説明

セメント成形体の養生装置および養生方法

【課題】 セメント成形体の蒸気養生において、養生装置へのセメント成形体の収容および養生後の取り出し作業が容易で能率的に行え、養生処理されたセメント成形体の品質性能を均一で良好にする。
【解決手段】 セメント成形体Bの養生処理に用いる養生装置であって、それぞれにセメント成形体Bを載置する複数の棚が上下方向に間隔をあけ水平方向の端部を開放した状態で配置された棚枠体20と、棚枠体20の開放端部に配置され開放端部を閉塞する端部閉塞盤30と、端部閉塞盤に配置され、弾性材料からなり、棚枠体20の開放端部に当接する弾性密閉層40と、端部閉塞盤30を棚枠体20の開放端部に押圧して固定する弾性帯材60などからなる押圧固定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント成形体の養生装置および養生方法に関し、詳しくは、建築物の外装仕上げ材に利用されるセメント系建材などを製造する際に、セメント材料から成形されたセメント成形体を蒸気養生させる作業に使用される養生装置と、このような養生装置を用いる養生方法とを対象にしている。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁に対する外装仕上げ材料として、各種のセメント板が使用されている。矩形板などの所定形状をなすセメント板を並べて外壁面を構成することで、耐久性などに優れた外壁面が能率的に施工できる。
外装仕上げに用いるセメント板の製造は、セメントに骨材などを配合し、水を加えて練り込んでスラリー状にしたものを、成形型に充填したり、押出成形機で押し出したりして、所定の形状に成形する。成形されたセメント成形体は、そのまま一定の時間放置しておいても、セメントが水和硬化することで、硬質のセメント板が得られる。これは自然養生と呼ばれる。セメント成形体を、加熱状態で維持することで、水和硬化を促進させる加熱養生も採用される。セメント成形体を加熱蒸気雰囲気におく蒸気養生も知られている。蒸気養生は、作業能率が高く、品質性能の安定したセメント板が経済的に生産できる。
【0003】
特許文献1には、セメント系無機質板(セメント成形体に相当)の養生方法として、下面が開口する箱形トレイを順次上下方向に積み重ね、上下の箱形トレイの間に構成される密閉空間にセメント系無機質板を収容した状態で蒸気養生を行う技術が示されている。
【特許文献1】特開2000−185982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した箱形トレイを積み重ねる養生装置では、セメント成形体を1枚ずつ箱形トレイの上面に載せ、その上に新たな箱形トレイを載せ、次のセメント成形体を載せるという作業を繰り返し、養生終了後には、上記と逆の作業を再び繰り返して、養生装置からセメント成形体を取り出すことになり、作業の手間がかかって生産性を損なうという問題がある。
養生終了後には、積み重ねた箱形トレイを、上段から一つずつ取り外すので、上段のセメント成形体は直ちに密閉空間から開放され外気と接触して冷却されるが、下段のセメント成形体はかなり遅れて密閉空間から解放されることになる。そのため、上段のセメント成形板と下段の成形板とで、冷却過程にずれが生じ、品質性能にばらつきが生じるという問題もある。
【0005】
本発明の課題は、前記した従来技術の問題点を解消し、養生装置へのセメント成形体の収容および養生後の取り出し作業が容易で能率的に行え、養生処理されたセメント成形体の品質性能を均一で良好にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるセメント成形体の養生装置は、セメント成形体の養生処理に用いる養生装置であって、それぞれに前記セメント成形体を載置する複数の棚が上下方向に間隔をあけ水平方向の端部を開放した状態で配置された棚枠体と、前記棚枠体の開放端部に配置され開放端部を閉塞する端部閉塞盤と、前記端部閉塞盤に配置され、弾性材料からなり、前記棚枠体の開放端部に当接する弾性密閉層と、前記端部閉塞盤を前記棚枠体の開放端部に押圧して固定する押圧固定手段とを備える。
〔セメント成形体〕
基本的には、通常の建築用途、その他の各種用途で採用されているセメント成形体に適用できる。このようなセメント成形体として、繊維強化セメント、気泡セメント、軽量セメント、木質繊維セメントなどが含まれる。
【0007】
セメント成形体は、セメントを含むスラリーを成形したあと、養生処理を行って、セメント成分の硬化を促進させる。
セメント成形体の材料となるセメントは、上記のような水和硬化による硬化体が形成できる硬化材料であればよく、一般的なポルトランドセメントその他のセメント材料が使用できる。セメント以外の硬化材料として、石膏や漆喰、樹脂などをセメントと併用することもできる。
