説明

セグメントの形状保持装置

【課題】セグメントを外側から保持するセグメント保持体をスキンプレートに対し相対的に手動可能としたセグメントの形状保持装置において、シールド機の掘進後に前記セグメント保持体を機械的かつ自動的に、均等な引込み力を与えながら所定の長さ分だけ掘進方向に移動させるようにする。
【解決手段】スキンプレート8の内面側に周方向に適宜の間隔をおいてシールド機の軸芯方向に摺動可能にスライド台15を配置するとともに、このスライド台15に前記セグメント保持体12,13を設け、シールド機1を掘進させた後、前記セグメント保持体12,13をスライド台15と共に掘進方向に移動させる移動装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法において、掘進に伴って組み立てられるセグメントの形状保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド機を用いて地盤中にトンネルを構築するシールド工法では、掘進に伴ってシールド機のスキンプレート内面に周方向に複数のピースからなるセグメントをリング状に組み立て覆工を行うようにしているが、このセグメントの組み立て時に、外部からの土圧や自重によりセグメントに変形が起こり、次のセグメントの組み立て(連結)に支障を来すことが多く、このため前記セグメントの形状を保持するために形状保持装置が使用されている。
【0003】
前記形状保持装置の基本的構造は、シールド機本体から後方に突設された支持フレームに、上下方向に伸縮可能な左右一対の支柱をトンネル方向に移動可能に配設し、かつ前記左右の支柱の上端部に断面形状に沿った上部保持ビームを設けるとともに、下端部に下部保持ビームを設けた構造を成しており(以下、上下拡張型形状保持装置という。)、前記支柱を伸長して上部保持ビームおよび下部保持ビームをセグメント内面に当接させることにより、鉛直土圧や自重によりセグメントに掛かる垂直方向の力を支持してセグメントを適正に組み立てられた状態に保持し変形を防止するものである。
【0004】
しかし、従来の形状保持装置にあっては下記のような問題点があった。
(1)セグメント内に設置される従来のセグメント形状保持装置は、トンネル内空部の多くを占有し、セグメントの搬送、作業員の移動等の障害となり支障を来す場合が多かった。
(2)形状保持装置は、セグメントを組み立てるためのエレクター装置および組立用足場に対する干渉を避けるため、通常は最前列のセグメントよりも1リング後方に位置する前回時に組み立てられたセグメントに設置せざるを得ず、新たにセグメントを組み立てるセグメントに隣接するセグメントは形状保持装置によって保持されていない。その結果、新たに組み立てられるセグメントの組立作業に支障を来すことがある。この傾向は特に自重が嵩む大口径セグメントや土圧の影響が大きい場合に顕著となる。
(3)一般にシールド掘進では、推進ジャッキを押し切った状態で最前列のセグメントの約1/2がシールド機外に出ることになり浮力を受けることになる。この際、スキンプレートの外部ではセグメントの裏側に裏込材が充填されるため、ある程度全周が拘束された状態にはなるけれども、裏込注入材の初期強度は小さいため、形状保持装置で支持されていない最前部のセグメントの浮き上がり(変位)が懸念される。また、大口径セグメントの場合、上下間の水圧差によりセグメントがいびつに変形し、次のセグメントのボルト連結に支障を来す虞がある。
(4)シールド機のスキンプレートとセグメントとの間には、摩擦低減のため所定の間隙が形成されている。そのため、セグメントが自重によってスキンプレートの内部でずり落ちが生じてしまうことがある。
【0005】
そのため、近年では、上記リング状に組み立てられたセグメントを内側から保持する形状保持装置に代えて、下記特許文献1に記載されるように、リング状に組み立てられたセグメントの外側からセグメントの形状を保持させるようにした形状保持装置が提案されている。該形状保持装置の構造は、シールド機の外殻となるスキンプレートの内面側であってかつ後方側位置に、周方向に適宜の間隔をおいて、トンネル中心側に向かって進退自在または膨縮自在のセグメント保持体、具体的に膨張マットまたはジャッキを複数配設するものである。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるセグメント保持装置の場合は、進退自在または膨縮自在のセグメント保持体をスキンプレートに固定的に取り付けているため、シールド機の掘進に伴ってセグメントの保持位置が移動することになり、保持位置を常時最適位置とすることができない、またシールド機の掘進時にセグメント保持体はセグメントの外面に対して摺動することになり、膨張マットの摩耗により破損のおそれがあるなどの問題があった。
【0007】
