説明

スルホン酸基含有ポリマー組成物、高分子電解質膜およびその製造方法、高分子電解質膜/電極接合体、および燃料電池

【課題】耐久性やメタノールなどの燃料の透過抑制性に優れ、出力やプロトン伝導性などの特性が良好である高分子電解質膜およびその製造方法、並びに高分子電解質膜を用いた燃料電池の提供。
【解決手段】少なくとも、(A)分子中に化学式1で表される構造を有するスルホン酸基含有ポリマーと、(B)化学式2で表される化合物とを含む、ポリマー組成物から得られ、熱処理などで化学式2の構造の化合物のアリル基を反応させた高分子電解質膜。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸基含有ポリマー組成物、該ポリマー組成物より得られる高分子電解質膜およびその製造方法、該ポリマー組成物および/または該高分子電解質膜を用いた高分子電解質膜/電極接合体、および該高分子電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー効率や環境性に優れた新しい発電技術が注目を集めている。中でも高分子固体電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有するため、電気自動車や分散発電などの電源装置としての開発が進んできている。
【0003】
高分子固体電解質膜には通常プロトン伝導性のイオン交換膜が使用される。高分子固体電解質膜にはプロトン伝導性以外にも、燃料の水素などの透過を防ぐ燃料透過抑止性や機械的強度などの特性が必要である。このような高分子固体電解質膜としては、例えば米国デュポン社製ナフィオン(登録商標)に代表されるようなスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む膜が知られている。しかしながら、分子中にフッ素を含むため、使用条件によっては排気ガス中に有害なフッ酸が混入することや、廃棄時に環境への負荷が大きいことなどが問題視されている。
【0004】
パーフルオロカーボンスルホン酸系イオン交換膜は、燃料電池の電解質膜としてバランスのよい特性を示すものの、コストや性能などで、より優れた膜を得るために、炭化水素系イオン交換膜の開発が盛んに行われている。
【0005】
多くの炭化水素系イオン交換膜には、ポリイミドやポリスルホンなどの耐熱性ポリマーに、スルホン酸基などのイオン性基を導入したポリマーが用いられている。(例えば特許文献1を参照)
【0006】
一般に炭化水素系イオン交換膜では、パーフルオロカーボンスルホン酸系イオン交換膜と同等のプロトン伝導性を発現させるためには、より多くのイオン性基を導入する必要がある。しかしながら、イオン性基の量が多くなると、水による膨潤性が大きくなり、吸湿時において、寸法変化や、物理特性の低下などの問題の原因となる。そのため、ポリマーの構造を改良し、より膨潤性を抑制した炭化水素系イオン交換膜もある。(例えば特許文献2を参照)
【0007】
しかしながら、ポリマー構造の改良では、高いプロトン伝導性を要求されるような用途における膨潤性の抑制は十分ではない場合があった。燃料電池などに用いる高分子電解質膜には、耐膨潤性のみならず、プロトン伝導性など、他の様々な特性が優れていることが望ましい。
【0008】
また、膨潤性の大きい高分子電解質膜を、メタノールなどの液体を燃料とする燃料電池に用いた場合、メタノールなどの燃料の透過性が大きくなる傾向があるという問題があった。ポリマー構造の改良によって、膨潤性を抑制し、メタノール透過性を抑制することも可能であるが、それに伴って電極との接合性など加工性が低下する場合があった。例えば高分子電解質膜に電極触媒層を接合する際には、熱と圧力を加えて接合する方法が用いられることが多い。この方法は、高分子電解質膜/電極接合体を簡便に得ることができる方法である。この場合、加工性の面からは、より低い温度で接合できる高分子が好ましく、軟化温度が低いプロトン伝導性ポリマーを用いるほうがよい。しかしながら、軟化温度が低く、加工しやすいプロトン伝導性ポリマーは、多くの場合、膨潤性やメタノール透過性が大きくなってしまい、燃料電池に用いた場合では、耐久性が低かったり、高い出力が得られなかったりするという問題が起こりやすい傾向があった。
【0009】
【特許文献1】特表2004−509224号公報
【特許文献2】特開2004−179779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、高分子電解質膜/電極接合体を製造する際の高分子電解質膜の加工性を保持しつつ、かつ高分子電解質膜の膨潤性を抑制して耐久性やメタノールなどの燃料の透過抑制性にも優れ、出力やプロトン伝導性などの特性が良好である高分子電解質膜およびその製造方法、該高分子電解質膜を得るためのポリマー組成物、該ポリマー組成物および/または該高分子電解質膜を用いた高分子電解質膜/電極接合体、該高分子電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の通りです。
【0012】
1.少なくとも、(A)分子中に下記化学式1;
【0013】
【化8】

【0014】
[化学式1において、Xは−S(=O)−基または−C(=O)−基を、YはHまたは1価の陽イオンを、ZはOまたはS原子のいずれかを、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを、n1は0以上の整数を表す。]
で表される構造を有するスルホン酸基含有ポリマーと、(B)下記化学式2で表される化合物とを、含むことを特徴とするポリマー組成物。
【0015】
【化9】

【0016】
[化学式2において、Rは2価の有機基を表す。]
【0017】
2.スルホン酸基含有ポリマーが、化学式3で表される構造をさらに含有することを特徴とする上記1に記載のポリマー組成物。
【0018】
【化10】

【0019】
[化学式3において、Arは二価の芳香族基を、ZはOまたはS原子のいずれかを、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを、n2は0以上の整数を表す。]
【0020】
3.スルホン酸基含有ポリマーのArが、下記化学式4〜7で表される構造から選ばれる一種以上の基であることを特徴とする上記2に記載のポリマー組成物。
【0021】
【化11】

