説明

スルホン酸系樹脂微粒子エマルション

【課題】粒子径が小さく均一であることから、種々の用途に好適に使用することができ、簡易かつ簡便な方法で製造することが可能なスルホン酸系樹脂微粒子エマルション及びスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】固形分に対してスルホ基を1×10−4〜110×10−4モル/g含有するスルホン酸系樹脂を含有する水溶液に、固形分に対してカチオン性基を0.1×10−4〜50×10−4モル/g含有する化合物を含有する水溶液を添加することによって得られるスルホン酸系樹脂微粒子エマルションであって、スルホ基とカチオン性基とのモル比(スルホ基/カチオン性基)が1.5〜10.0であることを特徴とするスルホン酸系樹脂微粒子エマルション。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径が小さく均一であることから、種々の用途に好適に使用することができ、簡易かつ簡便な方法で製造することが可能なスルホン酸系樹脂微粒子エマルション及びスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スルホン酸系樹脂は医薬品、セメント混和剤、帯電制御剤等の幅広い分野に使用されている。医薬品用途としては、特許文献1にゲル化前の粘度が、配合されているポリスチレンスルホン酸塩の粒度分布に応じて調整されているゲル状製剤が開示されており、このようなゲル状製剤が高カリウム血症治療用の製剤として使用されている。
また、セメント混和剤としては、特許文献2にポリスチレンスルホン酸又はその塩からなるセメント混和剤粉体を、シリカ系微粉体で被覆したものが開示されており、流動化剤、減水剤等として用いられている。
【0003】
これらの用途にスルホン酸系樹脂を用いる場合、粒子状の形態が好ましく、粒子径についても、小さく均一であることがより好ましいとされており、例えば、医薬品用途において、製剤として使用する場合には、工業的には高分子量体で水に不溶化させたものを篩い分けや粉砕分級機等により粒子化して用いていた。しかしながら、この方法では工程が煩雑化し、粒子の小粒径化についても不充分となるという問題を抱えていた。
また、セメント混和剤に使用する場合についても、平均粒子径90μm程度の粒子が要求されるが、製造に時間を要していた。
従って、スルホン酸系樹脂を簡便な方法で分散性が高い状態で小粒径化できることができ、かつ、各用途に使用した場合、スルホン酸系樹脂が有する優れた効果を損なわないスルホン酸系樹脂微粒子エマルションが必要とされていた。
【0004】
【特許文献1】WO99/20285号パンフレット
【特許文献2】特開平5−301751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、粒子径が小さく均一であることから、種々の用途に好適に使用することができ、簡易かつ簡便な方法で製造することが可能なスルホン酸系樹脂微粒子エマルションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固形分に対してスルホ基を1×10−4〜110×10−4モル/g含有するスルホン酸系樹脂を含有する水溶液に、固形分に対してカチオン性基を0.1×10−4〜50×10−4モル/g含有する化合物を含有する水溶液を添加することによって得られるスルホン酸系樹脂微粒子エマルションであって、スルホ基とカチオン性基とのモル比(スルホ基/カチオン性基)が1.5〜10.0であるスルホン酸系樹脂微粒子エマルションである。
以下、本発明につき、詳細に説明する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定量のスルホ基を有するスルホン酸系樹脂の水溶液と、特定量のカチオン性基を有する化合物の水溶液とを、スルホ基とカチオン性基とのモル比が所定の範囲内となるように反応させたスルホン酸系樹脂微粒子エマルションが、粒子径が小さく均一となり、種々の用途に好適に使用可能なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明のスルホン酸系樹脂微粒子エマルションは、固形分に対してスルホ基を1×10−4〜110×10−4モル/g含有するスルホン酸系樹脂を含有する水溶液に、固形分に対してカチオン性基を0.1×10−4〜50×10−4モル/g含有する化合物を含有する水溶液を添加することによって得られるものである。
【0009】
上記スルホン酸系樹脂としては、後述する所定量のスルホ基を含有する樹脂であれば特に限定されないが、コスト面からポリスチレンスルホン酸カルシウム及びポリスチレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0010】
上記スルホン酸系樹脂におけるスルホ基の含有量の下限は、樹脂固形分に対して1×10−4モル/g、上限は110×10−4モル/gである。上記スルホ基の含有量を上記範囲内とすることで、水に対する溶解性と粘度とを好適なものとすることができる。1×10−4モル/g未満であると、水溶性が著しく低下し、スルホン酸系樹脂としての性能を発現できず、110×10−4モル/gを超えると、均一な粒径を有するスルホン酸系樹脂微粒子エマルションを作製できない。好ましい下限は30×10−4モル/g、好ましい上限は70×10−4モル/gである。
【0011】
