説明

スルファニルシラン官能化弾性ポリマーを含む改善されたモノビニリデン芳香族ポリマー

本発明は、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物であり、該ゴムは、スルファニルシラン鎖末端変性弾性ポリマーである。本発明において、官能化ゴムは、標準的なグラフト重合プロセス技術において十分なグラフトレベルを与え、所望のゴム粒子サイズ分布および形態を与える。ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーの範囲を通じ、本発明に係る変性弾性ポリマーの使用により、樹脂特性、特に明澄性、表面特性および物理特性(ゴム変性モノビニリデン芳香族ホモポリマー(例えば高衝撃ポリスチレンおよびコポリマー(例えばABS))の両者を包含する)の組合せを改善できることを見出した。官能化ゴムは、スルファニル官能基を有し、これは最適な反応性グラフト部位を与える。これは、グラフト重合条件下でモノビニリデン芳香族ポリマーブロックが形成され、ブタジエンポリマーブロックにグラフトされることを確実にする。これは特に、ポリブタジエンホモポリマーゴム(これは、よりコスト効率よくゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーにおいて使用される)を使用可能にするために望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、米国仮出願第60/925,006号(2007年4月18日出願)および米国仮出願第61/032,171号(2008年2月28日出願)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、改善されたゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー(ゴム変性モノビニリデン芳香族ホモポリマーおよびゴム変性モノビニリデン芳香族コポリマーの両者を包含する)に関する。その種々の側面において、本発明は、弾性ポリマー(本明細書でゴムともいう)を基にし、スルファニルシランを用いて官能化または「鎖末端変性された」ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー、このようなゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーの製造およびそれから形成された物品に関する。
【背景技術】
【0003】
ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー,例えばゴム変性ポリスチレン(高衝撃ポリスチレン(HIPS)としても公知)、およびゴム変性ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(ABSとして公知)は、コスト効率よく、多くの用途に適合するようにバランスをとることができる物理特性の範囲を与える。これらの種類のポリマーを用いて、多くの用途(食品または飲料の容器、パッキング、家庭用電化製品、電気器具等)において使用するための物品または物質が形成される。このような物品は、種々の方法(シート材料から成形および熱形成するための公知の技術等)によって製造できる。これらの用途において使用するために、このようなポリマーは、特性(良好な衝撃強度、引張強度、加工性、表面特性(光沢等)等、および場合によっては透明特性)のバランスを必要とする。
【0004】
ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーは、典型的には、選択された1種もしくは複数種のモノマー,例えばスチレンまたはスチレン/アクリロニトリルが、溶解ゴムの存在下で、モノマーが、幾らかかの量で重合してフリーの「マトリクス」ポリマーを形成し、そして幾らかかの量がゴム分子にグラフトするような、重合により製造される。ゴムは、ポリマーマトリクス中に、不連続のゴム粒子の形状で分散するようになり、そして場合により架橋し、主にグラフトおよび多くの反応条件に左右される変動範囲の粒子サイズおよび形態を得る能力を有する。標準ポリブタジエンゴムは、これらが十分グラフトできないと、強靭性は良好であるが明澄性および光沢に対して不利である大きいセル状(cellular)ゴム粒子をもたらす傾向がある。十分なグラフトレベルおよび/またはグラフトされたポリマーを想定するコポリマーゴムの使用は、強靭性を与え、明澄性/光沢改善のために有効なより小さいゴム粒子をもたらす可能性がある。
【0005】
ゴムグラフトのレベルの増大のための多くの以前からの試みが存在する。1つの取組みとしては、一重項酸素(SO)を用いたゴムのヒドロ過酸化が挙げられ、米国特許第4,717,741号に示されるように、これはゴム骨格上に追加の数の反応性グラフト部位をもたらす。別の取組みとしては、少なくとも1つの安定フリーラジカル基を有するジエンゴム(米国特許第5,721,320号に示されるような)が挙げられる。
【0006】
更に別の取組みとしては、SOをトリフェニルホスファイトオゾニドから形成して、ポリブタジエン変性ポリスチレンの形成のためのポリブタジエンゴム上へのグラフトを増大させることが挙げられ、これは“Polybutadiene Hydroperoxide by Singlet Oxygen:Its Grafting and Morphology in Polystyrene Matrix”,Journal of Applied Polymer Science,Vol.31,1827−1842(1986)(Pengによる)に開示されている。米国特許第5,959,033号は、高衝撃スチレンポリマー中で、SOを用いて、ビニル芳香族モノマーおよび塊状重合プロセスのゴム供給物の中のホスファイトオゾニドの分解により、高度にグラフトされたゴムを製造する方法を開示し、これは、少なくとも30パーセントのグラフトが位相逆転の時点で実現されるようなものである。しかし、このプロセスは、追加のオゾニド反応物質を必要とし、そして反応プロセスに複雑性を加える。
【0007】
国際公開第WO2004/72,137Al号において、官能化ゴムは、典型的には追加の不飽和基(例えば、(メタ)アクリレート基)をゴムの主鎖中に有することが示されている。
【0008】
米国特許第6,229,036号は、メルカプトシランをクロロシランと反応させることによって得られる幅広い分類のスルファニルシラン、および、ゴムコンパウンド中のこれらの後終端弾性ポリマーとの組合せで、低い転がり抵抗および良好なウエットグリップを有するタイヤトレッドを製造することを開示する。
【0009】
同一出願人による同時係属中の米国特許出願第60/728,174号(2005年10月19日出願)(現在国際公開第WO2007/047943号として公開されている)は、スルファニルシランをリビングアニオン性弾性ポリマーと反応させることによる弾性ポリマー鎖末端のスルファニルシラン変性(この変性された弾性ポリマーは、加硫弾性ポリマー組成物の調製における使用に適することが教示される)、およびこのような組成物から形成される物品,例えば空気入りタイヤ、タイヤトレッド、ベルト、履物等を教示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特に強靭性、明澄性/光沢および加工性の領域における改善された特性の組合せを有するゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー樹脂に対する要求が常に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、従って、十分かつ最適なグラフトレベルを標準製造プロセス技術において与え、樹脂特性(一態様において特に特定のゴム変性ポリスチレン樹脂における明澄特性)の組合せを改善するゴム粒子形態を形成する官能化弾性ポリマーを用いる。官能化は、スルファニルシラン化合物を用いて行ない、弾性ポリマー分子(これは1つより多い分岐または鎖を含んでもよい)当たり1つの末端スルファニル官能基を与え、該官能基は、次いで最適な反応性グラフト部位を与える。これは、ジブロックグラフトコポリマー(弾性ポリマー分子ブロックおよびグラフト化モノビニリデン芳香族モノマーから形成される)が形成されることを確実にする。これは、ポリブタジエンホモポリマーゴムの弾性ポリマーとしての使用を可能にするために特に望ましく、該ポリブタジエンゴムは、コスト効率よくゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーにおいて使用される。
