説明

セキュリティエレメントとファイバー状シート材との間の接着力を高めるための方法

【課題】セキュリティエレメントをファイバー状シート材により強固に固着すること
【解決手段】セキュリティエレメント(例えばセキュリティストリップまたはバンド)とペーパーのようなファイバー状シート材との間の接着力を高めるための方法が提供されている。本発明によれば、1つ以上の活性化可能な接着性フィルムにラミネートされたセキュリティエレメント、ファイバー状シート材の表面の上若しくはその内部に含まれるか、または表面の内部に少なくとも一部が埋め込まれた、かかる積層構造体を有するファイバー状シート材、およびかかるファイバー状シート材から製造されたドキュメント(例えば紙幣のようなセキュリティドキュメント)も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、本明細書で参考例として全体を援用する、2008年6月12日に出願された米国仮特許出願第61/060,906号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般的にはセキュリティエレメントとファイバー状シート材との間の接着力を高めるための方法に関し、より詳細には、1つ以上の活性化可能な接着性フィルムにラミネートされたセキュリティエレメント、表面の上若しくは表面の内部に含まれるかまたは少なくとも一部が内部に埋め込まれた、上記のような積層構造体を有するファイバー状シート材、およびかかるファイバー状シート材から製造されたドキュメントに関する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景および概要)
紙幣およびその他の価値の高いドキュメントでは、スレッド、ストリップ、またはリボン状をしたセキュリティエレメントが専ら使用されており、セキュリティエレメントは、これらドキュメントの正統性を証明するための視覚的および/または機械的手段となっている。これらセキュリティエレメントは、紙幣またはその他の価値の高いドキュメントに全体若しくは一部を埋め込んでもよいし、またはその表面に取り付けてもよい。
【0004】
セキュリティスレッドは、例えばシリンダーモールドおよびフォードリニエール(Fourdrinier)製紙機で製造中にペーパー内に一般に埋め込まれる。これらスレッドを形成ペーパーウェブに導入する前にこれらセキュリティスレッドをヒートシール塗料でコーティングすることが一般的なプラクティスである。ポリマーが溶解乃至分散されている溶液、水溶液又は分散液の形態をとるこれら塗料は、製紙プロセス中に高温に晒されると、溶融状態となり、接着剤として作用することによりスレッドをペーパー内に固着するように働く。ホログラムおよびホログラムストリップのようなセキュリティエレメントを紙幣の表面に接着するのにも、ヒートシール塗料が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらヒートシール塗料を使用することが原因となって、いくつかの欠点が生じている。ヒートシール塗料を可塑化するのに必要な温度は、ペーパーの支持体の品質に悪影響を与えることが分かっている。更に、表面に取り付けられたホログラム上の接着剤を再加熱すると、ホログラムが取れたり、別のドキュメントに移ってしまうことがある。
【0006】
セキュリティスレッドを固着し、ホログラムを貼付するのに、放射線硬化性接着剤も使用されている。ホッフミューラー外を発明者とする米国公開特許出願第US2008/0014378A1号には、かかる接着剤が記載されている。この参考文献に開示されている接着剤は、少なくとも1つの放射線架橋性成分を含む塗料であり、好ましい実施形態では、脂肪族ポリウレタン分散液、芳香族ポリウレタン分散液、アクリレート、アニオンアクリレート改質ポリウレタン分散液、ポリウレタン−ポリエーテルアクリレート、およびそれらの混合物の群から選択された分散液の状態となっている。アクリレート化ポリウレタン分散液は、特に適しているものと認められている(ページ2、パラグラフ[0030]を参照)。更に好ましい実施形態では、塗料は、放射線硬化型カチオン樹脂として存在し、エポキシドで改質されたビニルコポリマーを有するものが特に適すものとして認められている(ページ3、パラグラフ[0039]を参照)。この塗料は、低溶融性として記載されているが、室温では実質的に粘着性がない(ページ1、パラグラフ[0016]を参照)。
【0007】
好ましくないことに、この参考文献に記載されている塗料は、これまで説明したセキュリティペーパーの製造中に架橋ステップ(および場合によっては予備的架橋ステップも)を必要とする。オフラインで実行しなければならないことがあるかかる追加ステップは、プロセスの経済性に悪影響を与える。
【0008】
