説明

セメント混和剤とその製造方法

【課題】製造上、管理上、およびセメント混和剤としての性能上において問題となる析出物の発生が十分に抑制されたセメント混和剤を提供する。また、そのようなセメント混和剤の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のセメント混和剤は、ポリオキシアルキレン基とカルボキシル基を有する重合体(A)と硫酸塩(B)とを含有する液体状のセメント混和剤であって、該硫酸塩(B)が、硫酸カリウムおよび硫酸の有機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種であり、(1)該混和剤中の固形分割合が30〜70重量%、(2)該混和剤中の硫酸塩(B)の濃度が0.01〜10重量%、(3)pHが4以上、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤とその製造方法に関する。詳細には、製造上、管理上、およびセメント混和剤としての性能上において問題となる析出物の発生が十分に抑制された、液体状のセメント混和剤、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に広く用いられている。
【0003】
セメント混和剤を用いると、セメント組成物の流動性を高めることが可能となり、セメント組成物を減水させることができる。この減水により、硬化物の強度や耐久性等を向上させることができる。
【0004】
近年、セメント混和剤として、ポリカルボン酸系共重合体を主成分とするセメント混和剤が提案されている。ポリカルボン酸系共重合体を主成分とするセメント混和剤(ポリカルボン酸系セメント混和剤)は、高い減水性能を発揮できる。
【0005】
ポリカルボン酸系共重合体は、その製造効率の点から、過硫酸系開始剤を用いた重合反応によって製造することが一般的である。過硫酸系開始剤を用いると、重合体中のカルボキシル基の存在と、過硫酸の分解によって生成する硫酸の存在によって、得られるポリカルボン酸系共重合体の水溶液は、pHが7未満の酸性溶液となる。
【0006】
上記酸性の共重合体水溶液をそのまま用いると、酸性であるために安全性に問題がある。上記酸性の共重合体水溶液を希釈して用いると、酸性は弱まるものの、生産性が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、一般には、上記酸性の共重合体水溶液を水酸化ナトリウムで中和する(特許文献1、2)。ところが、上記中和を行う場合、特定の共重合体水溶液では、低温条件下で、硫酸塩化合物の理論溶解度より低い濃度において、該硫酸塩に由来すると考えられる結晶の生成が起こることが判明した。このため、得られた共重合体水溶液を移送する際に配管中で上記結晶の詰まりが起こる等の製造上の問題や、得られた共重合体水溶液を保管する際に保管容器中に上記結晶が析出するという管理上の問題や、上記結晶の析出に伴う共重合体水溶液中の固形分濃度の変動に起因するセメント混和剤としたときの性能低下の問題が生じる。
【特許文献1】特表2004−519406号公報
【特許文献2】特開2006−232600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、製造上、管理上、およびセメント混和剤としての性能上において問題となる析出物の発生が十分に抑制されたセメント混和剤を提供することにある。また、そのようなセメント混和剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のセメント混和剤は、
ポリオキシアルキレン基とカルボキシル基を有する重合体(A)と硫酸塩(B)とを含有する液体状のセメント混和剤であって、
該硫酸塩(B)が、硫酸カリウムおよび硫酸の有機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種であり、
(1)該混和剤中の固形分割合が30〜70重量%、
(2)該混和剤中の硫酸塩(B)の濃度が0.01〜10重量%、
(3)pHが4以上、
である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記重合体(A)が、式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とを有する。
【化1】

(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または−COO(AO)X基を表し、mは0〜2の整数を表し、pは0または1を表し、AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦200であり、Xは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を表す。)
【化2】

(式(2)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH)mCOOM基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、またはアルカノールアミン基を表し、mは0〜2の整数を表す。また、Rが−(CH)mCOOM基の場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。)
【0011】
好ましい実施形態においては、上記式(1)で表される構造単位のpが0である。
【0012】
本発明の別の局面によれば、セメント混和剤の製造方法が提供される。この製造方法は、本発明のセメント混和剤の製造方法であって、
重合開始剤として過硫酸塩を用い、式(3)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の少なくとも1種と式(4)で表される不飽和カルボン酸系単量体の少なくとも1種とを含む単量体成分を重合させる工程(I)と、
水酸化カリウムおよび有機アミンから選ばれる少なくとも1種を用いて、該工程(I)で得られる重合体含有液のpHを4以上に調整する工程(II)と、
を含む。
【0013】
【化3】

(式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または−COO(AO)X基を表し、mは0〜2の整数を表し、pは0または1を表し、AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦200であり、Xは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を表す。)
【化4】

