説明

スリットスクリーン、及び、該スリットスクリーンを備えたスクリーン装置

【課題】繊維原料液に含まれる異物の種類に拘わらず、摩耗しにくくて長寿命化を図ることができ、しかも目詰まりを起こしにくく、除塵効果の高いスリットスクリーン及びこのスリットスクリーンを備えたスクリーン装置の提供。
【解決手段】複数の縦長部材5を並設し、隣接する縦長部材5の間に精選部20を形成し、縦長部材5に沿って並設方向に移動する攪拌羽根3により、繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、精選部20を介して繊維原料液を精選する。精選部20の近傍に、攪拌羽根3の移動により繊維原料液に第1の渦流を発生させるための渦流発生部37を形成し、第1の渦流に基づいて精選部20への繊維原料液の圧入流れを生じさせる第2の渦流を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットスクリーン、及び、該スリットスクリーンを備えたスクリーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維原料液(製紙原料)を濾過して所望品質の繊維原料を取り出す精選処理を行うためのスクリーン装置が公知である。このスクリーン装置は、濾過網であるスクリーンバスケットと、その内部を回転する攪拌羽根を備えた攪拌器とを備えている。スクリーンバスケットには、例えば、複数の縦長部材を並設し、隣接する縦長部材の間にスリット状の間隙を形成したスリットスクリーンがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3786799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記スリットスクリーンでは、攪拌羽根によって加圧された繊維原料液に含まれる不純物、例えば、粒子状の異物が、直接、間隙を構成する縦長部材に衝突し、摩耗させる恐れがある。前記間隙には高精度が要求されているので、たとえ1箇所でも摩耗すれば(例えば、8〜10μmの摩耗で)、最早そのスリットスクリーンは使用不能となる。近年、繊維原料液が粗悪化してきており、含有される異物によって前記摩耗の問題が顕在化してきている。
【0005】
また、前記スリットスクリーンでは、攪拌羽根が通過する際、繊維原料液が加圧されて精選が行われた後、減圧されて逆洗作用により間隙に残存したリジェクトが除去される。前述の通り、繊維原料液の粗悪化に伴い、粘着性を有する異物の含有量も増大しているので、逆洗作用によっては間隙に付着した異物を十分に除去できず、目詰まりを起こしやすいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、繊維原料液に含まれる異物の種類に拘わらず、摩耗しにくくて長寿命化を図ることができ、しかも目詰まりを起こしにくくて除塵効果の高いスリットスクリーン及びこのスリットスクリーンを備えたスクリーン装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、複数の縦長部材を並設し、隣接する縦長部材の間に精選部を形成し、前記縦長部材に沿って並設方向に移動する攪拌羽根により、繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、前記精選部を介して繊維原料液を精選するスリットスクリーンにおいて、前記精選部の近傍に、前記攪拌羽根の移動により繊維原料液に第1の渦流を発生させるための渦流発生部を形成し、前記第1の渦流に基づいて前記精選部への繊維原料液の圧入流れを生じさせる第2の渦流を発生させるようにしたものである。
【0008】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、複数の縦長部材を並設し、攪拌羽根を前記縦長部材に沿って並設方向に移動させ、前記攪拌羽根の移動方向に向かって各縦長部材の端面が徐々に突出するように形成することにより、隣接する縦長部材の間に精選部と、渦流を発生させるための空間とを形成し、渦流により繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、前記精選部を介して繊維原料液を精選するスリットスクリーンにおいて、前記各縦長部材の端面に凹部を形成し、該凹部を、前記攪拌羽根の移動により渦流を発生させる渦流発生部として機能させるようにしたものである。
