説明

スルホニウム化合物及びその製造方法、並びにスルホニウムボレート錯体及びその製造方法

【課題】スルホニウムボレート錯体を効率的に得るために用いることができるスルホニウム化合物、並びにスルホニウム化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るスルホニウム化合物は、下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とを反応させることにより得られる。下記式(1)中、R1は、アリール基又はナフチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。下記式(2)中、R2は、ヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、nは1〜3の整数を表す。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホニウムボレート錯体を効率的に得るために用いることができるスルホニウム化合物及び該スルホニウム化合物の製造方法に関する。また、本発明は、上記スルホニウム化合物を用いたスルホニウムボレート錯体及び該スルホニウムボレート錯体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物などの硬化性化合物を含む硬化性組成物は、例えば、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、ICチップとITO電極を有する回路基板との接続、並びにITO電極を有する回路基板とフレキシブルプリント回路基板との接続等に使用されている。
【0003】
上記硬化性組成物では、硬化性化合物を硬化させるために、様々な硬化剤が用いられている。上記硬化剤として、光によりプロトンを発生してカチオン重合を開始させる光カチオン重合開始剤が知られている。従来、光カチオン重合開始剤としては、スルホニウムアンチモネート錯体が広く用いられている。
【0004】
しかし、スルホニウムアンチモネート錯体は、フッ素原子が金属であるアンチモン原子に結合しているSbFをカウンターアニオンとして有するため、カチオン重合時にフッ素イオンを多量に発生させ、金属配線及び接続パッドを腐食させるという問題がある。このため、近年、SbFにかえて、フッ素原子が炭素原子に結合しており、かつホウ素原子を有するカウンターアニオンを有するスルホニウムボレート錯体が、カチオン重合開始剤として用いられてきている。
【0005】
例えば、下記の特許文献1には、下記式(X1)で表されるスルホニウムカチオン部分と、下記式(X2)で表されるボレートアニオン部分とを有するスルホニウムボレート錯体が開示されている。
【0006】
【化1】

【0007】
上記式(X1)中、R1はベンジル基、置換されたベンジル基、フェナシル基、置換されたフェナシル基、アリル基、置換されたアリル基、アルコキシル基、置換されたアルコキシル基、アリールオキシ基又は置換されたアリールオキシ基を表す。R2及びR3はそれぞれ、R1を構成できる基と同じ基を表すか、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表すか、又は炭素数6〜18の単環又は縮合多環のアリール基を表す。R1とR2、R1とR3、R2とR3は相互に結合した環状構造であってもよい。上記炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基と、上記炭素数6〜18の単環又は縮合多環のアリール基とは、フッ素、塩素、臭素、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基又はアジド基で置換されていてもよい。
【0008】
【化2】

【0009】
上記式(X2)中、Yはフッ素又は塩素を表し、Zは少なくとも2つ以上のフッ素、シアノ基、ニトロ基及びトリフルオロメチル基の中から選ばれる電子吸引性基で置換されたフェニル基を表し、mは0〜3の整数を表し、nは1〜4の整数を表し、m+n=4である。
【0010】
また、上記式(X1)で表されるスルホニウムカチオン部分と上記式(X2)で表されるボレートアニオン部分とを有するスルホニウムボレート錯体として、下記式(X3)で表されるp−ヒドロキシフェニル−ベンジル−メチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが市販されている。
【0011】
【化3】

【0012】
特許文献1では、例えば、蒸留水中で反応を行い、下記反応式(Y3)により、上記式(X3)で表されるスルホニウムボレート錯体を得る方法が記載又は示唆されている。
【0013】
【化4】

【0014】
上記式(Y3)中、Xは臭素原子又は塩素原子を表す。
【0015】
また、下記の特許文献2には、下記式(X4)で表されるスルホニウムボレート錯体が開示されている。
【0016】
【化5】

【0017】
上記式(X4)中、R1はアラルキル基を表し、R2は低級アルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。但し、R2がメチル基であるとき、R1はベンジル基ではない。
【0018】
特許文献2では、スルホニウムアンチモネート錯体を用いて、酢酸エチル等の有機溶媒中で反応を行い、下記反応式(Y4)により上記式(X4)で表されるスルホニウムボレート錯体を得る方法が記載されている。
【0019】
【化6】