このような問題点に鑑み、下記特許文献2では、シールド掘進機の円筒状スキンプレートのテール部内周面に、所要の幅寸法としてある弾性素材製のシート状外側カバーを上記スキンプレートの軸心方向へ相対的に滑動可能に配置し、該外側カバーの内側面に、抜気時に扁平状態になるようにしてある外側チューブを着脱可能に取り付け、且つ該外側チューブの内側面に、抜気時に扁平状態となるようにしてある複数個の内側チューブを着脱可能に取り付けるとともに、外側チューブの長手方向に沿う側端縁部に、長手方向に所要間隔で側方へ突出させた結合部材を設け、該各結合部材に結着したロープを介して外側チューブとともに外側カバー、内側チューブをスキンプレートの軸方向へ移動させるようにしたセグメントの形状保持装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−83000号公報
【特許文献2】特開2005−299270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2記載のセグメント形状保持装置によれば、外側カバーがスキンプレートに対して相対的に滑動可能な構造となっているため、前述したセグメントの保持位置を常時最適位置とすることができ、かつシールド機の掘進時にセグメント保持体は移動しないため摩耗による破損を防止できるようになる。
【0009】
しかしながら、セグメント保持体(外側カバー、外側チューブ及び内側チューブ)の移動手段を外側チューブに緊結した多数のロープとするものであるため、セグメント保持体の周方向において、均等な引込み力を与えることが困難で、セグメント保持体が偏ったりするとともに、周方向に配置した多数のロープを引き込むために多数の人工(作業員)を必要とするため作業性が非常に悪いなどの問題がある。また、手作業による引込みであるため、周方向に亘り均等な引込み長とすることが困難であるなどの問題がある。
【0010】
一方で、前記弾性素材製の外側カバーは、スキンプレートの内周面に沿い周方向のほぼ全周に達する長さ寸法を有し且つ所要の幅寸法を有するシート状としてあり、弾性により湾曲状態から伸展しようとする復元力により、スキンプレートのテール部の内周面に周方向に張り付かせて配置するようにしている(段落[0025]参照)。すなわち、前記弾性素材製の外側カバーは、弾性により湾曲状態から伸展しようとする復元力により内周面に周方向に張り付かせるため、外側カバーの円周方向長さは、最低でも張り付かせるシールド掘進機の円筒状スキンプレート内直径以上でなければならないことになり、セグメントを外側から押圧する内側チューブは、一つの外側カバーに複数個を取り付けられることになる。
【0011】
また、各内側チューブの内側となる表面側とセグメントの外周面との間に作用する摩擦力が、外側カバーの外周面とスキンプレートの内周面との間に作用する摩擦力よりも大きくなるようにしてある。これにより、セグメントの形状保持装置によりシールド掘進機のスキンプレートのテール部の内側でリング状に組み立てられたセグメントを外側より押圧して真円形状に保持させた状態にて、シールドジャッキの作動によりシールド掘進機を前進させる場合には、上記スキンプレートの内周面と外側カバーの外周面が摺動するようにして、セグメントの形状保持装置によるセグメントの形状保持を継続して行なうことができるようにしている(段落[0035]参照)。
【0012】
従って、例えば曲線掘進時に、前進するシールド機は、固定しているセグメントとの関係において曲線状の動きとなり、内側チューブはセグメントの外周面に摩擦力で固定されているため、外側カバーは、スキンプレートの内周面でねじれることになり破損する危険の問題があった。
【0013】
そこで本発明の第1の課題は、セグメントを外側から保持するセグメント保持体をスキンプレートに対し相対的に摺動可能としたセグメントの形状保持装置において、シールド機の掘進後に前記セグメント保持体を機械的かつ好ましくは自動的に、かつ簡易な手段により、均等な引込み力を与えながら所定の長さ分だけ掘進方向に移動させることにある。
【0014】
また第2の課題は、シールド機の曲線施工時に、セグメント保持体の捻れを防止し、破損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、シールド機の外殻となるスキンプレートの内面側であってかつ後方側位置に、周方向に適宜の間隔をおいて、トンネル中心側に向かって進退自在のセグメント保持体及び/又は膨縮自在のセグメント保持体を複数配設したセグメントの形状保持装置において、
前記スキンプレートの内面側に周方向に適宜の間隔をおいてシールド機の軸心方向に摺動可能にスライド台を配置するとともに、このスライド台のシールド機内面の面に前記セグメント保持体を設け、シールド機を掘進させた後、前記セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させる移動装置を備えたことを特徴とするセグメントの形状保持装置が提供される。
【0016】
上記請求項1の本発明においては、スキンプレートの周方向に沿って前記セグメント保持体を複数配設し、セグメントの外周側から多点的に支持するようにするものであり、セグメント内部には形状保持装置が存在しないため、トンネル内に十分な空間が確保されるようになる。また、エレクター装置や組立用足場との干渉も一切問題とならないため、組立直後のセグメントを直ぐに支持できるようになる。また、組立直後のセグメントを直ぐに支持できるようになる結果、浮き上がり、水圧差による変形、スキンプレート内における自重によるずり落ち等の問題をすべて解消できるようになる。