【0009】
前記いずれの構成であっても、渦流発生部で発生した第1の渦流が、攪拌羽根によって加圧された繊維原料液に、攪拌羽根の移動領域側へと環流される流れを生じさせる。これにより、繊維原料液に含まれる比較的大きなリジェクトが精選部に導かれることなく戻される。また、第1の渦流により発生した第2の渦流により、繊維原料液を精選部へと流入させることができ、所望の精選能力を維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、渦流発生部で第1の渦流を発生させ、この第1の渦流により第2の渦流を発生させるようにしているので、繊維原料液に含まれる比較的大きなリジェクトが精選部へと流動することを防止しつつ、繊維原料液を精選部へと流入させることができ、所望の精選能力を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は本実施形態に係るスリットスクリーン1を示す。このスリットスクリーン1は、図2に示すように、スクリーン機本体2内に収容して使用され、内部には攪拌羽根3を有するロータ4が配設される。
【0013】
スリットスクリーン1は、図1に示すように、縦長部材5を複数並設して筒状とし、これらを複数の保持部材6で保持したもので、繊維原料液中の良質繊維(アクセプト)と異物(リジェクト)とを精選分離する。
【0014】
縦長部材5は、ステンレス鋼(SUS304,SUS316等)を押出加工等することにより形成され、図3及び図4に示すように、幅広部7から徐々に幅寸法が減少する傾斜側面8を経て、さらに細首部9を介してこの細首部9よりも幅広の係止部10に至る横断面形状を有する。幅広部7は、軸心(図3中、1点鎖線で示す。)に直交する直線に対して傾斜する傾斜前面11を備える。傾斜前面11は、矢印R2の方向(攪拌羽根3の回転方向R1とは逆方向:以下、反回転方向R2)に向かうに従って攪拌羽根3から離間している。幅広部7は、図5に示すように、矢印R1の方向(攪拌羽根3の回転方向)側で側縁をカットされ、第1平坦面12及び第2平坦面13を形成されている。第1平坦面12は、前記傾斜前面11とは第1円弧面14を介して連続している。第2平坦面13は第1平坦面12に連続し、この第1平坦面12から離れるに従って徐々に矢印R2の方向に向かって傾斜している。第1平坦面12の傾斜角度を第2平坦面13の傾斜角度に近付ければ近付ける程(あるいは一致させてもよい)、繊維原料液が後述する緩衝部21へと侵入しにくくなる。逆に、第2平坦面13に対して第1平坦面12を傾斜させればさせる程、繊維原料液が緩衝部21へと侵入しやすくなる。この設定は、使用する繊維原料液の品質等に応じて変更すればよく、粗悪な原料であれば前者の構成に、良質な原料であれば後者の構成とすればよい。前記傾斜前面11と、隣接する縦長部材5の第1平坦面12とで形成される略V字状の空間(以下、V字状部15と称す。)は、攪拌羽根3の移動に伴う加圧時に、高圧の渦流を発生させるためのものである。これにより、繊維原料液は後述する精選領域19へと侵入する。
【0015】
また、縦長部材5では、図5に示すように、矢印R2の方向側で幅広部7の角部が切除され、第2円弧面16a及び第3円弧面16bを介して連続する第3平坦面17及び円弧状凹面18が形成されている。そして、隣接する縦長部材5の第1平坦面12及び第2平坦面13と、前記第2円弧面16a、第3平坦面17、円弧状凹面18及び第3円弧面16bとで精選領域19を構成している。
【0016】
第2平坦面13と第3円弧面16bで形成される領域(厳密には、両面の最小間隙部分)が精選部20である(ここでは、精選部20の最小間隙寸法を原料の目標品質に応じて0.10〜0.30mmに設定している。)。精選部20では、繊維原料液に含まれるアクセプト(良質繊維)のみを通過させ、このアクセプトよりも大きなリジェクト(異物)を残存させる。なお、精選部20を構成する壁面の一方を第2平坦面13で構成したのは、縦長部材5の配設角度を変化させた場合でも所定間隔の精選部20を得るためである。
【0017】
