール樹脂ともいう。
【0013】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)の重合度の好ましい下限が220、好ましい上限は600である。上記重合度が220未満であると、工業的に入手が難しくなり、実用的ではなくなることがある。上記重合度が600を超えると、凝集力が高くなりすぎて充分な分散性を発現することが困難となることがある。上記重合度のより好ましい下限は300、より好ましい上限は500である。
【0014】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)の水酸基量の好ましい下限は28モル%、好ましい上限は60モル%である。上記水酸基量が28モル%未満であると、無機粉末の表面に上記ポリビニルアセタール樹脂(A)が付着しにくくなり、分散性の向上に寄与しないことがあり、60モル%を超えると、該ポリビニルアセタール樹脂(A)の合成が困難になるだけでなく、溶剤への溶解性が低下してしまうことがある。また、水酸基量を上記範囲内とすることで、得られるスラリー組成物を用いてセラミックグリーンシートを作製する場合、PET等のシートから小さい力で容易に剥離できる。上記水酸基量のより好ましい下限は32モル%であり、より好ましい上限は35モル%である。
【0015】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)は、アニオン性基とカチオン性基を有する。
このように、上記アニオン性基とカチオン性基を両方有することで、アニオン性基の無機粉末表面への引力的相互作用によりポリビニルアセタール樹脂(A)が無機粉末の表面に付着し、無機粉末の分散性を高めることができるとともに、カチオン性基同士に働く斥力的相互作用によりスラリーの長期保存が可能となる。
【0016】
上記アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ボロン酸基、チオール基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、カルボキシル基が好ましい。
【0017】
上記アニオン性基の変性度の好ましい下限は0.05モル%、好ましい上限は2モル%である。
上記アニオン性基の変性度が0.05モル%未満であると、無機粉末の表面に上記ポリビニルアセタール樹脂(A)が付着しにくくなり、分散性の向上に寄与しないことがあり、2モル%を超えると、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)同士に引力相互作用が働き、無機粉末の表面に付着しにくくなることがある。上記変性度のより好ましい下限は0.2モル%であり、より好ましい上限は1モル%である。
なお、上記変性度は、変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解させて、13C―NMRスペクトルを測定し、カルボキシ基等のアニオン性基が結合しているメチン基に由来するピーク面積と、アセタール化された部分のメチン基に由来するピーク面積とにより算出することができる。
【0018】
上記カチオン性基としては、例えば、アミノ基、イミダゾール基及びイミノ基からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、アミノ基が好ましい。
上記アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよいが、1級アミノ基が好ましく、アミノ基(−NH)、1―アミノプロピル基が好ましい。
【0019】
上記カチオン性基の変性度の好ましい下限は0.05モル%、好ましい上限は2モル%である。
上記カチオン性基の変性度が0.05モル%未満であると、カチオン性変性基同士の斥力的相互作用が不足し、充分な長期保存性が得られないことがあり、2モル%を超えると、無機粉末表面の電荷のバランスが崩れ、分散性を悪化させてしまうことがある。上記変性度のより好ましい下限は0.2モル%であり、より好ましい上限は1モル%である。
なお、上記変性度は、アニオン性基と同様の方法で測定することができる。
【0020】
上記アニオン性基とカチオン性基の変性度の好ましい割合は2:8〜8:2である。
上記範囲よりもアニオン性基が少ないと、カチオン性基に働く斥力的相互作用が不足し長期保存安定性が充分ではなくなる場合があり、上記範囲よりもアニオン性基が多いと、無機粉末表面への付着が少なく、分散性が充分ではなくなることがある。上記変性度の割合のより好ましい範囲は3:7〜7:3である。
【0021】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)は、アセトアルデヒドでアセタール化された部分とブチルアルデヒドでアセタール化された部分との割合が30/70〜95/5であることが好ましい。上記アセトアルデヒドでアセタール化された部分は、アルデヒドに起因する炭化水素基の長さが短くなり、立体障害が低下するため、水酸基が無機粉末に吸着しやすくなることがある。そのため、アセトアルデヒドでアセタール化された部分を30/70以上とすることで、無機粉末の分散性が向上するとともに、長期間に渡って高い分散性を維持することができる。より好ましくは、アセトアルデヒドでアセタール化された部分とブチルアルデヒドでアセタール化された部分の割合が40/60〜80/20である。
【0022】
上記無機粉末としては特に限定されず、例えば、金属粉体、導電粉末、セラミック粉末、ガラス粉末等が挙げられる。
【0023】
上記無機粉末として導電粉末を用いる場合、導電ペーストとして使用することができる。
