説明

セグメントの継手構造

【課題】セグメントどうしの接合強度を向上させると共に、セグメントのハンドリング中に継手が損傷するおそれをなくし、構造を簡単、安価にする。
【解決手段】セグメントの継手構造Aは、円筒支持体4とその内側に環状空間4eをあけて同軸に設けた雄型連結部材5とを有する雄型継手2が一方のセグメント1の接合端部1aに埋設され、また、複数のスリット7fを有する嵌着部7bに、複数分割のテーパ筒状の楔部材8を弾性リング9で装着した円筒状の雌型連結部材7が、他方のセグメント1の接合端部1bに接合面1b1から突き出して固定され、セグメント1,1どうしの接合時に、環状空間4eに雌型連結部材7と楔部材8が嵌入すると、雌型連結部材7が雄型連結部材5に嵌合して拡径し、これに伴い楔部材8が拡径して円筒支持体4内に押圧され、楔部材8の楔効果により、雄型継手2と雌型継手3が強固に連結される構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの覆工用として使用されるコンクリートセグメント等のセグメントの隣接するものどうしを接合するための継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のセグメントの継手構造として、隣接して接合される一対のセグメントのうちの一方のセグメントの接合面に、該接合面から外側へ突き出して先窄まりのテーパ筒部を有し、該テーパ筒部に周方向に間隔をあけて軸方向に沿うスリットを設けた円筒状の雄型継手を埋設し、他方のセグメントの接合面に設けた凹所内の底部に、前記雄型継手のテーパ筒部が嵌合し得るテーパ穴部を有する円筒状の雌型継手を、その先端部が前記接合面より凹所内に没入された状態で埋設され、セグメントどうしの接合時に、雄型継手のテーパ筒部を雌型継手のテーパ穴部に押し込むと、前記テーパ筒部が縮径変形してテーパ穴部に嵌合することにより、雄型継手と雌型継手とが連結するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、一方のセグメントの接合面に形成した凹所内に、先端部を接合面から没入させた軸状の雄型継手を設け、他方のセグメントの接合面に形成した凹所内に、円筒の周囲に複数の係合爪を配してなる雌型継手を、その係合爪を接合面から外側へ突き出して設け、セグメントどうしの接合時に、前記雌型継手を一方のセグメントの凹所に挿入して各セグメントの接合面どうしが当接したとき、前記雄型継手の先端の係合頭部が前記雌型継手の係合爪の内側に挿入されて該係合爪に係合することにより、雄型継手と雌型継手とが連結するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−221994号公報
【特許文献2】特開2001−65299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のセグメントの継手構造は、いずれも、雄型継手と雌型継手の一方が接合面から、該接合面に対して垂直にされて外側へ突き出されているので、セグメントを製造工場からトンネルの構築現場まで輸送して組み立て施工する際に、前記接合面から突き出しているして雄型継手または雌型継手が作業の邪魔になったり、運搬手段や他のセグメント、その他の機材に衝突して損傷するおそれがある。また、いずれも、雄型継手と雌型継手の連結状態において、それらの連結部の外側にセグメントの凹所内の周壁との間に環状空間が存在するために、接合されたセグメントに対してそれらの接合面方向に大きな負荷が作用した場合には、同方向に雌型継手が変形するおそれがあり、セグメントどうしの接合面方向における接合強度が十分に得られない問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、セグメントどうしの接合強度を向上させることができと共に、セグメントの運搬時に継手が損傷するおそれがなく、構造が簡単、安価であるセグメントの継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明によるセグメントの接合構造は、隣接する一対のセグメントの接合面どうしを突き合わせ、一方のセグメンの接合端部に設けた雄型継手と他方のセグメントの接合端部に設けた雌型継手とを嵌合させることにより前記セグメントどうしを接合するセグメントの継手構造であって、