【0012】
従って、本発明は、a)モノビニリデン芳香族ポリマー;およびb)約1〜約40質量パーセントの、モノビニリデン芳香族ポリマーでグラフトされた粒子として分散されたスルファニルシラン変性弾性ポリマー(elastomeric polymer)を含む、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物である。別の態様において、このポリマー組成物は、下記式:
(D)z(RO)x(R)ySi−R’−S−ポリマー
式中:Dは、弾性ポリマー鎖であり;xは、0,1および2から選択される整数であり;yは、0,1および2から選択される整数であり;zは、1,2および3から選択される整数であり;x+y+z=3であり;Siは珪素;Sは硫黄;Oは酸素であり;Rは、同じまたは異なる、(C1−C16)アルキルであり;R’は、アリール、およびアルキルアリール、または(C1−C16)アルキルであり;そしてポリマーは、グラフト重合されたモノビニリデン芳香族ポリマーである;で表される、グラフトされたスルファニルシラン変性弾性ポリマーを含む。更なる態様において、弾性ポリマー中のDは、共役ジエンポリマー鎖;共役ジエンホモポリマーゴム鎖;ポリブタジエン鎖;またはスチレン−ブタジエンコポリマー鎖である。
【0013】
他の態様において、弾性ポリマー粒子の少なくとも約70パーセントがコア/シェル形態を有し、分散した弾性ポリマー粒子の体積平均粒子サイズが、約0.05〜約10ミクロンである。他の態様において、モノビニリデン芳香族マトリクスポリマーが、ポリスチレンであり、好ましくは、独立に、約3〜約15質量パーセントの弾性ポリマーを含み、および/または、弾性ポリマーの体積平均粒子サイズが、約0.4〜約1.5ミクロンである。代替の態様においては、モノビニリデン芳香族マトリクスポリマーが、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)であり、そして望ましくは、これは、約5〜約20質量パーセントの弾性ポリマーを含み、および/または、弾性ポリマーの体積平均粒子サイズが、約0.3ミクロン〜約4ミクロンである。
【0014】
更なる態様において、本発明は、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物を製造する方法であって、モノビニリデン芳香族ポリマーを、約1〜約40質量パーセントのスルファニルシラン変性弾性ポリマーの存在下で重合させることを含む方法であり、一態様において、これは、式:(D)z(RO)x(R)ySi−R’−S−SiR3 および(D)z(RO)x(R)ySi−R’−S−H(式中:Dは、弾性ポリマー鎖であり;xは、0,1および2から選択される整数であり;yは、0,1および2から選択される整数であり;zは、1,2および3から選択される整数であり;x+y+z=3であり;Siは珪素;Sは硫黄;Oは酸素であり;Rは、同じまたは異なる、(C1−C16)アルキルであり;R’は、アリール、およびアルキルアリール、または(C1−C16)アルキルである)で表される組成を有する。この方法の一態様においては、弾性ポリマーにおいて、Dがポリブタジエン鎖である。
【0015】
本発明の他の態様は、上記のポリマー組成物から製造される、熱形成物品および射出成形物品を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、官能化ゴムは、標準グラフト重合プロセス技術において十分なグラフトレベルを与えて所望のゴム粒子サイズ分布および形態を与える。ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーの範囲を通じ、本発明に係る変性弾性ポリマーの使用が、樹脂特性、特に明澄性、表面特性および物理特性(ゴム変性モノビニリデン芳香族ホモポリマー(例えば高衝撃ポリスチレン)およびコポリマー(例えばABS))の両者を包含する)の組合せを改善できることを見出した。官能化ゴムは、スルファニル官能基を有し、これは最適な反応性グラフト部位を与える。これは、グラフト重合条件下でモノビニリデン芳香族ポリマーブロックが形成され、ブタジエンポリマーブロックにグラフトされることを確実にする。これは特に、ポリブタジエンホモポリマーゴム(これは、よりコスト効率よくゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーにおいて使用される)を使用可能にするために望ましい。
【0017】
本発明の鍵となる特徴は、スルファニルシラン変性された弾性ポリマーまたは「ゴム」を、他の従来のゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー中で使用することである。ゴムは、同一出願人による同時係属中の米国特許出願第06/728,174号(現在、国際公開第WO2007/047943号として公開)(参照により全部を本明細書に組入れる)に示されるように、スルファニルシラン(「シラン−スルフィド」ともいう)をリビングアニオン性弾性ポリマーと反応させることによりスルファニルシラン変性されていることができる。
【0018】
本発明に従った使用のために官能化できる弾性ポリマーとしては、公知の種類の弾性またはゴム状のポリマーであって重合中(または後であることができる)に変性されて単一末端のリビングアニオン性官能基を有するものが挙げられる。用語「弾性ポリマー」は、弾性体(エラストマー)またはゴム(架橋する場合には架橋性ポリマー等)であって加硫天然ゴム(シス−1,4−ポリイソプレン)と同様の特性,例えば引張下で伸張を有し、解放時には比較的急速に縮んでほぼ元の長さになるものを意味することを意図する。特に、グラフト重合によってモノビニリデン芳香族ポリマー中に組込まれる場合には、少なくとも1つの標準試験方法(例えばアイゾッドまたはダート衝撃)によって測定したときに増大した強靭性または耐衝撃性を与える弾性またはゴム状のポリマーを意味することを意図する。
【0019】
好ましい官能化弾性ポリマーは、リビングアニオン性弾性ポリマーのシラン−スルフィド変性剤による変性から得られる鎖末端変性弾性ポリマーである。本明細書で議論する用語「鎖末端変性弾性ポリマー」「鎖末端変性ポリマー」「鎖末端変性エラストマー」「変性弾性ポリマー」「官能化ゴム」および同様の用語は、本明細書で使用するように、「リビングアニオン性弾性ポリマー」とシラン−スルフィド変性剤との反応生成物を意味する(以下の式1または式2に示す通り)。1つ、または1つより多く、のポリマー鎖が1つのシラン−スルフィド変性剤と反応できる(式5も参照)。
【0020】
リチウム開始剤を使用して共役ジエン、トリエンおよびモノビニル脂肪族または芳香族モノマーを重合させることは周知である。これらの重合はアニオン重合機構に従って進行し、ここで求核的な開始によるモノマーの反応が重合構造を形成および伝播する。重合全体を通じ、ポリマー構造はイオン性または「リビング」性である。よって、ポリマー構造は少なくとも1つの反応性または「リビング」末端を有する。これは主題の弾性ポリマーを説明する本明細書で用いる用語「リビング」の文脈である。よって、上記で議論するように、本明細書で用いる用語「リビングアニオン性弾性ポリマー」は、ポリマー鎖を含むポリマーを意味し、ここで各鎖は、ポリマー鎖の「少なくとも1つの末端」に位置する反応性アニオン性末端基を含有する。この用語は当該分野に公知である。
【0021】