上記導電粉末としては充分な導電性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、これらの合金等からなる粉末が挙げられる。これらの導電粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記無機粉末としてセラミック粉末を用いる場合、セラミックペーストとして使用することができる。上記セラミック粉末としては特に限定されず、例えば、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン、スピネムルライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等からなる粉末が挙げられる。なかでも、用いるセラミックグリーンシートに含有されるセラミック粉末と同一の成分からなることが好ましい。これらのセラミック粉末は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記無機粉末としてガラス粉末を用いる場合、ガラスペーストとして使用することができる。上記ガラス粉末としては特に限定されず、例えば、酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化カルシウム系ガラス、酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素系ガラス、酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素系ガラス等が挙げられる。これらのガラス粉末は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化アルミニウム等を併用してもよい。
【0026】
上記無機粉末として磁性粉末を用いる場合、磁性材料ペーストとして使用することができる。上記磁性粉末としては特に限定されず、例えば、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等のフェライト類、酸化クロム等の金属酸化物、コバルト等の金属磁性体、アモルファス磁性体等が挙げられる。これらの磁性粉末は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記無機分散液を作製する工程における上記ポリビニルアセタール樹脂(A)の添加量の下限は無機粉末100重量部に対して0.1重量部、上限は20重量部である。上記ポリビニルアセタール樹脂(A)の添加量が0.1重量部未満であると、例えば、無機粉末の分散性が不充分となることがあり、20重量部を超えると、粘度が高くなりすぎて、取扱性が悪くなることがある。上記添加量の好ましい下限は0.6重量部であり、好ましい上限は15重量部である。さらに上記添加量のより好ましい下限は1重量部であり、より好ましい上限は10重量部である。特に、上記添加量を0.6重量部以上とすることで、ポリビニルアセタール樹脂(A)を充分に無機粉末の表面に吸着させることができるため、セラミックスラリー中の無機粉末をより微細に分散させることが可能となる。
【0028】
上記無機分散液を作製する工程において、上記無機分散液の水分量は3重量%未満であることが好ましい。上記無機分散液の水分量が3重量%以上であると、長期間に渡って高い分散性を維持できないことがある。より好ましくは1重量%未満である。
【0029】
本発明では、次いで、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び樹脂溶液用有機溶剤を添加、混合して樹脂溶液を作製する工程を行う。
【0030】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)の重合度の下限が800、上限は4000である。上記重合度が800未満であると、グリーンシートに用いた場合にシート強度が不充分となり、上記重合度が4000を超えると、スラリー組成物の粘度が高くなりすぎて塗工が困難となる。上記重合度の好ましい下限は1200、好ましい上限は3500である。
【0031】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基量の好ましい下限は22モル%、好ましい上限は42モル%である。上記水酸基量が22モル%未満であると、該ポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリーを用いてグリーンシートを作製する場合に、シート強度が不充分となることがあり、42モル%を超えると、無機粉末粒子の凝集を招くことがある。上記水酸基量のより好ましい下限は28モル%であり、より好ましい上限は40モル%である。
【0032】
上記樹脂溶液を作製する工程における上記ポリビニルアセタール樹脂(B)の添加量の好ましい下限は無機粉末100重量部に対して5重量部、好ましい上限は20重量部である。上記ポリビニルアセタール樹脂(B)の添加量が5重量部未満であると、例えば、無機粉末の分散性が不充分となったり、乾燥後の塗膜の強度、柔軟性及び接着性等が不充分となることがあり、20重量部を超えると、粘度が高くなりすぎたり、塗工性が低下したりして、取扱性が悪くなることがある。
特に強度の求められる薄層のセラミックグリーンシートにおいては、重合度の低いポリビニルアセタール樹脂(A)に対して、重合度の高いポリビニルアセタール樹脂(B)を含有することで、充分な分散性とシート強度を有するセラミックグリーンシートを作製することができる。
【0033】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化してなるものである。
【0034】