前記雄型継手が、円筒支持体と、該円筒支持体の内側に環状空間をあけて同軸線上に配した軸状の雄型連結部材とを備え、それらが各外端を接合面から外側に突き出さないようにして一方のセグメントの接合端部に固定されており、また、前記雌型継手が、前記雄型連結部材の外径より所定寸法だけ小径であって該雄型連結部材が嵌入可能な挿入穴を有し、先端側に軸方向に沿うスリットが周方向に間隔をあけて複数個設けられた円筒状の雌型連結部材と、外周部が先窄まりのテーパ筒状に形成されて前記雌型連結部材の先端側の外周部に装着され、前記雌型連結部材の挿入穴に雄型連結部材が嵌入される前は最大外径が前記雄型継手の円筒支持体の内径より所定寸法だけ小径であって、前記雌型連結部材がその挿入穴に雄型連結部材を嵌入されて直径方向に拡径された時に、最大外径が前記雄型継手の円筒支持体の内径より大きく変位する楔部材と、該楔部材の外周に巻き掛けられて楔部材の直径方向への拡縮を可能とする弾性リングとを備え、前記雌型連結部材が他方のセグメントの接合端部に接合面から外側へ突き出して固定されていることを特徴とする。
【0006】
本発明においては、一対のセグメントをそれらの接合面どうしを突き合わせて接合する際には、一方のセグメントに対して他方のセグメントを移動させると、他方のセグメントの雌型連結部材の挿入穴が一方のセグメントの雄型連結部材に嵌合されると共に、一方のセグメントの円筒支持体と雄型連結部材との間の環状空間内に、前記雌型連結部材と楔部材とが押し込まれて嵌入していく。その際、前記雌型連結部材の先端側がスリットの効果により雄型連結部材によって拡径変形され、これに伴って前記楔部材が拡径変位するので、該楔部材の外周面が前記円筒支持体の内周面に強く押圧される。そのため、前記円筒支持体の内周部と雌型連結部材との間で前記楔部材が大きな楔効果を発揮することによって、前記雄型継手と雌型継手とが雄型連結部材と雌型連結部材との嵌合を介してしっかりと連結されることとなる。
【0007】
前記セグメントの接合構造において、前記雌型継手が、他方のセグメントの接合端部に設けた凹所の底部に固定され、先端を接合面より内側に位置させて凹所内に突き出されたアンカーボルトを備え、前記雌型連結部材が、その基端部側をアンカーボルトの先端部に螺合させることにより、アンカーボルトに着脱可能に連結された構成とすることが好ましい。
このようにすると、前記雌型継手の雌型連結部材と楔部材の組付けセットを、予めアンカーボルトから外しておき、現場でセグメントどうしの接合を行う直前にアンカーボルトに螺着すればよいので、セグメントの運搬時に、前記組付けセットがセグメントの接合面から突き出していて邪魔になることがないと共に、前記組付けセットが他の部材に衝突することにより破損したり、前記組付けセットの衝突に伴ってセグメント1に割れが生じたりするのを確実に防止することができる。
【0008】
また、前記セグメントの接合構造において、前記雄型連結部材を、その外端が前記円筒支持体の外端より所定寸法だけ内側に寄った位置にあり、その外端側の外周部に外端の直径が前記雌型連結部材の挿入穴の直径より小径となる先細の面取り部を設けた構成とすることが好ましい。
このようにすると、一方のセグメントに対して他方のセグメントを移動させて接合する時に、一方の雄型継手の円筒支持体の内周部によって、他方のセグメントの雌型連結部材の先端部に装着された楔部材の外周部が案内されて調芯された後に、雌型連結部材の挿入穴が前記雄型連結部材に嵌合されるので、接合開始時に雄型継手と雌型継手の軸心どうしが多少偏心していても、その偏心を修正しながら雄型継手に対する雌型継手の連結を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるセグメントの接合構造によれば、一方のセグメントの雄型継手に他方のセグメントの雌型継手が押し込まれて連結された状態では、前記雄型継手の雄型連結部材の直径が前記雌型継手の雌型連結部材の挿入穴の内径より大きく設定されているために、雄型連結部材が雌型連結部材の挿入穴に嵌入した際、雌型連結部材の先端部が拡径変形して該先端部に装着された楔部材を拡径変位させ、これにより、該楔部材の外周面が雄型継手の円筒支持体の内周面に強く押圧されるので、前記円筒支持体の内周部と雌型連結部材との間で前記楔部材が大きな楔効果を発揮し、そのため、前記雄型継手と雌型継手とを雄型連結部材と雌型連結部材との緊密な嵌合を介してしっかりと連結させることができる。