説明

セグメントの連結構造

【課題】セグメント本体と同程度の高剛性、高耐力を有し、施工コストと手間がかからず、セグメント面の平坦性を確保できる、セグメントの連結構造を提供する。
【解決手段】セグメント20の主桁1と継手板5に連結部材固定板3を固着すると共に、周方向に隣接するセグメント20の継手板5同士を突き合わせたうえ、各連結部材固定板3に設けた連結部材挿入用開口部4と継手板5に設けた連結部材挿入用開口部4aに、セグメント20の内縁側と外縁側の一方または両方からT字形連結部材7のウエブ17を挿入し、T字形連結部材7のフランジ19を連結部材固定板3にボルト9にて摩擦接合したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道、鉄道、地下河川等のボックスカルバートなどを構築するセグメントの連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水道、鉄道、地下河川等のトンネルの覆工内壁を構築するためのボックスカルバート等に使用されるセグメントには、鋼製セグメント、鋼−コンクリートの合成セグメント、コンクリートセグメント等が適用される。これらのセグメントには継手部が設けられている。この継手部は、一般にセグメントのコンクリート中にアンカー鉄筋を介して固定されるものであり、この継手部を介して多数のセグメントを周方向と軸方向に連結してボックスカルバートが構築されることになる。従ってこの継手部は、セグメントを用いた施工を行う上で特に重要な役割を果たすものであり、従来において数多くの提案がされている。
【0003】
従来提案されている継手構造も改良の主眼点は種々異なっている。例えば、(1)継手部の構造を簡潔にすることを主な改良点とするもの、(2)継手部の止水性を向上することを主な改良点とするもの、(3)継手部の連結操作を容易にすることを主な改良点とするもの、(4)継手部の強度をセグメント本体と同程度に向上することを主な改良点とするもの、(5)前記の複数の点を同時に改良することを主な改良点とするもの等がある。また、この改良技術も、鋼製セグメント、鋼−コンクリートの合成セグメント、コンクリートセグメントによっておのずから構造が相異している。
【0004】
従来、この種のセグメント連結構造に関しては、特許文献1〜特許文献4などが提案されている。
【0005】
特許文献1には、セグメント本体の円周方向の両端に断面略リップ溝状の連結溝部を設け、円周方向に隣り合うセグメントの連結溝部に跨って接合キーをセグメント面外方向(トンネル軸方向)から挿入するセグメントの連結構造が開示されている。このセグメントの連結構造では、セグメント端部に設置された継ぎ手金具を鉄骨部材端の側面部に複数本の取付ボルトによって直接ボルト止めしている。また、前記継ぎ手金具をダクタイル鋳鉄製とすることにより、継手部の強度と剛性を向上させることが可能となる。また、セグメントどうしの接合に関しても、かかる接合キーを介して簡単に行うことができるというメリットもある。
【0006】
特許文献2には、トンネルの周方向と軸方向にそれぞれ延びる主桁と継手板を有する鋼製セグメント同士を接合する際、主桁と継手プレートが高力ボルトにて取り付けられ、継手板がトンネル周方向に貫通する複数の短ボルトで接合させる継手構造が開示されている。この継手構造において、鋼製セグメントを接合するボルトの引張耐力を品質・保証して、鋼製セグメント同士を確実・強固に接合でき、かつ高い止水性を保持できるというメリットもある。
【0007】
特許文献3には、大断面、大深度、地下河川等大きな曲げモーメントや引張力が作用する場合に有効な合成セグメントの継手部が、セグメント本体と同等の強度および剛性を有する構造が開示されている。そして、高剛性、高耐力のセグメント継手を実現する方法として、セグメントの内空側鋼板の側縁に周方向に隣り合うセグメント継手を跨ぐように内側が開いた箱状の補強部材を配置して、前記の内空側鋼板にボルト接合する構成が開示されている。また、セグメント本体と同程度の高剛性、高耐力のセグメント継手を実現する方法として、セグメント内縁側にセグメント継手を跨ぐように蓋を被せる方法が開示されている。
【0008】