一態様において、リビングアニオン性弾性ポリマーは、共役ジエンモノマーのリビングポリマーから選択され、イソプレンのホモポリマー、ブタジエンのホモポリマー、ブタジエンとスチレンとのコポリマー、イソプレンとスチレンとのコポリマー、ブタジエンとイソプレンおよびスチレンとのターポリマー、ならびにこれらの組合せからなる群が挙げられる。別の態様において、リビングアニオン性弾性ポリマーは、ブタジエンのホモポリマーおよびブタジエンとスチレンとのコポリマーからなる群から選択される。
【0022】
主題の弾性ポリマーの製造において有用なモノマーとしては、共役オレフィンおよびオレフィン(α−オレフィン、内部オレフィン、環状オレフィン、極性オレフィンおよび非共役ジオレフィンを含む群から選択される)が挙げられる。好適な共役不飽和モノマーは、好ましくは共役ジエン,例えば:1,3−ブタジエンおよびイソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)である。好ましい共役ジエンとしては:ブタジエン、イソプレンおよびシクロペンタジエンが挙げられ、そして好ましくは芳香族α−オレフィンコモノマーとして:スチレンおよび4−メチルスチレンが挙げられる。
【0023】
適用可能な弾性ポリマーの例としては、共役ジエンのホモポリマー,特にブタジエンまたはイソプレン、ならびに、少なくとも1種の共役ジエン(特にブタジエンまたはイソプレン)と少なくとも1種の芳香族α−オレフィン(特にスチレンおよび4−メチルスチレン)、芳香族ジオレフィン(特にジビニルベンゼン)とのランダムまたはブロックのコポリマーおよびターポリマーが挙げられる。特に好ましいのは、少なくとも1種の共役ジエンと少なくとも1種の芳香族α−オレフィン、および任意に少なくとも1種の芳香族ジオレフィンまたは脂肪族α−オレフィンとの(特にブタジエンまたはイソプレンとスチレン、4−メチルスチレンおよび/またはジビニルベンゼンとの)ランダム共重合、任意に三元重合である。用語「官能化ゴム」「変性弾性ポリマー」および「変性ポリマー」は、これらの弾性ポリマーを(これらが上記で議論した「鎖末端変性」されている場合)意味する。
【0024】
一般的に、弾性ポリマーの製造のために、1種もしくは複数種のジエンモノマーの重合、または1種もしくは複数種のジエンモノマーと1種もしくは複数種のα−オレフィンモノマーとの共重合は、アニオン性リビング型重合反応の分野で周知の条件で実現できる。
【0025】
ポリマー分子量およびポリマー特性を更に制御するために、カップリング剤または結合剤を(スルファニルシラン変性剤に加えて)使用できる。例えば、非対称カップリングが所望される場合には、ハロゲン化スズ、ハロゲン化珪素、スズアルコキシド、珪素アルコキシド、または上記化合物の混合物を、重合中に連続的に添加できる。一般的なハロゲン化物カップリング剤としては、四塩化スズ、四臭化スズ、四フッ化スズ、四ヨウ化スズ、四塩化珪素、四臭化珪素、四フッ化珪素、四ヨウ化珪素が挙げられ、スズおよび珪素の三ハロゲン化物、またはスズおよび珪素の二ハロゲン化物もまた使用できる。スズまたは珪素の四ハロゲン化物と結合したポリマーは、最大4つの腕(または4つの結合ポリマー鎖)を有し、スズまたは珪素の三ハロゲン化物は、最大3つの腕を有し、そしてスズおよび珪素の二ハロゲン化物は、最大2つの腕を有する。ヘキサハロジシランまたはヘキサハロジシロキサンもまた、カップリング剤として使用でき、最大6つの腕を有するポリマーを与える。有用なスズおよび珪素のハロゲン化物カップリング剤としては:SnCl4,(R13SnCl,(R12SnCl2,R1SnCl3,SiCl4,(R13SiCl,(R12SiCl2,R1SiCl3,Cl3Si−SiCl3,Cl3Si−O−SiCl3,Cl3Sn−SnCl3,Cl3Sn−O−SnCl3が挙げられる。スズおよび珪素のアルコキシドカップリング剤の例としては:Sn(OMe)4,Si(OMe)4,Sn(OEt)4またはSi(OEt)4が挙げられる。最も好ましいカップリング剤は:SnCl4,SiCl4,Sn(OMe)4およびSi(OMe)4である。
【0026】
一態様において、鎖末端変性弾性ポリマーは、少なくとも1種のカップリング剤(ハロゲン化スズ、スズアルコキシド、ハロゲン化珪素、および珪素アルコキシドからなる群から選択される)を更に含む。
【0027】
好ましくは、一態様において、鎖末端変性弾性ポリマーは、上記のカップリング剤または結合剤を、スルファニルシラン変性剤に加えては含まない。
【0028】
用語「鎖末端変性剤」「末端封鎖変性剤」「変性剤(modifying agent)」「変性化合物」および単に「変性剤(modifier)」は全て、本明細書で記載する主題のシラン−スルフィドまたはスルファニルシラン化合物を意味することを意図する(以下の式1および2を参照)。用語「鎖末端変性弾性ポリマー」および「変性弾性ポリマー」は、両者とも、リビング(アニオン性)弾性ポリマーと主題の鎖末端変性剤との反応生成物を意味することを意図する。
【0029】
主題の変性剤としては、式1に係る化合物が挙げられる:
GJMSi−A−S−SiTXZ (式1)
式中、
【0030】
Siは珪素;Sは硫黄であり;Gは、(C1−C16)アルコキシ、好ましくは(C1−C10)アルコキシ、より好ましくは(C1−C6)アルコキシであり、そして更により好ましくは(C1−C4)アルコキシであり;そして、
JおよびMは、同じまたは異なり、各々独立に:水素(H),(C1−C16)アルキル、(C1−C16)アルコキシ、(C7−C16)アリール、(C7−C16)アルキルアリール、および−A−S−SiTXZ(式中、A,T,XおよびZは以下で定義する)からなる群から選択されるが;好ましくは独立に、(C1−C5)アルキルおよび(C1−C5)アルコキシから選択される。
【0031】
Aは、アリール、アルキルアリール、(C7−C16)アルキルアリール、または(C1−C16)アルキルであり、直鎖または分岐、飽和または不飽和であることができ、そして:(C1−C4)アルキル,(C1−C4)アルコキシ,(C7−C16)アリール,(C7−C16)アラルキル,ニトリル,アミン,NO2,チオアルキル,−A−S−SiTXZ(式中、A,T,XおよびZは本明細書で定義)で置換されていてもよいが、好ましくは直鎖または分岐鎖の(C1−C5)アルキルである。本明細書で用いる規定(C1−Cn)または(C7−Cn)(式中、nは、炭素の上限である)は、「A」基の中の炭素原子の総数を意味する。Aは、好ましくはへテロ原子,例えばO、N、PまたはSを含有しない。好ましい態様において、A基は、アルキルである場合、3個から5個の炭素原子を含有する。
【0032】
T,XおよびZ基は、同じまたは異なり、そして各々独立に:水素(H),(C1−C16)アルキル、(C1−C16)アルコキシ、(C7−C16)アリール、(C7−C16)アラルキル、および−S−A−SiMJG(A,M,JおよびGは本明細書で記載されるように定義する)からなる群から選択される。好ましくは、T,XおよびZは、独立に、(C1−C5)アルキルおよび(C1−C5)アルコキシから選択され、そしてより好ましくは、T,XおよびZは、各々(C1−C5)アルキル基である。
【0033】
式1では示していないが、主題の化合物はまた、これらの対応するルイス塩基付加物(例えば、溶媒分子テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン(珪素原子と組合せ)を伴い)を含有できることが理解されよう。
【0034】
本発明の好ましい態様において、式1(上記)および式2(下記)に示す変性剤は、ハライド部分を含有せず、そしてより好ましくはクロリド(これは潜在的に腐食性の副生成物を形成する可能性がある)を含有しない。
【0035】
用語「アルキル」は、直鎖炭化水素(例えば、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(Pr),n−ブチル(Bu)、n−ペンチル、n−ヘキシル等)、分岐炭化水素基(例えば、イソプロピル、tert−ブチル等)の両者、および炭化水素系の非芳香環を包含することが理解される。これらの炭化水素基は、任意にアルキル、アルコキシ、ヒドロキシルまたは他のヘテロ原子(例えば、窒素、硫黄およびリン)で置換されていてもよいが、好ましくはへテロ原子含有置換を含有しない。