上記ポリビニルアルコールは、例えば、ビニルエステルとエチレンの共重合体をケン化することにより得ることができる。上記ビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。なかでも、経済性の観点から酢酸ビニルが好適である。
【0035】
上記ポリビニルアルコールは、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン性不飽和単量体を共重合したものであってもよい。上記エチレン性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、アクリロニトリルメタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とエチレンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0036】
上記ポリビニルアルコールは、上記ビニルエステルとα−オレフィンとを共重合した共重合体をケン化したものであってもよい。また、更に上記エチレン性不飽和単量体を共重合させ、エチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有するポリビニルアルコールとしてもよい。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とα−オレフィンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端ポリビニルアルコールも用いることができる。上記α−オレフィンとしては特に限定されず、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘキシルプロピレン等が挙げられる。
【0037】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度が40〜80モル%であることが好ましい。上記アセタール化度が40モル%未満であると、有機溶剤への溶解性が低下するためスラリー組成物への使用が困難となる。上記アセタール化度が80モル%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂を工業上製造することが困難となる。より好ましくは50〜75モル%である。
なお、本明細書において、アセタール化度とは、ポリビニルアルコールの水酸基数のうち、ブチルアルデヒドでアセタール化された水酸基数の割合のことであり、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を算出する。
【0038】
本発明では、次いで、上記無機分散液に樹脂溶液を添加する工程を行う。
これにより、スラリー組成物が得られる。
【0039】
なお、本発明のスラリー組成物の製造方法では、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂や、アクリル樹脂、エチルセルロース等の他の樹脂を含有していてもよい。しかし、このような場合、全バインダー樹脂に対する上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が50重量%以上である必要がある。
【0040】
上記無機分散用有機溶剤及び樹脂溶液用有機溶剤としては特に限定されず、一般的にスラリー組成物に用いられる有機溶剤を使用することができるが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸2−エチルヘキシル等のエステル類、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等のテルピネオール及びその誘導体等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
上記無機分散用有機溶剤及び樹脂溶液用有機溶剤としては、特にエタノール及びトルエンからなる混合溶媒を用いることが好ましい。上記混合溶媒を用いることによって、スラリー組成物の分散性を大幅に向上させることができる。これは、エタノールがポリビニルアセタール樹脂(B)の凝集防止に寄与するのに対して、トルエンがポリビニルアセタール樹脂(A)の無機粉末表面への付着に寄与し、これらの相乗効果によってスラリー組成物の分散性が大幅に向上するためであると考えられる。
【0042】
上記混合溶媒を用いる場合における上記エタノールとトルエンとの混合比については、5:5〜2:8とすることが好ましい。上記範囲内とすることで、スラリー組成物の分散性が大幅に向上させることが可能となる。
【0043】
上記無機分散液を作製する工程における上記無機分散用有機溶剤の添加量の好ましい下限は無機粉末100重量部に対して20重量部、好ましい上限は60重量部である。上記無機分散用有機溶剤の添加量が20重量部未満であると、無機分散液の粘度が高くなり、無機粉末の動きが制限され充分な分散性が得られないことがあり、60重量部を超えると、無機分散液の無機粉末濃度が低くなり、無機粉末同士の衝突回数が減るため充分な分散性が得られないことがある。
また、上記樹脂溶液を作製する工程における上記樹脂溶液用有機溶剤の添加量の好ましい下限は無機粉末100重量部に対して70重量部、好ましい上限は130重量部である。上記樹脂溶液用有機溶剤の添加量が70重量部未満であると、樹脂量が充分でないため、グリーンシートの強度が不充分になることがあり、130重量部を超えると、グリーンシート中の樹脂分が多く、焼成工程において残渣の量が多くなってしまうことがある。
【0044】
本発明のスラリー組成物の製造方法では、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0045】
