セメント系階段用段板
【課題】軽量化を達成しながらも、十分な強度を有するセメント系階段用段板を提供すること。
【解決手段】平板状の踏板部2および該踏板部の一側より踏板部端面20と当接して立ち上がる平板状の蹴込み板部3が一体的に押出成形されてなるセメント系階段用段板1であって、踏板部2が押出方向に沿って2以上の軽量化用中空部4を有し、押出方向に対する垂直断面において、該中空部のうち蹴込み板部に最も近い中空部Aにおける踏込み側の肉厚x1が、踏板部の中心に最も近い中空部Bにおける踏込み側の肉厚x2より厚いことを特徴とするセメント系階段用段板1。
【解決手段】平板状の踏板部2および該踏板部の一側より踏板部端面20と当接して立ち上がる平板状の蹴込み板部3が一体的に押出成形されてなるセメント系階段用段板1であって、踏板部2が押出方向に沿って2以上の軽量化用中空部4を有し、押出方向に対する垂直断面において、該中空部のうち蹴込み板部に最も近い中空部Aにおける踏込み側の肉厚x1が、踏板部の中心に最も近い中空部Bにおける踏込み側の肉厚x2より厚いことを特徴とするセメント系階段用段板1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏板部と蹴込み板部を有し、階段の一段分を構成するセメント系階段用段板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押出成形により、コンクリート製品を製造する方法は種々提案され、例えば、長手方向に貫通孔を形成すると共に金属線枠を埋設する筋金入りセメント製品の製造方法(特許文献1)があった。また、コンクリート製品内に鋼繊維を分散し形成する、押出成形による鋼繊維補強建材の製造方法(特許文献2)、あるいはコンクリート製品内に合成繊維を分散し形成する、押出成形によるセメント成形品製造法(特許文献3)があった。
【0003】
一方、踏板部と蹴込み板部を有する階段用の段板の製造工程の煩雑さを解消する段板として、例えば、段板本体内の適所に長手方向全長に亘って、端部に取付部を有する補強パイプまたは補強杵体を埋設させた段板が提案されている(特許文献4,5)。
【特許文献1】特公昭53−47260号公報
【特許文献2】特開昭51−137714号公報
【特許文献3】特開昭49−44099号公報
【特許文献4】特開平6−26162号公報
【特許文献5】特開平7−119269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術により踏板部と蹴込み板部を有する階段用段板を製造するに際し、軽量化のために中空部を形成した場合、強度低下の問題が生じた。
【0005】
本発明は、軽量化を達成しながらも、十分な強度を有するセメント系階段用段板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平板状の踏板部および該踏板部の一側より踏板部端面と当接して立ち上がる平板状の蹴込み板部が一体的に押出成形されてなるセメント系階段用段板であって、
踏板部が押出方向に沿って2以上の軽量化用中空部を有し、押出方向に対する垂直断面において、該中空部のうち蹴込み板部に最も近い中空部Aにおける踏込み側の肉厚が、踏板部の中心に最も近い中空部Bにおける踏込み側の肉厚より厚いことを特徴とするセメント系階段用段板に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るセメント系階段用段板によれば、軽量化を達成しながらも、十分な強度を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(階段用段板)
本発明に係るセメント系階段用段板(以下、単に「段板」ということがある)は、階段の一段分を構成するもので、例えば、図5に示すように、複数の段板1を両端でささら桁10に取り付けて使用される。
【0009】
本発明の段板1は詳しくは、図1に示すように、平板状の踏板部2および平板状の蹴込み板部3が一体的に押出成形されてなるものであり、蹴込み板部3は踏板部2の一側より踏板部2の端面20と当接しながら、踏板部2の略厚み方向に立ち上がっている。図1の左図は本発明の段板1の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示し、右図は左図において段板1を左側から見たときの概略見取り図を示す。
【0010】
踏板部2は、押出方向Dに沿って2以上の軽量化用中空部4を有し、すなわち押出方向Dに対して略平行に2以上の軽量化用中空部4を有する。本発明においては、押出方向Dに対する垂直断面(以下、単に「垂直断面」という)において、踏板部2が有する中空部4のうち蹴込み板部3に最も近い中空部Aにおける踏込み側の肉厚x1を、踏板部の中心に最も近い中空部Bにおける踏込み側の肉厚x2より厚くする。これによって、中空部による軽量化を達成しながらも、十分な強度を確保できる。詳しくは、図10に示すように、踏み込み方向Yで荷重をかけた場合、中空部を有していても、比較的大きな荷重になるまで破断を抑制できる。そのような現象が起こるメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のメカニズムに基づくものと考えられる。中空部Aにおける肉厚x1を上記範囲内とすることにより、蹴込み板部3が、踏板部2の踏み込み方向Yに対する強度を有効に補強して、荷重付加により中空部Aにかかる応力を分散する。その結果、図10に示すように蹴込み板部3で破断13が生じるまで、踏板部2と蹴込み板部3との境界部分10での破断を防止できるため、比較的大きな荷重になるまで破断を抑制できるものと考えられる。肉厚x1が肉厚x2に等しいか、または肉厚x2よりも薄いと、例えば図11に示すように踏み込み方向Yで荷重をかけた場合、中空部Aに応力が集中し、踏板部102と蹴込み板部103との境界部分110で破断113が起こるため、比較的小さな荷重で破断が起こる。
