説明

セグメントの継手構造

【課題】雄継手及び雌継手を鋼製として継手構造の低コスト化を図った場合においても、好適に雄継手と雌継手を連結しセグメント同士を接合することが可能なセグメントの継手構造を提供する。
【解決手段】雄継手21と雌継手20をそれぞれ鋼製とし、雄継手21を、軸部15の両端側あるいは一端側に接続した係合部23を備えて断面略H型あるいは断面略T型に形成し、雌継手20を、一対の側板部8、9と、一対の側板部8、9を繋いで連設された底板部10と、一対の側板部8、9の内面8a、9aに接続して内側に突設された一対の係止片部11、12とを備えて断面略C型に形成する。そして、雌継手20の嵌合空間6に雄継手21の係合部23を嵌合させた際に、互いに当接して係止される係合部23の係合面と係止片部11、12の係止面のいずれか一方の面を嵌合方向O1の断面視で凸円弧状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法等により掘削したトンネル内面に設置されて覆工を形成するセグメント同士を一体に接合するための継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド工法等により掘削したトンネルT内面には、例えば図8に示すように、この掘削内面の曲率半径と略同等の曲率半径を備えた複数の円弧盤状のセグメント1が周方向に連続して設けられ、周方向の掘削内面を被覆して支持する環状のセグメントリング体2が形成される。そして、このような周方向の掘削内面を支持するセグメントリング体2がトンネル軸線方向O1に連続するように接続されて、掘削内面を被覆支持するトンネルTの覆工が形成される。このとき、隣接するセグメント1同士は、雄継手と雌継手からなる継手構造3、4を用いて一体に接合される。
【0003】
また、例えばトンネルT周方向に隣接するセグメント1同士を接合するための継手構造(ピース間継手)4には、トンネルT半径方向の負荷に対して大きな接合強度を確保でき、且つセグメント1の内面に凹凸が形成されないなどの利点から、いわゆる水平コッターと称される継手構造が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この水平コッター式の継手構造4は、例えば図9に示すように、隣り合うセグメント1のそれぞれの接合端面1aの対向位置に、断面略C型の雌継手(C型金物)5が嵌合空間6を接合端面1aに開口させ、トンネル軸線方向O1に延設した状態で、各セグメント1に一体に設けられている。そして、隣り合うセグメント1のそれぞれの雌継手5の嵌合空間6に、断面略H型の雄継手(H型金物)7をトンネル軸線方向(嵌合方向)O1にスライドさせてその両端部側(両フランジ部(係合部)7a側)のそれぞれを嵌め込む。これにより、雄継手7を介して雌継手5同士が連結され、セグメント1の接合端面1a同士が接合する。
【特許文献1】特開2001−300930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の水平コッター式の継手構造4の雌継手5及び雄継手7は、一般に鋳物として製作されているため、高コストであるという問題があった。
【0006】
これに対し、例えば、雌継手5を鋼製とし、図10に示すように一対の側板部8、9と、一対の側板部8、9の一端側同士を繋いで連設された底板部10と、一対の側板部8、9のそれぞれの他端側の内面8a、9aに溶接して内側に突設された一対の係止片部11、12とを備えて形成し、雌継手5ひいては継手構造4の低コスト化を図ることが考えられる。
【0007】
しかしながら、雌継手5のみを鋼製とし、従来と同様の鋳物として製作した雄継手7を用いる場合、この雄継手7は、鋳物として製作する関係上、図11に示すように、フランジ部7aのフランジ面7b(係合部の係合面)が例えば2°程度の傾斜角θをもって形成される。そして、このような雄継手7のフランジ部7aを雌継手5の嵌合空間6に嵌合させた際には、フランジ部7aのフランジ面7bと雌継手5の係止片部11の係止面11aとが嵌合方向(トンネル軸線方向O1)の断面視で点接触することになり、且つフランジ面7bと係止面11aが係止片部11の突出方向先端側で当接することになる。このため、雄継手7から雌継手5の係止片部11の先端側に接合力Nが集中荷重として作用し、この接合力Nが作用する作用点と、側板部8に接続した係止片部11の後端の支点(溶接部13、14)との距離L1が大きくなる。これにより、溶接部13、14には、大きな曲げモーメントMが作用するため、係止片部11が側板部8から脱落する(係止片部11が破損する)おそれが生じてしまう。
【0008】
