説明

スルフィド化合物及びその製造方法

【課題】 屈折率及びアッベ数が高く、かつ耐熱性、耐候性、透明性に優れており、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録媒体基板、着色フィルター、赤外線吸収フィルター等の光学製品を製造する原料として好適なスルフィド化合物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 一般式(1)で表されるスルフィド化合物及びその製造方法である。
【化1】


(式中、R1は、アルカン残基、チアアルカン残基、シクロアルカン残基、ヘテロ環式化合物残基又は芳香族化合物残基を示し、nは0又は1を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なスルフィド化合物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、屈折率及びアッベ数の高い光学製品の原料として有用な新規なスルフィド化合物及びその効率のよい製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、ガラスに比較して軽量で割れにくく染色が容易であるため、近年、レンズ等の各種光学用途に使用されている。光学用プラスチック材料としては、ポリ(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)(CR−39)やポリ(メチルメタクリレート)が、一般的に用いられている。しかしながら、これらのプラスチックは1.50以下の屈折率を有するため、それらを例えばレンズ材料に用いた場合、度数が強くなるほどレンズが厚くなり、軽量を長所とするプラスチックの優位性が損なわれてしまう。特に強度数の凹レンズは、レンズ周辺が肉厚となり、複屈折や色収差が生じることから好ましくない。さらに眼鏡用途において肉厚のレンズは、審美性を悪くする傾向にある。肉薄のレンズを得るためには、材料の屈折率を高めることが効果的である。一般的にガラスやプラスチックは、屈折率の増加に伴いアッベ数が減少し、その結果、それらの色収差は増加する。従って、高い屈折率とアッベ数を兼ね備えたプラスチック材料が望まれている。
【0003】
このような性能を有するプラスチック材料として、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピル)−1,2,5,6−テトラチアヘキサン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピル)−1,2,4,5−テトラチアペンタン、1,7−ジビニル−4−(1,2−ジチア−3−ブテニル)−1,2,6,7−テトラチアヘプタンなどの非対称スルフィド化合物を用いた光学製品が提案されている(特許文献1参照)。
そして、同文献参考例1の1,6−ビス(2,3−エピチオプロピル)−1,2,5,6−テトラチアヘキサンの屈折率(nD)は1.666、同文献参考例2の1,5−ビス(2,3−エピチオプロピル)−1,2,4,5−テトラチアペンタンの屈折率(nD)は1.681、同文献参考例3の1,7−ジビニル−4−(1,2−ジチア−3−ブテニル)−1,2,6,7−テトラチアヘプタンの屈折率(nD)は1.646であり、これらの化合物を使用して光学製品を作製すれば、高屈折率の光学製品を得ることが期待できる。しかし、その一方、更なる高屈折率であり高アッベ数を兼ね備えた光学製品の提供が望まれている。
【特許文献1】特開2002−131502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、屈折率及びアッベ数が高く、かつ耐熱性、耐候性、透明性にも優れる光学製品を提供できる新規なスルフィド化合物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、エピチオエチル基を含み、かつエピチオエチル基がモノスルフィドに直結した構造(エピチオエチルチオ構造)を有するスルフィド化合物を必須モノマー成分として用いて得られた重合体が屈折率及びアッベ数が高く、かつ耐熱性、耐候性、透明性にも優れる光学製品を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるエピチオエチルチオ構造を1個以上有するスルフィド化合物を提供するものである。
【化1】

(式中、R1は、炭素数1〜7のアルカン残基、炭素数2〜4のチアアルカン残基、炭素数4〜7のシクロアルカン残基、ヘテロ原子が酸素、窒素もしくは硫黄原子である炭素数3〜7のヘテロ環式化合物残基又は炭素数6〜10の芳香族化合物残基を示し、各残基は置換基を有していてもよく、nは0又は1を示す。)
さらに本発明は、上記一般式(1)で表されるスルフィド化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスルフィド化合物を用いることにより、屈折率及びアッベ数が高く、かつ耐熱性、透明性に優れた光学製品を得ることができる。また、チオール化合物とハロアセトアルデヒドを出発原料とすることにより本発明のスルフィド化合物を効率良く製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のスルフィド化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化2】