特許文献4には、陸上カルバートボックスを構築するために用いられる鋼−コンクリート合成ブロックの継手構造において、継手部でのズレ耐力を向上させるために、摩擦接合式ボルトと引張り接合式ボルトを組み合わせたセグメント継手構造が開示されている。前記の構造により、カルバートボックスの施工時間およびコストの削減とともに、継手部でのズレ耐力を向上できるというメリットもある。
【特許文献1】特開平8−184296号公報
【特許文献2】特開2000−80892号公報
【特許文献3】特開平7−62988号公報
【特許文献4】特開2004−3172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されているセグメントの連結構造では、H形またはI形に形成された接合キーによって隣り合うセグメントが連結され、H形またはI形に形成された接合キーの中間部がウエブとしての役割をなしている。このため継手部に曲げ荷重が作用したときに前記ウエブで曲げに対抗することになり、セグメント継手部における断面2次モーメントを効率的に大きくできず不経済であった。継手の曲げ耐力を増加させるためには、接合キーの板厚を増やさねばならず非経済的である。また、単に連結穴に接合キーを挿入するだけで、機械的に接合キーがセグメント継手部に固定されておらず、傾斜配置した場合などに接合キーが連結溝部から抜け落ちる可能性があり、この点の改善要請が高まっていた。
【0010】
また、特許文献2に開示されているセグメントの連結構造は、継手プレートをセグメント内で水平移動させて、連結する隣接セグメントと架け渡しているため、内部にコンクリート打設している場合は適用できない。また、セグメント内部の加工が複雑になる。さらに、継手プレートは板状をなしているので、効率的に断面2次モーメントを確保できず、不経済である。
【0011】
特許文献3に開示のセグメントの連結構造では、セグメントの内空側鋼板に配置した箱状の補強部材がセグメントの内空側に出っ張り、セグメント内面の平坦性を確保できないという問題がある。また、箱状の補強部材の背面側(つまり地山側)に形成される凹部にグラウトを注入する必要があり、施工コストと手間がかかるという問題があった。
【0012】
特許文献4に開示のセグメントの連結構造では、セグメント本体と同等の曲げ耐力を実現するためには、水平フランジの板厚を増す必要があり、必要な鋼材量が増え、効率的に曲げ荷重に対処できない。
【0013】
そこで本発明は、前記従来の問題点に鑑みて案出されたものであり、継手部がセグメント本体と同程度の高剛性、高耐力を有する構成とすると共に、継手部がセグメント本体の面外に出張らず、セグメントの平坦性を確保できるようにしたセグメントの連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上述した課題を解決するとともに、さらに〔1〕セグメントの継手部の強度を向上、〔2〕継手部に作用する曲げ荷重に対する耐力の向上、〔3〕構造の簡潔化、〔3〕施工性の向上、〔4〕止水性の向上を図るべく、前記セグメントの主桁と継手板に連結部材固定板を固着すると共に、周方向に隣接する前記セグメントの継手板同士を突き合わせたうえ、前記各連結部材固定板に設けた連結部材挿入用開口部と前記継手板に設けた連結部材挿入用開口部に、セグメントの内縁側と外縁側の一方または両方から連結部材のウエブを挿入し、連結部材のフランジを前記連結部材固定板にボルトにて摩擦接合したセグメントの連結構造を発明した。
【0015】
即ち、第1の発明は、鋼殻内にコンクリートを充填してなる複数のセグメントを周方向と軸方向に結合して構築した構造物の前記セグメントの連結構造において、前記セグメントの主桁と継手板に連結部材固定板を固着すると共に、周方向に隣接する前記セグメントの継手板同士を突き合わせたうえ、前記各連結部材固定板に設けた連結部材挿入用開口部と前記各継手板に設けた連結部材挿入用開口部に、セグメントの内縁側と外縁側の一方または両方から連結部材のウエブを挿入し、連結部材のフランジを前記連結部材固定板にボルトにて摩擦接合したことを特徴とする。
【0016】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記連結部材は、T字形連結部材またはL字形連結部材または、広幅フランジに複数のウエブを設けてなる複数ウエブ一体形の連結部材で構成されていることを特徴とする。
