説明

セパレータおよび電池

【課題】充電電圧を4.2Vを超えて設定した場合にも、負荷特性の低下を招くことなく、優れた安全性を実現できるようにする。
【解決手段】電池は、正極21と負極22とがセパレータ23を介して対向配置された構造を有する。セパレータ23は、積層された複数の微多孔膜からなり、膜厚10μm以上20μm以下、膜厚20μm換算での突刺し強度300gf以上を有し、複数の微多孔膜のうちの1層の透気度が、セパレータ全体の透気度の10%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セパレータおよび電池に関する。特に、微多孔性のセパレータおよびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電子技術のめざましい発達により、携帯電話やノートブックコンピューターなどの電子機器は高度情報化社会を支える基盤技術と認知されている。また、これらの電子機器の高機能化に関する研究開発が精力的に進められており、これらの電子機器の消費電力も比例して増加の一途を辿っている。その反面、これらの電子機器は長時間の駆動が求められており、駆動電源である二次電池の高エネルギー密度化が必然的に望まれている。
【0003】
また、電子機器に内蔵される電池の占有体積や質量などの観点より、電池のエネルギー密度は高いほど望ましい。現在では、リチウムイオン二次電池が優れたエネルギー密度を有することから、殆どの機器に内蔵されるに至っている。
【0004】
通常、リチウムイオン二次電池では、正極にはコバルト酸リチウム、負極には炭素材料が使用されており、作動電圧が2.5V〜4.2Vの範囲で用いられている。単電池において、端子電圧を4.2Vまで上げられるのは、非水電解質材料やセパレータなどの優れた電気化学的安定性によるところが大きい。
【0005】
ところで、従来の最大4.2Vで作動するリチウムイオン二次電池では、正極に用いられるコバルト酸リチウムなどの正極活物質は、その理論容量に対して6割程度の容量を活用しているに過ぎない。このため、更に充電圧を上げることにより、残存容量を活用することが原理的に可能である。実際に、充電時の電圧を4.25V以上にすることにより、高エネルギー密度化が発現することが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、このリチウムイオン二次電池では、通常の使用条件下において十分な安全性を確保する電池設計がなされているが、近年の高容量化に対応するため、より高い安全性が求められるようになっている。
【0007】
そこで、捲回積層構造を有するリチウムイオン二次電池では、より高い安全性を実現するべく、正極/負極最外周部分に正極/負極集電体露出部分を1周以上対向させた構造とすることが提案されている(例えば特許文献2参照)。このリチウムイオン二次電池では、誤った使用がなされた場合でも、電気抵抗の十分に小さい金属同士の接触による内部短絡によって、電池の急激な温度上昇を抑制することができる。この構造を有するリチウムイオン二次電池は実用化され、実際に優れた効果を奏することが確認されている。
【0008】
【特許文献1】国際公開第WO03/019713号パンフレット
【特許文献2】特開平8−153542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、充電電圧を4.2Vを超えて設定した電池は、誤った使用方法で生じる危険性が従来の電池より増すため、更に安全性を向上させる必要性がある。また、電池特性の観点からすると、安全性の向上に伴って負荷特性の低下がないようにすることも重要となる。
【0010】
したがって、この発明の目的は、充電電圧を4.2Vを超えて設定した電池において、負荷特性の低下を招くことなく、優れた安全性を実現できるセパレータおよびそれを用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、正極と負極とがセパレータを介して対向配置された電池であって、
セパレータは、積層された複数の微多孔膜からなり、膜厚10μm以上20μm以下、膜厚20μm換算での突刺し強度300gf以上を有し、
複数の微多孔膜のうちの1層の透気度が、セパレータ全体の透気度の10%以上であることを特徴とする電池である。
【0012】
第2の発明は、積層された複数の微多孔膜からなるセパレータであって、
膜厚10μm以上20μm以下、膜厚20μm換算での突刺し強度300gf以上を有し、
複数の微多孔膜のうちの1層の透気度が、当該セパレータ全体の透気度の10%以上であることを特徴とするセパレータである。
【0013】
第1および第2の発明では、積層された複数の微多孔膜からなるセパレータの膜厚を10μm以上20μm以下、膜厚20μm換算での突刺し強度を300gf以上とし、複数の微多孔膜のうちの1層の透気度をセパレータ全体の透気度の10%以上にしたので、負荷特性の低下を招くことなく、異常状態における電池の温度上昇を抑制できる。
【0014】
第3の発明は、正極と負極とがセパレータを介して対向配置された電池であって、
セパレータは、積層された複数の微多孔膜からなり、膜厚10μm以上20μm以下、膜厚20μm換算での突刺し強度300gf以下を有し、
複数の微多孔膜のうちの1層の透気度は、セパレータ全体の透気度の35%以上であることを特徴とする電池である。
【0015】
第4の発明は、積層された複数の微多孔膜からなるセパレータであって、
膜厚10μm以上20μm以下、膜厚20μm換算での突刺し強度300gf以下を有し、
複数の微多孔膜のうちの1層の透気度が、当該セパレータ全体の透気度の35%以上であることを特徴とするセパレータである。
【0016】
第3および第4の発明では、積層された複数の微多孔膜からなるセパレータの膜厚を10μm以上20μm以下、膜厚20μm換算での突刺し強度を300gf以下とし、複数の微多孔膜のうちの1層の透気度をセパレータ全体の透気度の35%以上にしたので、負荷特性の低下を招くことなく、異常状態における電池の温度上昇を抑制できる。
【0017】
第1および第3の発明では、一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下の範囲であることが好ましい。負極は、炭素材料を含むもの、または、アルカリ金属イオン若しくはアルカリ土類金属イオンを吸蔵および離脱する事が可能な金属材料を含むものを用いることができる。炭素材料は、黒鉛、易黒鉛化性炭素および難黒鉛化性炭素からなる群のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛からなる群のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0018】
第1および第2の発明では、セパレータ全体の10%以上の透気度を有する微多孔膜と、この微多孔膜以外の微多孔膜とが異なる透気度を有することが好ましい。また、セパレータ全体の10%以上の透気度を有する微多孔膜は、この微多孔膜以外の微多孔膜に比して融点が低いことが好ましい。また、セパレータを構成する複数の微多孔膜はポリオレフィンからなることが好ましい。また、セパレータ全体の10%以上の透気度を有する微多孔膜が、ポリエチレンからなることが好ましい。
