説明

セグメント

【課題】内面の周縁部に繊維補強材を集中的に備えて内面の周縁部の割れ欠けを防止できるセグメントを提供する。
【解決手段】本発明のセグメントは、シールドトンネルにおける筒状のトンネル壁体を形成する鉄筋コンクリート製のセグメント2であって、トンネル壁体の壁内面を形成する内面11の周縁部36に沿ったコンクリートの内部に繊維補強材30を備え、周縁部36での繊維補強材30の混在率が周縁部36以外の場所での繊維補強材30の混在率よりも大きいことを特徴とする。周縁部36に沿ったコンクリートの内部にのみ繊維補強材30を備えたことも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁体の壁内面を形成する内面の周縁部の割れ欠けを防止可能な鉄筋コンクリート製のセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、シールドトンネル工事は、シールドマシン1の後方に複数のセグメント2を接合して筒状のトンネル壁体3を組立て、このトンネル壁体3の前面4にシールドマシン1の推進ジャッキ5のピストン6の先端を接触させて、このトンネル壁体3でシールドマシン1の推進ジャッキ5の反力をとることによってシールドマシン1を推進させて地山100を掘削してからトンネル壁体3の前面4に次のトンネル壁体3を組立てる。以後、シールドマシン1の推進とトンネル壁体3の組立てとを繰り返してシールドトンネルのトンネル壁体3を構築する。
上述のように、シールドトンネルにおける筒状のトンネル壁体3を形成する鉄筋コンクリート製のセグメント2において、コンクリート内部に繊維を混在させたセグメントが知られている(例えば、特許文献1;2等参照)。
【特許文献1】特開2006−16900号公報
【特許文献2】特開2007−296803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
セグメントは、シールドマシンの推進時にセグメントに加わる力、シールドマシンのテールとセグメントの内面との干渉、地山からセグメントに加わる圧力などが原因となって、内面の周縁部が割れたり欠けたりする(以下、割れ欠けという)ことがある。しかしながら、上述した従来のセグメントは、内面の周縁部の割れ欠け防止を目的とした構成を備えておらず、内面の周縁部の割れ欠けを防止できない。即ち、上述した従来の特許文献1;2では、セグメントの内面の周縁部に繊維を集中的に設けるという技術的思想はなく、セグメントを形成するコンクリート中に繊維を混ぜているだけなので、繊維が内面の周縁部に集中的に配置された構成ではない。よって、内面の周縁部が繊維によって補強された構成のセグメントを得ることはできないので、内面の周縁部の割れ欠けを防止できない。
本発明は、内面の周縁部に繊維補強材を集中的に備えて内面の周縁部の割れ欠けを防止できるセグメントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のセグメントは、シールドトンネルにおける筒状のトンネル壁体を形成する鉄筋コンクリート製のセグメントであって、トンネル壁体の壁内面を形成する内面の周縁部に沿ったコンクリートの内部に繊維補強材を備え、周縁部での繊維補強材の混在率が周縁部以外の場所での繊維補強材の混在率よりも大きいことを特徴とする。
周縁部に沿ったコンクリートの内部にのみ繊維補強材を備えたことも特徴とする。
繊維補強材が、周縁部に沿ってコンクリートの内部に設けられた鉄筋に沿って設けられたことも特徴とする。
繊維補強材が、鉄筋に巻付けられて設けられたことも特徴とする。
繊維補強材が、複数の細状片と複数の細状片の中心を綴った紐とで形成された連続物であることも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のセグメントによれば、内面の周縁部での繊維補強材の混在率が周縁部以外の場所での繊維補強材の混在率よりも大きいので、繊維補強材により内面の周縁部の割れ欠けを防止できるセグメントを得ることができる。
周縁部に沿ったコンクリートの内部にのみ繊維補強材を備えたので、コンクリートの内部全体に繊維を混在させたセグメントに比べて安価で、かつ、内面の周縁部の割れ欠けを防止できるセグメントを得ることができる。
繊維補強材が、周縁部に沿ってコンクリートの内部に設けられた鉄筋に沿って設けられたので、繊維補強材を周縁部のコンクリートの外面に近い側に位置させることができて、内面の周縁部の割れ欠けを防止できるセグメントを得ることができる。
繊維補強材が、鉄筋に巻付けられて設けられたので、繊維補強材と鉄筋との結合が強固となり、流し込まれたコンクリートによって繊維補強材が鉄筋よりはずれて内面の周縁部より離れた位置に移動してしまうようなことを防止でき、繊維補強材が内面の周縁部に集中的に配置されて内面の周縁部が繊維補強材によって補強されたセグメントを得ることができる。