式中、R1は、炭素数1〜7のアルカン残基、炭素数2〜4のチアアルカン残基、炭素数4〜7のシクロアルカン残基、ヘテロ原子が酸素、窒素もしくは硫黄原子である炭素数3〜7のヘテロ環式化合物残基又は炭素数6〜10の芳香族化合物残基を示す。各残基は置換基を有していてもよい。nは0又は1を示す。
【0009】
前記R1のアルカン残基としては、例えば、直鎖状又は分岐状のメタン残基、エタン残基、プロパン残基、ブタン残基、ペンタン残基、ヘキサン残基、ヘプタン残基等が挙げられ、メタン残基、エタン残基等が好ましい。
前記R1のチアアルカン残基としては、2−チアプロパン残基、2−チアブタン残基、3−チアペンタン残基などが挙げられる。
前記R1のシクロアルカン残基としては、例えば、シクロブタン残基、シクロペンタン残基、シクロヘキサン残基等が挙げられ、シクロペンタン残基、シクロヘキサン残基等が好ましい。
前記R1のヘテロ環式化合物残基としては、特にヘテロ原子が硫黄原子であるものが好ましく、例えば、1,3−ジチオラン残基、1,3−ジチアン残基、1,4−ジチアン残基等が挙げられ、1,3−ジチオラン残基、1,4−ジチアン残基等が好ましい。
前記R1の芳香族化合物残基としては、例えば、ベンゼン環残基、ナフタレン環残基等が挙げられ、ベンゼン環残基等が好ましい。
また、これらの各残基の置換基としては、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等が挙げられる。
【0010】
一般式(1)で表されるスルフィド化合物は原子屈折の高い硫黄を高い割合で含有しており、このスルフィド化合物を用いて得られた重合体の屈折率を大きく高める。また、重合性官能基であるエピスルフィド基は重合体主鎖への硫黄原子の導入に寄与するため、このスルフィド化合物を用いて得られた重合体の屈折率をさらに高める。通常、アモルファス材料のアッベ数はその屈折率の増加とともに減少する傾向にある。硫黄を高い割合で含有するポリマーの場合、硫黄の電子共鳴が顕著となりアッベ数の大きな低下がよく観測されるが、本発明のスルフィド化合物ではそのようなことはない。屈折率増加の別の原因として分子容の減少が挙げられ、本発明のスルフィド化合物から得られたポリマーの場合、高い架橋密度や強い分子間力によりそれが発現される。一般式(1)のスルフィド化合物は複数の重合性官能基を有しており、その重合体は特に前者の効果により屈折率が高められる。
【0011】
本発明の前記一般式(1)で表されるスルフィド化合物としては、ビスエピチオエチルスルフィド、ビスエピチオエチルチオメタン、1,1−ビスエピチオエチルチオエタン、1,2−ビスエピチオエチルチオエタン、1,1−ビスエピチオエチルチオプロパン、1,2−ビスエピチオエチルチオプロパン、1,3−ビスエピチオエチルチオプロパン、2,2−ビスエピチオエチルチオプロパン、1,2−ビスエピチオエチルチオブタン、1,3−ビスエピチオエチルチオブタン、1,4−ビスエピチオエチルチオブタン、1,2−ビスエピチオエチルチオヘプタン、1,3−ビスエピチオエチルチオヘプタン、1,4−ビスエピチオエチルチオヘプタン、1,5−ビスエピチオエチルチオヘプタン、1,3−ビス(エピチオエチルチオ)−2−チアプロパン、1,4−ビス(エピチオエチルチオ)−2−チアブタン、1,5−ビス(エピチオエチルチオ)−3−チアペンタン、1,2−ビスエピチオエチルチオシクロペンタン、1,3−ビスエピチオエチルチオシクロペンタン、1,1−ビスエピチオエチルチオシクロヘキサン、1,2−ビスエピチオエチルチオシクロヘキサン、1,3−ビスエピチオエチルチオシクロヘキサン、1,4−ビスエピチオエチルチオシクロヘキサン、1,2−ビスエピチオエチルチオベンゼン、1,3−ビスエピチオエチルチオベンゼン、1,4−ビスエピチオエチルチオベンゼン、1,2−ビス(エピチオエチルチオメチル)ベンゼン、1,3−ビス(エピチオエチルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(エピチオエチルチオメチル)ベンゼン、4,5−ビスエピチオエチルチオ−1,3−ジチオラン、2,3−ビスエピチオエチルチオ−1,4−ジチアン、3,4−ビスエピチオエチルチオ−ビシクロ[4.3.0]−2,5,7,9−テトラチアノナン、2,3−ビスエピチオエチルチオ−1,4−ベンゾジチアン、2,5−ビスエピチオエチルチオ−1,4−ジチアン等が挙げられる。R1が脂肪族環状基である場合、本発明のスルフィド化合物はエピチオエチルチオ基についてシス−、トランス−異性体を含む。
上記の他、本発明の一般式(1)で表されるスルフィド化合物としては下式で表される化合物が挙げられる。
【化3】

【0012】
本発明のスルフィド化合物はチオール化合物とハロアセトアルデヒドを原料化合物として使用することを特徴とする下記製造方法により製造することが出来る。
上記一般式(1)においてn=1である下記一般式(2):
【化4】

(式中、R1は前記と同様)で表されるスルフィド化合物は、下記の工程(a)〜(d)により製造することが出来る。
(a)下記一般式(4):
XCH2CHO (4)
(式中、Xはハロゲン原子を示す)で表されるハロアセトアルデヒドと、下記一般式(5):
1(SH)2 (5)
(式中、R1は前記と同様である)で表されるポリチオール化合物とを反応させ、得られた生成物をアシル化して下記一般式(6):
【化5】

(式中、R1及びXは前記と同様であり、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるジアシルオキシ化合物を得る工程;
(b)該ジアシルオキシ化合物を下記一般式(7):
【化6】

(式中、R1及びXは前記と同様であり、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるジアシルチオ化合物にする工程;
(c)該ジアシルチオ化合物を下記一般式(8):
【化7】