【0011】
中空部Aと中空部Bとの間に軽量化用中空部4を有する場合、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果の観点から、当該中空部における踏込み側の肉厚x3よりも、中空部Aにおける踏込み側の肉厚x1を厚くすることが好ましい。図1において、中空部Aと中空部Bとの間に軽量化用中空部は1つしか示されていないが、これに限定されるものではなく、2以上の中空部が存在してよい。その場合、中空部Aにおける踏込み側の肉厚x1は、中空部Aと中空部Bとの間に存在する全ての軽量化用中空部における踏込み側の肉厚よりも厚くすることが好ましい。
【0012】
本明細書中、踏板部の中心とは、垂直断面における踏板部の重心である。重心とは等質の材料(例えば、紙)を当該部材の輪郭で切り取り、均衡をとって点で支えたときの当該点である。踏板部の中心に最も近い中空部とは、垂直断面において、踏板部中心を包囲する中空部が存在する場合は当該中空部を意味し、踏板部中心を包囲する中空部が存在しない場合は、踏板部中心に最も近い中心を有する中空部を意味するものとする。
中空部の中心とは、垂直断面における中空部の重心である。
【0013】
中空部における踏込み側の肉厚とは、中空部によって分断される踏板部の厚みのうち、踏込み側の最小厚みを指すものである。踏込み側とは、ヒトが階段を上り下りする際にヒトと接触する踏込み面5を有する方という意味である。
【0014】
中空部Aにおける肉厚x1は、上記範囲内であれば特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、踏板部2の厚みをt1としたとき、t1/5〜t1/3、特にt1/4.8〜t1/3.3の範囲内であることが好ましい。肉厚x1は通常、10〜16mm、特に11〜15mmである。なお、踏板部2は、後述するように、踏込み面5が傾斜を有していてよく、その場合、踏板部2の最小厚みと最大厚みとの平均値を厚みt1とみなすものとする。
【0015】
中空部Aの踏板部厚み方向における最大長y1は、上記中空部肉厚x1が確保できる程度において、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではない。最大長y1は通常、20〜35mm、特に25〜30mmである。
【0016】
中空部Aにおける踏込み側とは反対側の肉厚z1は特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、t1/6〜t1/3、特にt1/5.9〜t1/4の範囲内であることが好ましい。肉厚z1は通常、9〜15mm、特に10〜14mmである。
【0017】
中空部Bにおける肉厚x2、および中空部Aと中空部Bとの間の軽量化用中空部における踏込み側の肉厚、例えばx3は、上記範囲内であれば特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、それぞれ独立してt1/6〜t1/3、特にt1/5.8〜t1/3.7の範囲内であることが好ましい。そのような肉厚は通常、それぞれ独立して8〜15mm、特に9〜14mmである。
【0018】
中空部Bの踏板部厚み方向における最大長y2、および中空部Aと中空部Bとの間の軽量化用中空部の踏板部厚み方向における最大長、例えばy3は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではない。これらの最大長は通常、それぞれ独立して30〜40mm、特に31〜37mmである。
【0019】
中空部Bにおける踏込み側とは反対側の肉厚z2、および中空部Aと中空部Bとの間の軽量化用中空部における踏込み側とは反対側の肉厚、例えばz3は特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、それぞれ独立してt1/6〜t1/3、特にt1/5.9〜t1/4の範囲内であることが好ましい。そのような肉厚は通常、それぞれ独立して8〜15mm、特に9〜14mmである。
【0020】
踏板部2が有する中空部4のうち蹴込み板部3に最も近い中空部Aは、垂直断面において、その中心が踏板部2内または踏板部2と蹴込み板部3との境界線30上にある限り、例えば図2に示すように、一部が蹴込み板部3内に形成されてもよい。図2は、本発明の段板1の一例における踏板部2と蹴込み板部3との境界部分の垂直断面図である。図2における、図1と同じ符号は、図1と同じ意味内容を示すため、それらの説明を省略する。
【0021】