【0022】
4.スルホン酸基含有ポリマーのArが化学式7で表される構造であることを特徴とする上記3に記載のポリマー組成物。
【0023】
5.スルホン酸基含有ポリマーのスルホン酸基含有量が0.3〜5.0meq/gであることを特徴とする上記1に記載のポリマー組成物。
【0024】
6.スルホン酸基含有ポリマーのZおよびZがいずれもO原子であり、かつ、n1が3以上であることを特徴とする上記1に記載のポリマー組成物。
【0025】
7.スルホン酸基含有ポリマーのZおよびZがいずれもO原子であり、かつ、n2が3以上であることを特徴とする上記2に記載のポリマー組成物。
【0026】
8.スルホン酸基含有ポリマーが、下記化学式8で表される構造をさらに有することを特徴とする上記1に記載のポリマー組成物。
【0027】
【化12】

【0028】
[化学式8において、Xは−S(=O)−基または−C(=O)−基を、YはHまたは1価の陽イオンを、ZはOまたはS原子のいずれかを表す。]
【0029】
9.スルホン酸基含有ポリマーが、化学式3で表される構造をさらに含有する上記8に記載のポリマー組成物。
【0030】
10.スルホン酸基含有ポリマーが、化学式9で表される構造をさらに有することを特徴とする上記9に記載のポリマー組成物。
【0031】
【化13】

【0032】
[化学式9において、Arは2価の芳香族基を、ZはOまたはS原子のいずれかを表す。]
【0033】
11.スルホン酸基含有ポリマーのArが、化学式4〜7で表される構造から選ばれる一種以上の基であることを特徴とする上記10に記載のポリマー組成物。
【0034】
12.スルホン酸基含有ポリマーのArが化学式7で表される構造であることを特徴とする上記11に記載のポリマー組成物。
【0035】
13.スルホン酸基含有ポリマーのZおよびZがOまたはS原子であり、かつ、n1が1であることを特徴とする上記8に記載のポリマー組成物。
【0036】
14.スルホン酸基含有ポリマーのZおよびZがOまたはS原子であり、かつ、n2が1であることを特徴とする上記9に記載のポリマー組成物。
【0037】
15.スルホン酸基含有ポリマーが、化学式1、3、8、9でそれぞれ表される繰り返し単位を少なくとも有し、それぞれの繰り返し単位のモル%、及びその他の繰り返し構造のモル%が数式1〜3を満たすことを特徴とする上記1に記載のポリマー組成物。
【0038】
【数2】

【0039】
(上記式中、n3は化学式8で表される構造のモル%を、n4は化学式1で表される構造のモル%を、n5は化学式9で表される構造のモル%を、n6は化学式3で表される構造のモル%を、n7はその他の繰り返し構造のモル%を、それぞれ表す。)
【0040】
16.化学式2で表される化合物のRが、下記化学式10〜12で表される構造からなる群より選ばれる一種以上の基であることを特徴とする上記1に記載のポリマー組成物。
【0041】
【化14】