(式(4)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH)mCOOM基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、またはアルカノールアミン基を表し、mは0〜2の整数を表す。また、Rが−(CH)mCOOM基の場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。)
【0014】
好ましい実施形態においては、上記式(3)で表される構造単位のpが0である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造上、管理上、およびセメント混和剤としての性能上において問題となる析出物の発生が十分に抑制されたセメント混和剤を提供することができる。また、そのようなセメント混和剤の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔重合体(A)〕
本発明における重合体(A)は、ポリオキシアルキレン基とカルボキシル基を有する。本発明における重合体(A)は、好ましくは、式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とを有する。本発明において、重合体(A)は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0017】
【化5】

【0018】
式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。
式(1)中、Rは水素原子または−COO(AO)X基を表す。AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦200であり、好ましくは2≦n≦150、より好ましくは3≦n≦100である。Xは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を表す。
式(1)中、mは0〜2の整数を表す。
式(1)中、pは0または1を表し、好ましくはp=0である。
【0019】
【化6】

【0020】
式(2)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH)mCOOM基を表す。Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、またはアルカノールアミン基を表す。mは0〜2の整数を表す。
式(2)中、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
式(2)中、Rが−(CH)mCOOM基の場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。
【0021】
本発明における重合体(A)が式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とを有する場合、重合体(A)の全構造単位中における式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位との合計の含有割合は、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0022】
重合体(A)の全構造単位中において、式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位との合計量を100重量%としたとき、式(1)で表される構造単位の割合は、好ましくは50〜99.5重量%、より好ましくは60〜99重量%、さらに好ましくは65〜98.5重量%、特に好ましくは70〜98重量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0023】
上記重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3000〜100000、より好ましくは5000〜100000、さらに好ましくは10000〜80000である。上記共重合体の重量平均分子量が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0024】
上記重合体(A)は、未中和であっても良いし、少なくとも一部が中和されていても良い。例えば、カルボン酸部位の少なくとも一部が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩であっても良い。好ましくは、水酸化カリウムおよび有機アミンから選ばれる少なくとも1種を用いて中和する。上記水酸化カリウムおよび有機アミンから選ばれる少なくとも1種は、固形や100%純品を用いても良いし、任意の適切な濃度の水溶液を用いても良い。
【0025】
上記重合体(A)の製造方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。好ましくは、式(3)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の少なくとも1種と式(4)で表される不飽和カルボン酸系単量体の少なくとも1種とを含む単量体成分を重合させて製造する。
【0026】
【化7】

【0027】
式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。
式(3)中、Rは水素原子または−COO(AO)X基を表す。AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦200であり、好ましくは2≦n≦150、より好ましくは3≦n≦100である。Xは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を表す。
式(3)中、mは0〜2の整数を表す。
式(3)中、pは0または1を表し、好ましくはp=0である。
【0028】
【化8】