【0019】
第3および第4の発明では、セパレータ全体の35%以上の透気度を有する微多孔膜と、この微多孔膜以外の微多孔膜とが異なる透気度を有することが好ましい。また、セパレータ全体の35%以上の透気度を有する微多孔膜は、この微多孔膜以外の微多孔膜に比して融点が低いことが好ましい。また、セパレータを構成する複数の微多孔膜はポリオレフィンからなることが好ましい。また、セパレータ全体の35%以上の透気度を有する微多孔膜が、ポリエチレンからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、この発明によれば、負荷特性の低下を招くことなく、異常状態における電池の温度上昇を抑制できる。したがって、良好な負荷特性を有し、且つ安全性に優れた電池を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0022】
(1)第1の実施の形態
(1−1)二次電池の構成
図1は、この発明の第1の実施形態による二次電池の一構成例を示す断面図である。この二次電池は、電極反応物質としてリチウム(Li)を用い、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0023】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、PTC素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。PTC素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものであり、例えば、120℃以上の温度で作動する。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0024】
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0025】
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。以下、図2を参照しながら、二次電池を構成する正極21、負極22、セパレータ23、電解質について順次説明する。
【0026】
(正極)
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
【0027】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物,リチウムリン酸化物,リチウム硫化物またはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co),ニッケル,マンガン(Mn)および鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、化1,化2あるいは化3に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、化4に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または化5に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c2O2(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0028】
(化1)
LifMn(1-g-h)NigM1h(2-j)k
(式中、M1は、コバルト,マグネシウム(Mg),アルミニウム,ホウ素(B),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr),鉄,銅(Cu),亜鉛(Zn),ジルコニウム(Zr),モリブデン(Mo),スズ(Sn),カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f,g,h,jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0029】
(化2)
LimNi(1-n)M2n(2-p)q
(式中、M2は、コバルト,マンガン,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,クロム,鉄,銅,亜鉛,モリブデン,スズ,カルシウム,ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。m,n,pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0030】
(化3)
LirCo(1-s)M3s(2-t)u
(式中、M3は、ニッケル,マンガン,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,クロム,鉄,銅,亜鉛,モリブデン,スズ,カルシウム,ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。r,s,tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0031】
(化4)
LivMn2-wM4wxy
(式中、M4は、コバルト,ニッケル,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,クロム,鉄,銅,亜鉛,モリブデン,スズ,カルシウム,ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。v,w,xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0032】
(化5)
LizM5PO4
(式中、M5は、コバルト,マンガン,鉄,ニッケル,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,ニオブ,銅,亜鉛,モリブデン,カルシウム,ストロンチウム,タングステンおよびジルコニウムからなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0033】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2,V25,V613,NiS,MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0034】
(負極)
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0035】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層21Bと同様の結着剤を含んで構成されている。
【0036】
なお、この二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0037】
