説明

スルホン酸基含有アクリルアミド系重合体からなる難燃剤

【課題】 高い電解質基密度を有するアクリルアミド系重合体からなる難燃剤を提供する。
【解決手段】 (1) 下記式(1):


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、R2及びR3は水素基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R4は炭素数1〜3のアルキレン基であり、M1は水素基、金属又は3級アミン残基である。)により表されるアクリルアミドアルカンスルホン酸塩と、(2) 分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物(a)、分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々1個以上有する不飽和化合物(b)、又はこれらの混合物とを共重合してなる難燃剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い電解質基密度を有するスルホン酸基含有アクリルアミド系重合体からなる難燃剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質基を有するアクリルアミド系重合体からなる難燃剤について、特開2001-11318号(特許文献1)は、スルホン酸基及び/又はその塩等のイオン基を有し、かつアクリルアミド類単位を含有する脂肪族系樹脂難燃剤を記載している。特許文献1は、この脂肪族系樹脂難燃剤の製造方法として、脂肪族系樹脂を濃硫酸で処理する方法を記載している。しかし特許文献1は、アクリルアミドアルカンスルホン酸塩と、(メタ)アクリルアミド等の不飽和化合物とを共重合してなる難燃剤を記載していない。
【0003】
【特許文献1】特開2001-11318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、高い電解質基密度を有するアクリルアミド系重合体からなる難燃剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、アクリルアミドアルカンスルホン酸塩と、分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物(a)、分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々1個有する不飽和化合物(b)、又はこれらの混合物とを共重合させると、高い電解質基密度を有するアクリルアミド系重合体からなる難燃剤が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0006】
本発明の難燃剤は、(1) 下記式(1):
【化1】

(ただしR1は水素基又はメチル基であり、R2及びR3は水素基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R4は炭素数1〜3のアルキレン基であり、M1は水素基、金属又は3級アミン残基である。)により表されるアクリルアミドアルカンスルホン酸塩と、
(2) (i) (メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル、アルキルアミノ基含有不飽和単量体、置換又は無置換のスチレン、ハロゲン化ビニル、脂肪酸置換ビニルエステル、及びフッ素基含有不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種の不飽和化合物(a)、
(ii) リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基及び硼酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種の酸性基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合とを有する不飽和化合物(b)、又は
(iii) 前記不飽和化合物(a)及び(b)の混合物
とを共重合してなることを特徴とする。
【0007】
前記アクリルアミドアルカンスルホン酸塩は、下記式(2):
【化2】

により表されるターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸であるのが好ましい。(a)は(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル及びN, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。(b)は(メタ)アクリル酸であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
アクリルアミドアルカンスルホン酸塩系共重合体からなる本発明の難燃剤は、難燃性に優れているだけでなく、プラスチックへの溶解性又は分散性に優れているので、プラスチック用難燃剤として有用である。また本発明の難燃剤は導電性にも優れているので、難燃性のみならず帯電防止性が要求される用途にも好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[1] アクリルアミドアルカンスルホン酸塩
アクリルアミドアルカンスルホン酸塩は、下記式(1):
【化3】

(ただしR1は水素基又はメチル基であり、R2及びR3は水素基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R4は炭素数1〜3のアルキレン基であり、M1は水素基、金属又は3級アミン残基である。)により表される。
【0010】
アクリルアミドアルカンスルホン酸塩としては、下記式(2):
【化4】

により表されるターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸が好ましい。
【0011】
[2] 共重合させる不飽和化合物
アクリルアミドアルカンスルホン酸塩と共重合させる不飽和化合物は、分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物(a)、分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々1個有する不飽和化合物(b)、又はこれらの混合物である。
【0012】
(a) 酸性基を含有しない不飽和化合物
酸性基非含有不飽和化合物は、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル、アルキルアミノ基含有不飽和単量体、置換又は無置換のスチレン、ハロゲン化ビニル(例えば塩化ビニル等)、脂肪酸置換ビニルエステル(例えば酢酸ビニル等)、及びフッ素基含有不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種である。
【0013】
(メタ)アクリル酸エステルとして、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
フッ素基含有不飽和単量体としては、例えば特開2005-11789号に記載のものが挙げられる。具体的には、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のハイドロフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;α-(トリフルオロメチル)アクリル酸等のハイドロフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸;パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル基含有ビニル;ハイドロフルオロアルキル基含有ビニル等が好ましい。フッ素基含有不飽和単量体を共重合成分として含むことにより、重合体の耐熱性及び耐水性が一層向上する。
【0015】
(b) 酸性基を含有する不飽和化合物
酸性基は、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基及び硼酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種である。中でもリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基及びカルボン酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する骨格としては、(メタ)アクリレート骨格、(メタ)アリルエステル骨格、置換又は無置換の不飽和脂肪族炭化水素骨格、不飽和基により置換された芳香族炭化水素骨格等を挙げることができる。
【0016】
(i) リン酸基を含有する不飽和単量体
リン酸基含有不飽和単量体は下記一般式(3):
【化5】