本発明のスラリー組成物の製造方法を用いることにより、極めて高い分散性を実現でき、かつ、得られる膜状体が高い強度を有するスラリー組成物を製造することができる。このようなスラリー組成物もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0046】
本発明では、長期に渡って高い分散性を維持することが可能なスラリー組成物を簡便な方法で製造できるスラリー組成物の製造方法を提供することができる。また、該スラリー組成物の製造方法を用いて製造したスラリー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)[(A1)〜(A14)]の合成)
重合度320、ケン化度99モル%であり、カルボキシル基を有するポリビニルアルコール(a1)175重量部と、重合度320、ケン化度99モル%であり、アミノ基(−NH)を有するポリビニルアルコール(a2)175重量部とを純水3000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸230重量部を添加した後、液温を1℃に下げてn−ブチルアルデヒド185重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂(A1)の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサシド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてブチラール化度、水酸基量、アセチル基量、アニオン性変性基の変性度及びカチオン性変性基の変性度を測定したところ、ブチラール化度は63.8モル%、水酸基量は35モル%、アセチル基量は1モル%、アニオン性基の変性度は0.1モル%、カチオン性基の変性度は0.1モル%であった。
また、表1に示す条件とした以外は、ポリビニルアセタール樹脂(A1)と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(A2)〜(A14)を合成した。なお、ポリビニルアセタール樹脂(A9)〜(A14)では、ポリビニルアルコール(a2)を用いず、ポリビニルアルコール(a1)のみを用いた。また、表中のイミノ基はNHを示す。
【0049】
【表1】

【0050】
(ポリビニルアセタール樹脂(B)[(B1)〜(B4)]の合成)
重合度1700、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール280重量部を純水3000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200重量部とn−ブチルアルデヒド174重量部とを添加し、液温を1℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂(B1)の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂(B1)をDMSO−d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてブチラール化度、水酸基量及びアセチル基量を測定したところ、ブチラール化度は74モル%、水酸基量は25モル%、アセチル基量は1モル%であった。
また、表2に示す条件とした以外は、ポリビニルアセタール樹脂(B1)と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(B2)〜(B4)を合成した。
【0051】
【表2】

【0052】
(実施例1)
(無機分散液の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(A1)1重量部を、エタノール12重量部とトルエン28重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解した。次いで、100重量部のチタン酸バリウムの粉末(堺化学工業社製、「BT02」)を得られた溶液に添加し、ビーズミル(アイメックス社製、「レディーミル」)にて180分間撹拌することにより、無機分散液を作製した。
【0053】
(樹脂溶液の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(B1)8重量部、DOP2重量部をエタノール27重量部とトルエン63重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解することにより、樹脂溶液を作製した。
【0054】
(スラリー組成物の作製)
得られた無機分散液に樹脂溶液を添加し同様のビーズミルにて90分間攪拌することにより、スラリー組成物を得た。
【0055】
(実施例2〜16)
表3に示すポリビニルアセタール樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
【0056】
(比較例1〜2)
ポリビニルアセタール樹脂(A)を無機分散液に添加せず、表3に示すポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
【0057】
(比較例3)
ポリビニルアセタール樹脂(A)を無機分散液に添加せず、表3に示すポリビニルアセタール樹脂(B)とともに樹脂溶液に溶解させた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
【0058】
(比較例4〜11)