【0017】
さらに、シールド機を掘進させた後、前記セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させる移動装置を備えることにより、従って、セグメント保持体は、機械的に、かつ全周に亘って配設された各セグメント保持体に夫々、均等な引込み力を与えながら前側に移動されるとともに、その移動距離も常に一定とできる。
【0018】
請求項2に係る本発明として、前記移動装置は、前記スライド台にシールド機の前部側方向に延びる延材部分を一体的に備えるとともに、この延材部分にシールド機の内方側に突出する当り材を備え、シールド機を掘進させた後、シールドジャッキの収縮時にピストンヘッドの背面側が前記当り材と当接し、前記セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させるようにした装置である請求項1記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0019】
上記請求項2記載の発明においては、前記移動装置として、セグメント保持体を支持するスライド台がシールド機の前部側方向に延びる延在部分を一体的に備えるとともに、この延在部分にシールド機の内方側に突出する当り材を備えるようにし、シールド機を掘進させた後、シールドジャッキの収縮時にピストンヘッドの背面側が前記当り材と当接し、前記セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させる構造にした。従って、セグメント保持体は、機械的かつ自動的に、かつ全周に亘って配設された各セグメント保持体に夫々、均等な引込み力を与えながら前側に移動されるとともに、その移動距離も常に一定とできる。
【0020】
請求項3に係る本発明として、前記移動装置は、巻取りリールと、この巻取りリールに巻回されるとともに、先端が前記スライド台に連結された索材とからなる請求項1記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0021】
請求項4に係る本発明として、前記移動装置は、離間をおいて配置されたスプロケット又はプーリー間にエンドレスループ状に索材を架け渡し、前記索材をスライド台に連結するとともに、前記スプロケット又はプーリーを駆動させる駆動源を備えた装置である請求項1記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0022】
請求項5に係る本発明として、前記移動装置は、ピストン先端が前記スライド台に連結された伸縮ジャッキである請求項1記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0023】
上記請求項3〜4記載の発明は、移動装置としての他例を示したものである。これらの装置の場合も、セグメント保持体は、機械的に、かつ全周に亘って配設された各セグメント保持体に夫々、均等な引込み力を与えながら前側に移動されるとともに、その移動距離も常に一定とできる。
【0024】
請求項6に係る本発明として、前記スキンプレートの内面側に設けた凹部に設け、この凹部内に前記スライド台及びセグメント保持体を設け、該セグメント保持体の収縮時には前記凹部内に収容可能としてある請求項1〜5いずれかに記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0025】
上記請求項6記載の発明は、スキンプレートの内面側に設けた凹部に設け、この凹部内に前記スライド台及びセグメント保持体を設け、該セグメント保持体の収縮時には前記凹部内に収容可能とすることにより、セグメント外面から地山までの寸法をほぼ通常通りか若干大きい程度に収めることができ、裏込コンクリート等の注入量の増大を防止することができる。
【0026】
請求項7に係る本発明として、前記セグメント保持体は、液体、気体、油等の流体によってトンネル中心側に向かって進退自在または膨縮自在とされる膨張マットまたはジャッキである請求項1〜6いずれかに記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0027】
請求項8に係る本発明として、相対的にスキンプレートの周方向上部領域側に前記膨張マットを配置し、相対的に周方向下部領域側にジャッキを配置してある請求項7記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0028】
請求項9に係る本発明として、前記当り材として可撓性部材を用いることにより、セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させる際、所定値以上の当接力が加わった場合に、前記当り材の変形により前記ピストンヘッドが当り材を乗り越えるようにしてある請求項2記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0029】