また、この二次電池は、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上4.60V以下、または4.35V以上4.60V以下の範囲内になるように設計されている。よって、完全充電時における開回路電圧が4.20Vの電池よりも、同じ正極活物質であっても、単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるので、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されている。これにより高いエネルギー密度が得られるようになっている。
【0038】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素,易黒鉛化性炭素,黒鉛,熱分解炭素類,コークス類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどがある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0039】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができる。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0040】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム,ホウ素,アルミニウム,ガリウム(Ga),インジウム(In),ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ,鉛(Pb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),銀(Ag),亜鉛,ハフニウム(Hf),ジルコニウム,イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0041】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0042】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン(Ti),ゲルマニウム,ビスマス,アンチモン(Sb),およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0043】
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0044】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2,V25,V613)などの酸化物、NiS,MoSなどの硫化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン,ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0045】
(セパレータ)
セパレータ23は、基材層23Aと、基材層23Aの正極21に対向する側の面、または基材23Aの両面に設けられた表面層23Bとを有している。なお、図2では、表面層23Bが基材層23Aの両面に設けられている場合について表している。
【0046】
セパレータ23の厚みは、10μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。厚みが薄いとショートが発生することがあり、厚みが厚いとイオン伝導性が低下してしまうと共に体積容量が低下してしまうからである。また、セパレータ23の透気度は100[sec/100ml]以上600[sec/100ml]以下の範囲内であることが好ましい。透気度が低いとショートが発生することがあり、高いとイオン伝導性が低下してしまうからである。更に、セパレータ23の空孔率は、30%以上60%以下の範囲内であることが好ましい。空孔率が低いとイオン伝導性が低下してしまい、高いとショートが発生することがあるからである。加えて、セパレータ23の突き刺し強度は、100gf以上であることが好ましい。突き刺し強度が低いとショートが発生することがあるためである。また、突き刺し強度は、800fg以下であることが好ましく、600gf以下であることがより好ましい。突き刺し強度が高過ぎると、イオン伝導性が低下してしまうからである。
【0047】
基材層23Aは、例えばポリオレフィンからなる微多孔質膜である。この微多孔質膜を構成するポリオレフィンとしては、例えばポリプロピレンまたはポリエチレンを用いることができる。ポリオレフィン性の微多孔質膜は、ショート防止効果に優れ、且つシャットダウン効果による電池安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、且つ電気化学的安定性にも優れているので、基材層23Aを構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンまたはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化することで用いることができる。
【0048】
表面層23Bは、例えばポリフッ化ビニリデン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンおよびアラミドからなる群のうちの少なくとも1種を含んで構成されている。これにより、化学的安定性が向上し、微少ショートの発生が抑制されるようになっている。また、正極21に対向する側の表面層23Bと負極22に対向する側の表面層23Bとは、同一の材料に限られるものではなく、異なる材料から構成されるようにしてもよい。
【0049】
基材層23Aと表面層23Bとは、異なる透気度を有する。基材層23Aの透気度は、15[sec/100ml]以上600[sec/100ml]以下の範囲であることが好ましい。透気度が15[sec/100ml]未満であると、ショートが発生する可能性がある為である。一方、透気度が600[sec/100ml]を越えると、負荷特性が低下してしまう。
【0050】
また、表面層23Bの透気度は、45[sec/100ml]以上600[sec/100ml]以下の範囲であることが好ましい。透気度が45[sec/100ml]未満であると、ショートが発生する可能性がある為である。一方、透気度が600[sec/100ml]を越えると、負荷特性が低下してしまう。
【0051】
セパレータ23は、膜厚が10μm以上20μm以下であり、膜厚を10x(但し1≦x≦2)μmと表した場合に、突刺し強度が150xgf以上と表される場合には、セパレータ23の各層を構成する微多孔膜のうちの少なくとも1層が、セパレータ全体の透気度の10%以上である。即ち、セパレータ23は、膜厚10xμm、突刺し強度150xgf以上(但し、1≦x≦2)を有し、複数の微多孔膜のうちの1層の透気度が、上記セパレータ全体の透気度の10%以上である。10%未満であると、安全性が低下してしまう。本実施の形態では、基材層23Aの透気度は、セパレータ全体の透気度の10%以上であることが好ましい。
【0052】