表3に示すポリビニルアセタール樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)、及び、有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
【0059】
(比較例12)
ポリビニルアセタール樹脂(A)に代えて、分散剤側鎖に炭化水素をグラフトしたポリアミン化合物(クローダ社製「Hypermer KD−2」)を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
【0060】
【表3】

【0061】
(評価)
得られたスラリー組成物について、以下の評価を行った。
(1)グリーンシートの評価
(グリーンシートの作製)
離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにスラリー組成物を塗工、乾燥してセラミックグリーンシートを作製した。
【0062】
(1−1)表面粗さ
上記で得られたセラミックグリーンシートについて、JIS B 0601(1994)に基づいて表面粗さRaを測定し、セラミックスラリーの表面粗さを評価した。また、23℃で一週間放置した後の表面粗さRaについても測定した。
一般に、スラリー組成物の分散性が高いほど、セラミックグリーンシートの表面粗さは小さくなる。
【0063】
◎ 0.05μm未満
○ 0.05μm以上、0.06μm未満
△ 0.06μm以上、0.07μm未満
× 0.07μm以上
【0064】
(一週間後)
◎ 0.06μm未満
○ 0.06μm以上、0.07μm未満
△ 0.07μm以上、0.08μm未満
× 0.08μm以上
【0065】
(1−2)引張弾性率
JIS K 7113に準拠して、AUTOGRAPH(島津製作所社製、「AGS−J」)を用い、引張速度20mm/分の条件にて引張弾性率(MPa)の測定を行った。また、23℃で一週間放置した後の引張弾性率(MPa)についても測定した。
【0066】
◎ 1500MPa以上
○ 1300MPa以上、1500MPa未満
△ 1100MPa以上、1300MPa未満
× 1100MPa未満
【0067】
(一週間後)
◎ 1300MPa以上
○ 1100MPa以上、1300MPa未満
△ 900MPa以上、1100MPa未満
× 900MPa未満
【0068】
(2)分散性評価
(分散性評価溶液の作製)
得られたスラリー組成物0.1重量部を、無機粉分散液の調整に用いた有機溶剤と同一組成のエタノール/トルエン合溶剤に加え、超音波分散機(エスエヌディ社製、「US−303」)にて10分間撹拌することにより、分散評価用溶液を作製した。
(分散性評価)
得られた分散評価用溶液について、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均分散径を測定した。また、23℃で一週間放置した後の最大粒子径ピークの位置、及び、平均分散径についても測定した。
【0069】
◎ 0.6μm未満
○ 0.6μm以上、0.7μm未満
△ 0.7μm以上、0.8μm未満
× 0.8μm以上
【0070】
(一週間後)
◎ 0.7μm未満
○ 0.7μm以上、0.8μm未満
△ 0.8μm以上、0.9μm未満
× 0.9μm以上
【0071】
【表4】

【0072】
(実施例17〜19)
無機粉末としてチタン酸バリウムに代えて、窒化アルミニウム粉を用い、表5に示すポリビニルアセタール樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
【0073】
(実施例20〜22)
無機粉末としてチタン酸バリウムに代えて、Ni−Zn系フェライト粉を用い、表5に示すポリビニルアセタール樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
【0074】
(比較例13)
無機粉末としてチタン酸バリウムに代えて、窒化アルミニウム粉を用い、ポリビニルアセタール樹脂(A)を添加せず、表5に示すポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
【0075】
(比較例14)
無機粉末としてチタン酸バリウムに代えて、Ni−Zn系フェライト粉を用い、ポリビニルアセタール樹脂(A)を添加せず、表5に示すポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
【0076】
【表5】

【0077】
(評価)
得られたスラリー組成物について、以下の評価を行った。
(1)グリーンシートの評価
(グリーンシートの作製)
離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにスラリー組成物を塗工、乾燥してセラミックグリーンシートを作製した。
【0078】
(1−1)表面粗さ
上記で得られたセラミックグリーンシートについて、JIS B 0601(1994)に基づいて表面粗さRaを測定し、セラミックスラリーの表面粗さを評価した。また、23℃で一週間放置した後の表面粗さRaについても測定した。
一般に、スラリー組成物の分散性が高いほど、セラミックグリーンシートの表面粗さは小さくなる。
【0079】
◎ 0.2μm未満
○ 0.2μm以上、0.3μm未満
△ 0.3μm以上、0.4μm未満
× 0.4μm以上
【0080】
(一週間後)
◎ 0.3μm未満
○ 0.3μm以上、0.4μm未満
△ 0.4μm以上、0.5μm未満
× 0.5μm以上
【0081】
(1−2)引張弾性率
JIS K 7113に準拠して、AUTOGRAPH(島津製作所社製、「AGS−J」)を用い、引張速度20mm/分の条件にて引張弾性率(MPa)の測定を行った。また、23℃で一週間放置した後の引張弾性率(MPa)についても測定した。