【0020】
上記式(Y4)中、R1、R2、X及びnは、上記式(X4)中のR1、R2、X及びnと同様である。
【0021】
下記の特許文献3には、下記式(X5)で表されるスルホニウムボレート錯体が開示されている。
【0022】
【化7】

【0023】
上記式(X5)中、R1はアラルキル基を表し、R2は低級アルキル基を表し、R3は低級アルコキシカルボキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。
【0024】
特許文献3では、スルホニウムアンチモネート錯体を用いて、酢酸エチル等の有機溶媒中で反応を行い、下記反応式(Y5)により上記式(X5)で表されるスルホニウムボレート錯体を得る方法が記載されている。
【0025】
【化8】

【0026】
上記式(Y5)中、R1、R2、R3、X及びnは、上記式(X5)中のR1、R2、R3、X及びnと同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開平9−176112号公報
【特許文献2】WO2008/152843A1
【特許文献3】WO2010/064648A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
特許文献1〜3に記載されたスルホニウムボレート錯体を得る方法では、スルホニウムボレート錯体を効率的に得ることができず、得られるスルホニウムボレート錯体の収率が低いという問題がある。また、特許文献2,3に記載されたスルホニウムボレート錯体を得る方法では、スルホニウムアンチモネート錯体を用いるため、得られるスルホニウムボレート錯体において、微量のアンチモン原子が残留することがある。得られるスルホニウムボレート錯体においてアンチモン原子が含まれていると、スルホニウムボレート錯体を含む硬化性組成物の硬化性が低くなったり、該硬化性組成物の硬化物により金属配線の腐食が生じたりするという問題がある。
【0029】
本発明の目的は、スルホニウムボレート錯体を効率的に得るために用いることができるスルホニウム化合物及び該スルホニウム化合物の製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、上記スルホニウム化合物が用いられており、硬化剤として用いることができるスルホニウムボレート錯体及び該スルホニウムボレート錯体の製造方法を提供することである。
【0030】
本発明の限定的な目的は、金属の腐食を抑制できるスルホニウムボレート錯体及び該スルホニウムボレート錯体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の広い局面によれば、下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とを反応させることにより得られる、スルホニウム化合物が提供される。
【0032】
【化9】

【0033】
上記式(1)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0034】
【化10】

【0035】
上記式(2)中、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、nは1〜3の整数を表す。
【0036】
本発明に係るスルホニウム化合物のある特定の局面では、上記式(1)で表される化合物は、下記式(11)で表される化合物と、金属マグネシウムとを反応させることにより得られる。
【0037】
【化11】

【0038】
上記式(11)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0039】
また、本発明の広い局面によれば、上記式(1)で表される化合物と、上記式(2)で表される化合物とを反応させることにより、スルホニウム化合物を得る工程を備える、スルホニウム化合物の製造方法が提供される。
【0040】
本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法のある特定の局面では、上記式(11)で表される化合物と、金属マグネシウムとを反応させることにより、上記式(1)で表される化合物を得る工程が更に備えられる。
【0041】
本発明に係るスルホニウムボレート錯体は、本発明に係るスルホニウム化合物又は本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法により得られたスルホニウム化合物と、下記式(21)で表されるアニオン部分を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【0042】
【化12】

【0043】
上記式(21)中、Xはハロゲン原子を表す。
【0044】
本発明に係るスルホニウムボレート錯体の製造方法は、本発明に係るスルホニウム化合物又は本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法により得られたスルホニウム化合物と、上記式(21)で表されるアニオン部分を有する化合物とを反応させることにより、スルホニウムボレート錯体を得る工程を備える。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係るスルホニウム化合物は、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物とを反応させることにより得られるので、本発明に係るスルホニウム化合物をボレート化合物と反応させることで、スルホニウムボレート錯体を効率的に得ることができる。
【0046】
本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法は、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物とを反応させることにより、スルホニウム化合物を得る工程を備えるので、スルホニウム化合物を効率的に得ることができる。このため、本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法により得られたスルホニウム化合物をボレート化合物と反応させることで、スルホニウムボレート錯体を効率的に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0048】
本発明に係るスルホニウム化合物は、下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とを反応させることにより得られている。
【0049】
【化13】