また、第1平坦面12及び第2平坦面13と、第3平坦面17及び円弧状凹面18とで形成される領域が緩衝部21である。緩衝部21を構成する第1平坦面12と第3平坦面17は、前記精選部20から離れるに従って徐々に流路断面積が大きくなるように傾斜して形成されている(図5中、θ1で示す。)。また、緩衝部21は、前記精選部20から矢印R1の方向に向かって傾斜するように形成されている(図5中、θ2で示す。)。ここでは、角度θ2は、第2平坦面13に沿う直線と、攪拌羽根3の回転中心と傾斜前面11、第1円弧面16aの境界部を結ぶ直線とのなす角度としている。但し、緩衝部21の形状は、逆洗時に繊維原料液がスリットスクリーン1内に還流しやすいものであればよい。
【0018】
緩衝部21の入口部分、すなわち第2円弧面16aと第1平坦面12との間に形成される隙間(厳密には両面の最小間隙部分。精選前の原料事情に応じて決定するが、ここでは約0.6〜1.5mmに設定している。)が補助精選部22である。補助精選部22の間隙寸法(図5中、g5で示す。)は、精選部20の間隙寸法(図5中、g1で示す。)よりも大きく、緩衝部21に侵入しようとするリジェクトのうち、精選部20で精選するよりも大きなサイズのリジェクトを精選(粗選濾過)する。
【0019】
また、縦長部材5は、細首部9の長さの違う2種類、すなわち、図3(b)に示すように、横断面に於ける全長が長い方の第1縦長部材5aと、図3(c)に示すように、短い方の第2縦長部材5bとで構成されている。
【0020】
保持部材6は、図3(a)に示すように、ステンレス鋼(SUS304,SUS316等)からなる板材をリング状としたもので、周方向に所定ピッチで保持凹部23が形成されている。保持凹部23は、レーザー加工又は放電加工(又はその両方)により高精度に形成することができる。隣接する保持凹部23の形状は、前記2種類の縦長部材5に合わせて相違している。すなわち、保持凹部23は、前記第1縦長部材5aが圧入される第1保持凹部23aと、前記第2縦長部材5bが圧入される第2保持凹部23bとで構成されている。各保持凹部23a,23bは、縦長部材5を厚さ方向から圧入可能な形状で、縦長部材5の傾斜側面8に対応する傾斜溝24、細首部9に対応する幅狭溝25、及び係止部10に対応する係止溝26で構成されている。そして、縦長部材5を保持凹部23に圧入することにより、精選部20に所定の間隙寸法を形成しつつ円周方向に整列させることが可能となっている。
【0021】
攪拌羽根3は、円周方向に4箇所等分に設けられ、縦長部材5の長手方向に対して傾斜するように、連結棒27を介して中心部に設けたロータ4に連結されている。ロータ4は図示しないモータの駆動により回転し、攪拌羽根3を、その円弧部分が先頭となってスリットスクリーン1の内周面に沿って高速回転する。各攪拌羽根3は、回転方向(矢印R1で示す方向)側が円弧状に形成され、その外周面は、反回転方向(矢印R2で示す方向)側に向かってスリットスクリーン1の内周面と一定間隔(ここでは、5〜10mm)を有する加圧面28と、この加圧面28からさらに反回転方向に向かうに従って徐々にスリットスクリーン1の内周面から離れるように湾曲し、その先端側で内周面と交差する減圧面29とで構成されている。
【0022】
続いて、前記構成のスリットスクリーン1の製造方法を説明する。
【0023】
まず、保持部材6を図示しない治具によって所定間隔で位置決めする。このとき、各保持部材6間で保持凹部23の位置を一致させる。そして、各保持凹部23a,23bに該当する縦長部材5a,5bを順次圧入し、筒状とする。これにより、各縦長部材5a,5bの幅広部7の間には、繊維原料液の良質繊維と異物とを精選分離するための所定の間隙寸法を有する精選部20と、高圧渦流により繊維原料液に含まれるリジェクトが精選部20を構成する壁面に衝突することを防止するための緩衝部21とが形成され、スリットスクリーン1が完成する。
【0024】
次に、前記構成のスリットスクリーン1を備えたスクリーン装置の動作について説明する。
【0025】