請求項10に係る本発明として、前記当り材はシールド機の内方側に向けて弾発的に支持されることにより、セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させる際、所定値以上の当接力が加わった場合に、前記当り材の没入により前記ピストンヘッドが当り材を乗り越えるようにしてある請求項2記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0030】
請求項11に係る本発明として、前記スライド台の摺動面及び/又はスキンプレートの摺動面に、摩擦低減処理を施すか、または摩擦低減部材を設けてある請求項1〜10いずれかに記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0031】
請求項12に係る本発明として、前記スライド台は、スキンプレートに対して、所定の角度範囲で旋回可能に配置されている請求項1〜11いずれかに記載のセグメントの形状保持装置が提供される。
【0032】
上記請求項12記載の発明では、前記スライド台は、スキンプレートに対して、所定の角度範囲で旋回可能に配置するものであり、シールド機の曲線施工時に、セグメント保持体に無理な力(捻れ)が掛からないため、セグメント保持体の破損を防止することができる。なお、前記スライド台を旋回可能とする最も簡易な構造としては、例えばスライド台の両側に遊間を設け、スライド台が所定の角度範囲で旋回可能な構造とすればよい。
【発明の効果】
【0033】
以上詳説のとおり本発明によれば、セグメントを外側から保持するセグメント保持体をスキンプレートに対し相対的に摺動可能としたセグメントの形状保持装置において、シールド機の掘進後に前記セグメント保持体を機械的かつ好ましくは自動的に、かつ簡易な手段により、均等な引込み力を与えながら所定の長さ分だけ掘進方向に移動させることが可能になるため、作業精度及び作業効率が著しく向上するようになる。
【0034】
さらに、スライド台は、スキンプレートに対して、所定の角度範囲で旋回可能に配置することにより、シールド機の曲線施工時に、セグメント保持体に無理な力(捻れ)が掛からないため、セグメント保持体の破損を防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1はシールド機1の縦断面図、図2は図1のII−II線矢視図である。
【0036】
同図に示されるシールド機1は泥水加圧式のものであり、シールド本体2の前端部に設けられた隔壁3とカッタヘッド4との間にはカッタチャンバ5が区画され、このカッタチャンバ5に臨ませて送泥管6と排泥管7とが夫々開口して設けられている。一方、シールド機1の外殻となるスキンプレート8内の後方側には、セグメント組立装置10(エレクター装置)が配設され、掘進に伴ってスキンプレート8内面に周方向に複数のピースからなるセグメント11をリング状に組み立て覆工を行うようになっている。なお、符号9はシールド本体2を推進させるためのシールドジャッキである。
【0037】
前記シールド機1においては、スキンプレート8の内面側であってかつ後方側位置に、周方向に適宜の間隔をおいて、トンネル中心側に向かって進退自在または膨縮自在のセグメント保持体12…、13…を複数配設し、セグメントを外周から多点支持する形状保持装置が設けられている。なお、本発明に係るセグメント形状保持装置は、前記泥水加圧式に限らず、泥水式、土圧式、泥土圧式等、種々のシールド機に対して適用されるものである。
【0038】
以下、具体的に前記セグメント形状保持装置について詳述すると、
前記セグメント保持体14としては、例えば液体、気体、油等の流体によって膨縮自在とされる膨張マット12または油圧(または空圧)ジャッキ13が使用され、図2に示されるように、リング状に組み立てられたセグメント11を外面側から多点支持し、土圧、自重および水圧による外力によってセグメント11が変形するのを防止するとともに、浮き上がりや自重によるずり落ちを防止するようになっている。
【0039】
この場合、前記セグメント保持体14は、同図に示されるように、好ましくは相対的にスキンプレート8の周方向上部領域側に前記膨張マット12,12…を配置し、相対的に周方向下部領域側に油圧ジャッキ13,13…を配置するようにするのが望ましい。ストローク調整によって被支持体の移動が容易に行える油圧ジャッキ13,13…を相対的に下部領域側に配設することにより、前記セグメント11の位置調整が容易に行えるようになる。もちろん、全周方向に前記膨張マット12,12…または油圧ジャッキ13,13…を配設するようにしてもよい。
【0040】
前記膨張マット12、12…は、詳細には図3に示されるように、スキンプレート8の内面側に凹部8aを設け、この凹部8a内にシールド機1の軸芯方向に摺動可能かつ所定の角度範囲で旋回可能とするため両側に遊間8b、8bを有する状態でスライド台15を配置し、このスライド台15のシールド機内側の面に設けられている。前記遊間8b、8bを持つことにより、シールド機1が曲線掘進中において、スライド台15が旋回することにより膨張マット12に無理な力(捻れ)が掛からず破損を防止できるようになる。
