セキュリティーゲートシステム及びセキュリティーゲート制御方法
【課題】 短時間かつ精度よく検査対象を検査可能なセキュリティーゲートシステムおよびセキュリティーゲートの制御方法を提供すること。
【解決手段】 主通路2と、該主通路2中を移動する検査対象(例えば空港等の施設利用者)から取得した試料(例えば切符)を分析する質量分析器3と、前記試料取得位置より前記検査対象の移動方向下流側にて前記主通路2から分岐した少なくとも一つの分岐通路10と、該分岐通路10の分岐部分に設けられ前記検査対象の流れを切り替えるためのゲート(第1ゲート5,第2ゲート6)と、前記質量分析器3による分析結果に基づいて前記ゲート5,6の切替を制御する制御装置20とを備える。
【解決手段】 主通路2と、該主通路2中を移動する検査対象(例えば空港等の施設利用者)から取得した試料(例えば切符)を分析する質量分析器3と、前記試料取得位置より前記検査対象の移動方向下流側にて前記主通路2から分岐した少なくとも一つの分岐通路10と、該分岐通路10の分岐部分に設けられ前記検査対象の流れを切り替えるためのゲート(第1ゲート5,第2ゲート6)と、前記質量分析器3による分析結果に基づいて前記ゲート5,6の切替を制御する制御装置20とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば駅、空港、港湾、野球場、サッカー場、イベントホール、劇場、博物館、美術館など、人が集まる場所で使用可能なセキュリティーゲートシステムおよびセキュリティーゲートの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空港などのセキュリティーゲートでは、利用者の手荷物をX線検査に通し、内部の形状を目視することによりその安全性を探知している。このため、危険物を発見できるか否かは検査官の技量に頼っている。
【特許文献1】特開2002−170517号公報
【特許文献2】特表2002−524767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この方法では検査官の技量が必要であるほか、大勢の対象を短時間で処理することが難しく、鉄道の駅などでは採用されてない。また、X線検査よりも詳細に検査することができるパルス中性子検査装置なども開発されているが、検査時間がX線検査よりも長く、処理時間の面から空港などでは採用されていない。一方、近年においては上記のような、人が多く集まる場所における安全性の確保がより重要な課題となっている。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、短時間かつ精度よく検査対象を検査可能なセキュリティーゲートシステムおよびセキュリティーゲートの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記の課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明のセキュリティーゲートシステムは、主通路と、該主通路中を移動する検査対象から取得した試料を分析する質量分析器と、前記試料取得位置より前記検査対象の移動方向下流側にて前記主通路から分岐した少なくとも一つの分岐通路と、該分岐通路の分岐部分に設けられ前記検査対象の流れを前記主通路と前記分岐通路とに切り替えるための切替手段と、前記質量分析器による分析結果に基づいて前記切替手段を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0006】
前記セキュリティーゲートシステムは、例えば駅、空港、港湾、野球場、サッカー場、イベントホール、劇場、博物館、美術館など、人が集まる場所のセキュリティーゲートに適用可能である。上記検査対象としては、例えばこのような施設を利用する利用者ならびに該利用者の携行物(例えば手荷物等)及び装着物(例えば服等)の少なくともいずれかが想定され、質量分析器により、前記利用者等から取得した試料中に含まれる危険物質の分析が行われる。検査対象が主通路を移動する際に採取される試料の採取方法は、検査対象の移動を妨げないように短時間で行われることが望ましい。例えば検査対象に対して吹き付けられた空気や、前記利用者から渡された施設利用チケットや交通機関用切符等の利用証等の物品(以下、「切符」という)を試料として用いることが考えられる。
採取された試料から危険物質、例えば爆薬を同定するための質量分析器は、ほぼ一瞬で検知が可能である。このため、検査対象の流れを妨げることがない。なお、質量分析器としては既知の装置を利用することができる。
質量分析器の検出結果に基づき、制御装置が切替手段(例えばゲート)を制御し、検査対象の通路を切り替える。したがって、より詳細な検査が必要で、主通路に留まっていると他の検査対象の移動が妨げられるような特定の対象と、詳細な検査が不必要な他の検査対象とが、自動的に異なる通路に誘導されることとなる。この分岐路は主通路から一つだけ分岐していてもよいし、質量分析器の検出結果に基づいてより詳細な検査を多段階で評価するため、評価結果に対応して複数の分岐通路を設けてもよい。
なお、検査対象としては、上記の人ならびにその携行物及び装着物の他、人が運転する車両、貨物集配場等における貨物、などであってもよい。
【0007】
前記本発明のセキュリティーゲートシステムにおいて、前記検査対象は人であり、前記質量分析器により、前記試料として前記人から渡された切符に付着する物質が同定されることとしてもよい。
【0008】
本発明のセキュリティーゲートシステムにおいて試料として切符を用いることで、利用者は通常のゲートと同じように本発明のセキュリティーゲートシステムを通過するだけで検査が可能となる。
【0009】
前記本発明のセキュリティーゲートシステムは、前記分岐通路中の検査対象から取得した試料を詳細に検査する精細検査装置を備えていてもよい。
【0010】
分岐通路に精細検査装置が設けられていることにより、質量分析器による検出結果に基づいてより詳細な検査が必要と判定された場合に、確実な検査が可能となる。このように質量分析器の検査結果に基づいてゲートにより検査対象を分け、必要な場合にのみ精細検査装置により検査する構成であるから、多くの一般検査対象の移動を妨げず、なおかつ、必要な場合にはより詳細な(検査時間を要する)検査を行うことで、検査精度を向上することができる。
前記精細検査装置としては、パルス中性子検査装置または/およびX線検査装置を含むことができる。これにより、対象とする物(例えば手荷物)を開封することなく、検査することができる。パルス中性子検査装置はX線より精度が高く、またパルス中性子検査装置とX線とを併用すれば、更に精度を向上させることができる。
