説明

スロット状ノズルを持つ研削装置

【課題】高速研削装置を提供する。
【解決手段】周囲研削面を持つ研削ホイールと、研削ホイールを軸線を中心として取り付け且つ回転するための機械装置と、クーラント流体を研削面に正割をなして差し向けるように形成されたスロット状ノズルを含むクーラント供給システムとを含む高速研削装置を提供する。スロット状ノズルの出口は、細長い軸線及び短い軸線を有し、細長い軸線は研削ホイールの軸線に対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削を行うための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、研削を行うための改良された方法及び装置を提供しようとするものである。研削装置は、米国特許第6,123,606号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,123,606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、高速研削装置において、周囲研削面を持つ、アクスル上の研削ホイールと、研削ホイールをアクスルを中心として取り付け且つ回転するための機械装置と、クーラント流体を研削面に正割をなして(例えば、交差するように)差し向けるように構成されたスロット状ノズルを備えたクーラント供給システムとを含み、スロット状ノズルは、細長い軸線(elongate axis)及び短い軸線(short axis)を持つ出口を有し、細長い軸線は、研削ホイールを通る弦と平行であり、研削ホイールの軸線に対して傾斜している、高速研削装置が提供される。
【0006】
スロット状ノズルの出口を傾斜することによって、研削面に対する流れ分布が改良される。
好ましくは、細長い軸線は、研削ホイールの軸線に対して5°乃至20°傾斜している。
【0007】
スロット状ノズルの細長い軸線に沿った長さは、周囲研削面の幅よりも長くてもよい。
長さを延長することにより、研削面の縁部に亘ってクーラント流を提供し、研削ホイールの冷却を更に改善する。好ましくは、細長い軸線の長さは、周囲研削面の幅よりも5%以上長い。
【0008】
研削ホイールを取り付け且つ回転するための機械装置は、ホイールを10m/s乃至約80m/sの周速で回転できてもよい。
クーラント供給システムは、ノズルから液体のジェットを4000kPa乃至7000kPa(40バール乃至70バール)の圧力で送出してもよい。
【0009】
好ましくは、装置は、更に、研削ホイールの側部と整合するための第1縁部、研削面と整合するための第2縁部、及びノズルの縁部と整合するための第3縁部を持つ整合工具を含む。
【0010】
工具は、シート状の金属から形成されていてもよい。
次に、本発明を添付図面を参照して単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明を例示する概略図である。
【図2】図2は、図1のシステムで使用するためのノズルを示す図である。
【図3】図3は、研削ホイールに向いた図2のノズルを示す概略図である。
【図4】図4は、ノズル、整合工具、及び研削ホイールを示す概略図である。
【図5】図5は、ノズル、別の整合工具、及び研削ホイールを示す概略図である。
【図6】図6は、クーラント流体をノズルに供給するための供給パイプの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を組み込んだ研削プロセスの原理を例示する目的のため、図1は、矢印4の方向に回転する研削ホイール2を含む、研削装置(研削セットアップ)を示す。研削ホイールの回転中、加工物(ワークピース)6をホイールを通して矢印8の相対的方向に供給する。例示の例では、これにより、全体に参照番号9を付した接触領域で、当該技術分野において「ダウン」研削として公知の作業を行う。本発明は、「アップ」研削でも同様に加工できることがわかっている。本質的には、本発明のプロセスは、クリープフィード研削として公知のプロセスの一つの発展形態であるが、これは、加工物材料が非常に急速に除去されるという優れた結果が得られるため、幾分不適切な名称であると考えられている。
【0013】
研削ホイール2は、標準的な多軸工作機の部分である工具ヘッド即ちチャック12によって支持された回転スピンドル10に取り付けられている。加工物6は、取り付けジグ14によって表面取り付けテーブル16上に保持されている。この実施例では、「1−パス」研削プロセスが示してあるため、研削ホイールの幅は、必要な研削面の対応する幅によって決定できる。表面速度が一定に維持されるとして、10mm乃至45mmの範囲の幅の研削ホイールを使用する場合に結果に大きな変化がないということがわかっている。他方、幅の限度の表示はなく、本発明は、他の点についてはさておき、研削ホイールの幅に関わらず有用であることが期待されるということがわかっている。
【0014】