また、膜厚が10μm以上20μm以下であり、膜厚を10x(但し1≦x≦2)μmと表した場合に、突刺し強度が150xgf以下と表される場合には、セパレータ23の各層を構成する微多孔膜のうちの少なくとも1層が、セパレータ全体の透気度の35%以上である。即ち、セパレータ23は、膜厚10xμm、突刺し強度150xgf以下(但し、1≦x≦2)を有し、複数の微多孔膜のうちの1層の透気度が、上記セパレータ全体の透気度の35%以上である。35%未満であると、安全性が低下してしまう。本実施の形態では、基材層23Aの透気度は、セパレータ全体の透気度の35%以上であることが好ましい。
【0053】
基材層23Aを構成する材料の融点は、表面層23Aを構成する材料に比して融点が低いことが好ましい。このように融点が異なることで、例えば電池に大電流が流れて電池が発熱した場合に、その発熱により基材層23Aの軟化によりシャットダウンをし、表面層23Bによりセパレータ23の形状を維持することができる。
【0054】
基材層23Aの厚みは、4.9μm以上20μm以下の範囲内が好ましい。厚みが4.9μm未満であると、微少ショートの発生を抑制する効果が低くなってしまう。一方、厚みが20μmを越えると、イオン伝導性が低下してしまうと共に体積容量が低下してしまう。
【0055】
正極21に対向する側の表面層23Bの厚みは、0.1μm以上10μm以下の範囲内が好ましい。厚みが0.1μm未満であると、微小ショートの発生を抑制する効果が低くなってしまう。一方、厚みが10μmを越えると、イオン伝導性が低下してしまうと共に体積容量が低下してしまう。
【0056】
負極22に対向する側の表面層23Bの厚みは、0.1μm以上10μm以下の範囲内が好ましい。厚みが0.1μm未満であると、微小ショートの発生を抑制する効果が低くなってしまう。一方、厚みが10μmを越えると、イオン伝導性が低下してしまうと共に体積容量が低下してしまう。
【0057】
(電解質)
液状の電解質である電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
【0058】
また、溶媒としては、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル,炭酸ジメチル,炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピルなどの鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
【0059】
更にまた、溶媒としては、2,4−ジフルオロアニソールあるいは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0060】
これらの他にも、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチルなどが挙げれる。
【0061】
なお、これらの非水溶媒の少なくとも一部の水素をフッ素で置換した化合物は、組み合わせる電極の種類によっては、電極反応の可逆性を向上させることができる場合があるので、好ましい場合もある。
【0062】
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF6,LiBF4,LiAsF6,LiClO4,LiB(C654,LiCH3SO3,LiCF3SO3,LiN(SO2CF32,LiC(SO2CF33,LiAlCl4,LiSiF6,LiCl,ジフルオロ[オキソラト−O,O']ホウ酸リチウム,リチウムビスオキサレートボレート,あるいはLiBrなどが挙げられる。中でも、LiPF6は高いイオン伝導性を得ることができると共に、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0063】
(1−2)二次電池の製造方法
次に、この発明の第1の実施形態による二次電池の製造方法の一例について説明する。
【0064】
まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成する。これにより、正極21が得られる。
【0065】
また、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成する。これにより、負極22が得られる。
【0066】
続いて、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が得られる。
【0067】
この二次電池では、充電を行うと、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して、負極活物質層22Bに含まれるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵される。次いで、放電を行うと、負極活物質層22B中のリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵されたリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。ここでは、セパレータ23が上述した構成を有しているので、化学的安定性が向上し、完全充電時における開回路電圧を高くしても、微小ショートの発生が抑制され、電池特性が改善される。
【0068】
上述のしたように、この第1の実施形態では、二次電池は正極21と負極22とがセパレータ23を介して対向配置された構成を有し、一対の正極21および負極22当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上4.60V以下または4.35以上4.60V以下の範囲内である。そして、セパレータ23が10〜20μmの膜厚を有し、セパレータ23の突刺し強度が20μm換算で300gf以上(膜厚10μmの場合150gf以上)で、基材層23Aの透気度がセパレータ全体の10%以上を有するので、負荷特性の低下を招くことなく、外部短絡時などにおける安全性を向上させることができる。
【0069】
また、二次電池は正極21と負極22とがセパレータ23を介して対向配置された構成を有し、一対の正極21および負極22当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上4.60V以下または4.35以上4.60V以下の範囲内である。そして、セパレータ23が10〜20μmの膜厚を有し、セパレータ23の突刺し強度が20μm換算で300gf以下(膜厚10μmの場合150gf以下)で、基材層23Aの透気度がセパレータ全体の35%以上を有するので、負荷特性の低下を招くことなく、外部短絡時などにおける安全性を向上させることができる。
尚、20μm換算の突刺し強度とは、セパレータ23の膜厚を20μmとしたときに得られるであろう突刺し強度である。測定されたセパレータ23の膜厚をTμm、突刺し強度をSgf、20μm換算の突刺し強度をS(20)としたときに、S(20)=S×20/Tである。
10μm換算の突刺し強度とは、セパレータ23の膜厚を10μmとしたときに得られるであろう突刺し強度であり、測定されたセパレータ23の膜厚をTμm、突刺し強度をSgf、10μm換算の突刺し強度をS(10)としたときに、S(10)=S×10/Tであり、理論上、S(20)=2(10)×2である。
【0070】