上記スルホン酸系樹脂の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は500000である。1000未満又は500000を超えると、均一な微粒子が形成しなくなることがある。
【0012】
上記スルホン酸系樹脂を含有する水溶液におけるスルホン酸系樹脂の含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は50重量%である。上記スルホン酸系樹脂の含有量を上記範囲内とすることで、反応後に得られるスルホン酸系樹脂エマルションを均一に保持させることが可能となる。5重量%未満であると、カチオン性基を有する化合物との反応後に、水に対して溶解性を示し、効率よく粒子が形成されない。50重量%を超えると、スルホン酸系樹脂水溶液の溶液粘度が極端に高くなるため、カチオン性基を有する化合物との反応を均一に行うことができない。より好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は40重量%である。
【0013】
上記カチオン性基を有する化合物としては、水溶性であって、スルホ基と反応した後、疎水化して、スルホン酸系樹脂微粒子エマルションが作製できるものであれば、特に限定されないが、幅広い用途への展開が可能なカチオン性化合物としては、例えば、窒素系化合物等が挙げられる。また、上記カチオン性基としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン等のアミン基やアンモニウム塩基等が挙げられる。
【0014】
上記カチオン性基を有する化合物の分子量の好ましい上限は1000である。1000を超えると、水溶性やスルホン酸との反応性が低下することがある。より好ましい上限は800である。
【0015】
上記カチオン性基を有する化合物におけるカチオン性基の含有量の下限は0.1×10−4モル/g、上限は50×10−4モル/gである。上記カチオン性基の含有量を上記範囲内とすることで、水に対する溶解性を好適なものとすることができる。0.1×10−4モル/g未満であると、水溶性が著しく低下し、スルホ基との反応が定量的に進行せず、均一な微粒子エマルションを作製できない。50×10−4モル/gを超える場合も同様に均一な微粒子エマルションを作製できない。好ましい下限は1.0×10−4モル/g、好ましい上限は30×10−4モル/gである。
【0016】
本発明では、上述したスルホン酸系樹脂を含有する水溶液に、カチオン性化合物を含有する水溶液を添加して得られるスルホン酸系樹脂微粒子エマルションにおいて、スルホ基とカチオン性基とのモル比(スルホ基/カチオン性基)の下限は1.5、上限は10.0である。1.5未満であると、スルホ基とカチオン性基が反応した際に沈殿が生じるため微粒子化できず、10.0を超えると、スルホ基とカチオン性基が反応しても水溶性が高すぎて微粒子生成が起こらない。好ましい下限は3.0、好ましい上限は8.0である。
【0017】
本発明のスルホン酸系樹脂エマルションは、使用用途によって、重合性不飽和モノマーと複合化させた後、重合させることにより、スルホン酸系樹脂微粒子を内包化した粒子としてもよい。
【0018】
上記重合性不飽和モノマーとしては、例えば、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等が挙げられる。これらの疎水性単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記モノビニル系芳香族系単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体及びその誘導体が挙げられる。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0021】
上記ビニルエステル系単量体としては特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
上記ビニルエーテル系単量体としては特に限定されず、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0022】
上記モノオレフィン系単量体としては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
上記ジオレフィン系単量体としては特に限定されず、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0023】
上記架橋性単量体としては特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル、鳥目値ロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0024】
上記重合性不飽和モノマーの重合方法としては特に限定されず、各種重合方法が選択できるが、例えば、乳化重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法が最も簡便な方法である。
【0025】
本発明の微粒子エマルションの製造方法は、スルホン酸系樹脂を含有する水溶液に、カチオン性化合物を含有する水溶液を添加する工程を有するスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法であって、前記スルホン酸系樹脂を含有する水溶液は、固形分に対してスルホ基を1×10−4〜20×10−4モル/g含有し、前記カチオン性化合物を含有する水溶液は、固形分に対してカチオン性基を0.1×10−4〜15×10−4モル/g含有し、かつ、前記スルホ基とカチオン性基とのモル比(スルホ基/カチオン性基)が1.5〜10.0である。