【0050】
上記式(1)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0051】
【化14】

【0052】
上記式(2)中、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、nは1〜3の整数を表す。
【0053】
本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法は、上記式(1)で表される化合物と、上記式(2)で表される化合物とを反応させることにより、スルホニウム化合物を得る工程を備える。
【0054】
本発明に係るスルホニウム化合物及び本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法では、グリニャール反応を利用している。
【0055】
従来、スルホニウムボレート錯体を得る際に、上記反応式(Y3)のように、グリニャール反応を利用せずに、蒸留水中で反応が行われていた。また、スルホニウムボレート錯体を得る際に、上記反応式(Y4)及び上記反応式(Y5)のように、スルホニウムアンチモネート錯体を用いて、酢酸エチル等の有機溶媒中で反応が行われていた。また、スルホニウムアンチモネート錯体を用いて、水中で反応が行われることもあった。しかしながら、従来のスルホニウムボレート錯体の製造方法では、スルホニウムボレート錯体を効率的に得ることができず、収率が悪いという問題があった。また、未反応のスルホニウムアンチモネート錯体が残留しやすいという問題もあった。
【0056】
これに対して、本発明では、グリニャール反応を利用しているので、スルホニウム化合物を効率的に、収率よく得ることができる。このため、該スルホニウム化合物を用いて、スルホニウムボレート錯体を効率的に、収率よく得ることができる。
【0057】
本発明に係るスルホニウム化合物を得るために、並びに本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法では、アンチモン原子を有する化合物を用いないことが好ましい。さらに、後述する本発明に係るスルホニウムボレート錯体を得るために、並びに本発明に係るスルホニウムボレート錯体の製造方法では、アンチモン原子を有する化合物を用いないことが好ましい。アンチモン原子を有する化合物を用いない場合には、スルホニウムボレート錯体を用いた硬化性組成物の硬化性を高めることができ、更に金属の腐食を抑制できる。
【0058】
上記式(1)中のXは、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。上記式(1)中のR1の好ましい例としては、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等が挙げられる。スルホニウムボレート錯体をより一層効率的に得る観点からは、上記式(1)中のR1は、フェニル基、o−メチルフェニル基又は1−ナフチル基であることが好ましい。但し、上記R1はこれら以外の基であってもよい。スルホニウムボレート錯体をより一層効率的に得る観点からは、上記式(1)で表される化合物は、下記式(1A)又は下記式(1B)で表される化合物であることが好ましい。
【0059】
【化15】

【0060】
上記式(1A)中、R1aは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、mは0又は1を表す。スルホニウムボレート錯体をより一層効率的に得る観点からは、R1aは、メチル基であることが好ましい。mは、R1が存在しないように0であることが好ましい。上記式(1A)中のXの好ましい基は、上記式(1)中のXの好ましい基と同様である。なお、R1aのベンゼン環に対する結合部位は特に限定されない。スルホニウムボレート錯体をより一層効率的に得る観点からは、R1aは、CHMgX基に対して、オルト位に結合していることが好ましい。
【0061】
【化16】

【0062】
上記式(1B)中、Xはハロゲン原子を表す。上記式(1B)中のXの好ましい基は、上記式(1)中のXと同様である。
【0063】
上記式(2)において、R2のベンゼン環に対する結合部位は特に限定されない。スルホニウムボレート錯体をより一層効率的に得る観点からは、R2は、S−CH基に対して、パラ位に結合していることが好ましい。上記式(2)におけるCHOCOO基は、メトキシカルボニルオキシ基である。スルホニウムボレート錯体をより一層効率的に得る観点からは、上記式(2)中のR2は、ヒドロキシ基であることが好ましい。スルホニウムボレート錯体をより一層効率的に得る観点からは、上記式(2)中のnは、1であることが好ましい。
【0064】
本発明に係るスルホニウム化合物及び本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法により得られるスルホニウム化合物は、下記式(31)で表されるカチオン部分を有する化合物であることが好ましく、下記式(32)で表される化合物であることがより好ましい。
【0065】
【化17】

【0066】
上記式(31)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、nは1〜3の整数を表す。上記式(31)中のR1、R2及びnは、上記式(1)及び上記式(2)中のR1、R2及びnに由来する。上記式(31)中のR1、R2及びnの好ましい基及び数は、上記式(1)及び上記式(2)中のR1、R2及びnの好ましい基及び数と同様である。
【0067】
【化18】

