説明

セグメントの組立計画方法と装置およびセグメント組立装置

【課題】セグメントを構成する分割片の組付順序を変更することで、分割片の位置ずれを抑制できるようにするとともに、セグメントを構成する分割片の組付順序を、簡単に変更できるようにする。
【解決手段】シールド掘進機により掘削されたトンネルの内周壁に沿って環状に組み立てられるセグメントの組立計画方法。セグメントは、複数の分割片を環状に組み立てることで形成され、これら分割片には、組み立てにおいて最後に組み付けられるキー分割片が含まれている。セグメントを構成する各分割片のキー分割片に対する相対的な組付位置、および該各分割片の組付順序を定める複数の順序決定規則が予め設定されている。キー分割片の組付位置を入力し、複数の順序決定規則のうちのいずれかを選択する。選択された順序決定規則に従って、各分割片の組付順序を決定し、相対的な組付位置と、キー分割片の組付位置とに従って、各分割片の組付位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機により掘削されたトンネルの内周壁に沿って環状に組み立てられるセグメントの組立計画方法と装置、および、セグメントの組立計画を備えるセグメント組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、カッタヘッド、エレクタ装置、シールドジャッキなどを備える。カッタヘッドは、シールド掘削機本体の前部に設けられ、駆動モータによって回転駆動され、これにより、トンネルを掘削する。エレクタ装置は、トンネルの内周壁に沿ってセグメントを環状に組み付ける動作を行う。シールドジャッキは、シールド掘削機本体の周方向に複数配置され、組み付けられたセグメントを後方に押し付けることで、セグメントから押し付け反力を受け、これにより、シールド掘削機本体を前進させる。このようなシールド掘削機は、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
上述のセグメントは、トンネル掘削の進行に従って順に1つずつ組み付けられていく。即ち、1つのセグメントが組み付けられ、掘削が所定距離だけ進んだら、当該セグメントに、次のセグメントを掘削方向(トンネル軸方向)に結合させ、さらに掘削を所定距離だけ進ませ、この手順を繰り返していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−188821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環状のセグメントは、周方向に複数の分割片に分割されている。これら分割片を、トンネル内において、トンネル内周壁に沿って順に組み付けていき、これにより、1つのセグメントが組み付けられる。
【0006】
各分割片は、セグメントの組み付けを行っていくうちに、周方向(トンネルの内周方向)に位置ずれする傾向があり、その結果、分割片の組み付けに支障が生じる可能性がある。
【0007】
分割片の位置ずれの原因は、次のように、分割片の同じ組付順序にある。分割片の組み付け時に、当該分割片を、既に組み付けた分割片に周方向に当接させる。すなわち、エレクタ装置は、各セグメントを組み付ける場合に、最初に組み付ける分割片は、自身の動作基準位置に基づいて当該分割片を所定の組付位置に位置決めするが2番目以降に組み付ける分割片は、既に組み付けた分割片に周方向に当接させることで当該分割片を位置決めする。この場合に、組み付ける複数のセグメントの間で、同じ分割片を使用して同じ組付順序で各分割片を組み付けると、当接の際の衝撃により分割片が同じ方向にずれる傾向がある。例えば、図1のように、括弧書きの数字の順番で、分割片S1〜S8を組み付けるとする。図1において、矢印a〜fは、分割片の当接時に生じる分割片の位置ずれを強調して示したベクトルである。すなわち、分割片S2を、組付時に分割片S1に反時計周りに当接させると、その衝撃で分割片S1がベクトルaのように位置ずれし、分割片S3を、組付時に分割片S1に時計回りに当接させると、その衝撃で分割片S1、S2がベクトルbのように位置ずれし、分割片S4を、組付時に分割片S2に反時計周りに当接させると、その衝撃で分割片S1〜S3がベクトルcのように位置ずれする。他の分割片についても同様である。これらベクトルa〜fの大きさは、既に組み付けられた分割片の数や、重力の方向に対する当接面の方向などにも依存する。特に、最初に組み付けた分割片S1に対して、2番目に組み付ける分割片S2を当接させる時の衝撃が、上記位置ずれに最も影響する傾向がある。これらベクトルa〜fの合成ベクトルが、図1のセグメントを組み付けた時の位置ずれとなるが、このような位置ずれが、組み付けたセグメントの数の増加に伴って蓄積されて、許容範囲を超えた大きさになる可能性がある。
【0008】
上述のように、分割片の位置ずれが生じると、セグメントの組み付けに支障が生じる可能性がある。トンネルの軸方向に隣接するセグメント同士は、ボルトで連結される。すなわち、隣接するセグメントの対応する分割片同士をボルトで連結する。しかし、上述の分割片の位置ずれにより、直前に組み付けたセグメントのボルト孔と、これから組み付ける分割片に固定されたボルトとが、許容範囲を超えて位置ずれしてしまう。この場合、例えば、エレクタ装置が、図2のように、その動作基準位置に基づいて、次のセグメントの分割片S1を図2のように周方向に位置決めしても、当該分割片S1のボルト31が、直前に組み付けたセグメントのボルト孔33に整合しなくなり、この位置決め後、軸方向(図2の右側)へ、当該分割片S1を移動させても、直前に組み付けたセグメントのボルト孔33に挿入できなくなるという支障が生じる。
【0009】
そこで、分割片の位置ずれを抑制するために、セグメントを構成する複数の分割片の組付順序を、時々(例えば、所定数のセグメントを組み付ける度に)変更することが考えられる。
【0010】
すなわち、組付順序を変更することで、次のように、分割片の位置ずれが生じないようにする可能性を広げることができる。上述の原因によりどちらの周方向に位置ずれするか、予測できない場合がある。従って、前もって、分割片の位置ずれが、どの周方向にどれだけ生じるかを予測するのは困難である。しかし、セグメントを構成する複数の分割片の組付順序を、時々(例えば、所定数のセグメントを組み付ける度に)、変更することで、少なくとも、分割片の位置ずれが生じないようにする可能性を広げることができる。