踏板部2は、軽量化の観点から、垂直断面において、中空部Bよりも先端側に1以上の軽量化用中空部4をさらに有することが好ましい。このとき、耐火性能の観点から、当該中空部のうち蹴込み板部3に最も遠い中空部Cにおける踏込み側の肉厚x4は、中空部Bにおける踏込み側の肉厚x2より厚いことが好ましく、特に中空部Cと中空部Bとの間に軽量化用中空部を有する場合は、当該中空部における踏込み側の肉厚x5よりも、中空部Cにおける踏込み側の肉厚x4を厚くすることが好ましい。図1において、中空部Cと中空部Bとの間に軽量化用中空部4は1つしか示されていないが、これに限定されるものではなく、2以上の中空部が存在してよい。その場合、中空部Cにおける踏込み側の肉厚x4は、中空部Cと中空部Bとの間に存在する全ての軽量化用中空部における踏込み側の肉厚よりも厚くすることが好ましい。
【0022】
中空部Cにおける肉厚x4は、耐火性能の観点からは好ましくは、11〜20mm、特に12〜18mmである。
中空部Cと中空部Bとの間の軽量化用中空部における踏込み側の肉厚、例えばx5は、上記範囲内であれば特に制限されず、前記x2と同様の範囲内であることが好ましい。そのような肉厚は通常8〜15mm、特に9〜14mmである。
【0023】
中空部Cの踏板部厚み方向における最大長y4は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、10〜30mm、特に15〜28mmである。
中空部Cと中空部Bとの間の軽量化用中空部の踏板部厚み方向における最大長、例えばy5は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、前記y2と同様の範囲内であることが好ましい。そのような最大長は通常30〜40mm、特に31〜37mmである。
【0024】
中空部Cにおける踏込み側とは反対側の肉厚z4は特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、通常、9〜25mm、特に10〜20mmである。
中空部Cと中空部Bとの間の軽量化用中空部における踏込み側とは反対側の肉厚、例えばz5は特に制限されず、前記z2と同様の範囲内であることが好ましい。そのような肉厚は通常、8〜15mm、特に9〜14mmである。
【0025】
踏板部2は、踏込み面5が傾斜を有していてよい。すなわち、踏板部2は図3に示すように、先端に近づくほど、厚みが小さくなるような傾斜を踏込み面5aに有していてよい。これによって、ヒトの上り下りがより円滑に行える。図3は本発明の段板1の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示す。図3における、図1と同じ符号は、図1と同じ意味内容を示すため、それらの説明を省略する。
【0026】
踏板部2が有する軽量化用中空部4の間隔は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではない。
【0027】
踏板部2が有する軽量化用中空部4の形状は、図1に示すような円形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、または図4に示すような略正方形状、略長方形状、略三角形状等の多角形状であってもよい。軽量化用中空部4の形状は各中空部において独立して選択されてよい。軽量化用中空部4の形状が方形または三角形の場合、各コーナー部は図4に示すように丸みを有していてよい。このときのx1〜x5、y1〜y5およびz1〜z5等の寸法は、丸みがなかったときの値を用いるものとする。
【0028】
踏板部2は、上記したような軽量化用中空部のほかに、補強芯材用中空部を有してもよい。補強芯材用中空部は図1中、6で示されるもので、補強芯材としては、例えば、異形棒鋼等の鉄筋、金属製の補強パイプ等が使用可能である。補強芯材は段板1の製造時において押出成形と同時に挿入されてもよいし、または補強芯材用中空部を有する段板1を製造した後において挿入されてもよい。補強芯材用中空部および補強芯材の垂直断面における最大長は通常、10〜25mm、特に15〜23mmである。
【0029】
踏板部2における厚みt1は通常、40〜70mmに設定され、好ましくは45〜60mmである。
踏板部2における幅L1は特に制限されず、通常、200〜350mmに設定され、好ましくは250〜300mmである。
【0030】
踏板部2における軽量化用中空部の数は特に制限されるものではなく、例えば踏板部2における幅L1が250〜300mmの場合で、通常は2以上、特に3〜7、好ましくは4〜6である。
【0031】
本発明は、垂直断面において、踏板部2における軽量化用中空部4の総中空率を30%以上、特に30〜40%という比較的大きな値に設定しても、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果を発揮できる。
【0032】
蹴込み板部3は押出方向に軽量化用中空部8を有することが好ましい。軽量化をより一層、有効に達成できるとともに、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得ることができるためである。
【0033】
蹴込み板部3における中空部8の位置は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は蹴込み板部3の厚み方向において蹴込み板部3の略中央である。