(式中、R1及びXは前記と同様)で表されるジチオール化合物にする工程;及び
(d)該ジチオール化合物の1−メルカプト−2−ハロエチル基をエピスルフィド化する工程。
【0013】
工程(a)
工程(a)は、ハロアセトアルデヒド(4)とポリチオール化合物(5)を反応させ、得られた生成物をアシル化して前記一般式(6)で表されるジアシルオキシ化合物を得る工程である。
ハロアセトアルデヒド(4)として具体的には、クロロアセトアルデヒド、ブロモアセトアルデヒド等が挙げられ、クロロアセトアルデヒドが好ましく用いられる。
ポリチオール化合物(5)として具体的には、ジメルカプトメタン、1,1−ジメルカプトエタン、1,2−ジメルカプトエタン、1,1−ジメルカプトプロパン、1,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、2,2−ジメルカプトプロパン、1,1−ジメルカプトブタン、1,2−ジメルカプトブタン、1,3−ジメルカプトブタン、1,4−ジメルカプトブタン、2,2−ジメルカプトブタン、2,3−ジメルカプトブタン、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ジメルカプトキシレン、1,3−ジメルカプトキシレン、1,4−ジメルカプトキシレン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、4,5−ジメルカプトメチル−1,3−ジチアン、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、4,5−ジメルカプト−1,3−ジチアン、4,5−ジメルカプトメチル−1,3−ジチオラン、4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオラン等のジチオール化合物が挙げられるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0014】
ハロアセトアルデヒド(4)とポリチオール化合物(5)は、ピリジン、アニリン、キノリン、アンモニア、トリエチルアミン等のアルカリの存在下、ジクロロメタン、クロロフォルム、トルエン、ヘキサン、2-ブタノン、アセトン等の溶媒中、−20〜40℃で反応させる。ポリチオール化合物(5)はハロアセトアルデヒド(4)1モルに対して0.8〜1.3モル用いるのが好ましい。得られた生成物をピリジンと無水カルボン酸((R2CO)2O;R2は前記と同様)を用いて−20〜50℃でアシル化し前記一般式(6)のジアシルオキシ化合物を得る。アシル化反応においては、ハロアセトアルデヒド(4)1モルに対して、ピリジンは0.8〜2.0モル、無水カルボン酸は0.8〜2.0モル用いるのが好ましい。
【0015】
工程(b)
工程(b)は、前記ジアシルオキシ化合物(6)のアシルオキシ基(−OCOR2)をチオカルボン酸(R3COSH;R3は前記と同様)によりアシルチオ基(−SCOR3)に変換して前記一般式(7)のジアシルチオ化合物を得る工程である。反応は、三フッ化ホウ素・エチルエーテル付加物等のルイス酸触媒の存在下、−40〜20℃で行うのが好ましい。チオカルボン酸は、アシルオキシ基(−OCOR2)1モルに対して0.9〜2.5モル使用するのが好ましい。
【0016】
工程(c)
工程(c)は、前記ジアシルチオ化合物(7)のアシルチオ基(−SCOR3)をメルカプト基に変換して前記一般式(8)のジチオール化合物を得る工程である。反応は、塩化水素、臭化水素、硫酸等の酸をジアシルチオ化合物(7)に加え、0〜100℃で攪拌することにより行う。酸の使用量は、アシルチオ基(−SCOR3)1当量に対して0.9〜10当量であるのが好ましい。
【0017】
工程(d)
工程(d)は、前記ジチオール化合物(8)の1−メルカプト−2−ハロエチル基をエピスルフィド化して目的化合物であるスルフィド化合物(2)を得る工程である。反応は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム等の塩基性化合物の存在下、ジチオール化合物(8)をジクロロメタン、クロロフォルム、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、2−ブタノン、アセトニトリル、メタノール、エタノール等の溶媒中、−40〜40℃で攪拌することにより行う。塩基性化合物の使用量は、1−メルカプト−2−ハロエチル基1当量に対して0.8〜4.0当量であるのが好ましい。
【0018】
上記一般式(1)においてn=0である下記一般式(3):
【化8】

で表されるスルフィド化合物は、下記の工程(a’)〜(d’)により製造することが出来る。
(a’)前記一般式(4)のハロアセトアルデヒドと、下記一般式(9):
【化9】

(式中、R4は炭素数1〜6のアルキル基を示し、X2はハロゲン原子を示す)で表されるチオール化合物とを反応させ、得られた生成物をアシル化して下記一般式(10):
【化10】

(式中、R4、X及びX2は前記と同様であり、R5は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるアルコキシアシルオキシ化合物を得る工程;
(b’)該アルコキシアシルオキシ化合物を下記一般式(11):
【化11】

(式中、X及びX2は前記と同様であり、R6は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるジアシルチオ化合物にする工程;
(c’)該ジアシルチオ化合物を下記一般式(12):
【化12】