これに対し、各分割片の組付位置を同じにし、かつ各分割片の組付順序を同じにして、セグメントを組み付けていくと、高い確率で、セグメントの組付数の増加に伴って、同じ周方向に分割片の位置ずれが大きくなっていく。
そこで、セグメントを構成する複数の分割片の組付順序を変更することで、少なくとも、このような分割片の位置ずれが生じないようにする可能性を広げることができる。
【0011】
しかし、この場合、分割片の組付順序を変更する度に、エレクタ装置の制御装置に専用の組付順序プログラムを修正する必要がある。このようなプログラム修正は、非常に手間がかかる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上述した位置ずれの原因解明に基づいて、セグメントを構成する分割片の組付順序を変更することで、分割片の位置ずれを抑制できるようにするとともに、セグメントを構成する分割片の組付順序を、簡単に変更できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明によると、シールド掘進機により掘削されたトンネルの内周壁に沿って環状に組み立てられるセグメントの組立計画方法であって、
セグメントは、複数の分割片を環状に組み立てることで形成され、これら分割片には、組み立てにおいて最後に組み付けられるキー分割片が含まれており、
セグメントを構成する各分割片のキー分割片に対する相対的な組付位置が予め設定されているとともに、該各分割片の組付順序を定める複数の順序決定規則が予め設定されており、
(A)入力部により、キー分割片の組付位置を位置計画部へ入力し、
(B)入力部により、前記複数の順序決定規則のうちのいずれかを選択し、
(C)選択された順序決定規則に従って、セグメントを構成する各分割片の組付順序を順序計画部により決定し、
(D)前記相対的な組付位置と、入力されたキー分割片の組付位置とに従って、セグメントを構成する各分割片の組付位置を位置計画部により決定する、ことを特徴とするセグメントの組立計画方法が提供される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によると、前記(D)において各分割片の組付順序を決定した後、当該各分割片の組付順序を変更するために、
入力部により、前記複数の順序決定規則のうちのいずれかを新たに選択し、
新たに選択された順序決定規則に従って、セグメントを構成する各分割片の組付順序を順序計画部により新たに決定する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によると、前記複数の順序決定規則には、第1および第2の順序決定規則が含まれており、
第1の順序決定規則では、1番目となる分割片は、組付位置が前記環状における底部となる分割片であり、2番目となる分割片は、1番目の分割片に、互いに逆を向く第1および第2の周方向のうち第1の周方向に隣接する分割片であり、3番目となる分割片は、1番目の分割片に、第2の周方向に隣接する分割片であり、セグメントを構成する分割片の数をnとした場合に、mが4以上で(n−1)以下の偶数であるとし、nが6以上の整数であるとして、m番目となる分割片は、(m−2)番目の分割片に、第1の周方向に隣接する分割片であり、(m+1)番目となる分割片は、(m−1)番目の分割片に、第2の周方向に隣接する分割片であり、n番目となる分割片は、キー分割片であり、
第2の順序決定規則では、1番目となる分割片は、組付位置が前記環状における底部となる分割片であり、2番目となる分割片は、1番目の分割片に、第2の周方向に隣接する分割片であり、3番目となる分割片は、1番目の分割片に、第1の周方向に隣接する分割片であり、セグメントを構成する分割片の数をnとした場合に、mが4以上で(n−1)以下の偶数であるとし、nが6以上の整数であるとして、m番目となる分割片は、(m−2)番目の分割片に、第2の周方向に隣接する分割片であり、(m+1)番目となる分割片は、(m−1)番目の分割片に、第1の周方向に隣接する分割片であり、n番目となる分割片は、キー分割片である。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明によると、シールド掘進機により掘削されたトンネルの内周壁に沿って環状に組み立てられるセグメントの組立計画装置であって、
セグメントは、複数の分割片を環状に組み立てることで形成され、これら分割片には、組み立てにおいて最後に組み付けられるキー分割片が含まれており、
セグメントを構成する各分割片のキー分割片に対する相対的な組付位置が予め設定されているとともに、該各分割片の組付順序を定める複数の順序決定規則が予め設定されており、
キー分割片の組付位置を入力し、前記複数の順序決定規則のうちのいずれかを選択するための入力部と、
選択された順序決定規則に従って、セグメントを構成する各分割片の組付順序を決定する順序計画部と、
前記相対的な組付位置と、入力されたキー分割片の組付位置とに従って、セグメントを構成する各分割片の組付位置を決定する位置計画部と、を備える、ことを特徴とするセグメントの組立計画装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明によると、複数の順序決定規則の間で、セグメントを構成する各分割片の組付順序が異なるので、入力部により選択する順序決定規則を、オペレータの意思で、(例えば、所定数のセグメント毎に)変えることができる。これにより、上述した分割片の位置ずれを抑制できる。
また、オペレータは、入力部の操作により、自身の意思で、複数の順序決定規則から順序決定規則を選択できる。従って、選択する順序決定規則を(例えば、所定数のセグメント毎に)変化させることができ、その結果、組付順序プログラムを修正することなく、簡単に、分割片の組付順序を変化させることができる。
本発明の実施形態による効果は、以下で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】セグメントの位置ずれを説明するための図である。