そして、前記雄型連結部材と雌型連結部材との嵌合状態を前記円筒支持体によって強固に保持させることができるので、雄型継手と雌型継手の軸方向およびこれに直交する方向における連結を強固に行わせることができ、これにより、セグメントどうしの結合強度を向上させることができる。
また、前記雄型継手と雌型継手は円筒状部材と棒状部材とを組合せてなるものであるので、継手構造が簡単であり、容易にかつ安価に製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係るセグメントの継手構造ついて添付図面を参照して説明する。
図1、図3、図4は、本発明の一実施の形態に係るセグメントの継手構造Aを示す。このセグメントの継ぎ手構造Aは、シールドトンネルの覆工体用に使用される円弧版状のコンクリートセグメント(以下、単に「セグメント」という)1の一端側(トンネルの軸方向における羽口側、図4で右端側)の接合端部1aに固定された雄型継手2と、前記セグメント1の他端側(トンネルの軸方向における坑口側、図4で左端側)の接合端部1bに固定されて前記雄型継手2に連結される雌型継手3とを備えている。
前記雄型継手2と雌型継手3は、それぞれ、前記セグメント1の円弧方向(トンネルの周方向)に沿って間隔をあけて複数個(図示の例では各2個)設けられている。
【0011】
前記雄型継手2は、円筒部材4aの内端(図1で左端)に底板4bを固着してなる有底の円筒支持体4と、軸線を該円筒支持体4の軸線に一致させて前記底板4bの内側に内端を固着した平行軸状の雄型連結部材5と、前記円筒支持体4の外周にその周方向に間隔をあけて配置され、その軸方向に向けて固着した複数本のアンカー棒Fとを備えている。前記円筒支持体4は、その軸方向が前記接合端部1aの接合面1a1に対して垂直に向けられ、かつその接合面1a1への開口部4c側の外端(図1で右端)4dが前記接合面1a1より所定寸法だけ没入された(接合面1a1より外側へ突き出さないようにした)状態で、セグメント1の接合端部1aに埋設されている。前記雄型連結部材5の底部4bと反対側の外端(図1で右端)5aは、前記円筒支持体4の外端4dよりも所定寸法だけ底部4b側(内側)に寄った位置に設定されている。前記円筒支持体4と雄型連結部材5とで囲まれた環状空間4eは、セグメント1,1どうしが接合されるまでは、前記接合面1aの外側に開放されている。
【0012】
前記雄型連結部材5の外端側(前記開口部4c側)の外周部には、先細となるテーパ状の面取り部5bが設けられている。該取り部5bは外側に凸の円弧状部として形成してもよい。また、前記セグメント1の接合端部1aにおける前記円筒支持体4の埋設部には、該円筒支持体4の一端外周から外広がりのテーパ状の凹所1a2が接合面1a1に開口して設けられている。なお、前記凹所1a2の内方は、図1に鎖線hで示すように、円筒支持体4の外端内周に一致されるようにしてもよい。また、前記接合面1a1における前記円筒支持体4よりセグメント1の外周側(図1で上側)に寄った位置には、従来周知のように、シール材を装着するためのシール用溝1a3がセグメント1の円弧に沿って形成されている。
【0013】
前記雌型継手3は、前記セグメント1の他端側の接合端部1bに前記接合面1b1に開口させて設けた凹所1b2の底部に埋設、固定されたアンカーボルト6と、該アンカーボルト6の前記凹所1b2内に突き出された先端側の雄ねじ部6aに着脱可能に螺合された雌型連結部材7と、該雌型連結部材7の先端側の外周部に装着されたテーパ筒状の楔部材8とを備えている。
前記アンカーボルト6は、頭部6b側を凹所1b2の底部に埋設され、前記雄ねじ部6aの先端面を接合面1b1より内側に位置され(やや凹所1b2内に没入され)、軸方向を前記接合面1b1に垂直に向けて設けられている。