【0011】
前記精細検査装置を設けた本発明のセキュリティーゲートシステムにおいて、さらに前記分岐通路には前記精細検査装置の検査位置より前記検査対象の移動方向下流側にゲートが設けられ、前記制御装置は、前記精細検査装置による検出結果に基づいて前記ゲートの開閉を制御することとしてもよい。
【0012】
上記精細検査装置による検出結果に応じて、例えば利用者が施設に立ち入ることを阻止したり、さらに下流側において的確な通路等に導いたりすることができる。
【0013】
前記本発明のセキュリティーゲートシステムは、前記主通路中を移動する検査対象を検査するミリ波分析器を更に備えていてもよい。
【0014】
ミリ波分析器を質量分析器と組み合わせることで、さらに精度の高い検査が可能となる。また、ミリ波分析器は質量分析器と同様に検査時間が短く、検査対象の移動の妨げとならない。
【0015】
また本発明のセキュリティーゲート制御方法は、主通路を移動する検査対象から試料を採取し、質量分析器にて前記試料を検査し、その検査結果に応じてより詳細な検査が必要と判断された前記検査対象を前記主通路から分岐させることを特徴とする。
【0016】
本発明のセキュリティーゲート制御方法では、質量分析器の検出結果に基づいてゲートを制御し、検査対象(例えば人)の通路を切り替える。したがって、より詳細な検査が必要でそのために移動が妨げられるような対象と、詳細な検査が不必要な対象とが、自動的に異なる通路に誘導されることとなる。対象の流れが分岐する分岐路は主通路から一つだけ分岐していてもよいし、質量分析器の検出結果に基づいてより詳細な検査を多段階で評価するため、評価結果に対応して複数の分岐路を設けてもよい。
【0017】
前記本発明のセキュリティーゲート制御方法において、前記検査対象は人であり、前記試料として前記人から渡された切符に付着した物質を前記質量分析器によって同定することとしてもよい。
【0018】
本発明のセキュリティーゲート制御方法において試料として切符を用いることで、利用者は通常のゲートと同じようにセキュリティーゲートを通過するだけで検査が可能となる。
【0019】
前記本発明のセキュリティーゲート制御方法において、さらに前記分岐した検査対象の分岐通路のうち少なくとも一つの通路にて詳細な検査を行うことを特徴とする。
【0020】
質量分析器による検出結果に基づき、より詳細な検査が必要と判定された場合に、確実な検査を行う。前記詳細な検査を行う本発明のセキュリティーゲート制御方法では、さらにその詳細な検査の結果に基づき、対象の流れを遮断したり、的確な通路等に導いたりすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては以下の効果を得ることができる。
質量分析器の検査結果によって詳細な検査が必要な検査対象は、制御装置による切替手段の切替に誘導されて精細検査装置による検査が行われる。すなわち検査時間を要する一部の検査対象は分岐通路に誘導されるため、その他多くの検査対象の流れを妨げることなく、迅速に検査を行うことができる。
また、検査対象から取得する試料として、利用者が触れた切符を用いることで、利用者の通行を妨げずに検査が可能である。また、一般の利用者にとっては通常のゲートと同じように切符を渡して通行するだけでよく、利用者の混乱を招かない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1は本発明の一実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。本実施形態は、検査対象として、空港等の施設を利用する施設利用者(以下単に「利用者」と呼ぶ。)の手荷物や身につけている服等の内部に持っている危険物を検出するシステムである。
セキュリティーゲートシステム1は、主通路2、主通路2に設けられた質量分析器3、ミリ波分析器4を備える。ミリ波分析器4の下流には第1ゲート5及び第2ゲート6(切替手段)が設けられている。第1ゲート5は主通路2を開閉する扉であり、第2ゲート6は、質量分析器3及びミリ波分析器4の下流側で主通路2から分岐する分岐通路10の入口を開閉する扉である。分岐通路10には、パルス中性子検査装置11が設けられており、その下流には第3ゲート12が設けられている。第3ゲート12は分岐通路10を開閉する扉である。
【0023】
上記各装置は制御装置20により制御される。制御装置20は、質量分析器3による検査結果を判定する質量分析結果判定部21と、ミリ波分析器4による検査結果を判定するミリ波検査結果判定部22と、パルス中性子検査装置11による判定結果を判定するパルス中性子検査結果判定部23と、第1ゲート5の開閉を制御する第1ゲート制御部26と、第2ゲート6の開閉を制御する第2ゲート制御部27と、第3ゲート12の開閉を制御する第3ゲート制御部28と、これら各制御部及び判定部を統括して制御するCPU30とを備える。
【0024】
質量分析器21は既知のものを採用することができる。例えば、特開2002−170517号公報等に記載の技術を利用可能である。詳細には、サンプルガスを真空紫外光によりイオン化するイオン化手段と、前記真空紫外光によりイオン化されたイオンのうち、特定質量として危険物質(爆薬等)のイオンを蓄積するイオントラップと、前記イオントラップ中に蓄積された前記イオンを加速させ、その加速されたイオンの飛行時間に基づいて前記サンプルガス中の前記特定質量の化学物質を同定する飛行時間型質量分析手段とを備える。
サンプルガスとしては、利用者から渡された切符に付着した物質を含むガスとすることができる。なお、通行する人に空気を吹きかけ、その空気をサンプルガスとして取り出してもよい。これにより衣服等に危険物質が付着しているか否かを判定することができる。
【0025】
本実施形態では質量分析器3を用いることにより、利用者が所持している可能性がある危険物質を目視ではなく短時間で直接同定することができる。
【0026】
ミリ波分析器4は既知のものを採用することができる。例えば、特表2002−524767号公報に記載のスキャンシステムを利用可能である。図2に概略を示したように、ミリ波送波アンテナ60及びミリ波受波アンテナ61を備え、発信器62によって送信されたミリ波を利用者およびその手荷物に対してスキャンし、その受信波から複素ホログラフィック信号を得る。これによりオペレータが利用者の所持物等を目視判定する。
このように、ミリ波分析器4を用いることで、利用者はアンテナ60,61前を通行する際に利用者が身につけている服等に隠れている物およびその手荷物をスキャンすることができる。