【図2】位置ずれによる問題を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態によるセグメントの組立計画装置を示すブロック図である。
【図4】(A)は、第1の順序決定規則を示し、(B)は、第2の順序決定規則を示す。
【図5】組立計画装置を用いた組立計画方法のフローチャートである。
【図6】キー分割片の組付位置として選択可能な箇所を組付位置番号1)〜10)で示した図である。
【図7】組立スケジュール計算を示すアルゴリズムである。
【図8】キー分割片の組付位置を決定する処理を示すフローチャートである。
【図9】セグメントを構成する複数の分割片の組付位置を示す位置番号iを示す。
【図10】(A)は、第1パターンの相対位置を示し、(B)は、第2パターンの相対位置を示す。
【図11】各分割片の組付位置および組付順序を変更する処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態によるセグメント組立装置を示すブロック図である。
【図13】シールド掘削機を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
[セグメントの組立計画装置]
図3は、本発明の実施形態によるセグメントの組立計画装置10を示すブロック図である。セグメントの組立計画装置10は、シールド掘進機により掘削されたトンネルの内周壁に沿って環状に組み立てられる各種類のセグメントの組立計画を行う。
【0021】
1つのセグメントは、複数の分割片を環状に組み立てることで形成され、これら分割片には、組み立てにおいて最後に組み付けられるキー分割片が含まれる。
本実施形態によると、セグメントの種類毎に、該セグメントを構成する各分割片のキー分割片に対する相対的な組付位置が予め設定されているとともに、該各分割片の組付順序を定める複数の順序決定規則が予め設定されている。セグメントの種類は、セグメントの材質、環状方向における分割片の寸法、分割片の数、セグメントを固定するのに使用するボルトの数や位置、または、これらの組み合わせによって定められる。
【0022】
セグメントの組立計画装置10は、入力部3および計画部5を備える。
【0023】
入力部3は、人に操作されることで、キー分割片の組付位置を入力し、前記複数の順序決定規則のうちのいずれかを選択できるように構成されている。また、入力部3は、人に操作されることで、セグメントの種類を入力できるように構成されている。例えば、入力部3は、キーボード、ボタンなどのオペレータが操作可能な装置であり、オペレータが入力部3を操作することで、セグメントの種類と、当該種類のセグメントを構成するキー分割片の組付位置とを後述の位置計画部5aに入力し、順序決定規則を選択することができる。
入力部3により、環状方向(即ち、上述の環状の中心周りの方向。以下、同様)における位置を示す値を、キー分割片の組付位置として入力してよい。例えば、環状の中心の真上を0度として、時計周りを正とした回転角(0度〜360度)をキー分割片の組付位置として入力してもよい。この場合、入力した回転角が、キー分割片の環状方向における中心位置であるとしてよい。
【0024】
計画部5は、入力部3の入力と選択、および、設定されている前記相対的な組付位置に従って各分割片の組付位置および組付順序を決定するように構成されている。即ち、計画部5は、入力された種類と、入力されたキー分割片の組付位置と、選択された順序決定規則と、前記相対的な組付位置とに基づいて、当該種類のセグメントを構成する各分割片の組付位置および組付順序を決定して出力する。計画部5は、位置計画部5aおよび順序計画部5bを有する。
【0025】
位置計画部5aは、設定されている前記相対的な組付位置に従って、セグメントを構成する各分割片の組付位置を決定する。前記相対的な組付位置は、セグメントの種類と対応づけて位置計画部5aに記憶・保持されていてよい。また、位置計画部5aは、セグメントの種類毎に、環状方向における各分割片の寸法を記憶しており、該寸法に基づいて、各分割片の組付位置を算出する。
【0026】
順序計画部5bは、選択された順序決定規則に従って、セグメントを構成する各分割片の組付順序を決定する。前記複数の順序決定規則は、順序計画部5bに設定されていており、選択された順序決定規則が順序計画部5bに使用される。
【0027】
好ましくは、1つのセグメントを構成する各分割片は、後述のセグメント組立装置20により、前記環状の中心に対する半径方向に位置決めされた後、時計回りまたは反時計回りに旋回させられることで、既に組み付けられた分割片に環状方向に当接させられて組み付けられるようになっている。この場合、計画部5は、各セグメントについて、組付順序が最初と最後の分割片以外の各分割片について、前記旋回の方向を決定する。
【0028】
計画部5は、シールド掘削機によるトンネル掘削の進行に従って、トンネル内において、順に1つずつ組み立てられていくセグメントの順序(以下、セグメント組付順序という)を記憶する。前記種類とキー分割片の組付位置とが入力され順序決定規則が選択されたセグメントについて、これら入力および選択がなされた順に、セグメント組付順序が自動的に定められてもよいし、入力部3をオペレータが操作することで、所望のセグメント組付順序を定めてもよい。
【0029】
図4(A)、図4(B)は、同じ種類のセグメントについて、これを構成する各分割片の組付位置および組付順序を示す。図4(A)、図4(B)において、セグメントSは、分割片S1〜S8から構成される。分割片S8は、キー分割片である。分割片S1〜S8は、互いに形状、寸法などが異なっていてよい。なお、図4において、下方が鉛直下方である。また、図4において、符号Cは、環状のセグメント中心を示す。
【0030】
キー分割片S8に対する各分割片S1〜S7の相対的な組付位置は、図4(A)と図4(B)との間で同じである。図4の例では、キー分割片S8の組付位置は、図4(A)と図4(B)との間で同じである。
【0031】