【0068】
上記式(32)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。上記式(32)中のR1、R2、X及びnは、上記式(1)及び上記式(2)中のR1、R2、X及びnに由来する。上記式(32)中のR1、R2、X及びnの好ましい基及び数は、上記式(1)及び上記式(2)中のR1、R2、X及びnの好ましい基及び数と同様である。
【0069】
上記式(31)で表されるカチオン部分を有する化合物は、下記式(31A)又は下記式(31B)で表されるカチオン部分を有する化合物であることが好ましい。上記式(32)で表される化合物は、下記式(32A)又は下記式(32B)で表される化合物であることが好ましい。
【0070】
【化19】

【0071】
上記式(31A)中、R1aは炭素数1〜4のアルキル基を表し、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、mは0又は1を表し、nは1〜3の整数を表す。上記式(31A)中のR1a、R2、m及びnは、上記式(1A)及び上記式(2)中のR1a、R2、m及びnに由来する。上記式(31A)中のR1a、R2、m及びnの好ましい基及び数は、上記式(1A)及び上記式(2)中のR1a、R2、m及びnの好ましい基及び数と同様である。
【0072】
【化20】

【0073】
上記式(31B)中、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、nは1〜3の整数を表す。上記式(31B)中のR2及びnは、上記式(2)中のR2及びnに由来する。上記式(31B)中のR2及びnの好ましい基及び数は、上記式(2)中のR2及びnの好ましい基及び数と同様である。
【0074】
【化21】

【0075】
上記式(32A)中、R1aは炭素数1〜4のアルキル基を表し、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、Xはハロゲン原子を表し、mは0又は1を表し、nは1〜3の整数を表す。上記式(32A)中のR1a、R2、X、m及びnは、上記式(1A)及び上記式(2)中のR1a、R2、X、m及びnに由来する。上記式(32A)中のR1a、R2、X、m及びnの好ましい基及び数は、上記式(1A)及び上記式(2)中のR1a、R2、X、m及びnの好ましい基及び数と同様である。
【0076】
【化22】

【0077】
上記式(32B)中、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。上記式(32B)中のR2、X及びnは、上記式(1B)及び上記式(2)中のR2、X及びnに由来する。上記式(32B)中のR2、X及びnの好ましい基及び数は、上記式(1B)及び上記式(2)中のR2、X及びnの好ましい基及び数と同様である。
【0078】
本発明に係るスルホニウム化合物では、上記式(1)で表される化合物は、下記式(11)で表される化合物と、金属マグネシウムとを反応させることにより得られていることが好ましい。この反応では、上記式(1)で表される化合物が容易に得られる。従って、本発明に係るスルホニウム化合物は、下記式(11)で表される化合物と金属マグネシウムとを反応させることにより得られた上記式(1)で表される化合物と、上記式(2)で表される化合物とを反応させることにより得られていることが好ましい。
【0079】
【化23】

【0080】
上記式(11)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。上記式(1)中のR1及びXの好ましい基は、上記式(1)中のR1及びXの好ましい基と同様である。
【0081】
本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法は、上記式(11)で表される化合物と、金属マグネシウムとを反応させることにより、上記式(1)で表される化合物を得る工程を更に備えることが好ましい。この工程では、上記式(1)で表される化合物が容易に得られる。従って、本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法は、上記式(11)で表される化合物と、金属マグネシウムとを反応させることにより、上記式(1)で表される化合物を得る工程と、上記式(1)で表される化合物と、上記式(2)で表される化合物とを反応させることにより、スルホニウム化合物を得る工程とを備えることが好ましい。
【0082】
上記式(11)中のXは、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。上記式(11)中のR1の好ましい例としては、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等が挙げられる。上記式(11)中のR1は、フェニル基、o−メチルフェニル基又は1−ナフチル基であることが好ましい。但し、上記R1はこれら以外の基であってもよい。上記式(11)で表される化合物は、下記式(11A)又は下記式(11B)で表される化合物であることが好ましい。
【0083】
【化24】

【0084】
上記式(11A)中、R1aは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、mは0又は1を表す。上記式(11A)中のR1aは、メチル基であることが好ましい。上記式(11A)中のmは、R1が存在しないように0であることが好ましい。上記式(11A)中のXは塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。なお、R1aのベンゼン環に対する結合部位は特に限定されない。R1aは、CHX基に対して、オルト位に結合していることが好ましい。
【0085】
【化25】