【0029】
式(4)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH)mCOOM基を表す。Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、またはアルカノールアミン基を表す。mは0〜2の整数を表す。
式(4)中、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
式(4)中、Rが−(CH)mCOOM基の場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。
【0030】
上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド(ランダム))(メタ)アクリレートなどのアルコキシポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドランダム体の(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレート;ビニルアルコール、アリルアルコール、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のアルケニルアルコールにアルキレンオキシドを10〜200モル(好ましくは15〜150モル、より好ましくは25〜150モル)付加して得られる付加体;アリルクロライドとメトキシポリエチレングリコールのエーテル化反応物など、アルケニル基とハロゲン基を有する化合物と末端アルキルポリアルキレングリコールとのエーテル化反応で得られる化合物;が挙げられる。
【0031】
上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体としては、好ましくは、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(p=0)である。
【0032】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、任意の適切な方法で製造し得る。例えば、特開平10−236859号公報、特表2004−519406号公報に記載の方法が挙げられる。
【0033】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、アリルアルコール、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のアルケニルアルコールにアルキレンオキシド1〜500モルを付加して得られる付加体、あるいは、アルケニル基とハロゲンを有する化合物と末端アルキルポリアルキレングリコールとのエーテル化反応によって得ることもでき、例えば、アリルクロライドとメトキシポリエチレングリコールのエーテル化反応物が挙げられる。
【0034】
上記不飽和カルボン酸系単量体は、任意の適切な方法で製造し得る。
【0035】
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が挙げられる。不飽和ジカルボン酸系単量体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの塩であり、より好ましくは、アクリル酸、およびこの塩である。共重合性に優れるからである。
【0036】
上記重合体(A)を製造する際に使用する全単量体中、上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体と上記不飽和カルボン酸系単量体の合計の含有割合は、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0037】
上記重合体(A)を製造する際には、任意の適切な他の単量体を用いても良い。例えば、スチレン、アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、特許第3683176号の段落0015に記載の単量体が挙げられる。これらは、用いる全単量体中、好ましくは0〜30重量%用いることができる。
【0038】
上記重合体(A)を製造する際に使用する全単量体中において、上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体と上記不飽和カルボン酸系単量体の合計量を100重量%としたとき、該不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の割合が、好ましくは50〜99.5重量%、より好ましくは60〜99重量%、さらに好ましくは65〜98.5重量%、特に好ましくは70〜98重量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0039】
〔セメント混和剤〕
本発明のセメント混和剤は、上記重合体(A)と硫酸塩(B)とを含有する液体状のセメント混和剤である。
【0040】
本発明のセメント混和剤中の上記重合体(A)は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。本発明のセメント混和剤中の上記硫酸塩(B)は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0041】
上記硫酸塩(B)としては、硫酸カリウムおよび硫酸の有機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種である。本発明のセメント混和剤は、硫酸塩(B)として、硫酸カリウムおよび硫酸の有機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含むことにより、本発明の効果を十分に発揮し得る。有機アンモニウム塩としては、任意の適切な有機アンモニウム塩を採用し得る。
【0042】
本発明のセメント混和剤中、上記重合体(A)と上記硫酸塩(B)との合計量の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な割合を採用し得る。好ましくは、50〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%である。本発明の効果を十分に発揮し得るからである。
【0043】
本発明のセメント混和剤中、上記硫酸塩(B)の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な割合を採用し得る。好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜8重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%である。本発明の効果を十分に発揮し得るからである。
【0044】
本発明のセメント混和剤中の固形分割合は、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは30〜65重量%、さらに好ましくは30〜60重量%、特に好ましくは30〜55重量%である。本発明の効果を十分に発揮し得るからである。
【0045】
本発明のセメント混和剤は、pHが、好ましくは4以上、より好ましくは6〜8である。本発明の効果を十分に発揮し得るからである。
【0046】
本発明のセメント混和剤は、上記重合体(A)と上記硫酸塩(B)以外に、任意の適切なその他の成分を含んでいても良い。
【0047】
本発明のセメント混和剤は、任意の適切なセメント分散剤を1種または2種以上含有することが可能である。上記セメント分散剤を用いる場合、本発明のセメント混和剤と上記セメント分散剤との配合質量比(本発明のセメント混和剤/上記セメント分散剤)は、使用する上記セメント分散剤の種類、配合条件、試験条件等の違いによって一義的には決められないが、固形分換算での質量割合(質量%)として、好ましくは1〜99/99〜1、より好ましくは5〜95/95〜5、さらに好ましくは10〜90/90〜10である。
【0048】
本発明のセメント混和剤と併用し得る上記セメント分散剤としては、例えば、下記のようなセメント分散剤が挙げられる。
【0049】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系;ポリスチレンスルホン酸塩系;等の、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤。
【0050】
特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報に記載の、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、および、これらの単量体と共重合可能な単量体を重合して得られる共重合体;特開平7−53645号公報、特開平8−208769号公報、特開平8−208770号公報に記載の、ポリエーテル化合物に不飽和カルボン酸系単量体をグラフト重合した親水性グラフト重合体等の、分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤。
【0051】
本発明のセメント混和剤は、任意の適切なセメント添加剤(セメント添加材)を含有し得る。例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、硬化遅延剤、早強剤・促進剤、消泡剤、AE剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張剤が挙げられる。
【0052】
その他の任意の適切なセメント添加剤(セメント添加材)としては、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤などを挙げることができる。
【0053】
上記に挙げたようなセメント添加剤(セメント添加材)は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0054】
本発明のセメント混和剤の、特に好適な実施形態としては、下記の(1)〜(7)が挙げられる。
【0055】