(式中、X及びX2は前記と同様)で表されるジチオール化合物にする工程;及び
(d’)該ジチオール化合物の1−メルカプト−2−ハロエチル基をエピスルフィド化する工程。
【0019】
工程(a’)
工程(a’)は、ハロアセトアルデヒド(4)とチオール化合物(9)を反応させ、得られた生成物をアシル化して前記一般式(10)で表されるアルコキシアシルオキシ化合物を得る工程である。ハロアセトアルデヒド(4)として具体的には、クロロアセトアルデヒド、ブロモアセトアルデヒド等が挙げられ、クロロアセトアルデヒドが好ましく用いられる。ハロアセトアルデヒド(4)とチオール化合物(9)は、ピリジン、アニリン、キノリン、アンモニア、トリエチルアミン等のアルカリの存在下、ジクロロメタン、クロロフォルム、トルエン、ヘキサン、2−ブタノン、アセトン等の溶媒中、−20〜40℃で反応させる。チオール化合物(9)はハロアセトアルデヒド(4)1モルに対して0.8〜1.3モル用いるのが好ましい。得られた生成物をピリジンと無水カルボン酸((R5CO)2O;R5は前記と同様)を用いて−20〜50℃でアシル化し前記一般式(10)のアルコキシアシルオキシ化合物を得る。アシル化反応において、ハロアセトアルデヒド(4)1モルに対して、ピリジンは0.8〜2.0モル、無水カルボン酸は0.8〜2.0モル用いるのが好ましい。
【0020】
工程(b’)
工程(b’)は、前記アルコキシアシルオキシ化合物(10)のアシルオキシ基(−OCOR5)とアルコキシ基(−OR4)をチオカルボン酸(R6COSH;R6は前記と同様)によりアシルチオ基(−SCOR6)に変換して前記一般式(11)のジアシルチオ化合物を得る工程である。反応は、三フッ化ホウ素・エチルエーテル付加物等のルイス酸触媒の存在下、−40〜20℃で行うのが好ましい。チオカルボン酸は、アシルオキシ基(−OCOR5)とアルコキシ基(−OR4)の合計量1モルに対して0.9〜2.5モル使用するのが好ましい。
【0021】
工程(c’)
工程(c’)は、前記ジアシルチオ化合物(11)のアシルチオ基(−SCOR6)をメルカプト基に変換して前記一般式(12)のジチオール化合物を得る工程である。反応は前記工程(c)と同様に行うことができる。
【0022】
工程(d’)
工程(d’)は、前記ジチオール化合物(12)の1−メルカプト−2−ハロエチル基をエピスルフィド化して目的化合物であるスルフィド化合物(3)を得る工程である。反応は前記工程(d)と同様に行うことができる。
【0023】
本発明の一般式(1)で表されるスルフィド化合物は、光学製品の原料として有用であり、一種又は二種以上を組み合わせて用いて重合体とし、光学製品とすることができる。この光学製品は、本発明のスルフィド化合物の少なくとも1種を合計で10〜100重量%含有すると好ましく、50〜100重量%含有するとさらに好ましい。さらに、本発明のスルフィド化合物を必須モノマー成分として得られる重合体の物性などを適宜改良するための任意成分として、(i)エピスルフィド化合物,(ii)エポキシ化合物,チオウレタン原料である(iii)ポリイソ(チオ)シアネートと(iv)ポリチオールの混合物,ポリチオール及び(v)単独重合可能なビニルモノマーなどを適宜配合して重合性組成物としてもよい。これにより、屈折率、アッベ数、耐熱性、耐候性、透明性等を更に改善することができる。なお、ポリイソ(チオ)シアネートは、ポリイソシアネートとポリイソチオシアネートの両者を意味する。
【0024】
(i)エピスルフィド化合物
エピスルフィド化合物の例としては、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−3−(β−エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタン等の鎖状有機化合物、テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の分岐状有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物;
1,3−及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン等の環状脂肪族有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物;
1,3−及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4’−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物などが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの使用量は、必須成分である本発明のスルフィド化合物の総量に対して0.01〜50モル%が好ましい。
【0025】
(ii)エポキシ化合物
エポキシ化合物の例としては、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールスルフォン、ビスフェノールエーテル、ビスフェノールスルフィド、ハロゲン化ビスフェノールA、ノボラック樹脂等の多価フェノール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるフェノール系エポキシ化合物;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトール、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物等の多価アルコール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるアルコール系エポキシ化合物;
アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘット酸、ナジック酸、マレイン酸、コハク酸、フマール酸、トリメリット酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の多価カルボン酸化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるグリシジルエステル系エポキシ化合物;
エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス(3−アミノプロポキシ)−2,2'−ジメチルプロパン、1,2−、1,3−又は1,4−ビスアミノシクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビスアミノプロピルシクロヘキサン、水添4,4'−ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、m−又はp−フェニレンジアミン、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン、1,5−又は2,6−ナフタレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−(4,4'−ジアミノジフェニル)プロパン等の一級ジアミン、N,N'−ジメチルエチレンジアミン、N,N'−ジメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N'−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N'−ジメチル−1,2−ジアミノブタン、N,N'−ジメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N'−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N'−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N'−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N'−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N'−ジエチルエチレンジアミン、N,N'−ジエチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N'−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N'−ジエチル−1,2−ジアミノブタン、N,N'−ジエチル−1,3−ジアミノブタン、N,N'−ジエチル−1,4−ジアミノブタン、N,N'−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−又は2,6−ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1−ジ(4−ピペリジル)メタン、1,2−ジ(4−ピペリジル)エタン、1,3−ジ(4−ピペリジル)プロパン、1,4−ジ(4−ピペリジル)ブタン等の第二級ジアミンとエピハロヒドリンの縮合により製造されるアミン系エポキシ化合物;
3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−3,4−エポキシシクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物;
シクロペンタジエンエポキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン、ビニルシクロヘキセンエポキシド等の不飽和化合物のエポキシ化により製造されるエポキシ化合物;
上述の多価アルコール、フェノール化合物とジイソシアネート及びグリシドール等から製造されるウレタン系エポキシ化合物等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの使用量は、必須成分である本発明のスルフィド化合物の総量に対して0.01〜50モル%が好ましい。
【0026】
(iii)ポリイソ(チオ)シアネート
ポリイソ(チオ)シアネートの例としては、キシリレンジイソ(チオ)シアネート、3,3'−ジクロロジフェニル−4,4'−ジイソ(チオ)シアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソ(チオ)シアネート、ヘキサメチレンジイソ(チオ)シアネート、2,2',5,5'−テトラクロロジフェニル−4,4′−ジイソ(チオ)シアネート、トリレンジイソ(チオ)シアネート、ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)シクロヘキサン、ビス(4−イソ(チオ)シアネートシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソ(チオ)シアネートメチルシクロヘキシル)メタン、シクロヘキサンジイソ(チオ)シアネート、イソフォロンジイソ(チオ)シアネート、2,5−ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン、2,5−ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−5−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−[3−イソ(チオ)シアネートプロピル]−5−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−5−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの使用量は、必須成分である本発明のスルフィド化合物の総量に対して0.01〜50モル%が好ましい。
【0027】
また、前記ポリイソ(チオ)シアネートの成分中には、重合体の物性等を適宜改良するためにビニル基を有する化合物成分を共重合させることも出来る。具体的には、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、一分子内に少なくとも二つ以上の(メタ)アクリロキシ基を含むウレタン変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエステル変性(メタ)アクリレート等が挙げられこれらは単独もしくは二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの両者を意味し、(メタ)アクリロキシ基は、アクリロキシ基とメタクリロキシ基の両者を意味する。
【0028】
(iv)ポリチオール
ポリチオールの例としては、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、テトラキスメルカプトメチルメタン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、2,3−ジメルカプトプロパノール、ジメルカプトメタン、トリメルカプトメタン、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、1,4−ベンゼンジチオール、1,3,5−ベンゼントリチオール、1,2−ジメルカプトメチルベンゼン、1,3−ジメルカプトメチルベンゼン、1,4−ジメルカプトメチルベンゼン、1,3,5−トリメルカプトメチルベンゼン、トルエン−3,4−ジチオール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,2,3,4−テトラメルカプトブタン等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの使用量は、必須成分である本発明のスルフィド化合物の総量に対して0.01〜50モル%が好ましい。
【0029】
(v)単独重合可能なビニルモノマー
単独重合可能なビニルモノマーの例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ビス(2,2,2−トリメチロールエチル)エーテルのヘキサアクリレート、ビス(2,2,2−トリメチロールエチル)エーテルのヘキサメタクリレート等の1価以上のアルコールとアクリル酸、メタクリル酸のエステル構造を有する化合物;
アリルスルフィド、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物;アクロレイン、アクリロニトリル、ビニルスルフィド等のビニル化合物;
スチレン、α−メチルスチレン、メチルビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、α−クロロスチレン、クロロビニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド、パラジビニルベンゼン、メタジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの使用量は、必須成分である本発明のスルフィド化合物の総量に対して0.01〜20モル%が好ましい。
【0030】
本発明のスルフィド化合物を必須成分として得られる光学製品の屈折率を向上するため、硫黄又は硫黄原子を含む無機化合物を適宜加えてもよい。硫黄原子を含む無機化合物としては、硫化水素、二硫化炭素、セレノ硫化炭素、硫化アンモニウム、二酸化硫黄、三酸化硫黄等の硫化酸化物、チオ炭酸塩、硫酸およびその塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、過硫酸塩、チオシアン酸塩、チオ硫酸塩、二塩化硫黄、塩化チオニル、チオホスゲン等のハロゲン化物、硫化硼素、硫化窒素、硫化珪素、硫化リン、硫化セレン、金属硫化物、金属水硫化物等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの使用量は、必須成分である本発明のスルフィド化合物の総量に対して0.01〜50モル%が好ましい。
【0031】
本発明のスルフィド化合物を含む上記の重合性組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、耐候性改良のため、紫外線吸収剤,酸化防止剤,着色防止剤,蛍光染料などの添加剤を適宜加えてもよい。
また、重合反応性向上のための触媒を適宜使用してもよく、使用し得る触媒としては、例えば、エピスルフィド化合物(i)やエポキシ化合物(ii)を含む重合性組成物の重合ではアミン類,フォスフィン類,第4級アンモニウム塩類,第4級ホスホニウム塩類,第3級スルホニウム塩類,第2級ヨードニウム塩類,鉱酸類,ルイス酸類,有機酸類,ケイ酸類,四フッ化ホウ酸等、ビニルモノマー(v)を含む重合性組成物の重合ではアゾビスブチロニトリル,アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等のラジカル発生剤、そしてポリイソ(チオ)シアネート(iii)とポリチオール(iv)を含む重合性組成物の重合ではジメチルスズジクロライド、ジラウリルスズジクロライド、アミン類などが効果的である。
【0032】
本発明のスルフィド化合物を用いて得られる光学製品は、例えば以下に示す方法に従って製造することができる。
まず、本発明のスルフィド化合物を少なくとも1種及び必要に応じて用いられる各種添加剤を含む均一な組成物を調製し、この組成物を公知の注型重合法を用いて、ガラス製又は金属製のモールドと樹脂製のガスケットを組み合わせた型の中に注入し、加熱して硬化させる。この際、成形後の樹脂の取り出しを容易にするためにあらかじめモールドに離型処理をしたり、この組成物に離型剤を混合してもよい。重合温度は、使用する化合物により異なるが、一般には−20〜+150℃で、重合時間は0.5〜72時間程度である。重合後離型された注型成形体は、通常の分散染料を用いて、水もしくは有機溶媒中で容易に染色できる。この際さらに染色を容易にするために、染料分散液にキャリアーを加えてもよく、また加熱しても良い。
このようにして得られた光学製品の用途は限定されない。ここで、光学製品としては、例えば、プラスチックレンズ、光ファイバー、情報記録用基板、赤外線吸収フィルター、着色フィルターなどが挙げられ、プラスチックレンズとして特に好ましく用いられる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例で得られた化合物の物性及び応用例、応用比較例で得られた重合体からなる光学製品の物性は、以下に示す方法にしたがって測定した。
<スルフィド化合物の物性>
屈折率(nD)、アッベ数(νD ):カルニュー社製精密屈折率計KPR−200を用いて25℃にて測定した。
<重合体の物性>
(a)屈折率(nD )、アッベ数(νD ):上記と同様にして測定した。
(b)外観:肉眼により得られた重合体の透明性を観察した。
(c)耐熱性:リガク社製TMA装置により直径0.5mmのピンを用いて、98mN(10gf)の荷重でTMA測定を行ない、10℃/分の昇温で得られたチャートのピーク温度により評価した。
【0034】
実施例1
ビスエピチオエチルチオメタンの合成
(1)ビス(2−クロロ−1−アセトキシエチルチオ)メタンの合成
40%クロロアセトアルデヒド水溶液98g(0.50mol)、ジメルカプトメタン20g(0.25mol)、ジクロロメタン300mlを1000ml三口フラスコに入れ、−2℃に冷却した。無水硫酸マグネシウム50gを4回に分けて入れた後、ピリジン0.5gを加えた。18時間撹拌した後、有機層をろ過し、固体をジクロロメタン(50ml(3)で洗浄した。この濾液に無水酢酸76.4g(0.75mol)とピリジン59.2g(0.75mol)を加え、0℃で2時間撹拌した後、20℃で6時間熟成させた。反応終了後、溶液を水洗(150ml(2)し、2%硫酸水溶液で洗浄(150ml(2)した後、さらに水洗(150ml(2)した。溶液を濃縮するとビス(2−クロロ−1−アセトキシエチルチオ)メタン77g(96.0%)の黄色油状物質が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:6.10−6.20(2H,m,−SCHOAc),3.95−4.22(2H,m,−SCH2S−),3.75−3.90(4H,m,−CH2Cl),2.15(6H,s,−COCH3
(2)ビス(2−クロロ−1−チオアセトキシエチルチオ)メタンの合成
ビス(2−クロロ−1−アセトキシエチルチオ)メタン20g(0.062mol)とチオ酢酸11.4g(0.15mol)を100ml三口フラスコに入れ0℃に冷却した。ボロントリフルオロライド・エーテル溶液1.3g(0.01mol)をゆっくり滴下し、滴下終了後、24時間反応させた。反応終了後、反応液を冷水100mlに加え、ジクロロメタン(100ml(2)で抽出した。有機層を20%炭酸カリウム水溶液で洗浄して酢酸、チオ酢酸を除去した後、水洗し、中和した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮するとビス(2−クロロ−1−チオアセトキシエチルチオ)メタン21.2g(96.4%)のオレンジ油状物質が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:5.00−5.10(2H,m,−SCHSAc),3.80−4.00(6H,m,−SCH2S−,−CH2Cl),2.40(6H,s,−COCH3
(3)ビス(2−クロロ−1−メルカプトエチルチオ)メタンの合成
ビス(2−クロロ−1−チオアセトキシエチルチオ)メタン21.2g(0.060mol)に2%塩化水素メタノール溶液50mlを加え、24時間室温で反応させた。反応終了後、冷水100mlを加え、ジクロロメタン(50ml(2)で抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮するとビス(2−クロロ−1−メルカプトエチルチオ)メタン14.7g(90.7%)が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:4.35−4.45(2H,m,−SCHSH),4.12と4.14(各1H,s,−SCH2S−),3.90−4.00(4H,m,−CH2Cl),2.42と2.46(各1H,d,J=8.1Hz,−SH)
(4)ビスエピチオエチルチオメタンの合成
ビス(2−クロロ−1−メルカプトエチルチオ)メタン14.7gとジクロロメタン100mlと炭酸水素ナトリウム30gを200ml三口フラスコに入れた。23時間撹拌した後、無機物をろ過・除去し、濃縮すると生成物9gが得られた。カラム生成を行うと無色のビスエピチオエチルチオメタン1.70g(15.9%)が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:Isomer 1:4.21(2H,dd,J=6.2,5.1Hz,episulfide−CH),4.06(2H,s,−SCH2S−),2.88(2H,dd,J=6.2,1.6Hz,episulfide−CH2),2.66(2H,dd,J=5.1,1.6Hz,episulfide−CH2
(:Isomer 2:4.15(2H,dd,J=6.2,5.1Hz,episulfide−CH),4.12(1H,d,J=13.5Hz,−SCH2S−),4.02(1H,d,J=13.5Hz,−SCH2S−),2.83(2H,dd,J=6.2,1.6Hz,episulfide−CH2),2.61(2H,dd,J=5.1,1.6Hz,episulfide−CH2
この化合物の屈折率(nD)は1.681、アッベ数(νD)は31.0であった。
上記反応の経路を以下に示す。
【化13】

