説明

セグメントの固定工法

【課題】屈曲をさせる部分のテーパの向きや組立て順序の間違えを少なくし、通常使用しなければならない平行セグメント又はテーパセグメントの余剰を招かないセグメントの固定方法を提案する。
【解決手段】円環状に固定された既設の複数のセグメント24の内の一部のセグメントの正面、又は、新たに固定する複数のセグメント25の内の一部のセグメントの背面に、単一又は複数の間隔保持用スペーサ27を円弧状に貼付するスペーサ貼付工程と、上記間隔保持用スペーサ27が貼付された既設のセグメント24の正面24bに新たなセグメント25を固定し、又は、上記背面25aに間隔保持用スペーサ27が固定された新たなセグメント25を既設のセグメント24の正面24bに固定することにより、該既設のセグメント24の軸心から上記間隔保持用スペーサ27の厚みにより新たなセグメント25の軸心を屈曲させるセグメント固定工程と、を有してなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントの固定工法に関し、さらに詳しくは、シールド機により掘削された後方で、既設のセグメントの正面に新たなセグメントを固定する際に用いられるセグメントの固定工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド機により掘削された後方で、既設のセグメントの正面に固定するセグメントの固定工法においては、シールド機の進路である設計路線の線形が、直線部分と湾曲にするための屈曲部分とからなるとともに、これらが連なって構成される。これらのうち、設計路線の線形が直線部分に用いられるセグメントついては、円環状に固定された後の正面と背面とが平行に成形された平行セグメントを進路に沿って連続的に固定して直線部分を構築する。また、屈曲部分に用いられるセグメントについては、屈曲外側の正面と背面との幅に対して、屈曲内側の正面と背面との幅を小さく成形したテーパセグメントを進路に沿って連続的に固定して屈曲部分を構築する。すなわち、設計路線が直線部分と円弧状に屈曲する屈曲部分とから構成される場合においては、従来、上記平行セグメントとテーパセグメントとを適宜使用しながらトンネルを形成する。ちなみに、こうした平行セグメントとテーパセグメントとは、設計路線に従って予め地上において順番に積載されたセグメント群が、シールド機の後方まで搬入され、作業者は、これら順番に積載されたセグメントの順番により固定して行く。
【0003】
しかしシールド機の進路は、必ずしも設計路線の線形に沿って掘進できるとは限らず、設計路線が直線状であるにも拘わらず蛇行してしまう場合がある。この原因は、シール機が設計路線の線形に従って進行しない場合と、上記セグメント群を構成する各セグメントの積載順序が正確ではなかった場合、さらに、各セグメントの順序が正確であったにも拘らず、固定する順番を誤った場合とがある。このような場合には、シールド機を設計路線の線形に沿うように軌道修正しなければならない。
【0004】
この場合、設計路線の線形に対して蛇行した、又は蛇行し始めた既設のセグメントの実行線形を設計路線の線形に回復すべくシールド機の蛇行を修正するとともに、蛇行修正用のセグメントにより蛇行して掘削された坑道の蛇行修正をする。この場合に用いる蛇行修正用のセグメントは、蛇行を修正するために現在の実行線形に対して設計路線の線形に沿うべく屈曲させることができるものであって、屈曲外側の正面と背面との幅に対して、屈曲内側の正面と背面との幅を小さく成形したテーパ状の蛇行修正用セグメントを蛇行修正進路に沿って連続的に固定して蛇行修正部分を構築する。なお、蛇行修正用セグメントのテーパ量は、テーパセグメントよりも小さいものを用いる場合が多い。また、蛇行修正の方法としては上記蛇行修正用セグメントを用いる方法のほか、既設のセグメントと新たなセグメントとの間に楔体を介在させて、蛇行修正をする方法もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のセグメントの固定工法では、平行セグメント、1ないし2種類のテーパセグメント及び1ないし種類の蛇行修正用セグメントの複数種のセグメントを用意するのが通常であって、種類が多く組付け場所が狭小であるため、設計路線の屈曲又は蛇行修正のために屈曲をさせる部分のテーパの向きや、組立て順序を間違え易く、過剰な屈曲又は過小な屈曲を招きテーパセグメント又は蛇行修正用セグメントの使用量が増加し、通常使用しなければならない平行セグメント又はテーパセグメントの余剰を招くという問題があった。
【0006】
また、上記楔体を用いて蛇行修正をする場合には、既設のセグメントと新たなセグメントとの間に間隔を形成するものであるから、シールドジャッキにより推進する際の推力が、既設のセグメントの正面と敷設する新たなセグメントの背面との間の楔体に集中し、その応力集中によりセグメントが破損し易いとともに、該楔体の周囲に形成される隙間から漏水し易いという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した従来のセグメントの固定方法が有する課題を解決するために提案されたものであって、屈曲をさせる部分のテーパの向きや組立て順序の間違えを少なくして、通常使用しなければならない平行セグメント又はテーパセグメントの余剰を招かないとともに、シールドジャッキの推力によるセグメントの破損や、漏水を招かない新規なセグメントの固定方法を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、第1の発明(請求項1記載の発明)に係るセグメントの固定工法は、シールド機により掘削された後方において、セグメントを円環状に固定する際におけるセグメントの固定工法であって、円環状に固定された既設の複数のセグメントの内の一部のセグメントの正面、又は、新たに固定する複数のセグメントの内の一部のセグメントの背面に、単一又は複数の間隔保持用スペーサを円弧状に貼付するスペーサ貼付工程と、上記間隔保持用スペーサが貼付された既設のセグメントの正面に新たなセグメントを固定し、又は、上記背面に間隔保持用スペーサが貼付された新たなセグメントを既設のセグメントの正面に固定することにより、該既設のセグメントの軸心から上記間隔保持用スペーサの厚みにより新たなセグメントの軸心を屈曲させるセグメント固定工程と、を有してなることを特徴とするものである。