(1)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>オキシアルキレン系消泡剤の、2成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が挙げられ、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルアミン類である。なお、<2>オキシアルキレン系消泡剤の配合重量比は、<1>本発明のセメント混和剤に対して、0.01〜20重量%の範囲が好ましい。
【0056】
(2)<1>本発明のセメント混和剤、<2>オキシアルキレン系消泡剤、および、<3>AE剤の、3成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が挙げられ、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルアミン類である。なお、<2>オキシアルキレン系消泡剤の配合重量比は、<1>本発明のセメント混和剤に対して、0.01〜20重量%の範囲が好ましい。また、<3>AE剤の配合重量比は、<1>本発明のセメント混和剤に対して、0.001〜2重量%の範囲が好ましい。
【0057】
(3)<1>本発明のセメント混和剤、<2>炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体、およびこれらの単量体と共重合可能な単量体を重合して得られる共重合体(例えば、特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報に記載)、および、<3>オキシアルキレン系消泡剤の、3成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が挙げられ、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルアミン類である。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>共重合体の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>共重合体の重量比で、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10である。また、<3>オキシアルキレン系消泡剤の配合重量比は、<1>本発明のセメント混和剤と<2>共重合体の合計量に対して、0.01〜20重量%の範囲が好ましい。
【0058】
(4)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の、2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系分散剤が挙げられる。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>スルホン酸系分散剤の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>スルホン酸系分散剤の重量比で、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10である。
【0059】
(5)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>材料分離低減剤の、2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、例えば、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物が挙げられる。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>材料分離低減剤の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>材料分離低減剤の重量比で、好ましくは10/90〜99.99/0.01、より好ましくは50/50〜99.9/0.1である。この組み合わせのセメント混和剤は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング剤として好適である。
【0060】
(6)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>遅延剤の、2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、例えば、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類が挙げられ、好ましくはオキシカルボン酸類である。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>遅延剤の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>遅延剤の重量比で、好ましくは50/50〜99.9/0.1、より好ましくは70/30〜99/1である。
【0061】
(7)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>促進剤の、2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸およびギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が挙げられる。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>促進剤の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>促進剤の重量比で、好ましくは10/90〜99.9/0.1、より好ましくは20/80〜99/1である。
【0062】
本発明のセメント混和剤においては、上記構成を有することにより、従来のように水酸化ナトリウムで中和を行った場合に得られる共重合体水溶液中に何らかの結晶が析出して特に低温下ではその析出が顕著となるという問題を解消できる。すなわち、得られた共重合体水溶液を移送する際に配管中で結晶の詰まりが起こる等の製造上の問題が回避でき、得られた共重合体水溶液を保管する際に保管容器中に上記結晶が析出するという管理上の問題を回避でき、上記結晶の析出に伴う共重合体水溶液中の固形分濃度の変動に起因するセメント混和剤としたときの性能低下の問題を回避できる。
【0063】
〔セメント混和剤の製造方法〕
本発明のセメント混和剤は、任意の適切な方法で製造し得る。
本発明のセメント混和剤の製造方法は、好ましくは、
重合開始剤として過硫酸塩を用い、式(3)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の少なくとも1種と式(4)で表される不飽和カルボン酸系単量体の少なくとも1種とを含む単量体成分を重合させる工程(I)と、
水酸化カリウムおよび有機アミンから選ばれる少なくとも1種を用いて、該工程(I)で得られる重合体含有液のpHを4以上に調整する工程(II)と、
を含む。
【0064】
上記工程(I)における重合反応は、任意の適切な方法で行い得る。例えば、溶液重合が挙げられる。溶液重合を行う場合、回分式で行っても良いし、連続式で行っても良い。溶液重合を行う場合、溶媒としては、原料が可溶な溶媒であれば、任意の適切な溶媒を採用し得る。例えば、脱溶媒工程を省略し得る点で、水を溶媒に用いることが好ましい。単量体成分は、反応容器に初期一括で仕込んでも良いし、一部または全部を滴下する方法で行っても良いし、その他の任意の適切な方法で添加しても良い。
【0065】
上記工程(I)における重合反応の反応温度は、本発明の目的を達成し得る範囲で、任意の適切な温度を採用し得る。例えば、過硫酸塩を重合開始剤として用いることを考慮すれば、40〜90℃が好ましく、42〜85℃がより好ましく、45〜80℃がさらに好ましい。また、促進剤としてL−アスコルビン酸(塩)を併用した場合、重合反応の反応温度は、30〜90℃が好ましく、35〜85℃がより好ましく、40〜80℃がさらに好ましい。
【0066】
上記工程(I)における重合反応の反応時間は、本発明の目的を達成し得る範囲で、任意の適切な時間を採用し得る。例えば、0.5〜10時間が好ましく、0.5〜8時間がより好ましく、1〜6時間がさらに好ましい。重合時間が上記範囲を外れると、重合率の低下や生産性の低下をもたらすおそれがある。
【0067】
上記過硫酸塩としては、重合開始剤として用い得る任意の適切な過硫酸塩を採用し得る。例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムが挙げられる。また、硫酸の発生源となる亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩を用いることもできる。さらに、重合開始剤として、他の任意の適切な重合開始剤を併用しうる。他の重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;2,2´−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物や、2,2´−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物や、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物などの、水溶性アゾ系開始剤;などが挙げられる。重合開始剤は、一種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0068】
上記過硫酸塩の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な量を使用し得る。好ましくは、上記単量体成分に対して、0.01〜50重量%であり、より好ましくは0.1〜30重量%であり、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。
【0069】