繊維補強材が、複数の細状片と複数の細状片の中心を綴った紐とで形成された連続物であることにより、紐と鉄筋とを結束線などで連結することで連続物を鉄筋に沿って取り付けたり、紐を鉄筋に巻き付けることで連続物を鉄筋に取り付けることができるので、連続物と鉄筋との結合が強固とすることができる。これにより、繊維補強材が内面の周縁部に集中的に配置されて内面の周縁部が繊維補強材によって補強されたセグメントを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1乃至図5、及び図7は本発明の最良の形態1を示し、図1はセグメントを示し、図2はセグメントの一部を破断して示し、図3(a)はセグメントを側面から見て示し、図3(b)はセグメントを内面側から平面視して示し、図3(c)は図3(a)のA−A断面を示し、図4(a)はセグメントの断面を示し、図4(b)は図3(a)のB−B断面を示し、図5はセグメントの作成手順を示し、図7は繊維補強材の連続物を示す。尚、図8と同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
【0007】
シールドトンネルにおける筒状のトンネル壁体3を形成する鉄筋コンクリート製のセグメント2は、図1;2に示すように、トンネル壁体3の壁内面を形成する弧状の内面11と、弧の中心が内面11と同じでトンネル壁体3の壁外面を形成する弧状の外面12と、内面11の弧の一端縁17と外面12の弧の一端縁18とを繋ぐ一端側端面13と、内面の弧の他端縁19と外面12の弧の他端縁20とを繋ぐ他端側端面14と、切羽側に位置される内面11の切羽側端縁と外面12の切羽側端縁とを繋ぐ切羽側端面15と、坑口側に位置される内面11の坑口側端縁と外面12の坑口側端縁とを繋ぐ坑口側端面16とを備える。内面11の弧の一端縁17、外面12の弧の一端縁18、内面11の弧の他端縁19、外面12の弧の他端縁20に沿ったコンクリートの内部には鉄筋39としての主筋21が配置される。一端側端面13の周縁、他端側端面14の周縁に沿ったコンクリートの内部には鉄筋39としての端側の配力筋22が配置される。これら端側の配力筋22の間のコンクリートの内部にも鉄筋39としての中央側の配力筋23が配置される。
【0008】
セグメント2は、内面11の周縁35に沿ったコンクリート内部にのみ合成樹脂製又は金属製の繊維補強材30を備える。繊維補強材30は、図7に示すように、複数の細状片31と、複数の細状片31の中心を綴って複数の細状片31をまとめた紐32とで形成されたモールディング(建物や家具に付ける帯状の装飾)と呼ばれる連続物33を用いた。細状片31の長さは鉄筋39の径よりも長いものを用いることが望ましい。そして、この連続物33をセグメント2の内面11の周縁35に沿うようにコンクリート内部に設置された鉄筋39に沿って連続するように設け、連続物33がセグメント2の内面11の周縁部36を形成するコンクリートの外面に近い側に位置させたことで、連続物33をセグメント2の内面11の周縁部36に近い側に集中的に位置させた。連続物33の紐32と鉄筋39とを結束線50(図5参照)によって連結することによって、連続物33を鉄筋39に沿って設ける。
【0009】
セグメント2の製造は、図外の組立作業枠により鉄筋39を組み立てて鉄筋篭37を形成した後、図5に示すように、セグメント2の内面11の周縁部36のコンクリート内部に設置される鉄筋篭37の鉄筋39に沿ってセグメント2の内面11の周縁部36に沿うことになるように連続物33を鉄筋39に取付けた鉄筋篭37を型枠40の成形空間41内に設置した後に型枠40の成形空間41内にコンクリートを流し込んでコンクリートを固化させる。
【0010】
最良の形態1のセグメントによれば、周縁部36にのみ繊維補強材30を集中的に設けたことによって内面11の周縁部36が繊維補強材30で補強されたので、内面11の周縁部36の割れ欠けを効果的に防止できる。特に、内面11の周縁部36にのみ繊維補強材30を設けたので、従来のようにコンクリートの内部全体に繊維を混在させたセグメント2に比べて安価で、かつ、内面11の周縁部36の割れ欠けを効果的に防止できるセグメント2を得ることができる。
【0011】
また、繊維補強材30の連続物33を、内面11の周縁部36に沿ってコンクリートの内部に設けられた鉄筋39に沿って設けたので、繊維補強材30を周縁部36のコンクリートの表面に近い側に位置させることができて、内面11の周縁部36の割れ欠けを効果的に防止できるセグメント2を得ることができる。
上述した従来の特許文献1;2のセグメント2では、コンクリート中に繊維を混ぜているだけなので、繊維が内面11の周縁部36に集中的に配置されることはない。従って、特許文献1;2では、繊維補強材30が内面11の周縁部36に集中的に配置されて内面11の周縁部36が繊維補強材30によって補強された最良の形態1のようなセグメント2を得ることはできない。
【0012】
最良の形態2
内面11の周縁部36での繊維補強材30の混在率(繊維補強材30の量/コンクリートの単位体積)が、内面11の周縁部36以外の場所での繊維補強材30の混在率よりも大きいセグメント2とした。
最良の形態2のセグメント2によれば、内面11の周縁部36に繊維補強材30を集中的に設けたので、内面11の周縁部36の割れ欠けを効果的に防止できるセグメント2を得ることができる。
【0013】
最良の形態3