【0009】
この第1の発明では、既設のセグメントの正面又は新たに固定するセグメントの背面に単一又は複数の間隔保持用スペーサを円弧状に貼付するスペーサ貼付工程と、上記間隔保持用スペーサが貼付された既設のセグメントの正面に新たなセグメントを固定し、又は、上記背面に間隔保持用スペーサが貼付された新たなセグメントを既設のセグメントの正面に固定することにより、該既設のセグメントの軸心から上記間隔保持用スペーサの厚みにより新たなセグメントの軸心を屈曲させるセグメント固定工程と、を有してなることから、設計路線の線形が屈曲部分の場合又は蛇行修正をする場合には、既設のセグメントと新たなセグメントとの間の屈曲外側に所定の厚さの間隔保持用スペーサを貼付して屈曲させるとともに、設計路線の線形が直線部分の場合には、間隔保持用スペーサを貼付せずに正面と背面とが平行なセグメントを連続的に固定して構築することができる。
【0010】
すなわち、設計路線の線形が屈曲部分の場合又は蛇行修正をする場合において、間隔保持用スペーサの厚さを調節することによりテーパセグメントを用いることなく、平行セグメントに単一又は複数の間隔保持用スペーサを円弧状に貼付することにより屈曲部を構築することができる。特に、鉄筋コンクリート製のRCセグメントによりシールドトンネルを構築する場合には、該シールドトンネルの湾曲部の屈曲量が小さいことから、シールドトンネルを湾曲させる際には、設計路線の屈曲部分の屈曲量が少ないので、平行セグメントのみで容易に構築することができる。当然、蛇行修正の場合においても、テーパセグメントを用いることなく、平行セグメントに間隔保持用スペーサを貼付することにより設計路線の線形に対する蛇行を修正することができる。
【0011】
したがって、適宜の厚さの間隔保持用スペーサを用いたり、複数枚の間隔保持用スペーサを積層するよう貼付したりすることによりセグメントの種類を少なくすることができ、場合によっては平行セグメントのみを用いてシールドトンネルを敷設できる。この結果、従来のように、屈曲をさせる部分のテーパの向きや組立て順序を間違えることがなく、通常使用しなければならない平行セグメント又はテーパセグメントの余剰を招くことを防止することが可能となる。また、設計路線の線形に対する蛇行修正をする場合には、屈曲外側に楔体を介在させる必要がないので、シールドジャッキの推力によるセグメントの破損や、漏水を招くことがなくなる。
【0012】
なお、この第1の発明において、上記間隔保持用スペーサは、少なくともシート状に成形されているものであれば、その厚みや形状・素材については、特に限定されるものではない。したがって、例えば、間隔保持用スペーサの厚みは屈曲量に応じて何種類か用意しても良いし、一種類を用意し屈曲量に応じて適宜積層するよう貼付しても良い。また、長さは、特に限定されるものではなく、帯状に成形されているものであっても、或いは短尺なものであっても良い。但し、この発明においては、必ず円弧状に貼付されることが必要である。例えば、帯状に成形された単一の間隔保持用スペーサを貼付する場合以外に、複数の短尺の間隔保持用スペーサを複数することにより全体として円弧状に貼付しても良い。取り扱いや良好な作業性を考慮した場合には、帯状ないしテープ状に形成されていることが好ましく、さらに該帯状ないしテープ状に形成されたものの一面には粘着材が塗布されているものが好ましい。
【0013】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記既設のセグメントの正面と新たなセグメントの背面との間には止水材が取り付けられており、前記間隔保持用スペーサは、上記止水材の取付け位置よりも内周側に貼付することを特徴とするものである。
【0014】
この第2の発明では、新たなセグメントの軸心を屈曲させる場合は、セグメントの中心から外周側に向かうに従い間隔は広がることから、止水材の外側に間隔保持用スペーサを貼付する場合には、該間隔保持用スペーサが薄い帯状ないしテープ状である場合には、複数のスペーサを重ね合わせる必要が生ずるが、この第2の発明によれば、該間隔保持用スペーサを複数枚重ね合わせる必要がなく、少量のスペーサ又は薄い肉厚のスペーサにより、既設のセグメントの軸心から新たなセグメントの軸心を屈曲させることが可能である。
【0015】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は2の発明において、前記間隔保持用スペーサは、水膨張性を有する素材により細長いシート状に成形されてなり、前記スペーサ貼付工程においては、長尺に成形された間隔保持用スペーサを適宜の長さの1枚となるように切断した上で、前記セグメントの正面又は背面に貼付することを特徴とするものである。
【0016】
この第3の発明では、間隔保持用スペーサは水膨張性を有することから、既設のセグメントの軸心から上記間隔保持用スペーサの厚みにより新たなセグメントの軸心を屈曲させるばかりではなく、このように軸心を屈曲させた場合でも止水性を保持することができる。また、この間隔保持用スペーサは、長尺に成形された間隔保持用スペーサを適宜の長さの1枚となるように切断した上で、前記セグメントの正面又は背面に貼付することから、スペーサとスペーサとの間が離間したり間隔保持用スペーサの厚みにバラツキが発生したりしないことから、新たに固定したセグメントを該セグメントの正面側から高圧の力により押圧した場合であっても該セグメントが割れたり欠けたりする危険性を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係るセグメントの固定工法では、既設のスペーサと新たに固定するスペーサとの間に間隔保持用スペーサを介在させることにより蛇行修正を行うものであることから、使用するセグメントの種類を少なくすることができ、場合によっては平行セグメントのみを用いてシールドトンネルを敷設できる。したがって、多数種類のセグメントを生産し又は購入するコストを抑制することができるとともに管理の容易化をも図ることができる。