【0017】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記連結部材に形鋼を用いることを特徴とする。
【0018】
また、第4の発明は、第1〜第3の発明において、連結部材固定板と接する側の前記連結部材のフランジ外面に止水材が貼着されていることを特徴とする。
【0019】
また、第5の発明は、第1〜第4の発明において、セグメントのスキンプレートの内側に連結部材受け材が固着されてなり、セグメントの内縁側に設けた前記連結部材固定板の連結部材挿入用開口部から挿入される前記連結部材のウエブ先端を前記連結部材受け材に当接したことを特徴とする。
【0020】
また、第6の発明は、第5の発明において、前記連結部材のウエブ先端は、前記連結部材受け材における連結部材用の位置決め溝に係合されていることを特徴とする。
また、第7の発明は、第5の発明において、前記連結部材のウエブ先端は、前記連結部材受け材における連結部材用の位置決め溝に係合されたうえ、ウエブ先端と連結部材受け材とがボルト接合されていることを特徴とする。
【0021】
また、第8の発明は、第1〜第4の発明において、セグメントの内縁側及び外縁側に連結部材固定板を設けると共に、連結部材固定板の連結部材挿入用開口部に前記セグメントの内縁側及び外縁側から同一形状の連結部材のウエブを挿入し、該ウエブの先端を相手側の連結部材固定板に設けられた連結部材挿入用開口部に挿入したことを特徴とする。
【0022】
また、第9の発明は、第1〜第4の発明において、セグメントの内縁側及び外縁側に連結部材固定板を設けると共に、連結部材固定板の連結部材挿入用開口部に前記セグメントの内縁側及び外縁側から同一形状の連結部材のウエブを挿入し、該ウエブの先端を相手側のウエブの先端と突き合わせたことを特徴とする。
【0023】
また、第10の発明は、第1〜第9の発明において、主桁とスキンプレートと継手板と連結部材固定板とで囲まれる連結部材のウエブ挿入部が空洞とされ、またはウエブ挿入用の間隙を形成して中詰めコンクリートが充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るセグメントの連結構造は、周方向に隣接するセグメントの継手板同士を突き合わせたうえ、前記各セグメントに固着した連結部材固定板の連結部材挿入用開口部に、セグメントの内縁側と外縁側の一方または両方から連結部材のウエブを挿入し、連結部材のフランジを前記連結部材固定板にボルトにて摩擦接合した。それにより本発明の連結部材は、ウエブとフランジによって断面2次モーメントを確保でき、継手部に作用する曲げに対して高耐力、高剛性の継手を実現することができると共に、せん断荷重、引っ張り荷重に対しても強度を増すことができる。また本発明によると、セグメント表面に突出物がなく、平坦性を確保できるセグメントの連結構造が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
【0026】
まず、図1〜図6に示す実施形態について説明する。図1はセグメント継手部の斜視図、図2は、図1のA−A断面図、図3は図1の平面図、図4は連結部材固定板の平面図、図5はT字形連結部材の斜視図、図6はL字形連結部材の斜視図である。
【0027】
本実施形態は、図5に示すT字形連結部材7や、図6に示すL字形連結部材12等の連結部材と、この連結部材を固定するための図4に示す連結部材固定板3を組み合わせて継手部を構成した点に特徴がある。このようにT字形連結部材7等の連結部材と連結部材固定板3を組み合わせて継手部を構成することにより、該継手部に作用するせん断荷重と引っ張り荷重と曲げ荷重に対して、継手部がセグメント本体と同程度の高剛性と高耐力を有する構成にできる。
【0028】
以下、順に説明する。前記の各図には、主桁1と継手板5とスキンプレート2とからなる鋼殻に中詰めコンクリート6を充填してなる合成セグメントが示されている。なお、中詰めコンクリート6は図1にのみ示され、他の図ではコンクリートは省略して図示されている。T字形連結部材7は、図5に示すようにウエブ17とフランジ19とからT字状に構成されている。また、L字形連結部材12は、図6示すようにフランジ19とウエブ17とからL字状に構成されている。前記の各フランジ19にはボルト挿入孔10が設けられている。