本発明の目的は、セキュリティエレメントをファイバー状シート材により強固に固着するための新規な方法を提供することによりこれら欠点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、セキュリティエレメント(例えば、セキュリティストリップまたはバンド)とファイバー状シート材との間の接着力を高めるための方法を提供するものであり、この方法は、
積層構造体を形成するよう、前記セキュリティエレメントの少なくとも1つの表面に活性化可能な1つ以上の接着性フィルムを接着するステップと、
ウェブ形成シリンダーの一部がパルプまたは完成紙料内に浸漬する前に、(i)フォードリニエールまたはツインワイヤー製紙機のウエットエンドにおいて、形成ファイバー状ウェブ上、またはその内部に、前記積層構造体を導入するか、または(ii)シリンダー製紙機内のファイバー状ウェブ形成シリンダーに対して前記積層構造体を導入するステップと、
ファイバー状ウェブが十分に凝固した(即ち、前記ファイバー状ウェブの全量を基準として約5重量%未満の水分レベルを有した)後に、前記十分に凝固したファイバー状ウェブに前記セキュリティエレメントを強固に接合するように前記1つ以上の接着性フィルムを活性化するステップとを備える。
【0010】
本発明は、活性化可能な1枚以上の接着性フィルムに接着されたセキュリティエレメントと、ファイバー状シート材の表面の上またはその内部に含まれるか、または少なくとも一部がファイバー状シート材内に埋め込まれた1つ以上の積層構造体を有する、紙幣のような複数回使用するドキュメントを製造する際に使用するのに適したファイバー状シート材とを備える、積層構造体も提供する。
【0011】
意図する実施形態では、ファイバー状シート材は、その表面内の凹部に設けられた細長いストリップまたはバンド状の積層構造体を有し、この表面からセキュリティエレメントを完全に見ることができるようになっている。活性化可能な接着性フィルムに接着されたセキュリティエレメントを含むラミネートされたストリップは、約20〜100ミクロン(μ)(好ましくは約20〜50μ)の範囲の厚さ、およびファイバー状シート材の幅だけに制限される幅(好ましくは約0.5〜18ミリメートル(mm))を有する。ラミネートされたストリップは、ペーパーファイバーが依然として移動できる状態で、製造中に形成中のファイバー状ウェブまたはシート材の表面に貼付される。この結果得られるファイバー状シート材は、実質的に均一なクロスウェブキャリパー、すなわち厚みを有する。更に、ストリップの下方の領域は、周辺ベースシートよりも薄く、不透明度が低く、より小さい坪量を有する。
【0012】
上記記載から明らかなように、本発明は極めて幅広のストリップまたはバンドを使用することを意図している。表面に凹部が設けられたこれら幅広のストリップは、露出した表面積をより広くすることを意図したものであり、このようにすることにより、設計上の選択肢が増え、例えば光学的に可変なマークまたはデザインをより効果的に提示する機会を提供できる。完全に見ることができ、よってより視覚的に明らかなこのストリップは、公的なセキュリティ上の機能として、より効果的なものとなる。更に本発明は、セキュリティエレメントが含まれている領域内のシート材の厚さを付随的に厚くすることなく、より厚く、より丈夫なセキュリティエレメントの使用も意図している。
【0013】
別の意図する実施形態では、ラミネートされたストリップまたはバンドは、一部がファイバー状シート材内に埋め込まれ、シート材の少なくとも一方の側にあるウィンドー内で露出状態となる。ストリップは、シート材内に完全に埋め込まれてもよく、この場合、セキュリティエレメントの両面の各々に活性化可能な接着性フィルムを接着し、シート材内にラミネートされたストリップをより強固に固着することが好ましい。いずれの実施形態においても、ストリップは約50μ未満の好ましい厚み、および少なくとも約0.5mm(より好ましくは約1〜約5mm、または6もしくは8mmまで)の好ましい幅を有する。
【0014】
本発明は、ファイバー状シート材の表面内の凹部に設けられた(更にこの表面から完全に見ることができる)1つ以上のセキュリティエレメントを有し、このセキュリティエレメントは、活性化可能な1枚以上の接着性フィルムに接着されるか、または接着剤/バインダー塗料でコーティングされた、くじ引き券のような1回使用のドキュメントを製造する際に使用するのに適したファイバー状シート材を更に提供する。ペーパーファイバーが依然として移動自在となっている間、製造中に形成ファイバー状ウェブまたはシート材の表面にセキュリティエレメント(単数または複数)が貼付される。上記から分かるように、この結果得られるファイバー状シート材は、実質的に均一なクロスウェブキャリパー、すなわち厚みを有し、セキュリティエレメントの下方の領域は、周辺ベースシートよりも薄く、不透明度が低く、より小さい坪量を有する。
【0015】