【0014】
前記雌型連結部材7は、軸方向の略中央より基端側(図1で右端側)が大径の固定部7aとされ、先端側(図1で左端側)が前記固定部7aより小径の嵌着部7bとされ、中心に軸方向に沿って貫通する挿入穴7cが設けられた円筒状部材として形成されている。そして、前記固定部7aの直径は前記雄型継手2の円筒支持体4の内径より僅かに小径とされ、また、前記挿入穴7cの直径は、前記雄型継手2の雄型連結部材5の直径にもよるが、例えば、直径差で2mmとなるように雄型連結部材5の直径より僅かに小径とされている。また、前記雄型連結部材5の面取り部5dの外端の直径は、前記雌型連結部材7の挿入穴7cの内径より所定寸法だけ小さく設定されている。
前記挿入穴7cの基端側には雌ねじ7dが設けられており、雌型連結部材7は、該雌ねじ7dを前記雌型連結部材7の基端部が凹所1b2の底面に当接するまで前記アンカーボルト7の雄ねじ部6aに螺合させて、先端側をセグメント1の接合面1b1より外側に突き出し、軸方向を接合面1b1に対して垂直にして前記アンカーボルト6に着脱自在に連結し得るようになっている。
【0015】
前記雌型連結部材7の接合面1b1からの外側への突き出し長さは、セグメント1,1の接合面1a1,1b1どうしを突き合わせたときに、雌型連結部材7の先端が雄型継手2の円筒支持体4の底板4bから十分に離れた位置に停止されるように設定されている。
さらに、前記雌型連結部材7の嵌着部7bには、その先端部から嵌着部7bと固定部7aとの境界である段部7eに至るまで軸方向に延長して形成した所定幅のスリット7fが、周方向に所定間隔をあけて複数個(図示の例では4本)設けられている。
前記楔部材8は、剛性の高い材料で形成され、外周部8aが先端側(図1で左端側)を先窄まりのテーパ筒を、その周方向に複数(図示の例では4個)に分割してなり、その分割面8bを互いに突き合わせ、前記雌型連結部材7の嵌着部7bの外周部に内周部8cを接触させ、基端部(図1で右端部)を前記雌型連結部材7の段部7eに当接させて、該雌型連結部材7に装着されている。また、前記楔部材8の大径側の直径(最大直径)は、常態(前記雌型連結部材7の挿入穴7cに雄型連結部材6が嵌入される前)では、前記円筒支持体4の内径より直径差で、例えば1mmだけ小さく、前記雌型連結部材7の挿入穴7cに雄型連結部材6が十分に嵌入されて直径方向に拡径された時には、前記円筒支持体4の内径より直径差で、例えば1mmだけ大きくなるように設定されている。
【0016】
そして、前記楔部材8には、その基端部側の外周に横断面円弧状の環状溝8dが周方向に沿って設けられており、該環状溝8dには直径方向に拡縮可能な一本の環状の弾性リング9が装着され、該弾性リング9が前記楔部材8を前記嵌着部7bの外周部にしっかりと押し付けて保持するようになっている。前記楔部材8は、前記嵌着部7bの長さより短く形成されて、その先端部が嵌着部7bの先端部より基端部側に寄った位置にある。
前記スリット7fの個数、前記楔部材8の分割数は、それぞれ4個に限らず、3個または5個以上の複数であってもよく、また、前記環状溝8d、弾性リング9の本数は一本に限らず、楔部材8の軸方向に間隔をあけて複数本設けてもよい。また、前記弾性リング9はゴム製のOリングや、直径の小さなコイルバネをリング状に結んだもので構成することができる。
なお、前記環状溝8は前記弾性リング9の外周が楔部材8の外周側にあまり突き出さないように、なるべく深くするのがよく、楔部材8が厚肉である場合には、弾性リング9の外周が環状溝8d内に没入する深さにするとよい。また、前記セグメント1の他端側の接合面1bには、前記凹所1b2より外周側において前記接合面1aのシール溝1a3に対向する位置に、セグメント1の外周面の円弧に沿うシール溝1a3と同形状のシール溝1b3が設けられている。
【0017】
次に、前記構成のセグメントの継手構造Aによってトンネルの周方向に隣接するセグメント1,1どうしを接合する方法について説明する。