また、完全充電時における開回路電圧を4.25V以上4.60V以下または4.35以上4.60V以下の範囲内としたので、高いエネルギー密度を得ることができる。また、セパレータ23の少なくとも正極21と対向する側に、ポリフッ化ビニリデン,ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンおよびアラミドからなる群のうちの少なくとも1種よりなる層を有するようにしたので、セパレータ23の化学的安定性を向上させることができ、微小ショートの発生を抑制することができる。よって、エネルギー密度を高くすることができると共に、サイクル特性あるいは高温保存特性などの電池特性を向上させることができる。
【0071】
(2)第2の実施の形態
この発明の第2の実施形態による二次電池は、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの析出および溶解による容量成分により表される、いわゆるリチウム金属二次電池である。
【0072】
この二次電池は、負極活物質層22Bの構成が異なることを除き、他は第1の実施の形態による二次電池と同様の構成および効果を有している。したがって、図1および図2を参照し、対応する構成要素には同一の符号を付して同一の部分の説明は省略する。
【0073】
負極活物質層22Bは、負極活物質であるリチウム金属により形成されており、高いエネルギー密度を得ることができるようになっている。この負極活物質層22Bは、組み立て時から既に有するように構成してもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により構成するようにしてもよい。また、この負極活物質層22Bを集電体としても利用し、負極集電体22Aを削除するようにしてもよい。
【0074】
この二次電池は、負極22を負極集電体22Aのみ、またはリチウム金属のみ、または負極集電体22Aにリチウム金属を貼り付けて負極活物質層22Bを形成したものとしたことを除き、他は第1の実施の形態に係る二次電池と同様にして製造することができる。
【0075】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解質を介して、負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出し、図2に示したように、負極活物質層22Bを形成する。放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解質を介して正極21に吸蔵される。ここでは、セパレータ23が上述した構成を有しているので、化学的安定性が向上し、完全充電時における開回路電圧を高くしても、微小ショートの発生が抑制され、電池特性が改善される。
【0076】
(3)第3の実施の形態
この発明の第3の実施形態による二次電池は、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるものである。
【0077】
この二次電池は、負極活物質層の構成が異なることを除き、他は第1または第2の実施形態による二次電池と同様の構成および効果を有しており、同様にして製造することができる。よって、ここでは、図1および図2を参照し、同一の符号を用いて説明する。なお、同一部分についての詳細な説明は省略する。
【0078】
負極活物質層22Bは、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極21の充電容量よりも小さくすることにより、充電の過程において、開回路電圧(すなわち電池電圧)が過充電電圧よりも低い時点で負極22にリチウム金属が析出し始めるようになっている。従って、この二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料とリチウム金属との両方が負極活物質として機能し、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料はリチウム金属が析出する際の基材となっている。
【0079】
過充電電圧というのは、電池が過充電状態になった時の開回路電圧を指し、例えば、日本蓄電池工業会(電池工業会)の定めた指針の一つである「リチウム二次電池安全性評価基準ガイドライン」(SBA G1101)に記載され定義される「完全充電」された電池の開回路電圧よりも高い電圧を指す。また換言すれば、各電池の公称容量を求める際に用いた充電方法、標準充電方法、もしくは推奨充電方法を用いて充電した後の開回路電圧よりも高い電圧を指す。
【0080】
この二次電池は、負極22にリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料を用いるという点では従来のリチウムイオン二次電池と同様であり、また、負極22にリチウム金属を析出させるという点では従来のリチウム金属二次電池と同様であるが、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料にリチウム金属を析出させるようにしたことにより、高いエネルギー密度を得ることができると共に、サイクル特性および急速充電特性を向上させることができるようになっている。
【0081】
この二次電池では、充電を行うと、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して、まず、負極22に含まれるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵される。更に充電を続けると、開回路電圧が過充電電圧よりも低い状態において、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の表面にリチウム金属が析出し始める。そののち、充電を終了するまで負極22にはリチウム金属が析出し続ける。次いで、放電を行うと、まず、負極22に析出したリチウム金属がイオンとなって溶出し、電解液を介して、正極21に吸蔵される。更に放電を続けると、負極22中のリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵されたリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極21に吸蔵される。ここでは、セパレータ23が上述した構成を有しているので、化学的安定性を向上し、完全充電時における開回路電圧を高くしても、微小ショートの発生が抑制され、電池特性が改善される。
【0082】
(4)第4の実施の形態
図3は、この発明の第4の実施形態による二次電池の一構成例を示す断面図である。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
【0083】
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0084】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0085】
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0086】