【0086】
上記式(11B)中、Xはハロゲン原子を表す。上記式(11B)中のXは塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0087】
本発明に係るスルホニウム化合物及び本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法により得られたスルホニウム化合物は、スルホニウムボレート錯体を得るためのスルホニウム化合物であることが好ましい。本発明に係るスルホニウム化合物は、ボレート化合物と反応させてスルホニウムボレート錯体を得るためのスルホニウム化合物であることが好ましい。
【0088】
スルホニウムボレート錯体をより一層効率的に得る観点からは、上記ボレート化合物は、下記式(21)で表されるアニオン部分を有する化合物又はテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオンを有する化合物であることが好ましく、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する化合物又はテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオンを有する化合物であることが好ましく、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する化合物であることがより好ましい。上記ボレート化合物のカチオン部分は、リチウムカチオン又はナトリウムカチオンであることが好ましく、ナトリウムカチオンであることがより好ましい。
【0089】
【化26】

【0090】
上記式(21)中、Xはハロゲン原子を表す。上記式(21)中のXは、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0091】
本発明に係るスルホニウムボレート錯体は、本発明に係るスルホニウム化合物又は本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法により得られたスルホニウム化合物と、上記式(21)で表されるアニオン部分を有する化合物とを反応させることにより得られていることが好ましい。また、本発明に係るスルホニウムボレート錯体の製造方法は、本発明に係るスルホニウム化合物又は本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法により得られたスルホニウム化合物と、上記式(21)で表されるアニオン部分を有する化合物とを反応させることにより、スルホニウムボレート錯体を得る工程を備えることが好ましい。
【0092】
本発明に係るスルホニウムボレート錯体及び本発明に係るスルホニウムボレート錯体の製造方法では、本発明に係るスルホニウム化合物及び本発明に係るスルホニウム化合物の製造方法により得られたスルホニウム化合物を用いているので、スルホニウムボレート錯体を効率的に、収率よく得ることができる。
【0093】
本発明に係るスルホニウムボレート錯体及び本発明に係るスルホニウムボレート錯体の製造方法により得られたスルホニウムボレート錯体は、下記式(41)で表されるスルホニウムボレート錯体であることが好ましい。
【0094】
【化27】

【0095】
上記式(41)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。上記式(41)中のR1、R2及びnは、上記式(1)及び上記式(2)中のR1、R2及びnに由来する。上記式(41)中のR1、R2及びnの好ましい基及び数は、上記式(1)及び上記式(2)中のR1、R2及びnの好ましい基及び数と同様である。上記式(41)中のXは、上記式(21)中のXに由来する。上記式(41)中のXの好ましい基は、上記式(21)中のXの好ましい基と同様である。
【0096】
スルホニウムボレート錯体をより一層効率的に得る観点からは、上記式(41)で表されるスルホニウムボレート錯体は、下記式(41A)又は下記式(41B)で表されるスルホニウムボレート錯体であることが好ましい。
【0097】
【化28】

【0098】
上記式(41A)中、R1aは炭素数1〜4のアルキル基を表し、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、Xはハロゲン原子を表し、mは0又は1を表し、nは1〜3の整数を表す。上記式(41A)中のR1a、R2、m及びnは、上記式(1A)及び上記式(2)中のR1、R2、m及びnに由来する。上記式(41A)中のR1a、R2、m及びnの好ましい基及び数は、上記式(1A)及び上記式(2)中のR1、R2、m及びnの好ましい基及び数と同様である。上記式(41A)中のXは、上記式(21)中のXに由来する。上記式(41A)中のXの好ましい基は、上記式(21)中のXの好ましい基と同様である。
【0099】
【化29】

【0100】
上記式(41B)中、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。上記式(41B)中のR2及びnは、上記式(1B)及び上記式(2)中のR2及びnに由来する。上記式(41B)中のR2及びnの好ましい基及び数は、上記式(1B)及び上記式(2)中のR2及びnの好ましい基及び数と同様である。上記式(41B)中のXは、上記式(21)中のXに由来する。上記式(41B)中のXの好ましい基は、上記式(21)中のXの好ましい基と同様である。
【0101】
上記スルホニウムボレート錯体は、カチオン重合開始剤として好適に用いられる。硬化性組成物は、硬化性化合物と、上記カチオン重合開始剤とを含むことが好ましい。上記硬化性組成物は、導電性粒子をさらに含むことが好ましい。導電性粒子を含む硬化性組成物は、異方性導電材料であることが好ましい。上記硬化性組成物は、光の照射又は加熱により硬化可能である。上記硬化性組成物は光の照射により硬化させてもよく、加熱により硬化させてもよく、光の照射と加熱とにより硬化させてもよい。
【0102】
上記異方性導電材料は、ペースト状である異方性導電ペーストであってもよく、フィルム状である異方性導電フィルムであってもよい。上記異方性導電材料は、異方性導電ペーストであることが好ましい。
【0103】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0104】
(実施例1)
(1)グリニャール試薬の合成
金属マグネシウム14重量部にテトラヒドロピラン10重量部を添加し、1,2−ジブロモエタン0.6重量部を更に添加して金属マグネシウムを活性化させた。次に、1−(クロロメチル)ナフタレン10重量部を滴下して、20℃で撹拌し、反応させた。ろ過により残留しているマグネシウムを除去した。このようにして、下記反応式(A−1)により、グリニャール試薬である(1−ナフチル)メチルマグネシウムクロリドを合成した。
【0105】
【化30】