まず、スクリーン機本体2内に繊維原料液(例えば、紙パルプ繊維液)を順次供給する。そして、スリットスクリーン1内に配置したロータ4を高速回転させ(周速約15〜20m/s)、攪拌羽根3をスリットスクリーン1の内周面に沿って移動させる。これにより、スリットスクリーン1内に流入した繊維原料液は、作用する遠心力で渦巻状となると共に重力の影響を受ける。このため、比重の大きな異物は中心部へと集められる。そして、比重の大きな異物を除去された残る繊維原料液の一部がロータ4とスクリーンバスケットの間に形成される精選領域19へと流入する。
【0026】
精選領域19に流入した繊維原料液は、攪拌羽根3の加圧面28がスリットスクリーン1の内周面の対向部分を通過する際に加圧され、前記V字状部15で渦流となる。渦流となった繊維原料液は、緩衝部21の入口すなわち補助精選部22で、サイズの大きなリジェクトの通過を阻止される。つまり、サイズの大きなリジェクトが衝突するのは補助精選部22の入口部分でしかない。しかも、緩衝部21は精選部20から矢印R1の方向に向かって傾斜するように形成されている。このため、繊維原料液が、緩衝部21内へと直接流入するのではなく、渦流による圧力上昇によって無理なく流入する。
【0027】
補助精選部22を通過し、緩衝部21に侵入した繊維原料液は、高圧状態を維持しながらも渦流状態を解消される。このため、リジェクト、特に硬質な異物が精選部20を構成する壁面に高速で衝突することが回避される。したがって、精選部20での摩耗が抑制される。
【0028】
また、緩衝部21に流入した繊維原料液に含まれる粘着性を有する異物は、渦流状態を解消されて緩衝部21を流動することになるため、緩衝部21内に滞留したり、緩衝部21を構成する壁面に付着したりする。したがって、緩衝部21のない従来品に比べて粘着性の異物がスリットスクリーン1の外周側に流出したり、精選部20を構成する壁面に付着したりすることがない。
【0029】
また、補助精選部22と精選部20による2段階の精選が可能となるので、従来のように複数の精選工程を実行するために、複数台のスクリーン装置を連接する必要もなくなり、設備を簡略化して設置スペースを大幅に抑制可能となる。
【0030】
精選部20では、ユーザーが希望するサイズ以下のアクセプト(良質繊維)のみが通過可能であり、希望サイズよりも大きな繊維はリジェクトとして緩衝部21に残存する。精選部20の間隙g1から押し出された良質繊維は、傾斜側面8の間隙g2、係止部10と細首部9の間隙g3、さらには係止部10の間隙g4を経て外部へと流動した後、スクリーン機本体2から図示しないパイプへと流動して回収される。間隙寸法は、間隙g1からg4に向かうに従って大きくなるように形成されている。したがって、間隙g1から押し出されたアクセプトを含む液体は、スムーズにスリットスクリーン1から外部へと流動し、繊維の乱れや絡みが殆ど発生しない。
【0031】
その後、攪拌羽根3がさらに回転し、減圧面29が通過すると、スリットスクリーン1の内周面との間隙が大きくなり、前記V字状部15で繊維原料液が減圧状態となるので、高圧状態を維持する緩衝部21内の繊維原料液がスリットスクリーン1の内周側へと引き戻される。このとき、繊維原料液の流動方向は緩衝部21の傾斜方向θ2に沿うと共に、緩衝部21を構成する壁面が徐々に広がる所定角度θ1で傾斜しているので、残留するリジェクトはスムーズにスリットスクリーン1内へと還流する。また、精選部20での詰まりも解消され、いわゆる逆洗が行われる。
【0032】
このようにして精選部20を通過することなく、スリットスクリーン1の内周側へと回収されたリジェクトは、スリットスクリーン1内を下方に向かって移動し、図示しないパイプを介して回収された後、廃品処理される。
【0033】
なお、このような一連の精選処理、すなわち攪拌羽根3による精選部20からのアクセプトの押し出し、及び、緩衝部21及び精選部20に残存するリジェクトの回収が行われると、縦長部材51に多大な力が作用するが、前述のように、保持部材6の各保持凹部23の間には十分な距離が確保されることにより十分な強度が得られている。したがって、保持部材6が損傷に至ったり、縦長部材5に振動等が発生し、この縦長部材5自身が損傷に至ったりするといった不具合が発生することはない。
【0034】