上記工程(I)で用いる単量体成分は、式(3)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の少なくとも1種と式(4)で表される不飽和カルボン酸系単量体の少なくとも1種とを含む。上記単量体成分中、上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体と上記不飽和カルボン酸系単量体の合計の含有割合は、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0070】
上記工程(I)で用いる単量体成分中において、上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体と上記不飽和カルボン酸系単量体の合計量を100重量%としたとき、該不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の割合が、好ましくは60〜96重量%、より好ましくは70〜95重量%、さらに好ましくは80〜94重量%、特に好ましくは84〜94重量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0071】
上記工程(I)で用いる単量体成分中には、任意の適切な他の単量体を用いても良い。例えば、スチレン、アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、特許第3683176号の段落0015に記載の単量体が挙げられる。これらは、上記単量体成分中、好ましくは0〜30重量%用いることができる。
【0072】
上記工程(II)では、水酸化カリウムおよび有機アミンから選ばれる少なくとも1種を用いて、上記工程(I)で得られる重合体含有液のpHを4以上に調整する。好ましくはpHを6〜8に調整する。上記水酸化カリウムおよび有機アミンから選ばれる少なくとも1種は、固形や100%純品を用いても良いし、任意の適切な濃度の水溶液を用いても良い。上記水酸化カリウムおよび有機アミンから選ばれる少なくとも1種に加えて、水酸化ナトリウムを併用しても良い。なお、工程(I)における重合反応の重合率の低下や共重合性の低下を防止して本発明のセメント混和剤のセメント分散能の低下を防ぐために、重合反応はpHが4未満の条件下で行い、重合後にpHを4以上に調整することが好ましい。
【0073】
本発明のセメント混和剤の製造方法においては、上記重合体(A)と上記硫酸塩(B)以外の任意の適切なその他の成分を添加する工程を含んでいても良い。
【0074】
〔セメント組成物〕
本発明のセメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に添加して用いることができる。
【0075】
上記セメント組成物は、任意の適切なセメント組成物を採用し得る。例えば、セメント、水、骨材、消泡剤を含むものが挙げられる。
【0076】
上記セメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が挙げられる。さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていても良い。
【0077】
上記骨材としては、任意の適切な骨材を採用し得る。例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も使用可能である。
【0078】
上記消泡剤としては、任意の適切な消泡剤を採用し得る。例えば、特許第3683176号の段落0041〜0042に記載の消泡剤が挙げられる。
【0079】
上記セメント組成物における、コンクリート1m当たりの配合量および単位水量は、例えば、高耐久性、高強度のコンクリートを製造するためには、好ましくは、単位水量が100〜185kg/m、水/セメント比が10〜70重量%であり、より好ましくは、単位水量が120〜175kg/m、水/セメント比が20〜65重量%である。
【0080】
セメント組成物に本発明のセメント混和剤を添加する際の添加量としては、セメントの全量を100重量%とした場合、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜8重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。上記添加量が0.01重量%未満であると、セメント組成物としての性能に劣るおそれがある。上記添加量が10重量%を超えると、経済性に劣るおそれがある。
【0081】
上記セメント組成物は、上記各成分を、任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。例えば、ミキサー中で混練する方法が挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0083】
<重量平均分子量>
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 Millenium Ver.3.21
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合液に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、さらに酢酸でpH=6に調整した溶離液
溶離液流速:0.8ml/min
カラム温度:40℃
カラム:東ソー株式会社製、TSK Guard Column SWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
標準物質:ポリエチレングリコール、ピークトップ分子量(Mp)=272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
検量線次数:三次式
【0084】
<モルタル試験条件>
所定量のセメント混和剤、セメント、ISO強さ用試験砂を使用して、セメントの保持性能を確認した。
(1)使用材料
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
細骨材:ISO基準砂
水:イオン交換水(共重合体と消泡剤を含む)
消泡剤:NMB社製の商品名「MA404」を共重合体の10重量%使用
(2)使用量
W/C=40
水=220.0g
セメント=550.0g
砂=1350.0g
(3)モルタル調製方法・フロー値測定方法
JIS R5201に規定される強さ試験での練り混ぜ方法、および、フロー試験に準じて行った。
【0085】
〔実施例1〕:セメント混和剤(1)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水597.01g、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド50モル付加体1060.44gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、アクリル酸33.87gを水14.20gに溶解させた水溶液を6時間かけて滴下した。アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸1.23gを水148.52gに溶解させた還元剤水溶液、および、過硫酸アンモニウム4.47gを水140.26gに溶解させた開始剤水溶液を、6時間10分かけて滴下した。その後、20分間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化カリウム水溶液でpH=7.5まで中和して、重量平均分子量64320の共重合体(1)と硫酸カリウムを含む水溶液とした。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(1)とした。硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.16重量%であった。
得られたセメント混和剤(1)を0℃で2週間保管したところ、結晶の生成は観察されなかった。結果を表1に示す。
得られたセメント混和剤(1)をモルタル試験に供した。結果を表2に示す。
【0086】
〔比較例1〕:セメント混和剤(C1)
30%水酸化カリウム水溶液の代わりに30%水酸化ナトリウム水溶液を用いた以外は実施例1と同様に行い、pH=7.5まで中和して、重量平均分子量64320の共重合体(C1)と硫酸ナトリウムを含む水溶液とした。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(C1)とした。硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.16重量%であった。
得られたセメント混和剤(C1)を0℃で2週間保管したところ、針状の結晶が生成し、容器底部に結晶が多く堆積した。結果を表1に示す。
得られたセメント混和剤(C1)の上澄み部分から採取した水溶液(C1−A)および容器底部から採取した水溶液(C1−B)をモルタル試験に供した。結果を表2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
表1より、硫酸ナトリウムを含むセメント混和剤(C1)では、低温で長時間保管した場合に、針状の結晶が生成し、容器底部に結晶が多く堆積してしまうことが判る。このため、得られた共重合体水溶液を移送する際に配管中で上記結晶の詰まりが起こる等の製造上の問題や、得られた共重合体水溶液を保管する際に保管容器中に上記結晶が析出するという管理上の問題や、上記結晶の析出に伴う共重合体水溶液中の固形分濃度の変動に起因するセメント混和剤としたときの性能低下の問題が生じる。
他方、表1より、硫酸カリウムを含む本発明のセメント混和剤(1)では、低温で長時間保管しても結晶が生成しないことが判る。このため、上記の諸問題が生じない。
【0090】
表2より、硫酸カリウムを含む本発明のセメント混和剤(1)では、添加量0.2重量%の場合にフロー値が175mmの性能を有することが判る。
他方、表2より、硫酸ナトリウムを含むセメント混和剤(C1)では、容器底部から採取した水溶液(C1−B)において、添加量0.2重量%の場合にフロー値が167mmとなり、性能が大きく低下することが判る。