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
【0087】
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。正極集電体33A,正極活物質層33B,負極集電体34A,負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ第1ないし第3の実施の形態で説明した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22A,負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
【0088】
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩など)の構成は、第1ないし第3の実施の形態に係る二次電池と同様である。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体,ポリテトラフルオロエチレン,ポリヘキサフルオロプロピレン,ポリエチレンオキサイド,ポリプロピレンオキサイド,ポリフォスファゼン,ポリシロキサン,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルアルコール,ポリメタクリル酸メチル,ポリアクリル酸,ポリメタクリル酸,スチレン−ブタジエンゴム,ニトリル−ブタジエンゴム,ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的な安定性の点からはポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0089】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0090】
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次いで、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3および図4に示した二次電池が得られる。
【0091】
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入する。
【0092】
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次いで、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成する。以上により、図3に示した二次電池が得られる。
【0093】
この二次電池の作用および効果は、第1ないし第3の実施の形態に係る二次電池と同様である。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0095】
表1〜表8に、サンプル1−1−1〜1−8−12のセパレータの構成を示す。表9〜表16に、サンプル2−1−1〜2−8−12のセパレータの構成を示す。表17〜表24に、サンプル3−1−1〜3−8−12のセパレータの構成を示す。表25〜表32に、サンプル4−1−1〜4−8−12のセパレータの構成を示す。表33〜表40に、サンプル5−1−1〜5−8−12のセパレータの構成を示す。表41〜表48に、サンプル6−1−1〜6−8−12のセパレータの構成を示す。
【0096】
なお、表1〜表48に示す透気度は、東洋精機株式会社製のガーレ式デンソメータを使用して測定したものである。また、突刺し強度は、カトーテック株式会社製のハンディー圧縮試験機を用いて、直径1.0mm、先端のRが0.5mmの針を毎秒0.2cmの速度で突き刺した際の最大荷重を測定した。
【0097】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【0098】
【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【0099】
【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【0100】
【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【0101】
【表33】

【表34】

【表35】

【表36】

【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【0102】
【表41】

【表42】

【表43】

【表44】

【表45】

【表46】

【表47】

【表48】

【0103】
(サンプル1−1−1〜1−8−12)
以下、図1を参照しながら、負極22の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表される電池、すなわちリチウムイオン二次電池の作製方法について説明する。
【0104】
まず、正極活物質を作製した。市販の硝酸ニッケル,硝酸コバルト,および硝酸マンガンを水溶液として、NiとCoとMnとのモル比率がそれぞれ0.50、0.20、0.30となるように混合したのち、十分に攪拌しながら、この混合溶液にアンモニア水を滴下して複合水酸化物を得た。この複合水酸化物と水酸化リチウムとを混合し、電気炉を用いて、900℃で10時間焼成したのち、粉砕して、正極活物質としてのリチウム複合酸化物粉末を得た。得られたリチウム複合酸化物粉末について、原子吸光分析(ASS;atomic absorption spectrometry)により分析を行ったところ、LiNi0.50Co0.20Mn0.302の組成が確認された。また、レーザー回折法により粒径を測定したところ、平均粒径は13μmであった。更に、X線回折測定を行ったところ、ICDD(International Center for Diffraction Data)カードの09−0063に記載されたLiNiO2のパターンに類似しており、LiNiO2と同様の層状岩塩構造を形成していることが確認された。更にまた、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)により観察したところ、0.1μm〜5μmの1次粒子が凝集した球状の粒子が観察された。
【0105】
得られたLiNi0.50Co0.20Mn0.302粉末と、導電剤としてグラファイトと、結着剤としてポリフッ化ビニリデンとを、LiNi0.50Co0.20Mn0.302粉末:グラファイト:ポリフッ化ビニリデン=86:10:4の質量比で混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、厚み20μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製した。正極21の厚みは150μmとなるようにした。そののち、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
【0106】