【0029】
連結部材固定板3は、図4に示すように矩形の鋼板で構成されており、セグメントの製作時に、予めセグメント本体の主桁1、継手板5に溶接にて固着されている。図4によって連結部材固定板3の形状を説明すると、その幅(W)は、セグメント本体と略同じ幅、つまり両側の主桁1に届く長さに設けられる。また、連結部材固定板3の長さ(L)は、その一端縁25をセグメント20の継手板5に当接して配置したとき、セグメント周方向一端側から他端側に向けて所定の長さに設けてある。この長さ(L)は、連結部材固定板3をセグメント20の主桁1と継手板5に固着したときに、該連結部材固定板3が継手部に作用する引っ張りや曲げ荷重に対して必要な強度を確保できる長さに設けられる。また前記の長さ(L)は、連結部材固定板3の板厚等との関係で適切な長さに調整される。また、連結部材固定板3の一端縁25から他端縁26にかけて、所定の幅で所定の長さの連結部材挿入用開口部4が複数条所定の間隔を明けて平行に設けられている。連結部材挿入用開口部4の両側にはボルト挿入孔10が穿孔されている。
【0030】
図1、図3に示すように、連結部材固定板3の一端縁25が、継手板5の内空側の内側縁に当接するように配置される。したがって、連結部材挿入用開口部4の開口端は継手板5の内面に臨むように配置されている。連結部材固定板3の一端縁25と継手板5は、溶接にて固定されると共に、連結部材固定板3の両側縁と主桁1の内側縁が溶接にて固定される。継手板5には、連結部材挿入用開口部4aが設けられている。この連結部材挿入用開口部4aは、連結部材固定板3の側から所定の深さに設けてあり、連結部材固定板3をセグメント本体に固定したとき連結部材挿入用開口部4と連結部材挿入用開口部4aが連通する。連結部材固定板3の外面に露出する面には、必要に応じて防食加工が施される。
【0031】
そして、図1、図3に示すように周方向に隣接するセグメント20の端部同士を当接させたとき、両セグメントの継手板5における連結部材挿入用開口部4a同士が連通する。またこのとき、前記連結部材挿入用開口部4aを介して、両セグメント20における各連結部材固定板3の連結部材挿入用開口部4同士が連通する。この状態で、図5に示すT字形連結部材7のウエブ17を、周方向に隣接するセグメントの各々の連結部材挿入用開口部4と連結部材挿入用開口部4aに挿入できる。L字形連結部材12の場合も前記と同様である。
【0032】
T字形連結部材7のウエブ17を連結部材挿入用開口部4と連結部材挿入用開口部4aへ挿入するのは、連結部材固定板3の外面側から行う。また、連結部材固定板3の外面には、図2に示すように、連結部材固定板3が配置される部位に、該連結部材固定板3のフランジ19の厚み分の凹部21が形成されている。フランジ19は、この凹部21に位置して連結部材固定板3から出っ張らず、連結部材固定板3外面の平坦性が確保される。
【0033】
T字形連結部材7やL字形連結部材12のようにセパレート形の連結部材をセグメント幅方向に間隔をおいて用いる場合において、連結部材固定板3に前記の凹部21を設けない場合は、T字形連結部材7等のフランジ19が連結部材固定板3の外面に出っ張り、連結部材固定板3と連結部材のフランジ19とで囲まれる部分に空間ができる。この場合、空間部分には、線材または金網等を張り巡らしモルタルを流し込み、連結部材固定板3の平坦性を確保することで対処する。また、T字形連結部材7等のフランジ19が主桁1高さから飛び出さず、そのフランジ19の板厚により形成される空間が許容できる場合は、当該空間が許容できる方向からT字形連結部材7を挿入し、フランジ19の外縁側の鋼材表面が露出する部分に必要に応じて、防食仕様を施すなどして対処する。
【0034】
また、図2に示すように、スキンプレート2の内面には、T字形連結部材7のウエブ17の先端18が当接する連結部材受け材8が溶接にて固定される。連結部材受け材8は、T字形連結部材7やL字形連結部材12のウエブ17が直接スキンプレート2に接触し、継手部が曲げ変形を受けた際、スキンプレート2が面外へはらみ出すのを防ぐためにスキンプレート2へ設置するものである。
【0035】