【0035】
実施例2
4,5−ビスエピチオエチルチオ−1,3−ジチオランの合成
(1)4,5−ビス(2−クロロ−1−アセトキシエチルチオ)−1,3−ジチオランの合成
40%クロロアセトアルデヒド水溶液39.2g(0.20mol)、4,5−ジメルカプト−1,3−ジチオラン17.0g(0.10mol)、ジクロロメタン200mlを1000ml三口フラスコに入れ、−2℃に冷却した。無水硫酸マグネシウム30gを4回に分けて入れた後、ピリジン0.5gを加えた。18時間撹拌した後、有機層をろ過し、固体をジクロロメタン(50ml(3)で洗浄した。この濾液に無水酢酸30.6g(0.30mol)とピリジン23.7g(0.30mol)を加え、0℃で2時間撹拌した後、20℃で6時間熟成させた。反応終了後、溶液を水洗(100ml(2)し、2%硫酸水溶液で洗浄(100ml(2)した後、さらに水洗(100ml(2)する。溶液を濃縮すると4,5−ビス(2−クロロ−1−アセトキシエチルチオ)−1,3−ジチオラン40.2g(97.8%)の黄色油状物質が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:6.05−6.30(2H,m,−SCHOAc),5.10−5.30(2H,m,−SCHOAc),4.04(2H,s,−SCH2S−),3.75−3.85(4H,m,−CH2Cl),2.18(6H,s,−COCH3
(2)4,5−ビス(2−クロロ−1−チオアセトキシエチルチオ)−1,3−ジチオランの合成
4,5−ビス(2−クロロ−1−アセトキシエチルチオ)−1,3−ジチオラン40.0g(0.097mol)とチオ酢酸17.8g(0.233mol)を100ml三口フラスコに入れ0℃に冷却した。ボロントリフルオロライド・エーテル溶液1.3g(0.01mol)をゆっくり滴下し、滴下終了後、24時間反応させた。反応終了後、反応液を冷水100mlに加え、ジクロロメタン(100ml(2)で抽出した。有機層を20%炭酸カリウム水溶液で洗浄して酢酸、チオ酢酸を除去した後、水洗し、中和した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮すると4,5−ビス(2−クロロ−1−チオアセトキシエチルチオ)−1,3−ジチオラン40.5g(94.0%)のオレンジ油状物質が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:4.90−5.10(4H,m,−SCHSAc,−SCHS−),4.05−4.10(2H,m,−SCH2S−),3.70−3.90(4H,m,−CH2Cl),2.41(6H,s,−COCH3
(3)4,5−ビス(2−クロロ−1−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジチオランの合成
4,5−ビス(2−クロロ−1−チオアセトキシエチルチオ)−1,3−ジチオラン40.0g(0.090mol)に2%塩化水素メタノール溶液60mlを加え、24時間室温で反応させた。反応終了後、冷水100mlを加え、ジクロロメタン(80ml(2)で抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮すると4,5−ビス(2−クロロ−1−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジチオラン29.0g(89.7%)が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:5.05−5.25(2H,m,−SCHS−),4.35−4.45(2H,m,−SCHSH),4.05−4.15(2H,m,−SCH2S−),3.8−4.0(4H,m,−CH2Cl),2.50と2.60(2H,m,−SH)
(4)4,5−ビスエピチオエチルチオ−1,3−ジチオランの合成
4,5−ビス(2−クロロ−1−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジチオラン18.0g(0.05mol)とジクロロメタン100mlと炭酸水素ナトリウム42.0g(0.5mol)を200ml三口フラスコに入れた。23時間撹拌した後、無機物をろ過・除去し、濃縮すると生成物12.1gが得られた。カラム生成を行うと無色の4,5−ビスエピチオエチルチオ−1,3−ジチオラン1.3g(9.1%)が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:5.00−5.20(2H,m,−SCHS−),4.10−4.35(2H,m,episulfide−CH),4.05−4.12(2H,m,−SCH2S−),2.70−2.90(2H,m,episulfide−CH2),2.40−2.60(2H,m,episulfide−CH2
この化合物の屈折率(nD)は1.713、アッベ数(νD)は31.0であった。
【0036】
実施例3
ビスエピチオエチルスルフィドの合成
(1)1−アセトキシ−1−(2−クロロ−1−メトキシエチルチオ)−2−クロロエタンの合成
1―メルカプト−1−メトキシ−2−クロロエタン6.20g(0.049mol)と、40%クロロアセトアルデヒド9.61g(0.049mol)とジクロロメタン100mlを1000mlフラスコに入れ、0℃に冷却した。無水硫酸マグネシウム20g、ついでピリジンを0.3g加え、20時間撹拌した。有機層を濾過し、固形物をジクロロメタン100mlで洗浄した。濾液に無水酢酸7.5g(0.073mol)とピリジン5.8g(0.073mol)を滴下し、0℃で2時間撹拌した後、20℃で8時間さらに撹拌した。反応終了後、溶液を水洗(100ml(2)、2%硫酸水溶液で中和(100ml(2)し、さらに水洗(100ml(2)した。有機層を濃縮すると黄色油状の生成物11.0g(90.9%)が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:(2 isomers):6.05−6.2(1H,m,−SCHOAc),4.76 and 4.89(1H,dd,−SCHOCH3−),3.75−3.9(4H,m,−CH2Cl),3.47 and 3.49(3H,s,OCH3),2.14(3H,s,−COCH3
(2)ビス(2−クロロ−1−チオアセトキシエチル)スルフィドの合成
1―アセトキシ−1−(2−クロロ−1−メトキシエチルチオ)−2−クロロエタン10.9g(0.044mol)と無水酢酸4.50g(0.044mol)とチオ酢酸6.70g(0.088mol)を250mlフラスコに入れ、0℃に冷却した。ボロントリフルオロライドエーテル溶液1.0g(0.007mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、18時間撹拌した。反応終了後、冷水100mlを加え、ジクロロメタン(100ml(2)で抽出した。有機層を20%炭酸カリウム水溶液で洗浄して酢酸とチオ酢酸を除去し、水洗し、中和した。無水硫酸マグネシウム10gを加え、水分を除去し、濃縮すると生成物11.2g(82.6%)が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:(2 isomers):5.00 and 4.91(2H,t,J=5.4Hz,−SCHSAc),3.85−3.90(4H,m,−CH2Cl),2.40(6H,−COCH3
(3)ビス(2−クロロ−1−メルカプトエチル)スルフィドの合成
ビス(2−クロロ−1−チオアセトキシエチル)スルフィド11.0gと2%塩化水素/メタノール溶液40mlを加え、5℃で48時間撹拌した。冷水100mlを加え、ジクロロメタン(100ml(2)で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を濃縮すると生成物6.3g(78.8%)が得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:4.4−4.5(2H,m,−SCHSH),3.75−3.9(4H,m,−CH2Cl),2.49 and 2.56(2H,d,J=8.0Hz,−SH)
(4)ビスエピチオエチルスルフィドの合成
500mlフラスコにビス(2−クロロ−1−メルカプトエチル)スルフィド6.3g(0.028mol)とジクロロメタン300mlと炭酸水素ナトリウム30gを加えた。室温で10時間撹拌した後、無機物を濾過し、濃縮すると生成物1.70g(40%)が得られた。NMRピークからジアステレオアイソマーが得られた。この化合物の構造特定のための1H−NMR(溶媒:CDCl3)の分析結果を以下に示す。
(:Isomer 1:4.13(2H,dd,J=6.0,5.3Hz,episulfide−CH),2.84(2H,dd,J=6.0,1.6Hz,episulfide−CH2),2.62(2H,dd,J=5.3,1.6Hz,episulfide−CH2
(:Isomer 2:4.10(2H,dd,J=6.0,5.3Hz,episulfide−CH),2.81(2H,dd,J=6.0 1.6Hz,episulfide−CH2),2.56(2H,dd,J=5.3,1.6Hz,episulfide−CH2
この化合物の屈折率(nD)は1.663、アッベ数(νD)は32.2であった。
上記反応の経路を以下に示す。
【化14】