本発明は、これまで説明したファイバー状シート材から製造されたドキュメントも提供する。これらドキュメントは、セキュリティドキュメント、例えば紙幣、債権、小切手、トラベラーズチェック、IDカード、くじ引き券、パスポート、郵便切手および株券だけでなく、文房具アイテムおよびラベルのような非セキュリティドキュメントも含む。
【0016】
当業者であれば、これまでの詳細な説明および図面から、本発明の上記以外の特徴および利点も明らかとなろう。本明細書で使用するすべての技術的用語及び科学的用語は、特に明記しない限り、本発明が属す技術の当業者によって共通して理解される意味と同じ意味を有するものである。本明細書に記載したすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献の全体を参考例として援用する。矛盾が生じた場合、定義を含む本明細書が基準となる。更に、材料、方法および例は単なる説明のためのものであり、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付図面を参照し、ここに開示する発明の特定の特徴について説明する。
【図1】本発明の積層構造体の一実施形態の拡大横断側面図である。
【図2】ストリップまたはバンド状をした本発明の積層構造体を形成ファイバー状ウェブ上またはその内部に導入するためにダンディーロールを使用するフォードリニエール製紙機の略図である。
【図3】形成シリンダーの接触部分がパルプまたは完成紙料内に浸漬する前に、シリンダー製紙機内の形成シリンダーに(ストリップまたはバンド状をした)本発明の積層構造体が接触している、ピックアップフェルトによって相互に接続された2つのシリンダー製紙機から構成された製紙装置の略図である。
【図4】表面に凹部が設けられたストリップがシート材の前面すなわち上面で露出しており、シート材の後面すなわち下面から隠されている、表面に凹部が設けられたラミネートされたストリップまたはバンドを有する、本発明のファイバー状シート材の好ましい実施形態の前面すなわち上面の平面図である。
【図5】図4に示されたシート材の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明を実施するための最良の形態)
活性時にセキュリティストリップまたはバンドに接着する活性化可能な接着性フィルムは、これらストリップをより強固にファイバー状シート材に固着するように働く。これらフィルムは活性化されると軟化し、周辺のファイバー状シート材内に侵入してシート材に対する機械的な結合だけでなく、化学的な結合も形成する。これらファイバー状シート材から調製されたドキュメントは、大きな耐久性を示す。
【0019】
上記のように、セキュリティエレメントとファイバー状シート材との間の接着力を高めるための本発明の方法は、
積層構造体を形成するよう、前記セキュリティエレメントの少なくとも1つの表面に1つ以上の活性化可能な接着性フィルムを接着するステップと、
ウェブ形成シリンダーの一部がパルプまたは完成紙料内に浸漬する前に、(i)フォードリニエールまたはツインワイヤー製紙機のウエットエンドにおいて、形成ファイバーウェブ上、またはその内部に、前記積層構造体を導入するか、または(ii)シリンダー製紙機内のファイバー状ウェブ形成シリンダーに対して前記積層構造体を導入するステップと、
ファイバー状ウェブが十分に凝固した後で、前記十分に凝固したファイバー状ウェブに前記セキュリティエレメントを強固に接合するように前記1つ以上の接着性フィルムを活性化するステップとを備える。
【0020】
本発明を実施する際に使用されるセキュリティエレメントは限定されない。このセキュリティエレメントは、直接またはデバイスの助けにより、人が認識できる情報をディスプレイまたは投影できるか、および/またはマシンが検出可能な/読み取り可能な情報を具現化できる。このセキュリティエレメントは、複数の領域にセグメント化することができ、この場合、情報が同一または異なるこれら領域の一部またはすべてにディスプレイもしくは投影されるか、そうでない場合にはこれら領域の一部またはすべてに含まれる。
【0021】
適当なセキュリティエレメントは、次のセキュリティ特性のうちの1つ以上を採用するのがよい。すなわちセキュリティ特性として、金属被覆されていないか、または選択的に金属被覆された、磁気的、磁気と金属の組み合わせ、またはエンボス加工された(例えば空押しされた)領域または層、カラーシフト、玉虫色、液晶、フォトクロミックおよび/またはサーモクロミック材料から構成されたカラー変化する塗料、ルミネッセンスおよび/または磁気材料の塗料、ホログラフィックおよび/または屈折セキュリティ特性およびマイクロ光学的セキュリティ特性のうちの1つ以上を使用できる。
【0022】