図4(A)は、前記複数の順序決定規則のうちの第1の順序決定規則に従って、順序計画部5bにより決定された組付順序を示す。一方、図4(B)は、前記複数の順序決定規則のうちの第2の順序決定規則に従って、順序計画部5bにより決定された組付順序を示す。すなわち、図4(A)、図4(B)において、括弧書きの数字は、組付順序を示す組付番号である。
【0032】
第1の順序決定規則では、1番目となる分割片(図4(A)では分割片S1)は、組付位置が前記環状における底部となる分割片であり、2番目となる分割片(図4(A)では分割片S2)は、1番目の分割片に、(1番目の分割片から見て)互いに逆を向く第1および第2の周方向のうち第1の周方向(図4(A)では時計回りの周方向)に隣接する分割片であり、3番目となる分割片(図4(A)では分割片S3)は、1番目の分割片に、(1番目の分割片から見て)第2の周方向に隣接する分割片であり、セグメントを構成する分割片の数をnとした場合に、mが4以上で(n−1)以下の偶数であるとし、nが6以上の整数であるとして、m番目となる分割片は、(m−2)番目の分割片に、((m−2)番目の分割片から見て)第1の周方向に隣接する分割片であり、(m+1)番目となる分割片は、(m−1)番目の分割片に、((m−1)番目の分割片から見て)第2の周方向に隣接する分割片であり、n番目となる分割片(図4(A)では分割片S8)は、キー分割片である。
【0033】
第2の順序決定規則では、1番目となる分割片(図4(B)では分割片S1)は、組付位置が前記環状における底部となる分割片であり、2番目となる分割片(図4(B)では分割片S3)は、1番目の分割片に、(1番目の分割片から見て)第2の周方向(図4(B)では反時計回りの周方向)に隣接する分割片であり、3番目となる分割片(図4(B)では分割片S2)は、1番目の分割片に、(1番目の分割片から見て)第1の周方向に隣接する分割片であり、セグメントを構成する分割片の数をnとした場合に、mが4以上で(n−1)以下の偶数であるとし、nが6以上の整数であるとして、m番目となる分割片は、(m−2)番目の分割片に、((m−2)番目の分割片から見て)第2の周方向に隣接する分割片であり、(m+1)番目となる分割片は、(m−1)番目の分割片に、((m−1)番目の分割片から見て)第1の周方向に隣接する分割片であり、n番目となる分割片(図4(B)では分割片S8)は、キー分割片である。
【0034】
複数の順序決定規則は、図4に示すものに限定されない。例えば、図4(A)において、分割片S2と分割片S3の順序のみを互いに逆にしたものを順序決定規則の1つにしてもよい。また、設定される順序決定規則の数は、2つであってもよいし(例えば、上述の第1および第2の順序決定規則)、3つ以上であってもよい。
【0035】
計画部5は、次に組み付ける分割片が、この分割片から見て、既に組み付けられた分割片に対し第1の周方向(即ち、時計周りの方向)に隣接する分割片であると決定する場合には、当該次に組み付ける分割片の前記旋回の方向を時計周りに決定し、次に組み付ける分割片が、この分割片から見て、既に組み付けられた分割片に対し第2の周方向(即ち、反時計周りの方向)に隣接する分割片であると決定する場合には、当該次に組み付ける分割片の前記旋回の方向を反時計周りに決定する。
【0036】
図4と異なる種類のセグメントについても、同様に上述の設定がなされる。セグメントの複数種類の間で、キー分割片に対する各分割片の相対的な組付位置は異なっていてよい。
【0037】
図5は、組立計画装置10を用いた組立計画方法のフローチャートである。
【0038】
ステップST1において、オペレータが入力部3を操作することで、セグメントの種類と、当該種類のセグメントを構成するキー分割片の組付位置とを計画部5に入力する。
例えば、オペレータが入力部3を操作することで、セグメントの材質、環状方向における分割片の寸法、分割片の数などを入力することで、セグメントの種類が自動的に特定されて入力されてもよいし、単に、セグメントの種類を示す数字や文字を入力することでセグメントの種類を特定して入力してもよい。
また、ステップST1において、当該ステップで入力する種類のセグメントが、上述のセグメント組立順序において何番目であるかをリング番号として入力することもできる。
【0039】
さらに、ステップST1において、オペレータが入力部3を操作することで、ステップST2で順序計画部5bが使用する前記順序決定規則を、前記複数の順序決定規則の中から選択してよい。なお、この選択を行わない場合には、複数の順序決定規則のうちの既定の順序決定規則(この例では、第1の順序決定規則)をステップST2で使用するように順序計画部5bが構成されてよい。
【0040】
ステップST2において、ステップST1で順序決定規則が選択された場合には、順序計画部5bが、選択された順序決定規則に従って、各分割片の組付順序を決定して出力し、ステップST1で順序決定規則が選択されなかった場合には、順序計画部5bが、前記既定の順序決定規則に従って、各分割片の組付順序を決定して出力する。
また、ステップST2において、位置計画部5aが、ステップST1で入力された種類、キー分割片の組付位置、および、設定された各分割片の前記相対位置に従って、各分割片の組付位置を算出し出力する。
【0041】
ステップST3において、ステップST2で出力した各分割片の組付位置および組付順序とリング番号とのデータが含まれたパラメータファイルを制御データとして生成する。このパラメータファイルは、例えば、後述の記憶媒体(例えばUSBメモリ)に記憶させることができ、当該記憶媒体により組立計画装置10から後述の制御部9に受け渡すようにするのがよい。
また、ステップST1とステップST2とを交互に繰り返し行うことで、複数のセグメントについて、各分割片の組付位置および組付順序とリング番号とを入力でき、1つのセグメントの各分割片の組付位置および組付順序とそのリング番号を1組のデータとして、得られた複数組のデータを制御データとして生成し、この制御データを前記記憶媒体に記憶させてもよい。
【0042】
上述のステップST2の具体例を説明する。
【0043】
まず、図6を用いて前提条件を説明する。
