説明

セグメント搬送システム

【課題】後続台車の側方を通過させてセグメントを設置箇所にスムーズに移動させ、後続台車の後方においては作業員のスムーズな移動を可能にするセグメント搬送システムを提供する。
【解決手段】搬送軌道15の敷設領域を、搬送軌道15が単独でトンネル坑内14の底部中央部分に敷設される本線部Aと、後続台車用軌道19と搬送軌道19とが併設されて搬送軌道15が片側部分に配置される併設部Bと、本線部Aと併設部Bとの間に介在して中央部分から片側部分に向けて斜めに延設する路線変更部Cとに区画する。本線部Aの枕木16の長さを短く留めて、本線部Aの枕木16を併設部Bの枕木17よりも低い位置に設置することにより、本線部Aの枕木16上に架設される板状部材の上方に所定高さの作業員の移動空間を確保する。搬送台車12は、段差解消手段によって本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木17との高低差によって生じた搬送軌道15の段差を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメント搬送システムに関し、特に、シールド工事において形成された円形断面のトンネル坑内の底部に設置した枕木上の搬送軌道に案内させて、搬送台車によりセグメントをセグメント設置箇所に搬送するためのセグメント搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、シールド掘削機の先端の切端面を、泥土、泥水、圧気等によって押さえ付けつつカッターによって地山を掘削すると共に、シールド掘削機の後方にセグメントによるトンネル覆工体を組み立てながら、発進立坑から到達立坑に向けて、地中にトンネルを形成してゆく工法であり、都市部や平野部における主要なトンネル工事のための工法として広く採用されている。
【0003】
このようなシールド工法におけるシールド工事では、形成したトンネル坑内に、掘削土砂を排除するための送・排土管等を配管する他、シールド掘削機に後続する、運転台車、プラント台車、バッテリー台車、送配電設備用台車等の後続台車や、発進立坑からセグメント設置箇所にセグメントを搬送するための搬送台車等を走行移動させる軌道を設ける必要がある。
【0004】
ここで、後続台車や搬送台車等を走行移動させる軌道は、円形断面を有するシールドトンネルのトンネル坑内の底部における、弦に相当する位置に設置した枕木の上に、一対のレールを敷設することによって設けられるが、特に、例えばセグメントの外径が2000mm程度、内径が1800mm程度の大きさの小口径のシールドトンネルの場合、例えば一対のレールの間に設置した足場板の上を、作業員が立った状態のまま移動できるように、枕木の幅をできるだけ小さくして、枕木をトンネル坑内の底部のできるだけ低い位置に設置することが望ましい。
【0005】
枕木をトンネル坑内の底部のできるだけ低い位置に設置する場合、搬送台車に載置された状態で搬送軌道を介して発進立坑からセグメント設置箇所に搬送されるセグメントは、同じ軌道の上を移動するシールド掘削機の後続台車の位置まで送られた後、これらの後続台車を追い越してセグメントの設置箇所まで移動させる必要があり、このようなセグメントの移動をスムーズに行えるようにする技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
シールド掘削機の後続台車の位置までセグメントを搬送した後、後続台車を追い越して設置箇所までセグメントを移動させる特許文献1等に記載の方法では、後続台車や搬送台車等の構成や作業工程が複雑になると共に、特に小口径のシールドトンネルの場合には、セグメントを通過させる後続台車の周囲とトンネル内周面との間の隙間が狭くなることから、セグメントの大きさや形状に制約を受け易くなる。また、後続台車にセグメントを運搬するためのローラーコンベヤや後続台車上から降ろすためのリフトを設置するなど、特別な機材が必要となる。さらに、後続台車の脇を作業員が移動するのが困難になる。
【特許文献1】特開2006−188907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに対して、一般に、シールド掘削機の後続台車を走行させる後続台車用の軌道と、セグメントの搬送台車を走行させる搬送軌道とを併設させて枕木の上に設置し、搬送軌道に沿って搬送台車をそのままの状態で移動させることにより、後続台車の側方を通過させてセグメントをこれの設置箇所までスムーズに搬送できるようにすることが考えられている。
【0008】