【0034】
蹴込み板部3が有する軽量化用中空部8の形状は、図1に示すような円形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、または図4に示すような略正方形状、略長方形状、略三角形状等の多角形状であってもよい。軽量化用中空部8の形状は各中空部において独立して選択されてよい。
【0035】
蹴込み板部3は、上記したような軽量化用中空部8のほかに、踏板部2においてと同様の補強芯材用中空部(図示せず)を有してもよい。
【0036】
垂直断面において、蹴込み板部3における軽量化用中空部8の総中空率は特に制限されず、通常は5%以上、特に8〜20%である。
【0037】
(水硬性セメント組成物)
本発明の段板は水硬性セメント組成物から製造されてなる無機系硬化体であり、好ましくは曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する高い靭性を有するものである。
【0038】
本発明において、「多重亀裂」とは次のことを意味する。曲げ応力が印加されてセメント硬化体に最初の亀裂が入った段階で、その亀裂部に応力が集中して、通常のセメント硬化体ではそのまま破断に至る。すなわち応力−歪曲線が直線となる弾性変形の段階で破断に至る。そのためエネルギー吸収能が低く、脆性破壊を呈する。これに対して最初の亀裂が入ったのちも、直ちに材料全体の破断に至らず、最初の亀裂に続いて複数の亀裂が発生する現象が存在する。これを多重亀裂という。多重亀裂が発生すると、応力が分散されるため、最初の亀裂発生後も増加する荷重に耐えて大きな歪に至るまで破壊せず、高いエネルギー吸収能と高い靭性を示す。
【0039】
そのような多重亀裂が起こる本発明の段板を構成する水硬性セメント組成物は、少なくとも水硬性セメントを含むマトリックスに繊維を配合・補強してなる繊維補強水硬性組成物である。マトリックスは好ましくはさらにシリカ質原料、パルプおよび水溶性セルロースを含み、減水剤などの混和剤、鉱物繊維および軽量骨材が配合されてもよい。
【0040】
本発明において配合される繊維は、配合によって、水硬性組成物を硬化させてなる硬化体に、曲げ載荷時の多重亀裂を起こさせ得る補強繊維であれば、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系繊維(PVA繊維)、ポリプロピレン系繊維(PP繊維)、ポリエチレン系繊維(PE繊維)、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリベンゾオキサゾール系繊維、レーヨン系繊維、ガラス繊維、スチール繊維等が挙げられる。製造コストを低減し、多重亀裂をより有効に起こす観点から好ましくはPVA繊維、PE繊維、PP繊維、アラミド繊維であり、特にPVA繊維である。
【0041】
これらの繊維は繊維長が3〜100mm、繊維径が5〜200μm、アスペクト比が150〜1000である。繊維長がより短い、繊維径がより大きい、またはアスペクト比がより小さい場合は、曲げ応力が負荷された状態において、最初に亀裂が生じたときに、繊維が架橋しても応力を負担することができず、すぐに引き抜け、多重亀裂を発生する前に破壊してしまう。
一方、繊維長がより長い、繊維径がより小さい、またはアスペクト比がより大きい場合は、曲げ応力が負荷された状態において、繊維の引き抜けよりも先に、繊維自体が破断してしまうために多重亀裂が発生しない。
【0042】
本発明において、繊維の「アスペクト比」とは、繊維長を繊維断面の面積と同面積を有する相当円の直径で除した値である。
【0043】
PVA繊維は通称ビニロン繊維とも呼ばれているもので、PVA繊維を使用する場合は、繊維長が3〜50mm、好ましくは3〜15mm、特に6〜12mm、繊維径が10〜100μm、好ましくは20〜50μm、アスペクト比が100〜400、好ましくは150〜300であることが望ましい。
【0044】
最も好ましいPVA繊維は特に、繊度2〜150dtex、特に4〜25dtex、引張強度4cN/dtex以上、特に6〜20cN/dtexを有する。
繊度は、繊維状物の一定糸長の重量を測定して見掛け繊度をn=5以上で測定した平均値を用いている。なお、一定糸長の重量測定により繊度が測定できないもの(細デニール繊維)はバイブロスコ−プにより測定している。
強度は、予め温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下で24時間繊維を放置して調湿したのち、単繊維を糸長20cm、引張速度10cm/分として万能試験機 島津製作所製「オートグラフ」にて測定した値を用いている。なお繊維長が20cmより短い場合は、そのサンプルの可能な範囲での最大長さを把持長として測定することとしている。
【0045】
そのような好ましいPVA繊維として、市販のクラロンK―II 「パワロン」(クラレ社製)が入手可能である。
【0046】
またPP繊維を使用する場合は、繊維長が3〜15mm、好ましくは6〜12mm、繊維径が5〜40μm、好ましくは10〜30μm、アスペクト比が150〜1000、好ましくは200〜700であることが望ましい。
【0047】
またPE繊維を使用する場合は、繊維長が3〜15mm、好ましくは6〜12mm、繊維径が5〜40μm、好ましくは10〜30μm、アスペクト比が150〜1000、好ましくは200〜700であることが望ましい。