【0036】
用語「アルコキシ」は、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、プロポキシ(PrO)、ブトキシ(BuO)、イソプロポキシ、イソブトキシ、ペントキシ等を包含することが理解される。
【0037】
用語「アリール」は、フェニル、ビフェニルおよび他のベンゼノイド化合物であって、任意に、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシルまたは他のヘテロ原子(例えば、窒素、硫黄およびリン)で置換されているものを包含することが理解される。式1で規定されるアリール基は、好ましくはヘテロ原子置換を含有せず、そして更により好ましくは1つのみの芳香環を含有し、そして最も好ましくは6炭素芳香環を含有する。
【0038】
用語「アルキルアリール」は、アルキル基に結合しているアリール基を意味することが理解される。(C7−C16)の規定および同様の規定は、基の中の炭素原子の総数を意味することが意図される。式1で規定されるアルキルアリール基は、好ましくはヘテロ原子置換を含有せず、そして更により好ましくは1つのみの芳香環を含有し、そして最も好ましくは6炭素芳香環を含有する。
【0039】
より好ましくは、主題の変性剤は、式2によって規定される分類から選択される:
(RO)x(R)ySi−R’−S−SiR3 (式2)
式中:
【0040】
Oは酸素であり、xは、1,2および3から選択される整数、好ましくは2または3であり、そしてより好ましくは3であり;yは、0,1および2から選択される整数であり;x+y=3である。
【0041】
Rは、同じまたは異なり、そして:(C1−C16)アルキル、好ましくは(C1−C8)アルキル、そしてより好ましくは(C1−C5)アルキルであり、特にMe,Et,PrおよびBu:が挙げられ;そしてR’は、(C1−C16)アルキル、好ましくは(C1−C5)アルキルである。
【0042】
R’は、「A」基と同等であり、そして従って上記で議論したように定義される。
【0043】
好ましい態様において、各R基は、同じまたは異なり、そして各々は独立に(C1−C5)アルキルであり、そしてR’は(C1−C5)アルキルである。
【0044】
式2では示していないが、主題の化合物は、これらの対応するルイス塩基付加物(例えば、溶媒分子テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン(珪素原子と組合せ)を伴い)を包含することが理解されよう。主題の変性剤の具体的な好ましい種としては、下記式で表される化合物(およびこれらの対応するルイス塩基付加物(示さず))が挙げられる:(MeO)3Si−(CH23−S−SiMe3、(EtO)3Si−(CH23−S−SiMe3、および(PrO)3Si−(CH23−S−SiMe3
【0045】
本発明の変性剤は、同時係属中の特許出願第60/728,174号(現在国際公開第WO2007/047943号として公開)に記載するように製造できる。
【0046】
主題の変性剤としては、米国特許第6,229,036号(これは、法律で認められる最大限の範囲で参照により本明細書に組入れ、スルファニルシラン化合物を製造する方法を包含する)に記載されるスルファニルシラン化合物が挙げられる。開示されるスルファニルシラン化合物のうち、ハロゲンを有さないものが好ましい。
【0047】
鎖末端変性反応は、変性された弾性ポリマーを反応混合物から回収することを包含し、そして反応および回収の条件に左右され、式5a(末端スルフィドを有する)に係るかもしくは式5b(末端チオールを有する)に係る鎖末端変性弾性ポリマー、または式5aおよび5bの両者(纏めて式5という)で表される鎖末端変性弾性ポリマーを有する種を含む混合物を与えると考えられる:
(D)z(RO)x(R)ySi−R’−S−SiR3 (式5a)
(D)z(RO)x(R)ySi−R’−S−H (式5b)
【0048】
式中、Dは、弾性ポリマーであり、xは、0,1および2から選択される整数であり;yは、0,1および2から選択される整数であり;zは、1,2および3から選択される整数、好ましくは2または3およびより好ましくは3であり、そしてx+y+z=3であり、そして全ての他の符号は、式2について先に定義した通りである。以下でより詳細に議論するように、本明細書で言及する変性された弾性ポリマーは、式5aに係るかもしくは式5bに係る鎖末端変性弾性ポリマー、または式5aおよび5bで表される種の混合物である。式5では示していないが、1種もしくは複数種の主題の化合物が、これらの対応するルイス塩基付加物を包含することが理解されよう。幾つかの好ましい態様において、鎖末端変性ポリマーは、前記の1種もしくは複数種のカップリング剤との反応を介して部分的にカップリングしていてもよい。
【0049】
得られる変性弾性ポリマーは、好ましくは、反応性硫黄含有スルフィドおよび/またはチオール基を、弾性ポリマーの少なくとも約0.00010mmol/グラム、好ましくは弾性ポリマーの少なくとも約0.00025mmol/グラム、より好ましくは弾性ポリマーの少なくとも約0.0005mmol/グラムおよびより好ましくは弾性ポリマーの少なくとも約0.001mmol/グラム、ならびに一般的に、弾性ポリマーの約0.20mmol/グラム以下、好ましくは弾性ポリマーの約0.10mmol/グラム以下、およびより好ましくは約0.008mmol/グラム以下の量で含む。
【0050】
殆どの用途のために、変性ポリマーは、好ましくは、少なくとも幾つかのポリマー鎖末端に結合した反応性スルフィドおよび/またはチオール基を有する共役ジオレフィンに由来するホモポリマーである。好ましい鎖末端変性ポリマー(または変性弾性ポリマー)としては、これらに限定するものではないが、鎖末端変性ポリブタジエンおよび鎖末端変性ポリイソプレンが挙げられるが、鎖末端変性ブタジエン−スチレンコポリマー、鎖末端変性ブタジエン−イソプレンコポリマー、鎖末端変性イソプレン−スチレンコポリマーおよび鎖末端変性ブタジエン−イソプレン−スチレンターポリマーを包含できる。
【0051】
理論に拘束されることを望まないが、式5aの変性弾性ポリマーのトリアルキルシリル(−SiR3)基は、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーを製造するための弾性ポリマーの使用前のスルフィドの意図しない後続反応を防止する保護基として機能すると考えられる。この「保護」トリアルキルシリル(−SiR3)は、非意図的または意図的に、−OH基を含有する化合物(例えば水、アルコール、アニオン性の酸または有機酸(例えば、塩酸、硫酸またはカルボン酸))に曝露し、従って「非保護」チオール(−SH)基(式5bに示す通り)を形成することにより除去できる。このような条件は、典型的には、弾性ポリマーの準備中(すなわち、その重合プロセスからのその回収および精製の間)に存在するかまたは形成される。ポリマー「準備」条件に左右され、非保護および保護の変性弾性ポリマーの両者は、本発明に係るモノビニリデン芳香族ポリマーにおいて使用される典型的な変性弾性ポリマー中に存在すると考えられる。例えば、変性ポリマー(大体は式5aに係るもの)を含有するポリマー溶液のスチーム揮散は、保護トリアルキルシリル基のパーセントを除去することになり、露出したチオール(−SH)基を有する非保護形5bをもたらす。
【0052】
保護および非保護の両者のスルファニルシラン変性弾性ポリマーが反応して、改善されたグラフトを、本発明に係るモノビニリデン芳香族ポリマーの製造において弾性ポリマーに対して与えると予測され、式5b種またはこの種を包含する混合物が好ましい。従って、本明細書で用いる「スルファニルシラン変性弾性ポリマー」または「変性弾性ポリマー」成分は、保護されたスルファニルシラン変性弾性ポリマー、非保護スルファニルシラン変性弾性ポリマー、または、より一般的には、「保護」および「非保護」のスルファニルシラン変性弾性ポリマーの両者の量の混合物を包含する。
【0053】