【0091】
〔実施例2〕:セメント混和剤(2)
共重合体(1)と硫酸カリウムを含む水溶液を46%水溶液とする代わりに、48%水溶液として、セメント混和剤(2)とした以外は、実施例1と同様に行った。
得られたセメント混和剤(2)を0℃で2週間保管したところ、針状の結晶がごくわずかに生成していた。しかし、結晶の生成がごくわずかであったので、得られた共重合体水溶液を移送する際に配管中で上記結晶の詰まりが起こる等の製造上の問題や、得られた共重合体水溶液を保管する際に保管容器中に上記結晶が析出するという管理上の問題や、上記結晶の析出に伴う共重合体水溶液中の固形分濃度の変動に起因するセメント混和剤としたときの性能低下の問題は生じなかった。
【0092】
〔実施例3〕:セメント混和剤(3)
共重合体(1)と硫酸カリウムを含む水溶液を46%水溶液とする代わりに、50%水溶液として、セメント混和剤(3)とした以外は、実施例1と同様に行った。
得られたセメント混和剤(3)を0℃で2週間保管したところ、針状の結晶がわずかに生成していた。しかし、結晶の生成がわずかであったので、得られた共重合体水溶液を移送する際に配管中で上記結晶の詰まりが起こる等の製造上の問題や、得られた共重合体水溶液を保管する際に保管容器中に上記結晶が析出するという管理上の問題や、上記結晶の析出に伴う共重合体水溶液中の固形分濃度の変動に起因するセメント混和剤としたときの性能低下の問題はほとんど生じなかった。
【0093】
〔実施例4〕:セメント混和剤(4)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水364.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)524.8gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した後、アクリル酸23.4gを水28.1gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム1.8gを水57.2gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き70℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化カリウム水溶液でpH5.5まで中和して、重量平均分子量39800の共重合体(4)と硫酸カリウムを含む水溶液とした。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(4)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.16重量%であった。
得られたセメント混和剤(4)を0℃で2週間保管したところ、結晶の生成は観察されなかった。結果を表3に示す。
【0094】
〔実施例5〕:セメント混和剤(5)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水364.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)524.8gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した後、アクリル酸23.4gを水28.1gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム1.8gを水57.2gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き70℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、トリエタノールアミンでpH5.5まで中和して、重量平均分子量39800の共重合体(5)とトリエタノールアミン硫酸塩を含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(5)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.16重量%であった。
得られたセメント混和剤(5)を0℃で2週間保管したところ、結晶の生成は観察されなかった。結果を表3に示す。
【0095】
〔実施例6〕:セメント混和剤(6)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水364.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)524.8gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した後、アクリル酸23.4gを水28.1gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム1.8gを水57.2gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き70℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、トリイソプロパノールアミンでpH5.5まで中和して、重量平均分子量39800の共重合体(6)とトリイソプロパノールアミン硫酸塩を含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(6)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.16重量%であった。
得られたセメント混和剤(6)を0℃で2週間保管したところ、結晶の生成は観察されなかった。結果を表3に示す。
【0096】
〔実施例7〕:セメント混和剤(7)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水364.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)524.8gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した後、アクリル酸23.4gを水28.1gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム1.8gを水57.2gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き70℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化カリウム水溶液でpH6.0まで中和して、重量平均分子量39800の共重合体(7)と硫酸カリウムを含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(7)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.16重量%であった。
得られたセメント混和剤(7)を0℃で2週間保管したところ、結晶の生成は観察されなかった。結果を表3に示す。
【0097】
〔比較例2〕:セメント混和剤(C2)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水364.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)524.8gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した後、アクリル酸23.4gを水28.1gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム1.8gを水57.2gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き70℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5まで中和して、重量平均分子量39800の共重合体(C2)と硫酸ナトリウムを含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(C2)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.16重量%であった。
得られたセメント混和剤(C2)を0℃で2週間保管したところ、針状の結晶が生成し、容器底部に結晶が多く堆積した。結果を表3に示す。
【0098】
〔比較例3〕:セメント混和剤(C3)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水364.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)524.8gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した後、アクリル酸23.4gを水28.1gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム1.8gを水57.2gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き70℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0まで中和して、重量平均分子量39800の共重合体(C3)と硫酸ナトリウムを含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(C3)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.16重量%であった。
得られたセメント混和剤(C3)を0℃で2週間保管したところ、針状の結晶が生成し、容器底部に結晶が多く堆積した。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
表3中のAA(wt%)は、仕込み時の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体とアクリル酸(AA)の合計重量に対するアクリル酸(AA)の重量の割合を示す。