【0042】
17.化学式2で表される化合物におけるRが化学式10であることを特徴とする上記1に記載のポリマー組成物。
【0043】
18.化学式2で表される構造の化合物の含有量が1〜30重量%であることを特徴とする上記1に記載のポリマー組成物。
【0044】
19.上記1に記載のポリマー組成物から得られるポリマー組成物であって、化学式2で表される構造の化合物のアリル基の少なくとも一部が、該化合物のアリル基および/またはスルホン酸基含有ポリマーと反応した結合を有していることを特徴とするポリマー組成物。
【0045】
20.上記1〜19のいずれかに記載のポリマー組成物からなる高分子電解質膜。
【0046】
21.上記1〜19のいずれかに記載のポリマー組成物を、高分子電解質および/または電極触媒層に含むことを特徴とする高分子電解質膜/電極接合体。
【0047】
22.上記21に記載の高分子電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池。
【0048】
23.上記1〜18のいずれかに記載のポリマー組成物から成形した膜を200〜300℃の温度で加熱する工程を有することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
【0049】
24.加熱する前においてスルホン酸基含有ポリマーのスルホン酸基が金属塩であり、かつ、加熱後に、酸で処理してスルホン酸基を酸型に変換する工程を有することを特徴とする上記23に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【発明の効果】
【0050】
本発明の高分子電解質膜は、加工性やプロトン伝導性など高分子電解質膜が有していた特徴を損なうことなく、膨潤性を抑制することによって、耐久性を向上させたり、メタノールなどの燃料透過性を抑制したりすることができるという優れた点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0052】
本発明のポリマー組成物は、少なくとも、化学式1で表される構造を有するスルホン酸基含有ポリマーと、化学式2で表される化合物とを、含むことを特徴とする。スルホン酸基含有ポリマーによってイオン伝導性が、化学式2によって膨潤抑制効果が、それぞれ発現する。スルホン酸基含有ポリマーが化学式1の構造を有することによって、優れたイオン伝導性を発現することが可能になるとともに、高分子電解質膜とした場合に電極触媒層との接合性が改良されるという利点がある。
【0053】
該ポリマー組成物において、化学式2で表される化合物の含有量は、該スルホン酸基含有ポリマーの含有量に対して、0.1〜50重量%の範囲であることが好ましく、1〜30重量%の範囲であることがより好ましく、5〜25重量%の範囲であることがさらに好ましい。0.1重量%よりも少ないと、耐久性の向上効果が極めて小さくなり好ましくない。50重量%よりも多いと、高分子電解質膜として時のプロトン伝導性が低下したり、高分子電解質膜が脆くなったりするという問題が起こりやすくなるため好ましくない。
【0054】
該ポリマー組成物における、該スルホン酸基含有ポリマーの含有量は、1〜99.9重量%の範囲にあることが好ましい。組成物が溶液の場合は、1〜50重量%の範囲であることが好ましく、5〜40重量%の範囲であることがより好ましい。組成物が、膜などの成形体の場合には、50〜99.9重量%であることが好ましく、60〜90重量%の範囲であることがより好ましく、70〜80重量%の範囲であることがさらに好ましい。該スルホン酸基含有ポリマーの含有量が1重量%よりも少ないと、加工性やプロトン伝導性が十分でなく好ましくない。含有量が99.9重量%よりも多いと、実質的にスルホン酸基含有ポリマーとなり、耐久性などの改善効果が得られないため好ましくない。
【0055】
化学式1において、Xは−S(=O)−基であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。Xが−C(=O)−基であると、ポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性を高めたり、電解質膜に光架橋性を付与することができるため好ましい。高分子電解質膜として用いる場合には、YはH原子であることが好ましい。ただし、YがH原子であると、熱などによって分解しやすくなるので、電解質膜の製造などの加工時にはYをNaやKなどのアルカリ金属塩としておき、加工後に酸処理によってYをH原子に変換して高分子電解質膜を得ることもできる。ZはOであるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがSであると耐酸化性が向上するため好ましい。n1は0〜30の範囲にあることが好ましく、n1が3以上の場合には、n1が異なる複数の単位が含まれていてもよい。n1が1以上の場合、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基を表し、O原子、S原子であるとより接合性が改良されるため好ましい。n1が3以上の場合はZがO原子であると、高分子電解質膜にした場合の電極触媒層との接合性が特に向上するため好ましい。
【0056】
化学式2で表される化合物におけるRは2価の有機基を表し特に限定されないが、化学式2〜4で表される構造であると好ましい。中でも化学式2で表される構造であることが、耐久性の面から好ましい。
【0057】
該スルホン酸基含有ポリマーは、化学式1の構造に加えて、化学式3で表される構造をさらに含有すると、高分子電解質膜とした場合に電極との接合性がさらに改善されるため好ましい。ZはOであるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがSであると耐酸化性が向上するため好ましい。n2は0〜30の範囲にあることが好ましく、n2が3以上の場合には、n2が異なる複数の単位が含まれていてもよい。n2が1以上の場合、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基を表し、O原子、S原子であるとより接合性が改良されるため好ましい。n2が3以上の場合はZがO原子であると、高分子電解質膜にした場合の電極触媒層との接合性が特に向上するため好ましい。
【0058】
化学式1で表される構造と、化学式3で表される構造のモル比は、5:95〜90:10の範囲であることが好ましい。モル比が5:95とは、化学式1で表される構造のモル数を5としたとき、化学式3で表される構造のモル数が95であることを表す。5:95のモル比よりも化学式1で表される構造が少なくなると、高分子電解質膜としたときのイオン伝導性が低下するため好ましくない。90:10のモル比よりも化学式1で表される構造が多くなると、高分子電解質膜としたときの膨潤性が大きくなりすぎたり、水溶性になったりして好ましくない。より好ましくは10:90〜70:30の範囲である。
【0059】
水素を燃料とする燃料電池の高分子電解質膜として用いる場合には、化学式1で表される構造と、化学式3で表される構造のモル比は、30:70〜80:20の範囲であることが好ましく、40:60〜70:30の範囲であることがより好ましい。
【0060】
メタノールなどの液体を燃料とする燃料電池の高分子電解質膜として用いる場合には、化学式1で表される構造と、化学式3で表される構造のモル比は、7:93〜50:50の範囲であることが好ましく、10:90〜40:60の範囲であることがより好ましい。50:50のモル比よりも化学式1で表される構造が多くなると、高分子電解質膜としたときの燃料透過性が大きくなる場合があり好ましくない。7:93のモル比よりも化学式1で表される構造が少なくなると、高分子電解質膜としたときのイオン伝導性が低下して抵抗が増大するため好ましくない。
【0061】
化学式3におけるArは、電子吸引性基を有する二価の芳香族基が好ましい。電子吸引性基とは、例えばスルホン基、スルホニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸イミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、シアノ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、ニトロ基などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の任意の電子吸引性基であればよい。
【0062】
Arの好ましい構造は、化学式4〜7で表される構造である。化学式4の構造はポリマーの溶解性を高めることができ好ましい。化学式5の構造はポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性を高めたり、光架橋性を付与したりするので好ましい。化学式6または7の構造はポリマーの膨潤を少なくできるので好ましく、化学式7の構造がより好ましい。化学式4〜7の中でも化学式7の構造が最も好ましい。
【0063】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーにおけるスルホン酸基含有量は、0.1〜10meq/gの範囲であることが好ましく、0.3〜5.0meq/gであるとより好ましく、0.5〜4meq/gであるとさらに好ましい。0.1meq/g以下であると高分子電解質膜にしたときのイオン伝導性が低くなりすぎて好ましくない。スルホン酸基含有量が多くなるほど、イオン伝導性は高くなるが、10meq/gを越えるとポリマーが水溶性になったり、膨潤性が著しく大きくなったりするため好ましくない。
【0064】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーは、化学式1で表される構造に加え、化学式8で表される構造をさらに有していることが、高分子電解質膜としたときの膜の形態安定性を高めることができるため好ましい。化学式8において、Xは−S(=O)−基であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。Xが−C(=O)−基であると、ポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性を高めたり、電解質膜に光架橋性を付与することができるため好ましい。高分子電解質膜として用いる場合には、YはH原子であることが好ましい。ただし、YがH原子であると、熱などによって分解しやすくなるので、電解質膜の製造などの加工時にはYをNaやKなどのアルカリ金属塩としておき、加工後に酸処理によってYをH原子に変換して高分子電解質膜を得ることもできる。ZはOであるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがSであると耐酸化性が向上するため好ましい。
【0065】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーは、化学式1、8で表される構造に加え、化学式3で表される構造をさらに有していることが好ましい。この場合、ZおよびZがOまたはS原子であり、かつ、n1が1であると、高分子電解質膜とした場合の電極触媒層との接合性と膜の形態安定性がより良好になるので好ましい。また、ZおよびZがOまたはS原子であり、かつ、n2が1であると、高分子電解質膜とした場合の電極触媒層との接合性と膜の形態安定性がさらに良好になるので好ましい。
【0066】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーは、化学式1、3、8で表される構造に加え、化学式9で表される構造をさらに有していると、高分子電解質膜としたときに、電極触媒層との接合性と膜の形態安定性を大きく向上することができるためよりより好ましい。化学式9におけるZはOであるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがSであると耐酸化性が向上するため好ましい。化学式9におけるArは、電子吸引性基を有する二価の芳香族基が好ましい。電子吸引性基とは、例えばスルホン基、スルホニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸イミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、シアノ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、ニトロ基などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の任意の電子吸引性基であればよい。
【0067】
Arの好ましい構造は、化学式4〜7で表される構造である。化学式4の構造はポリマーの溶解性を高めることができ好ましい。化学式5の構造はポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性を高めたり、光架橋性を付与したりするので好ましい。化学式6または7の構造はポリマーの膨潤を少なくできるので好ましく、化学式7の構造がより好ましい。化学式4〜7の中でも化学式7の構造が最も好ましい。
【0068】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーが化学式1、3、8、9でそれぞれ表される繰り返し単位を全て有している場合は、それぞれの繰り返し単位のモル%、及びその他の繰り返し構造のモル%が数式1〜3を満たすことが好ましい。
【0069】
(n3+n4+n5+n6)/(n3+n4+n5+n6+n7)が0.9よりも小さいと、高分子電解質膜としたときに良好な特性が得られないため好ましくない。より好ましいのは0.95〜1.0の範囲である。
【0070】
(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)が0.05よりも小さくなると、高分子電解質膜としたときに十分なイオン伝導性が得られないため好ましくない。また、0.9よりも大きいと高分子電解質膜としたときの膨潤性が著しく大きくなるため好ましくない。より好ましい範囲は0.1〜0.7の範囲である。
【0071】
水素を燃料とする燃料電池の高分子電解質膜として用いる場合には、(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)が0.3〜0.8の範囲であることが好ましく、0.4〜0.7の範囲であることがより好ましい。0.3よりも小さいと十分な出力が得られないため好ましくなく、0.8よりも大きいと膨潤が著しく大きくなる場合があるため好ましくない。
【0072】
メタノールなどの液体を燃料とする燃料電池の高分子電解質膜として用いる場合には、(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)が0.07〜0.5の範囲であることが好ましく、0.1〜0.4の範囲であることがより好ましい。0.5よりも大きいと、燃料透過性が大きくなる場合があり好ましくない。0.07よりも小さいと、イオン伝導性が低下して抵抗が増大するため好ましくない。
【0073】
(n4+n6)/(n3+n4+n5+n6)が0.01よりも少ないと、高分子電解質膜としたときに電極触媒層との接合性が低下するため好ましくない。0.95よりも大きいと、高分子電解質膜としたときの膨潤性が大きくなりすぎる場合があるため好ましくない。0.05〜0.8がより好ましい範囲である。水素を燃料とする燃料電池の高分子電解質膜に用いる場合には、0.05〜0.4の範囲であることが好ましく、メタノールなどの液体を燃料とする燃料電池の高分子電解質膜に用いる場合には、0.4〜0.8の範囲であることがより好ましい。
【0074】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーとして好ましい例を以下に示すが、これらに限定されることなく、本発明の請求の範囲の任意の構造のポリマーを用いることができる。以下の具体例において、n,n’,n”,m,m’,m”,o,o’,o”,p,p’,p”,fはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。
【0075】
【化15】