【0041】
前記膨張マット12は、ゴム等からなる風船状に膨張可能な袋体の周縁が固定用金具16によって固定され、液体または気体等の作動流体を供給ホース17を通じて供給または引抜き制御されることによってトンネル中心側に向かって膨縮自在となっている。すなわち、作動流体の供給により膨張マット12が膨張しセグメント11の外面に押圧状態で接触することによりセグメント11を保持し、作動流体の引抜きにより膨張マット12が収縮しセグメント11の外面から離間することによりセグメント11の保持が解除される。
【0042】
前記供給ホース17は、膨張マット12の移動に追従可能なように所定長さのものを図示したが、弛みを抑えるためにコイル巻きとし伸縮可能とした供給ホース、或いは2重、3重管等の多重管からなる伸縮自在管を作動油供給管として使用してもよい。
【0043】
前記スライド台15は、シールド機1の前側方向に延びる延在部分18を一体的に備えるとともに、この延在部分18にシールド機の内方側に突出する当り材19を設け、図4に示されるように、シールド機1を掘進させた後、シールドジャッキ9の収縮時にピストンヘッド20の背面側、図示例では当接板20aの上部背面側が前記当り材19と当接し、膨張マット12をスライド台15と共に掘進方向に移動させるようにした移動装置が設けられている。
【0044】
一方、下側に配置された油圧ジャッキ13も、上記膨張マット12と同様に、図5(A)に示されるように、スキンプレート8の内面側に凹部8aを設け、この凹部8a内にシールド機1の軸芯方向に摺動可能かつ所定の角度範囲で旋回可能とするため両側に遊間8b、8bを有する状態でスライド台15を配置し、このスライド台15のシールド機内側の面に設けられている。前記遊間8b、8bを持つことにより、シールド機が曲線部掘進中において、スライド台15が旋回することにより油圧ジャッキ13に無理な力(捻れ)が掛からず、破損を防止できるようになる。
【0045】
そして、作動流体の供給または引抜き制御により、ピストンがトンネル中心側に伸長しセグメント11を押圧保持するようになっている。また、前記スライド台15は、シールド機1の前側方向に延びる延在部分18を一体的に備えるとともに、この延在部分18にシールド機の内方側に突出する当り材19を備えており、図5(B)に示されるように、シールド機1を掘進させた後、シールドジャッキ9の収縮時にピストンヘッド20の背面側が前記当り材19と当接し、油圧ジャッキ13をスライド台15と共に掘進方向に移動させるようになっている。
【0046】
以下、具体的にシールド掘進手順に従って、本発明に係るセグメント形状保持装置14によるセグメントの保持手順について、図6及び図7に基づいて詳述する。
【0047】
先ず、図6(A)に示されるように、シールドジャッキ9を引き込み、最前列のセグメント11との間に空間を空けた状態としたならば、既設セグメント11に連続してセグメント11を組み立てる。この際、膨張マット12は収縮させた状態とする。セグメント11の組立が完了したならば、図6(B)に示されるように、シールドジャッキ9のスプレッダ(ピストンヘッド)20を組立が完了したセグメント11の端面に押し当て、図6(C)に示されるように、作動流体を供給し膨張マット12を膨張させ、セグメント11の外面に押圧状態で押し当てることによりセグメント11を支持する。
【0048】
次いで、図7(D)に示されるように、シールドジャッキ9を伸長させることによりシールド機1を掘進させ、1セグメント幅分の掘削を行う。この際、スライド台15はスキンプレート8に対して摺動可能な構造となっているため、膨張マット12の位置は変わらず、スキンプレート8が前進する。掘進が完了したならば、図7(E)に示されるように、作動流体を引抜き膨張マット12を収縮させ、セグメント11の保持を解除したならば、図7(F)に示されるように、シールドジャッキ9のピストンを収縮させると、スプレッダ20の当接面20aの上部背面側が当り材19と当接し、膨張マット12をスライド台15と共に掘進方向に移動させる。
【0049】
上記図6(A)〜図7(F)の工程を繰り返すことにより、順次、構築された最前列のセグメント11を支持しながら、掘進作業を行うようにする。
【0050】
前記スライド台15は、シールド機1の掘進時にスキンプレート8の内面との摺接によって摩擦が発生するため、前記スライド台15のスキンプレート側摺動面及び/又はスキンプレート8のスライド台15側摺動面に、摺動を円滑にするための摩擦低減処理を施すか、または摩耗低減部材を設けるようにするのが望ましい。前者の摩擦低減処理としては、例えば摺動面にデンプル状の突起を設け接触面積の低減を図ったり、4フッ化エチレン樹脂などの摩擦低減材をコーティングするなどの方法を挙げることができ、後者の摩擦低減部材として、例えば前記摺動面側に、4フッ化エチレン樹脂塗工板を設けたり、図8に示されるように、前記スライド台15のスキンプレート側の面に多数のベアリング21、21…を設けるなどの方法を挙げることができる。