連結部材受け材8には、図17、図18に示すように、位置決め溝16を設けるのが望ましい。この位置決め溝16にウエブ17を係合させることによって、ウエブ17の先端が確実に位置決めされるので、T字形連結部材7やL字形連結部材12に一層耐力を発揮させることができる。また、連結部材受け材8のスキンプレート2への溶接は、仮付け程度の最小限の溶接量とし、過大に溶接量を増やし、スキンプレート2の溶接歪が出ないようにするのがよい。また、T字形連結部材7やL字形連結部材12のウエブ17の先端18と連結部材受け材8の結合を確実にするために、図20に示すようにウエブ17の先端に雌ネジ22を設けると共に、図21に示すように連結部材受け材8にも位置決め溝16の内外に貫通するボルト挿入孔10を設けておくのが望ましい。そして、図19に示すように、連結部材のウエブ17の先端18を位置決め溝16に嵌合したうえ、連結部材受け材8の後側からボルト挿入孔10を通して雌ネジ22にボルト9を螺合することにより、連結部材のウエブ17と連結部材受け材8をしっかりと固定できる。これによりT字形連結部材7やL字形連結部材12は、継手部に作用する引っ張り荷重や曲げ荷重に対してより大きな耐力を発揮することができる。
【0036】
T字形連結部材7の連結部材挿入用開口部4と連結部材挿入用開口部4aへの挿入方法は、次のように行う。図1、図3に示すように、トンネル周方向に隣接するセグメント20の継手板5を突き合わせることにより、それぞれの継手板5の連結部材挿入用開口部4aと連結部材3の連結部材挿入用開口部4とが連通する。次に、T字形連結部材7またはL字形連結部材12を、トンネル周方向に隣接するセグメント20間に跨って配置し、そのウエブ17を連結部材3の連結部材挿入用開口部4と継手板5の連結部材挿入用開口部4aに挿入する。その後、ボルト9とナット28によりT字形連結部材7やL字形連結部材12のフランジ19を連結部材固定板3に固定する。ナット28は予め連結固定板3の裏側に溶接にて取り付けて置く。このようにボルト9とナット28を介してT字形連結部材7またはL字形連結部材12と連結部材固定板3を摩擦接合して継手部を構成する。これにより周方向に隣接するセグメント20の継手部に作用する引張り荷重、曲げ荷重に対して、継手部がセグメント本体と同程度の高耐力、高剛性を有するように構成にできる。
【0037】
T字形連結部材7は、図1、図3示すように、セグメント幅方向に荷重を分散させるため、複数所定の間隔を明けて設置することが望ましい。L字形連結部材12も前記と同様に複数所定の間隔を明けて設置するとよい。また、T字形連結部材7やL字形連結部材12は、形鋼を単独で用いるか、組み合わせて用いるとよく、このように形鋼を用いることでコスト低減が図れる。また、図5に示すT字形連結部材7を用いる場合は、H形鋼のウエブの中心を切断して用いれば、ビルドアップによらず安価に製造することができる。また、セグメントの平坦性を確保するために、ボルト取り付け部には、ボルトの頭部が面外に飛び出さないように、連結部材フランジ19に座刳りを設けることが望ましい。
【0038】
前記のように周方向に隣接するセグメント20の継手部を跨って、かつ、継手板5の連結部材挿入用開口部4aと連結部材固定板3の連結部材挿入用開口部4にフランジを挿通するT字形連結部材7を用いることで、T字形連結部材7の断面2次モーメントをかせぎ、曲げに対して高耐力の継手を実現することができる。継手部にセグメント本体と同等の曲げ耐力、曲げ剛性を実現するためには、T字形連結部材7のフランジ19とウエブ17の板厚、及びT字形連結部材7の数を適切に調整するのがよい。同一の鋼材量で安価に高耐力の継手を実現するためには、T字形連結部材7のフランジ19の厚みを増すのが望ましい。前記の事項はL字形連結部材12の場合も同様に当てはまる。またセグメント本体と同等のせん断耐力を実現するためには、L字形連結部材12またはT字形連結部材7あるいは後記の実施形態の連結部材におけるウエブの板厚を増すことが効果的である。このようにフランジとウエブが一体化した連結部材を用いることで、通常の板状の連結板を複数、フランジやウエブにばらばらに配置するよりも、効率的に連結部の補強が可能となる。
【0039】