セメント成形体の材料には、セメントの他に、骨材や強化繊維、発泡剤、着色剤、減水剤、消泡剤、油性物質などが、必要に応じて配合される。
【0008】
セメント成形体は、十分な量の水を加えた状態で成形される。成形方法として、注型成形や押出成形、遠心成形など、通常のセメント成形体の成形技術が適用できる。
セメント成形体の形状は、例えば、一般的な建材の場合は、矩形板状をなすものが多い。矩形以外にも、多角形や円形、その他の直線および曲線からなる平板状のものがある。基本的には平板状をなし、表面に凹凸を設けたり、厚みの違うところを設けたり、穴を設けたりすることができる。平板以外に、波板や円筒面状のもの、より複雑な曲面状のものもある。例えば、瓦のように複雑な三次元形状を有するものもある。
セメント成形体の寸法は、使用目的や要求性能によって異なる。例えば、建材として使用される矩形板状のセメント成形体の場合、通常、長さ60〜360cm、幅30〜90cm、厚み1.2〜5.0cmに設定される。
【0009】
セメント成形体の具体例として、特公平1−30778号公報に記載されたプラスチックコンクリートが挙げられる。このプラスチックコンクリートは、セメントに水を加えたセメントスラリーに界面活性剤やビニル単量体を混合撹拌してW/O型エマルジョンとした材料を成形し、ビニル単量体を重合させセメントを硬化させることで得られる。蒸気養生によって効率的に硬化させることができる。
〔養生処理〕
前記したセメントスラリーから成形された段階のセメント成形体は、比較的に大量の水分を含み、柔らかくて変形や傷付きを生じ易い状態である。
【0010】
セメント成形体に含まれるセメントなどの水和硬化材料は、常温で放置しておくだけでも水和硬化作用によって硬化し、セメント成形体の硬化物が得られる。
品質性能の高いセメント成形体の硬化物を能率的に得るために、養生処理が行われる。
基本的には、通常のセメント成形体の製造で採用されている養生技術が適用できる。特に、養生処理を加熱状態で行う加熱養生が採用される。
加熱養生の養生温度や養生時間、養生環境は、基本的には通常の加熱養生技術と共通している。加熱蒸気を供給して養生を行う蒸気養生が好ましい方法である。
本発明では、加熱養生を行う際に、セメント成形体を保持しておくのに、養生装置を使用する。
【0011】
養生装置は、棚枠体と端部閉塞盤と弾性密閉層と押圧固定手段とを備えている。
〔棚枠体〕
複数の棚が、上下方向に間隔をあけて配置される。それぞれの棚の上面にセメント成形体が載置される。このような機能が実現できれば、セメント成形体その他の物品を収容しておけるラック部材など、各種の棚枠体の構造技術が採用できる。
棚枠体の材料は、セメント成形体を支持しておける機械的強度や養生処理において晒される熱や蒸気に耐える材料であればよい。熱伝導率の高い材料は、セメント成形体への熱伝達が良好に行える。通常は鋼板などの鋼材が使用できる。アルミ合金など、鋼以外の金属材料や、セラミック材料、合成樹脂材料、強化樹脂材料なども使用できる。
【0012】
棚枠体は、例えば、上下方向に延びる支柱や支持板に対して、上下方向に間隔をあけて水平面状の棚が支持されている構造が採用される。棚は支柱や支持板に固定されてあってもよいし、取り外し自在に支持されているだけでもよい。
棚の平面形状は、セメント成形体の寸法形状に合わせて設定される。例えば、矩形板状のセメント成形体であれば、セメント成形体よりも一回り大きな矩形状の棚を採用することができる。セメント成形体の平面形状が矩形以外の複雑な形状などであっても、棚の形状は矩形などの簡単な形状のほうが、製造や取り扱いがし易い。柵の上面に、セメント成形体を案内したり位置決めしたりするための突起や突条、溝、凹部などを設けておく場合もある。棚の耐変形性や剛性を高めるリブや補強梁などを設けておくこともできる。
【0013】
それぞれの棚は、水平方向の端部のうち少なくとも一方が開放されている。残りの端部は全て閉塞されていても良い。水平方向で対向する2方向が開放された端部であり、開放端部と直交する残りの2方向が閉塞された端部であってもよい。一つの端辺の一部だけが開放されてあってもよい。開放部分の大きさが、セメント成形体の点検や出し入れが容易にできる広さを有していることが望ましい。
棚枠体の構造として、互いに分離形成された棚枠を、上下方向に積み重ねることで棚枠体を構成することができる。棚枠には、上下の棚枠が有する棚面の間に間隔をあけるための支柱や支持枠を備えておくことができる。
【0014】
具体的には、断面コ字形で水平方向に延び水平方向の両端が開放された棚枠を、上下方向に積み重ねて構成することができる。この場合、開放端部と直交する端辺については閉塞された状態になる。
棚枠体における上下の棚の隙間すなわちセメント成形体を収容する密閉空間の高さは、セメント成形体の高さよりも少し大きい程度に設定される。セメント成形体の各側辺と、棚の端部を閉塞する面材や棚枠体の支持構造との間にも、ある程度の間隔をあける。但し、密閉空間内でセメント成形体の周囲に広い空間があくと、セメント成形体からの水分蒸発が過剰になった、表面の硬化不良を起こし易くなる。