【0076】
【化16】

【0077】
【化17】

【0078】
【化18】

【0079】
【化19】

【0080】
【化20】

【0081】
【化21】

【0082】
【化22】

【0083】
【化23】

【0084】
【化24】

【0085】
【化25】

【0086】
【化26】

【0087】
【化27】

【0088】
【化28】

【0089】
【化29】

【0090】
【化30】

【0091】
【化31】

【0092】
【化32】

【0093】
本発明のより好ましい態様は、化学式2で表される構造の化合物のアリル基の少なくとも一部が、該化合物のアリル基および/またはスルホン酸基含有ポリマーと反応した結合を有していることを特徴とするポリマー組成物及びそれより得られる高分子電解質膜、高分子電解質膜/電極接合体、燃料電池である。該アリル基は、該アリル基のみと反応していてもよい。また、スルホン酸基含有ポリマーと反応していてもよい。該アリル基が反応しているかどうかは、公知の任意の手段で検出することができる。例えば、NMRを用いて、アリル基由来のピーク面積が減少し、反応生成物であるアルキル基のピーク面積が増加していれば、該アリル基間で反応が起きたことが確認できる。他にもIRスペクトルを測定したときの炭素二重結合のピーク面積の減少などによっても確認することができる。また、同時にポリマーのNMRスペクトルに変化がなければ、該アリル基とポリマー間の反応はないと判断できる。
【0094】
化学式2で表される構造の化合物のアリル基を反応させる方法は、特に限定されないが、加熱処理や、電子線又は放射線の照射などを挙げることができる。中でも加熱処理が簡便に処理できるため好ましい。加熱温度は200〜300℃の範囲であることが好ましく、240〜270℃の範囲であることがより好ましい。加熱時間は特に限定されないが、0.1〜10時間の範囲であることが好ましく、0.5〜5時間の範囲であることがより好ましい。加熱温度が200℃よりも低いと、反応が充分に起こらず好ましくなく、300℃よりも高いとスルホン酸基含有ポリマーの分解が生じる恐れがあるため好ましくない。また、加熱時間が0.1時間よりも短いと充分に加熱することができず反応が不十分になることがあり好ましくなく、10時間よりも長いと、スルホン酸基含有ポリマーの分解や、高分子電解質膜や組成物の変形、破損などの問題が生じる可能性があるため好ましくない。
【0095】
熱処理を行う場合は、加熱は窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、ごく少量の酸素が含まれている雰囲気で行うこともできる。酸素が多量にあるような雰囲気、例えば空気中で加熱を行うと、アリル基の酸化が起こり、反応が進行しない場合があるため好ましくない。熱処理を行う場合には、枠やテンターなどで固定して行うことが好ましい。固定せずに熱処理を行うと、組成物や高分子電解質膜の変形、しわ、破損の原因になるため好ましくない。
【0096】
電子線や放射線照射を行う場合には、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。処理する際には、枠やテンターで固定して行うことが好ましい。
【0097】
本発明における高分子電解質膜は任意の厚みにすることができるが、10μm以下だと所定の特性を満たすことが困難になるので10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、300μm以上になると製造が困難になるため、300μm以下であることが好ましい。
【0098】
本発明における高分子電解質膜は、その他のポリマーを含んでいてもよい。そのようなポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの熱硬化性樹脂等、特に制限はない。ポリベンズイミダゾールやポリビニルピリジンなどの塩基性ポリマーとの樹脂組成物は、ポリマー寸法性の向上のために好ましい組み合わせといえる、これらの塩基性ポリマー中に、さらにスルホン酸基を導入しておくと、組成物の加工性がより好ましいものとなる。なお、本発明の高分子電解質膜は、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、などの各種添加剤を含んでいても良い。
【0099】
本発明の高分子電解質膜は、本発明のポリマー組成物から、押し出し、圧延またはキャストなど任意の方法で得ることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。例えば、加熱、減圧乾燥、化合物を溶解する溶媒と混和することができる化合物非溶媒への浸漬等によって、溶媒を除去し成形体を得ることができる。溶媒が、有機溶媒の場合には、加熱または減圧乾燥によって溶媒を留去させることが好ましい。この際、必要に応じて他の化合物と複合された形で成形することもできる。溶解挙動が類似する化合物と組み合わせた場合には、良好な成形ができる点で好ましい。このようにして得られた成形体中のスルホン酸基は陽イオン種との塩の形のものを含んでいても良いが、必要に応じて酸処理することによりフリーのスルホン酸基に変換することもできる。化学式2で表される構造の化合物のアリル基を反応させる時期は、成形する前でも後でもよいが、加工性の観点からは成形後に行うことが好ましい。
【0100】
本発明の高分子電解質膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去して高分子電解質膜を得ることができる。当該溶液としてはN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を用いた溶液や、場合によってはアルコール系溶媒等も挙げることができる。溶媒の除去は、乾燥によることが高分子電解質膜の均一性からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下できるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは50〜1500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いと高分子電解質膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、2000μmよりも厚いと不均一な膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にしたりして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。加工において、加熱を伴う場合、スルホン酸基含有ポリマー中のスルホン酸基がカチオンと塩を形成していると、安定性が向上するため好ましい。ただし、高分子電解質膜として使用するためには、適当な酸処理によりフリーのスルホン酸に変換することもできる。この場合、硫酸、塩酸、等の水溶液中に加熱下あるいは加熱せずに膜を浸漬処理することで行うことが効果的である。
【0101】
本発明の高分子電解質膜を得るための好ましい方法の態様の一つは、化学式2で表される化合物のアリル基が未反応の状態である本発明のポリマー組成物から膜を作製し、作製した膜について該アリル基を反応させる方法である。該アリル基を反応させるための手段については上記で記載している。より好ましい方法は、ポリマー組成物中のスルホン酸基含有ポリマーのスルホン酸基が塩を形成した状態で膜を作製し、作製した膜についてアリル基の反応を行い、その後で酸処理によってスルホン酸基含有ポリマーのスルホン酸基を酸に戻す方法である。
【0102】
本発明の膜/電極接合体は、本発明の高分子電解質膜を電極と接合することによって得ることができる。この接合体の作製方法としては、従来から公知の方法を用いて行うことができ、例えば、電極表面に接着剤を塗布し高分子電解質膜と電極とを接着する方法又は高分子電解質膜と電極とを加熱加圧する方法等がある。本発明のポリマー組成物を主成分とした接着剤を電極表面に塗布して接着する方法が好ましく、ポリマー組成物中の化学式2で表される化合物のアリル基が反応していない状態のポリマー組成物を用いることがより好ましい。高分子電解質膜と電極との接着性が向上し、また、高分子電解質膜のプロトン伝導性を損なうことが少なくなると考えられるためである。本発明の高分子電解質膜及びポリマー組成物は適度な軟化温度を有するため、加圧加熱によって高分子電解質膜と電極とを接合する方法に特に適している。
【0103】
本発明の燃料電池は、本発明の高分子電解質膜または高分子電解質膜/電極接合体を用いて作製することができる。本発明の燃料電池は、例えば酸素極と、燃料極と、それぞれの極に挟まれて配置された高分子電解質膜と、酸素極側に設けられた酸化剤の流路と、燃料極側に設けられた燃料の流路を有するものである。このような一つの単位セルを導電性のセパレーターで連結することによって燃料電池スタックを得ることができる。