【0051】
ところで、シールド機1の掘進中に、例えば方向修正などのために一部のシールドジャッキ9、9…を意図的に途中で停止させた場合は、停止したシールドジャッキ9は掘進に伴ってスプレッダ20が当り材19と当接し、当り材19を破損させる事態が発生することになる。このような当り材19の破損の防止するため、所定値以上の当接力が当り材19に加わった場合に、スプレッダ20が当り材19を乗り越える機構とするのが望ましい。その第1態様は、図9に示されるように、前記当り材19としてゴムなどの可撓性部材を用いることにより、セグメント保持体12,13をスライド台15と共に掘進方向に移動させる際、所定値以上の当接が加わった場合に、前記当り材19の変形により前記スプレッダ20が当り材19を乗り越えるようにする。また、その第2態様は、図10に示されるように、前記当り材19をシールド機1の内方側に向けて弾発的に支持することにより、セグメント保持体12,13をスライド台15と共に掘進方向に移動させる際、所定値以上の当接が加わった場合に、前記当り材19の没入により前記スプレッダ20が当り材19を乗り越えるようにする。
【0052】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では移動装置として、前記スライド台15にシールド機の前部側方向に延びる延在部分18を一体的に備えるとともに、この延在部分18にシールド機の内方側に突出する当り材19を備えた構造としたが、図11に示されるように、移動装置は、巻取りリール22と、この巻取りリール22に巻回されるとともに、先端が前記スライド台15に連結された索材23とからなる装置とすることも可能である。この場合、前記巻取りリール22は、索材23の繰出しはラチェット機構によりフリーとし、巻取りのみを動力で行うようにする。
【0053】
(2)また、前記移動装置として、図12に示されるように、離間をおいて配置されたスプロケット又はプーリー24、24間にエンドレスループ状に索材25を架け渡し、前記索材25をスライド台15に連結するとともに、前記スプロケット又はプーリー24,24を駆動させる駆動源26を備えた装置とすることも可能である。
【0054】
(3)更には、前記移動装置として、ピストン先端が前記スライド台15に連結された伸縮ジャッキ(図示せず)とすることも可能である。この場合は、伸縮ジャッキの伸長はフリーとし、収縮のみを制御するようにすればよい。
【0055】
(4)上記形態例では、周方向に適宜の間隔をおいて、トンネル中心側に向かって進退自在または膨縮自在のセグメント保持体を複数配設するようにしたが、前記膨張マット12の場合には、周方向に連続するように設けてもよい。また、上記例では円形断面トンネルを対象として説明を行ったが、対象となるトンネル断面形状は楕円、馬蹄形等、円形以外の形状であってもよい。
【0056】
(5)上記形態例では、スキンプレート8の内面側に凹部8aを設け、この凹部8a内にセグメント保持体12…,13…を設けるようにしたが、スキンプレート8とセグメント11とのクリアランスが許せば、前記凹部8aを設けることなく、スキンプレート8の内面側にセグメント保持体12…、13…を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】シールド機1の縦断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】セグメント形状保持体を成す膨張マット12を示す、(A)は側面図、(B)は(A)のB-B線矢視図である。
【図4】セグメント形状保持体を成す膨張マット12の移動状態図である。
【図5】セグメント形状保持体を成す油圧ジャッキ13を示す、(A)はセグメント支持状態図、(B)は移動状態図である。
【図6】本発明に係るセグメント形状保持装置14によるセグメントの保持手順図(その1)である。
【図7】本発明に係るセグメント形状保持装置14によるセグメントの保持手順図(その2)である。
【図8】ベアリング21よりなる摩擦低減部材の配設要領図である。
【図9】スプレッダ20の当り材乗り越え要領図(その1)である。
【図10】スプレッダ20の当り材乗り越え要領図(その2)である。
【図11】移動装置の他例を示す、(A)は移動前、(B)は移動後の状態を示す図である。
【図12】移動装置の他例を示す、(A)は移動前、(B)は移動後の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1…シールド機、2…シールド本体、3…隔壁、4…カッタヘッド、5…カッタチャンバ、8…スキンプレート、10…エレクター装置、11…セグメント、11…最前列セグメント、12…膨張マット、13…油圧ジャッキ、14…セグメント保持体、15…スライド台、16…固定用金具、17…供給ホース、18…延在部分、19…当り材、21…ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機の外殻となるスキンプレートの内面側であってかつ後方側位置に、周方向に適宜の間隔をおいて、トンネル中心側に向かって進退自在のセグメント保持体及び/又は膨縮自在のセグメント保持体を複数配設したセグメントの形状保持装置において、