好ましい実施形態では、セキュリティエレメントは、マイクロ光学的構造体である。かかる構造体は、1つ以上の合成的に拡大された光画像を投影し、一般に、(a)光透過性ポリマー支持体と、(b)ポリマー支持体の上またはその内部に位置するマイクロサイズの画像アイコンの配置と、(c)マイクロレンズの配置とを含む。アイコンとマイクロレンズの配置は、マイクロレンズの配置を通してアイコンの配置を見ると、1つ以上の合成的に拡大された光画像が投影されるように構成される。これら投影される画像は、多数の異なる光学的効果を示すことができる。かかる構造体については、スティーンブリック外に付与された米国特許第7,333,268号、スティーンブリック外に付与された米国特許第7,468,842号、スティーンブリック外を発明者とする米国公開特許出願第2008/0037131号、コマンダー外を発明者とする国際公開特許出願第WO2005/106601A2号、およびカウレ外を発明者とする国際公開特許出願第WO2007/076952A2号に記載されている。より好ましい実施形態では、スティーンブリック外に付与された米国特許第7,333,268号に記載されているようなマイクロ光学的構造体が使用される。この構造体は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリビニルカーボネート、ポリ塩化ビニリデンおよびこれらの組み合わせを含むが、これらだけに限定されない群から選択された基本的には無色の1つ以上のポリマーを使って調製された、ポリマー支持体から形成される。
【0023】
このセキュリティエレメントは、下記のことを条件として追加的セキュリティ特性またはデバイス、塗料もしくは層を含むことができる。この条件とは、かかる追加的セキュリティ特性またはデバイス、塗料もしくは層が、許容できないほどの厚さの増加を生じさせないか、またはセキュリティエレメントによって生じる拡大もしくは合成画像の光学的効果もしくは視覚的認識を防げないことである。単なる例を挙げると、ペーパーに埋め込まれている反射光によって見ることができるセキュリティエレメントを隠すのを助けるのに、二酸化チタンのような顔料が混入された、オプションとしてテキスチャー状の層を使用してもよい。
【0024】
ファイバー状シート材の表面内に凹部を設けるための積層構造体を製造するのに使用されるセキュリティエレメントの厚さは、約15〜50μ(好ましくは約15〜30μ)の範囲であるが、ファイバー状シート材内に一部または全体を埋め込むための積層構造体を製造するのに使用されるセキュリティエレメントの厚さは、約15〜45μ(好ましくは約15〜30μ)の範囲である。
【0025】
本発明で使用するのに適した活性化可能な接着性フィルムとして、約100℃〜約160℃の範囲の温度、すなわち一般に従来の製紙機の二次乾燥セクションで到達する温度で活性化する、熱活性化または感熱性接着性フィルムだけでなく、水で活性化される接着性フィルムおよび圧力で活性化される接着性フィルムも挙げることができる。好ましい実施形態では、活性化可能な接着性フィルムは、感熱性ポリオレフィン接着性フィルムおよび感熱性ポリウレタン接着性フィルムの群から選択された、クリアで、光学的に透明または白色の感熱性接着性(TSA)フィルムである。これらフィルムは、室温では実質的に粘着性がない。
【0026】
ファイバー状シート材の表面内に凹部を設けるための積層構造体を製造するのに使用されるTSAフィルムの厚さは、約5〜50μ(好ましくは約5〜20μ)の範囲であるが、ファイバー状シート材内に一部または全体を埋め込むための積層構造体を製造するのに使用されるTSAフィルムの厚さは、約5〜35μ未満(好ましくは約5〜25μ、より好ましくは約10〜20μ)の範囲である。
【0027】
表面に凹部を設ける用途のための積層構造体において、より厚いTSAフィルムを使用できる能力によって、特にTSAフィルム内に、例えば無線周波数識別(RFID)タグのようなマイクロ回路を埋め込むことが可能となる。
【0028】
実際のところ、(製造中もしくは製造後のいずれかにおいて)セキュリティエレメントのウェブ上にTSAフィルムを押し出してもよいし、またはウェブを個々のセキュリティエレメントとなるようにスリット化する前に、従来のラミネート化技術を使ってセキュリティエレメントのウェブに自立形TSAフィルムを接着またはラミネートしてもよい。かかるフィルムにペーパーまたはポリマー(例えばポリエステル)のキャリアフィルムを供給してもよいし、供給しなくてもよいし、または同時押し出しされる非接着性ポリマーフィルム層を供給してもよい。
【0029】
例えば適当なラミネート技術では、セキュリティエレメントのウェブの裏面にTSAフィルムを連続的に貼付し、この層状の構造体を約60℃〜200℃(好ましくは約120℃〜180℃)の範囲の温度に露出し、約20〜約100μの範囲の厚さを有する積層構造体を形成するよう、約5ミリ秒〜約30秒の間(約6.9×10〜約6.9×10パスカルの範囲のニップ圧力が加えられた)圧縮ニップに加熱された構造体を通過させ、必要であれば積層構造体からキャリアフィルムまたは同時押出されたフィルム層を除去し、TSAフィルムを露出させる。