また、継手部の止水性を向上させるためには、図5、図6に示すように、T字形連結部材7及びL字形連結部材12のフランジの内面にボルト挿入孔10を取り囲むように止水材取り付け溝23を設け、この溝23に止水材11を貼着するようにしてもよい。この際、ボルト頭部の下にワッシャー状の止水ゴムを挟むとより好適である。これによりT字形連結部材7のフランジ19と連結部材固定板3のボルト挿入孔10から水が浸入することがなくなり、継手部の止水性を向上させることが可能となる。
【0040】
連結部材は、T字形連結部材7やL字形連結部材12の他に、これらを連結して一体化した連結部材とすることもできる。その例を図7〜図11に示す実施形態について説明する。各図には、複数ウエブ一体形の連結部材13が示されている。この複数ウエブ一体形の連結部材13は、広幅の1枚のフランジ19に対して3枚のウエブ17が一体に設けられている。フランジ19には、ボルト挿入孔と止水材11が設けられている。ボルト挿入孔10は、図9のように、ウエブ17間に1列設けてもよい。また、セグメントに作用する引張りまたは曲げ荷重が多大なときは、複数列のボルト9を使用できるよう、図11のようにウエブ17間において、複数列のボルト挿入孔10をフランジ19に設けてもよい。
【0041】
この実施形態においても、複数ウエブ一体形の連結部材13の各ウエブ17を、図7、図8に示すように、周方向に隣接するセグメント20における各継手板5の連結部材挿入用開口部4aと連結部材挿入用開口部4に挿入し、ボルト9を介して複数ウエブ一体形の連結部材13と連結部材固定板3とを摩擦接合する。これによりトンネル周方向に隣接するセグメントの継手部に作用する引張り荷重、曲げ荷重、せん断荷重に対して、継手部の強度がセグメント本体と同程度に構成できる。
【0042】
複数ウエブ一体形の連結部材13は、広幅のフランジ19であるので、該フランジの面積が増大する分、連結部材13の剛性を増すことができ、T字形連結部材7やL字形連結部材12に比べて、継手部の耐力を増すうえで有利である。また、セグメント20の両側の主桁1に延びる広幅のフランジ19を用いることで、この広幅のフランジ19と連結部材固定板3の外面との段差による空間をなくすることができて、セグメント外面の平坦性を確保するうえで、T字形連結部材7やL字形連結部材12に比べて有利である。なお、連結部材のセグメント継手部への取り付け作業を容易にするうえでは、図9に示す複数ウエブ一体形の連結部材13よりも、図5、図6に示すT字形連結部材7やL字形連結部材12などの個別形の連結部材を用いることが望ましい。
【0043】
また、セグメント20の継手部において、セグメント周方向に軸力が卓越する場合は、図12に示すように、継手板5と主桁1とスキンプレート2と連結部材固定板3とで囲まれてなるウエブ挿入部24に中詰めコンクリート6を充填した構造とする。この場合は、継手板5と主桁1とスキンプレート2からなる鋼殻内に中詰めコンクリート6を充填する際、連結部材の各ウエブ17が挿入できるだけの幅狭の間隙を形成するように中詰めコンクリート6を充填しておく。また、軸力が卓越しない場合は、図14、図15に示すように、ウエブ挿入部24に中詰めコンクリートを打設せず空洞のままにしておいてもよい。この場合、図に示すように鋼殻内に中詰めコンクリート境界板15を設けておき、中詰めコンクリート6がウエブ挿入部24に廻り込まないようにして空洞を残しておく。このようにすることで連結部材のウエブ17挿入用の開口部の加工手間を省略できる。
【0044】
図22と図23は、さらに他の実施形態を示す。この実施形態によると、セグメント桁高方向で、正曲げ、負曲げに対して均等な継手耐力を実現することができる。図23の継手構造にあっては、セグメント20の内縁側及び外縁側の両側に連結部材固定板3を設ける。さらに、この内縁側と外縁側の連結部材固定板3に開口した連結部材挿入用開口部4からそれぞれ形状の等しいT字形連結部材7のウエブ17を挿入し、その先端18を相手側の連結部材挿入用開口部4に挿入する。前記の構成にするため連結部材挿入用開口部4は、2枚のウエブ17が同時に挿入できる開口部幅に設けておく。さらに、連結部材固定板3とT字形連結部材7のフランジ19をボルト9とナット28で摩擦接合する。このように構成することで、断面中立軸を挟んで内外側が略同じ構造となり、セグメント桁高方向で、正曲げ、負曲げに対して均等な継手耐力を実現することができる。前記の形態は、2つのT字形連結部材7のフランジ19がセグメント桁高方向両端に配置されているのでセグメント継手部に作用する曲げ荷重が大きな場合に適している。