【0106】
(2)スルホニウム化合物の合成
得られた(1−ナフチル)メチルマグネシウムクロリド(分子量201.0)10重量部に、4−(メチルチオ)フェノール(分子量140.2)6.975重量部を添加し、20℃で24時間撹拌し、結晶物を析出させた。結晶物を取り出し、洗浄した。このようにして、下記反応式(B−1)により、スルホニウム化合物(B1)(スルホニウム塩)を合成した。用いた(1−ナフチル)メチルマグネシウムクロリドに対して、得られたスルホニウム化合物(B1)の収率は97%であった。
【0107】
【化31】

【0108】
(3)スルホニウムボレート錯体の合成
得られたスルホニウム化合物(B1)10重量部に酢酸エチル100重量部を添加し、テトラフルオロフェニルボレートナトリウムを10重量%含む水溶液150重量部を更に添加して、20℃で30分間撹拌した。分液操作により酢酸エチル層を取り出し、水洗した後、エバポレーターで濃縮した。このようにして、下記反応式(C−1)により、スルホニウムボレート錯体(C1)を得た。
【0109】
【化32】

【0110】
(4)硬化性組成物の調製
硬化性化合物であるEBECRYL3702(ダイセルサイテック社製「エポキシアクリレート」)5重量部と、得られたスルホニウムボレート錯体(C1)4重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)20重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、硬化性組成物(異方性導電ペースト)を得た。
【0111】
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0112】
(実施例2)
(1)グリニャール試薬の合成
金属マグネシウム14重量部にテトラヒドロピラン10重量部を添加し、1,2−ジブロモエタン0.6重量部を更に添加して金属マグネシウムを活性化させた。次に、1−(クロロメチル)ベンゼン10重量部を滴下して、15℃で撹拌し、反応させた。ろ過により残留しているマグネシウムを除去した。このようにして、下記反応式(A−2)により、グリニャール試薬であるベンジルマグネシウムクロリドを合成した。
【0113】
【化33】

【0114】
(2)スルホニウム化合物の合成
得られたベンジルマグネシウムクロリド(分子量150.9)10重量部に、4−(メチルチオ)フェノール(分子量140.2)9.3重量部を添加し、15℃で24時間撹拌し、結晶物を析出させた。結晶物を取り出し、洗浄した。このようにして、下記反応式(B−2)により、スルホニウム化合物(B2)(スルホニウム塩)を合成した。用いたベンジルマグネシウムクロリドに対して、得られたスルホニウム化合物(B2)の収率は95%であった。
【0115】
【化34】

【0116】
(3)スルホニウムボレート錯体の合成
得られたスルホニウム化合物(B2)10重量部に酢酸エチル100重量部を添加し、テトラフルオロフェニルボレートナトリウムを10重量%含む水溶液150重量部を更に添加して、23℃で30分間撹拌した。分液操作により酢酸エチル層を取り出し、水洗した後、エバポレーターで濃縮した。このようにして、下記反応式(C−2)により、スルホニウムボレート錯体(C2)を得た。
【0117】
【化35】

【0118】
(4)硬化性組成物の調製
スルホニウムボレート錯体(C1)を、得られたスルホニウムボレート錯体(C2)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0119】
(実施例3)
(1)グリニャール試薬の合成
金属マグネシウム14重量部にテトラヒドロピラン10重量部を添加し、1,2−ジブロモエタン0.6重量部を更に添加して金属マグネシウムを活性化させた。次に、1−(クロロメチル)−2−メチルベンゼン10重量部を滴下して、10℃で撹拌し、反応させた。ろ過により残留しているマグネシウムを除去した。このようにして、下記反応式(A−3)により、グリニャール試薬である2−メチルベンジルマグネシウムクロリドを合成した。
【0120】
【化36】