また、負極活物質として、平均粒子径が30μmの球状黒鉛粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンとを、球状黒鉛粉末:ポリフッ化ビニリデン=90:10の質量比で混合して負極合剤を調製した。続いて、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布し、加熱プレス成型して負極活物質層22Bを形成し負極22を作製した。負極22の厚みは160μmとなるようにした。そののち、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。なお、負極22の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるように、正極21と負極22との電気化学当量比を設計した。
【0107】
上述のようにして正極21および負極22をそれぞれ作製したのち、表1〜表8に示す構成を有する、微多孔質膜のセパレータ23を用意し、負極22,セパレータ23,正極21,セパレータ23の順に積層してこの積層体を渦巻状に多数回巻回し、ジェリーロール型の巻回電極体20を作製した。なお、セパレータ23としては、表1〜表8に示したように、ポリエチレン基材層23Aの両面にポリプロピレン表面層23Bを熱融着したものと、ポリエチレン基材層23Aのみのものを使用した。また、膜厚は5μm、10μm、12μm、16μm、18μm、20μm、30μm、35μmの8種類とした。
【0108】
巻回電極体20を作製したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回電極体20をニッケルめっきした鉄製の電池缶11の内部に収納した。そののち、電池缶11の内部に電解液4.0gを減圧方式により注入した。
【0109】
電解液には、溶媒として炭酸エチレンと炭酸ジメチルと炭酸ビニレンとを、炭酸エチレン:炭酸ジメチル:炭酸ビニレン=35:60:1の質量比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1.5mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
【0110】
電池缶11の内部に電解液を注入したのち、表面にアスファルトを塗布したガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、サンプル1−1−1〜1−8−12の直径18mm、高さ65mmの円筒型二次電池を得た。
【0111】
<外部短絡試験>
まず、上述のようにして得られた各二次電池を、4.2V、1000mAで定電流定電圧充電を行った。その後、60℃に設定された高温槽中にて外部短絡試験を実施し、短絡後5秒後の電池中央の温度の測定を行った。
本試験によって、電池温度が120℃を超えない場合、セパレータ23のシャットダウンによる遮断が可能で、PTC素子16の必要はないが、120℃を超える場合、セパレータ23によるシャットダウンが実施されずPTC素子16は必ず必要となる。すなわち、PTC素子16が無くともセパレータ23のシャットダウンにより遮断を可能とする2次電池がより優れた安全性を持つセルであるといえる。
【0112】
<負荷特性評価>
まず、上述のようにして得られた各二次電池に対して、23℃の環境下において4.2V、1000mAで定電流定電圧充電を行った後、電流0.2C、終止電圧3Vの条件で定電流放電を行った。次に、23℃の環境下において、4.2V、1000mAで定電流定電圧充電を行った後、電流1C、終止電圧3Vの条件で定電流放電を行った。
【0113】
その後、負荷特性を以下の式により求めた。
(電流1Cでの放電容量(mAh)/0.2電流での放電容量(mAh))×100
但し、放電容量は、電流値×(終止電圧3.0Vまでの放電時間)として求めた。また、1Cとは、電池の定格容量を1時間で放電させる電流値のことであり、0.2Cとは、電池の定格容量を5時間で放電させる電流値である。
【0114】
(サンプル2−1−1〜2−8−12)
まず、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして、円筒型二次電池を得た。次に、このようにして得られた各二次電池の外部短絡試験および負荷特性評価を以下のようにして行った。
【0115】
<外部短絡試験>
電池電圧を4.35Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして外部短絡試験を行った。
【0116】
<負荷特性評価>
電池電圧を4.35Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして負荷特性を評価した。
【0117】
(サンプル3−1−1〜3−8−12)
まず、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして、円筒型二次電池を得た。次に、このようにして得られた各二次電池の外部短絡試験および負荷特性評価を以下のようにして行った。
【0118】
<外部短絡試験>
電池電圧を4.4Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして外部短絡試験を行った。
【0119】
<負荷特性評価>
電池電圧を4.4Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして負荷特性を評価した。
【0120】
(サンプル4−1−1〜4−8−12)
まず、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして、円筒型二次電池を得た。次に、このようにして得られた各二次電池の外部短絡試験および負荷特性評価を以下のようにして行った。
【0121】
<外部短絡試験>
電池電圧を4.45Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして外部短絡試験を行った。
【0122】
<負荷特性評価>
電池電圧を4.45Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして負荷特性を評価した。
【0123】
(サンプル5−1−1〜5−8−12)
まず、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして、円筒型二次電池を得た。次に、このようにして得られた各二次電池の外部短絡試験および負荷特性評価を以下のようにして行った。
【0124】
<外部短絡試験>
電池電圧を4.55Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして外部短絡試験を行った。
【0125】
<負荷特性評価>
電池電圧を4.55Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして負荷特性を評価した。
【0126】
(サンプル6−1−1〜6−8−12)
まず、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして、円筒型二次電池を得た。次に、このようにして得られた各二次電池の外部短絡試験および負荷特性評価を以下のようにして行った。