先ず、図1で左側に組み立てられれた坑口側のセグメントリングのセグメント1に対し、右側に位置させた羽口側のセグメント1を操作して接近させて、坑口側のセグメント1における雄型継手2の雄型連結部材5の軸線に、羽口側のセグメント1のアンカーボルト6の軸線を一致させた状態とする。そして、予めセグメント1の運搬時に前記アンカーボルト6から取り外しておいた前記楔部材8が装着済みの雌型連結部材7を、その雌ねじ7dを雌型連結部材7の基端部が凹所1b2の底部に当接するまで雄ねじ部6aに螺合させることによりアンカーボルト6に連結する。
なお、前記セグメント1,1のシール溝1a3,1b3の一方には、従来と同様に予めシール材Sを接着しておくものとする。
【0018】
次に、前記羽口側のセグメント1を坑口側のセグメント1側に向けて矢印ロ方向に移動させて、坑口側のセグメント1の接合面1a1に,羽口側のセグメント1の接合面1b1を当接させる。その過程では、前記雌型連結部材7の先端部とこれに続いて楔部材8の先端部が前記雄型継手2の開口部4cに入った後、前記雌型連結部材7の挿入穴7cに前記雄型連結部材5の先端部が面取り部5bを介して嵌入され、この嵌入により、雌型連結部材7の嵌着部7bが雄型連結部材5によって拡径変形されながら、雄型連結部材5との嵌合量を増して行く。これと同時に、前記嵌着部7bに装着された楔部材8が、前記雄型継手2の円筒支持体4内に嵌入されて、前記嵌着部7bの拡径に伴って徐々に拡径変位しながら円筒支持体4内に押し込まれて行く。そして、最後には、図3に示すように、前記雄型継手2の環状空間4e内に前記雌型継手3の雌型連詰部材7と楔部材8とが強制挿入され、前記嵌着部7bの挿入穴7cに雄型連結部材5が、また、円筒支持体4の内部に楔部材8を介在させて雌型連結部材7がそれぞれ圧入嵌合された状態となり、これにより、雄型継手2と雌型継手3が連結され、セグメント1,1どうしが、それらの接合面1a1,1b1を突き合わせて接合された状態となる。
【0019】
このように、前記雄型継手2と雌型継手3が連結された状態では、前記雄型連結部材5の直径が雌型連結部材7の挿入穴7cの内径より大きく設定されているために、雄型連結部材5が雌型連結部材7の挿入穴7cに嵌入した際、嵌着部7が拡径変形され、該嵌着部7がその外周側に装着された楔部材8を、その最大外径が円筒支持体4の内より大きく拡径変位させて、楔部材8の外周面を雄型継手2の円筒支持体4の内周部に加圧して接触(押圧)させるので、前記雌型連結部材7の嵌着部7と円筒支持体4の内周部との間、特に楔部材8の大径部側にテーパによる大きな楔効果が生じて、前記雄型継手2の雄型連結部材5と雌型継手3の雌型連結部材7とが締まりはめの状態となって緊密に嵌合されると共に、この嵌合状態が前記円筒支持体4によって保持される。これにより、雄型継手2と雌型継手3の軸方向およびこれに直交する方向における連結が強固に行われる。
【0020】
前記において、前記雄型継手2の雄型連結部材5の先端部に面取り部5bが設けられ、前記雌型継手3の楔部材8の外周部が先細のテーパ面に形成されているので、前記雄型継手2に対して雌型継手3が多少偏心された状態で嵌入されても、前記円筒支持体4の内周面によって楔部材8が調芯されることによって、前記雌型連結部材7が雄型連結部材5に円滑に嵌入され、前記雄型継手2と雌型継手3が同軸となってしっかりと連結される。また、同様な理由により、前記円筒支持体4の内径や雄型連結部材5の外径と雌型連結部材7の挿入穴7cや楔部材8の外径との間の嵌合公差は厳格さを要求されないので、前記雄型継手2と雌型継手3の構成部材の製作、セグメント1への組付けが容易である。
【0021】
また、雄型継手2の円筒支持体4の内周部と雄型連結部材5の間の環状空間4eに、雌型継手3の雌型連結部材7と楔部材8を押し込むことにより、ワンタッチで雄型継手2と雌型継手3とを簡単に連結することができる。雄型継手2と雌型継手3とをボルトとナットで連結するものではないので、セグメント1の接合端部1a,1bの内面側にボルト、ナットを操作するためのボルトボックスを設ける必要がなく、セグメント1の内面が平滑に形成できる。さらに、前記雌型継手3の雌型連結部材7と楔部材8の組付けセットは、現場でセグメント1,1どうしの接合を行う直前にアンカーボルト6に螺着して取り付ければよいので、セグメント1の運搬時に、前記組付けセットがセグメント1の接合面1a1,1b1から突き出していて邪魔になることがないと共に、前記組付けセットが他の部材に衝突することにより破損したり、組付けセットの衝突によりセグメント1に割れが生じたりするおそれもない。