また、前記補助精選部22の間隙寸法を小さくしたり、緩衝部21の長さ(流路長さ)を大きくしたりすると、流動抵抗が大きくなって精選能力が低下することが想定される。この場合、攪拌羽根3の回転速度を速くしたり、攪拌羽根3とスリットスクリーン1の内周面との距離を小さくしたりすることにより、所望の精選能力を得ることが可能である。したがって、サイズの大きな異物を多く含んだ繊維原料液を精選する場合、補助精選部22の間隙寸法を小さくし、緩衝部21から精選部20に至る異物のサイズを抑えつつ、精選能力の低下を防止することが可能となる。そして、補助精選部22の間隙寸法が摩耗により大きくなれば、その間隙寸法の増大に合わせて攪拌羽根3の回転速度を遅く設定し直せば、精選能力を一定に維持することもできる。また、粗悪な繊維原料液を精選する必要がある場合、緩衝部21の流路長さを大きく設定することにより、精選部20に至る異物の数を減らしつつ、精選能力の低下を防止することも可能である。
【0035】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係るスリットスクリーン31の一部を示す。このスリットスクリーン31では、主に、前記第1実施形態とは縦長部材33の形状が相違している。
【0036】
すなわち、保持部材32に保持された縦長部材33は、傾斜前面34の両端部に平坦面35、36を形成され、傾斜前面34に渦流発生部37を形成されている。そして、隣接する縦長部材33の間で、平坦面35、36によって精選部38が形成されている。渦流発生部37は、攪拌羽根3の移動により加圧された繊維原料液によって図6(b)に示すような第1の渦流を発生させる。そして、第1の渦流により精選部38の入口部分に第2の渦流が発生し、精選部38での精選が可能となる。つまり、渦流発生部37の形成位置が精選部38に近すぎると、第1の渦流によって発生させる第2の渦流が小さくなる(場合によっては発生しない。)。一方、渦流発生部37の形成位置が精選部38から遠すぎると、第2の渦流の回転速度が遅くなる。いずれにしても、第2の渦流により十分な圧力を生じさせ、精選部38に所望の精選能力を発揮させることができない。そこで、渦流発生部37は精選部38に所望の精選能力を発揮させることのできる、回転速度の速い第2の渦流の発生に適した第1の渦流を形成可能なものとされている。
【0037】
前記第2実施形態に係るスリットスクリーン31によれば、前記スクリーン装置に採用した場合、次のような作用効果を奏する。
【0038】
すなわち、スクリーン機本体2内に繊維原料液を供給し、スリットスクリーン31の内周面に沿って攪拌羽根3を回転移動させると、加圧された繊維原料液が、まず、渦流発生部37を流動し、第1の渦流を発生させる。第1の渦流は、図6中反時計回り方向に流動する。このため、繊維原料液に含まれるリジェクトのうち、比較的大きなものは攪拌羽根3の移動領域側へと戻される。また、前記渦流発生部37で発生した第1の渦流により、精選部の入口近傍で第2の渦流が発生する。第2の渦流は、繊維原料液を強制的に精選部38へと侵入させる。
【0039】
このように、前記第2実施形態に係るスリットスクリーン31を備えたスクリーン装置によれば、渦流発生部37によって第1の渦流を発生させることにより、繊維原料液に含まれる比較的大きな異物をスリットスクリーン31の内側に向かって環流させているので、前記異物が精選部38に衝突して摩耗させるといった不具合を防止することができる。また、前記第1の渦流により第2の渦流が発生し、この第2の渦流が繊維原料液を精選部38へと侵入させるために必要される圧力を提供する。したがって、精選部38に於ける精選能力を所望の値に維持することができる。
【0040】
なお、前記渦流発生部37の形状としては、例えば、図7に示すように構成することも可能である。図7(a)では断面略V字形、図7(b)では断面略台形、図7(c)では断面略矩形となっている。いずれの形状であっても、異物が衝突して多少摩耗しても渦流を発生させることができるように、摩耗による除去寸法を考慮して作成されている。これにより、最も摩耗による劣化が激しいと考えられる箇所について、多少形状を変更するだけで、長期に亘って使用することが可能となる。
【0041】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係るスリットスクリーン41の一部を示す。このスリットスクリーン41では、隣接する縦長部材42の間には、精選部43、緩衝部44及び補助精選部45からなる精選領域46が形成されている。そして、緩衝部44の入口近傍には凹部すなわち渦流発生部47が形成されている。