一方、図12に示すように、雄継手7を鋼製とし、平板状の軸部15の両端側の一面15aと他面15bとにそれぞれ直交方向外側に突出するように平板状の係合部16を溶接して断面略H型の雄継手7を形成することも考えられる。
【0009】
そして、このような雄継手7の端部(係合部16)を雌継手5の嵌合空間6に嵌合させた際には、図13に示すように、係合部16の係合面16aと係止片部11の係止面11aとが面接触することになるため、雄継手7から雌継手5の係止片部11に接合力Nが等分布荷重として作用する。このため、側板部8に係止片部11の後端を接続する溶接部13には、従来の鋳物として製作した雄継手を用いる場合と比較し、大きな曲げモーメントが作用することがない。
【0010】
しかしながら、このように係合部16の係合面16aと係止片部11の係止面11aとを面接触させた場合においても、係止片部11の係止面11aと側板部8の内面8aとを溶接できなくなったり、係合部16の係合面16aと軸部15の一面15aまたは他面15bとを溶接できなくなって、すなわち係止面11aと側板部8の内面8aが交差する隅部の溶接部14や、係合面16aと軸部15の一面15aまたは他面15bとが交差する隅部の溶接部17を設けることができなくなって、係止片部11と側板部8、係合部16と軸部15のそれぞれの接続強度を十分に確保できなくなるという問題が生じてしまう。このため、やはり係止片部11や係合部16が脱落する(破損する)おそれが生じる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、雄継手及び雌継手を鋼製として継手構造の低コスト化を図った場合においても、好適に雄継手と雌継手を連結しセグメント同士を接合することが可能なセグメントの継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0013】
本発明のセグメントの継手構造は、雄継手と、該雄継手が嵌合する嵌合空間をセグメントの接合端面に開口させた状態で前記セグメントに一体に設けられた雌継手とからなるセグメントの継手構造において、前記雄継手と前記雌継手はそれぞれ鋼製とされ、前記雄継手は、軸部の両端側あるいは一端側に接続した係合部を備えて断面略H型あるいは断面略T型に形成され、前記雌継手は、一対の側板部と、前記一対の側板部に連設された底板部と、前記一対の側板部のそれぞれの内面に接続して内側に突設された一対の係止片部とを備えて断面略C型に形成されており、前記一対の側板部と前記底板部と前記一対の係止片部で囲まれてなる前記雌継手の前記嵌合空間に前記雄継手の係合部を嵌合させた際に、互いに当接して係止される前記係合部の係合面と前記係止片部の係止面のいずれか一方の面が嵌合方向の断面視で凸円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明においては、雄継手と雌継手がそれぞれ鋼製とされているため、従来のように鋳物で製作したものと比較し、低コスト化を図ることが可能になる。そして、雌継手に雄継手を連結させた際に、互いに当接して係止される係合部の係合面と係止片部の係止面のいずれか一方の面が凸円弧状に形成されていることで、係合面と係止面とが嵌合方向の断面視で点接触し、この当接部(作用点)を係止片部の突出方向後端側(側板部側)に位置させることが可能になる。これにより、雄継手の係合部から雌継手の係止片部に作用する接合力の作用点が側板部に接続する支点側(係止片部の後端側)に位置することになり、側板部と係止片部の接続部分(溶接部)に作用する曲げモーメントを小さくすることが可能になる。よって、雄継手と雌継手をそれぞれ鋼製として製作した場合においても係止片部が脱落(破損)することを防止できる。
【0015】
また、このように作用点を支点側に近づけた場合においても、係合部の係合面と係止片部の係止面のいずれか一方の面が凸円弧状に形成されていることで、係止面と側板部の内面が交差する隅部や、係合面と軸部の一面または他面とが交差する隅部に溶接部を設けることができ、係止片部と側板部、係合部と軸部のそれぞれの接続強度を十分に確保することが可能になる。よって、この点からも、鋼製として製作した雄継手と雌継手に破損が生じることを防止できる。
【0016】
また、本発明のセグメントの継手構造においては、前記係合部または前記係止片部が円柱棒状部材を用いて形成されていることが望ましい。
【0017】
この発明においては、係合部または係止片部を例えば丸鋼などの円柱棒状部材を用いて形成することで、容易に係合部の係合面または係止片部の係止面を凸円弧状に形成することができ、確実に且つ容易に接合力の作用点を支点側に近づけることが可能になる。
【0018】