【0121】
(2)スルホニウム化合物の合成
得られた2−メチルベンジルマグネシウムクロリド(分子量164.9)10重量部に、4−(メチルチオ)フェノール(分子量140.2)8.5重量部を添加し、10℃で24時間撹拌し、結晶物を析出させた。結晶物を取り出し、洗浄した。このようにして、下記反応式(B−3)により、スルホニウム化合物(B3)(スルホニウム塩)を合成した。用いた2−メチルベンジルマグネシウムクロリドに対して、得られたスルホニウム化合物(B3)の収率は96%であった。
【0122】
【化37】

【0123】
(3)スルホニウムボレート錯体の合成
得られたスルホニウム化合物(B3)10重量部に酢酸エチル100重量部を添加し、テトラフルオロフェニルボレートナトリウムを10重量%含む水溶液150重量部を更に添加して、23℃で30分間撹拌した。分液操作により酢酸エチル層を取り出し、水洗した後、エバポレーターで濃縮した。このようにして、下記反応式(C−3)により、スルホニウムボレート錯体(C3)を得た。
【0124】
【化38】

【0125】
(4)硬化性組成物の調製
スルホニウムボレート錯体(C1)を、得られたスルホニウムボレート錯体(C3)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0126】
(実施例4)
(1)スルホニウム化合物の合成
実施例1で得られた(1−ナフチル)メチルマグネシウムクロリド(分子量201.0)10重量部に、4−(メトキシカルボニルオキシ)フェニルメチルスルフィド(分子量198.2)9.9重量部を添加し、23℃で24時間撹拌し、結晶物を析出させた。結晶物を取り出し、洗浄した。このようにして、下記反応式(B−4)により、スルホニウム化合物(B4)(スルホニウム塩)を合成した。用いた(1−ナフチル)メチルマグネシウムクロリドに対して、得られたスルホニウム化合物(B4)の収率は97%であった。
【0127】
【化39】

【0128】
(2)スルホニウムボレート錯体の合成
得られたスルホニウム化合物(B4)10重量部に酢酸エチル100重量部を添加し、テトラフルオロフェニルボレートナトリウムを10重量%含む水溶液150重量部を更に添加して、23℃で30分間撹拌した。分液操作により酢酸エチル層を取り出し、水洗した後、エバポレーターで濃縮した。このようにして、下記反応式(C−4)により、スルホニウムボレート錯体(C4)を得た。
【0129】
【化40】

【0130】
(3)硬化性組成物の調製
スルホニウムボレート錯体(C1)を、得られたスルホニウムボレート錯体(C4)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0131】
(比較例1)
水中で1−(クロロメチル)ナフタレン(分子量176.6)10重量部に、4−(メチルチオ)フェノール(分子量140.2)7.95重量部を添加し、23℃で24時間撹拌し、結晶物を析出させた。結晶物を取り出し、洗浄した。このようにして、スルホニウム化合物(スルホニウム塩)を合成した。用いた1−(クロロメチル)ナフタレンに対して、得られたスルホニウム化合物の収率は32%であった。
【0132】
(比較例2)
水中で1−(クロロメチル)ベンゼン(分子量126.6)10重量部に、4−(メチルチオ)フェノール(分子量140.2)11.1重量部を添加し、23℃で24時間撹拌し、結晶物を析出させた。結晶物を取り出し、洗浄した。このようにして、スルホニウム化合物(スルホニウム塩)を合成した。用いた1−(クロロメチル)ベンゼンに対して、得られたスルホニウム化合物の収率は29%であった。
【0133】
(比較例3)
水中で1−(クロロメチル)−2−メチルベンゼン(分子量140.6)10重量部に、4−(メチルチオ)フェノール(分子量140.2)10重量部を添加し、23℃で24時間撹拌し、結晶物を析出させた。結晶物を取り出し、洗浄した。このようにして、スルホニウム化合物(B3)(スルホニウム塩)を合成した。用いた1−(クロロメチル)−2−メチルベンゼンに対して、得られたスルホニウム化合物の収率は28%であった。
【0134】
(比較例4)
純水中で1−(クロロメチル)ナフタレン(分子量176.6)10重量部に、4−(メトキシカルボニルオキシ)フェニルメチルスルフィド(分子量198.2)11.23重量部を添加し、23℃で24時間撹拌し、結晶物を析出させた。結晶物を取り出し、洗浄した。このようにして、スルホニウム化合物(スルホニウム塩)を合成した。用いた1−(クロロメチル)ナフタレンに対して、得られたスルホニウム化合物の収率は25%であった。
【0135】
(比較例5)
下記式(101)で表されるスルホニウムアンチモネート錯体に酢酸エチル100重量部を添加し、テトラフルオロフェニルボレートナトリウムを10重量%含む水溶液150重量部を更に添加して、23℃で30分間撹拌した。分液操作により酢酸エチル層を取り出し、水洗した後、エバポレーターで濃縮した。このようにして、スルホニウムボレート錯体(Z1)を得た。
【0136】
【化41】