【0048】
上記繊維は硬化後の硬化体における体積混入率が0.1〜10%、好ましくは2〜7%となるように配合される。繊維の体積混入率がより小さいと亀裂が入ったときにそこに集中する応力を支えることができないで架橋作用を発揮できない。また体積混入率がより大きいと繊維同士の接触部分が増加してセメントとの一体化を妨害するため十分な補強効果が得られなくなる。
【0049】
繊維の「体積混入率」とは、以下の方法によって測定された値を用いている。セメント硬化体を押出方向に対して直角方向に裁断し、その裁断面を走査電子顕微鏡を用いて、加速電圧25kVで反射電子像を観察した。セメント硬化体中の繊維混入率Vfは、顕微鏡の視野にある観察面の繊維の断面積の合計を、電子顕微鏡の視野の面積で除した値として求めた。繊維混入率Vfは、試験片の裁断面中の異なる3つの視野について測定した値の平均値を採用した。
【0050】
本発明において使用される水硬性セメントは、水との反応により硬化体を形成できる限り、特に限定されず、例えば、各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、シリカセメント、マグネシアセメント、硫酸塩セメント等をすべて含む。
【0051】
シリカ質原料としては、珪石粉、高炉スラグ、珪砂、フライアッシュ、珪藻土、シリカヒューム、非晶質シリカ等を使用することができる。好ましくは、段板の強度向上および寸法安定性に寄与する点から、珪石粉、珪砂である。これらのシリカ質原料として好ましくは比表面積(JIS R 5201に記載の方法による)が3000〜15000cm2/gのものを使用する。シリカ質原料は水硬性セメント100重量部に対して40〜100重量部、好ましくは50〜80重量部の割合で配合される。シリカ質原料が40重量部より少ないと段板の強度が低下する上に、エフロレッセンスが発生し易くなり、100重量部より多くても段板の強度が低下する。
【0052】
パルプは、綿パルプまたは木材パルプ等の天然パルプが好ましい。天然パルプであれば特に限定されず、バージンパルプのみならず古紙からの再生パルプも使用できる。また木材パルプの場合、木材の組織からリグニンを化学的に取り除いた化学パルプ、木材を機械的に処理した機械パルプのいずれも使用できる。パルプは繊維長が0.05〜10mmのものが好ましい。パルプは水硬性セメント100重量部に対して0.5〜80重量部、好ましくは1〜30重量部の割合で配合される。0.5重量部より少ないと補強効果を発揮できず、また80重量部より多いと分散不良となり、段板の表面平滑性が悪化したりする。
【0053】
水溶性セルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。水溶性セルロースは、水硬性組成物の各成分を混合・混練し、押出成形する際に、混練物に粘性を付与し、成形性を向上させるものである。水溶性セルロースは水硬性セメント100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは1〜6重量部の割合で配合される。0.1重量部より少ないと可塑性がなく成形できない。一方10重量部より多い場合にはコストの上昇を招くだけであり、これ以上の効果の向上は期待できない。
【0054】
鉱物繊維としては、セピオライト、ワラストナイト、タルク、アタパルジャイト、ロックウール等を例示することができる。鉱物繊維は水硬性セメント100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは3〜25重量部の割合で配合される。鉱物繊維が40重量部より多いと段板の強度が低下する。
【0055】
軽量骨材としては、火山れきなどの天然軽量骨材、焼成フライアッシュバルーンなどの人工軽量骨材、真珠岩パーライト、黒曜石パーライト、バーミキュライトなどの超軽量骨材、膨張スラグなどの副産物軽量骨材を使用することができる。好ましくは、比重を0.06〜0.5に設定できる真珠岩パーライト、黒曜石パーライト、バーミキュライトである。
【0056】
本発明の水硬性組成物には、上記以外の添加剤として、必要に応じて、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム等のシリカ以外の無機質材料、減水剤、界面活性剤、増粘剤、硬化促進剤等を配合することもできる。
【0057】
本発明の段板は、水硬性セメント組成物を構成する上記成分の混合物に水を加え、押出成形・硬化することによって得られる。押出成形することにより、補強繊維が押出方向により支配的に配向するため、押出方向に直角な方向からの曲げ応力または押出方向に対する引張応力に対して繊維の架橋作用による補強効果をより効果的に発揮することができる。さらに押出成形することにより、一般により緻密な成形体が得られ、結果として前記したような比較的複雑な形状の本発明の段板を容易に成形できる。水の配合量は一般に水硬性セメント100重量部に対して40〜90重量部が好適である。押出成形時において押出物に、所定の断面形状を有する金型を通過させることによって、本発明の段板を製造できる。
【実施例】
【0058】
実施例1