【0015】
そこで、端部閉塞盤によって開放端部が閉塞された棚枠体の各棚に構成される密閉空間において、棚に載置された状態におけるセメント成形体の露出表面積X(cm)と、セメント成形体を除いた密閉空間の空隙容積Y(cm)とから得られるV=Y/X(cm)が、0<V<3.33の関係を満足することが望ましい。
棚枠体には、棚枠体の全体を支持する支持台や棚枠体を移動させるのに利用するキャスターなどの構造を備えておくこともできる。棚枠体を養生処理室などに固定するフックや固定具を備えておくこともできる。
〔端部閉塞盤〕
棚枠体の開放端部に配置され開放端部を閉塞する。
【0016】
棚枠体に開放端部を配置することで、棚枠体のうち、個々のセメント成形体の収容空間が全面で閉塞される。
セメント成形体の収容空間は上下方向に複数が設けられる。端部閉塞盤は、収容空間毎に個別に配置されても良いが、通常は、複数の収容空間をまとめて一つの端部閉塞盤で閉塞する。棚枠体の一つの側面全体を、一つの端部閉塞盤で閉塞すれば、端部閉塞盤の取り扱いが容易である。
棚枠体の水平方向の両端面に、上下方向に並んだ複数の収容空間が開放されている場合、棚枠体の両端面にそれぞれ、端面全体を塞ぐ端部閉塞盤を取り付けることで、収容空間をまとめて閉塞することができる。
【0017】
棚枠体の開放端部が平らな面であれば、当接面が平坦な端部閉塞盤を取り付ければよい。棚枠体の開放端部に凹凸がある場合、それに対応する凹凸を有する端部閉塞盤を用いることができる。後述する弾性密閉層を備えていれば、棚枠体の開放端部に少しぐらいの凹凸があっても問題なく閉塞することができる。
端部閉塞盤と棚枠体の何れかに、端部閉塞盤を棚枠体に支持させたり取付位置や姿勢を決めたりするために、係合構造や嵌合構造、連結構造を備えておくことができる。
具体的には、端部閉塞盤に、棚枠体の上端に係止される係止片を有することができる。
端部閉塞盤を、棚枠体の開放端部のうち略全体を閉塞する本体部分と、構造や取り扱い上、本体部分では閉塞できない一部を閉塞する補助的な閉塞部材とを組み合わせて構成することができる。補助的な閉塞部材は、端部閉塞盤とは別個に棚枠体に取り付けられ、その外側に端部閉塞盤を取り付けることで、補助的な閉塞部材も固定されるようになっていれば、取り付けおよび取り外しが容易である。例えば、端部閉塞盤が、棚枠体の上端から下端近くまでに配置されるが、最下端の一部が閉塞できない場合、棚枠体の開放端部のうち下端において、開放端部と端部閉塞盤との間に配置され、開放端部の下端を閉塞する下端閉塞部材を組み合わせることができる。
【0018】
端部閉塞盤の材料は、棚枠体と同様の材料が使用できる。比較的に軽量で取り扱い易く、機械的強度や耐熱性にも優れたアルミ材などが好ましい。
端部閉塞盤による棚枠体の閉塞を確実にするために、弾性密閉層を備えておく。
〔弾性密閉層〕
端部閉塞盤に配置され、弾性材料からなり、棚枠体の開放端部に当接する。
端部閉塞盤が剛体であって、棚枠体の開放端部に生じた細かな凹凸やずれに対応し難い場合であっても、弾性密閉層が棚枠体の凹凸に合わせて弾力的に細かく変形することで、棚枠体の開放端部が確実に閉塞される。
【0019】
弾性密閉層の材料は、養生作業の環境条件に耐えて弾力的に変形できれば、通常の弾性材料が使用できる。具体的には、合成樹脂の発泡体や合成樹脂エラストマー、ゴム、編織布、繊維集積体などが挙げられる。EPDM樹脂発泡体は、弾性密閉層に必要な各種機能が良好に発揮できる。複数の材料層を積層しておいてもよい。弾性密閉層の厚みは、使用材料や要求性能によっても違うが、通常、5〜50mmの範囲に設定できる。
弾性密閉層は、端部閉塞盤のうち、棚枠体の開放端部と当接する面の全体に設けることができる。端部閉塞盤と補助的な閉塞部材とを組み合わせて使用する場合、補助的な閉塞部材のほうにも弾性密閉層を設けてもよいし、補助的な閉塞部材には弾性密閉層は設けない場合もある。端部閉塞盤に設けた弾性密閉層と棚枠体の端部との間に補助的な閉塞部材を挟み込むことで、補助的な閉塞部材を棚枠体に押し付けて閉塞を確実にするとともに、補助的な閉塞部材がない部分においても端部閉塞盤と棚枠体との間に隙間が生じることを防止することができる。
【0020】
弾性密閉層は、端部閉塞盤に固定設置されていてもよいし、端部閉塞盤に着脱自在に取り付けるようにしておいてもよい。棚枠体の端面に弾性密閉層を配置したあと、端部閉塞盤を棚枠体に固定することで、間に挟まれた弾性密閉層が取り付けられるようになっていてもよい。
〔押圧固定手段〕
端部閉塞盤を、弾性密閉層を介して棚枠体の開放端部に配置しただけでは、棚枠体の開放端部の閉塞が不十分になる可能性がある。養生用の蒸気が、棚枠体の内部のセメント成形体を収容した空間に浸入することがある。蒸気の圧力で、端部閉塞盤が浮き上がったりずれたりする心配もある。