前記スキンプレートの内面側に周方向に適宜の間隔をおいてシールド機の軸心方向に摺動可能にスライド台を配置するとともに、このスライド台のシールド機内面の面に前記セグメント保持体を設け、シールド機を掘進させた後、前記セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させる移動装置を備えたことを特徴とするセグメントの形状保持装置。
【請求項2】
前記移動装置は、前記スライド台にシールド機の前部側方向に延びる延材部分を一体的に備えるとともに、この延材部分にシールド機の内方側に突出する当り材を備え、シールド機を掘進させた後、シールドジャッキの収縮時にピストンヘッドの背面側が前記当り材と当接し、前記セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させるようにした装置である請求項1記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項3】
前記移動装置は、巻取りリールと、この巻取りリールに巻回されるとともに、先端が前記スライド台に連結された索材とからなる請求項1記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項4】
前記移動装置は、離間をおいて配置されたスプロケット又はプーリー間にエンドレスループ状に索材を架け渡し、前記索材をスライド台に連結するとともに、前記スプロケット又はプーリーを駆動させる駆動源を備えた装置である請求項1記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項5】
前記移動装置は、ピストン先端が前記スライド台に連結された伸縮ジャッキである請求項1記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項6】
前記スキンプレートの内面側に設けた凹部に設け、この凹部内に前記スライド台及びセグメント保持体を設け、該セグメント保持体の収縮時には前記凹部内に収容可能としてある請求項1〜5いずれかに記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項7】
前記セグメント保持体は、液体、気体、油等の流体によってトンネル中心側に向かって進退自在または膨縮自在とされる膨張マットまたはジャッキである請求項1〜6いずれかに記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項8】
相対的にスキンプレートの周方向上部領域側に前記膨張マットを配置し、相対的に周方向下部領域側にジャッキを配置してある請求項7記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項9】
前記当り材として可撓性部材を用いることにより、セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させる際、所定値以上の当接力が加わった場合に、前記当り材の変形により前記ピストンヘッドが当り材を乗り越えるようにしてある請求項2記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項10】
前記当り材はシールド機の内方側に向けて弾発的に支持されることにより、セグメント保持体をスライド台と共に掘進方向に移動させる際、所定値以上の当接力が加わった場合に、前記当り材の没入により前記ピストンヘッドが当り材を乗り越えるようにしてある請求項2記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項11】
前記スライド台の摺動面及び/又はスキンプレートの摺動面に、摩擦低減処理を施すか、または摩擦低減部材を設けてある請求項1〜10いずれかに記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項12】
前記スライド台は、スキンプレートに対して、所定の角度範囲で旋回可能に配置されている請求項1〜11いずれかに記載のセグメントの形状保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−138479(P2008−138479A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327989(P2006−327989)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(591108640)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【出願人】(504158881)東京地下鉄株式会社 (22)
【Fターム(参考)】