さらに、本発明のセグメントの継手構造において、前記係合部及び/又は前記係止片部は、前記嵌合方向に並設された楔部を備えて前記係合面及び/又は前記係止面が鋸目状に形成されてもよい。
【0019】
この発明においては、係合面及び/又は係止面が楔部によって鋸目状に形成されていることで、両面の楔部同士を係合させたり、一方の楔部を他方の面に食い込ませて、係合部と係止片部とを強固に係合させることが可能になる。これにより、雄継手と雌継手を強固に連結でき、確実に且つ好適にセグメント同士を一体に接合することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のセグメントの継手構造によれば、雄継手及び雌継手を鋼製で製作して継手構造の低コスト化を図った場合においても、係合部の係合面と係止片部の係止面のいずれか一方の面を凸円弧状に形成することで、係止片部と側板部との接続部分に作用する曲げモーメントを小さくすることができ、さらに係止片部と側板部、係合部と軸部のそれぞれの接続強度を十分に確保することが可能になる。よって、好適に雄継手と雌継手を連結してセグメント同士を接合することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1から図5を参照し、本発明の一実施形態に係るセグメントの継手構造について説明する。本実施形態は、シールド工法等により掘削したトンネル内面に設置されるセグメント同士を一体に接合するための継手構造に関し、特に隣り合うセグメントの互いの接合端面同士を対向させてスライドさせることによりセグメント同士を接合させる水平コッター式のピース間継手の構造に関するものである。なお、ここでは、図8から図13に示したセグメント及びセグメントの継手構造と共通する構成に対し同一の符号を付して説明を行う。
【0022】
本実施形態のセグメントの継手構造Aは、図1に示すように、隣り合うセグメント1のそれぞれの接合端面1a側に一体に設けられた一対の雌継手20(図1においては一方の雌継手のみを図示)と、隣り合うセグメント1の対向する一対の雌継手20に連結してセグメント1同士を接合させるための雄継手21とで構成されている。
【0023】
雌継手20は、鋼製のC型継手とされ、一対の側板部8、9と、これら一対の側板部8、9の一端側同士を繋いで連設された底板部10と、一対の側板部8、9のそれぞれの他端側の内面8a、9aに後端を接続し側板部8、9の内面8a、9aに直交して内側に突設されるとともに嵌合方向(トンネル軸線方向O1)に延設された一対の平板状の係止片部11、12とを備えて構成されている。これにより、雌継手20には、一対の側板部8、9と底板部10と一対の係止片部11、12で囲まれてなる断面T字状の嵌合空間6が形成されている。
【0024】
また、一対の係止片部11、12は、図1及び図2に示すように、一対の側板部8、9の内面8a、9aにそれぞれ溶接によって接続されている。このとき、一対の係止片部11、12は、接合端面1a側を向く一面11b、12bと側板部8、9の内面8a、9a、及び底板部10側を向く他面(係止面11a、12a)と側板部8、9の内面8a、9aがそれぞれ、すなわち一面11b、12b側と他面11a、12a側の両側が、すみ肉溶接による溶接部13、14で接続されている。これにより、一対の係止片部11、12はそれぞれ、各溶接部13、14により十分な接続強度をもって側板部8、9に接続されている。
【0025】
また、雌継手20には、一対の側板部8、9のそれぞれの外面に溶接してアンカー22が設けられており、これらアンカー22がセグメント1の内側のコンクリートに定着していることで、雌継手20はセグメント1に強固に一体化されている。そして、雌継手20は、一対の側板部8、9の端部をセグメント1の接合端面1a側に配し、嵌合空間6をこの接合端面1aに開口させた状態で設置されている。また、このとき、雌継手20は、セグメント1をトンネルTの所定位置に配置した状態で嵌合空間6の延設方向がトンネル軸線方向O1に沿うように設置されている。
【0026】
一方、雄継手21は、鋼製のH型継手とされ、図3から図5に示すように、平板状の軸部15と、この軸部15の両端側の一面15aと他面15bとにそれぞれ接続され、これら一面15aと他面15bの直交方向外側に突出して設けられた係合部23とを備えて断面略H型に形成されている。また、本実施形態では、各係合部23が丸鋼(円柱棒状部材)を用いて形成されている。そして、各丸鋼(係合部23)は、軸部15の嵌合方向O1の長さと略同等の長さを備え、その外面(円周面)を軸部15の一面15aまたは他面15bに接触させ、溶接によって軸部15に接続されている。また、このとき、丸鋼23を軸部15に接続する溶接部24、25は、丸鋼23の外面の軸部15に接触した接触部P1を挟んで周方向両側にそれぞれ設けられている。すなわち、各丸鋼23は、接触部P1を挟んで周方向の両側がそれぞれ軸部15の一面15aまたは他面15bに溶接部24、25によって接続されている。これにより、各係合部23は、各溶接部24、25により十分な接続強度をもって軸部15に接続されている。