表3中の実施例4〜7で見られるように、NaOHの代わりにKOHや有機アミンを使用しても、結晶の生成は確認されなかった。固形分の変動が起こりえないことから、同一サンプル内での流動性変動は起こりえないことが自明である。
【0101】
〔実施例8〕:セメント混和剤(8)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水360.1g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)518.2gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で74℃に昇温した後、アクリル酸29.9gを水28.4gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム1.9gを水61.5gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き74℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化カリウム水溶液でpH5.5まで中和して、重量平均分子量62800の共重合体(8)と硫酸カリウムを含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(8)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.17重量%であった。
得られたセメント混和剤(8)を0℃で2週間保管したところ、結晶の生成は観察されなかった。結果を表4に示す。
【0102】
〔比較例4〕:セメント混和剤(C4)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水360.1g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)518.2gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で74℃に昇温した後、アクリル酸29.9gを水28.4gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム1.9gを水61.5gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き74℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5まで中和して、重量平均分子量62800の共重合体(C4)と硫酸ナトリウムを含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(C4)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.17重量%であった。
得られたセメント混和剤(C4)を0℃で2週間保管したところ、針状の結晶が生成し、容器底部に結晶が多く堆積した。結果を表4に示す。
【0103】
〔実施例9〕:セメント混和剤(9)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水359.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体としてメタリルアルコールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数120モル)517.6gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で68℃に昇温した後、アクリル酸28.5gを水19.3gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を3時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム2.2gを水53.9gに溶解させた開始剤水溶液、およびβ−メルカプトプロピオン酸1.7gを水17.2gに溶解させた水溶液を3時間30分かけて滴下した。その後2時間引き続き68℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化カリウム水溶液でpH5.5まで中和して、重量平均分子量45000の共重合体(9)と硫酸カリウムを含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(9)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.15重量%であった。
得られたセメント混和剤(9)を0℃で2週間保管したところ、結晶の生成は観察されなかった。結果を表5に示す。
【0104】
〔比較例5〕:セメント混和剤(C5)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水359.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体としてメタリルアルコールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数120モル)517.6gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で68℃に昇温した後、アクリル酸28.5gを水19.3gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を3時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム2.2gを水53.9gに溶解させた開始剤水溶液、およびβ−メルカプトプロピオン酸1.7gを水17.2gに溶解させた水溶液を3時間30分かけて滴下した。その後2時間引き続き68℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5まで中和して、重量平均分子量45000の共重合体(C5)と硫酸ナトリウムを含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(C5)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.15重量%であった。
得られたセメント混和剤(C5)を0℃で2週間保管したところ、針状の結晶が生成し、容器底部に結晶が多く堆積した。結果を表5に示す。
【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
表4、5中のAA(wt%)は、仕込み時の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体とアクリル酸(AA)の合計重量に対するアクリル酸(AA)の重量の割合を示す。
表4、5中の実施例8、9で見られるように、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体の長さ、重合体のAA量を変えても、KOH中和において、溶液の固形分変動の原因となる多量の結晶析出は確認されなかった。固形分の変動が起こりえないことから、同一サンプル内での流動性変動は起こりえないことが自明である。
【0108】
〔実施例10〕:セメント混和剤(10)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水364.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)524.8gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した後、アクリル酸23.4gを水28.1gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム3.6gを水57.2gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き70℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化カリウム水溶液でpH5.5まで中和して、重量平均分子量36000の共重合体(10)と硫酸カリウムを含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(10)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.32重量%であった。
得られたセメント混和剤(10)を0℃で2週間保管したところ、結晶の生成は観察されなかった。結果を表6に示す。
【0109】
〔比較例6〕:セメント混和剤(C6)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水364.7g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)524.8gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した後、アクリル酸23.4gを水28.1gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム3.6gを水57.2gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き70℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5まで中和して、重量平均分子量36000の共重合体(C6)と硫酸ナトリウムを含む水溶液を得た。この水溶液を46%水溶液として、セメント混和剤(C6)とした。過硫酸アンモニウム使用量から算出される硫酸イオン含有量は、46%水溶液換算で0.32重量%であった。
得られたセメント混和剤(C6)を0℃で2週間保管したところ、針状の結晶が生成し、容器底部に結晶が多く堆積した。結果を表6に示す。
【0110】
【表6】