【0030】
積層構造体が一旦調製されると、この構造体はストリップまたはバンド、スレッド、プランチェットまたはパッチを含むがこれらに限定されない任意の形状にカットまたはスリット加工できる。ストリップまたはバンドおよびスレッドは、一定または可変エッジプロフィルを有することができる。(i)ファイバー状シート材の表面内に凹部を設けるために(好ましくは約0.5〜18mmの幅の)太いストリップまたはバンドを設けるか、もしくは(ii)ファイバー状シート材内に一部または全体を埋め込むために(好ましくは少なくとも約0.5mmの幅、より好ましくは約1〜5mm、または6もしくは8mmまでの幅の)細いスレッドのいずれかを提供するよう、積層構造体をスリット加工することが好ましい。次にこれらストリップまたはスレッドは、ボビンまたはスプールに巻き取られる。
【0031】
次に、添付図面のうちの図1を参照する。ここには、ストリップ状またはバンド状をした本発明の積層構造体の好ましい一実施形態の全体が番号10で示されている。ラミネートされたストリップ10はセキュリティエレメント12と、活性化可能な接着性フィルム14とを含む。
【0032】
本発明で使用するのに適したファイバー状シート材は、ペーパーシート材またはペーパーに類似したシート材である。シングルプライのシート材またはマルチプライのシート材であるこれらシート材は、種々のファイバー、例えばマニラ麻、綿、リネン、ウッドパルプおよびそれらのブレンドから製造できる。当業者に周知のように、紙幣用および非セキュリティドキュメント、例えば文具アイテム用には、綿および綿/リネン、または綿/合成繊維のブレンドが好ましいが、紙幣以外のセキュリティドキュメントおよび非セキュリティドキュメント、例えばラベルでは、一般にウッドパルプが使用される。
【0033】
これまで言及したように、製紙業界で共通して使用される技術により、製造中にファイバー状シート材内にラミネートされたストリップ10の少なくとも一部を混入させてもよい。このストリップ10は、製造中または製造後のいずれかにおいて、ファイバー状シート材の表面に取り付けるか、または表面の凹部に設けてもよい。
【0034】
好ましい実施形態では、ラミネートされたストリップ10は、製造中に形成ファイバー状ウェブまたはシート材の表面の凹部に設けられる。
【0035】
次に図2を参照する。本発明のファイバー状シート材製のシングルプライの実施形態を製造するためのフォードリニエールプロセスでは、例えば製紙機のウエットエンド20にあるダンディーロール18により、一部が凝固した形成ファイバー状ウェブ16(すなわち約0.5〜5重量%の素材および約99.5〜95重量%の水を含むファイバー状スラリー)の表面内に(セキュリティエレメント12が最上部の層となるように配向された)ラミネートされたストリップ10が押し込められる。製紙プロセスにおけるこのステージでは、形成ウェブ16内のファイバーは移動自在である。ウェブ16から水が連続的に排出されるので、ストリップ10のまわりにファイバーが形成され、ファイバーはストリップ10をウェブ16の前面すなわち上面の上の所定位置に保持する。ウェブ16は、ウエットエンド20を離間する際に、製紙機内のプレス、メインドライヤーセクションおよび二次ドライヤーセクション、およびカレンダーセクションを通過する。ウェブ16は、製紙機のうちの二次ドライヤーセクションにある間、接着性フィルムを軟化させるのに十分な温度および/または圧力にさらされ、フィルムはウェブ内に進入させられるか、ウェブ内に強制的に進入させられる。この結果生じるファイバー状シート材内のラミネートされたストリップ10は、シート材の後面すなわち下面では目に見えないように隠されながら、セキュリティエレメント12がシート材の前面すなわち上面に連続的に露出した状態でシート材に強固に接合される。これまで述べたように、ファイバー状シート材は、実質的に均一なクロスウェブキャリパー、すなわち厚みを有する。更に、ストリップ10の下方の領域は、周辺のベースプレートよりも薄く、不透明度が低く、より低い坪量を有する。
【0036】
図3には、本発明のファイバー状シート材の2プライの実施形態を製造するためのシリンダーモールドプロセスが示されている。ピックアップフェルト26によって相互に接続された2つのシリンダー製紙機22、24を使用するこのプロセスでは、2つのペーパーウェブ28、30を同時に形成し、ロール32の領域内で共に圧搾され、次に製紙機のプレスセクション、ドライヤーセクションおよびカレンダーセクションへ共に送られる。この結果得られるファイバー状シート材は、フォードリニエールプロセスを使って製造された上記シート材と同じ物理的特性を有する。当業者であれば容易に理解できるように、図3は、ウェットバットタイプのシリンダー製紙機を示すが、本発明のファイバー状シート材を製造するのに、ドライバットタイプのシリンダー製紙機を使用してもよい。