【0018】
しかも、平行セグメントのみを使用した場合には、地上で予め複数種類のセグメントを設計路線の線形に対応するように順序通り正確に積載する作業も不要となるばかりか、順序通り積載された各種のセグメントを、その順序に従って固定する必要性も解消することが可能となる。そして、この結果、複数種類のセグメントの固定順序を誤ることにより設計路線の線形と異なる施工がされてしまう危険性を有効に解消することができる。また、この発明では、単一又は複数の間隔保持用スペーサが円弧状に貼付されることから、シールドジャッキの推力により一部に応力が集中することがなく、この結果、セグメントの破損やこの破損に伴う漏水を招くことがなく、安全なシールドトンネルを構築することができる。
【0019】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)では、間隔保持用スペーサを複数枚重ね合わせる必要がなく、少量のスペーサ又は薄い肉厚のスペーサにより、既設のセグメントの軸心から新たなセグメントの軸心を屈曲させることができることから、作業の簡素化により作業能率の向上を図ることができる。
【0020】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)では、既設のセグメントの軸心から間隔保持用スペーサの厚みにより新たなセグメントの軸心を屈曲させるばかりではなく、このように軸心を屈曲させた場合でも止水性を保持することができることから、漏水のない安全なシールドトンネルを構築することができる。また、この間隔保持用スペーサは、長尺に成形された間隔保持用スペーサを適宜の長さの1枚となるように切断した上で、前記セグメントの正面又は背面に貼付することから、スペーサとスペーサとの間が離間することがなく、このため、新たに固定したセグメントを該セグメントの正面側から高圧の力により押圧した場合であっても該セグメントが割れたり欠けたりする危険性を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、シールド工法を実施するためのシールド機1は、図1に示すように筒状の第1のシールド筒体2、第2のシールド筒体3、第3のシールド筒体4、第4のシールド筒体5が連結され、第1のシールド筒体2の前端部には地中を掘削するための掘削工具である各種のビット群7が突設されてなるカッタヘッド6が設置されている。このカッタヘッド6の後方には該カッタヘッド6とともにビット群7を回転駆動するカッタ駆動電動機8と、土圧制御弁9とが設置され、この土圧制御弁9により、掘削による推進量に見合った土量の排土を開閉操作により間欠的に行い、切羽の土圧及び水圧に抗することができるようにカッタチャンバ11内に充満させた泥土の圧力を保持・調節する。
【0022】
また、次の第2のシールド筒体3内には、後述するシールドジャッキ17及び第3の中折ジャッキ18を駆動する油圧ユニット12と、圧力空気を貯蔵するエアタンク13と、廃泥タンク14とが設置され、この廃泥タンク14により、土圧制御弁9により排土された泥土を真空吸引可能な大きさに選別し、図示しない真空吸引配管内を流通できるように取り除く。次の第3のシールド筒体4内には、制御機器、計器類を内装した制御盤16と、シールド機1を推進するシールドジャッキ17と、シールド機1の推進方向を調整する第3の中折ジャッキ18とが設置されている。
【0023】
これらのうち、シールドジャッキ17は、第3のシールド筒体4の後方の内周に複数組(シールド機1の大きさにより、4ないし16組程度)が設置され、各組のシールドジャッキ17には、油圧シリンダ17aと、該油圧シリンダ17aにより押圧される押圧子17bとをそれぞれ備えて、敷設されたシールドトンネル21の正面(前端面)を油圧シリンダ17a及び押圧子17bにより押圧してシールド機1を推進させる。
【0024】
また、第3の中折ジャッキ18は、第3のシールド筒体4の後方と第4のシールド筒体5の前方の内周に複数組(シールド機1の大きさにより、2ないし6組程度)が設置され、各組の第3の中折ジャッキ18には、油圧シリンダ18aと、該油圧シリンダ18aの後方側の第4のシールド筒体5に支持された回動軸18bと、前方側の第3のシールド筒体4に支持された回動軸18cとを備えている。
【0025】
そして、複数組の第3の中折ジャッキ18の回動軸18bと回動軸18cとのそれぞれの距離を等距離にすることで第3のシールド筒体4と第4のシールド筒体5とは屈折されず、複数組の回動軸18bと回動軸18cとの距離を相違させることにより屈折させて、第3のシールド筒体4と第4のシールド筒体5との屈折角度を調整することによりシールド機1の推進方向を調整するものであって、この他に、第1のシールド筒体2と第2のシールド筒体3との間に図示しない第1の中折ジャッキと、第2のシールド筒体3と第3のシールド筒体4との間に図示しない第2の中折ジャッキとがそれぞれ設置されている。
【0026】
また、次の第4のシールド筒体5には、図2に示す円環状セグメント25を構成する各個のセグメント(符号は図3参照)を組付けるために保持するエレクタ19と、第4のシールド筒体5の最後尾をシールするテールシール26,26とが設置されている。エレクタ19には組付けるセグメントを保持する保持部材19aが備えられ、この保持部材19aは旋回軸19bを中心に旋回するとともに、回動軸19cを中心に回動して、組付けるセグメントを所定の位置で保持する。また、テールシール26,26は、第4のシールド筒体5の最後尾の内周に設置され、第4のシールド筒体5の内周とシールドトンネル21の外周との間の隙間を遮断し、内部に土砂、地下水、裏込め材等の流入を防ぐ。
【0027】
次に、上記シールド機1を用いて構築される、図1に示すシールドトンネル21の構成について説明する。シールドトンネル21は、円環状セグメント22,23,24・・・を連続的に結合したものであって、これらの円環状セグメント22,23,24・・・はそれぞれ複数個のセグメントにより円環状に組込まれている。これらは、図2(a)に示す既設の円環状セグメント22,23,24を連続的に結合したシールドトンネル21の正面(前端面)24bに、図2(b)に示す新設の円環状セグメント25の背面(後端面)25aを後述する固定部材42,48(図3ないし図5参照)により結合して固定される。