【0037】
応用例1
重合体からなる光学製品の製造
実施例1で得られたビスエピチオエチルチオメタン0.05モルと重合触媒であるジシクロヘキシルメチルアミン5×10-5モルの混合物を均一に攪拌し、二枚のレンズ成形用ガラス型に注入し、50℃で10時間、その後60℃で5時間、さらに100℃で3時間加熱重合させてレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体の諸物性を第1表に示す。第1表から分かるように、得られた重合体は、透明で、屈折率(nD)は1.76、アッベ数(νD)も32と、高屈折率、低分散であり、耐熱性(95℃)に優れたものであった。従って、得られた重合体は光学製品として好適であった。
【0038】
応用例2
重合体からなる光学製品の製造
実施例2で得られた4,5−ビスエピチオエチルチオ−1,3−ジチオラン0.05モルと重合触媒であるジシクロヘキシルメチルアミン5×10-5モルの混合物を均一に攪拌し、二枚のレンズ成形用ガラス型に注入し、50℃で10時間、その後60℃で5時間、さらに100℃で3時間加熱重合させてレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体の諸物性を第1表に示す。第1表から分かるように、得られた重合体は、透明で、屈折率(nD)は1.77、アッベ数(νD)も31と、高屈折率、低分散であり、耐熱性(110℃)に優れたものであった。従って、得られた重合体は光学製品として好適であった。
【0039】
応用例3
重合体からなる光学製品の製造
実施例3で得られたビスエピチオエチルスルフィド0.05モルと重合触媒であるジシクロヘキシルメチルアミン5×10-5モルの混合物を均一に攪拌し、二枚のレンズ成形用ガラス型に注入し、50℃で10時間、その後60℃で5時間、さらに100℃で3時間加熱重合させてレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体の諸物性を第1表に示す。第1表から分かるように、得られた重合体は、透明で、屈折率(nD)は1.75、アッベ数(νD)も33と、高屈折率、低分散であり、耐熱性(100℃)に優れたものであった。従って、得られた重合体は光学製品として好適であった。
【0040】
応用比較例1
重合体からなる光学製品の製造
第1表に示すようにペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート(RM1)0.1モル、m−キシリレンジイソシアネート(RM2)0.2モル及びジブチルスズジクロライド1.0×10-4モルの混合物を均一に撹拌し、二枚のレンズ成形用ガラス型に注入し、50℃で10時間、その後60℃で5時間、さらに120℃で3時間加熱重合させてレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体の諸物性を第1表に示す。第1表から分かるように、得られた重合体は無色透明で光学歪みも観察されなかったが、nD/νDが1.59/36と屈折率が低く、耐熱性も86℃と劣っていた。
【0041】
応用比較例2及び応用比較例3
重合体からなる光学製品の製造
第1表に示した原料組成物を使用した以外は、応用比較例1と同様の操作を行ない、レンズ形状の重合体を得た。これらの重合体の諸物性を第1表に示す。第1表から分かるように、本応用比較例2の重合体はnD/νDが1.67/28といずれも低く、耐熱性(94℃)は比較的良好であるが、着色が見られ、光学歪が観察された。また、本応用比較例3の重合体は、νDが36と比較的高く、無色透明で光学歪は観察されなかったが、nDが1.70とそれほど高くなく、また、重合体は脆弱であった。
【0042】
【表1】