【0104】
本発明の高分子電解質膜は、固体高分子形燃料電池に適している。本発明の高分子電解質膜は、膨潤性が小さいため、メタノールを燃料とするダイレクトメタノール型燃料電池などの液体を燃料とする燃料電池に適している。また、本発明の高分子電解質膜は高分子電解質膜と電極との接合性に優れるため耐久性が高く、ダイレクトメタノール燃料電池などの液体を燃料とする燃料電池だけでなく、水素を燃料とする燃料電池に適している。また、ジメチルエーテル、水素、ギ酸など他の物質を燃料として用いる燃料電池にも好適に用いることができ、電解膜、分離膜など、高分子電解質膜として公知の任意の用途に用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
【0106】
対数粘度:ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/cで評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
【0107】
プロトン伝導性:自作測定用プローブ(テトラフルオロエチレン樹脂製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、25℃の水中または80℃95%の恒湿恒温槽に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。極間距離は、25℃の水中では1.5cmに、80℃95%では1cmにそれぞれ設定した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
【0108】
メタノール透過性:イオン交換膜の液体燃料透過速度はメタノールの透過速度として、以下の方法で測定した。25℃に調整した5M(モル/リットル)のメタノール水溶液に24時間浸漬したイオン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mLの5Mメタノール水溶液を、他方のセルに100mLの超純水(18MΩ・cm)を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量を、ガスクロマトグラフを用いて測定することで算出した(イオン交換膜の面積は、2.0cm)。得られたメタノール透過速度とサンプルの膜厚から、メタノール透過係数を求めた。
【0109】
水素を燃料とする燃料電池(PEFC)の発電評価:デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液に、市販の40%Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社 燃料電池用触媒 TEC10V40E)と、少量の超純水及びイソプロパノールを加えた後、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が0.5mg/cmになるように均一に塗布・乾燥して、電極触媒層付きガス拡散層を作製した。上記の電極触媒層付きガス拡散層の間に、イオン交換膜を、電極触媒層が膜に接するように挟み、ホットプレス法により130℃、2MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度80℃で、アノード及びカソードにそれぞれ75℃で加湿した水素と空気を供給して発電特性を評価した。開始直後における電流密度が0.5A/cmにおける出力電圧を初期特性とした。また、耐久性評価として、1時間に1回の割合で開回路電圧を測定しつつ上記の条件で連続運転を行った。開回路電圧が開始直後の値よりも10%以上低下したときの時間を耐久時間とした。耐久性評価は1000時間を上限として行った。
【0110】
ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の発電評価:Pt/Ru触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC61E54)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt/Ru触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1になるように加えた。次いで撹拌してアノード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、ガス拡散層となる東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が2mg/cmになるようにスクリーン印刷により塗布乾燥して、アノード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。また、Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC10V40E)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1となるように加え、撹拌してカソード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、撥水加工を施した東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1mg/cmとなるように塗布・乾燥して、カソード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。上記2種類の電極触媒層付きカーボンペーパーの間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により160℃、8MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込み、燃料電池発電試験機(株式会社東陽テクニカ製)を用いて発電試験を行った。発電は、セル温度40℃で、アノード及びカソードにそれぞれ40℃に調整した高純度空気ガス(80ml/min)と、5mol/Lのメタノール水溶液(1.5ml/min)とを供給しながら行った。電流密度が0.02A/cmにおける出力電圧と、電流遮断法で測定した抵抗値を測定した。
【0111】
電極接合性:上記DMFCの発電評価後において、高分子電解質膜と電極触媒層との剥離が見られなかった場合は「○」、剥離が起こった場合を「×」とした。
【0112】
膨潤性:5cm四方の正方形の高分子電解質膜を80℃の純水に1時間浸漬した後、表面の水分をすばやく取り除き、密閉容器中に入れ、吸湿膜の重量を測定した。その後、膜を100℃で1時間減圧乾燥した後、密閉容器に入れ、乾燥膜の重量を測定した。乾燥膜の重量から、吸湿膜の重量を差し引いて、含水量を求め、乾燥膜の重量に対する含水量の重量%を膨潤性とした。
【0113】
イオン交換容量:100℃で1時間乾燥し、窒素雰囲気下室温で一晩放置した試料の重量をはかり、水酸化ナトリウム水溶液と撹拌処理した後、塩酸水溶液による逆滴定でイオン交換容量を求めた。
【0114】
軟化温度:5mm幅の酸型の膜を、チャック幅10mmで、50℃から250℃まで2℃/分で加熱しながら、10Hzの動歪を与えて動的粘弾性を、Rheogel E−4000(東機産業株式会社製)を用いて測定した。E’が大きく低下する変曲点の温度を軟化温度とした。
【0115】
<合成例1>
3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(略号:S−DCDPS)31.212g(0.06354mol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)18.609g(0.1082mol)、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製SPECIANOL DPE−PL;下記化学式17においてnが1〜8の成分を含む混合物でnの平均値は5である構造であるもの)(略号:DPE)94.421g(0.1717mol)、炭酸カリウム26.107g(0.1889mol)、N−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)439.07gを1000ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。攪拌しながら加熱を行い、反応溶液の温度が190〜200℃になるようにして8時間反応させた。その後、室温まで冷却し、反応溶液を水中に注いでストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、室温の水で2回、沸騰水中で2回洗浄した後、100℃で乾燥した。
【0116】
【化33】