【0021】
押圧固定手段で、端部閉塞盤を棚枠体の開放端部に押圧して固定すれば、上記のような問題が解消できる。
押圧固定手段としては、通常の機械装置などに利用されている機構や装置機器が採用できる。具体的には、バネ機構、トグル機構、ジャッキ機構、クサビ機構、カム締め機構などの物理的機械機構が採用できる。電磁的な吸引力や反発力を利用することもできる。
押圧固定手段として、棚枠体の開放端部に配置された端部閉塞盤の背面から棚枠体の両側面にかけて引き回され、両端が棚枠体の側面に固定される弾性帯材を有することができる。弾性帯体は、輸送物品の固定や位置決めなどに利用されるゴムベルトや荷締めベルトが使用できる。弾性帯体も、弾性密閉層と同様に、養生環境に耐える環境耐性を備えている必要がある。棚枠体の側面には、弾性帯体を係止するフックや弾性帯体を挟着する止め具など、着脱自在な固定手段を設けておくことができる。
【0022】
〔養生方法〕
前記した養生装置を用いて、セメント成形体の養生作業を行う。
基本的な作業手順や作業条件は、通常の養生処理技術が適用される。
具体的には、以下の工程を組み合わせる方法が採用できる。
<工程(a)>
棚枠体のそれぞれの棚にセメント成形体を載せる。この段階では、端部閉塞盤は取り外しておく。
棚枠体に予め棚が配置されている場合は、上下に並ぶ各棚の開放端部の側からセメント成形体を挿入して、下方の棚の上面にセメント成形体を載せる。棚枠体の両端が開放端部である場合は、何れの側からセメント成形体を挿入してもよい。また、棚枠体の片方の開放端部には端部閉塞盤を予め取り付けておいてもよい。
【0023】
棚枠体が、複数の棚枠を上下に積み重ねて構成される構造の場合、予め棚枠を積み重ねて棚枠体を組み立てておいてもよいし、棚枠の上にセメント成形体を載せる作業と、その上に新たな棚枠を載せる作業とを交互に繰り返して、棚枠体を組み上げることもできる。
棚枠体に収容するセメント成形体は、成形直後で硬化がほとんど進行していないセメント成形体であってもよいし、成形後ある程度の時間を経過して、ある程度まで硬化が進行したセメント成形体であってもよい。押出成形機から押出成形されたセメント成形体を一定長さに切断すると同時に棚枠体に収容することもできる。養生処理室の内部まで、セメント成形体を搬送したあと、養生処理室に配置した棚枠体に収容してもよいし、養生処理室に搬入する前の段階から、棚枠体あるいは分離された個々の棚枠や棚板にセメント成形体を載せておき、棚枠体などとともにセメント成形体を搬送したり、養生処理室に持ち込んだりすることもできる。
【0024】
<工程(b)〜(c)>
棚枠体の開放端部に、弾性密閉層を介して端部閉塞盤を配置する。
前記した補助的な端部閉塞材を使用する場合は、端部閉塞盤の取り付け前あるいは取り付けと同時に所定の位置に配置する。
その後、押圧固定手段で、端部閉塞盤を棚枠体の開放端部に押圧して固定する。
これにより、セメント成形体の収容空間が閉塞される。
端部閉塞盤および弾性密閉層が、棚枠体の端面に押圧されることで、棚枠体の端面に凹凸が存在しても、弾性密閉層の弾力的変形によって、隙間が確実に塞がれる。セメント成形体の収容空間が、確実な閉塞状態に維持される。充分な押圧力を加えておくことで、棚枠体の移動や養生処理における外力が加わっても、閉塞状態が損なわれることはない。
【0025】
その結果、セメント成形体の収容空間から、セメント成形体および内部の水分が過度に逃げ出すことがなくなる。外部の空気が収容空間に入り込んで、セメント成形体の表面特性を損なうことも防止できる。
なお、セメント成形体の収容空間は、完全な気密状態である必要はない。本発明の目的を達成できる程度の気密状態であればよい。わずかな空気や水蒸気の流通があっても、セメント成形体の表面と内部との養生作用の差を過度に大きくしなければ構わない。また、覆い蓋の内部空間で圧力が過度に上昇した場合には、圧力を逃がせる程度に、押圧固定手段による押圧力を設定しておくこともできる。
【0026】
セメント成形体の収容空間を閉塞状態にするのは、養生処理を開始する直前でよい。棚枠体を養生処理室に搬入する前に、棚枠体に端部閉塞盤を取り付け押圧固定手段で押圧固定しておいてもよい。
<工程(d)>
養生装置の外側空間に蒸気を供給して、棚枠体と端部閉塞盤とで構成される密閉空間に収容されたセメント成形体を、蒸気養生する。
この加熱以後の処理は、通常の養生処理と同様に行える。処理条件や要求性能によっても異なる。加熱雰囲気は、通常の空気雰囲気で良い。加熱蒸気を導入して養生処理室内を加熱することができる。通常、加熱温度30〜90℃、加熱時間18〜48時間に設定される。
【0027】
<セメント成形体の取り出し>
養生処理を終えたセメント成形体は、棚枠体から取り出して、次の処理工程に送る。