【0043】
第1表に示す略号は、下記のものを表す。
E1:ビスエピチオエチルチオメタン
E2:4,5−ビスエピチオエチルチオ−1,3−ジチオラン
E3:ビスエピチオエチルスルフィド
RM1:ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート
RM2:m−キシリレンジイソシアネート
RM3:1,3,5−トリメルカプトベンゼン
RM4:2,3−エピチオプロピルスルフィド
CT1:ジシクロヘキシルメチルアミン
CT2:ジブチルスズジクロライド
CT3:テトラ(n−ブチル)フォスフォニウムブロマイド
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のスルフィド化合物は、イオウ含有量が高く、一般式(1)で表されるような特定構造を有するため、屈折率及びアッベ数が高く、かつ耐熱性、透明性に優れた光学製品の原料として好適である。例えば、眼鏡レンズ,カメラレンズ等のレンズ、プリズム、光ファイバー、光ディスク、磁気ディスク等に用いられる情報記録媒体基板、着色フィルター、赤外線吸収フィルター等の光学製品の原料として好適である。
また、本発明の製造方法は、チオール化合物とハロアセトアルデヒドを出発原料とすることにより一般式(1)で表されるスルフィド化合物を効率良く製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(式中、R1は、炭素数1〜7のアルカン残基、炭素数2〜4のチアアルカン残基、炭素数4〜7のシクロアルカン残基、ヘテロ原子が酸素、窒素もしくは硫黄原子である炭素数3〜7のヘテロ環式化合物残基又は炭素数6〜10の芳香族化合物残基を示し、各残基は置換基を有していてもよく、nは0又は1を示す)で表されるスルフィド化合物。
【請求項2】
下記一般式(2):
【化2】