【0022】
以上説明したように、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造Aは、前記雄型継手2が、円筒支持体4と、該円筒支持体4の内側に環状空4e間をあけて同軸線上に配した軸状の雄型連結部材5とを備え、それらが各外端を接合面1aから外側に突き出さないようにして、一方のセグメント1の接合端部1aに固定されており、また、前記雌型継手3が、前記雄型連結部材5の外径より所定寸法だけ小径であって該雄型連結部材5が嵌入可能な挿入穴7cを有し、先端側の嵌着部7bに軸方向に沿うスリット7dが周方向に間隔をあけて複数個設けられた円筒状の雌型連結部材7と、外周部8aが先窄まりのテーパ筒をその周方向に複数に分割してなり、前記雌型連結部材7の嵌着部7bの外周部に装着され、常時は最大外径が前記雄型継手2の円筒支持体4の内径より所定寸法だけ小径であって、前記雌型連結部材7がその挿入穴7cに前記雄型連結部材5を嵌入されて直径方向に拡径された時に、最大外径が前記雄型継手2の円筒支持体4の内径より大きく変位する楔部材8と、該楔部材8の外周に巻き掛けられて楔部材8の直径方向への拡縮を可能とする弾性リング9とを備え、前記雌型連結部材7が他方のセグメント1の接合端部1bに接合面1b1から外側へ突き出して固定された構成とされている。
【0023】
したがって、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造Aによれば、一方のセグメント1の雄型継手2に他方のセグメント1の雌型継手3が押し込まれて連結された状態では、前記雄型継手2の雄型連結部材5の直径が前記雌型継手3の雌型連結部材7の挿入穴7cの内径より大きく設定されているために、雄型連結部材5が雌型連結部材7の挿入穴7cに嵌入した際、雌型連結部材7の先端部の嵌着部7bが拡径変形して該嵌着部7bに装着された楔部材8を拡径変位させ、これにより、該楔部材8の外周部8aのテーパ面が雄型継手2の円筒支持体4の内周面に強く押圧されるので、前記円筒支持体4の内周部と雌型連結部材7との間で前記楔部材8が大きな楔効果を発揮し、そのため、前記雄型継手2と雌型継手3とを雄型連結部材5と雌型連結部材7との緊密な嵌合を介してしっかりと連結させることができる。そして、前記雄型連結部材5と雌型連結部材7との嵌合状態を前記円筒支持体4によって強固に保持させることができるので、雄型継手2と雌型継手3の軸方向およびこれに直交する方向における連結を強固に行わせることができ、これにより、セグメントどうしの結合強度を向上させることができる。
また、前記雄型継手2と雌型継手3は円筒状部材と棒状部材とを組合せてなるものであるから、継手構造が簡単であり、容易にかつ安価に製作することができる。
【0024】
また、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造Aによれば、前記雌型継手3が、他方のセグメント1の接合端部1bに設けた凹所1b2の底部に固定され、先端を接合面1b1より内側に位置させて凹所1b2内に突き出されたアンカーボルト6を備え、前記雌型連結部材7が、その基端部側の雌ねじ7dをアンカーボルト6の先端部の雄ねじ6aに螺合させることにより、アンカーボルト6に着脱可能に連結された構成とされているので、前記雌型継手3の雌型連結部材7と楔部材8の組付けセットを、予めアンカーボルト6から外しておき、現場でセグメント1,1どうしの接合を行う直前にアンカーボルト6に螺着すればよいので、セグメント1のハンドリング時に、前記組付けセットがセグメント1の接合面1b1から突き出していて邪魔になることがないと共に、前記組付けセットが他の部材に衝突することにより破損したり、前記組付けセットの衝突に伴ってセグメント1に割れが生じたりするのを確実に防止することができる。
【0025】