このように、ミリ波分析器4を用いることで、利用者は立ち止まることなく検査できる。また従来空港などで用いられているX線検査装置とは異なり、人体に対して安全に検査することができる。質量分析器3及びミリ波分析器4の検査で約1秒の短時間で検査可能である。
【0027】
パルス中性子検査装置11は既知のものを採用することができる。例えば従来においてコンテナに対して用いられている、ガンマ線を検出することで爆薬を検知する装置を利用可能である。手荷物等にパルス中性子を照射し、高速中性子と熱中性子によるガンマ線の双方を利用し、図3に示した元素比を算出する。窒素/酸素比と炭素/酸素比から、爆発物を同定することができる。
これにより、10kg程度の爆発物を数分以内に誤報率1%以下で同定することができる。
【0028】
制御装置20は既知のコンピュータシステムを利用することができ、CPU30等の他、ROM、RAM、プログラムが格納されたHDD等の記憶装置、入出力インタフェース及びディスプレイなどの公知構成を備える。
【0029】
第1ゲート5及び第2ゲート6は、主通路2を通行する人の流れを、適宜分岐通路10側へ導く。制御装置20によって開閉が制御され、いずれか一方が選択的に開となる。
【0030】
このように構成されたセキュリティーゲートシステム1がCPU30によって制御される際の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
利用者は、主通路2を通行する際に、手に持った切符を質量分析器3に通す。質量分析器3では、切符に付着している危険物質を同定する。例えば、利用者が事前に爆薬等に触れていると、その分子が手から切符に付着している。質量分析器3では、切符に付着している物質を分子量から同定する。
【0031】
次に、利用者はミリ波分析器4を通行し、その際にミリ波分析器4によって手荷物中または身につけている服等の中の危険物質の有無が検出される。
質量分析器3およびミリ波分析器4による検出は約1秒で完了し、利用者は立ち止まることなくこれら検査が行われる。
質量分析器3による検査結果は質量分析結果判定部21にて判定される。合格である場合には出力値J1=0,切符に危険物質が付着している疑いがある場合には出力値J1=1をCPU30に出力する。ミリ波分析器4による検査結果はミリ波検査結果判定部22にて判定される。ここでも同様に、合格である場合には出力値J2=0,利用者が危険物質を所持している疑いがある場合には出力値J2=1をCPU30に出力する。
CPU30は図4のステップS1に従い、J1+J2=0である場合にはステップS2に進み、J1+J2>0である場合にはステップS3に進む。すなわち、質量分析器3またはミリ波分析器4のいずれか一方で危険物質の疑いが検出された場合にステップS3に進む。
【0032】
ステップS2では、CPU30は各ゲートを制御する。第1ゲート5を開、第2ゲート6を閉とする。これにより、利用者はそのまま立ち止まることなく主通路2に導かれて第1ゲート5を通過する。第1ゲート5を通過した利用者は、このままセキュリティーゲートシステム1を通過して処理が終了となる。
ステップS3では、CPU30は各ゲートを制御する。第1ゲート5を閉、第2ゲート6を開、第3ゲート12を閉とする。これにより、利用者は分岐通路10に誘導される。
分岐通路10では、利用者の手荷物等がパルス中性子検査装置11によって分析される。パルス中性子検査装置11による検査結果はパルス中性子検査結果判定部23にて判定される。合格である場合には出力値J3=0,手荷物に危険物質が含まれている疑いがある場合には出力値J3=1をCPU30に出力する。ステップS4で、CPU30はその値に応じ、値0の場合はステップS5,値1の場合にはステップS6に進む。
【0033】
ステップS5では、CPU30は第3ゲート12を開き、利用者は分岐通路10によって導かれて第3ゲート12を通過する。この利用者に対しては、必要であれば尋問等、人的手段によって検査を行うことができる。
ステップS6では、CPU30は第2ゲート6を閉じ、利用者の通過を阻止する。必要であれば警報を発する等の処理を行うことができる。
【0034】
このように、本実施形態のセキュリティーゲートシステム1では、多くの一般利用者は主通路2を通行するだけでセキュリティーチェックが終了する。より詳細な検査が必要な一部の利用者は、CPU30によるゲートの切替に誘導されてパルス中性子検査装置11による検査が行われる。したがって、主通路2における利用者の通行が妨げられることなく、迅速に検査を行うことができる。
また、利用者が触れた切符に付着している物質を検出するため、利用者の歩行を妨げない。また、一般の利用者にとっては通常のゲートと同じように切符を渡して通行するだけでよく、利用者の混乱を招かない。
また、質量分析器3とミリ波分析器4とを組み合わせることにより、正確な検査を行うことができる。特に検査官の技量だけに頼らず、質量分析器3を用いて危険物質を機械的に検出するため、より確実な検査が可能となる。
【0035】
<第2実施形態>
図5はセキュリティーゲートシステムの第2実施形態である。本セキュリティーゲートシステム50の構成は、ミリ波分析器4を備えていない点以外は上記第1実施形態と同じである。
本実施形態においては、CPU30は図6のフローに従って動作する。ステップS1にて、J1=0である場合にはステップS2に進み、J1=1である場合にはステップS3に進む。すなわち、質量分析器3で危険物質の疑いが検出された場合にステップS3に進む。以後の構成は上記第1実施形態と同じである。
本実施形態においても、上記の実施形態と同様、利用者の通行を妨げることなく、迅速に検査を実施することができる。
【0036】
<第3実施形態>
図7はセキュリティーゲートシステムの第3実施形態である。本セキュリティーゲートシステム51の構成は、パルス中性子検査装置11とともにX線検査器32を備えている点以外は上記第1実施形態と同じである。X線検査器32の検出結果は、X線検査結果判定部33にて判定される。X線検査結果判定部33は合格である場合には出力値J4=0,手荷物に危険物質が含まれている疑いがある場合には出力値J4=1をCPU30に出力する。
CPU30は図8のフローに従って動作する。ステップS4にて、J3+J4=0である場合にはステップS5に進み、J3+J4>0である場合にはステップS6に進む。すなわち、パルス中性子検査装置11またはX線検査器32のいずれか一方で危険物質の疑いが検出された場合にステップS6に進む。他のステップは上記第1実施形態と同じである。
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができるほか、パルス中性子検査装置11とともにX線検査器32を用いて危険物質の検出を行うため、精度を向上することができる。