【0026】
本発明のスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法においては、カチオン性基を有する化合物の水溶液に対してスルホン酸系樹脂水溶液を添加する方法ではなく、スルホン酸系樹脂を含有する水溶液に対して、カチオン性基を有する化合物を含有する水溶液を添加する工程を行う。このような方法を用いた場合、均一なスルホン酸粒子エマルションを作製できる。これに対して、カチオン性基を有する化合物の水溶液に対してスルホン酸系樹脂水溶液を添加する方法では、カチオン性基を有する化合物に、カチオン性基が少量しか存在しないため、少量のスルホン酸系樹脂を添加した時点で疎水化したスルホン酸系樹脂が析出してしまい、均一なスルホン酸系樹脂微粒子エマルションを得ることができない。
【0027】
なお、本発明のスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法におけるスルホ基、カチオン性基の含有量、スルホ基とカチオン性基とのモル比については、本発明のスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの場合と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
【0028】
本発明のスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法において、スルホン酸系樹脂を含有する水溶液に、カチオン性化合物を含有する水溶液を添加する工程を行う際には、重合開始剤を用いてもよい。
上記工程を行う際に用いられる重合開始剤としては特に限定されず、従来公知の重合開始剤を用いることができ、例えば、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0029】
上記重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせ、レドックス系開始剤とすることが好ましい。上記レドックス系開始剤を用いることによって、重合活性が上昇し重合温度の低下を図ることができ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のスルホン酸系樹脂微粒子エマルションによれば、粒子径が小さく均一であることから、製剤をはじめとする医薬品分野や各種IT分野で広く利用することができ、簡易かつ簡便な方法で製造することが可能なスルホン酸系樹脂微粒子エマルションを提供することができる。
また、本発明のスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法によれば、スルホン酸系樹脂を簡便に微粒子化することができ、均一なスルホン酸系樹脂エマルションを製造することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
セパラブルフラスコにポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液(日本エヌエスシー社製VERSA−TL 72の水酸化ナトリウム中和体、19%水溶液)88重量部(スルホ基含有量;0.081モル、48.4×10−4モル/g)を入れ、乳化剤(EA−177、20%水溶液、第一工業製薬社製)11重量部、n−ドデシルピリジニウムクロリド一水和物(1.4%水溶液、和光純薬工業社製)380重量部(カチオン性基含量;0.017モル、31.2×10−4モル/g)を滴下投入することで樹脂粒子エマルションを得た。得られた樹脂粒子の平均粒子径を粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて測定したところ、52nmであった。
【0033】
(実施例2)
セパラブルフラスコにポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液(日本エヌエスシー社製VERSA−TL 9X212Sの水酸化ナトリウム中和体、16%水溶液)105重量部(スルホ基含有量;0.081モル、48.2×10−4mol/g)を入れ、乳化剤(EA−177、20%水溶液、第一工業製薬社製)11重量部、テトラブチルアンモニウムクロリド(1.2%水溶液、和光純薬工業社製)380重量部(カチオン性基含量;0.017モル、37.3×10−4mol/g)を滴下投入することで樹脂粒子エマルションを得た。得られた樹脂粒子の平均粒子径を粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて測定したところ、64nmであった。
【0034】
(実施例3)
セパラブルフラスコにポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液(日本エヌエスシー社製VERSA−TL 9X212Sの水酸化ナトリウム中和体、16%水溶液)105重量部(スルホ基含有量;0.081モル、48.2×10−4mol/g)を入れ、乳化剤(EA−177、20%水溶液、第一工業製薬社製)11重量部、テトラブチルアンモニウムクロリド(1.2%水溶液、和光純薬工業社製)894重量部(カチオン性基含量;0.040モル、37.3×10−4mol/g)を滴下投入することで樹脂粒子エマルションを得た。得られた樹脂粒子の平均粒子径を粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて測定したところ、98nmであった。