しかしながら、後続台車を走行させる後続台車用の軌道とセグメントの搬送台車を走行させる搬送軌道とを枕木の上に併設すると、枕木の長さを長くする必要を生じて、トンネル坑内の底部における枕木の設置高さが高くなり、特に小口径のシールドトンネルの場合には、枕木の上方に作業員が立った状態のまま移動できるような空間を確保することができなくなる。したがって、発進立坑の坑口からシールド掘削機による掘削箇所まで、例えば数100m〜数km程度に亘る長い距離を作業員が移動することが困難になり、また作業効率も低下することになる。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、トンネルの坑口側から搬送されるセグメントを、後続台車の側方を通過させてこれの設置箇所にスムーズに移動させることができると共に、後続台車の後方のトンネル坑内においては、枕木の上方に相当の空間を確保して、作業員のスムーズな移動を可能にすることのできるセグメント搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シールド工事において形成された円形断面のトンネル坑内の底部に設置した枕木上の搬送軌道に案内させて、搬送台車によりセグメントを坑口側からシールド掘削機近傍のセグメント設置箇所に搬送するためのセグメント搬送システムであって、前記搬送軌道の敷設領域を、前記坑口側から前記シールド掘削機側に向けて前記搬送軌道が単独で前記トンネル坑内の底部中央部分に敷設される本線部と、前記シールド掘削機に後続配置された後続台車を案内する後続台車用軌道と前記搬送軌道とが併設されて前記搬送軌道が前記トンネル坑内の底部片側部分に配置される併設部と、前記本線部と前記併設部との間に介在して前記搬送軌道が前記トンネル坑内の底部中央部分から底部片側部分に向けて斜めに延設する部分を含む路線変更部とに区画し、前記本線部の枕木の長さを前記併設部の枕木よりも短く留めて、前記本線部の枕木を前記併設部の枕木よりも低い位置に設置することにより、前記本線部の枕木上に架設される移動用の板状部材の上方に所定高さの作業員の移動空間を確保すると共に、前記搬送台車は、段差解消手段によって前記本線部の枕木と前記併設部の枕木との高低差によって生じる搬送軌道の段差を解消して、前記本線部の搬送軌道から前記併設部の搬送軌道に移動するセグメント搬送システムを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
ここで、上記記載における、本線部のトンネル坑内に作業員の移動空間を確保するための、枕木上に架設される移動用の板状部材の上方の所定高さとは、作業員が直立して、或いは僅かにかがんだ状態で歩ける程度の高さ以上の高さである。
【0012】
そして、本発明のセグメント搬送システムでは、前記段差解消手段は、前記路線変更部の搬送軌道を前記併設部の搬送軌道と同じ高さに設置すると共に、前記本線部での搬送を、前記本線部の搬送軌道上を移動可能な本線部台車と、前記併設部の搬送軌道と同じ高さに配置されて前記本線部台車の上部に取り付けられた搬送台車用軌道上を移動可能な、セグメントを載置した前記搬送台車とからなる2段構造の台車によって行い、前記本線部と前記路線変更部との境界部分において、前記搬送台車を前記搬送台車用軌道から前記路線変更部の前記搬送軌道に受け渡すことにより、前記本線部の枕木と前記併設部の枕木との高低差によって生じる搬送軌道の段差を解消するようにすることが好ましい。
【0013】
また、本発明のセグメント搬送システムでは、前記段差解消手段は、前記路線変更部の搬送軌道を、前記本線部の搬送軌道の高さ位置から前記併設部の搬送軌道の高さ位置に向けて傾斜する勾配軌道とすることによって構成され、前記路線変更部と前記併設部との境界部分において、前記搬送台車を前記勾配軌道から前記併設部の搬送軌道に受け渡すことにより、前記本線部の枕木と前記併設部の枕木との高低差によって生じる搬送軌道の段差を解消するようにすることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明のセグメント搬送システムでは、前記段差解消手段は、前記路線変更部の搬送軌道を前記併設部の搬送軌道と同じ高さに設置すると共に、前記路線変更部に隣接する部分おける前記本線部の搬送軌道を、前記本線部の搬送軌道の高さ位置から前記併設部の搬送軌道の高さ位置に向けて傾斜する勾配軌道とすることによって構成され、前記本線部と前記路線変更部との境界部分において、前記搬送台車を前記勾配軌道から前記路線変更部の搬送軌道に受け渡すことにより、前記本線部の枕木と前記併設部の枕木との高低差によって生じる搬送軌道の段差を解消するようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセグメント搬送システムによれば、トンネルの坑口側から搬送されるセグメントを、後続台車の側方を通過させてこれの設置箇所にスムーズに移動させることができると共に、トンネルの全長の大部分を占める後続台車の後方のトンネル坑内においては、枕木の上方に相当の空間を確保して、作業員のスムーズな移動を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント搬送システムは、例えば図1に示すようなシールド工法によるシールド工事において、トンネル10の坑口側から搬送されるセグメント11を、搬送台車12を用いてシールド掘削機13の直後のセグメント11の設置箇所にスムーズに移動させると共に、シールド掘削機13の後方の、後述するトンネル坑内14の本線部Aにおいては、搬送台車12を走行させる搬送軌道15を支持する枕木16の上方に相当の空間を確保して、作業員のスムーズな移動を確保できるようにするものである。
【0017】
すなわち、本実施形態では、シールド工法は、例えば泥水加圧式、泥土加圧式等の公知のシールド工法であると共に、例えばセグメントは、スチールセグメントであって、外径が2000mm程度、リブの内径が1800mm程度の大きさの小口径のシールドトンネル10を構築するものであり、このような小口径のシールドトンネル10では、シールド工事を行う際のトンネル坑内14の作業空間が狭く、セグメント11をシールド掘削機13の直後の設置箇所に効率良く搬送することが困難であることから、セグメント11を搬送する搬送台車12を走行させる搬送軌道15の配設位置等を工夫することにより、セグメント11の設置箇所への搬送をスムーズに行わせると共に、トンネル坑内14の主要部分となる、相当の長さ(例えば数100m〜数km程度)の本線部Aにおいては、作業員のスムーズな移動が阻害されないようにするために、本実施形態のセグメント搬送システムを採用したものである。
【0018】
そして、本実施形態のセグメント搬送システムは、図2〜図6にも示すように、シールド工事において形成された円形断面のトンネル坑内14の底部に設置した枕木16,17上の搬送軌道15(図5,図6参照)に案内させて、搬送台車12によりセグメント11を坑口側からシールド掘削機13近傍のセグメント設置箇所に搬送するためのシステムであって、搬送軌道15の敷設領域を、坑口側からシールド掘削機13側に向けて搬送軌道15が単独でトンネル坑内14の底部中央部分に敷設される本線部Aと、シールド掘削機13に後続配置された後続台車18を案内する後続台車用軌道19と搬送軌道15とが併設されて搬送軌道15がトンネル坑内14の底部片側部分に配置される併設部Bと、本線部Aと併設部Bとの間に介在して搬送軌道15がトンネル坑内14の底部中央部分から底部片側部分に向けて斜めに延設する部分を含む路線変更部Cとに区画し(図1,図2参照)、本線部Aの枕木16の長さを併設部Bの枕木17よりも短く留めて(図5,図6参照)、本線部Aの枕木16を併設部Bの枕木17よりも低い位置に設置することにより、本線部Aの枕木16上に架設される移動用の板状部材21の上方に所定高さ(作業員が直立して、或いは僅かにかがんだ状態で歩ける高さ以上の高さ)の作業員の移動空間を確保すると共に、搬送台車12は、段差解消手段によって本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木17との高低差によって生じる搬送軌道15の段差を解消して、本線部Aの搬送軌道15から併設部Bの搬送軌道15に移動するようになっている((図3,図4参照)。
【0019】
また、本実施形態では、段差解消手段は、図3及び図4に示すように、路線変更部Cの搬送軌道15を併設部Bの搬送軌道15と同じ高さに設置すると共に、本線部Aでの搬送を、本線部Aの搬送軌道15上を移動可能な本線部台車12aと、併設部Bの搬送軌道15と同じ高さに配置されて本線部台車12aの上部に取り付けられた搬送台車用軌道20上を移動可能な、セグメントを載置した搬送台車12とからなる2段構造の台車によって行い、本線部Aと路線変更部Cとの境界部分において、搬送台車12を搬送台車用軌道20から路線変更部Cの搬送軌道15に受け渡すことにより、本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木との高低差によって生じる搬送軌道15の段差を解消するようになっている。
【0020】