【0037】
<第4実施形態>
図9はセキュリティーゲートシステムの第4実施形態である。本セキュリティーゲートシステム52は、第2実施形態と同様にミリ波分析器4を備えず、第3実施形態と同様にパルス中性子検査装置11とともにX線検査器32を備える。他の構成は上記第1実施形態と同じである。
本システムの動作フローを図10に示した。詳細については上記各実施形態と同様であり、説明を省略する。
本実施形態によれば、上記第3実施形態と同様、パルス中性子検査装置11とともにX線検査器32を用いて危険物質の検出を行うため、精度を向上することができる。
【0038】
なお、変形例として以下の実施形態とすることもできる。すなわち、図11、図12に示した第5実施形態のセキュリティーゲートシステム53のように、第2実施形態のパルス中性子検査装置11に換えてX線検査器32を設けてもよい。また、図13、図14に示した第6実施形態のセキュリティーゲートシステム54ように、第1実施形態のパルス中性子検査装置11に換えてX線検査器32を設けてもよい。
【0039】
さらに、上記第3、第4実施形態のステップS4においてはJ3+J4>0をステップS6に進むための条件としたが、J3+J4>1の場合にステップS6に進むようにしてもよい。すなわち、パルス中性子検査装置11とX線検査器32の検出結果が共に疑い有りの場合にステップS6に進んで警報等を発するようにしてもよい。
【0040】
また、上記各実施形態においては、質量分析器3は切符に付着した危険物質を同定したが、利用者に対して空気を吹き付け、その空気に含まれる物質を検査してもよい。この場合にも、利用者の通行を妨げることなく迅速に検査を行うことができる。
【0041】
また、質量分析器3の下流側にゲートを設けず、主通路2を通行する施設利用者から渡された切符等を質量分析器3によって検査した結果に応じ、警報が発せられる等のシステムに応用してもよい。この場合には、係員がその利用者を詳細に検査したり、別の場所に誘導したりするようにすればよい。この場合においても、利用者は通常の施設利用と同じように切符を渡すだけでよく、利用者の混乱を招くことなく検査を行うことができる。また、既存の設備に対し、通路の変更やゲートの設置等の大規模な改良等を加えることなく、本技術の適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図2】同セキュリティーゲートシステムに用いられるミリ波分析器の概略構成である。
【図3】同セキュリティーゲートシステムに用いられるパルス中性子検査装置による爆発物同定について示した図である。
【図4】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図6】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図8】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図9】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図10】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図12】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図13】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図14】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 セキュリティーゲートシステム
2 主通路
3 質量分析器
4 ミリ波分析器
5 第1ゲート(切替手段)
6 第2ゲート(切替手段)
10 分岐通路
11 パルス中性子検査装置(精細検査装置)
12 第3ゲート
20 制御装置
30 CPU
32 X線検査器(精細検査装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば駅、空港、港湾、野球場、サッカー場、イベントホール、劇場、博物館、美術館など、人が集まる場所で使用可能なセキュリティーゲートシステムおよびセキュリティーゲートの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空港などのセキュリティーゲートでは、利用者の手荷物をX線検査に通し、内部の形状を目視することによりその安全性を探知している。このため、危険物を発見できるか否かは検査官の技量に頼っている。
【特許文献1】特開2002−170517号公報
【特許文献2】特表2002−524767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この方法では検査官の技量が必要であるほか、大勢の対象を短時間で処理することが難しく、鉄道の駅などでは採用されてない。また、X線検査よりも詳細に検査することができるパルス中性子検査装置なども開発されているが、検査時間がX線検査よりも長く、処理時間の面から空港などでは採用されていない。一方、近年においては上記のような、人が多く集まる場所における安全性の確保がより重要な課題となっている。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、短時間かつ精度よく検査対象を検査可能なセキュリティーゲートシステムおよびセキュリティーゲートの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記の課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明のセキュリティーゲートシステムは、主通路と、該主通路中を移動する検査対象から取得した試料を分析する質量分析器と、前記試料取得位置より前記検査対象の移動方向下流側にて前記主通路から分岐した少なくとも一つの分岐通路と、該分岐通路の分岐部分に設けられ前記検査対象の流れを前記主通路と前記分岐通路とに切り替えるための切替手段と、前記質量分析器による分析結果に基づいて前記切替手段を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0006】