【0037】
図3に示されたシリンダー製紙機によって形成される2プライペーパーウェブ34は、ウェブの表面からセキュリティエレメント12の全体を見ることができるよう、ウェブの表面の凹部に設けられたラミネートされたストリップ10を有する。ラミネートされたストリップ10とシリンダー製紙機24内の形成シリンダー36とを接触させ、その後、シリンダー36の接触部分をパルプまたは完成紙料38内に浸漬させることにより、ペーパーウェブ30内に、ラミネートされたストリップ10を凝固させる。シリンダー36を介し、ファイバーの堆積、従ってペーパーの形成が生じるにつれ、ストリップ10のまわりにファイバーが形成され、ストリップ10をウェブ30の前面すなわち上面上の所定位置に保持する。シリンダー製紙機22により形成されるペーパーウェブ28は一様であり、ストリップ10が存在することによって生じ得る、ペーパーウェブ30の後面すなわち下面上でペーパー形成時に生じる凹凸を隠すように働く。
【0038】
当業者であれば容易に理解できるように、ダンディロールまたは形成シリンダの表面には凸状領域および/または凹状領域を設けることができ、これら領域は、製造中にストリップ10が接触する領域と部分的に重なったり、またはこの領域と境界をなすことがある。例えば本発明で意図する一実施形態では、ダンディロールまたは形成シリンダー表面のストリップ10と接触する領域側の一方にはパターンが設けられ、この結果、表面が凹状となっているストリップ10の一方の側に不透明なマークと透明なマークのパターンを有するファイバー状シート材が得られる。
【0039】
次に図4を参照する。表面が凹状となったストリップ10を有する本発明のファイバー状シート材の好ましい実施形態の全体が番号40で示されている。表面に凹部が設けられたストリップ10のセキュリティエレメント12は、シート材40の前面すなわち上面42上で連続的に露出しており、シート材の後面すなわち下面で見えないように隠されているか、もしくは開口部もしくはウィンドーを通して露出している。これらいわゆる「クリアウィンドー」によって、バックグラウンドペーパーファイバーの光散乱光がない状態で透過光でストリップ10を見ることが可能となっている。
【0040】
図4に示されたファイバー状シート材の横断面図である図5に最良に示されるように、シート材40は実質的に均一なクロスウェブキャリパー、すなわち厚みを有する。
【0041】
表面に凹部が設けられたストリップ10を有するファイバー状シート材40は、紙幣のような何回も使用するドキュメントの製造に使用するのに特に適す。しかしながら、くじ引き券のような1回使用のドキュメントを製造するのに使用される、表面に凹部が設けられたセキュリティエレメントを有するファイバー状シート材に対しては、耐久性の条件はあまり厳密でなく、活性化可能な接着性フィルム層の代わりに接着性/バインダー塗料を使用することができる。この実施形態に対しては、約0.5mm〜18mmの範囲の好ましい幅を有するセキュリティエレメント12には、接着剤/バインダー塗料がコーティングされ、このセキュリティエレメント12はファイバーが依然として移動自在な状態で形成ファイバー状ウェブへ導入される。
【0042】
好ましい接着剤/バインダー塗料として、温度が100℃〜160℃の間に達している製紙機の二次ドライヤーセクションで活性化する、水、熱および/または圧力活性化接着剤がある。これら塗料は、ポリマーが溶解乃至分散されている溶液、水溶液又は分散液の形態で塗布できる。適当な分散液は、アクリル樹脂分散液、エポキシ樹脂分散液、天然ラテックス分散液、ポリウレタン樹脂分散液、ポリ酢酸ビニル樹脂分散液、ポリビニルアルコール樹脂分散液、尿素樹脂分散液、酢酸ビニル樹脂分散液、エチレン酢酸ビニル樹脂分散液、エチレンビニルアルコール樹脂分散液、ポリエステル樹脂分散液およびそれらの混合物の群から選択されたものである。
【0043】
これまで本発明の種々の実施形態について説明したが、これら実施形態は単なる例として示したものであり、限定のために示したものではないと理解すべきである。従って、本発明の範囲はこれまで示した実施形態のいずれによっても限定すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティエレメントとファイバー状シート材との間の接着力を高めるための方法であって、
積層構造体を形成するよう、前記セキュリティエレメントの少なくとも1つの表面に1つ以上の活性化可能な接着性フィルムを接着するステップと、
ウェブ形成シリンダーの一部がパルプまたは完成紙料内に浸漬する前に、(i)フォードリニエールまたはツインワイヤー製紙機のウエットエンドにおいて、形成ファイバーウェブ上、またはその内部に、前記積層構造体を導入するか、または(ii)シリンダー製紙機内のファイバー状ウェブ形成シリンダーに対して前記積層構造体を導入するステップと、