所定時間の養生処理が終われば、押圧固定手段を解除し、棚枠体から端部閉塞盤および
弾性密閉層を取り外す。セメント成形体の収容空間が外部に開放される。外部の空気が収容空間に流入したり、収容空間の内部で加熱された空気が外部に逃げ出したりすることで、収容空間およびセメント成形体が冷却される。収容空間に溜まっていた湿気や蒸気も外部に放出される。それぞれの棚の収容空間が、ほぼ同時に外部に開放されるので、それぞれのセメント成形体は同じ環境条件で冷却などが進行する。
【0028】
セメント成形体は、棚枠体に収容した状態で、次の処理工程や保管場所に送り、その後に、棚枠体から取り出すこともできる。
棚枠体からセメント成形体を取り出す際には、棚枠体の開放端部からセメント成形体を取り出すことができる。棚枠を上下に積み重ねた構造の場合も、個々の棚枠を分離することなく、セメント成形体を取り出すことができる。勿論、積み重ねた棚枠を順次分離してから、セメント成形体を取り出すことも可能である。
<その他の工程>
上記各工程の前あるいは後には、通常のセメント成形体の製造技術と同様の処理工程を行うことができる。
【0029】
例えば、養生処理を終えたセメント成形体は、出荷や保管の作業工程に送ることができる。セメント成形体の表面に、塗装やコーティングを施すことができる。セメント成形体に建築物への施工に必要な金具や部材を取り付けたり、金具や部材を取り付けるための穴や溝を加工したりすることもできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明にかかるセメント成形体の養生装置および養生方法では、複数の棚のそれぞれにセメント成形体が収容された棚枠体の開放端部に、弾性密閉層を介して端部閉塞盤を押圧して固定することで、棚枠体の開放端部を確実に閉塞することができる。この状態で、養生処理を行えば、養生用の加熱蒸気などがセメント成形体の収容空間に浸入することが良好に阻止でき、多数のセメント成形体を能率的に均一な品質で養生処理することができる。
しかも、棚枠体から端部閉塞盤を取り外した状態では、個々のセメント成形体の収容空間が、棚枠体の開放端部のところで外部に開放される。養生処理を施すセメント成形体を、棚枠体の開放端部から収容空間に運び入れることができる。棚枠体が、複数の分離形成された棚枠を上下に積み重ねて構成される形態であっても、予め組みたてられた棚枠体に、あとから、セメント成形体を収容することができる。養生処理の作業性が向上する。
【0031】
養生処理を終えたあと、端部閉塞盤を取り外すだけで、密閉されていたセメント成形体の収容空間が同時に外部に開放されて外気が流入したり、内部の湿気が速やかに外部に放出されたりする。セメント成形体の冷却が迅速に行われ、セメント成形体に対する次の作業を直ぐに始められる。しかも、棚枠体に収容された多数のセメント成形体が、同じ条件で外部への開放あるいは冷却が進むので、収容場所の違いによって、セメント成形体の品質性能に違いが出ることが防止できる。
棚枠体に収容されたセメント成形体を開放端部から取り出すことができる。例えば、箱形トレイを積み重ねた構造の養生装置のように、上から順番に箱形トレイを分離するような面倒な作業を要しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1〜4に示す実施形態は、建築用の外装建材となるセメント成形体の製造を対象にしている。
〔セメント成形体の製造〕
セメント成形体として、建築物の外装壁面を仕上げ施工する際に、外壁に並べて貼り付けられる矩形厚板状のセメント成形板Bを製造する。
セメント成形板Bは、セメントに繊維材料や骨材などの添加材料を配合し、さらに水を加えてスラリー状に調製された成形材料を、押出成形機を用いて押出成形し、一定の長さ毎に切断したものである。このようにして成形されたセメント成形板Bは、加熱養生することによって、セメントの水和硬化が進行し、十分な機械的強度や硬度を有するセメント成形板Bになる。
【0033】
セメント成形板Bの加熱養生は、加熱炉あるいは加熱処理室に、成形直後で含水状態のセメント成形板Bを収容して、一定時間保持することで、加熱状態を維持し、硬化を促進させる。通常は、処理室に加熱蒸気を供給する蒸気養生を行う。
〔養生装置〕
図1は、養生処理室の内部におけるセメント成形板Bの保持状態を示す。
養生装置の全体を支持する載置台10の上に、多数の棚枠22を積み重ねて棚枠体20を構築している。棚枠体20を構成する各棚枠22の上面に、養生処理を行うセメント成形体Bが載せられる。
【0034】
<棚枠>
棚枠22は、鋼板で構成されており、図3に詳しく示すように、扁平で下方が開口するコ字形をなす断面形状が長さ方向に延びた枠状をなしている。コ字状の棚枠22を上下に積み重ねることで、棚枠22の水平面同士の間に、セメント成形板Bを収容できる空間が構成される。この収容空間は、図3、4に示すように、上下面と左右の側面が棚枠22で囲まれるとともに、棚枠体20の一端から他端へと水平方向に貫通し、外部に開放されている。図2に示すように、棚枠22の平面形状はセメント成形板Bよりも一回り大きな矩形状である。