【0111】
表6中のAA(wt%)は、仕込み時の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体とアクリル酸(AA)の合計重量に対するアクリル酸(AA)の重量の割合を示す。
表6中の実施例10で見られるように、過硫酸アンモニウムの量を増やして重合を行ったが、KOH中和において、溶液の固形分変動の原因となる多量の結晶析出は確認されなかった。固形分の変動が起こりえないことから、同一サンプル内での流動性変動は起こりえないことが自明である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明のセメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン基とカルボキシル基を有する重合体(A)と硫酸塩(B)とを含有する液体状のセメント混和剤であって、
該硫酸塩(B)が、硫酸カリウムおよび硫酸の有機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種であり、
(1)該混和剤中の固形分割合が30〜70重量%、
(2)該混和剤中の硫酸塩(B)の濃度が0.01〜10重量%、
(3)pHが4以上、
である、セメント混和剤。
【請求項2】
前記重合体(A)が、式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とを有する、請求項1に記載のセメント混和剤。
【化1】

(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または−COO(AO)X基を表し、mは0〜2の整数を表し、pは0または1を表し、AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦200であり、Xは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を表す。)
【化2】

(式(2)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH)mCOOM基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、またはアルカノールアミン基を表し、mは0〜2の整数を表す。また、Rが−(CH)mCOOM基の場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。)
【請求項3】
前記式(1)で表される構造単位のpが0である、請求項2に記載のセメント混和剤。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載のセメント混和剤の製造方法であって、
重合開始剤として過硫酸塩を用い、式(3)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の少なくとも1種と式(4)で表される不飽和カルボン酸系単量体の少なくとも1種とを含む単量体成分を重合させる工程(I)と、
水酸化カリウムおよび有機アミンから選ばれる少なくとも1種を用いて、該工程(I)で得られる重合体含有液のpHを4以上に調整する工程(II)と、
を含む、セメント混和剤の製造方法。
【化3】

(式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または−COO(AO)X基を表し、mは0〜2の整数を表し、pは0または1を表し、AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦200であり、Xは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を表す。)
【化4】

(式(4)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH)mCOOM基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基、またはアルカノールアミン基を表し、mは0〜2の整数を表す。また、Rが−(CH)mCOOM基の場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。)
【請求項5】
前記式(3)で表される構造単位のpが0である、請求項4に記載の製造方法。


【公開番号】特開2008−290932(P2008−290932A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114951(P2008−114951)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】