普通ポルトランドセメント100重量部に、長さ6mm、繊維径40μm(アスペクト比150)のPVA短繊維(クラレ社製、商品名「クラロンK-II“パワロン”)5.1重量部、珪石粉(比表面積4000cm2/g)60重量部、パルプ(広葉樹系パルプ)3重量部、メチルセルロース(信越化学工業社製)6重量部を加えて、ミキサーにより粉体混合した。粉体混合を続けながらこれに水70.0重量部を混合したのちニーダーに移して混練してセメントペーストを練り上げた。得られたセメントペーストをシリンダー式真空押出成形機から金型を通して押出成形した。金型は、吐出口の寸法および形状が図6に示す断面形状に対応したものを用いた。金型から吐出された押出物はトレーに受け、蒸気養生し、硬化させ、段板を製造した。
【0059】
得られた段板の曲げ強度を以下に示す方法により評価し、結果を図8に示した。段板(セメント硬化体)は曲げ試験において多重亀裂破壊を起し、高い物性値を示現した。また硬化体中のPVA繊維の体積混入率は4.0%であった。段板の垂直断面において、中空率を求め、表1に示した。
【0060】
(曲げ強度の評価法)
押出方向長約1000mmの2点載荷の単純曲げ試験用の試験体を切り出した。図9に示すように、直径100mm、厚み20mmの加圧治具120を用い、そこにクロスヘッド速度は5.0mm/minにて荷重を印加し、曲げ荷重を測定した。なお、支点間距離は800mmであった。図9において矢印は集中荷重、三角は支点を示す。
【0061】
比較例1
図7に示す断面形状に対応した寸法および形状を有する吐出口を備えた金型を用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、段板を製造し、評価を行った。
【0062】
図6〜図7において、補強芯材用中空部は斜線で示す。ただし、上記曲げ強度試験は、鉄筋を挿入しないサンプルにて試験を行った。軽量化用中空部は、斜線なしの輪郭で示した。
【0063】
参考例1
中空部を有さない段板を流込み法で製造したこと、直径13mmの鉄筋を2本含む状態で流込み成形をしたこと以外、実施例1と同様の方法により、段板を製造し、評価を行った。なお、曲げ強度試験は、鉄筋2本を含む状態にて試験を行った。
【0064】
実施例1/比較例1/参考例1において採用した段板の断面形状を示す図面番号、中空率の測定結果を表1に示し、曲げ強度の評価結果を図8に示した。
実施例1の段板は、曲げ強度評価後において、図10に示すように、蹴込み板部3で破断13を示し、踏板部2と蹴込み板部3との境界部分10では破断を示さなかった。
比較例1の段板は、曲げ強度評価後において、図11に示すように、踏板部102と蹴込み板部103との境界部分110で破断113を示した。
【0065】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】左図は本発明の階段用段板の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示し、右図は左図において階段用段板を左側から見たときの概略見取り図を示す。
【図2】本発明の階段用段板の一例における踏板部と蹴込み板部との境界部分の垂直断面図である。
【図3】本発明の階段用段板の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示す。
【図4】本発明の階段用段板の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示す。
【図5】本発明の階段用段板の使用例を示す模式図である。
【図6】実施例1で製造した階段用段板の垂直断面図を示す。
【図7】比較例1で製造した階段用段板の垂直断面図を示す。
【図8】曲げ強度の評価結果を示すグラフである。
【図9】曲げ強度の評価法を説明するための模式図である。
【図10】実施例1で製造した階段用段板を曲げ強度評価した後の破壊の状況を示す模式図である。
【図11】比較例1で製造した階段用段板を曲げ強度評価した後の破壊の状況を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1:段板、2:踏板部、3:蹴込み板部、4:踏板部における軽量化用中空部、A:蹴込み板部に最も近い中空部、B:踏板部の中心に最も近い中空部、C:蹴込み板部に最も遠い中空部、5:5a:踏込み面、6:補強芯材用中空部、8:蹴込み板部における軽量化用中空部、10:ささら桁、13:破断、20:踏板部の端面、30:踏板部と蹴込み板部との境界線、120:加圧治具。
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏板部と蹴込み板部を有し、階段の一段分を構成するセメント系階段用段板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押出成形により、コンクリート製品を製造する方法は種々提案され、例えば、長手方向に貫通孔を形成すると共に金属線枠を埋設する筋金入りセメント製品の製造方法(特許文献1)があった。また、コンクリート製品内に鋼繊維を分散し形成する、押出成形による鋼繊維補強建材の製造方法(特許文献2)、あるいはコンクリート製品内に合成繊維を分散し形成する、押出成形によるセメント成形品製造法(特許文献3)があった。
【0003】