【0117】
<合成例2>
S−DCDPS 26.323g(0.05358mol)、DCBN 19.586g(0.1139mol)、DPE 64.452g(0.1172mol)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル 10.158g(0.05023mol)、炭酸カリウム25.458g(0.1842mol)、NMP 361.03gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0118】
<合成例3>
S−DCDPS 31.136g(0.06338mol)、DCBN 61.779g(0.3592mol)、4,4’−ビフェノール(略号:BP)19.670g(0.1056mol)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド(略号:BPS)69.170g(0.3169mol)、炭酸カリウム64.239g(0.4648mol)、NMP 432.511gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0119】
<合成例4>
S−DCDPS 30.054g(0.06118mol)、DCBN 47.940g(0.2787mol)、BP 15.822g(0.08497mol)、BPS 55.639g(0.2549mol)、炭酸カリウム51.673g(0.3739mol)、NMP 374.014gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0120】
<合成例5>
S−DCDPS 28.512g(0.05804mol)、DCBN 39.934g(0.2322mol)、BP 13.510g(0.07255mol)、BPS 47.506g(0.2177mol)、炭酸カリウム44.119g(0.3192mol)、NMP 324.900gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0121】
<合成例6>
S−DCDPS 63.215g(0.1287mol)、DCBN 28.171g(0.1638mol)、BP 49.013g(0.2632mol)、BPS 6.384g(0.02925mol)、炭酸カリウム44.463g(0.3217mol)、NMP 376.370gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0122】
<合成例7>
S−DCDPS 73.792g(0.1502mol)、DCBN 32.885g(0.1912mol)、BP 55.942g(0.3004mol)、BPS 7.452g(0.03414mol)、炭酸カリウム51.902g(0.3755mol)、NMP 376.329gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0123】
<合成例8>
S−DCDPS 80.156g(0.1632mol)、DCBN 30.405g(0.1768mol)、BP 51.272g(0.2754mol)、BPS 11.130g(0.05099mol)、炭酸カリウム51.680g(0.3739mol)、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド(三光株式会社製 HCA−HQ)(略号:HCQ)4.409g(0.01360mol)、NMP 387.234gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0124】
<合成例9>
S−DCDPS 82.451g(0.1678mol)、DCBN 19.247g(0.1119mol)、BP 44.796g(0.2406mol)、BPS 6.106g(0.02797mol)、炭酸カリウム42.528g(0.3077mol)、HCQ 3.628g(0.01190mol)、NMP 344.897gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0125】
<合成例10>
S−DCDPS 30.135g(0.06134mol)、DCBN 42.207g(0.2454mol)、BP 13.707g(0.07361mol)、4,4’−チオビス(ベンゼンチオール) 58.370g(0.2331mol)、炭酸カリウム46.631g(0.3374mol)、NMP 366.159gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0126】
<合成例11>
S−DCDPS 31.234g(0.06358mol)、DCBN 46.624g(0.2711mol)、BP 12.463g(0.06693mol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 61.115g(0.2677mol)、炭酸カリウム50.875g(0.3681mol)、NMP 381.102gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0127】
<合成例12>
S−DCDPS 30.941g(0.06298mol)、DCBN 34.307g(0.1995mol)、BP 11.728g(0.06298mol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン 67.061g(0.1995mol)、炭酸カリウム39.898g(0.2887mol)、NMP 374.703gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0128】
<合成例13>
S−DCDPS 31.743g(0.06462mol)、DCBN 44.459g(0.2585mol)、BP 14.439g(0.07754mol)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 65.892g(0.2455mol)、炭酸カリウム49.119g(0.3554mol)、NMP 398.919gを用い、合成例1と同様の操作によってポリマーを得た。
【0129】
<合成例14>
S−DCDPS 30.120g(0.06462mol)、DCBN 51.492g(0.2994mol)、BP 67.159g(0.3607mol)、炭酸カリウム54.832g(0.3967mol)、NMP 314.926gを用い、合成例1と同様の操作によって化学式18で表される構造のポリマーを得た。
【0130】
【化34】