【0027】
そして、上記のように構成した雌継手20と雄継手21によって隣り合うセグメント1同士を接合する際には、図1に示すように、雄継手21の一端部(一端部側の一対の係合部23)を一方のセグメント1の雌継手20の嵌合空間6に側端部側から嵌合させる。このとき、一方のセグメント1に嵌合させた雄継手21は、他端部側が一方のセグメント1の接合端面1aから所定の寸法で精度よく外側に突出する。
【0028】
ついで、このように一方のセグメント1の接合端面1aから外側に突出した雄継手21の他端部側(他端部側の一対の係合部23)を図8に示した他方のセグメント1の挿入口26に挿入させ、トンネル軸線方向O1にスライドさせて、他方のセグメント1の雌継手20の嵌合空間6に側端部側から嵌合させる。これにより、雄継手21を介して、両雌継手20が連結されるとともに、隣り合うセグメント1の接合端面1a同士が圧接されてセグメント1同士が接合される。
【0029】
そして、上記のように雌継手20と雄継手21を連結してセグメント1同士を接合させる際には、図2に示すように、雌継手20の係止片部11、12の底板部10側を向く平面状の係止面11a、12aと、雄継手21の係合部23の接合端面1a側を向く凸円弧状の係合面(丸鋼の外面、凸円弧状に形成された一方の面)23aとが当接して係止される。このとき、係合部23に丸鋼を用いて係合面23aが凸円弧状に形成されていることで、図2に示すように嵌合方向O1の断面視で係止面11a、12aと係合面23aは点接触(当接部P2)し、図10及び図11に示した従来の鋳物として製作した雄継手7を用いた場合と比較して、この当接部P2が係止片部11、12の側板部8、9に繋がる後端(支点、溶接部13、14)側に位置することになる。
【0030】
これにより、本実施形態のセグメントの継手構造Aにおいては、雄継手21の係合部11、12から雌継手20の係止片部11、12に集中荷重として作用する接合力Nの作用点(当接部P2)と、側板部8、9に接続した係止片部11、12の後端の支点との距離L2が、従来の鋳物として製作した雄継手7を用いた場合の距離L1よりも小さくなる。よって、溶接部13、14には、大きな曲げモーメントMが作用することがなく、係止片部11、12が側板部8、9から脱落する(係止片部11、12が破損する)ことが防止される。
【0031】
また、係合面23aが凸円弧状に形成されていることで、この係合面23aは、雌継手20と雄継手21を連結した状態において当接部P2から側板部8、9側に向かうに従い漸次係止面11a、12aから離れ、且つ当接部P2から軸部15の一面15aまたは他面15bに向かうに従い漸次係止面11a、12aから離れてゆく。このため、作用点(当接部P2)を支点側に近づけた場合においても、係止面11a、12aと側板部8、9の内面8a、9aが交差する隅部に設けた溶接部14に係合部23が干渉することはない。また、係合面23aと軸部15の一面15aまたは他面15bとが交差する隅部に設けた溶接部25に係止片部11、12の先端側が干渉することもない。これにより、係止片部11、12と側板部8、9、及び係合部23と軸部15のそれぞれの接続強度が溶接部14、25によって十分に確保され、この点からも雌継手20と雄継手21に破損が生じることが防止される。
【0032】
したがって、本実施形態のセグメントの継手構造Aにおいては、雄継手21と雌継手20がそれぞれ鋼製とされているため、従来のように鋳物で製作したものと比較し、低コスト化を図ることが可能になる。そして、雌継手20に雄継手21を連結させた際に互いに当接して係止される係合部23の係合面23aと係止片部11、12の係止面11a、12aのうち、係合面23aを凸円弧状に形成することで、係合面23aと係止面11a、12aとを嵌合方向O1の断面視で点接触させることができ、この当接部(作用点)P2を係止片部11、12の後端側(側板部8、9側)に位置させることが可能になる。これにより、雄継手21の係合部23aから雌継手20の係止片部11、12に作用する接合力Nの作用点が側板部8、9に接続する支点側に位置することになり、側板部8、9と係止片部11、12を接続する溶接部13、14に作用する曲げモーメントMを小さくすることが可能になる。よって、雄継手21と雌継手20をそれぞれ鋼製として製作した場合においても係止片部11、12が脱落(破損)することを防止できる。