前記セキュリティーゲートシステムは、例えば駅、空港、港湾、野球場、サッカー場、イベントホール、劇場、博物館、美術館など、人が集まる場所のセキュリティーゲートに適用可能である。上記検査対象としては、例えばこのような施設を利用する利用者ならびに該利用者の携行物(例えば手荷物等)及び装着物(例えば服等)の少なくともいずれかが想定され、質量分析器により、前記利用者等から取得した試料中に含まれる危険物質の分析が行われる。検査対象が主通路を移動する際に採取される試料の採取方法は、検査対象の移動を妨げないように短時間で行われることが望ましい。例えば検査対象に対して吹き付けられた空気や、前記利用者から渡された施設利用チケットや交通機関用切符等の利用証等の物品(以下、「切符」という)を試料として用いることが考えられる。
採取された試料から危険物質、例えば爆薬を同定するための質量分析器は、ほぼ一瞬で検知が可能である。このため、検査対象の流れを妨げることがない。なお、質量分析器としては既知の装置を利用することができる。
質量分析器の検出結果に基づき、制御装置が切替手段(例えばゲート)を制御し、検査対象の通路を切り替える。したがって、より詳細な検査が必要で、主通路に留まっていると他の検査対象の移動が妨げられるような特定の対象と、詳細な検査が不必要な他の検査対象とが、自動的に異なる通路に誘導されることとなる。この分岐路は主通路から一つだけ分岐していてもよいし、質量分析器の検出結果に基づいてより詳細な検査を多段階で評価するため、評価結果に対応して複数の分岐通路を設けてもよい。
なお、検査対象としては、上記の人ならびにその携行物及び装着物の他、人が運転する車両、貨物集配場等における貨物、などであってもよい。
【0007】
前記本発明のセキュリティーゲートシステムにおいて、前記検査対象は人であり、前記質量分析器により、前記試料として前記人から渡された切符に付着する物質が同定されることとしてもよい。
【0008】
本発明のセキュリティーゲートシステムにおいて試料として切符を用いることで、利用者は通常のゲートと同じように本発明のセキュリティーゲートシステムを通過するだけで検査が可能となる。
【0009】
前記本発明のセキュリティーゲートシステムは、前記分岐通路中の検査対象から取得した試料を詳細に検査する精細検査装置を備えていてもよい。
【0010】
分岐通路に精細検査装置が設けられていることにより、質量分析器による検出結果に基づいてより詳細な検査が必要と判定された場合に、確実な検査が可能となる。このように質量分析器の検査結果に基づいてゲートにより検査対象を分け、必要な場合にのみ精細検査装置により検査する構成であるから、多くの一般検査対象の移動を妨げず、なおかつ、必要な場合にはより詳細な(検査時間を要する)検査を行うことで、検査精度を向上することができる。
前記精細検査装置としては、パルス中性子検査装置または/およびX線検査装置を含むことができる。これにより、対象とする物(例えば手荷物)を開封することなく、検査することができる。パルス中性子検査装置はX線より精度が高く、またパルス中性子検査装置とX線とを併用すれば、更に精度を向上させることができる。
【0011】
前記精細検査装置を設けた本発明のセキュリティーゲートシステムにおいて、さらに前記分岐通路には前記精細検査装置の検査位置より前記検査対象の移動方向下流側にゲートが設けられ、前記制御装置は、前記精細検査装置による検出結果に基づいて前記ゲートの開閉を制御することとしてもよい。
【0012】
上記精細検査装置による検出結果に応じて、例えば利用者が施設に立ち入ることを阻止したり、さらに下流側において的確な通路等に導いたりすることができる。
【0013】
前記本発明のセキュリティーゲートシステムは、前記主通路中を移動する検査対象を検査するミリ波分析器を更に備えていてもよい。
【0014】
ミリ波分析器を質量分析器と組み合わせることで、さらに精度の高い検査が可能となる。また、ミリ波分析器は質量分析器と同様に検査時間が短く、検査対象の移動の妨げとならない。
【0015】
また本発明のセキュリティーゲート制御方法は、主通路を移動する検査対象から試料を採取し、質量分析器にて前記試料を検査し、その検査結果に応じてより詳細な検査が必要と判断された前記検査対象を前記主通路から分岐させることを特徴とする。
【0016】
本発明のセキュリティーゲート制御方法では、質量分析器の検出結果に基づいてゲートを制御し、検査対象(例えば人)の通路を切り替える。したがって、より詳細な検査が必要でそのために移動が妨げられるような対象と、詳細な検査が不必要な対象とが、自動的に異なる通路に誘導されることとなる。対象の流れが分岐する分岐路は主通路から一つだけ分岐していてもよいし、質量分析器の検出結果に基づいてより詳細な検査を多段階で評価するため、評価結果に対応して複数の分岐路を設けてもよい。
【0017】
前記本発明のセキュリティーゲート制御方法において、前記検査対象は人であり、前記試料として前記人から渡された切符に付着した物質を前記質量分析器によって同定することとしてもよい。
【0018】
本発明のセキュリティーゲート制御方法において試料として切符を用いることで、利用者は通常のゲートと同じようにセキュリティーゲートを通過するだけで検査が可能となる。
【0019】
前記本発明のセキュリティーゲート制御方法において、さらに前記分岐した検査対象の分岐通路のうち少なくとも一つの通路にて詳細な検査を行うことを特徴とする。
【0020】
質量分析器による検出結果に基づき、より詳細な検査が必要と判定された場合に、確実な検査を行う。前記詳細な検査を行う本発明のセキュリティーゲート制御方法では、さらにその詳細な検査の結果に基づき、対象の流れを遮断したり、的確な通路等に導いたりすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては以下の効果を得ることができる。
質量分析器の検査結果によって詳細な検査が必要な検査対象は、制御装置による切替手段の切替に誘導されて精細検査装置による検査が行われる。すなわち検査時間を要する一部の検査対象は分岐通路に誘導されるため、その他多くの検査対象の流れを妨げることなく、迅速に検査を行うことができる。
また、検査対象から取得する試料として、利用者が触れた切符を用いることで、利用者の通行を妨げずに検査が可能である。また、一般の利用者にとっては通常のゲートと同じように切符を渡して通行するだけでよく、利用者の混乱を招かない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1は本発明の一実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。本実施形態は、検査対象として、空港等の施設を利用する施設利用者(以下単に「利用者」と呼ぶ。)の手荷物や身につけている服等の内部に持っている危険物を検出するシステムである。