【0127】
<外部短絡試験>
電池電圧を4.6Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして外部短絡試験を行った。
【0128】
<負荷特性評価>
電池電圧を4.6Vとする以外のことは、上述のサンプル1−1−1〜1−8−12とすべて同様にして負荷特性を評価した。
【0129】
表1〜表48に、上述のサンプル1−1−1〜6−8−12の外部短絡試験および負荷特性評価の結果を示す。この評価結果から以下のことが分かる。
セパレータ膜厚が10μm未満の場合、負荷特性は良いが、全ての充電電圧でPTC素子16が必要であることが分かる。
セパレータ膜厚が20μmを越える場合、全ての充電電圧でPTC素子16の必要性は見られないが、負荷特性が悪いことが分かる。
PTC素子16が必要でなく、負荷特性が95%を超える二次電池は、膜厚10〜20μmを有し、20μm換算の突刺し強度が300gf(膜厚10μmの場合150gf)以上でポリエチレン基材層23Aの透気度が全体の10%以上を占めるセパレータ23を使用した二次電池、および突刺し強度が300gf以下でポリエチレン基材層23Aの透気度が全体の35%以上を占めるセパレータ23を使用した二次電池であることが分かる。
また、表1〜48において、各層の膜厚や空隙率が同じであっても透気度は一致せず、異なり得る。そして、60℃外部短絡試験でのPTC要否は、ポリエチレン基材層23Aの膜厚や空隙率ではなく、透気度によっていることがわかる。
【0130】
以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0131】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0132】
例えば、上述の実施形態および実施例においては、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)若しくはカリウム(K)などの他の1A族元素、マグネシウム若しくはカルシウム(Ca)などの2A族元素、アルミニウムなどの他の軽金属、リチウムまたはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、負極活物質には、上述の実施形態で説明したような負極材料を同様にして用いることができる。
【0133】
また、上述の実施形態および実施例においては、巻回構造を有する二次電池について説明したが、この発明は、正極および負極を折り畳んだりあるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、いわゆるコイン型,ボタン型あるいは角型などの二次電池についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】この発明の第1の実施形態による二次電池の一構成例を示す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】この発明の第4の実施形態による二次電池の一構成例を示す分解斜視図である。
【図4】図3で示した巻回電極体のI−I線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0135】
11・・・電池缶、12,13・・・絶縁板、14・・・電池蓋、15・・・安全弁機構、15A・・・ディスク板、16・・・熱感抵抗素子、17・・・ガスケット、20,30・・・巻回電極体、21,33・・・正極、21A,33A・・・正極集電体、21B,33B・・・正極活物質層、22,34・・・負極、22A,34A・・・負極集電体、22B,34B・・・負極活物質層、23,35・・・セパレータ、23A・・・基材層、23B・・・表面層、24・・・センターピン、25,31・・・正極リード、26,32・・・負極リード、36・・・電解質層、37・・・保護テープ、40・・・外装部材、41…密着フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とがセパレータを介して対向配置された電池であって、
上記セパレータは、積層された複数の微多孔膜からなり、膜厚10μm以上20μm以下、膜厚20μm換算での突刺し強度300gf以上を有し、
上記複数の微多孔膜のうちの1層の透気度が、上記セパレータ全体の透気度の10%以上であることを特徴とする電池。
【請求項2】
一対の上記正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
上記セパレータ全体の10%以上の透気度を有する微多孔膜と、当該微多孔膜以外の微多孔膜とが異なる透気度を有することを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項4】
上記セパレータ全体の10%以上の透気度を有する微多孔膜は、当該微多孔膜以外の微多孔膜に比して融点が低いことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項5】
上記複数の微多孔膜はポリオレフィンからなることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項6】
上記セパレータ全体の10%以上の透気度を有する微多孔膜が、ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項7】
上記負極は、炭素材料を含むこと、または、アルカリ金属イオン若しくはアルカリ土類金属イオンを吸蔵および離脱する事が可能な金属材料を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項8】
上記炭素材料は、黒鉛、易黒鉛化性炭素および難黒鉛化性炭素からなる群のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項7記載の電池。
【請求項9】
上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛からなる群のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項7記載の電池。
【請求項10】
積層された複数の微多孔膜からなるセパレータであって、
膜厚10μm以上20μm以下、膜厚20μm換算での突刺し強度300gf以上を有し、
上記複数の微多孔膜のうちの1層の透気度が、当該セパレータ全体の透気度の10%以上であることを特徴とするセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−41846(P2013−41846A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233268(P2012−233268)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2007−14244(P2007−14244)の分割
【原出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】