【0033】
また、このように作用点P2を支点側に近づけた場合においても、係合面23aが凸円弧状に形成されていることで、係止面11a、12aと側板部8、9の内面8a、9aが交差する隅部や、係合面23aと軸部15の一面15aまたは他面15bとが交差する隅部に溶接部14、25を設けることができ、係止片部11、12と側板部8、9、及び係合部23と軸部15のそれぞれの接続強度を十分に確保することが可能になる。よって、鋼製として製作した雄継手21と雌継手20に破損が生じることをより確実に防止できる。
【0034】
また、係合部23に丸鋼(円柱棒状部材)を用いることで、容易に係合部23の係合面23aを凸円弧状に形成することができ、確実に且つ容易に接合力Nの作用点P2を支点側に近づけることが可能になる。
【0035】
よって、本実施形態のセグメントの継手構造Aによれば、雄継手21及び雌継手20を鋼製で製作して継手構造Aの低コスト化を図った場合においても、係合部23の係合面23aを凸円弧状に形成することで、支点(溶接部13、14、24、25)に作用する曲げモーメントMを小さくすることができ、さらに係止片部11、12と側板部8、9、係合部23と軸部15のそれぞれの接続強度を十分に確保することが可能になるため、好適に雄継手21と雌継手20を連結してセグメント1同士を接合することが可能になる。
【0036】
なお、本発明は、上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、係合部23の係合面23aを凸円弧状に形成することによって、作用点P2を支点側に近づけ、支点に作用する曲げモーメントMが小さくなるようにしているが、係止片部11、12の係止面11a、12aを凸円弧状に形成し、係合部23の係合面23aを平面状に形成して、平面状の係合面23aと凸円弧状の係止面11a、12aとが当接する当接部P2(作用点)を支点側に近づけるようにしてもよい。そして、この場合においても、本実施形態と同様に、支点に作用する曲げモーメントMを小さくすることができ、係止片部11、12が破損(脱落)することを防止できる。また、この場合においても、係止面11a、12aと側板部8、9の内面8a、9aが交差する隅部や、係合面23aと軸部15の一面15aまたは他面15bとが交差する隅部に溶接部14、25を設けることが可能であるため、係止片部11、12と側板部8、9、及び係合部23と軸部15のそれぞれの接続強度を十分に確保することが可能である。
【0037】
また、本実施形態では、係合部23に丸鋼(円柱棒状部材)を用いることで凸円弧状の係合面23aを形成するものとしたが、本発明は、係合面23aと係止面11a、12aのいずれか一方の面のみが凸円弧状に形成されていればよいのであって、係合部23または係止片部11、12を、円柱棒状部材を用いて形成することに限定する必要はない。
【0038】
さらに、例えば図6に示すように係合部23を、嵌合方向O1に並設された楔部23bを備えて形成したり、係止片部11、12を嵌合方向O1に並設された楔部を備えて形成して、係合面23a及び/又は係止面11a、12aを鋸目状に形成してもよい。そして、係合面23a(係止面11a、12a)を鋸目状に形成した場合には、軟鋼を用いて係止片部11、12(係合部23)を形成することで、この係合面23a(係止面11a、12a)の楔部23bを係止面11a、12a(係合面23a)に食い込ませて、係合部23と係止片部11、12とを強固に係合させることが可能になる。これにより、雄継手21と雌継手22を強固に連結でき、確実に且つ好適にセグメント1同士を一体に接合することが可能になる。
【0039】
また、係合部23と係止片部11、12をともに楔部を備えて形成し、係合面23a及び係止面11a、12aを鋸目状に形成した場合には、雄継手21を雌継手22の嵌合空間6に嵌合させるとともに互いの楔部同士が係合することで、係合部23と係止片部11、12とをより強固に係合させることが可能になる。
【0040】
さらに、本実施形態では、雄継手21が、平板状の軸部15の両端側の一面15aと他面15bとにそれぞれ係合部23を接続して断面略H型に形成されているものとしたが、例えば図7に示すように、軸部15の一端側(一端部側)の一面15aと他面15bとにそれぞれ係合部23を接続して、雄継手21が断面略T型に形成されていてもよい。この場合には、雄継手21の他端部側にアンカー30を取り付け、このアンカー30を定着させることによって、雄継手21が係合部23を備える一端部側を接合端面1aから外側に突出させた状態で一方のセグメント1に一体に設置される。そして、この雄継手21の接合端面1aから外側に突出した一端部側(一端部側の一対の係合部23)を他方のセグメント1の雌継手20の嵌合空間6に側端部側から嵌合させることにより、本実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0041】