一方、踏板部と蹴込み板部を有する階段用の段板の製造工程の煩雑さを解消する段板として、例えば、段板本体内の適所に長手方向全長に亘って、端部に取付部を有する補強パイプまたは補強杵体を埋設させた段板が提案されている(特許文献4,5)。
【特許文献1】特公昭53−47260号公報
【特許文献2】特開昭51−137714号公報
【特許文献3】特開昭49−44099号公報
【特許文献4】特開平6−26162号公報
【特許文献5】特開平7−119269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術により踏板部と蹴込み板部を有する階段用段板を製造するに際し、軽量化のために中空部を形成した場合、強度低下の問題が生じた。
【0005】
本発明は、軽量化を達成しながらも、十分な強度を有するセメント系階段用段板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平板状の踏板部および該踏板部の一側より踏板部端面と当接して立ち上がる平板状の蹴込み板部が一体的に押出成形されてなるセメント系階段用段板であって、
踏板部が押出方向に沿って2以上の軽量化用中空部を有し、押出方向に対する垂直断面において、該中空部のうち蹴込み板部に最も近い中空部Aにおける踏込み側の肉厚が、踏板部の中心に最も近い中空部Bにおける踏込み側の肉厚より厚いことを特徴とするセメント系階段用段板に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るセメント系階段用段板によれば、軽量化を達成しながらも、十分な強度を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(階段用段板)
本発明に係るセメント系階段用段板(以下、単に「段板」ということがある)は、階段の一段分を構成するもので、例えば、図5に示すように、複数の段板1を両端でささら桁10に取り付けて使用される。
【0009】
本発明の段板1は詳しくは、図1に示すように、平板状の踏板部2および平板状の蹴込み板部3が一体的に押出成形されてなるものであり、蹴込み板部3は踏板部2の一側より踏板部2の端面20と当接しながら、踏板部2の略厚み方向に立ち上がっている。図1の左図は本発明の段板1の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示し、右図は左図において段板1を左側から見たときの概略見取り図を示す。
【0010】
踏板部2は、押出方向Dに沿って2以上の軽量化用中空部4を有し、すなわち押出方向Dに対して略平行に2以上の軽量化用中空部4を有する。本発明においては、押出方向Dに対する垂直断面(以下、単に「垂直断面」という)において、踏板部2が有する中空部4のうち蹴込み板部3に最も近い中空部Aにおける踏込み側の肉厚x1を、踏板部の中心に最も近い中空部Bにおける踏込み側の肉厚x2より厚くする。これによって、中空部による軽量化を達成しながらも、十分な強度を確保できる。詳しくは、図10に示すように、踏み込み方向Yで荷重をかけた場合、中空部を有していても、比較的大きな荷重になるまで破断を抑制できる。そのような現象が起こるメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のメカニズムに基づくものと考えられる。中空部Aにおける肉厚x1を上記範囲内とすることにより、蹴込み板部3が、踏板部2の踏み込み方向Yに対する強度を有効に補強して、荷重付加により中空部Aにかかる応力を分散する。その結果、図10に示すように蹴込み板部3で破断13が生じるまで、踏板部2と蹴込み板部3との境界部分10での破断を防止できるため、比較的大きな荷重になるまで破断を抑制できるものと考えられる。肉厚x1が肉厚x2に等しいか、または肉厚x2よりも薄いと、例えば図11に示すように踏み込み方向Yで荷重をかけた場合、中空部Aに応力が集中し、踏板部102と蹴込み板部103との境界部分110で破断113が起こるため、比較的小さな荷重で破断が起こる。
【0011】
中空部Aと中空部Bとの間に軽量化用中空部4を有する場合、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果の観点から、当該中空部における踏込み側の肉厚x3よりも、中空部Aにおける踏込み側の肉厚x1を厚くすることが好ましい。図1において、中空部Aと中空部Bとの間に軽量化用中空部は1つしか示されていないが、これに限定されるものではなく、2以上の中空部が存在してよい。その場合、中空部Aにおける踏込み側の肉厚x1は、中空部Aと中空部Bとの間に存在する全ての軽量化用中空部における踏込み側の肉厚よりも厚くすることが好ましい。
【0012】
本明細書中、踏板部の中心とは、垂直断面における踏板部の重心である。重心とは等質の材料(例えば、紙)を当該部材の輪郭で切り取り、均衡をとって点で支えたときの当該点である。踏板部の中心に最も近い中空部とは、垂直断面において、踏板部中心を包囲する中空部が存在する場合は当該中空部を意味し、踏板部中心を包囲する中空部が存在しない場合は、踏板部中心に最も近い中心を有する中空部を意味するものとする。
中空部の中心とは、垂直断面における中空部の重心である。
【0013】