次いで、拘束されない理論に従い、変性弾性ポリマー(例えばゴム−S−H)を、モノビニリデン芳香族ポリマー重合反応において使用する場合、弾性ポリマー上のメルカプト基(ここで「非保護」として示す)は、鎖転移反応を、下記反応に従ったモノビニリデン芳香族ポリマーラジカル(「ポリマーラジカルo」)の重合とともに起こし、続いてモノビニリデン芳香族ポリマーのグラフトを弾性材料上に組込む。
ポリマーラジカルo+ゴム−S−H → ポリマー−H+ゴム−S−ラジカルo
ゴム−S−ラジカルo+ポリマーラジカルo → ゴム−S−ポリマー
【0054】
式5の変形のいずれにおいても、グラフト重合プロセスにおけるゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーの製造における変性弾性ポリマーの使用は、一般的に下記式6で表されるグラフトコポリマーをもたらし、ここで「ポリマー」は、グラフト化モノビニリデン芳香族ポリマーを表し、そして式5と同じ定義を有する:
(D)z(RO)x(R)ySi−R’−S−ポリマー (式6)
【0055】
当業者に周知であるように、このグラフトコポリマー種は、弾性ポリマーとモノビニリデン芳香族ポリマーとの相の間の改善された親和性を与え、そして弾性ポリマーの粒子またはドメイン(これはマトリクスのモノビニリデン芳香族ポリマー相中に分散した状態になる)の所望のサイズおよび形態の製造を可能にする。
【0056】
本発明に係るモノビニリデン芳香族ポリマーにおいて使用するために好適な変性弾性ポリマーは、5〜300ミリパスカル秒(mPa・s)(センチポイズまたはcpsと等価)(ASTM 445(またはDIN 51562)に従って、スチレン中の5%溶液中25℃で、ウベローデキャピラリIII(レンジ100〜1000mPa・s);IIc(レンジ30〜300mPa・s);II(10〜100mPa・s);またはIa(5〜50mPa・s)を用いて測定される)の範囲の溶液粘度を有するものである。好ましくは、溶液粘度は、少なくとも10mPa・s、好ましくは少なくとも30mPa・s、および独立に、300mPa・s以下、好ましくは250mPa・s以下、およびより好ましくは200mPa・s以下である。
【0057】
変性弾性ポリマーは、グラフト共重合プロセス中に組込む前に、好ましくはムーニー粘度値(ML 1+4,100℃、ASTM D 1646(2004)に従って測定した場合)(Monsanto MV2000機器を用い)約5〜約150の範囲を有する。好ましくは、ムーニー粘度は、少なくとも約10、より好ましくは少なくとも約15、および好ましくは約120以下、より好ましくは約100以下である。
【0058】
ゴムポリマーの重量平均分子量(Mw)は、概略的に、10,000〜1,000,000、典型的には30,000〜800,000、好ましくは40,000〜700,000、より好ましくは45,000〜600,000、および最も好ましくは50,000〜500,000(ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定して対ポリスチレン標準で算出した場合)である。
【0059】
好ましく本発明の実施において使用されるゴムは、二次転移温度(ガラス転移温度またはTgともいう)0℃以下、好ましくは−50℃以下、およびより好ましくは−60℃以下(特にポリブタジエンについて)(従来技術,例えば、ASTM試験法D−746−52 Tを用いて評価または近似した場合)を示すようなポリマーおよびコポリマーである。
【0060】
弾性ポリマーの共役ジオレフィン残余部分のシス量については特に限定はないが、殆どの用途において、シス量は、弾性ポリマー中の共役ジオレフィン基準で好ましくは少なくとも約10質量パーセント、より好ましくは少なくとも約20質量パーセント、および一般的には弾性ポリマー中の共役ジオレフィン基準で約80質量パーセント以下;好ましくは約60質量パーセント以下である。
【0061】
変性弾性ポリマー中の芳香族ビニルモノマー(使用する場合)の量については特に限定はないが、殆どの用途において、芳香族ビニルモノマーは、総モノマー量の5〜60質量パーセント、およびより好ましくは(用いる場合)、10〜50質量パーセントを含む。5質量パーセント未満の量は、その添加コストに対して利点を殆どまたは全く与えないことになる。これがコポリマーである場合、変性弾性ポリマーは、ブロックまたはランダムのコポリマーであることができるが、好ましくは、芳香族ビニル化合物単位の40質量パーセント以上は単独で(すなわちランダム)結合し、そして10質量パーセント以下が「ブロック」(8以上の芳香族ビニル化合物が引き続いて結合している)である。引き続いて結合した芳香族ビニル単位の長さは、Tanakaら(Polymer,Vol.22,第1721−1723頁(1981))によって開発された、オゾン分解−ゲル浸透クロマトグラフィ法によって測定できる。
【0062】
主題の変性弾性ポリマーの分子量分布は、グラフト重合プロセスの前には極めて重大であることは見出されておらず、そして好適な範囲は、この種の用途の当業者に公知である。一般的には、重量平均分子量の、数平均分子量に対する比によって表される分子量分布,(Mw/Mn)は、少なくとも約1.02、好ましくは少なくとも約1.05、より好ましくは少なくとも約1.2;より好ましくは少なくとも約1.3、および一般的には約4.0以下、好ましくは約3.0以下、およびより好ましくは約2.5以下である。しかし、Mw/Mnが4.0超である場合、低分子量成分の量が増大してゲルおよび粘着性が生じる場合がある。
【0063】
上記の変性弾性ポリマーでゴム変性されているモノビニリデン芳香族ホモポリマーおよびコポリマー(纏めて「ポリマー」または「(コ)ポリマー」という)は、モノビニリデン芳香族モノマー(例えば、米国特許第4,666,987号、4,572,819号および4,585,825号に記載されるようなもの)(参照により本明細書に組入れる)を重合させることによって製造される。マトリクスポリマー成分、ゴム上へのグラフト重合およびコポリマーゴム成分中への共重合において、使用するのに好適なモノビニリデン芳香族モノマーは、好ましくは以下の式のものである:
【0064】
【化1】

【0065】
式中、R’は、水素またはメチルであり、Arは、1〜3個の芳香環を有する、アルキル、ハロまたはハロアルキル置換を有するかまたは有さない芳香環構造であり、ここでいずれのアルキル基も、1〜6個の炭素原子を含有し、そしてハロアルキルは、ハロ置換されたアルキル基を意味する。好ましくは、Arは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、ここでアルキルフェニルは、アルキル置換されたフェニル基を意味し、フェニル基が最も好ましい。使用できる典型的なモノビニリデン芳香族モノマーとしては:スチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルトルエンの全ての異性体、特にパラビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等の全ての異性体、およびこれらの混合物が挙げられ、スチレンが最も好ましい。マトリクスポリマー成分中で使用するために好適なモノビニリデン芳香族モノマーは、少量の約40質量パーセント以下の1種以上の他の共重合可能なモノマーの範囲と共重合できる。好ましいコモノマーとしては、ニトリルモノマー(例えば、アクリロニトリル(「ABS」型の樹脂を与えるための)、メタクリロニトリルおよびフマロニトリル);(メタ)アクリレートモノマー(例えば、メチルメタクリレートまたはn−ブチルアクリレート);無水マレイン酸および/またはN−アリールマレイミド(例えばN−フェニルマレイミド)が挙げられる。コポリマーを用いる場合、特別なコモノマーに左右され、好ましいコポリマーは、共重合可能モノマーの質量基準で少なくとも約60質量パーセント、好ましくは少なくとも約70質量パーセント、より好ましくは少なくとも約80質量パーセント、好ましくは少なくとも約90質量パーセントのモノビニリデン芳香族モノマーを含有する。
【0066】