ファイバー状ウェブが十分に凝固した後で、前記十分に凝固したファイバー状ウェブに前記セキュリティエレメントを強固に接合するように前記1つ以上の接着性フィルムを活性化するステップとを備える、接着力を高めるための方法。
【請求項2】
前記セキュリティエレメントは、金属被覆されないかまたは選択的に金属被覆された領域または層、磁気領域または層、磁気および金属を組み合わせた領域または層、エンボス加工された領域または層、カラーシフト、玉虫色、液晶、フォトクロミックおよびサーモクロミック材料のうちの1つ以上から製造されたカラー変化する塗料、ルミネッセンス塗料、磁気塗料、ルミネッセンスおよび磁気を組み合わせた塗料、ホログラフィセキュリティ特性、屈折セキュリティ特性、ホログラフィおよび屈折を組み合わせたセキュリティ特性、およびマイクロ光学的セキュリティ特性の群から選択された1つ以上のセキュリティ特性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セキュリティエレメントは、マイクロ光学的構造体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の活性化可能な接着性フィルムは、熱によって活性化される接着性フィルム、または感熱性接着性フィルム、水で活性化される接着性フィルム、および圧力で活性化される接着性フィルムの群から選択されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の活性化可能な接着性フィルムは、感熱性ポリオレフィン接着性フィルムおよび感熱性ポリウレタン接着性フィルムの群から選択された、クリアで光学的に透明であるかまたは白色の感熱性接着性フィルムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の活性化可能な接着性フィルムは、約100℃〜160℃の範囲の温度で活性化される熱活性または感熱性の接着性フィルムである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の活性化可能な接着性フィルムは、前記ファイバー状ウェブの水分レベルが前記ファイバー状ウェブの総重量を基準に約5重量%未満であるときに活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の活性化可能な接着性フィルムに接着されたセキュリティエレメントを含む、積層構造体。
【請求項9】
前記1つ以上の活性化可能な接着性フィルムは、熱によって活性化される接着性フィルム、または感熱性フィルム、水で活性化される接着性フィルム、および圧力で活性化される接着性フィルムの群から選択されたものである、請求項8に記載の積層構造体。
【請求項10】
前記1つ以上の活性化可能な接着性フィルムは、感熱性ポリオレフィン接着性フィルムおよび感熱性ポリウレタン接着性フィルムの群から選択された、クリアで光学的に透明であるかまたは白色の感熱性接着性フィルムである、請求項9に記載の積層構造体。
【請求項11】
前記セキュリティエレメントは、約15〜50ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項8に記載の積層構造体。
【請求項12】
前記セキュリティエレメントは、約15〜45ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項8に記載の積層構造体。
【請求項13】
前記1つ以上の活性化可能な接着性フィルムは、約5〜50ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項8に記載の積層構造体。
【請求項14】
前記1つ以上の活性化可能な接着性フィルム内にマイクロ回路が埋め込まれている、請求項13に記載の積層構造体。
【請求項15】
前記1つ以上の活性化可能な接着性フィルムは、約5〜35ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項8に記載の積層構造体。
【請求項16】
前記積層構造体は、活性化可能な接着性フィルムに接着されたセキュリティエレメントを含む細長いストリップまたはバンド状となっている、請求項8に記載の積層構造体。
【請求項17】
前記積層構造体は、対向する表面を有するセキュリティエレメントと、前記セキュリティエレメントの前記対向する表面の各々に接着された、活性化可能な接着性フィルムとを含む細長いストリップまたはバンド状となっている、請求項8に記載の積層構造体。
【請求項18】
実質的に均一なクロスウェブキャリパー、すなわち厚みを有し、ファイバー状ウェブと;1つ以上の積層構造体とを備え、前記1つ以上の積層構造体は、1つ以上の活性化可能な接着性フィルムに接着されたセキュリティエレメントから構成されており、前記1つ以上の積層構造体は、前記ファイバー状ウェブの表面の上またはその内部に含まれるか、または少なくとも一部がファイバー状ウェブの内部に埋め込まれている、紙幣のような複数回使用するドキュメントの製造に用いるのに適したファイバー状シート材。