【0131】
<実施例1〜13>
合成例1〜9で合成したポリマーそれぞれについて、ポリマー10g、下記化学式19で表される化合物(丸善石油化学株式会社製 BANI−M)(略号:BAM)1g、NMP30gを100ccのフラスコに入れ、窒素雰囲気下、50℃で加熱しながら5時間攪拌して、透明な均一溶液を得た。得られた溶液をアプリケーターを用いて、ガラス板上に300μmの厚みでキャストし、80℃で30分間、次いで120℃で30分間、150℃で30分間、加熱してNMPを蒸発させた。その後、水に浸漬して、膜をガラス板から剥離し、表面の水をろ紙で除去した後、ステンレス製の枠(30×20cm)に固定した。固定した膜は、窒素雰囲気下、250℃で1時間加熱した後、室温まで放冷し、枠から取り外した。取り外した膜は、枠と接触していた部分を除去し、室温の水に12時間浸漬した後、2Mの硫酸に室温で30分間浸漬し、さらに別の2M硫酸に室温で30分間浸漬した。その後、洗浄液のpHが5以上になるまで、膜を水で洗浄した。洗浄した膜は、表面の水をろ紙で取り除いた後、新しい乾燥したろ紙に挟み、さらに厚み1cmのガラス板で挟んだ上に5kgの重りを乗せ、1日放置して乾燥し、高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜について評価を行った。
【0132】
【化35】

【0133】
<実施例14>
合成例5で合成したポリマー10g、BAM2g、NMP30gを用いた他は、実施例1〜13と同様の操作により高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜について評価を行った。
【0134】
<実施例15>
合成例5で合成したポリマー10g、BAM0.5g、NMP30gを用いた他は、実施例1〜13と同様の操作により高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜について評価を行った。
【0135】
<比較例1〜13>
合成例1〜13で合成したそれぞれのポリマーについて、ポリマー10gとNMP30gを用い、BAMを添加せず、ステンレス枠に固定しての熱処理を行わなかった他は、実施例1〜13と同様の操作により高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜について評価を行った。
【0136】
<比較例14>
合成例5で合成したポリマーについて、ポリマー10gとNMP30gを用い、BAMを添加しなかった他は、実施例1〜13と同様の操作により高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜について評価を行った。
【0137】
<比較例15>
合成例14で合成したポリマー10g、BAM0.5g、NMP30gを用いた他は、実施例1〜13と同様の操作により高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜について評価を行った。
【0138】
<比較例16>
市販の高分子電解質膜であるナフィオン(登録商標)112について評価を行った。
【0139】
<比較例17>
市販の高分子電解質膜であるナフィオン(登録商標)117について評価を行った。
【0140】
評価結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0142】
実施例1〜5、10〜13で示した本発明の高分子電解質膜は、特にダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)などの液体を燃料とする燃料電池に好適に用いることができる。実施例1〜5、10〜13で示した本発明の高分子電解質膜は、化学式2で表される構造の化合物を含まない比較例1〜5、10〜13の高分子電解質膜に比べ、膜の抵抗はわずかに大きくなっているが、メタノール透過係数が小さくなっており、より高い出力電圧を示していることが分かる。また、比較例5の高分子電解質膜を熱処理した膜である比較例14の高分子電解質膜は、メタノール透過係数は熱処理によって低下しているものの、その程度は小さく、実施例よりも低い出力電圧しか得られない。また、スルホン酸基含有ポリマーが本発明の範囲外である比較例15の高分子電解質膜は、実施例5の電解質膜に比べて、メタノール透過性は劣っていないものの、膜抵抗が著しく大きいので、極めて低い出力電圧しか得られていない。このことから、軟化温度が高すぎない本発明の範囲内のスルホン酸基含有ポリマーを用いることによって、メタノール透過性が小さいだけでなく、電極触媒層との接合性が良好であり、高分子電解質膜/電極接合体を作製する際の加工性にも優れる高分子電解質膜/電極接合体が得られることが分かる。また、DMFCの高分子電解質膜として用いられることの多い市販の高分子電解質膜であるナフィオン(登録商標)117に対して、本発明の高分子電解質膜は、メタノール透過係数が著しく低く、高い出力電圧を得ることができることから、優れた高分子電解質膜であることは明らかである。
【0143】
また、実施例6〜9の本発明の高分子電解質膜は、水素を燃料とする燃料電池に特に適している。実施例6〜9の本発明の高分子電解質膜は、化学式2で表される構造の化合物を含まない比較例6〜9の高分子電解質膜と初期特性は同等であるにも関わらず、耐久性が大きく改善されていることが分かる。また、水素を燃料とする燃料電池に用いられることの多い市販の高分子電解質膜であるナフィオン(登録商標)112に対して、本発明の高分子電解質膜は同等以上の初期特性を有しており、優れた特性を有した高分子電解質膜であることが分かる。本発明の高分子電解質膜の耐久時間は、ナフィオン(登録商標)112に対して、やや劣るものの、電解質膜にフッ素を含まないので、燃料電池の運転中のフッ酸などの有害物質の排出を抑制することができ、廃棄にも問題が少ないという利点を有している。
【0144】
これらのことから、本発明の高分子電解質膜は、水素やメタノールを燃料とする燃料電池の高分子電解質膜に用いることによってその特性を大きく改善することができ、産業界に寄与すること大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)分子中に下記化学式1;
【化1】