さらに、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造Aによれば、前記雄型連結部材5は、その外端が前記円筒支持体4の外端より所定寸法だけ内側に寄った位置にあり、その外端側の外周部には外端の直径が前記雌型連結部材7の挿入穴7cの直径より小径となる先細の面取り部5bが設けられた構成とされているので、一方のセグメント1に対して他方のセグメント1を移動させて接合する時に、一方のセグメント1の雄型継手2の円筒支持体4の内周部によって、他方のセグメント1の雌型連結部材7の先端部に装着された楔部材8の外周部が案内されて調芯された後に、雌型連結部材7の挿入穴7cが前記雄型連結部材5に嵌合されるので、接合開始時に雄型継手2と雌型継手3の軸心どうしが多少偏心していても、その偏心を修正しながら雄型継手2に対する雌型継手3の連結を円滑に行うことができる。
しかし、前記円筒支持体4の外端と雄型連結部材5の外端の位置は、必ずしも上記のように異ならせる必要はなく、ほぼ同一の位置に設定してもよい。
【0026】
なお、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造Aにおいては、セグメント1の羽口側(一端側)の接合端部1aに雄型継手2を、坑口側(他端側)の接合端部1bに雌型継手3をそれぞれ2個設けたが、これに限らず、雄型継手2と雌型継手3の接合端部1a(1b)に設ける位置は上記と逆にしてもよく、設置個数も3個以上であってもよい。また、前記雄型継手2と雌型継手3をセグメント1のトンネル軸方向(セグメントリングの継手面側)における接合端部1a,1bに設けたが、これに限らず、セグメント1のトンネル周方向(セグメント1の継手面側)における接合端部1c,1dに設けて、前記雄型継手2と雌型継手3をセグメント1,1どうしをトンネル周方向に接合させるセグメントの接合構造とすることもできる。
【0027】
また、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造Aにおいては、前記雌型継手3の楔部材8を、剛性の高い材料のテーパ筒を周方向に複数に分割し、それらの外周に弾性リングを装着してテーパ筒状に構成したので、雌型継手部材7の挿入穴7cに雄型継手2の雄型継手部材5が嵌入して前記装着部の拡径変形した時に、その拡径変形に追従して前記楔部材8が円滑に拡径変位して楔効果を的確に強固に発揮することができて好ましいが、これに限らず、前記楔部材8は弾性変形し易い材料で形成された単なるテーパ筒であってもよい。この場合も、該テーパ筒が前記雌型継手部材7の嵌着部7bの拡径変形に伴って強制的に拡径変形されて楔効果を発揮することができる。なお、この場合には、前記弾性リング9を省略することができて、構造が簡単となる。
【0028】
また、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造Aにおいては、前記雄型連結部材5を前記円筒支持体4の底板4bに固着してセグメント1の接合端部1aに固定したが、これに限らず、底板4bを省略し、雄型連結部材5をアンカー等を介して直接にセグメント1の接合端部1aに埋設、固定するようにしてもよい。また、前記雄型連結部材5を中実の軸状としたが、剛性が高い材料であれば中空軸状ないしは円筒軸状としてもよい。また、前記雌型連結部材7は、それに形成した雌ねじ7dをアンカーボルト6の雄ねじ部6aに螺合してアンカーボルト6に連結するようにしたが、これに代えて、アンカーボルト6に雌ねじを設け、これに雌型連結部材7に設けた雄ねじ部を螺合させて、アンカーボルト6に雌型連結部材7を連結するようにしてもよい。
【0029】
さらに、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造Aにおいては、コンクリートセグメント1,1どうしを接合する場合に適用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、鋼製セグメントどうし、鋼製セグメントの内側にコンクリートを充填させてなる合成セグメントどうしを接合する場合にも適用して同様な作用、効果を得ることができる。鋼製セグメントどうしや合成セグメントどうしを接合する継手構造に適用する場合には、雄型継手2の円筒支持体4および凹所1b2を構成する部材を主桁板に溶接すると共に、該凹所構成部材にアンカーボルト6を溶接し、必要に応じて前記円筒支持体と主桁板との間または凹所構成部材と主桁板との間に補強部材を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係るセグメントの継手構造の接合前の状態を示す縦断面図である。