(式中、R1は前記と同様)で表される請求項1に記載のスルフィド化合物。
【請求項3】
下記一般式(3):
【化3】

で表される請求項1に記載のスルフィド化合物。
【請求項4】
(a)下記一般式(4):
XCH2CHO (4)
(式中、Xはハロゲン原子を示す)で表されるハロアセトアルデヒドと、下記一般式(5):
1(SH)2 (5)
(式中、R1は前記と同様である)で表されるポリチオール化合物とを反応させ、得られた生成物をアシル化して下記一般式(6):
【化4】

(式中、R1及びXは前記と同様であり、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるジアシルオキシ化合物を得る工程;
(b)該ジアシルオキシ化合物を下記一般式(7):
【化5】

(式中、R1及びXは前記と同様であり、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるジアシルチオ化合物にする工程;
(c)該ジアシルチオ化合物を下記一般式(8):
【化6】

(式中、R1及びXは前記と同様)で表されるジチオール化合物にする工程;及び
(d)該ジチオール化合物の1−メルカプト−2−ハロエチル基をエピスルフィド化する工程
を含む請求項2に記載のスルフィド化合物の製造方法。
【請求項5】
(a)下記一般式(4):
XCH2CHO (4)
(式中、Xはハロゲン原子を示す)で表されるハロアセトアルデヒドと、下記一般式(9):
【化7】

(式中、R4は炭素数1〜6のアルキル基を示し、X2はハロゲン原子を示す)で表されるチオール化合物とを反応させ、得られた生成物をアシル化して下記一般式(10):
【化8】

(式中、R4、X及びX2は前記と同様であり、R5は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるアルコキシアシルオキシ化合物を得る工程;
(b)該アルコキシアシルオキシ化合物を下記一般式(11):
【化9】

(式中、X及びX2は前記と同様であり、R6は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるジアシルチオ化合物にする工程;
(c)該ジアシルチオ化合物を下記一般式(12):
【化10】

(式中、X及びX2は前記と同様)で表されるジチオール化合物にする工程;及び
(d)該ジチオール化合物の1−メルカプト−2−ハロエチル基をエピスルフィド化する工程
を含む請求項3に記載のスルフィド化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ハロアセトアルデヒドがクロロアセトアルデヒドである請求項4又は5に記載のスルフィド化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のスルフィド化合物の少なくとも1種を重合して得られた重合体を含有する光学製品。

【公開番号】特開2007−91613(P2007−91613A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280843(P2005−280843)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】