[化学式1において、Xは−S(=O)−基または−C(=O)−基を、YはHまたは1価の陽イオンを、ZはOまたはS原子のいずれかを、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを、n1は0以上の整数を表す。]
で表される構造を有するスルホン酸基含有ポリマーと、(B)下記化学式2で表される化合物とを含むことを特徴とするポリマー組成物。
【化2】

[化学式2において、Rは2価の有機基を表す。]
【請求項2】
スルホン酸基含有ポリマーが、化学式3で表される構造をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【化3】

[化学式3において、Arは二価の芳香族基を、ZはOまたはS原子のいずれかを、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを、n2は0以上の整数を表す。]
【請求項3】
スルホン酸基含有ポリマーのArが、下記化学式4〜7で表される構造から選ばれる一種以上の基であることを特徴とする請求項2に記載のポリマー組成物。
【化4】

【請求項4】
スルホン酸基含有ポリマーのArが化学式7で表される構造であることを特徴とする請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
スルホン酸基含有ポリマーのスルホン酸基含有量が0.3〜5.0meq/gであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
スルホン酸基含有ポリマーのZおよびZがいずれもO原子であり、かつ、n1が3以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
スルホン酸基含有ポリマーのZおよびZがいずれもO原子であり、かつ、n2が3以上であることを特徴とする請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
スルホン酸基含有ポリマーが、下記化学式8で表される構造をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【化5】

[化学式8において、Xは−S(=O)−基または−C(=O)−基を、YはHまたは1価の陽イオンを、ZはOまたはS原子のいずれかを表す。]
【請求項9】
スルホン酸基含有ポリマーが、化学式3で表される構造をさらに含有する請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
スルホン酸基含有ポリマーが、化学式9で表される構造をさらに有することを特徴とする請求項9に記載のポリマー組成物。
【化6】

[化学式9において、Arは2価の芳香族基を、ZはOまたはS原子のいずれかを表す。]
【請求項11】
スルホン酸基含有ポリマーのArが、化学式4〜7で表される構造から選ばれる一種以上の基であることを特徴とする請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
スルホン酸基含有ポリマーのArが化学式7で表される構造であることを特徴とする請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
スルホン酸基含有ポリマーのZおよびZがOまたはS原子であり、かつ、n1が1であることを特徴とする請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
スルホン酸基含有ポリマーのZおよびZがOまたはS原子であり、かつ、n2が1であることを特徴とする請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
スルホン酸基含有ポリマーが、化学式1、3、8、9でそれぞれ表される繰り返し単位を少なくとも有し、それぞれの繰り返し単位のモル%、およびその他の繰り返し構造のモル%が数式1〜3を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【数1】

(上記式中、n3は化学式8で表される構造のモル%を、n4は化学式1で表される構造のモル%を、n5は化学式9で表される構造のモル%を、n6は化学式3で表される構造のモル%を、n7はその他の繰り返し構造のモル%を、それぞれ表す。)
【請求項16】
化学式2で表される化合物のRが、下記化学式10〜12で表される構造からなる群より選ばれる一種以上の基であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【化7】

【請求項17】
化学式2で表される化合物におけるRが化学式10であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
化学式2で表される構造の化合物の含有量が1〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
請求項1に記載のポリマー組成物から得られるポリマー組成物であって、化学式2で表される構造の化合物のアリル基の少なくとも一部が、該化合物のアリル基および/またはスルホン酸基含有ポリマーと反応した結合を有していることを特徴とするポリマー組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のポリマー組成物からなる高分子電解質膜。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれかに記載のポリマー組成物を、高分子電解質および/または電極触媒層に含むことを特徴とする高分子電解質膜/電極接合体。
【請求項22】
請求項21に記載の高分子電解質膜/電極接合体を用いた燃料電池。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれかに記載のポリマー組成物から成形した膜を200〜300℃の温度で加熱する工程を有することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
【請求項24】
加熱する前においてスルホン酸基含有ポリマーのスルホン酸基が金属塩であり、かつ、加熱後に、酸で処理してスルホン酸基を酸型に変換する工程を有することを特徴とする請求項23に記載の高分子電解質膜の製造方法。


【公開番号】特開2008−19376(P2008−19376A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193875(P2006−193875)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】