【0028】
また、新設の円環状セグメント25は、図3及び図4に示すように、第6ないし第10のセグメント37・・・41を図中の中央部に示す円環状に順次組付けるとともに、後述する固定部材42,48により図6ないし図10に示す円周方向の分割面が結合される。図6ないし図10は、図3及び図4に示す第6ないし第10のセグメント37・・・41の形状を示し、各セグメント37・・・41の背面37a,38a,39a,40a,41aと、正面37b,38b,39b,40b,41bとは平行に形成された平行セグメントであるから、円環状に組付けられた図2(b)に示す円環状セグメント25の背面25aと正面25bとは平行になる。
【0029】
ここで、図2(a)に示す既設のシールドトンネル21は、各円環状セグメント22,23,24のそれぞれが、正面と背面とが互いに平行な平行セグメントであるため、シールドトンネル21は直線状に構築される。ところが、実際に施工されるシールドトンネルの設計路線の線形は、直線部と湾曲部とからなり、直線部は図2(a)に示すシールドトンネル21のように平行セグメントを順次組付ければよいが、湾曲部の場合には既設のシールドトンネル21の軸心に対して、図2(b)に示す新設の円環状セグメント25の軸心を屈曲させなければならない(図11参照)。
【0030】
この屈曲をさせるには、結合面の屈曲内側に対して屈曲外側に間隔を持たせることで軸心は屈曲するから、円環状セグメント24の正面24bと円環状セグメント25の背面25aとの間の円周上の一部(図3参照)に所定の厚さを有する間隔保持用スペーサ27を介在すれば、間隔保持用スペーサ27の厚さにより形成される間隔により、円環状セグメント25の軸心は円環状セグメント24の軸心に対して、図11に示す右斜め上側に屈曲する。したがって、屈曲外側に間隔保持用スペーサ27を順次介在して組付ければ、湾曲部が構築できるし、設計路線の線形に対して実行線形が蛇行した場合には、設計路線の線形に戻す方向へ屈曲すべく、屈曲外側に所定の厚さの間隔保持用スペーサ27を介在して組付ければ蛇行を修正することができる。
【0031】
上記間隔保持用スペーサ27を円環状セグメント24の正面24bと円環状セグメント25の背面25aとの間に介在する事前準備として、間隔保持用スペーサ27を予め円環状セグメント25の背面25aに貼付しておくものであるが、シールドトンネル21に組付ける際には、円環状セグメント25を組付けるのではなく、後述するように、図3に示す第6のセグメント37、第7のセグメント38、第8のセグメント39、第9のセグメント40及び第10のセグメント41の順に、円環状セグメント24の正面24bに結合するとともに、相互の分割面を結合して組付ける。したがって、図3に示す間隔保持用スペーサ27は、第6のセグメント37には第1のスペーサ28、第7のセグメント38には第2のスペーサ29、第8のセグメント39には第3のスペーサ30をそれぞれ所定の長さに裁断して貼付し、各セグメント37・・・41が組付けられた後に円弧状の間隔保持用スペーサ27が形成される。
【0032】
これら第1ないし第3のスペーサ28,29,30の厚さは、屈曲させる程度により決まるが、2ないし5mmの厚さを使用し、第1ないし第3のスペーサ28,29,30でなる図3に示す間隔保持用スペーサ27の円弧状の角度は、90ないし150度にして貼付する。また、図3に示す間隔保持用スペーサ27の直径方向の幅は、図6、図7及び図10に示す各セグメント37,39,38の外周側の後述するシール溝37e,39e,38eより内周側に、図1に示すシールドジャッキ17により押圧されたときの面圧を低下させるために、できるだけ広幅に貼付することが好ましい。
【0033】
この際、第1ないし第3のスペーサ28,29,30の幅が狭い場合には、各セグメントの円周内側と外側との間に2ないし3列に貼付しても良い。なお、第1ないし第3のスペーサ28,29,30は、所定の厚さの細長いシート状に成形されたものが捲回され、使用する長さに適宜切断して使用する。また、各スペーサ28,29,30の素材は、水膨張性の合成ゴムでなり、シーアイ化成株式会社製造の商品名がビノンハイドロタイト、型番がRST−0320−20−1であるものを使用し、各セグメントには接着剤により貼付する。
【0034】
また、各セグメント37・・・41の図3又は図6ないし図10に示す背面側の外周近傍には、図示しない円環状のシール材(本発明の止水材)を装着するシール溝37e,38e,39e,40e,41eがそれぞれ形成され、図4又は図6ないし図10に示す正面側の外周近傍には、図示しない円環状のシール材を装着するシール溝37f,38f,39f,40f,41fがそれぞれ形成され、図2(a)に示す円環状セグメント24の正面24bの外周近傍には、図示しない円環状のシール材を装着する図5に示すシール溝31f,32f,33f,34f,35fが形成されている。そして、各セグメント37・・・41を組付けの際には、図2(a)に示す円環状セグメント24の正面24bに形成された図5に示すシール溝31f,32f,33f,34f,35fに図示しない円環状のシール材を装着した後、各セグメント37・・・41のシール溝37e,38e,39e,40e,41eに前記シール材を係合させながら順次組付ける。
【0035】
また、各セグメント37・・・41には、上記外周近傍のほか、各分割面にも直線状のシール溝がそれぞれ形成されている。図6に示す第6のセグメント37には、右分割面37cにシール溝37n及び左分割面37dにシール溝37qがそれぞれ形成されている。図7に示す第8のセグメント39には、右分割面39cにシール溝39q及び左分割面39dにシール溝39sがそれぞれ形成されている。また、図8に示す第10のセグメント41には、右分割面41cにシール溝41k及び左分割面41dにシール溝41nがそれぞれ形成されている。図9に示す第9のセグメント40には、右分割面40cにシール溝40n及び左分割面40dにシール溝40qがそれぞれ形成されている。図10に示す第7のセグメント38には、右分割面38cにシール溝38s及び左分割面38dにシール溝38uがそれぞれ形成されている。