【0042】
精選部43、緩衝部44、及び、補助精選部45は前記第1実施形態と同様の構成であり、渦流発生部47は前記第2実施形態と同様の構成である。
【0043】
前記構成のスリットスクリーン41を備えたスクリーン装置では、次のようにして精選処理が行われる。
【0044】
すなわち、スクリーン機本体2内に繊維原料液を供給し、スリットスクリーン41の内周面に沿って攪拌羽根3を回転移動させると、前記第2実施形態と同様に、攪拌羽根3に加圧された繊維原料液が、まず、渦流発生部47で第1の渦流を発生させる。そして、第1の渦流が補助精選部45の入口近傍に第2の渦流を発生させる。
【0045】
補助精選部45では、前記第1の渦流により比較的大きなリジェクトが攪拌羽根3の移動経路側へと戻される。したがって、補助精選部45を構成する壁面にリジェクトが衝突して摩耗されにくくなる。また、前記第2の渦流により、繊維原料液が加圧状態となって補助精選部45を通過するので、その間隙寸法よりも小さい繊維のみが緩衝部21へと流動する(粗選濾過)。
【0046】
緩衝部21を通過する繊維原料液は渦流状態を解消されるので、前記第1実施形態と同様に、粘着性の異物が緩衝部21内に滞留しやすくなる。また、精選部43でアクセプトのみが通過し、リジェクトは緩衝部44に滞留する。したがって、攪拌羽根3の減圧面が通過することによりV字状部が減圧状態となれば、補助精選部45を介して緩衝部44から滞留するリジェクトがスリットスクリーン41の内周側へと回収される。
【0047】
このように、前記第3実施形態に係るスリットスクリーン41を備えたスクリーン装置によれば、渦流発生部47及び緩衝部44の働きにより、より一層精選部43を構成する壁面の摩耗を抑制することができ、長期に亘って使用することが可能となる。
【0048】
前記第2及び第3実施形態では、リジェクト分解部51をさらに設けるのが好ましい。図9は、図8に示す第3実施形態に係る縦長部材42にリジェクト分解部51を形成した例を示す。リジェクト分解部51は傾斜前面に形成される。詳しくは、矢印R1の方向側の角部から所定寸法離れた位置に形成され、円弧部52と平坦部53とで構成され、渦流発生部47に連続している。そして、スクリーン機本体2内に繊維原料液を供給し、スリットスクリーン1の内周面に沿って攪拌羽根3を回転移動させると、繊維原料液はリジェクト分解部51に衝突して乱流となり、繊維原料液に含まれる結束繊維や繊維くず玉が砕解される。したがって、精選されることなく廃棄される繊維量を抑制することができる。また、砕解された繊維を含む繊維原料液は、スリットスクリーン1の内周面に沿って、次の隣り合う縦長部材41の間に形成される渦流発生部47へと流動し、前記第3実施形態と同様にして第1の渦流となる。
【0049】
このように、リジェクト分解部51を設けることにより、結束繊維等を砕解しておくことができるので、精選されることなく廃棄される繊維量を抑制することができる。
【0050】
また、図10に示すように、リジェクト分解部51を設けることなく、渦流発生部47を傾斜前面のほぼ全体に亘って形成するようにしてもよい。
【0051】
なお、前記実施形態では、繊維原料液をスリットスクリーン1の内側から外側に向かって押し出すように構成したが、外側から内側に向かって圧入するように構成することも可能である。この場合、前記第1実施形態に係るスリットスクリーン1であれば、縦長部材5の幅広部7が保持部材6の外周側で整列する構成とすると共に、ロータ4の攪拌羽根3をスリットスクリーン1の外周部で回転可能に構成する必要がある。
【0052】
また、前記実施形態では、スリットスクリーンを筒状としたが、平板状としてもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、保持部材6の保持凹部23に縦長部材5を圧入するようにしたが、挿通後、加締、接着、溶着等、他の手段によって固定するようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態に係るスリットスクリーンの正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】(a)は図1のA−A線断面図、(b)は第1縦長部材の横断面図、(c)は第2縦長部材の横断面図である(ハッチングは省略)。