図6に示すように、内面11の周縁部36に沿ってコンクリートの内部に設けられた鉄筋39に繊維補強材30の連続物33を巻き付けて設けるようにしてもよい。最良の形態3によれば、繊維補強材30の連続物33と鉄筋39との結合が強固となり、流し込まれたコンクリートによって連続物33が鉄筋39よりはずれて繊維補強材30が内面11の周縁部36より離れた位置に移動してしまうようなことを防止でき、繊維補強材30が内面11の周縁部36に集中的に配置されて内面11の周縁部36が繊維補強材30によって補強されたセグメント2を得ることができる。
【0014】
尚、最良の形態1乃至3では、複数の細状片31と複数の細状片31の中心を綴った紐32とで形成された連続物33によって繊維補強材30を構成したので、紐32と鉄筋39とを結束線50などで連結することで連続物33を鉄筋39に沿って取り付けたり、紐32を鉄筋39に巻き付けることで連続物33を鉄筋39に取り付けることができるので、連続物33と鉄筋39との結合を強固とすることができる。これにより、繊維補強材30が内面11の周縁部36に集中的に配置されて内面11の周縁部36が繊維補強材30によって補強されたセグメント2を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
金属製の繊維補強材30を用いればより補強効果の高いセグメント2を得ることができ、合成樹脂製の繊維補強材30を用いれば補強効果と防錆性とに優れたセグメント2を得ることができる。
【0016】
内面11の周縁部36に繊維補強材30を集中的に設けるために、繊維補強材30の連続物33を鉄筋39に沿わせたり、巻き付けたり、絡ませたりして設置することが好ましいが、繊維補強材30の不連続物を鉄筋39に沿わせたり、巻き付けたり、絡ませたりして取り付けることによって、内面11の周縁部36に繊維補強材30を集中的に設けるようにしてもよい。
【0017】
鉄筋39に巻き付けて設置される連続物33の巻付間隔を短くすれば、内面11の周縁部36に繊維補強材30をより集中的に多く設けることができ、内面11の周縁部36の割れ欠けをより効果的に防止できるセグメント2を得ることができる。
連続物33を形成する細状片31と細状片31との間隔を短くすれば、内面11の周縁部36に繊維補強材30をより集中的に多く設けることができ、内面11の周縁部36の割れ欠けをより効果的に防止できるセグメント2を得ることができる。
セグメント2の形状は限定されない。要するに、トンネル壁体3を形成する内面11の周縁部36に沿ったコンクリート内部に繊維補強材30が設けられたセグメント2であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】セグメントの斜視図(最良の形態1)。
【図2】繊維補強材と鉄筋との結合をセグメントの一部を破断して示した図(最良の形態1)。
【図3】(a)はセグメントを側面から見て示し、(b)はセグメントを内面側から平面視して示し、(c)は(a)のA−A断面を示す図(最良の形態1)。
【図4】(a)は坑口側から見たセグメントの断面図、(b)は図3(a)のB−B断面図(最良の形態1)。
【図5】(a)は鉄筋篭の斜視図、(b)は外型枠と、鉄筋篭と繊維補強材とを巻きつけた状態を示す図(最良の形態1)。
【図6】(a)はセグメントを側面から見て示し、(b)はセグメントを内面側から平面視して示し、(c)は(a)のA−A断面を示す図(最良の形態3)。
【図7】繊維補強材の連続物を示す図(最良の形態1乃至3)。
【図8】シールドトンネルにおける筒状のトンネル壁体を形成するセグメントの組立てを示す図(従来)。
【符号の説明】
【0019】
2 セグメント、3 トンネル壁体、11 内面、30 繊維補強材、
31 細状片、36 周縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネルにおける筒状のトンネル壁体を形成する鉄筋コンクリート製のセグメントであって、トンネル壁体の壁内面を形成する内面の周縁部に沿ったコンクリートの内部に繊維補強材を備え、周縁部での繊維補強材の混在率が周縁部以外の場所での繊維補強材の混在率よりも大きいことを特徴とするセグメント。
【請求項2】
周縁部に沿ったコンクリートの内部にのみ繊維補強材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のセグメント。
【請求項3】
繊維補強材が、周縁部に沿ってコンクリートの内部に設けられた鉄筋に沿って設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセグメント。
【請求項4】
繊維補強材が、鉄筋に巻付けられて設けられたことを特徴とする請求項3に記載のセグメント。
【請求項5】
繊維補強材が、複数の細状片と複数の細状片の中心を綴った紐とで形成された連続物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のセグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−53664(P2010−53664A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222608(P2008−222608)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】