【0035】
<端部閉塞盤>
図1に示すように、棚枠体20のうち、前記セメント成形体Bの収容空間が外部に開放される両端面には、端部閉塞盤30、30が配置される。端部閉塞盤30は、アルミ板を用いて、プレス成形あるいは溶接などの加工手段で作製されている。図3に示すように、端部閉塞盤30は、棚枠体20の矩形をなす端面形状とほぼ同じ矩形状をなしているが、棚枠体20の下端よりも少し上までの高さに設定されている。端部閉塞盤30の左右の側辺および上辺は屈曲されて端部閉塞盤30の剛性あるいは耐変形性を高まる補強リブの機能を果たしている。
【0036】
端部閉塞盤30の左右の側端には、取っ手36が設けられている。取っ手36は、金属棒材をU字形に屈曲加工したものを、端部閉塞盤30に溶接などで固定している。図4に示すように、取っ手36は、端部閉塞盤30を持ち運んだり、棚枠体20の端面に配置したり、取り外したりする際の手掛かりとなる。
<弾性密閉層>
端部閉塞盤30のうち、棚枠体20に当接する側の表面には、端部閉塞盤30の平面形状と同じ矩形の厚板状をなす弾性密閉層40を有する。弾性密閉層40は、EPDM発泡体からなり、端部閉塞盤30に接着固定されている。
【0037】
<補助閉塞枠>
図2あるいは図4に示すように、端部閉塞盤30の上端辺で左右の角部近くには、係止片34を有する。係止片34は、端部閉塞盤30を構成するアルミ板の一部を折り曲げて形成され、弾性密閉層40を超えて棚枠体20のほうに突出している。図1に示すように、係止片34が棚枠体20の上端面に係止されることで、棚枠体20に端部閉塞盤30が支持され位置決めされる。
端部閉塞盤30が係止片34によって棚枠体20に支持された状態で、端部閉塞盤30の下端と、棚枠体20の下端あるいは支持台10の上端面との間には、少し隙間があいている。これは、端部閉塞盤30の下端が支持台10に当接することで、棚枠体20の端面から端部閉塞盤30が浮き上がったり隙間ができたりすることを防ぐ機能がある。棚枠22を積み重ねて構成される棚枠体20の高さには、ある程度のバラツキが生じることは避けられない。棚枠体20の設計高さよりも少し低目に端部閉塞盤30の高さを決めておけば、棚枠体20の端面に確実に端部閉塞盤30を配置して、係止片34による支持も確実にできる。
【0038】
端部閉塞盤30の下端で、棚枠体20の開放端部を塞ぐために、補助閉塞枠50が用いられる。補助閉塞枠50は、端部閉塞盤30と同様の金属板材からなる。
図3、4に示すように、棚枠体20の最下端に配置された棚枠22の端面を覆う横長矩形の正面片52と、正面片52の上辺と左右の側辺に折り返し片54、56とを有している。上辺の折り返し片54を棚枠22の上端面に引っ掛けて棚枠22に支持される。左右の側辺の折り返し片56で棚枠22を左右から挟み込んでいる。補助閉塞枠50は、棚枠22に対して正確に位置決めされた状態で取り付けられる。補助閉塞枠50の下辺は、棚枠22の下端までを確実に覆って支持台10の上面に当接されている。その結果、端部閉塞盤30の下端よりも下部でも、棚枠体20の端面を確実に閉塞しておくことができる。
【0039】
図1に示すように、補助閉塞枠50の外側に、弾性密閉層40を介して端部閉塞盤30を取り付けることで、補助閉塞枠50は棚枠体20に押しつけられた状態で固定される。
なお、図4において、最下端の棚枠22の内部にはセメント成形体Bを収容せず空けておく場合には、補助閉塞枠50を使用しなくても問題はない。
<押圧固定手段>
図1に示すように、棚枠体20の両端面に端部閉塞盤30,30が配置された状態で、端部閉塞盤30,30の背面から棚枠体20の左右の側面にかけて、上下の2個所に、ゴムバンドからなる弾性帯体60が引き回されて配置されている。弾性帯体60の端部は、棚枠体20の側面から突出する固定ピン62に支持されている。
【0040】
弾性帯体60は充分に引き伸ばされた状態で取り付けられている。弾性帯体60の弾性復元力が、端部閉塞盤30および弾性密閉層40、さらには補助閉塞枠50を、棚枠体20の端面に強力に押圧した状態で固定する。したがって、弾性密閉層40は、その厚み方向にかなり弾力的に押し潰された状態になっている。棚枠22を積み重ねた棚枠体20の端面に、棚枠22毎の段差や凹凸があっても、そのような凹凸を埋めるように、弾性密閉層40が弾力的に変形する。
<空隙容積と露出表面積>
図5に示すように、棚枠体20の各棚枠22の間に構成される密閉空間にセメント成形体Bが収容された状態において、棚枠22の上面に載置されたセメント成形体Bの露出表面積Xは、セメント成形体Bの上面および四周の側面との合計面積となる。
【0041】