セキュリティーゲートシステム1は、主通路2、主通路2に設けられた質量分析器3、ミリ波分析器4を備える。ミリ波分析器4の下流には第1ゲート5及び第2ゲート6(切替手段)が設けられている。第1ゲート5は主通路2を開閉する扉であり、第2ゲート6は、質量分析器3及びミリ波分析器4の下流側で主通路2から分岐する分岐通路10の入口を開閉する扉である。分岐通路10には、パルス中性子検査装置11が設けられており、その下流には第3ゲート12が設けられている。第3ゲート12は分岐通路10を開閉する扉である。
【0023】
上記各装置は制御装置20により制御される。制御装置20は、質量分析器3による検査結果を判定する質量分析結果判定部21と、ミリ波分析器4による検査結果を判定するミリ波検査結果判定部22と、パルス中性子検査装置11による判定結果を判定するパルス中性子検査結果判定部23と、第1ゲート5の開閉を制御する第1ゲート制御部26と、第2ゲート6の開閉を制御する第2ゲート制御部27と、第3ゲート12の開閉を制御する第3ゲート制御部28と、これら各制御部及び判定部を統括して制御するCPU30とを備える。
【0024】
質量分析器21は既知のものを採用することができる。例えば、特開2002−170517号公報等に記載の技術を利用可能である。詳細には、サンプルガスを真空紫外光によりイオン化するイオン化手段と、前記真空紫外光によりイオン化されたイオンのうち、特定質量として危険物質(爆薬等)のイオンを蓄積するイオントラップと、前記イオントラップ中に蓄積された前記イオンを加速させ、その加速されたイオンの飛行時間に基づいて前記サンプルガス中の前記特定質量の化学物質を同定する飛行時間型質量分析手段とを備える。
サンプルガスとしては、利用者から渡された切符に付着した物質を含むガスとすることができる。なお、通行する人に空気を吹きかけ、その空気をサンプルガスとして取り出してもよい。これにより衣服等に危険物質が付着しているか否かを判定することができる。
【0025】
本実施形態では質量分析器3を用いることにより、利用者が所持している可能性がある危険物質を目視ではなく短時間で直接同定することができる。
【0026】
ミリ波分析器4は既知のものを採用することができる。例えば、特表2002−524767号公報に記載のスキャンシステムを利用可能である。図2に概略を示したように、ミリ波送波アンテナ60及びミリ波受波アンテナ61を備え、発信器62によって送信されたミリ波を利用者およびその手荷物に対してスキャンし、その受信波から複素ホログラフィック信号を得る。これによりオペレータが利用者の所持物等を目視判定する。
このように、ミリ波分析器4を用いることで、利用者はアンテナ60,61前を通行する際に利用者が身につけている服等に隠れている物およびその手荷物をスキャンすることができる。
このように、ミリ波分析器4を用いることで、利用者は立ち止まることなく検査できる。また従来空港などで用いられているX線検査装置とは異なり、人体に対して安全に検査することができる。質量分析器3及びミリ波分析器4の検査で約1秒の短時間で検査可能である。
【0027】
パルス中性子検査装置11は既知のものを採用することができる。例えば従来においてコンテナに対して用いられている、ガンマ線を検出することで爆薬を検知する装置を利用可能である。手荷物等にパルス中性子を照射し、高速中性子と熱中性子によるガンマ線の双方を利用し、図3に示した元素比を算出する。窒素/酸素比と炭素/酸素比から、爆発物を同定することができる。
これにより、10kg程度の爆発物を数分以内に誤報率1%以下で同定することができる。
【0028】
制御装置20は既知のコンピュータシステムを利用することができ、CPU30等の他、ROM、RAM、プログラムが格納されたHDD等の記憶装置、入出力インタフェース及びディスプレイなどの公知構成を備える。
【0029】
第1ゲート5及び第2ゲート6は、主通路2を通行する人の流れを、適宜分岐通路10側へ導く。制御装置20によって開閉が制御され、いずれか一方が選択的に開となる。
【0030】
このように構成されたセキュリティーゲートシステム1がCPU30によって制御される際の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
利用者は、主通路2を通行する際に、手に持った切符を質量分析器3に通す。質量分析器3では、切符に付着している危険物質を同定する。例えば、利用者が事前に爆薬等に触れていると、その分子が手から切符に付着している。質量分析器3では、切符に付着している物質を分子量から同定する。
【0031】
次に、利用者はミリ波分析器4を通行し、その際にミリ波分析器4によって手荷物中または身につけている服等の中の危険物質の有無が検出される。
質量分析器3およびミリ波分析器4による検出は約1秒で完了し、利用者は立ち止まることなくこれら検査が行われる。
質量分析器3による検査結果は質量分析結果判定部21にて判定される。合格である場合には出力値J1=0,切符に危険物質が付着している疑いがある場合には出力値J1=1をCPU30に出力する。ミリ波分析器4による検査結果はミリ波検査結果判定部22にて判定される。ここでも同様に、合格である場合には出力値J2=0,利用者が危険物質を所持している疑いがある場合には出力値J2=1をCPU30に出力する。
CPU30は図4のステップS1に従い、J1+J2=0である場合にはステップS2に進み、J1+J2>0である場合にはステップS3に進む。すなわち、質量分析器3またはミリ波分析器4のいずれか一方で危険物質の疑いが検出された場合にステップS3に進む。
【0032】
ステップS2では、CPU30は各ゲートを制御する。第1ゲート5を開、第2ゲート6を閉とする。これにより、利用者はそのまま立ち止まることなく主通路2に導かれて第1ゲート5を通過する。第1ゲート5を通過した利用者は、このままセキュリティーゲートシステム1を通過して処理が終了となる。
ステップS3では、CPU30は各ゲートを制御する。第1ゲート5を閉、第2ゲート6を開、第3ゲート12を閉とする。これにより、利用者は分岐通路10に誘導される。
分岐通路10では、利用者の手荷物等がパルス中性子検査装置11によって分析される。パルス中性子検査装置11による検査結果はパルス中性子検査結果判定部23にて判定される。合格である場合には出力値J3=0,手荷物に危険物質が含まれている疑いがある場合には出力値J3=1をCPU30に出力する。ステップS4で、CPU30はその値に応じ、値0の場合はステップS5,値1の場合にはステップS6に進む。
【0033】
ステップS5では、CPU30は第3ゲート12を開き、利用者は分岐通路10によって導かれて第3ゲート12を通過する。この利用者に対しては、必要であれば尋問等、人的手段によって検査を行うことができる。