本発明に係る樹脂組成物のモノビニリデン芳香族ポリマーマトリクス成分は、典型的には十分に高い重量平均分子量(Mw)を有し、組成物における必要レベルの加工性および機械特性を与え、これは典型的にはMw少なくとも約100,000、好ましくは少なくとも約120,000、より好ましくは少なくとも約130,000、および最も好ましくは少なくとも約140,000グラム毎モル(g/mol)である。
【0067】
本発明に係る樹脂組成物のモノビニリデン芳香族ポリマー成分は、典型的には、Mw約400,000以下、好ましくは約300,000以下、より好ましくは約250,000以下、および最も好ましくは約230,000グラム毎モル(g/mol)以下を、十分な加工性を与えるために有する。
【0068】
本発明に係る樹脂組成物のモノビニリデン芳香族ポリマー成分は、典型的には、数平均分子量(Mn)少なくとも約30,000、好ましくは少なくとも約40,000、より好ましくは少なくとも約50,000、および最も好ましくは少なくとも約60,000グラム毎モル(g/mol)を有する。
【0069】
本発明に係る樹脂組成物のモノビニリデン芳香族ポリマー成分は、典型的には、Mn約130,000以下、好ましくは約120,000以下、より好ましくは約110,000以下、および最も好ましくは約100,000グラム毎モル(g/mol)以下を有する。
【0070】
MwおよびMnについてのこれらの値とともに、比Mw/Mn(多分散性または分子量分布ともいう)は、望ましくは少なくとも約2、好ましくは2.3以上、および4以下、好ましくは3以下であるのがよい。本明細書で用いるモノビニリデン芳香族ポリマーについての用語MwおよびMnは、重量平均分子量および数平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィにより、較正用にポリスチレン標準を用いて評価したときの)を意味する。
【0071】
ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーまたはコポリマーは、モノビニリデン芳香族モノマーを、予溶解させたエラストマーの存在下で重合する公知の方法により製造され、その例は、米国特許第3,123,655号および4,409,369号(参照により本明細書に組入れる)に記載されている。特に、本発明のブレンド物中で用いる好ましいゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーおよびこれを製造するための方法は、米国特許第5,491,195号(参照により本明細書に組入れる)に開示されている。
【0072】
変性弾性ポリマーは、好ましくはモノビニリデン芳香族モノマーおよび/または任意のプロセス希釈剤中に溶解させ、樹脂組成物の重合のために好適な反応器構成に供給する。好ましくは、ゴム溶液を一連の撹拌された栓流反応器(一連の温度制御ゾーンを有する)内に供給する。好ましくは、鉱物油および希釈剤もまた1つまたは複数の反応器に供給する。好ましい態様において、鎖転移剤もまた、反応混合物中に、第1反応器の、第1ゾーンの前または第1もしくは第2のゾーン内に添加できる。
【0073】
温度(熱開始)重合条件が好ましいが、公知の開始剤(過酸化物開始剤(パーエステル,例えば第三ブチルパーオキシベンゾエート、第三ブチルパーオキシアセテート、ジベンゾイルパーオキサイド、およびジラウロイルパーオキサイド等、パーケタール,例えば1,1−ビス第三ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ビス第三ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、およびジクミルパーオキサイド等))、ならびにパーカーボネート等)から選択される低レベルの重合開始剤、ならびに光化学開始法を用いることも可能である。これらの開始剤は、種々の要因(使用する具体的な開始剤、ポリマーグラフトの所望レベルおよび塊状重合を行なう条件等)に左右される濃度の範囲で使用できる。使用する場合、モノマーの100万質量部当たり、約50〜約300質量部、好ましくは約100〜約200質量部の開始剤を使用する。
【0074】
スルファニルシラン変性弾性ポリマーは、他の従来のゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーグラフト重合プロセスにおけるその使用のための特別な調製ステップを必要としない。
【0075】
重合の間、弾性ポリマーは、芳香族ポリマーとグラフトして粒子中に分散する。分散したグラフト化ゴム粒子は、典型的にはこれにグラフト化しており、そしてその中に埋め込まれている。原料非グラフト化ゴムポリマー1質量部当たり、少なくとも約0.5、好ましくは少なくとも約1、より好ましくは少なくとも約2、およびより好ましくは少なくとも約3質量部のモノビニリデン芳香族ポリマー、および一般的に、約8質量部以下、好ましくは約7質量部以下、より好ましくは約6質量部以下、およびより好ましくは約5質量部以下のモノビニリデン芳香族ポリマーがこれにグラフト化し、そしてその中に埋め込まれている。
【0076】
当業者に理解されるように、本発明に従って使用される変性弾性ポリマーは、所望のゴム分子構造およびグラフトのレベルを可能にし、これは次には、種々の他のゴム成分およびグラフト重合法を用いて生成するゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーにおいて与えられることが現在公知である広範囲の所望粒子サイズおよび形態の生成を可能にする。本発明の一態様において、高い光沢および/または透明性を有するHIPS樹脂のために、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーマトリクス中に分散したゴム粒子の主要部は、好ましくはコア/シェル粒子形態を、表面光沢および強靭性の最適化されたバランスのために有し、好ましくは少なくとも70パーセント、より好ましくは少なくとも80パーセント、およびより好ましくは強靭化および透明性のために少なくとも90パーセントのゴム粒子がコア/シェル粒子形態を有する。本明細書で用いる用語コア/シェル形態は、ゴム粒子が薄い外側シェルを有し、そしてマトリクスポリマーの単独の中心閉塞部を収容することを意味する。この型の粒子形態は、一般的に当該分野で「シングルオクルージョン(single occlusion)」または「カプセル」形態ともいう。
【0077】
これに対し、用語「エンタングルメント」または「セル状」形態は、種々の他のより複雑なゴム粒子形態であって、当該分野で公知であり、そして「エンタングル」「マルチオクルージョン(multiple occlusions)」「ラビリンス(labyrinth)」「コイル」「オニオンスキン」または「同心円」と説明できる構造を有するものを意味する。本発明の別の態様において、良好な光沢および強靭特性を有するABS樹脂のために、ゴム粒子の主要部は、好ましくはセル状またはマルチオクルージョン形態を有する。本明細書で用いるコア/シェルまたはセル状のゴム粒子のパーセントは、透過型電子顕微鏡写真(TEMの)中での500粒子のカウント基準での数のパーセントである。
【0078】