(ただしR5は水素基又はアルキル基であり、R6は置換又は無置換のアルキレン基であり、xは1〜6の整数である。)により表すことができる。R5は−H基又は−CH3基であるのが好ましい。アルキレン基R6について、「置換又は無置換」であるとは、直鎖状又は分岐状であることも含む。アルキレン基R6の炭素数は2〜4が好ましい。
【0017】
式(3)により表されるリン系酸残基含有不飽和単量体は、下記一般式(4):
【化6】

(ただしR5は水素基又はアルキル基であり、R6'は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、xは1〜6の整数である。)により表される化合物、及び下記一般式(5):
【化7】

(ただしR5は水素基又はアルキル基であり、R6''は直鎖状又は分岐状のブチレン基であり、xは1〜6の整数である。)により表される化合物が好ましい。式(4)により表されるリン系酸残基含有不飽和単量体において、R6'はH、CH3又はCH2Clであるのが好ましい。式(5)により表されるリン系酸残基含有不飽和単量体において、R6''はテトラメチレン基であるのが好ましい。
【0018】
一般式(3)により表されるリン酸基含有不飽和単量体のうち代表的なものの構造式及び物性をそれぞれ表1及び表2に示す。これらの単量体はユニケミカル株式会社から商品名Phosmer(登録商標)として販売されている。ただし本発明に使用できるリン酸基含有不飽和単量体はこれらに限定されるものではない。一般式(3)により表されるリン酸基含有不飽和単量体は単独で用いることができるが、2種以上を併用しても良い。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
一般式(3)により表されるリン酸基含有不飽和単量体のうち、アシッド・ホスホオキシブチルアクリレートもユニケミカル株式会社から商品名Phosmer BAとして入手可能である。
【0022】
リン酸基は解離していてもよいし、錯塩を形成していても良い。錯塩を形成する場合、電荷を中和させるため、例えば第1級、第2級、第3級又は第4級のアルキル基、アリル基、アラルキル基等を含有するアンモニウムイオンと錯塩を形成するのが好ましい。
【0023】
(ii) スルホン酸基を含有する不飽和単量体
スルホン酸基を含有する不飽和単量体としては、例えば特開2004-179154号に記載のものが挙げられる。具体的には、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸等が好ましい。これらは単独でもよいし、又は2種以上を併用しても良い。
【0024】
(iii) カルボン酸基を含有する不飽和単量体
カルボン酸基を含有する不飽和単量体の例示化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。
【0025】
(C) 配合割合
アクリルアミドアルカンスルホン酸塩(1)と、共重合させる不飽和化合物((a),(b)又はこれらの混合物)(2)との質量比(1)/(2)は特に制限されないが、その下限は30/70であるのがより好ましく、40/60であるのがさらに好ましい。
【0026】
[3] 難燃剤の製造方法
難燃剤は、アクリルアミドアルカンスルホン酸塩と、共重合させる不飽和化合物(不飽和化合物(a),(b)又はこれらの混合物)との混合物を、重合開始剤の存在下、ケトン類及びアルコール類溶媒中でラジカル重合することにより製造できる(以下特段の断りがない限り、「アクリルアミドアルカンスルホン酸塩と、共重合させる不飽和化合物との混合物」をまとめて「不飽和原料」と呼ぶ。)。
【0027】
ラジカル重合反応は、不飽和原料が溶解する溶媒中で、アセチルパーオキサイド、イソプロピルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤、2, 2’-アゾビスイソブチロニトリル、2, 2 ’-アゾビス(2, 4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2, 2 ’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル2, 2 ’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤、あるいはラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシ・ピバレート等の過酸化物系重合開始剤を用いることにより行う。
【0028】
溶媒としてはケトン及び/又はアルコールを使用する。これら溶媒の炭素数は6以下であるのが好ましい。炭素数6以下の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンチルアルコール及びヘキサノールからなる群から選ばれた少なくとも一種が特に好ましい。アルコールは一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。ケトンとしては例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましい。また不飽和原料に対する溶解性を損なわない範囲でケトン及び/又はアルコールにアミド系溶媒(DMAc、DMF等)、エステル、ジオキサン、エーテル等を共存させてもよい。
【0029】
重合手順について述べる。まず攪拌器、還流冷却器付き反応器に(不飽和原料+溶媒)からなる溶液を投入し、反応器内を窒素ガス雰囲気とした後、添加する重合開始剤の分解温度である40℃〜70℃に昇温する。好ましい重合温度は50℃〜70℃である。所定温度到達直後に重合開始剤を添加する。このとき若干の発熱があり、重合開始を確認することができる。所定温度に到達してから約1時間間隔で重合開始剤を2〜3回添加した後、1時間程度重合反応を継続する。反応温度は最初から最後まで一定である必要はなく、重合末期に温度を上げて未反応単量体を極力少なくする方法をとってもよい。重合溶液は不飽和原料の初期固形分濃度が8〜25質量%であるのが好ましい。重合開始剤のトータル使用量は、不飽和原料を100とした場合に質量比で0.1〜5であるのが好ましく、0.1〜2であるのがより好ましい。
【0030】
重合速度が異なる2種以上の不飽和単量体を共重合させる場合、各単量体を個別に重合開始剤とともに粘度低下に必要な溶剤に溶解させた複数の溶液を調製し、これらを同時に十分な時間をかけて溶媒に滴下しながら共重合させるのが好ましい。重合温度は上記と同じでよい。
【0031】
ラジカル重合は、(a) 不飽和原料及び生成する重合体の双方がケトン類及び/又はアルコール類溶媒に溶解する溶液重合、又は(b) ケトン類及びアルコール類溶媒に不飽和原料は溶解するが、生成する重合体は溶解しない析出重合のいずれであってもよい。
【0032】
不飽和原料が(i) アクリルアミドアルカンスルホン酸塩と、(ii) (メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸及びN, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種とからなる場合、通常は析出重合となる。
【0033】
析出重合により得られた反応液から、アクリルアミドアルカンスルホン酸塩系共重合体を単離する場合、析出した重合体を濾別するのみでよい。このように、析出重合の場合、溶液重合に比べて重合体の単離が格段に容易であるという利点がある。濾別により得られた重合体は、上記貧溶媒を用いて洗浄するのが好ましい。
【0034】
溶液重合により得られたポリマーはアミン塩にすることにより析出させる。使用可能なアミンとしては、下記式(6):
【化8】