【図2】図1のイ矢視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るセグメントの継手構造の接合状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るセグメントの継手構造を適用したコンクリートセグメントを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 コンクリートセグメント(セグメント)
1a,1b 接合端部
1a1,1b1 接合面
1b2 凹所
2 雄型継手
3 雌型継手
4 円筒支持体
4e 環状空間
5 雄型連結部材
6 アンカーボルト
6a 雄ねじ部
7 雌型連結部材
7b 嵌着部
7c 挿入穴
7d 雌ねじ
7f スリット
8 楔部材
8a 外周部
8d 環状溝
9 弾性リング
A セグメントの継手構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する一対のセグメントの接合面どうしを突き合わせ、一方のセグメンの接合端部に設けた雄型継手と他方のセグメントの接合端部に設けた雌型継手とを嵌合させることにより前記セグメントどうしを接合するセグメントの継手構造であって、
前記雄型継手は、円筒支持体と、該円筒支持体の内側に環状空間をあけて同軸線上に配した軸状の雄型連結部材とを備え、それらが各外端を接合面から外側に突き出さないようにして一方のセグメントの接合端部に固定されており、また、前記雌型継手は、前記雄型連結部材の外径より所定寸法だけ小径であって該雄型連結部材が嵌入可能な挿入穴を有し、先端側に軸方向に沿うスリットが周方向に間隔をあけて複数個設けられた円筒状の雌型連結部材と、外周部が先窄まりのテーパ筒状に形成されて前記雌型連結部材の先端側の外周部に装着され、前記雌型連結部材の挿入穴に雄型連結部材が嵌入される前は最大外径が前記雄型継手の円筒支持体の内径より所定寸法だけ小径であって、前記雌型連結部材がその挿入穴に雄型連結部材を嵌入されて直径方向に拡径された時に、最大外径が前記雄型継手の円筒支持体の内径より大きく変位する楔部材と、該楔部材の外周に巻き掛けられて楔部材の直径方向への拡縮を可能とする弾性リングとを備え、前記雌型連結部材が他方のセグメントの接合端部に接合面から外側へ突き出して固定されていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項2】
前記雌型継手は、他方のセグメントの接合端部に設けた凹所の底部に固定され、先端を接合面より内側に位置させて凹所内に突き出されたアンカーボルトを備え、前記雌型連結部材が、その基端部側を前記アンカーボルトの先端部に螺合させることにより、アンカーボルトに着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のセグメントの継手構造。
【請求項3】
前記雄型連結部材は、その外端が前記円筒支持体の外端より所定寸法だけ内側に寄った位置にあり、その外端側の外周部には外端の直径が前記雌型連結部材の挿入穴の直径より小径となる先細の面取り部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のセグメントの継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−69540(P2008−69540A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248246(P2006−248246)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】