使用された研削ホイールの種類についての表面速度の値の範囲は、約10m/s乃至約80m/sである。表面速度が全ての他のパラメータと適合している場合、様々な直径のホイールが一貫した結果をもたらす。これまで使用されてきた研削ホイールの最大直径は約220mmであるが、この上限は、ホイール構造の固有の安定性によってではなく、機械装置の作動領域における物理的隙間によって決まる。明らかに、研削ホイールは、その組成及び構造で、最大回転速度、達成可能な切削深さ等(ここでは二つを挙げたがこれら二つだけではない)に関して限度がある。しかし、この例では、これらはプロセスの作動パラメータを減らしたり(あるいは省略)しない。かくして、機械装置が大きさに関して許容され、例えば最大400mm又はそれ以上で、速度が比較的高いものが得られることが期待される。
【0015】
水溶性オイルを含む液体クーラントのジェット18を、ノズル手段20を通してホイール2の周囲の照準点19に差し向ける。ノズル20は、閉ループクーラント送出−収集−濾過システムの出口である。ホイールからの使用済クーラントは機械装置の下部のサンプ(タンク)22に集められ、効率的に濾過する濾過システム24を通して引き出され(あるいは、抜かれ)、粒径が代表的には少なくとも約10μmまでのくず(デブリ)を除去することができる。
【0016】
非常に高圧のポンプシステム26が濾過システム24と一体に設けられている。ポンプシステム26は、圧力が加わったクーラント(冷却剤又は冷却液)を出口28を通して送出ノズル20に送出する。例示の実施例では、クーラントは、出口28を介して、最大10000kPa(100バール)の圧力で、代表的には、4000kPa乃至7000kPa(40バール乃至70バール)の圧力で送出され、流量は最大約130リットル/分である。
【0017】
ノズル20は、クーラントの非常に高圧のジェット18をホイールに加工物6の切削領域の前方約45°の点に送出するため、ホイール2の周囲と近接して位置決めされている。ノズルはスロット状ノズル20であり、クーラント流体のジェット18をホイールの周囲に、ホイールの全幅に亘る衝突点に差し向けるように形成されており且つ構成されている。実施例では、ノズル20はほぼ矩形のジェットオリフィスを有する。ジェットオリフィスの長さはホイール2の幅とほぼ等しいが、好ましくはこれよりも僅かに長く、ジェットオリフィスの深さは0.5mm乃至1mmである。従って、このオリフィスは、シート状又は扇状のクーラントのジェット18をホイールの周囲に差し向ける(すなわち、シート状又は扇状のクーラント18をホイールの周囲に噴出する)。
【0018】
更に、図1では、ホイールのスピンドル10を中心とした一対の半径30、32が(破線で)示してある。第1半径30は、ホイール2の周囲のジェット18の衝突領域を通して引いてあるのに対し、第2半径32は、ホイール2と加工物6との間の接点を通して引いてある。これらの二つの半径30、32の夾角が、ジェット18の衝突点の周囲位置を決定する。ホイール直径が約80mmであり、ホイールの直径の範囲の最小部分に属する本実施例の例示から、この夾角は約45°であり、ジェット18は研削ホイール接触点の前方にあるということは明らかであろう。他のきょう角を採用してもよい。
【0019】
ノズルの更に詳細な図が図2に示してある。図示されているように、ノズル本体は、入口部分40と、テーパ部分42と、ノズル出口46の前の流れ形成部分44とを含む。ノズル出口46は、ノズルからの一貫した層流を提供し、クーラント流中の空気の量を減少するのを補助し、基材が損傷する場合には、研削点のところでの変色や酸化を減少できる。図2は、斜視図(図2a)、平面図(図2b)、及び側面図(図2c)を示す。変形例では、入口部分には、冷却流体をノズルに供給する配管にノズルを連結するためのナット又は他の連結特徴が設けられている。
【0020】
ノズルは、細長いノズル形状を形成するため、注文製作のジョー及び穴形成器(jaw and aperture former)上で製造されたステンレス鋼製のパイプから形成されてもよい。
図3は、研削ホイール2に対するノズル20の好ましい整合を示す。ノズル20は、クーラント流体のジェット18がホイールの真の半径に対して傾斜した所定角度から研削面に当たるように、クーラント流体をジェット18としてホイールに対して、正割をなして(例えば、ホイールの曲線と交わるように)差し向ける。最も極端な場合には、ジェットはホイールに対して接線方向に差し向けられるが、通常は、ノズルの角度は、接線から5°乃至20°である。「正割をなして(secantly)」という用語は、流体が接線方向に差し向けられる構成を含む。
【0021】
図3bに示すように、周面(円周面を含む)である研削面にクーラントを供給するため、ノズルは、研削ホイールに向けられている。周面に対するノズルの配向(位置決め)が重要であるということがわかっている。周面に対する正割角度ばかりでなく、ノズルの細長い軸線の研削ホイールの軸線に対する角度もまた重要である。ノズルの細長い軸線を研削ホイールの軸線に対して5°乃至15°、好ましくは約10°の角度に配置することによって、改良冷却分配が得られる。
【0022】
特に広幅の研削面を使用する場合、一つ以上の細長いクーラントノズルを使用する必要がある。これらのノズルは、互いに対し、また、研削ホイールの軸線に対して、様々な角度をとってもよい。これらのノズルは、互いに重なり合って、研削面の特定の領域に余分のクーラントを提供してもよい。一つ又はそれ以上のノズルが、研削ホイールの軸線と平行であってもよい。
【0023】