本実施形態では、枕木16,17は、例えばH形鋼や溝形鋼等からなり、図5及び図6に示すように、円形断面のトンネル坑内14の底部において、長手方向をトンネル10の軸方向と垂直に配置すると共に、既に設置されたセグメント11’によるトンネル内周面に、固定ボルト等を用いて両端が支持固定されることにより、その幅に応じた弦の高さ位置に配置されて、単純ばり状に取り付けられる。すなわち、本線部Aに取り付けられる枕木16は、例えば長さが1000mm程度の長さを有していることにより、その上面の搬送軌道15の取付け面がトンネル10の中心から850mm程度の高さとなるよう設置される。また併設部Bに取り付けられる枕木17は、例えば長さが1700mm程度の、枕木16よりも長い長さを有していることにより、その上面の搬送軌道15の取付け面がトがトンネル10の中心から550mm程度の高さとなるように設置される。これによって、本線部Aに設置される枕木18aと併設部Bに設置される枕木18bとの間に例えば 300mm程度の高低差が生じると共に、これらの枕木16,17の上面に敷設される搬送軌道15にもまた、例えば300mm程度の高低差が生じることになる。
【0021】
なお、本実施形態では、路線変更部Cにおいては、併設部Bに設置される枕木17と同様の長さの枕木17’が用いられ、この枕木17’は、併設部Bに設置される枕木17と同じ高さに設置されると共に、この枕木17’の上面に敷設される搬送軌道15もまた、併設部Bの搬送軌道15と同じ高さに設置されることにより、本線部Aに設置される搬送軌道15との間に、例えば300mm程度の高低差の段差を生じることになる。
【0022】
また、これらの枕木16,17,17’は、本線部A、併設部B、路線変更部Cにおいて、トンネル10の軸方向に例えば1000mm程度のピッチで等間隔をおいて設置され、これらの枕木16,17,17’に支持させて、搬送軌道17がトンネル10の軸方向に延設するように敷設される。
【0023】
搬送軌道15は、一対のレール部材15a,15aからなり、これらのレール部材15a,15aは、例えば600mm程度の中心間隔で平行に配置されて各枕木16,17,17’に固定されることにより、搬送台車12を走行移動させるための搬送軌道15を構成する。また一対のレール部材15a,15aの間の間隔部分には、各枕木16,17,17’に支持させて、例えば鋼製足場板21を移動用の板状部材として枕木16,17,17’上に設置することにより、例えば作業員が移動するための通路を形成することが可能である。
【0024】
本実施形態では、搬送軌道15が単独でトンネル坑内14の底部中央部分に敷設される本線部Aは、発進立坑の坑口側からシールド掘削機13側に向けて形成された、トンネル坑内14の全長の大部分を占める領域であり、この本線部Aにおいては、上述のように、枕木16がトンネル坑内14の底部中央部分の低い位置に設置されることにより、枕木16の上方に、好ましくは作業員が直立して歩くことのできる高さの移動空間が確保される(図5参照)。
【0025】
シールド掘削機13に後続配置された後続台車18を案内する後続台車用軌道19と搬送軌道15とが併設される併設部Bは、例えばシールド掘削機13の後方約10〜50m程度の領域であり、この併設部Bにおいては、上述のように、長さの長い枕木17がトンネル坑内14の底部における本線部Aの枕木16よりも高い位置に配置されることにより、後続台車用軌道19と搬送軌道15とを併設するのに十分な幅が確保される。また、この併設部Bにおいては、搬送軌道15が、トンネル坑内14の底部片側部分に片寄せて配置されると共に、これの反対側の部分には、搬送軌道15と平行に配置されて、一対のレール部材19a,19aからなる後続台車用軌道19が設置される。
【0026】
なお、併設部Bにおける搬送軌道15と後続台車用軌道19とは、シールド掘削機13によるトンネル10の掘削作業に伴って、シールド掘削機13と後続台車18との間の間隔部分で、順次前方に枕木17を取り付けると共に、レール部材15a,15a及び19a,19aを継ぎ足しながら順次前方に敷設されてゆく。また、後続台車用軌道19は、シールド掘削機13の掘進に伴って前方に移動してゆく後続台車18を、シールド掘削機13の後方に移動可能に載置しておくのに十分な長さを有していれば良く、例えば10m程度の長さに敷設されると共に、後続台車18の前方への移動によって不要になった後方部分の後続台車用軌道19は、後述する所定スパン毎に行われる、路線変更部Cの段取り替えの際に、順次撤去されることになる。
【0027】