密閉空間の全容積からセメント成形体Bが占める体積を除いた容積が空隙容積Yとなる。
露出表面積Xは、養生工程において、セメント成形体Bから水分が蒸発することのできる面積を表すことになる。露出表面積Xが大きいほど、水分が蒸発し易くなる。空隙容積Yは、蒸発した水分が蒸気として存在できる空間の広さを表すことになる。空隙容積Yが大きいほど、空隙内の空気中に大量の蒸気を保持でき、セメント成形体Bからの水分蒸発が容易になる。露出表面積Xに対する空隙容積Yの割合が適切になるように、棚枠22を設計しておくことで、養生工程におけるセメント成形体Bからの水分蒸発を適切に調節することができる。過剰な水分蒸発によって、セメント成形体Bの表面に硬化不良が発生する問題が解消できる。
【0042】
〔養生工程〕
<準備作業>
前記した押出成形機から押し出され切断されたセメント成形板Bは、棚枠体20を構成する各棚枠22の上面に供給される。押出機から押出成形すると同時に切断し、棚枠22の上面に送り出すこともできる。
図4に示すように、支持台10の上に棚枠22を順次積み重ねながら、棚枠22の上面にセメント成形板Bを載せる。なお、予め全ての棚枠22を積み重ねて棚枠体20を組み立てたあとで、棚枠体20の開放端部から棚枠22の間の収容空間に、セメント成形板Bを送り込むようにすることもできる。
【0043】
棚枠体20が組み立てられ、セメント成形板Bが収容されたあと、棚枠体20の両端面で、下端には補助閉塞枠50を取り付ける。そのあとで、端部閉塞盤30を取り付ける。
図1に示すように、端部閉塞盤30の係止片34が棚枠体20の上端に係止されて位置決めおよび支持がなされる。
端部閉塞盤30の背面から棚枠体20の両側面へと弾性帯材60が取り付けられ、引き伸ばされた弾性帯材60の弾性復元力によって、端部閉塞盤30、弾性密閉層40および補助閉塞枠50が、棚枠体20の端面に強力に押し付けられて固定される。
弾性密閉層40が弾力的に変形することで、棚枠体20の端面に生じた段差や凹凸を確実に埋めて、棚枠体20の開放端部を閉塞することができる。
【0044】
<養生処理>
図1に示す養生装置の全体を、養生処理室に送り込む。養生処理室では、内部雰囲気を直接にヒーターなどで加熱したり、外部から加熱蒸気を供給したりすることで、内部を加熱する。養生処理室内の高温雰囲気の熱エネルギーは、棚枠体20や端部閉塞盤30などを介して、棚枠体20の密閉空間に収容されたセメント成形板Bに伝熱される。
セメント成形板Bが加熱されると、セメント成形板B内の水分が蒸発しようとする。しかし、棚枠体20の収容空間は密閉されているので、発生した蒸気は収容空間内に留まる。収容空間の蒸気圧が高くなると、それ以上は、セメント成形板Bからの水分の蒸発は起こり難くなる。セメント成形板Bの表面は、高湿度状態の水蒸気で覆われることになるので、セメント成形板Bの表面が過度に乾燥したり、表面における水和硬化が阻害されたり、表面と内部との硬化状態が大きく違ってしまったりすることがない。
【0045】
セメント成形板Bの収容空間で内部圧力が高まると、棚枠体20の開放端部から端部閉塞盤30との隙間を通って、内部の水蒸気が逃げようとする。しかし、弾性帯体60による弾性力で、端部閉塞盤30は棚枠体20の端面に強力に押し付けられているので、水蒸気が過度に漏れることはない。なお、収容空間内の水蒸気圧が過度に高まった場合は、棚枠体20の端面と端部閉塞盤30との間から水蒸気を逃がして、水蒸気圧を調整する機能も果たすことができる。
このような状態で、所定時間にわたって保持されたセメント成形板Bは、表面から内部までが良好に硬化し、機械的強度や形状精度が優れ、品質の安定したセメント成形板Bとなる。
【0046】
<セメント成形板Bの取り出し>
養生処理が終了すれば、養生処理室への加熱蒸気の供給は停止され、養生硬化されたセメント成形板Bの取り出しが行われる。
まず、弾性帯材60を取り外す。次に、両側の端部閉塞盤30および弾性密閉層40を撤去する。補助閉塞枠50も取り除かれる。
棚枠体20は、両端の開放端部が外部に開放される。それぞれの収容空間に溜まった高温の空気や水蒸気が、外部に放出される。外部から冷たい空気が流入する。この現象が、全ての収容空間で、ほぼ同時に起こるので、上下に並んだ全てのセメント成形板Bが、同じ環境条件に晒される。
【0047】
その後、棚枠体20からセメント成形板Bを取り出すのは、養生処理室の内部であってもよいし、棚枠体20のままで養生処理室から搬出してもよい。棚枠体20の棚枠22を上から順番に取り除きながら、セメント成形板Bを取り出すことができる。棚枠体20のままで、開放端部からセメント成形板Bを引き出すようにして取り出すこともできる。セメント成形板Bは、充分に硬化しているので、セメント成形板Bだけを棚枠体20から取り出して取り扱っても、何ら問題はない。
硬化後のセメント成形板Bは、出荷や保管作業に送ったり、仕上げ工程などの次の処理工程に送ったりする。