【0045】
また、セグメント継手に作用する曲げ荷重が大きくない場合には、図22に示す構造としてもよい。この場合はセグメントの内縁側及び外縁側の両側に連結部材固定板3を設ける。そして、各連結部材固定板3に開口した連結部材挿入用開口部4からそれぞれ形状の等しいT字形連結部材7のウエブ17を挿入し、かつ、内縁側から挿入したT字形連結部材7のウエブ17と外縁側から挿入したT字形連結部材7のウエブ17の先端18同士を突き合わせる。さらに連結部材固定板3とT字形連結部材7のフランジ19をボルト9で摩擦接合する。このように構成することで、継手部は、断面中立軸を挟んで対称構造となり、セグメント桁高方向で、正曲げ、負曲げに対して均等な継手耐力を実現することができる。
【0046】
なお、図22と図23に示す構成において、隣接するT字形連結部材7のフランジ19間には、そこに形成される空間を埋めるようにモルタル等の充填材27が充填されている。これによりT字形連結部材7のフランジ19と連結部材固定板3との間に形成される段差部が解消され外部の平坦性が確保される。
【0047】
また、図22と図23においては、セグメント20の内縁側と外縁側の両側からT字形連結部材7のウエブ17を継手板5の連結部材挿入用開口部4aに挿入することになる。このため、連結部材挿入用開口部4aによって継手板5が分断されるが、断面剛性の大きいT字形連結部材7のウエブ17とフランジ19が周方向に隣接するセグメント間を跨いで配設されることで、継手部の高剛性、高耐力は十分に確保される。
【0048】
本発明は、ボックスカルーバートなどを構成するフラットなセグメントを組付ける場合の継手部に適用できる。また、実施形態を適宜設計変更して実施することはよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係るセグメント継手部の斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】連結部材固定板の平面図である。
【図5】T字形連結部材の斜視図である。
【図6】L字形連結部材の斜視図である。
【図7】他の実施形態として、図9に示す広幅のフランジに複数のウエブを設けた複数ウエブ一体形の連結部材を用いたセグメント継手部の断面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】複数ウエブ一体形でかつ単列のボルト挿入孔を設けた例の連結部材の斜視図である。
【図10】複数ウエブ一体形の連結部材に組み合わせる連結部材固定板の平面図である。
【図11】複数ウエブ一体形でかつ複数列のボルト挿入孔を設けた例の連結部材の斜視図である。
【図12】連結部にコンクリートを中詰めする場合の連結部材装着前のセグメント継手部の斜視図である。
【図13】図12における継手板の正面図である。
【図14】連結部にコンクリートを中詰めしない場合の連結部材装着前のセグメント継手部の斜視図である。
【図15】図14の平面図である。
【図16】中詰めコンクリート境界板の斜視図である。
【図17】連結部材受け材の斜視図である。
【図18】連結部材のウエブを連結部材受け材の溝に嵌合した態様の斜視図である。
【図19】図20の連結部材のウエブと図21の連結部材受け材を組み合わせたセグメント継手部の平面図である。
【図20】先端に雌ネジを有する連結部材のフランジの斜視図である。
【図21】ボルト挿入孔を有する連結部材受け材の斜視図である。
【図22】他の実施形態として、セグメントの内縁側及び外縁側から断面中立軸を挟んで対称となる連結部材を挿入部に挿入した態様のセグメント継手部の断面図である。
【図23】他の実施形態として、セグメントの内縁側及び外縁側から同じ形状の連結部材を挿入部に挿入した態様のセグメント継手部の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 主桁
2 スキンプレート
3 連結部材固定板
4 連結部材固定板に設けた連結部材挿入用開口部
4a 継手板に設けた連結部材挿入用開口部
5 継手板
6 中詰めコンクリート
7 T字形連結部材