本線部Aと併設部Bとの間に介在する路線変更部Cは、例えば約15〜20m程度の領域であり、この路線変更部Cにおいては、上述のように、長さの長い枕木17’がトンネル坑内14の底部における本線部Aの枕木16よりも高い位置に配置されることにより、路線変更部Cの搬送軌道15が併設部Bの搬送軌道15と同じ高さに設置される(図3参照)。また、この路線変更部Cにおいては、搬送軌道15は、トンネル坑内14の底部中央部分から底部片側部分に向けて斜めに延設する部分を含む平面形状に敷設されることにより、本線部Aの搬送軌道15と併設部Bの搬送軌道15とを平面的に接続する(図3参照)。
【0028】
なお、本実施形態では、シールド掘削機13によるトンネル10の掘削作業に伴って、後続台車18の後方に残置される後続台車用軌道19の長さが、例えば路線変更部Cの長さに相当する例えば10m程度になったら、このような長さを1スパンとして、後続台車用軌道19が残置された部分の当該後続台車用軌道19や搬送軌道15等を一旦撤去して、路線変更部Cを1スパン分前方にスライド移動すると共に、本線部Aを前方に1スパン分延長する段取り替えの作業が行われる。
【0029】
本実施形態では、路線変更部Cの搬送軌道15を併設部Bの搬送軌道15と同じ高さに設置することと共に段差解消手段を構成する、2段構造の台車は、図1、図3、及び図4に示すように、本線部Aの搬送軌道15に沿って移動可能な、トンネル10の軸方向に複数連設して設けられた例えば220cm程度の長さの本線部台車12aと、本線部台車12aの上部に取り付けられた搬送台車用軌道20に沿って移動可能な、例えば200cm程度の長さの3台の搬送台車12とからなる。また、搬送台車用軌道20には、搬送台車12の後方(トンネル10の坑口側)に配置されて、搬送台車12を前方(シールド掘削機側)に押し出すバッテリーロコ22が設置されている。
【0030】
搬送台車12の上にセグメント11を載置すると共に、各搬送台車12及びバッテリーロコ22を間隔をおいて本線部台車12aの搬送台車用軌道20上に仮固定した状態で、2段構造の台車をトンネル10の坑口側からシールド掘削機13側に向けて、トンネル坑内14の底部中央部分に敷設した本線部Aの搬送軌道15を介して走行移動させる。2段構造の台車が、本線部Aと路線変更部Cとの境界部分に至ったら、搬送台車12及びバッテリーロコ22の仮固定を解除すると共に、バッテリーロコ22を駆動して3台の搬送台車12を路線変更部C側に押し出す。これによって、路線変更部Cの搬送軌道15と同じ高さに設置された搬送台車用軌道20から、セグメント11を載置した搬送台車12が路線変更部Cに受け渡されることになり、路線変更部Cを介して本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木17との高低差によって生じる搬送軌道15の段差を容易に解消することが可能になる。
【0031】
また、路線変更部Cに受け渡されたセグメント11を載置した搬送台車12は、路線変更部Cと同じ高さの併設部Bの搬送軌道15を走行移動することにより、後続台車用軌道19に設置された後続台車18の側方を、安定したそのままの状態で通過することができるので、セグメント11をシールド掘削機13の直後の設置箇所までスムーズに搬送することが可能になる。
【0032】
すなわち、本実施形態のセグメント搬送システムによれば、搬送軌道15の配設位置等を工夫すると共に2段構造の台車を用いるだけの安価な段差解消手段によって、本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木17との高低差を解消することが可能になり、且つトンネル10の坑口側から搬送されるセグメント11を、本線部A、路線変更部C、及び併設部Bでの搬送を連続させつつ、後続台車18の側方を通過させてこれの設置箇所にスムーズに移動させることが可能になる。また後続台車18の後方の、トンネル坑内14の全長の大部分の領域を占める本線部Aにおいては、枕木16の上方に相当の空間を確保して、作業員のスムーズな移動を可能にすることができる。さらに、本線部Aの枕木16が短いので材料が少なくて済み、枕木16の支点間隔が短くなるので強度の低い枕木16を用いることも可能になる。
【0033】
また、本実施形態では、併設部Bまで移動する搬送台車12は、2段構造の台車の上段部分として、本線部台車12aの搬送台車用軌道20上に設置されており、また本線部Aにおいては、枕木16及び搬送軌道15が低い位置に設置されているので、本線部台車12a及び搬送軌道15を、例えばシールド掘進機13による掘削作業の終了後に、水道管等の敷設を行うための設備として有効利用して、軌道の盛り代え工事を省力できるようにすることが可能になる。すなわち、例えば図7(a)〜(c)に示すように、掘削作業の後の工事で水道管23等の運搬台車24が必要となる場合には、本線部Aの枕木16及び軌道15を、これらの設置時に水道管23等の敷設時に必要な高さ及び幅を備えるようにしておき、また例えば本線部台車12aを水道管23等に合わせた形状としておくことにより、本線部台車12aや搬送軌道15を運搬台車24等として有効利用することが可能になる。