キー分割片の組付位置は予め定められた所定数M(図6では、M=10)の箇所のいずれかであるとする。図6において、これら箇所をそれぞれ組付位置番号1)〜10)で示す。この場合、ステップST1で、前記組付位置番号により、キー分割片の組付位置を特定して入力することができる。図6において、上方が鉛直上方に対応する。
なお、図6において、オペレータがステップST1で入力部3を操作することで、セグメント中心C周りの周方向における当該組付位置番号(例えば、番号1))の位置を調節して入力することができる。これにより、例えば、組付位置番号1)が示すキー分割片の組付位置を、他の組付位置番号2)〜10)よりも高い位置となる範囲で、調節することができる。このように位置が調整された組付位置番号を、キー分割片の組付位置としてステップST1で入力できる。
【0044】
図7は、ステップST2の組立スケジュール計算を示すアルゴリズムである。以下で説明する図7のアルゴリズム(すなわち、図7の各ステップST2−1〜ST2−11)は、計画部5に実行される。
【0045】
ステップST2−1において、ステップST1で順序決定規則が選択された場合には、選択された順序決定規則に従って、各分割片の組付順序を決定し、ステップST1で順序決定規則が選択されなかった場合には、前記既定の順序決定規則に従って、各分割片の組付順序を決定する。
【0046】
ステップST2−2において、キー分割片の組付位置を決定する。ステップST2−2は、図8に示すようにステップST2−2−1〜ST2−2−6からなる。
まず、ステップST1で入力されたキー分割片の組付位置番号を抽出する。ステップST2−2−1で、検索番号iに1を代入する。ステップST2−2−2で、検索番号iが、入力されたキー分割片の組付位置番号であるかを判断する。同じであると判断した場合には、ステップST2−2−3へ進み、そうでない場合には、ステップST2−2−4へ進む。ステップST2−2−4では、検索番号iを1つだけ増やして、ステップST2−2−5へ進む(なお、ステップST2−2−4以降の処理では、増やした検索番号iで処理を行う)。ステップST2−2−5では、検索番号iが、上述の所定数Mを超えているかを判断し、超えている場合は、エラーとなり、超えていない場合には、ステップST2−2−2に戻り、上述の処理を繰り返す。一方、ステップST2−2−3では、検索番号iを、キー分割片の組付位置番号Kpとして抽出し、ステップST2−2−6へ進む。
【0047】
ステップST2−2―6において、キー分割片の組付位置番号から、キー分割片の組付位置θk(前記周方向における中心位置)を、次式により算出する。

θk=(360/Nb)×{Kp−1+(Kb/2)}+θb

ここで、組付位置θkは、図6に示すように、セグメント中心C周りの周方向における基準位置Pに対して、セグメント中心C周りの角度によりキー分割片の組付位置を定めるものである。Nbは、仮に、セグメントを、前記周方向において、それぞれが所定の単位寸法(L0で表わす。以下同様)を持つように等分割した場合におけるその分割数N(例えば80)である。すなわち、セグメントの周方向の全体寸法は、L0×Nである。Kpは、ステップST1で入力されたキー分割片の組付位置番号(1〜Mの正の整数のいずれか)である。Kbは、キー分割片の前記周方向における寸法をL1とした場合に、L1=n×L0を満たすnの値である。θbは、所定の調整角度である。
【0048】
ステップST2−3では、各分割片の組付位置θdを次式により算出する。

θd=θs+θk

ここで、θsは、キー分割片に対する分割片の相対角度であり、各分割片のキー分割片に対する相対的な組付位置として予め定められている。
【0049】
ステップST2−4では、組付位置i=1である分割片を、以降の各ステップで対象とする分割片とする。組付位置iは、セグメントを構成する複数の分割片の組付位置を示し、ステップST2−3で算出した各分割片のθdにより定められ、図9のように、所定の周方向位置の分割片から順に、前記周方向に連続して増えていくように1〜NS(図9の例では、NS=10)まで定められる。すなわち、分割片の位置番号iは、図9のように周方向(時計回りに)に分割片が1つ移行すると1つだけ増加する。なお、図9において、符号Bは、分割片同士の境界を示す。
【0050】
ステップST2−5では、i=1である分割片の組付順序が最初または最後であるかを判断する。YESの場合には、ステップST2−6へ進み、NOの場合には、ステップST2−7へ進む。
【0051】
ステップST2−6では、上述の旋回は無しとして、ステップST2−10へ進む。
【0052】
ステップST2−7では、上述の組付順序において、対象としている分割片の位置番号がiである分割片が、位置番号がi+1である分割片より後であるか(即ち、後に組み付けられるか)を判断する。YESの場合には、ステップST2−8へ進み、NOの場合には、ステップST2−9へ進む。
なお、ステップST2−7で、対象としている分割片の位置番号iがi=NSである場合には、上述の組付順序において、対象としている分割片の位置番号iがNSである分割片が、位置番号iが1である分割片より後であるか(即ち、後に組み付けられるか)を判断する。
【0053】
ステップST2−8では、上述の旋回の方向を時計回りとして、ステップST2−10へ進む。
【0054】
ステップST2−9では、上述の旋回の方向を反時計回りとして、ステップST2−10へ進む。
【0055】
ステップST2−10では、i=i+1として、位置番号iを1つ増やしてiを更新し、ステップST2−11へ進む。
【0056】
ステップST2−11では、更新したiがi>NSであるかを判断する。YESの場合には、処理を終了し、NOの場合には、更新した位置番号iである分割片を対象とするようにステップST2−5へ戻り、上述の処理を繰り返す。
【0057】
なお、計画部5は、コンピュータのCPU(中央処理装置)、および、前記記憶装置に記憶・保持されたプログラムにより実現されてよい。このプログラムは、図7の各ステップの処理を表したものである。計画部5において、前記CPUは、前記プログラムを実行することで、上述のように、図7の各ステップの処理を行う。前記記憶装置には、セグメントの種類毎に、該種類のセグメントを構成する各分割片のキー分割片に対する相対的な組付位置(上述のθs)などが記憶されており、前記CPUは、当該相対的な組付位置(θs)を利用して前記プログラムを実行してよい。なお、複数の順序決定規則の各々は、互いに区別して実行可能に前記プログラムに反映されていてよい。
