説明

セパレータの冷却方法

【課題】セパレータの高速冷却と圧力損失測定を同時に行え、冷却開始から圧力損失測定終了までの時間を著しく短縮できるセパレータの冷却方法を提供する。
【解決手段】一対の金属プレート12,13と、これらの金属プレート12,13相互間に挟み込まれた中間層15とを熱接合により一体化してなる燃料電池のセパレータ11の熱接合後の冷却方法であって、セパレータ11内部に形成された液体又はガスの流路18等の各流路に純水を流して冷却しながら、その流路18等の各流路における圧力損失を測定する。セパレータ11の高速冷却とセパレータ11内の流路18等の各流路の圧力損失を同時に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のセパレータの冷却方法、特に、一対の金属プレートと、この一対の金属プレート相互間に挟み込まれた中間層とを一体化するための熱接合後のセパレータの冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池において、一対の金属プレートと、この一対の金属プレート相互間に冷却媒体流路形成部材を備える中間層とを、熱接合により一体化されてなるセパレータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このように一体化されたセパレータは、熱接合による熱が残留しているために冷却が行われる。
この冷却は、従来、図4に示すように、セパレータ41の上下面、つまり中間層42を挟んでその上下に位置する金属プレート43,44の各表面に冷却板51,52を当てて行っていた。
【0003】
【特許文献1】特開2007−179787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の冷却方法では、セパレータ41の外部からの冷却であるため、冷却に時間がかかった。またセパレータ41は、一体化後に、中間層42に備えられた冷却媒体流路を含むセパレータ41内部の各流体流路における圧力損失の測定が行われるが、この測定も時間がかかり、したがって冷却開始から圧力損失測定終了までに長時間を要した。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたもので、冷却開始から圧力損失測定終了までの時間を短縮できるセパレータの冷却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のセパレータの冷却方法は、一対の金属プレートと、この一対の金属プレート相互間に挟み込まれた中間層とを熱接合により一体化してなる燃料電池のセパレータの前記熱接合後の冷却方法であって、セパレータ内部に形成された液体又はガスの流路に液体又はガスを流して冷却しながら、その流路における圧力損失を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セパレータの冷却と共に圧力損失測定をするので、冷却開始から圧力損失測定終了までの時間を短縮できるという効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、各図間において、同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1は、本発明方法により冷却されるセパレータの概略を示す側面図、図2は図1中の中間層の平面図である。
図示するように、セパレータ11は一対の金属プレート12,13と、この一対の金属プレート12,13相互間に挟み込まれた、冷却媒体流路14を備える中間層15とを備えてなる。図2においては、冷却媒体流路14を1本の矢印で代表的に示している。冷却媒体流路14は、実際にはこの矢印で示す流路のみでないことはいうまでもない。後述する空気流路についても矢印で示す流路のみでないことは同様である。
ここで、金属プレート12,13はチタンやステンレス等の耐蝕性を有する金属材からなり、中間層15はフィルム状樹脂材によるフレーム16及びその内方に配置された、例えばチタンやステンレス等の耐蝕性を有する金属材からなる冷却媒体流路部材17を備えてなる。冷却媒体流路14を例えば金属プレート12の裏面側に形成して上記冷却媒体流路部材17を省略してもよい。なお冷却媒体としては、通常、不凍液が用いられる。
一対の金属プレート12,13及びフレーム16は同一の四角形の外形状を有する平板状に形成されている。
【0009】
このセパレータ11の内部には、上記冷却媒体流路14の他に、燃料電池における発電に供する酸化剤ガスとしての空気の流路(空気流路)及び燃料ガスとしての水素ガスの流路(水素ガス流路)が形成されている。図1では空気流路18のみを示しているが、図示面に直交する方向の所定位置に金属プレート12,13及び中間層15を貫いて水素ガス流路が形成されている。
なお、図1中の21及び22は空気流路18の入口(空気供給マニホールド)及び出口(空気排出マニホールド)を示す。23及び24は中間層15に形成された空気通路、25及び26は金属プレート12に開けられた空気流路穴である。図2中の27及び28は冷却媒体流路14の入口(冷却媒体供給マニホールド)及び出口(冷却媒体排出マニホールド)を示す。