ステップS6では、CPU30は第2ゲート6を閉じ、利用者の通過を阻止する。必要であれば警報を発する等の処理を行うことができる。
【0034】
このように、本実施形態のセキュリティーゲートシステム1では、多くの一般利用者は主通路2を通行するだけでセキュリティーチェックが終了する。より詳細な検査が必要な一部の利用者は、CPU30によるゲートの切替に誘導されてパルス中性子検査装置11による検査が行われる。したがって、主通路2における利用者の通行が妨げられることなく、迅速に検査を行うことができる。
また、利用者が触れた切符に付着している物質を検出するため、利用者の歩行を妨げない。また、一般の利用者にとっては通常のゲートと同じように切符を渡して通行するだけでよく、利用者の混乱を招かない。
また、質量分析器3とミリ波分析器4とを組み合わせることにより、正確な検査を行うことができる。特に検査官の技量だけに頼らず、質量分析器3を用いて危険物質を機械的に検出するため、より確実な検査が可能となる。
【0035】
<第2実施形態>
図5はセキュリティーゲートシステムの第2実施形態である。本セキュリティーゲートシステム50の構成は、ミリ波分析器4を備えていない点以外は上記第1実施形態と同じである。
本実施形態においては、CPU30は図6のフローに従って動作する。ステップS1にて、J1=0である場合にはステップS2に進み、J1=1である場合にはステップS3に進む。すなわち、質量分析器3で危険物質の疑いが検出された場合にステップS3に進む。以後の構成は上記第1実施形態と同じである。
本実施形態においても、上記の実施形態と同様、利用者の通行を妨げることなく、迅速に検査を実施することができる。
【0036】
<第3実施形態>
図7はセキュリティーゲートシステムの第3実施形態である。本セキュリティーゲートシステム51の構成は、パルス中性子検査装置11とともにX線検査器32を備えている点以外は上記第1実施形態と同じである。X線検査器32の検出結果は、X線検査結果判定部33にて判定される。X線検査結果判定部33は合格である場合には出力値J4=0,手荷物に危険物質が含まれている疑いがある場合には出力値J4=1をCPU30に出力する。
CPU30は図8のフローに従って動作する。ステップS4にて、J3+J4=0である場合にはステップS5に進み、J3+J4>0である場合にはステップS6に進む。すなわち、パルス中性子検査装置11またはX線検査器32のいずれか一方で危険物質の疑いが検出された場合にステップS6に進む。他のステップは上記第1実施形態と同じである。
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができるほか、パルス中性子検査装置11とともにX線検査器32を用いて危険物質の検出を行うため、精度を向上することができる。
【0037】
<第4実施形態>
図9はセキュリティーゲートシステムの第4実施形態である。本セキュリティーゲートシステム52は、第2実施形態と同様にミリ波分析器4を備えず、第3実施形態と同様にパルス中性子検査装置11とともにX線検査器32を備える。他の構成は上記第1実施形態と同じである。
本システムの動作フローを図10に示した。詳細については上記各実施形態と同様であり、説明を省略する。
本実施形態によれば、上記第3実施形態と同様、パルス中性子検査装置11とともにX線検査器32を用いて危険物質の検出を行うため、精度を向上することができる。
【0038】
なお、変形例として以下の実施形態とすることもできる。すなわち、図11、図12に示した第5実施形態のセキュリティーゲートシステム53のように、第2実施形態のパルス中性子検査装置11に換えてX線検査器32を設けてもよい。また、図13、図14に示した第6実施形態のセキュリティーゲートシステム54ように、第1実施形態のパルス中性子検査装置11に換えてX線検査器32を設けてもよい。
【0039】
さらに、上記第3、第4実施形態のステップS4においてはJ3+J4>0をステップS6に進むための条件としたが、J3+J4>1の場合にステップS6に進むようにしてもよい。すなわち、パルス中性子検査装置11とX線検査器32の検出結果が共に疑い有りの場合にステップS6に進んで警報等を発するようにしてもよい。
【0040】
また、上記各実施形態においては、質量分析器3は切符に付着した危険物質を同定したが、利用者に対して空気を吹き付け、その空気に含まれる物質を検査してもよい。この場合にも、利用者の通行を妨げることなく迅速に検査を行うことができる。
【0041】
また、質量分析器3の下流側にゲートを設けず、主通路2を通行する施設利用者から渡された切符等を質量分析器3によって検査した結果に応じ、警報が発せられる等のシステムに応用してもよい。この場合には、係員がその利用者を詳細に検査したり、別の場所に誘導したりするようにすればよい。この場合においても、利用者は通常の施設利用と同じように切符を渡すだけでよく、利用者の混乱を招くことなく検査を行うことができる。また、既存の設備に対し、通路の変更やゲートの設置等の大規模な改良等を加えることなく、本技術の適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図2】同セキュリティーゲートシステムに用いられるミリ波分析器の概略構成である。
【図3】同セキュリティーゲートシステムに用いられるパルス中性子検査装置による爆発物同定について示した図である。
【図4】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図6】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図8】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図9】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図10】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図12】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【図13】本発明の他の実施形態として示したセキュリティーゲートシステムの概略構成図である。
【図14】同セキュリティーゲートシステムによるセキュリティーゲートの制御方法について示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 セキュリティーゲートシステム
2 主通路
3 質量分析器
4 ミリ波分析器