【0058】
1つの種類のセグメントについて、上述の各分割片の相対位置が2パターン設定されていてもよい。
例えば、図10は、同じ種類のセグメントに対する各分割片の前記相対位置を示すが、(A)は、第1パターンの相対位置を示し、(B)は、第2パターンの相対位置を示す。 このように、同じ種類のセグメントについて、2パターンの相対位置が定められている場合には、上述の組立計画方法を以下のように行ってよいが、以下で述べない点については、上述の組立計画方法の場合と同じである。
ステップST1において、2パターンの前記相対位置が設定されているセグメントの種類を入力する場合に、オペレータが入力部3を操作することで、2パターンのいずれかを選択してよい。なお、この選択を行わない場合には、2パターンのうちの既定のパターン(例えば、第1パターン)の相対位置をステップST2で使用するように位置計画部5aが構成されてよい。
ステップST2において、位置計画部5aは、ステップST1で相対位置のパターンが選択された場合には、選択されたパターンに従って、各分割片の組付位置を決定して出力し、ステップST1で相対位置のパターンが選択されなかった場合には、前記既定のパターンの相対位置に従って、各分割片の組付順序を決定して出力する。
【0059】
好ましくは、上述のステップST2において各分割片の組付位置と組付順序を決定した後(この例では、図7の処理が完了した後)、当該各分割片の組付位置および組付順序の一方または両方を変更することができる。図11は、そのための処理を示すフローチャートである。
ステップST4において、入力部3により、変更対象とするセグメントを選択・指定するとともに、当該セグメントのキー分割片の組付位置を位置計画部5aへ新たに入力する。なお、当該セグメントの種類は、ステップST1において既に位置計画部5aへ入力されているので、ステップST4において、当該種類の入力は行わなくてよい。
ステップST5において、入力部3により、前記複数の順序決定規則のうちのいずれかを新たに選択する。ステップST4の後、再度、上述のステップST2を行う。
再度のステップST2では、新たに入力されたキー分割片および順序決定規則に従って、セグメントを構成する各分割片の組付位置および組付順序を計画部5により新たに決定する。再度のステップST2の処理は、上述したステップST2の処理と同じである。再度のステップST2の後、再度、ステップST3を行う。
再度のステップ3では、再度のステップST2で出力した各分割片の組付位置および組付順序とリング番号とのデータが含まれたパラメータファイルを制御データとして生成する。再度のステップST3の処理は、上述したステップST3の処理と同じである。
【0060】
図11において、ステップST4を省略してもよい。この場合、ステップST5では、変更対象とするセグメントを選択・指定し、再度のステップST2では、ステップST1において既に入力されているセグメントの種類およびキー分割片の組付位置に基づいて、再度のステップST2を行う。
図11において、ステップST5を省略してもよい。この場合、再度のステップST2では、ステップST1において既に選択されている順序決定規則に基づいて、再度のステップST2を行う。
【0061】
なお、セグメントの種類は、1種類であってもよい。この場合、ステップST1において、セグメントの種類の入力が省略され、ステップST2は、当該1種類のセグメントについて予め設定されている前記相対位置などの情報に基づいて行われ、他の点は、上述と同じである。
【0062】
上述した本実施形態の組立計画方法と装置によると、複数の順序決定規則の間で、セグメントを構成する各分割片の組付順序が異なるので、入力部3により選択する順序決定規則を、オペレータの意思で、(例えば、所定数のセグメント毎に)変えることができる。これにより、上述した分割片の位置ずれを抑制できる。
また、オペレータは、入力部3の操作により、自身の意思で、入力する順序決定規則を選択できる。従って、選択する順序決定規則を(例えば、所定数のセグメント毎に)変化させることができ、その結果、組付順序プログラムを修正することなく、簡単に、分割片の組付順序を変化させることができる。
【0063】
また、各分割片の組付位置と組付順序を決定した後であっても、図11の処理により、当該各分割片の組付順序を変更することができる。これにより、分割片の位置ずれが、許容範囲を超えそうになったら、分割片の位置ずれを減らすように、組付順序を変更することができる。例えば、オペレータが、実際に組み付けられたキー分割片の位置がずれているかを確認し、このずれが大きいと判断したら、組付順序を変更できる。このようにして、簡単な入力操作により、分割片の位置ずれが許容範囲内に抑えられる可能性を広げることができる。
特に、第1の順序決定規則から第2の順序決定規則へ、または、第2の順序決定規則から第1の順序決定規則へ変更することで、分割片の位置ずれを減らすことができる。すなわち、第1および第2の順序決定規則による組付順序は、セグメントの中心軸Cとキー分割片S8を含む平面(例えば、鉛直平面)に関し互いに対称となっている場合には、キー分割片S8の組付位置を同じにした状態で、第1および第2の順序決定規則を互いに逆にすることで、セグメントが周方向に位置ずれする方向をより確実に逆にすることができる。従って、キー分割片S8の組付位置を同じにした状態で、第1の順序決定規則により複数のセグメントを組み付けていったときに、分割片が第1の周方向にずれてきたら、第2の順序決定規則に変更することで、このずれを、より確実に減らすことができる。
【0064】
また、後述のシールド掘削機本体11aが、組み付けられたセグメントに対し周方向に位置ずれしてきた場合には、キー分割片の位置を調整することで、この位置ずれを矯正することができる。
【0065】
[セグメント組立装置]
図12は、本発明の実施形態によるセグメント組立装置20を示すブロック図である。セグメント組立装置20は、上述のセグメントの組立計画装置10と、エレクタ装置7と、制御部9とを備える。
【0066】