【0137】
スルホニウムボレート錯体(C1)を、得られたスルホニウムボレート錯体(Z1)に変更したこと以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0138】
(実施例1〜4及び比較例5の評価)
金属の腐食性:
L/Sが20μm/20μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが20μm/20μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0139】
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ20μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が互いに対向し、接続するように積層した。その後、異方性導電ペースト層に420nmの紫外線を光照射強度が60mW/cmとなるように照射して、異方性導電ペースト層を半硬化させた後に150℃で加熱して硬化させ、接続構造体を得た。
【0140】
得られた接続構造体を85℃で湿度85%の条件で20日間保管した。保管後の銅電極の表面に腐食が生じているか否かを評価した。銅電極に腐食が生じていない場合を「○」、導通不良が生じない程度に銅電極に部分的に腐食が生じている場合を「△」、導通不良が生じる程度に銅電極に腐食が生じている場合を「×」と判定した。
【0141】
その結果、実施例1〜4の硬化性組成物を用いた接続構造体では、金属の腐食性の評価結果は「○」であった。比較例5の硬化性組成物を用いた接続構造体では、金属の腐食性の評価結果は「×」であった。比較例5で金属の腐食性の評価結果が悪かった理由としては、スルホニウムボレート錯体を得た後に、該スルホニウムボレート錯体中にスルホニウムアンチモネート錯体が残留していたことなどが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とを反応させることにより得られる、スルホニウム化合物。
【化1】

前記式(1)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【化2】

前記式(2)中、R2はヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、nは1〜3の整数を表す。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(11)で表される化合物と、金属マグネシウムとを反応させることにより得られる、請求項1に記載のスルホニウム化合物。
【化3】

前記式(11)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【請求項3】
下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とを反応させることにより、スルホニウム化合物を得る工程を備える、スルホニウム化合物の製造方法。
【化4】

前記式(1)中、R1はアリール基又はナフチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【化5】

前記式(2)中、R2は、ヒドロキシ基又はCHOCOO基を表し、nは1〜3の整数を表す。
【請求項4】
下記式(11)で表される化合物と、金属マグネシウムとを反応させることにより、前記式(1)で表される化合物を得る工程を更に備える、請求項3に記載のスルホニウム化合物の製造方法。
【化6】

前記式(11)中、R1は、アリール基又はナフチル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のスルホニウム化合物と、下記式(21)で表されるアニオン部分を有する化合物とを反応させることにより得られる、スルホニウムボレート錯体。
【化7】

前記式(21)中、Xはハロゲン原子を表す。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のスルホニウム化合物の製造方法により得られるスルホニウム化合物と、下記式(21)で表されるアニオン部分を有する化合物とを反応させることにより得られる、スルホニウムボレート錯体。
【化8】

前記式(21)中、Xはハロゲン原子を表す。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のスルホニウム化合物と、下記式(21)で表されるアニオン部分を有する化合物とを反応させることにより、スルホニウムボレート錯体を得る工程を備える、スルホニウムボレート錯体の製造方法。
【化9】

前記式(21)中、Xはハロゲン原子を表す。
【請求項8】
請求項3又は4に記載のスルホニウム化合物の製造方法により得られたスルホニウム化合物と、下記式(21)で表されるアニオン部分を有する化合物とを反応させることにより、スルホニウムボレート錯体を得る工程を備える、スルホニウムボレート錯体の製造方法。
【化10】

前記式(21)中、Xはハロゲン原子を表す。

【公開番号】特開2013−14553(P2013−14553A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149868(P2011−149868)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】