【0082】
◎ 1250MPa以上
○ 1000MPa以上、1250MPa未満
△ 750MPa以上、1000MPa未満
× 750MPa未満
【0083】
(一週間後)
◎ 1150MPa以上
○ 900MPa以上、1150MPa未満
△ 650MPa以上、900MPa未満
× 650MPa未満
【0084】
(2)分散性評価
(分散性評価溶液の作製)
得られたスラリー組成物0.1重量部を、無機粉分散液の調整に用いた有機溶剤と同一組成のエタノール/トルエン合溶剤に加え、超音波分散機(エスエヌディ社製、「US−303」)にて10分間撹拌することにより、分散評価用溶液を作製した。
(分散性評価)
得られた分散評価用溶液について、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均分散径を測定した。また、23℃で一週間放置した後の最大粒子径ピークの位置、及び、平均分散径についても測定した。
【0085】
◎ 1.5μm未満
○ 1.5μm以上、2μm未満
△ 2μm以上、2.5μm未満
× 2.5μm以上
【0086】
(一週間後)
◎ 2μm未満
○ 2μm以上、2.5μm未満
△ 2.5μm以上、3μm未満
× 3μm以上
【0087】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、長期に渡って高い分散性を維持することが可能なスラリー組成物を簡便な方法で製造できるスラリー組成物の製造方法を提供することができる。また、該スラリー組成物の製造方法を用いて製造したスラリー組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有するスラリー組成物の製造方法であって、
無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)及び無機分散用有機溶剤を添加、混合して無機分散液を作製する工程、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び樹脂溶液用有機溶剤を添加、混合して樹脂溶液を作製する工程、及び、前記無機分散液に樹脂溶液を添加する工程を有し、
前記ポリビニルアセタール樹脂(A)は、アニオン性基とカチオン性基とを有しており、
前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、重合度が800〜4000であり、
前記無機分散液を作製する工程において、前記ポリビニルアセタール樹脂(A)を無機粉末100重量部に対して0.1〜20重量部添加する
ことを特徴とするスラリー組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリビニルアセタール樹脂(A)のアニオン性基は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ボロン酸基、チオール基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項3】
ポリビニルアセタール樹脂(A)のアニオン性基がカルボキシル基であることを特徴とする請求項1又は2記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項4】
ポリビニルアセタール樹脂(A)のカチオン性基は、アミノ基、イミダゾール基及びイミノ基からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項5】
ポリビニルアセタール樹脂(A)のカチオン性基がアミノ基であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項6】
ポリビニルアセタール樹脂(A)のアニオン性基の変性度が0.05〜2モル%であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項7】
ポリビニルアセタール樹脂(A)のカチオン性基の変性度が0.05〜2モル%であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項8】
ポリビニルアセタール樹脂(A)のアニオン性基の変性度とカチオン性基の変性度の割合が2:8〜8:2であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項9】
ポリビニルアセタール樹脂(A)は、水酸基量が28〜60モル%であることを特徴とする請求項1記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項10】
ポリビニルアセタール樹脂(B)は、水酸基量が22〜42モル%であることを特徴とする請求項1記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項11】
無機分散用有機溶剤及び樹脂溶液用有機溶剤は、エタノール及びトルエンからなる混合溶媒であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載のスラリー組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載のスラリー組成物の製造方法を用いて製造されることを特徴とするスラリー組成物。

【公開番号】特開2012−72325(P2012−72325A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219843(P2010−219843)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】