図13は、シールド掘削機11の全体構成を示す断面図である。シールド掘削機11は、シールド掘削機本体11a、カッタヘッド11b、シールドジャッキ11cを有する。シールド掘削機本体11aは、筒状に形成されている。カッタヘッド11bは、本体11aの前方(図13の左側)において、本体11aに固定されたフレーム11dに回転可能に取り付けられトンネル切削する。切削した土砂はスクリューコンベア(図示せず)等で後方側に排出される。シールドジャッキ11cは、フレーム11dに取り付けられている。シールドジャッキ11cは、その伸長ストロークにより、組み付けられた複数の分割片Saからなるセグメントを後方側に押し、その反力で本体11aを前方側に移動させる。なお、エレクタ装置7による分割片の組付時には、シールドジャッキ11cは、エレクタ装置7と分割片に干渉しないように収縮する。
【0067】
シールド掘削機11は、搬送装置6を有する。搬送装置6は、台車6a、ホイスト式クレーン6b、および分割片仮置き場6cを備える。台車6aは、シールド掘削機11に掘削されたトンネル内を、その後方側(図13の右側)からその前方側(図13の左側)へ分割片Sbを載せてトンネル軸方向(図13の左右方向)に走行し、これにより分割片Sbをトンネルの前方側へ搬送する。ホイスト式クレーン6bは、トンネル前方側へ走行してきた台車6a上の分割片Sbを持ち上げて、トンネル前方側へ水平移動し、分割片仮置き場6cへ当該分割片Sbを吊り降ろす。分割片仮置き場6cは、ローラコンベヤで構成され、ホイスト式クレーン6bによりローラコンベヤ6cに吊り降ろされた分割片Sbをトンネル前方側へ移動させる。
上述の組付順序の順に分割片Sbが、ホイスト式クレーン6bによりローラコンベヤ6cに吊り降ろされて、当該組付順序が先の分割片Sbほどローラコンベヤ6cにおけるトンネル前方側に位置させられる。エレクタ装置7は、ローラコンベヤ6cにおける最もトンネル前方側にある分割片Sbから順に、当該分割片Sbを把持しその組付位置へ組み付ける。このようにして、上述の組付順序の順に分割片Sbが組み付けられる。
【0068】
エレクタ装置7は、複数の分割片Sbを環状のセグメントSに組み立てる。エレクタ装置7は、旋回リング7a、軸方向移動部7b、および把持装置7cを有する。旋回リング7aは、図示しない駆動装置によりトンネルの中心軸周りに旋回駆動されるようにフレーム11dに支持される。軸方向移動部7bは、旋回リング7aに固定され水平方向に延びるガイド部材8に沿って、図示しない駆動装置により往復移動させられるようにガイド部材8に支持される。把持装置7cは、軸方向移動部7bに取り付けられ、図示しない駆動装置により、トンネルの中心に対する半径方向に往復移動可能である。この構成で、エレクタ装置7は次のように動作する。把持装置7cが、最もトンネル前方側にある分割片仮置き場6c上の分割片Sbを把持し、軸方向移動部7bの移動によりシールド掘削機11のカッタヘッド11bがあるトンネルの前方側(図13の左側)へ移動し、次いで、旋回リング7aが中心軸C周りに旋回して把持装置7cを旋回方向に位置決めし、その後、把持装置7cが、前記半径方向に関して組付位置まで外側に移動して、さらに、直前に組み立てたセグメントSへ向けて軸方向(例えば、図1の軸方向)に移動させて把持している分割片Sbのボルト31(図1参照)をセグメントSのボルト孔33(図1参照)へ挿入することができる。これにより、当該分割片を、上述の組付位置に完全に組み付けることができる。図13において、符号Saは、既に組み立てられた分割片を示す。なお、上述の組付順序において順番が1番目および最後以外の分割片Sbについては、上述のように、旋回リング7aが旋回して把持装置7cを旋回方向に位置決めすることで、把持装置7cが把持している分割片を、周方向に関して、該分割片の組付位置から所定距離だけずらした位置に該分割片を位置決めし、さらに、把持装置7cが、前記半径方向の外側に移動した後、上述のように決定された前記旋回の方向に、旋回リング7aが旋回することで、把持装置7cが把持している分割片Sbを、既設の分割片Saに当接させ、これにより、該分割片Sbを周方向に位置決めし、その後、直前に組み立てたセグメントSへ向けて軸方向(例えば、図1の軸方向)に移動させて把持している分割片Sbのボルト31(図1参照)をセグメントSのボルト孔33(図1参照)へ挿入する。これにより、当該分割片を、周方向に関する上述の組付位置に完全に組み付けることができる。
【0069】
制御部9は、トンネル内に組み立てる各セグメントについて、組立計画装置10により決定された該セグメントの組付位置および組付順序に基づいて、上述のように動作するエレクタ装置7を制御する。各組付位置と組付順序とは計画部5により互いに対応付けられており、制御部9は、現時点の組付順序(順番)に対応する組付位置に分割片を組み付けるようにエレクタ装置7を制御し、この組み付けが完了したら、組付順序を1つ繰り下げ、繰り下げた組付順序(順番)に対応する組付位置に次の分割片を組み付けるようにエレクタ装置7を制御する。これにより、当該組付位置および組付順序に従って、エレクタ装置7は、上述のように動作して、各分割片Sbをその組付位置に組み付ける。すなわち、エレクタ装置7は、制御部9の制御により、分割片仮置き場6cに置かれた次の分割片Sbを把持し、該分割片Sbを,(直前に組み立てられたセグメントにトンネルの軸方向に隣接するように)各分割片Sbをその組付位置に組み付ける。このように、1つのセグメントを組み立てたら、制御部9は、上述のように定められたセグメント組立順序に従って、次のセグメントについて、組立計画装置10により決定された該セグメントの組付位置および組付順序に基づいて、エレクタ装置7の動作を上述と同様に制御する。なお、エレクタ装置7または作業員が、トンネルの前後方向に隣接するセグメント同士を、ボルトなどの結合手段で結合してよい。
【0070】
好ましくは、制御部9が組立計画装置10に接続されていない状態で、組立計画装置10は、入力部3による入力と選択、および、該入力と選択に基づいた計画部5による前記組付位置および組付順序の決定を行えるようになっている。