ノズル20a、20bのチップ(出口オリフィス)は、使用中、好ましくは、研削ホイール2の周面と非常に近接して位置決めされる。ノズルの簡単な整合を補助するため、図4に示すように工具を使用してもよい。工具102は、研削ホイールの側部と整合する第1基準面104と、研削ホイールの研削面と整合する第2基準面106と、ノズルの端部の軸線方向位置を研削面に対して定めて、確実に重なるようにする第3基準面107と、細長いノズルの角度を研削ホイールの軸線に対して整合するための第4基準面108とを有する。工具は、容易に入手できるシート状の金属から形成されてもよく、これにより、複雑で費用がかかるセットアッププロセスを簡単に且つ手際よく行うことができる。
【0024】
別の整合工具の一例を図5に示す。この整合工具は、研削ホイールの縁部に対する正しい正割位置(secantial position)又は接線方向位置にノズルを配置するのに使用される。工具は、ノズル20と研削ホイール2の縁部との間の距離に亘って延びるのに十分な長さを持つ細長い部材110と、ノズルと係合するノッチ部分112とを有する。ノズルを整合するため、ノッチ部分をノズル及び細長い部材と係合した状態に置いた後、ホイールの軸線又は流体をノズルに供給する配管への入口を、細長い部材が研削ホイールに対して所望の正割角度(secantal angle)又は接線方向角度にくるまで移動する。
【0025】
図6は、冷却流体をノズルに供給するのに使用される配管の選択肢についての平面図(図6a)及び側面図(6b)を示す。配管は、好ましくは溶接によって互いに接合された三つの別々の区分で形成されている。これは、パイプの全長が大きく曲がることがないようにするため、また、曲げ部分のところでボアの大きさが変わらないようにするため、さらに、材料を弱くしないためである。流れの変動が最少になるように、屈曲部は、全て90°よりも小さい角度に保持される。
【符号の説明】
【0026】
2 研削ホイール
6 加工物
10 回転スピンドル
12 工具ヘッド即ちチャック
14 取り付けジグ
16 表面取り付けテーブル
18 ジェット
19 照準点
20 送出ノズル
22 サンプ(クーラントだめ)
24 濾過システム
26 ポンプシステム
28 出口
30 第1半径
32 第2半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速研削装置において、
周囲研削面を持つ、アクスル上の研削ホイール(2)と、
前記研削ホイールが前記アクスル(10)を中心として回転できるように取り付けられた機械装置と、
クーラント流体を前記研削面に正割をなして差し向けるように構成されたスロット状ノズル(46)を備えたクーラント供給システム(26、28)とを含み、
前記スロット状ノズルは、細長い軸線及び短い軸線を持つ出口を有し、前記細長い軸線は、前記研削ホイールを通る弦と平行であり、前記研削ホイールの軸線に対して傾斜している、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記細長い軸線は、前記研削ホイールの軸線に対して5°乃至20°傾斜している、装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、
前記スロット状ノズルの前記細長い軸線に沿った長さは、前記周囲研削面の幅よりも長い、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記細長い軸線の前記長さは、前記周囲研削面の幅よりも5%以上長い、装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の装置において、
前記研削ホイールを取り付け且つ回転させるための前記機械装置は、前記ホイールを10m/s乃至約80m/sの周速で回転する、装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の装置において、
前記クーラント供給システムは、前記ノズルから液体のジェットを4000kPa乃至7000kPa(40バール乃至70バール)の圧力で送出する、装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の装置において、更に、
前記研削ホイールの側部と整合するための第1縁部、前記研削面と整合するための第2縁部、及び前記ノズルの縁部と整合するための第3縁部を持つ整合工具を含む、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
前記工具は、シート状の金属から形成されている、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82061(P2013−82061A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−221281(P2012−221281)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(591005785)ロールス・ロイス・ピーエルシー (88)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】