5 第1ゲート(切替手段)
6 第2ゲート(切替手段)
10 分岐通路
11 パルス中性子検査装置(精細検査装置)
12 第3ゲート
20 制御装置
30 CPU
32 X線検査器(精細検査装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主通路と、該主通路中を移動する検査対象から取得した試料を分析する質量分析器と、前記試料取得位置より前記検査対象の移動方向下流側にて前記主通路から分岐した少なくとも一つの分岐通路と、該分岐通路の分岐部分に設けられ前記検査対象の流れを前記主通路と前記分岐通路とに切り替えるための切替手段と、前記質量分析器による分析結果に基づいて前記切替手段を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするセキュリティーゲートシステム。
【請求項2】
前記検査対象は人であり、前記質量分析器により、前記試料として前記人から渡された切符に付着する物質が同定されることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項3】
前記分岐通路中の検査対象を詳細に検査する精細検査装置を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項4】
前記精細検査装置はパルス中性子検査装置を含むことを特徴とする請求項3に記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項5】
前記精細検査装置はX線検査装置を含むことを特徴とする請求項3または4に記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項6】
さらに前記分岐通路には前記精細検査装置の検査位置より前記検査対象の移動方向下流側にゲートが設けられ、前記制御装置は、前記精細検査装置による検出結果に基づいて前記ゲートの開閉を制御することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項7】
前記主通路中を移動する前記検査対象を検査するミリ波分析器を更に備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項8】
主通路を移動する検査対象から試料を採取し、質量分析器にて前記試料を検査し、その検査結果に応じてより詳細な検査が必要と判断された前記検査対象を前記主通路から分岐させることを特徴とするセキュリティーゲート制御方法。
【請求項9】
前記検査対象は人であり、前記試料として前記人から渡された切符に付着した物質を前記質量分析器によって同定することを特徴とする請求項8に記載のセキュリティーゲート制御方法。
【請求項10】
さらに前記分岐した検査対象の通路のうち少なくとも一つの分岐通路にて詳細な検査を行う請求項8または9に記載のセキュリティーゲート制御方法。
【請求項1】
主通路と、該主通路中を移動する検査対象から取得した試料を分析する質量分析器と、前記試料取得位置より前記検査対象の移動方向下流側にて前記主通路から分岐した少なくとも一つの分岐通路と、該分岐通路の分岐部分に設けられ前記検査対象の流れを前記主通路と前記分岐通路とに切り替えるための切替手段と、前記質量分析器による分析結果に基づいて前記切替手段を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするセキュリティーゲートシステム。
【請求項2】
前記検査対象は人であり、前記質量分析器により、前記試料として前記人から渡された切符に付着する物質が同定されることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項3】
前記分岐通路中の検査対象を詳細に検査する精細検査装置を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項4】
前記精細検査装置はパルス中性子検査装置を含むことを特徴とする請求項3に記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項5】
前記精細検査装置はX線検査装置を含むことを特徴とする請求項3または4に記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項6】
さらに前記分岐通路には前記精細検査装置の検査位置より前記検査対象の移動方向下流側にゲートが設けられ、前記制御装置は、前記精細検査装置による検出結果に基づいて前記ゲートの開閉を制御することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項7】
前記主通路中を移動する前記検査対象を検査するミリ波分析器を更に備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のセキュリティーゲートシステム。
【請求項8】
主通路を移動する検査対象から試料を採取し、質量分析器にて前記試料を検査し、その検査結果に応じてより詳細な検査が必要と判断された前記検査対象を前記主通路から分岐させることを特徴とするセキュリティーゲート制御方法。
【請求項9】
前記検査対象は人であり、前記試料として前記人から渡された切符に付着した物質を前記質量分析器によって同定することを特徴とする請求項8に記載のセキュリティーゲート制御方法。
【請求項10】
さらに前記分岐した検査対象の通路のうち少なくとも一つの分岐通路にて詳細な検査を行う請求項8または9に記載のセキュリティーゲート制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−187467(P2007−187467A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3675(P2006−3675)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度文部科学省科学技術総合研究委託業務、「重要課題解決型研究等の推進 テロ対策のための爆発物検出・処理統合システムの開発」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度文部科学省科学技術総合研究委託業務、「重要課題解決型研究等の推進 テロ対策のための爆発物検出・処理統合システムの開発」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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