8 連結部材受け材
9 ボルト
10 ボルト挿入孔
11 止水材
12 L字形連結部材
13 複数ウエブ一体形の連結部材
14 座刳り
15 中詰めコンクリート境界板
16 連結部材位置決め溝
17 連結部材のウエブ
18 連結部材のウエブの先端
19 連結部材のフランジ
20 セグメント
21 凹部
22 雌ネジ
23 止水材取り付け溝
24 ウエブ挿入部
25 一端縁
26 他端縁
27 モルタル等の充填材
28 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼殻内にコンクリートを充填してなる複数のセグメントを周方向と軸方向に結合して構築した構造物の前記セグメントの連結構造において、
前記セグメントの主桁と継手板に連結部材固定板を固着すると共に、周方向に隣接する前記セグメントの継手板同士を突き合わせたうえ、前記各連結部材固定板に設けた連結部材挿入用開口部と前記各継手板に設けた連結部材挿入用開口部に、セグメントの内縁側と外縁側の一方または両方から連結部材のウエブを挿入し、連結部材のフランジを前記連結部材固定板にボルトにて摩擦接合したことを特徴とするセグメントの連結構造。
【請求項2】
前記連結部材は、T字形連結部材またはL字形連結部材または、広幅フランジに複数のウエブを設けてなる複数ウエブ一体形の連結部材で構成されていることを特徴とする請求項1記載のセグメントの連結構造。
【請求項3】
前記連結部材に形鋼を用いることを特徴とする請求項1または2記載のセグメントの連結構造。
【請求項4】
連結部材固定板と接する側の前記連結部材のフランジ外面に止水材が貼着されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項にセグメントの連結構造。
【請求項5】
セグメントのスキンプレートの内側に連結部材受け材が固着されてなり、セグメントの内縁側に設けた前記連結部材固定板の連結部材挿入用開口部から挿入される前記連結部材のウエブ先端を前記連結部材受け材に当接したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項にセグメントの連結構造。
【請求項6】
前記連結部材のウエブ先端は、前記連結部材受け材における連結部材用の位置決め溝に係合されていることを特徴とする請求項5に記載のセグメントの連結構造。
【請求項7】
前記連結部材のウエブ先端は、前記連結部材受け材における連結部材用の位置決め溝に係合されたうえ、ウエブ先端と連結部材受け材とがボルト接合されていることを特徴とする請求項6に記載のセグメントの連結構造。
【請求項8】
セグメントの内縁側及び外縁側に連結部材固定板を設けると共に、連結部材固定板の連結部材挿入用開口部に前記セグメントの内縁側及び外縁側から同一形状の連結部材のウエブを挿入し、該ウエブの先端を、相手側の連結部材固定板に設けられた連結部材挿入用開口部に挿入したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項にセグメントの連結構造。
【請求項9】
セグメントの内縁側及び外縁側に連結部材固定板を設けると共に、連結部材固定板の連結部材挿入用開口部に前記セグメントの内縁側及び外縁側から同一形状の連結部材のウエブを挿入し、該ウエブの先端を相手側のウエブの先端と突き合わせたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のセグメントの連結構造。
【請求項10】
主桁とスキンプレートと継手板と連結部材固定板とで囲まれる連結部材のウエブ挿入部が空洞とされ、またはウエブ挿入用の間隙を形成して中詰めコンクリートが充填されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のセグメントの連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−291534(P2006−291534A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112115(P2005−112115)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】