本発明に従い、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーは、好ましくは極めて広範囲の平均ゴム粒子サイズを有し、体積平均ゴム粒子サイズの少なくとも約0.05ミクロン(μ)、好ましくは少なくとも約0.1μから、約10μ以下、好ましくは約8μ以下の範囲を有する。高衝撃ポリスチレン樹脂中で強靭性および表面外観特性の所望の組合せを与えるために、弾性ポリマーの分散粒子の体積平均粒子サイズは、一般的に、少なくとも約0.05ミクロン、好ましくは少なくとも約0.1ミクロン、より好ましくは少なくとも約0.2ミクロン、より好ましくは少なくとも約0.3ミクロン、更により好ましくは少なくとも約0.4ミクロンであり、そして一般的に、約8ミクロン以下、好ましくは約7ミクロン以下、好ましくは約3ミクロン以下、より好ましくは約2ミクロン以下、そして最も好ましくは約1.5ミクロン以下である。ABS組成物のために、分散した弾性ポリマー粒子の体積平均粒子サイズは、一般的に少なくとも約0.3ミクロンであり、そして一般的に約4ミクロン以下である。これらの粒子サイズは、光散乱系装置(Coulter LS230のようなもの)(より大きい平均ゴム粒子サイズ(>0.2ミクロン)のために)または透過型電子顕微鏡イメージ分析(より小さい平均ゴム粒子サイズ(<0.2)の場合)を用いて最も良好に測定される。当業者は、異なるサイズ群のゴム粒子が、精度を最適化するためにゴム粒子測定法の幾つかの選択または変更を必要とする場合があることを理解する。平均粒子サイズおよび他のゴム粒子の統計量およびパーセントは、Beckham Coulter:LS230光散乱装置およびソフトウエアを用いて測定できる。この装置をこの用途のために用いることは、製造者の取扱説明書および文献およびJOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE,VOL.77(2000),第1165頁“A Novel Application of Using a Commercial Fraunhofer Diffractometer to Size Particles Dispersed in a Solid Matrix”(Jun GaoおよびChi Wuによる)に議論されている。
【0079】
ビニル芳香族モノマー中に初期に溶解させる弾性ポリマーの量は、最終ゴム補強ポリマー生成物の所望の濃度、重合中のビニリデン芳香族モノマー変換度、および溶液の粘度に左右される。本発明の最終ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物中の弾性ポリマーまたはゴムの量は、ジエン/非ジエン共重合弾性ポリマーの場合、コポリマーゴム成分からジエン量のみをカウントしていずれの共重合モノビニリデンまたは他の非ジエンモノマー(コポリマーゴムの一部である)も包含しないことにより測定される。
【0080】
弾性ポリマーは、典型的には、補強されるポリマー生成物が、ビニル芳香族モノマーおよび弾性ポリマー(ゴム)成分の総質量基準で、少なくとも約1質量パーセント、好ましくは少なくとも約2質量パーセントおよび好ましくは少なくとも約3質量パーセントの弾性ポリマー、および一般的には約20質量パーセント以下、好ましくは約17質量パーセント以下、およびより好ましくは約15質量パーセント以下を含有するような量で使用する。
【0081】
HIPS樹脂の特定の場合において、弾性ポリマーは、典型的には、補強されるポリマー生成物が、ビニル芳香族モノマーおよび弾性ポリマー(ゴム)成分の総質量基準で、好ましくは少なくとも3質量パーセント、好ましくは少なくとも約4質量パーセントの弾性ポリマー、および一般的には、約15質量パーセント以下、好ましくは約12質量パーセント以下を含有するような量で使用する。
【0082】
ABS型樹脂の具体的な場合において、弾性ポリマーは、典型的には、補強されるポリマー生成物が、ビニル芳香族およびアクリロニトリルモノマーならびに弾性ポリマー(ゴム)成分の総質量基準で、好ましくは少なくとも約5質量パーセント、好ましくは少なくとも約8質量パーセントの弾性ポリマー、および一般的には、約20質量パーセント以下、好ましくは約15質量パーセント以下を含有するような量で使用する。
【0083】
他の添加剤,例えば流動促進剤、潤滑剤、酸化防止剤、型離型剤、鉱物油、他の可塑剤等を本発明の組成物中に含んでもよい。
【0084】
物質を公知の技術に従って液化および錠剤化させる。この技術領域の当業者に公知のように、液化条件を用いて、ゴム粒子の架橋を調整し、これにより最適化された機械特性を与えることができる。
【0085】
この発明の新規なポリマー組成物は、好ましくは直接、上記で議論した溶液重合プロセスまたは塊状重合プロセスの生成物として調製する。代替として、これらの直接調製された生成物を、ブレンド物中で、追加量の1種以上の他の、別個に調製したモノビニリデン芳香族モノマーポリマーまたはコポリマーとともに使用して、幾らか異なる範囲のコスト/特性バランスを有する物質(幾つかのパッケージまたは容器用途のために必要である場合があるような)を設計できる。代替として、最終生成物は、別個に調製したモノビニリデン芳香族(コ)ポリマーの量を、予めグラフト重合されたゴム変性ポリマー成分とブレンドして、ゴム粒子形態、および最終生成物ゴム量を与えるのに必要な量の分布を適性範囲で与えることによって調製できる。他のモノビニリデン芳香族モノマーポリマーまたはコポリマー(本発明に係る組成物とブレンドできるかまたはこれを作製するために使用できる)の例としては、これらに限定されるものではないが、汎用ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、モノビニリデン芳香族コポリマー(例えばポリ(スチレン−アクリロニトリル))、スチレン/ジエンブロックコポリマー、スチレン/ジエンランダムコポリマー、ビニル芳香族/オレフィンモノマーインターポリマー(例えばエチレン/スチレンコポリマー)が挙げられる。
【0086】
本発明の他の側面においては、従って、改善された射出成形物品、熱形成性のシートまたはフィルム、改善された熱形成物品、熱形成物品を製造するための改善されたプロセス、押出しブロー成形物品を製造するための改善されたプロセス、および射出延伸ブロー成形物品を製造するための改善されたプロセスを与えることがある。発明のこれらの側面において、上記の樹脂組成物は、従来技術および市販で入手可能な樹脂と比べて、加工性、再循環性、強靭性、光沢、透明性および他の特性の驚くべき組合せ、ならびにこれらから製造される物品を与える。別の態様において、上記の組成物を使用して、例えば、上記の組成物のコアまたは中間層ならびに各側に位置する別の樹脂の外側層を含む3層を有する、多層のシートまたはフィルムを製造できる。
【0087】
以下の例は、本発明を説明するために与えられる。例は、本発明の範囲を限定することを意図せず、そしてこれらはそのように解釈すべきではない。
【0088】

実験1−鎖末端変性弾性ポリマーの調製
下記式:
(PBD)3Si−(CH23−S−Si−(CH33
に従い、そして「非保護」変性弾性ポリマーも含む鎖末端変性弾性ポリマーを、下記のように調製した;ここで、(PBD)3は、ポリブタジエンの3つの鎖または分岐を意味する。反応生成物はまた、下記式に係る少量の統計量の鎖末端変性弾性ポリマーを含むことに留意すべきである。ここで、メトキシ(−OMe)はPBD鎖で完全には置換されていなかった:
(PBD)2(OMe)Si−(CH23−S−Si−(CH33
【0089】
重合は、二重壁の40リットルスチール反応器内で行なった。これをまず、有機溶媒、モノマー、極性調整剤化合物および開始剤化合物の添加前に窒素でパージした。反応器内に、9400gのシクロヘキサンを溶媒として、および1660gのブタジエンをモノマーとして添加し、そして重合反応器を55℃に加減した。混合物を10分間撹拌し、続いてn−ブチルリチウムで滴定して微量の水分または他の不純物を除去した。追加の16.58mmolのn−ブチルリチウムを添加して重合反応を開始させた。重合を80分間行なって重合温度を85℃まで45分間で増大させた。その後、3.94mmolの変性剤(MeO)3−Si−(CH23−S−Si(CH33を添加した。重合プロセスを終了させるために、ポリマー溶液をメタノール中に、および2gのIrganox 1520を安定剤として添加した。この混合物を15分間撹拌した。得られるポリマー溶液を、次いで、スチームで1時間揮散させて溶媒および他の揮発物を除去し、そしてオーブン内で70℃にて30分間乾燥させた。得られるエラストマーの特性を表1に纏める。
【0090】
実験2:
概略同等であるが変性されていないゴムを、10リットル反応器を用い、4695gのシクロヘキサンおよび826gのブタジエンを、9400gのシクロヘキサンおよび1660gのブタジエンに代えて充填したこと、そして16.58mmolのn−ブチルリチウムに代えて8.25mmolを用いたことを除いて実験1に記載する手順に従って調製した。加えて、3.94mmolの変性剤(MeO)3−Si−(CH23−S−Si(CH33に代えて、1.482mmolのテトラメトキシシランを添加した。非官能化ゴムの特性を表1に与える。