【0010】
本実施形態では、一対の金属プレート12,13及び中間層15が熱接合によって一体化された後の、つまり熱接合による熱が残留しているセパレータ11について、冷却媒体流路14、空気流路18及び上記水素ガス流路に各々冷却/圧力損失測定用流体としての純水を流して冷却しながら、各流路14,18(水素ガス流路も含む。)における圧力損失を測定する。
なお、水素ガス流路の圧力損失測定は、同じガス流路である空気流路18と同等に考え得るので、以下、流路18と記すときは水素ガス流路も同様に含まれるものとする。
上記熱接合は、加熱ロール、赤外線加熱ヒータ、電磁誘導加熱ヒータ、熱板プレス等を用いて行われている。
【0011】
各流路14,18の圧力損失は、同流路14,18の入口27,21における純水の供給圧力測定値Pinから、同流路14,18の出口28,22における純水の排出圧力測定値Poutを各々引算(=Pin−Pout)することにより求められる。
空気流路18は、セパレータ11単独では供給側と排出側とが連通せず、圧力損失の測定ができないので、圧力損失測定時には、図3に例示するように治具31,32を用いる。
【0012】
すなわち、金属プレート12側には穴のない治具31を、金属プレート13側には上記純水の供給穴33及び排出穴34が開けられた治具32を、各々所定間隔おいて対向配置する。
この場合、治具31,32には、セパレータ11の空気流路18の供給側と排出側とが連通され、かつその気密が、上記純水の供給穴33及び排出穴34を除いて保持されるように、各々ガスケット35が貼着されている。治具32の供給穴33及び排出穴34は、図3から分かるように空気流路18の入口21及び出口22に対向する位置に開けられている。
治具31,32は、本実施形態では熱伝導率が比較的高く、取り扱いが容易なアルミニウム材からなるが、これのみに限定されない。熱伝導率は高いことが望まれる。
【0013】
上述したように本実施形態では、金属プレート12,13及び中間層15が熱接合によって一体化された後のセパレータ11について、冷却媒体流路14、空気流路18に各々純水を流して冷却、つまりセパレータ11の内部から冷却しながら、各流路14,18における圧力損失を測定するようにした。
したがって本実施形態によれば、高い冷却効果のもとで、かつそのような冷却と同時に、各流路14,18における圧力損失を測定できる。すなわち、熱接合による熱が残留しているセパレータ11について、高速冷却と圧力損失測定を同時に行え、冷却開始から圧力損失測定終了までの時間を著しく短縮できる。
【0014】
なお上述実施形態では、冷却媒体流路、空気流路及び水素ガス流路に流す冷却/圧力損失測定用流体として純水を用いた例について述べたが、これのみに限定されることはない。例えば、冷却/圧力損失測定用流体として純水以外の水(工業水等)を用いてもよい。また、冷却/圧力損失測定用流体としてガス、例えば空気、水素ガスあるいは窒素ガス等を用いてもよく、これによれば、冷却、圧力損失測定後にセパレータの水分を拭き取る等の後始末が不要となる。冷却/圧力損失測定用流体として水を使用すれば、冷却効果が高いが上記のように後始末が必要となり、一方、ガスを使用すれば、後始末が不要となるが冷却効果は水を使用した場合に比べて低くなる。冷却媒体流路には水を用い、空気流路及び水素ガス流路にはガスを用いる、というように冷却/圧力損失測定用流体として水とガスとを適宜使い分けてもよい。
冷却媒体流路、空気流路及び水素ガス流路の3流路の圧力損失測定を常に同時に行うことに限定されることもない。
【0015】
上述実施形態におけるセパレータ内部からの冷却に加えて、冷却板等を用いたセパレータ外部からの冷却をも行ってもよい。これによれば、セパレータの冷却をより高速化できると共に、急速冷却されてもセパレータ内外の温度差によるセパレータの反り等の歪みが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明方法により冷却されるセパレータの概略を示す側面図である。
【図2】図1中の中間層の平面図である。
【図3】本発明によるセパレータの冷却方法の一実施形態の説明図である。
【図4】従来の冷却方法の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
11:セパレータ、12,13:金属プレート、14:冷却媒体流路(液体の流路)、15:中間層、16:フレーム、17:冷却媒体流路部材、18:空気流路(ガスの流路)、21:空気流路入口、22:空気流路出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属プレートと、この一対の金属プレート相互間に挟み込まれた中間層とを熱接合により一体化してなる燃料電池のセパレータの前記熱接合後の冷却方法であって、
セパレータ内部に形成された液体又はガスの流路に液体又はガスを流して冷却しながら、その流路における圧力損失を測定することを特徴とするセパレータの冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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