【0035】
(実施例4)
セパラブルフラスコにポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液(日本エヌエスシー社製VERSA−TL 9X212Sの水酸化ナトリウム中和体、16%水溶液)188重量部(スルホ基含有量;0.145モル、48.2×10−4mol/g)を入れ、乳化剤(EA−177、20%水溶液、第一工業製薬社製)11重量部、テトラブチルアンモニウムクロリド(1.2%水溶液、和光純薬工業社製)380重量部(カチオン性基含量;0.017モル、37.3×10−4mol/g)を滴下投入することで樹脂粒子エマルションを得た。得られた樹脂粒子の平均粒子径を粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて測定したところ、44nmであった。
【0036】
(比較例1)
セパラブルフラスコに硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製、19%水溶液を調製)61重量部(スルホ基含有量;0.081モル、69.9×10−4mol/g)を入れ、乳化剤(EA−177、20%水溶液、第一工業製薬社製)11重量部、n−ドデシルピリジニウムクロリド一水和物(1.4%水溶液、和光純薬工業社製)380重量部(カチオン性基含量;0.017モル、31.2×10−4mol/g)を滴下投入した。得られた試料を透過型電子顕微鏡で観察したが、粒子は存在していなかった。
【0037】
(比較例2)
セパラブルフラスコにポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液(日本エヌエスシー社製VERSA−TL 72の水酸化ナトリウム中和体、19%水溶液)13重量部(スルホ基含有量;0.017モル、68.8×10−4mol/g)を入れ、乳化剤(EA−177、20%水溶液、第一工業製薬社製)11重量部、n−ドデシルピリジニウムクロリド一水和物(1.4%水溶液、和光純薬工業社製)380重量部(カチオン性基含有量;0.017モル、32.0×10−4mol/g)を滴下投入した。得られた試料は大量の凝集が発生し、安定に分散した粒子は得られなかった。
【0038】
(比較例3)
セパラブルフラスコにポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液(日本エヌエスシー社製VERSA−TL 72の水酸化ナトリウム中和体、19%水溶液)222重量部(スルホ基含有量;0.204モル、48.4×10−4mol/g)を入れ、乳化剤(EA−177、20%水溶液、第一工業製薬社製)11重量部、n−ドデシルピリジニウムクロリド一水和物(1.4%水溶液、和光純薬工業社製)380重量部(カチオン性基含量;0.017モル、32.0×10−4mol/g)を滴下投入した。得られた試料を得られた試料を透過型電子顕微鏡で観察したが、粒子は存在していなかった。
【0039】
(評価)
(1)平均粒子径及びCV値の測定
粒度分布計(Particle Sizing System社製、NICOMP 380ZLS)を用いて樹脂微粒子の平均粒子径及び粒子径のCV値を求めた。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、粒子径が小さく均一であることから、種々の用途に好適に使用することができ、簡易かつ簡便な方法で製造することが可能なスルホン酸系樹脂微粒子エマルション及びスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分に対してスルホ基を1×10−4〜110×10−4モル/g含有するスルホン酸系樹脂を含有する水溶液に、固形分に対してカチオン性基を0.1×10−4〜50×10−4モル/g含有する化合物を含有する水溶液を添加することによって得られるスルホン酸系樹脂微粒子エマルションであって、スルホ基とカチオン性基とのモル比(スルホ基/カチオン性基)が1.5〜10.0であることを特徴とするスルホン酸系樹脂微粒子エマルション。
【請求項2】
スルホン酸系樹脂を含有する水溶液に、カチオン性化合物を含有する水溶液を添加する工程を有するスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法であって、
前記スルホン酸系樹脂を含有する水溶液は、固形分に対してスルホ基を1×10−4〜110×10−4モル/g含有し、
前記カチオン性化合物を含有する水溶液は、固形分に対してカチオン性基を0.1×10−4〜50×10−4モル/g含有し、かつ、
前記スルホ基とカチオン性基とのモル比(スルホ基/カチオン性基)が1.5〜10.0である
ことを特徴とするスルホン酸系樹脂微粒子エマルションの製造方法。

【公開番号】特開2008−156469(P2008−156469A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346646(P2006−346646)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】