(但し、R7〜R9はそれぞれ独立に水素、アルキル基又は芳香族基である)により表される第一級〜第三級アミン類が挙げられる。具体的には、例えばトリエチルアミン等が挙げられる。析出したアミン変性重合体は濾別すればよい。
【0035】
析出(共)重合により得られた反応液から単離したアクリルアミドアルカンスルホン酸塩系共重合体、又は溶液重合により得られた反応溶液にアミン類を添加することによりアミン塩として析出させた重合体は、減圧下100〜120℃の温度で6〜10時間加熱し、乾燥させる。析出(共)重合により得られた重合体は、乾燥させるのみで白色粉末状となる。このように析出重合の場合、粉末状の重合体が容易に得られ、粉砕を要しないという利点もある。アミン塩として析出させた重合体が塊状である場合、粉砕すればよい。
【0036】
[4] 使用対象及び使用方法
難燃剤の使用対象として、プラスチック、紙製品(障子紙、襖紙、壁紙、板紙、合成紙等)等のセルロース系材料、布等の繊維材料、木材系建築材料等が挙げられる。本発明の難燃剤は白色粉末状であり、プラスチック中に容易に溶解又は分散するので、特にプラスチック用難燃剤として有用である。特にアミン変性したものは耐熱性が高く、耐熱性プラスチック用難燃剤に好適である。プラスチックは特に限定されず、熱可塑性及び熱硬化性のいずれの合成樹脂でもよいが、熱可塑性樹脂への使用が一般的である。熱可塑性樹脂として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;ポリ(スチレン);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリアセタール;ポリアミド等が挙げられる。熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0037】
難燃剤のプラスチックへの配合量は特に制限されず、プラスチックの特性を低下させない限り、任意に設定できる。通常は難燃剤添加後のプラスチックの質量を100質量%として、3〜50質量%、好ましくは30〜50質量%の配合量とすれば、十分な難燃性が得られる。
【0038】
熱可塑性樹脂に本発明の難燃剤を添加するには、原料熱可塑性樹脂とともに難燃剤を溶融混練した後、成形すればよく、配合が容易である。必要に応じて、本発明の難燃剤を溶媒に溶解又は分散した上で、原料熱可塑性樹脂に添加してもよい。熱硬化性樹脂に本発明の難燃剤を添加するには、未硬化の樹脂に、本発明の難燃剤を溶解又は分散した後硬化させればよい。必要に応じて、本発明の難燃剤を溶媒に溶解又は分散した上で、未硬化の熱硬化性樹脂に添加すればよい。
【0039】
セルロース系材料、繊維材料、木材系建築材料等の基材に本発明の難燃剤を使用するには、例えば基材を難燃剤の水溶液に浸漬後乾燥する方法、難燃剤の水溶液を用いてサイズプレスする方法、難燃剤の水溶液を塗布する方法等が挙げられる。
【0040】
本発明の難燃剤は、必要に応じてその他の公知の有機又は無機の難燃性化合物を難燃助剤として含んでもよい。公知の難燃性化合物として、例えば上記リン酸基含有不飽和単量体の重合体が挙げられる。
【実施例】
【0041】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
[ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸(以下「TBAS」と表記する)とアクリルアミドからなる共重合体の調製]
TBAS粉末品18.63 g(0.09モル)とアクリルアミド結晶品19.17 g(0.27モル)を、63 gのメタノールに溶解し、上記と同型の自動合成器に入れた。さらにメチルエチルケトン230 gを自動合成器に入れた。N2ガスの流通下、60〜65℃に保温しながら、1時間攪拌した(攪拌回転数:60〜90 rpm)。その後、2, 2 ’-アゾビス(2, 4-ジメチルバレロニトリル)(商品名「V-65」、和光純薬株式会社製)の1質量%イソプロパノール液(触媒液)を9 mL調製し、分割投入した。まず3mLの触媒液を、攪拌下60℃で反応溶液に滴下すると、反応溶液は一時的に67℃まで上昇し白濁した。60〜65℃で1時間攪拌を持続した。次いで攪拌下60℃で3mLの触媒液を滴下し、1時間後同条件下でさらに同量の触媒液を滴下した。触媒液全量を滴下後、70℃で2時間熟成反応を持続した。得られた反応溶液は上澄み液と樹脂沈降物とに分離した。