【実施例】
【0048】
具体的なセメント成形体の養生作業を行い、その結果を評価した。
〔セメント成形体の製造〕
常法にしたがって、セメント成形体を製造した。セメント成形体の材料には、ポルトランドセメント、水、油性成分、補強繊維、骨材などが含まれる。セメント成形体の材料を、押出成形して、940mm(幅)×37,000mm(長さ)×30mm(厚さ)の矩形板状をなすセメント成形体を得た。このセメント成形体を養生硬化させて、セメント硬化板製品を製造する。
図1〜4に示す構造の養生装置を用いた。前記したセメント成形体の露出表面積Xは 37,564cm、空隙容積Yは42,550cmとなり、V=Y/X≒1.13cmとなる。
【0049】
養生条件は、相対湿度98%の環境で、30℃から90℃まで17時間をかけて昇温させ、その後、90℃で17時間維持することで、湿熱養生を行った。
養生処理のあと、115℃で7時間かけて乾燥させ、セメント硬化板製品を得た。
得られたセメント硬化板は、表面硬化状態は良好であり、表面エフロの発生も認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、例えば、建築物の外装建材となるセメント成形体の製造に適用され、品質性能の優れたセメント成形体を能率的かつ経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態を表し、養生装置の使用状態における一部断面正面図
【図2】同上の上面図
【図3】同上の一部断面側面図
【図4】セメント成形体の収容および装置組立作業の途中における一部断面正面図
【図5】露出表面積Xと空隙容積Yとの関係を示す側面図(a)および正面図(b)
【符号の説明】
【0052】
10 載置台
20 棚枠
30 端部閉塞盤
40 弾性密閉層
50 補助閉塞枠
60 弾性帯材
B セメント成形板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント成形体の養生処理に用いる養生装置であって、
それぞれに前記セメント成形体を載置する複数の棚が上下方向に間隔をあけ水平方向の端部を開放した状態で配置された棚枠体と、
前記棚枠体の開放端部に配置され開放端部を閉塞する端部閉塞盤と、
前記端部閉塞盤に配置され、弾性材料からなり、前記棚枠体の開放端部に当接する弾性密閉層と、
前記端部閉塞盤を前記棚枠体の開放端部に押圧して固定する押圧固定手段と
を備えるセメント成形体の養生装置。
【請求項2】
前記端部閉塞盤によって開放端部が閉塞された前記棚枠体の各棚に構成される密閉空間において、棚に載置された状態における前記セメント成形体の露出表面積X(cm)と、セメント成形体を除いた密閉空間の空隙容積Y(cm)とから得られるV=Y/X(cm)が、0<V<3.33の関係を満足する
請求項1に記載のセメント成形体の養生装置。
【請求項3】
前記棚枠体が、断面コ字形で水平方向に延び水平方向の両端が開放された棚枠を、上下方向に積み重ねて構成されてなり、
前記端部閉塞盤が、前記棚枠体の水平方向の両端に有する開放端部のそれぞれに配置されている
請求項1または2に記載のセメント成形体の養生装置。
【請求項4】
前記端部閉塞盤が、前記棚枠体の上端に係止される係止片を有し、
前記棚枠体の前記開放端部のうち下端において、開放端部と前記端部閉塞盤との間に配置され、前記開放端部の下端を閉塞する補助閉塞枠をさらに備える
請求項1〜3の何れかに記載のセメント成形体の養生装置。
【請求項5】
前記押圧固定手段が、前記棚枠体の前記開放端部に配置された前記端部閉塞盤の背面から棚枠体の両側面にかけて引き回され、両端が棚枠体の側面に固定される弾性帯材を有する
請求項1〜4の何れかに記載のセメント成形体の養生装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の養生装置を用いるセメント成形体の養生方法であって、
前記棚枠体のそれぞれの棚に前記セメント成形体を載せる工程(a)と、
前記棚枠体の前記開放端部に、前記弾性密閉層を当接させて前記端部閉塞盤を配置する工程(b)と、
前記押圧固定手段で、前記端部閉塞盤を前記棚枠体の開放端部に押圧して固定する工程(c)と、
前記養生装置の外側空間に蒸気を供給して、前記棚枠体と前記端部閉塞盤とで構成される密閉空間に収容された前記セメント成形体を、蒸気養生する工程(d)
を含むセメント成形体の養生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−198905(P2006−198905A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13197(P2005−13197)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】