【0036】
そして、各セグメント37・・・41を組付けの際には、図2(a)に示す円環状セグメント24の正面24bに形成された外周近傍の図5に示すシール溝31f,32f,33f,34f,35fに図示しない円環状のシール材を装着し、図6に示すセグメント37の各分割面37c,37dに形成された直線状の各シール溝37n,37q、図7に示すセグメント39の各分割面39c,39dに形成された直線状の各シール溝39q,39s、図8に示すセグメント41の各分割面41c,41dに形成された直線状の各シール溝41k,41n、図9に示すセグメント40の各分割面40c,40dに形成された直線状の各シール溝40n,40q及び図10に示すセグメント38の各分割面38c,38dに形成された直線状の各シール溝38s,38uに図示しない直線状のシール材を順次装着した後、これらシール材に対応する各セグメント37・・・41のシール溝にそれぞれのシール材を係合させながら順次組付ける。
【0037】
次に、各セグメント37・・・41の分割面の形状は、円環状セグメント25の中心軸線に対して平行な分割面と傾斜した分割面とにより構成され、図6に示す第6のセグメント37の右分割面37cと左分割面37dとは、円環状セグメント25の中心軸線に対して平行に形成されている。図7に示す第8のセグメント39の右分割面39cは、円環状セグメント25の中心軸線に対して平行に形成されて第6のセグメント37の左分割面37dと結合されるとともに、それぞれの半円の中心は円環状セグメント25の中心軸線と一致し、左分割面39dは、円環状セグメント25の中心軸線に対して傾斜している。
【0038】
図8に示す第10のセグメント41の右分割面41cは、円環状セグメント25の中心軸線に対して第8のセグメント39の左分割面39dとは逆向きに傾斜し、第10のセグメント41の右分割面41cは該第8のセグメント39の左分割面39dと結合されるとともに、それぞれの半円の中心は円環状セグメント25の中心軸線と一致し、左分割面41dは円環状セグメント25の中心軸線に対して傾斜している。
【0039】
図9に示す第9のセグメント40の右分割面40cは、円環状セグメント25の中心軸線に対して第10のセグメント41の左分割面41dとは逆向きに傾斜し、第9のセグメント40の右分割面40cは該第10のセグメント41の左分割面41dと結合されるとともに、それぞれの半円の中心は円環状セグメント25の中心軸線と一致し、左分割面40dは円環状セグメント25の中心軸線に対して平行に形成されている。
【0040】
図10に示す第7のセグメント38の右分割面38cと左分割面38dとは、円環状セグメント25の中心軸線に対して平行に形成され、第7のセグメント38の右分割面38cは第9のセグメント40の左分割面40dと結合されるとともに、第7のセグメント38の左分割面38dは第6のセグメント37の右分割面37cと結合され、それぞれの半円の中心は円環状セグメント25の中心軸線と一致するように構成されている。
【0041】
また、図5に示す既設の円環状セグメント24は、第1ないし第5のセグメント31・・・35を前記円環状セグメント25と同様にして円環状に順次組付けるとともに、後述する固定部材42,48により分割面が結合される。なお、図9に示す第9のセグメント40の注入口40j及び図10に示す第7のセグメント38の注入口38nは、前記各セグメント40,38の内周から外周に貫通する雌ねじであって、図1に示すシールドトンネル21の外周と、掘削された掘削穴との間に裏込め材を注入するためのものである。これらの注入口40j,38nは、裏込め材を注入した後に図示しない雄ねじ状の埋栓を螺着して閉塞する。
【0042】
また、上記の各セグメント37・・・41には組付けの際に相手方との位置決めをするための凹ほぞと、この凹ほぞに係合する凸ほぞとが形成されている。図6に示す第6のセグメント37には、背面37aに凸ほぞ37g、正面37bに凹ほぞ37h、右分割面37cに長穴状の凹ほぞ37i、左分割面37dに長穴状の凹ほぞ37jがそれぞれ形成されている。図7に示す第8のセグメント39には、背面39aに2個の凸ほぞ39g,39h、正面39bに2個の凹ほぞ39i,39j、右分割面39cに凸ほぞ39kがそれぞれ形成されている。
【0043】
また、図8に示す第10のセグメント41には、正面41bに2個の凹ほぞ41g,41hが形成されている。図9に示す第9のセグメント40には、背面40aに2個の凸ほぞ40g,40h、左分割面40dには凸ほぞ40iがそれぞれ形成されている。図10に示す第7のセグメント38には、背面38aに2個の凸ほぞ38g,38hが、正面38bに凹ほぞ38i,38j、右分割面38cに長穴状の凹ほぞ38k、左分割面38dに凸ほぞ38mがそれぞれ形成されている。
【0044】
次に、各セグメントを結合する固定部材42,48は、図12に示す雌側固定部材(本発明の他方の固定部材)42と、図13に示す雄側固定部材(本発明の一方の固定部材)48とからなり、それぞれ後述する形態により各セグメント内に埋設されている。これらのうち、雌側固定部材42は、図12(c)に示すように、本体部であるケース43、弾性体であるウレタンばね44、後述する雄側固定部材48のボルト50と係合する楔部材45及びケース43を保持する保持脚46A,46Bにより構成されている。
【0045】
本体部であるケース43は、開口に向かって縮径する凹テーパの内周面43aを有する有底筒状に成形され、開口部43bが最小径に形成されている。ウレタンばね44は、ウレタン樹脂を素材として円盤状に成形され、ケース43の底部に挿入されている。楔部材45は、凸テーパの外周面45aがケース43の凹テーパの内周面43aと内接するテーパに形成され、中心部には雌ねじ状の雌係合部(本発明の凹部)45bが刻設されて、ケース43内のウレタンばね44よりも前方に挿入されている。
【0046】
また、楔部材45の外周面45aと雌係合部45bとでなる筒部の軸線方向には、円周上3箇所に図示しない切欠きが小径側の一部を残して形成されている。この切欠きは、雌係合部45bに後述するボルト50の雄係合部50aが押入されたときに、楔部材45の外周面45aと雌係合部45bとでなる筒部を拡径させる作用をするものである。保持脚46A,46Bは、棒状に形成され、図12(a),(b)に示すケース43の軸線と平行に該ケース43の外周に固定されている。