【図4】図2の攪拌羽根及びスリットスクリーンの一部を示す部分拡大図である。
【図5】(a)は図4の部分拡大図、(b)はその精選領域の詳細図である。
【図6】(a)は第2実施形態に係るスリットスクリーンの縦長部材及び攪拌羽根を示す部分拡大図、(b)はその繊維原料液の流動状態を示す説明図である。
【図7】他の実施形態に係るスリットスクリーンの縦長部材を示す部分拡大図である。
【図8】第3実施形態に係るスリットスクリーンの縦長部材の一部を示す部分拡大図で、(a)は加圧時の繊維原料液の流動状態を示し、(b)は減圧時の流動状態を示す。
【図9】図8の変形例を示す図である。
【図10】図9の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1…スリットスクリーン
2…スクリーン機本体
3…攪拌羽根
4…ロータ
5(5a、5b)…縦長部材
6…保持部材
7…幅広部
8…傾斜側面
9…細首部
10…係止部
11…傾斜前面
12…第1平坦面
13…第2平坦面
14…第1円弧面
15…V字状部
16…第2円弧面
17…第3円弧面
18…逃がし凹部
19…精選領域
20…精選部
21…緩衝部
22…補助精選部
23(23a、23b)…保持凹部
24…傾斜溝
25…幅狭溝
26…係止溝
27…連結棒
28…加圧面
29…減圧面
31…スリットスクリーン
32…保持部材
33…縦長部材
34…傾斜前面
35、36…平坦面
37…渦流発生部
38…精選部
41…スリットスクリーン
42…縦長部材
43…精選部
44…緩衝部
45…補助精選部
46…精選領域
47…渦流発生部
51…リジェクト分解部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦長部材を並設し、隣接する縦長部材の間に精選部を形成し、前記縦長部材に沿って並設方向に移動する攪拌羽根により、繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、前記精選部を介して繊維原料液を精選するスリットスクリーンにおいて、
前記精選部の近傍に、前記攪拌羽根の移動により繊維原料液に第1の渦流を発生させるための渦流発生部を形成し、前記第1の渦流に基づいて前記精選部への繊維原料液の圧入流れを生じさせる第2の渦流を発生させるようにしたことを特徴とするスリットスクリーン。
【請求項2】
複数の縦長部材を並設し、攪拌羽根を前記縦長部材に沿って並設方向に移動させ、前記攪拌羽根の移動方向に向かって各縦長部材の端面が徐々に突出するように形成することにより、隣接する縦長部材の間に精選部と、渦流を発生させるための空間とを形成し、渦流により繊維原料液への加圧及び除圧を繰り返し、前記精選部を介して繊維原料液を精選するスリットスクリーンにおいて、
前記各縦長部材の端面に凹部を形成し、該凹部を、前記攪拌羽根の移動により渦流を発生させる渦流発生部として機能させるようにしたことを特徴とするスリットスクリーン。
【請求項3】
円筒状のスリットスクリーンと、該スリットスクリーンに沿って回転する攪拌羽根を有するロータとを備え、繊維原料液を精選するスクリーン装置において、
前記スリットスクリーンは、前記請求項1又は2に記載のスリットスクリーンで構成したことを特徴とするスクリーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−348460(P2006−348460A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190714(P2006−190714)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【分割の表示】特願2005−175304(P2005−175304)の分割
【原出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(501427478)協和工機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】