【0091】
【表1】

【0092】
実験3および4:
実験3では、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物を、上記で実験1で調製したシランスルフィド鎖末端変性弾性ポリマーから調製して、実験4で調製した概略同等の高衝撃ポリスチレン(HIPS)(実験2で調製した非変性の比較ポリブタジエンゴムによる)(上記表1に示す通り)と比較した。両レジンは、表2に纏める条件下で、下記表3に示す供給組成物を用い、ゴム物質をスチレンおよびエチルベンゼンの希釈剤中で溶解させて4%ゴム供給物溶液(10%エチルベンゼン、および85%スチレンのもの)を調製することにより調製した。ゴム供給物を、らせん刃先(Auger)型撹拌器および加熱要素を備える1.4kgサイズのガラス反応器内に充填した。重合溶液を表2に記載する温度および撹拌プロファイルに供した。このプロファイルの終点で、重合反応混合物を、次いで減圧オーブン内で240℃にて約1時間揮散させた。ポリマーを次いで挽き、顆粒に押出して、以下で更に説明する方法に従って試験した。試験結果を下記表4に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
試験方法:
最終生成物のMwおよびMn分子量(モル質量)は、ゲル浸透クロマトグラフィを用いてポリスチレン標準に基づき測定した。ゴム粒子サイズ(RPS)は、Coulter Counter LS230による光散乱装置を用いて測定した。
【0097】
引張試験(Ts−降伏時引張強度;Tr−破断時引張強度およびTm−引張モジュラス)を、ASTM D−638に従い圧縮成形種で行なった。そしてメガパスカル(MPa)単位で与える。屈曲試験(Fm−屈曲モジュラス;Fs−屈曲強度)を、ASTM D 790法に従って、圧縮成形種で行なった。そしてMPa単位で記録する。アイゾッド耐衝撃性を、3.2mm厚の圧縮成形種で、ASTM−D256法に従って測定した。そしてジュール毎メートル(J/m)単位で与える。メルトフローレートは、ASTM D1133条件G(200℃/5Kg)に従って測定した。そしてグラム毎10分(g/10分)単位で記録する。ヘイズは、ASTM D−1003−95法に従って、射出成形した0.5mm厚のプラーク(位相的欠陥を有さないもの)で試験した。
【0098】
上記表3から分かるように、本発明に係る樹脂は、改善された組合せの特性を与えることができ、特に、この場合、改善された透明性が挙げられ、一方、引張、屈曲および強靭性の物理的/機械的特性の許容できるバランスは維持している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)モノビニリデン芳香族ポリマー;および
b)約1〜約40質量パーセントの、モノビニリデン芳香族ポリマーでグラフトされた粒子として分散されたスルファニルシラン変性弾性ポリマー
を含む、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物。
【請求項2】
下記式:
(D)z(RO)x(R)ySi−R’−S−ポリマー
式中:
Dは、弾性ポリマー鎖であり、
xは、0,1および2から選択される整数であり、
yは、0,1および2から選択される整数であり、
zは、1,2および3から選択される整数であり、
x+y+z=3であり、
Siは珪素;Sは硫黄;Oは酸素であり;
Rは、同じまたは異なる、(C1−C16)アルキルであり;
R’は、アリール、およびアルキルアリール、または(C1−C16)アルキルであり;そして
ポリマーは、グラフト重合されたモノビニリデン芳香族ポリマーである;
で表される、グラフトされたスルファニルシラン変性弾性ポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
弾性ポリマー中のDが、共役ジエンポリマー鎖である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
弾性ポリマー中のDが、共役ジエンホモポリマーゴム鎖である、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
弾性ポリマー中のDが、ポリブタジエン鎖である、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
弾性ポリマー中のDが、スチレン−ブタジエンコポリマー鎖である、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
弾性ポリマー粒子の少なくとも約70パーセントがコア/シェル形態を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
分散した弾性ポリマー粒子の体積平均粒子サイズが、約0.05〜約10ミクロンである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
モノビニリデン芳香族マトリクスポリマーが、ポリスチレンである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
約3〜約15質量パーセントの弾性ポリマーを含む、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
体積平均粒子サイズが、約0.4〜約1.5ミクロンである、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
モノビニリデン芳香族マトリクスポリマーが、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
約5〜約20質量パーセントの弾性ポリマーを含む、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
体積平均粒子サイズが、約0.3ミクロン〜約4ミクロンである、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物を製造する方法であって、モノビニリデン芳香族ポリマーを、約1〜約40質量パーセントのスルファニルシラン変性弾性ポリマーの存在下で重合させることを含む、方法。
【請求項16】
スルファニルシラン変性弾性ポリマーが、式:
(D)z(RO)x(R)ySi−R’−S−SiR3 および
(D)z(RO)x(R)ySi−R’−S−H
式中:
Dは、弾性ポリマー鎖であり、
xは、0,1および2から選択される整数であり、
yは、0,1および2から選択される整数であり、
zは、1,2および3から選択される整数であり、
x+y+z=3であり、
Siは珪素;Sは硫黄;Oは酸素であり;
Rは、同じまたは異なる、(C1−C16)アルキルであり;そして
R’は、アリール、およびアルキルアリール、または(C1−C16)アルキルである;
で表される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
弾性ポリマーにおいて、Dがポリブタジエン鎖である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載のポリマー組成物から製造される、熱形成物品。
【請求項19】
請求項1に記載のポリマー組成物から製造される、射出成形物品。
【請求項20】
請求項1に記載のポリマー組成物から製造される、シートまたはフィルム。

【公表番号】特表2010−525110(P2010−525110A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504145(P2010−504145)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/058336
【国際公開番号】WO2008/130782
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】