【0034】
図8は、本発明の他の実施形態に係るセグメント搬送システムの要部を例示するものである。図8の実施形態では、本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木17との高低差によって生じる搬送軌道15の段差を解消する段差解消手段は、本線部Aと併設部Bとの間に介在して搬送軌道15がトンネル坑内14の底部中央部分から底部片側部分に向けて斜めに延設する(図2参照)路線変更部Cの当該搬送軌道15を、本線部Aの搬送軌道15の高さ位置から併設部Bの搬送軌道15の高さ位置に向けて傾斜する勾配軌道25とすることによって構成され、路線変更部Cと併設部Bとの境界部分において、1段構成の搬送台車12を勾配軌道25から併設部Bの搬送軌道15に受け渡すことにより、本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木17との高低差を解消するようになっている。ここで、勾配軌道25の傾斜は、3%以下とすることが好ましく、3%以下とすることにより、搬送台車12にラック・ピニオン機構を設けることが不要になる。
【0035】
図9は、本発明のさらに他の実施形態に係るセグメント搬送システムの要部を例示するものである。図9の実施形態では、本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木17との高低差によって生じる搬送軌道15の段差を解消する段差解消手段は、路線変更部Cの搬送軌道15を併設部Bの搬送軌道15と同じ高さに設置すると共に、路線変更部Cに隣接する部分おける本線部Aの搬送軌道15aを、本線部Aの搬送軌道15の高さ位置から併設部Bの搬送軌道15の高さ位置に向けて傾斜する勾配軌道26とすることによって構成され、本線部Aと路線変更部Cとの境界部分において、1段構成の搬送台車12を勾配軌道26から路線変更部Cの搬送軌道15に受け渡すことにより、本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木17との高低差を解消するようになっている。ここで、勾配軌道25の傾斜は、図8の実施形態と同様に、3%以下とすることが好ましく、3%以下とすることにより、搬送台車12にラック・ピニオン機構を設けることが不要になる。
【0036】
図8又は図9のセグメント搬送システムによっても、上記実施形態のセグメント搬送システムと略同様の作用効果が奏されると共に、より簡易且つ安価な構成によって、本線部Aの枕木16と併設部Bの枕木17との高低差によって生じる搬送軌道15の段差を解消することが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明は、セグメントの外径が2000mm程度、内径が1800mm程度の大きさの小口径のシールドトンネル以外の、その他の種々の口径のシールドトンネルを構築するためのシールド工事に適用することができる。また、例えば図10に示すように、併設部Bの枕木を落とし込み形式の枕木27として、併設部Bにおける作業員の移動を容易にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント搬送システムが適用されるシールド工事を説明する要部縦断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント搬送システムの構成を説明する要部平面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント搬送システムの構成を説明する要部縦断面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント搬送システムの構成を説明する要部縦断面図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント搬送システムの構成を説明する本線部の要部横断面図である。
【図6】本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント搬送システムの構成を説明する併設部の要部横断面図である。
【図7】搬送台車及び搬送軌道を、水道管の敷設を行うための設備として有効利用する状況を説明する、(a)はセグメント搬送時の横断面図、(b)は水道管搬送時の横断面図、(c)は水道管搬送時の縦断面図である。