【0047】
このように構成された雌側固定部材42は、図6ないし図10に示す、第6のセグメント37の正面37b、右分割面37c及び左分割面37dと、第8のセグメント39の左分割面39dと、第9のセグメント40の正面40b及び右分割面40cと、第7のセグメント38の右分割面38cとに、ケース43の開口部43bが閉塞されないようにしてそれぞれ埋設されている。また、図2(a)に示す円環状セグメント24の正面(前端面)24bには、雌側固定部材42が、図5に示す第1のセグメント31と第5のセグメント35とに、ケース43の開口部43bが閉塞されないようにしてそれぞれ埋設されている。
【0048】
また、雄側固定部材48は、図13に示すように、本体部である保持具49及び雌側固定部材42の楔部材45と係合するボルト50により構成され、保持具49は、脚49a,49bにより二股状に形成され、これらの交差する延長上に基部49cが形成され、この基部49cの中心に雌ねじ49dが螺刻されている。ボルト50は、図13(b)に示す棒状の右側に刻設され上記楔部材45の雌係合部45bに係合する雄ねじ状の雄係合部(本発明の凸部)50aと、その反対側に螺刻され保持具49の雌ねじ49dに螺合する雄ねじ50bとから構成されている。
【0049】
このように構成された雄側固定部材48は、図6ないし図10に示す、第6のセグメント37の背面37aと、第8のセグメント39の右分割面39cと、第10のセグメント41の背面41a、右分割面41c及び左分割面41dと、第9のセグメント40の左分割面40dと、第7のセグメント38の左分割面38dとに、保持具49の雌ねじ49dが閉塞されないようにしてそれぞれ埋設されている。
【0050】
なお、楔部材45の雌ねじ状の雌係合部45bと、ボルト50の雄ねじ状の雄係合部50aとは、必ずしも雌ねじ又は雄ねじのように螺旋状に形成する必要はなく、楔部材45の雌係合部45bとボルト50の雄係合部50aとが軸方向に移動しないとともに抜脱しないように係合する雌側と雄側との山形状であればよい。また、雄側固定部材48のボルト50は、第6ないし第10のセグメント37・・・41が、図6ないし図10に示す単体の状態では保持具49の雌ねじ49dに螺合されておらず、後述する組付けの際に、組付ける各セグメントに埋入された図13(a)に示す保持具49の雌ねじ49dにボルト50の雄ねじ50bを螺合させた状態にして、組付け相手のセグメントに埋入された雌側固定部材42の楔部材45内にボルト50の雄係合部50aを押入して組付ける。
【0051】
続いて、セグメントの固定工法に係る実施の形態ついて図を参照して説明する。以下の説明の前提条件として、図2(a)に示すシールドトンネル21が直進して既に敷設され、このシールドトンネル21の正面24bに、新たに、図3に示す各セグメント37・・・41を図2(a)に示す右上方向に屈曲させて敷設するものとする。
【0052】
ここで、事前準備として図3において、第6のセグメント37の図6に示す背面37aのシール溝37eよりも内周側に、第1のスペーサ28を貼付するするとともに、雄側固定部材48の保持具49の前面と重複する部分に、ボルト50の雄ねじ50bが挿通できる穴を明ける。また、第7のセグメント38の図10に示す背面38aのシール溝38eよりも内周側に、第2のスペーサ29を貼付する。また、第8のセグメント39の図7に示す背面39aのシール溝39eよりも内周側に、第3のスペーサ30を貼付する。これらのスペーサ28,29,30により形成される、間隔保持用スペーサ27の図3に示す円弧状の角度は120度に亘って貼付されている。
【0053】
次に、セグメントの固定を実施するための手順として、図1に示すシールドトンネル21を構成する既設の円環状セグメント24の正面24bに、シールドジャッキ17の押圧子17bを当接させるとともに、カッタヘッド6を回転させて、上記シールドジャッキ17の押圧力により円環状セグメント24の前方に新たなセグメントを結合するための空間ができるまでシールド機1を掘進させる。そして、円環状セグメント24の前方に新たなセグメントを結合するための空間ができた時点で、シールドジャッキ17の押圧子17bを後退させるとともに、カッタヘッド6の回転を停止させて、図2(a)に示す円環状セグメント24の正面24bに形成された図5に示すシール溝31f,32f,33f,34f,35fに図示しない円環状のシール材を装着した後、エレクタ19により図3に示す新たなセグメント37・・・41を円環状セグメント24の前方に搬送し、以下の手順により組付ける。
【0054】
これら新たなセグメント37・・・41の組付け順序は、第6のセグメント37、第7のセグメント38、第8のセグメント39、第9のセグメント40、第10のセグメント41の順に組付ける。最初に組付ける第6のセグメント37は、図5に示す既設の第1のセグメント31の雌側固定部材42が埋設された正面に、図3に示す新たな第6のセグメント37の第1のスペーサ28が貼付された背面37a(図6(b)参照)を対向させるとともに、この背面37aに埋設された雄側固定部材48の保持具49にボルト50の雄ねじ50bを螺合(図13参照)させた後、該ボルト50の雄係合部50aを既設の第1のセグメント31に埋設された図12に示す雌側固定部材42の楔部材45内に押入して結合する。
【0055】
この結合により、楔部材45は、雌係合部45bを介してボルト50の雄係合部50aにより奥に向かって押圧されるが、図示しない切欠きの作用により、該楔部材45の筒部を拡径させる。この拡径により、ボルト50の雄係合部50aは、新たな第6のセグメント37の背面37aが既設の第1のセグメント31の正面に当接するまで押入され、ウレタンばね44の付勢により楔部材45の凸テーパの外周面45aが、ケース43の凹テーパの内周面43aに押圧されて当接し、その楔作用により楔部材45とボルト50とは不動のものとなり、新たな第6のセグメント37は既設の第1のセグメント31に固定される。