【請求項19】
前記ファイバー状ウェブの前面すなわち上面内の凹部に設けられた細長いストリップまたはバンド状をした積層構造体を有し、前記細長いストリップまたはバンドが前面すなわち上面から完全に見ることができるようになっている、請求項18に記載のファイバー状シート材。
【請求項20】
前記表面の凹部に設けられたストリップは、前記ファイバー状ウェブの後面すなわち下面から見ることができないように隠されている、請求項19に記載のファイバー状シート材。
【請求項21】
前記表面の凹部に設けられたストリップは、前記ファイバー状ウェブの後面すなわち下面内の開口部またはウィンドーを通して露出している、請求項19に記載のファイバー状シート材。
【請求項22】
前記積層構造体は、約20〜100ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項19に記載のファイバー状シート材。
【請求項23】
前記積層構造体は、約20〜50ミクロンの範囲の厚さ、および約0.5〜18mmの範囲の幅を有する、請求項22に記載のファイバー状シート材。
【請求項24】
前記ファイバー状ウェブ内に一部が埋め込まれ、前記ファイバー状ウェブの少なくとも1つの表面内のウィンドー内で露出されているか、または前記ファイバー状ウェブ内に完全に埋め込まれている、細長いストリップまたはバンド状をした積層構造体を有する、請求項18に記載のファイバー状シート材。
【請求項25】
前記積層構造体が前記ファイバー状ウェブ内に完全に埋め込まれており且つ、前記セキュリティエレメントの対向する表面の各々に接着された活性化可能な接着性フィルムを有する、請求項24に記載のファイバー状シート材。
【請求項26】
前記積層構造体は、約20〜80ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項24に記載のファイバー状シート材。
【請求項27】
前記積層構造体は、約50ミクロン未満の厚さおよび少なくとも約0.5mmの幅を有する、請求項26に記載のファイバー状シート材。
【請求項28】
実質的に均一なクロスウェブキャリパー、すなわち厚みを有し、ファイバー状ウェブ;と、前記ファイバー状ウェブの表面の上または表面内に含まれるか、または少なくとも一部が前記ファイバー状ウェブ内に埋め込まれた、1つ以上の塗布されたセキュリティエレメントを含む、くじ引き券のような1回使用のドキュメントを製造する際に使用するのに適したファイバー状シート材であって、前記1つ以上のコーティングされたセキュリティエレメントは、アクリル樹脂分散液、エポキシ樹脂分散液、天然ラテックス分散液、ポリウレタン樹脂分散液、ポリ酢酸ビニル樹脂分散液、ポリビニルアルコール樹脂分散液、尿素樹脂分散液、酢酸ビニル樹脂分散液、エチレン酢酸ビニル樹脂分散液、エチレンビニルアルコール樹脂分散液、ポリエステル樹脂分散液およびそれらの混合物の群から選択された分散液の状態の接着剤/バインダー塗料でコーティングされている、ファイバー状シート材。
【請求項29】
請求項18に記載の前記ファイバー状シート材から製造されたドキュメント。
【請求項30】
請求項28に記載の前記ファイバー状シート材から製造されたドキュメント。
【請求項31】
紙幣、債券、小切手、トラベラーズチェック、IDカード、くじ引き券、パスポート、郵便切手および株式証書の群から選択されたセキュリティドキュメントである、請求項29に記載のドキュメント。
【請求項32】
小切手、トラベラーズチェック、くじ引き券および郵便切手の群から選択されたセキュリティドキュメントである、請求項30に記載のドキュメント。
【請求項33】
文房具アイテムおよびラベルの群から選択された非セキュリティドキュメントである、請求項29に記載のドキュメント。
【請求項34】
文房具アイテムおよびラベルの群から選択された非セキュリティドキュメントである、請求項30に記載のドキュメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−522975(P2011−522975A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513500(P2011−513500)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/003504
【国際公開番号】WO2009/151607
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(503457611)クレイン アンド カンパニー インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】