【図8】本発明の好ましい他の実施形態に係るセグメント搬送システムの構成を説明する要部断面図である。
【図9】本発明の好ましいさらに他の実施形態に係るセグメント搬送システムの構成を説明する要部断面図である。
【図10】併設部における枕木の他の形態を例示する断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 トンネル
11 セグメント
12 搬送台車
12a 本線部台車
13 シールド掘削機
14 トンネル坑内
15 搬送軌道
15a 搬送軌道の路線変更部に隣接する部分
16 本線部の枕木
17 併設部の枕木
17’ 路線変更部
18 後続台車
19 後続台車用軌道
20 搬送台車用軌道
21 鋼製足場板(移動用の板状部材)
22 バッテリーロコ
23 水道管
24 運搬台車
25,26 勾配軌道
27 落とし込み形式の枕木
A 本線部
B 併設部
C 路線変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工事において形成された円形断面のトンネル坑内の底部に設置した枕木上の搬送軌道に案内させて、搬送台車によりセグメントを坑口側からシールド掘削機近傍のセグメント設置箇所に搬送するためのセグメント搬送システムであって、
前記搬送軌道の敷設領域を、前記坑口側から前記シールド掘削機側に向けて前記搬送軌道が単独で前記トンネル坑内の底部中央部分に敷設される本線部と、前記シールド掘削機に後続配置された後続台車を案内する後続台車用軌道と前記搬送軌道とが併設されて前記搬送軌道が前記トンネル坑内の底部片側部分に配置される併設部と、前記本線部と前記併設部との間に介在して前記搬送軌道が前記トンネル坑内の底部中央部分から底部片側部分に向けて斜めに延設する部分を含む路線変更部とに区画し、
前記本線部の枕木の長さを前記併設部の枕木よりも短く留めて、前記本線部の枕木を前記併設部の枕木よりも低い位置に設置することにより、前記本線部の枕木上に架設される移動用の板状部材の上方に所定高さの作業員の移動空間を確保すると共に、
前記搬送台車は、段差解消手段によって前記本線部の枕木と前記併設部の枕木との高低差によって生じる搬送軌道の段差を解消して、前記本線部の搬送軌道から前記併設部の搬送軌道に移動するセグメント搬送システム。
【請求項2】
前記段差解消手段は、前記路線変更部の搬送軌道を前記併設部の搬送軌道と同じ高さに設置すると共に、前記本線部での搬送を、前記本線部の搬送軌道上を移動可能な本線部台車と、前記併設部の搬送軌道と同じ高さに配置されて前記本線部台車の上部に取り付けられた搬送台車用軌道上を移動可能な、セグメントを載置した前記搬送台車とからなる2段構造の台車によって行い、前記本線部と前記路線変更部との境界部分において、前記搬送台車を前記搬送台車用軌道から前記路線変更部の前記搬送軌道に受け渡すことにより、前記本線部の枕木と前記併設部の枕木との高低差によって生じる搬送軌道の段差を解消する請求項1に記載のセグメント搬送システム。
【請求項3】
前記段差解消手段は、前記路線変更部の搬送軌道を、前記本線部の搬送軌道の高さ位置から前記併設部の搬送軌道の高さ位置に向けて傾斜する勾配軌道とすることによって構成され、前記路線変更部と前記併設部との境界部分において、前記搬送台車を前記勾配軌道から前記併設部の搬送軌道に受け渡すことにより、前記本線部の枕木と前記併設部の枕木との高低差によって生じる搬送軌道の段差を解消する請求項1に記載のセグメント搬送システム。
【請求項4】
前記段差解消手段は、前記路線変更部の搬送軌道を前記併設部の搬送軌道と同じ高さに設置すると共に、前記路線変更部に隣接する部分おける前記本線部の搬送軌道を、前記本線部の搬送軌道の高さ位置から前記併設部の搬送軌道の高さ位置に向けて傾斜する勾配軌道とすることによって構成され、前記本線部と前記路線変更部との境界部分において、前記搬送台車を前記勾配軌道から前記路線変更部の搬送軌道に受け渡すことにより、前記本線部の枕木と前記併設部の枕木との高低差によって生じる搬送軌道の段差を解消する請求項1に記載のセグメント搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−144451(P2008−144451A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332228(P2006−332228)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】