【0056】
次に組付ける新たな第7のセグメント38は、その図10に示す左分割面38dが、先に組付けた第6のセグメント37の図6に示す右分割面37cに当接するので、事前に第6のセグメント37のシール溝37nに図示しないシール材を装着しておく。そして、図5に示す既設の第2のセグメント32の正面に、図3に示す新たな第7のセグメント38の第2のスペーサ29が貼付された背面38a(図10(b)参照)を対向させるとともに、第7のセグメント38の図10に示す左分割面38dに埋設された雄側固定部材48の保持具49にボルト50の雄ねじ50bを螺合(図13参照)させる。その後、第2のセグメント32の正面に第7のセグメント38の背面38aを当接させるとともに、前記ボルト50の雄係合部50aを第6のセグメント37の右分割面37cに埋設された雌側固定部材42の楔部材45内に押入して、第7のセグメント38の左分割面38dを第6のセグメント37の右分割面37cに結合する。
【0057】
次に組付ける新たな第8のセグメント39は、その図7に示す右分割面39cが、先に組付けた第6のセグメント37の図6に示す左分割面37dに当接するので、事前に第6のセグメント37のシール溝37qに図示しないシール材を装着しておく。そして、図5に示す既設の第3のセグメント33の正面に、図3に示す新たな第8のセグメント39の第3のスペーサ30が貼付された背面39a(図7(b)参照)を対向させるとともに、第8のセグメント39の図7に示す右分割面39cに埋設された雄側固定部材48の保持具49にボルト50の雄ねじ50bを螺合(図13参照)させる。その後、第3のセグメント33の正面に第8のセグメント39の背面39aを当接させるとともに、前記ボルト50の雄係合部50aを第6のセグメント37に埋設された雌側固定部材42の楔部材45内に押入して、第8のセグメント39の右分割面39cを第6のセグメント37の左分割面37dに結合する。
【0058】
次に組付ける新たな第9のセグメント40は、その図9に示す左分割面40dが、先に組付けた第7のセグメント38の図10に示す右分割面38cに当接するので、事前に第7のセグメント38のシール溝38sに図示しないシール材を装着しておく。そして、図5に示す既設の第4のセグメント34の正面に、図3に示す新たな第9のセグメント40の背面40a(図9(b)参照)を対向させるとともに、第9のセグメント40の図9に示す左分割面40dに埋設された雄側固定部材48の保持具49にボルト50の雄ねじ50bを螺合(図13参照)させる。その後、第4のセグメント34の正面に第9のセグメント40の背面40aを当接させるとともに、前記ボルト50の雄係合部50aを第7のセグメント38に埋設された雌側固定部材42の楔部材45内に押入して、第9のセグメント40の左分割面40dを第7のセグメント38の右分割面38cに結合する。
【0059】
次に組付ける新たな第10のセグメント41は、その図8に示す右分割面41cが、先に組付けた第8のセグメント39の図7に示す左分割面39dに当接するとともに、左分割面41dが、先に組付けた第9のセグメント40の図9に示す右分割面40cに当接するので、事前に第8のセグメント39のシール溝39sと、第9のセグメント40のシール溝40nとに図示しないシール材をそれぞれ装着しておく。
【0060】
そして、図5に示す既設の第5のセグメント35の正面に、図3に示す新たな第10のセグメント41の背面41a(図8(b)参照)を対向させるとともに、この背面41aに埋設された雄側固定部材48の保持具49と、第10のセグメント41の図8に示す右分割面41cに埋設された雄側固定部材48の保持具49と、第10のセグメント41の左分割面41dに埋設された雄側固定部材48の保持具49とにボルト50の雄ねじ50bを螺合(図13参照)させる。
【0061】
その後、第5のセグメント35の正面に第10のセグメント41の背面41aを当接させるとともに、前記各ボルト50の雄係合部50aを第5のセグメント35に埋設された雌側固定部材42の楔部材45内と、第8のセグメント39に埋設された雌側固定部材42の楔部材45内と、第9のセグメント40に埋設された雌側固定部材42の楔部材45内とに押入して、第10のセグメント41の背面41aを第5のセグメント35の正面に、第10のセグメント41の右分割面41cを第8のセグメント39の左分割面39dに、第10のセグメント41の左分割面41dを第9のセグメント40の左分割面40cにそれぞれ結合する。
【0062】
このようにして、図2に示すシードトンネル21を構成する既設の円環状セグメント24の正面24bに新たなセグメント37・・・41が円環状セグメント25として固定されると、図11に示すように、新たなシールドトンネル21Aが構築されるとともに、既設の円環状セグメント24の正面24bと、新たなシールドトンネル21Aに固定された円環状セグメント25の背面25aとの間に介在された円弧状の間隔保持用スペーサ27の間隔により、新たな円環状セグメント25が既設の円環状セグメント24に対して屈曲角度θ1だけ図示右上に屈曲して構築される。
【0063】
また、事前に新たな円環状セグメント26の背面26aに間隔保持用スペーサ27を上記円環状セグメント25のときと同様にして円弧状に貼付しておき、円環状セグメント25の正面25bに新たに円環状セグメント26を固定することにより、新たなシールドトンネル21Bが構築されるとともに、既設の円環状セグメント25の正面25bと、新たなシールドトンネル21Bに固定された円環状セグメント26の背面26aとの間に介在された円弧状の間隔保持用スペーサ27の間隔により、新たな円環状セグメント26が既設の円環状セグメント25に対して屈曲角度θ2だけ図示右上に屈曲して構築される。
【0064】
上記の構成でなるセグメントの固定工法において、設計路線の線形が屈曲部分の場合又は蛇行修正をする場合には、既設のセグメント24と新たなセグメント25との間の屈曲外側に所定の厚さの間隔保持用スペーサ27を貼付して屈曲させるとともに、設計路線の線形が直線部分の場合には、間隔保持用スペーサ27を貼付せずに正面と背面とが平行なセグメント22,23,24を連続的に固定して構築することができる。また、シールドトンネルの屈曲部の屈曲角度が小さい場合には、平行セグメントのみで直線部分はもとより屈曲部分も間隔保持用スペーサ27の貼付により構築することができる。