さらに、本実施形態では、セグメントの継手構造Aがピース間継手であるとして説明を行ったが、本発明のセグメントの継手構造は、トンネル軸線方向O1に隣接するセグメント1同士を接合するためのリング間継手に採用してもよい。また、本実施形態では、セグメント1がコンクリート製セグメントであるものとして説明を行ったが、本発明のセグメントの継手構造は、コンクリート中詰セグメントや鋼製セグメントなどに用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係るセグメントの継手構造を示す図である。
【図2】図1のS部を拡大した図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るセグメントの継手構造の雄継手を示す図である。
【図4】図3のX1−X1線矢視図である。
【図5】図3のX2−X2線矢視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るセグメントの継手構造(雄継手)の変形例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るセグメントの継手構造(雄継手)の変形例を示す図である。
【図8】トンネル内にセグメントを設置する状態を示す斜視図である。
【図9】従来の鋳物として製作したセグメントの継手構造を示す図である。
【図10】雌継手のみを鋼製としたセグメントの継手構造を示す図である。
【図11】図10のS部を拡大した図である。
【図12】係合面と係止面を平面として製作した鋼製のセグメントの継手構造を示す図である。
【図13】図12のS部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 セグメント
1a 接合端面
2 セグメントリング体
6 嵌合空間
8 側板部
8a 内面
9 側板部
9a 内面
10 底板部
11 係止片部
11a 係止面
12 係止片部
12a 係止面
13 溶接部
14 溶接部
15 軸部
15a 一面
15b 他面
20 雌継手
21 雄継手
22 アンカー
23 係合部(丸鋼)
23a 係合面
23b 楔部
24 溶接部
25 溶接部
A セグメントの継手構造
L1 作用点から支点までの距離
L2 作用点から支点までの距離
M 曲げモーメント
N 接合力
O1 トンネル軸線方向(嵌合方向)
P1 接触部
P2 当接部(作用点)
T トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄継手と、該雄継手が嵌合する嵌合空間をセグメントの接合端面に開口させた状態で前記セグメントに一体に設けられた雌継手とからなるセグメントの継手構造において、
前記雄継手と前記雌継手はそれぞれ鋼製とされ、
前記雄継手は、軸部の両端側あるいは一端側に接続した係合部を備えて断面略H型あるいは断面略T型に形成され、
前記雌継手は、一対の側板部と、前記一対の側板部に連設された底板部と、前記一対の側板部のそれぞれの内面に接続して内側に突設された一対の係止片部とを備えて断面略C型に形成されており、
前記一対の側板部と前記底板部と前記一対の係止片部で囲まれてなる前記雌継手の前記嵌合空間に前記雄継手の係合部を嵌合させた際に、互いに当接して係止される前記係合部の係合面と前記係止片部の係止面のいずれか一方の面が嵌合方向の断面視で凸円弧状に形成されていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項2】
請求項1記載のセグメントの継手構造において、
前記係合部または前記係止片部が円柱棒状部材を用いて形成されていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセグメントの継手構造において、
前記係合部及び/又は前記係止片部は、前記嵌合方向に並設された楔部を備えて前記係合面及び/又は前記係止面が鋸目状に形成されていることを特徴とするセグメントの継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−228312(P2009−228312A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75160(P2008−75160)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】