【0043】
得られた白濁沈殿物を濾過し、アセトンによる洗浄を2回繰り返した後、8時間加熱減圧乾燥し(温度:100℃、真空度:10 mmHg以下)、白色の粉末重合体(35 g、理論収量:92質量%)を得た。得られた白色粉末重合体の5質量%水溶液は低粘性であり、かつ透明であった。この重合体の酸価は132 mg/g(スルホン酸当量:424.2 g/eq.)であり、ほぼ理論酸価(133.3 mg/g、理論スルホン当量:420 g/eq.)であることから、生成した重合体はほぼ仕込みモル比(TBAS/アクリルアミド=1/3)に近いTBAS/アクリルアミド共重合体であると考えられる。
【0044】
(不燃性の評価)
得られた白色粉末重合体をガスバーナーの先端に設置し、炎に20秒間曝し、着火の有無を調べたが(検体数:3個)、炭化しただけで着火しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 下記式(1):
【化1】

(ただしR1は水素基又はメチル基であり、R2及びR3は水素基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R4は炭素数1〜3のアルキレン基であり、M1は水素基、金属又は3級アミン残基である。)により表されるアクリルアミドアルカンスルホン酸塩と、
(2) (i) (メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル、アルキルアミノ基含有不飽和単量体、置換又は無置換のスチレン、ハロゲン化ビニル、脂肪酸置換ビニルエステル、及びフッ素基含有不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種の不飽和化合物(a)、
(ii) リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基及び硼酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種の酸性基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合とを有する不飽和化合物(b)、又は
(iii) 前記不飽和化合物(a)及び(b)の混合物
とを共重合してなることを特徴とする難燃剤。
【請求項2】
請求項1に記載の難燃剤において、前記アクリルアミドアルカンスルホン酸塩は、下記式(2):
【化2】

により表されるターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸であることを特徴とする難燃剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の難燃剤において、(a)は(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル及びN, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、(b)は(メタ)アクリル酸であることを特徴とする難燃剤。

【公開番号】特開2008−208385(P2008−208385A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150534(P2008−150534)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【分割の表示】特願2005−296821(P2005−296821)の分割
【原出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(592187833)ユニケミカル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】