【0065】
したがって、間隔保持用スペーサ27の厚さを調節することによりセグメントの種類を少なくすることができ、場合によっては平行セグメントのみを用いて直線部分と屈曲部分とでなるシールドトンネルを構築できるので、屈曲部分のテーパの向きや組立て順序を間違えることがなく、通常使用しなければならない平行セグメント又はテーパセグメントの余剰を招くことがなくなる。また、設計路線の線形に対する蛇行修正をする場合には、屈曲外側の一部に間隔保持用スペーサ27を貼付することにより楔状部材等の介在部材を介在する必要がないので、シールドジャッキの推力によるセグメントの破損や、漏水を防ぐことができる
【0066】
なお、本発明に係るセグメントの固定工法の実施の形態においては、シードトンネル21を構築する各セグメント37・・・41は、平行セグメントを用いて施工する例で説明したが、湾曲部を構成するためのテーパセグメントを併用しても良い。また、上記実施の形態における間隔保持用スペーサは、第1ないし第3の間隔保持用スペーサの3枚で円弧状に貼付したが、1枚で所定の円弧状を形成するように貼付しても良い。この場合には、新たなセグメントの平面ではなく、既設のセグメントの正面に貼付することが好ましい。また、図2(b)及び図11に示す間隔保持用スペーサ27の厚さは、その存在を明瞭にするため、実寸よりも過大に図示した。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態に係るシールド機を示す縦断面図である。
【図2】円環状セグメントの側面図であって、(a)は円環状セグメントを連続的に結合した既設のシールドトンネル、(b)は新設の円環状セグメントをそれぞれ示す。
【図3】新設の円環状セグメントの図2(b)に示すA−A矢視背面図である。
【図4】新設の円環状セグメントの図2(b)に示すB−B矢視正面図である。
【図5】既設の円環状セグメントの図2(a)に示すC−C矢視正面図である。
【図6】第6のセグメントを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。
【図7】第8のセグメントを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。
【図8】第10のセグメントを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。
【図9】第9のセグメントを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。
【図10】第7のセグメントを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。
【図11】既設のシールドトンネルに新たな円環状セグメントを結合し、増設されたシールドトンネルを示す側面図である。
【図12】雌側固定部材を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)のD−D矢視断面図である。
【図13】雄側固定部材を示し、(a)は雄側固定部材の保持具を示す正面図(一部断面図)、(b)は雄側固定部材のボルトを示す正面図、(c)は雄側固定部材の保持具にボルトを係合させた正面図(一部断面図)である。
【符号の説明】
【0068】
1 シールド機
17 シールドジャッキ
21 シールドトンネル
22,23,24,25,26 円環状セグメント
27 間隔保持用スペーサ
28 第1のスペーサ
29 第2のスペーサ
30 第3のスペーサ
31,32,33,34,35 既設のセグメント
37,38,39,40,41 新たなセグメント
37a,38a,39a,40a,41a 背面
37b,38b,39b,40b,41b 正面
37c,38c,39c,40c,41c 右分割面
37d,38d,39d,40d,41d 左分割面
42 雌側固定部材
45 楔部材
45b 雌係合部
48 雄側固定部材
50 ボルト
50a 雄係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機により掘削された後方において、セグメントを円環状に固定する際におけるセグメントの固定工法であって、
円環状に固定された既設の複数のセグメントの内の一部のセグメントの正面、又は、新たに固定する複数のセグメントの内の一部のセグメントの背面に、単一又は複数の間隔保持用スペーサを円弧状に貼付するスペーサ貼付工程と、
上記間隔保持用スペーサが貼付された既設のセグメントの正面に新たなセグメントを固定し、又は、上記背面に間隔保持用スペーサが貼付された新たなセグメントを既設のセグメントの正面に固定することにより、該既設のセグメントの軸心から上記間隔保持用スペーサの厚みにより新たなセグメントの軸心を屈曲させるセグメント固定工程と、
を有してなることを特徴とするセグメントの固定工法。
【請求項2】
前記既設のセグメントの正面と新たなセグメントの背面との間には止水材が取り付けられており、前記間隔保持用スペーサは、上記止水材の取付け位置よりも内周側に貼付することを特徴とする請求項1記載のセグメントの固定工法。
【請求項3】
前記間隔保持用スペーサは、水膨張性を有する素材により細長いシート状に成形されてなり、前記スペーサ貼付工程においては、長尺に成形された間隔保持用スペーサを適宜の長さの1枚となるように切断した上で、前記セグメントの正面又は背面に貼付することを特徴とする請求項1又は2記載の何れかのセグメントの固定工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−202323(P2008−202323A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40376(P2007−40376)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(596119571)サン・シールド株式会社 (7)
【Fターム(参考)】