また、組立計画装置10は、制御部9と接続されていない状態で、セグメントについて、計画部5が(例えば既に決定した)組付位置および組付順序の一方または両方を、入力部3により、当該セグメントの種類、キー分割片の組付位置、順序決定規則の少なくともいずらかを新たに入力することで変更可能である。すなわち、制御部9と接続されていない状態で、図11を参照して上述した処理を行うことができる。
組立計画装置10は、制御部9から分離しており、オペレータが持ち運び可能な装置(例えばノート型パソコン)であるのがよい。この場合、トンネル内に組み立てる各セグメントについて、組立計画装置10(計画部5)が決定または変更した該セグメントの組付位置および組付順序と、これらセグメントのセグメント組立順序とは、制御データとして、記憶媒体(例えばUSBメモリ)により組立計画装置10から制御部9に受け渡すようにするのがよい。例えば、前記記憶媒体を組立計画装置10に接続して、上述の制御データを記憶媒体に記憶させ、次いで、オペレータが、この記憶媒体を組立計画装置10から分離し、この記憶媒体を運んで制御部9に接続し、これにより、前記制御データを制御部9へ受け渡して制御部9に記憶させてよい。
【0071】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
3 入力部、5 計画部、5a 位置計画部、5b 順序計画部、
6 搬送装置、7 エレクタ装置、9 制御部、
10 セグメントの組立計画装置、11 シールド掘削機、
20 セグメント組立装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機により掘削されたトンネルの内周壁に沿って環状に組み立てられるセグメントの組立計画方法であって、
セグメントは、複数の分割片を環状に組み立てることで形成され、これら分割片には、組み立てにおいて最後に組み付けられるキー分割片が含まれており、
セグメントを構成する各分割片のキー分割片に対する相対的な組付位置が予め設定されているとともに、該各分割片の組付順序を定める複数の順序決定規則が予め設定されており、
(A)入力部により、キー分割片の組付位置を位置計画部へ入力し、
(B)入力部により、前記複数の順序決定規則のうちのいずれかを選択し、
(C)選択された順序決定規則に従って、セグメントを構成する各分割片の組付順序を順序計画部により決定し、
(D)前記相対的な組付位置と、入力されたキー分割片の組付位置とに従って、セグメントを構成する各分割片の組付位置を位置計画部により決定する、ことを特徴とするセグメントの組立計画方法。
【請求項2】
前記(D)において各分割片の組付順序を決定した後、当該各分割片の組付順序を変更するために、
入力部により、前記複数の順序決定規則のうちのいずれかを新たに選択し、
新たに選択された順序決定規則に従って、セグメントを構成する各分割片の組付順序を順序計画部により新たに決定する、ことを特徴とする請求項1に記載のセグメントの組立計画方法。
【請求項3】
前記複数の順序決定規則には、第1および第2の順序決定規則が含まれており、
第1の順序決定規則では、1番目となる分割片は、組付位置が前記環状における底部となる分割片であり、2番目となる分割片は、1番目の分割片に、互いに逆を向く第1および第2の周方向のうち第1の周方向に隣接する分割片であり、3番目となる分割片は、1番目の分割片に、第2の周方向に隣接する分割片であり、セグメントを構成する分割片の数をnとした場合に、mが4以上で(n−1)以下の偶数であるとし、nが6以上の整数であるとして、m番目となる分割片は、(m−2)番目の分割片に、第1の周方向に隣接する分割片であり、(m+1)番目となる分割片は、(m−1)番目の分割片に、第2の周方向に隣接する分割片であり、n番目となる分割片は、キー分割片であり、
第2の順序決定規則では、1番目となる分割片は、組付位置が前記環状における底部となる分割片であり、2番目となる分割片は、1番目の分割片に、第2の周方向に隣接する分割片であり、3番目となる分割片は、1番目の分割片に、第1の周方向に隣接する分割片であり、セグメントを構成する分割片の数をnとした場合に、mが4以上で(n−1)以下の偶数であるとし、nが6以上の整数であるとして、m番目となる分割片は、(m−2)番目の分割片に、第2の周方向に隣接する分割片であり、(m+1)番目となる分割片は、(m−1)番目の分割片に、第1の周方向に隣接する分割片であり、n番目となる分割片は、キー分割片である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のセグメントの組立計画方法。
【請求項4】
シールド掘進機により掘削されたトンネルの内周壁に沿って環状に組み立てられるセグメントの組立計画装置であって、
セグメントは、複数の分割片を環状に組み立てることで形成され、これら分割片には、組み立てにおいて最後に組み付けられるキー分割片が含まれており、
セグメントを構成する各分割片のキー分割片に対する相対的な組付位置が予め設定されているとともに、該各分割片の組付順序を定める複数の順序決定規則が予め設定されており、
キー分割片の組付位置を入力し、前記複数の順序決定規則のうちのいずれかを選択するための入力部と、
選択された順序決定規則に従って、セグメントを構成する各分割片の組付順序を決定する順序計画部と
前記相対的な組付位置と、入力されたキー分割片の組付位置とに従って、セグメントを構成する各分割片の組付位置を決定する位置計画部と、を備える、ことを特徴とするセグメントの組立計画装置。
【請求項5】
請求項4記載のセグメントの組立計画装置と、
複数の分割片を環状のセグメントに組み立てるエレクタ装置と、
前記組立計画装置により決定された組付位置および組付順序に基づいて、前記エレクタ装置の動作を制御する制御部と、を備える、ことを特徴とするセグメント組立装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−122380(P2011−122380A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281904(P2009−281904)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】