中空部における踏込み側の肉厚とは、中空部によって分断される踏板部の厚みのうち、踏込み側の最小厚みを指すものである。踏込み側とは、ヒトが階段を上り下りする際にヒトと接触する踏込み面5を有する方という意味である。
【0014】
中空部Aにおける肉厚x1は、上記範囲内であれば特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、踏板部2の厚みをt1としたとき、t1/5〜t1/3、特にt1/4.8〜t1/3.3の範囲内であることが好ましい。肉厚x1は通常、10〜16mm、特に11〜15mmである。なお、踏板部2は、後述するように、踏込み面5が傾斜を有していてよく、その場合、踏板部2の最小厚みと最大厚みとの平均値を厚みt1とみなすものとする。
【0015】
中空部Aの踏板部厚み方向における最大長y1は、上記中空部肉厚x1が確保できる程度において、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではない。最大長y1は通常、20〜35mm、特に25〜30mmである。
【0016】
中空部Aにおける踏込み側とは反対側の肉厚z1は特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、t1/6〜t1/3、特にt1/5.9〜t1/4の範囲内であることが好ましい。肉厚z1は通常、9〜15mm、特に10〜14mmである。
【0017】
中空部Bにおける肉厚x2、および中空部Aと中空部Bとの間の軽量化用中空部における踏込み側の肉厚、例えばx3は、上記範囲内であれば特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、それぞれ独立してt1/6〜t1/3、特にt1/5.8〜t1/3.7の範囲内であることが好ましい。そのような肉厚は通常、それぞれ独立して8〜15mm、特に9〜14mmである。
【0018】
中空部Bの踏板部厚み方向における最大長y2、および中空部Aと中空部Bとの間の軽量化用中空部の踏板部厚み方向における最大長、例えばy3は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではない。これらの最大長は通常、それぞれ独立して30〜40mm、特に31〜37mmである。
【0019】
中空部Bにおける踏込み側とは反対側の肉厚z2、および中空部Aと中空部Bとの間の軽量化用中空部における踏込み側とは反対側の肉厚、例えばz3は特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、それぞれ独立してt1/6〜t1/3、特にt1/5.9〜t1/4の範囲内であることが好ましい。そのような肉厚は通常、それぞれ独立して8〜15mm、特に9〜14mmである。
【0020】
踏板部2が有する中空部4のうち蹴込み板部3に最も近い中空部Aは、垂直断面において、その中心が踏板部2内または踏板部2と蹴込み板部3との境界線30上にある限り、例えば図2に示すように、一部が蹴込み板部3内に形成されてもよい。図2は、本発明の段板1の一例における踏板部2と蹴込み板部3との境界部分の垂直断面図である。図2における、図1と同じ符号は、図1と同じ意味内容を示すため、それらの説明を省略する。
【0021】
踏板部2は、軽量化の観点から、垂直断面において、中空部Bよりも先端側に1以上の軽量化用中空部4をさらに有することが好ましい。このとき、耐火性能の観点から、当該中空部のうち蹴込み板部3に最も遠い中空部Cにおける踏込み側の肉厚x4は、中空部Bにおける踏込み側の肉厚x2より厚いことが好ましく、特に中空部Cと中空部Bとの間に軽量化用中空部を有する場合は、当該中空部における踏込み側の肉厚x5よりも、中空部Cにおける踏込み側の肉厚x4を厚くすることが好ましい。図1において、中空部Cと中空部Bとの間に軽量化用中空部4は1つしか示されていないが、これに限定されるものではなく、2以上の中空部が存在してよい。その場合、中空部Cにおける踏込み側の肉厚x4は、中空部Cと中空部Bとの間に存在する全ての軽量化用中空部における踏込み側の肉厚よりも厚くすることが好ましい。
【0022】
中空部Cにおける肉厚x4は、耐火性能の観点からは好ましくは、11〜20mm、特に12〜18mmである。
中空部Cと中空部Bとの間の軽量化用中空部における踏込み側の肉厚、例えばx5は、上記範囲内であれば特に制限されず、前記x2と同様の範囲内であることが好ましい。そのような肉厚は通常8〜15mm、特に9〜14mmである。
【0023】
中空部Cの踏板部厚み方向における最大長y4は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、10〜30mm、特に15〜28mmである。
中空部Cと中空部Bとの間の軽量化用中空部の踏板部厚み方向における最大長、例えばy5は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、前記y2と同様の範囲内であることが好ましい。そのような最大長は通常30〜40mm、特に31〜37mmである。
【0024】
中空部Cにおける踏込み側とは反対側の肉厚z4は特に制限されず、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得る観点からは、通常、9〜25mm、特に10〜20mmである。
中空部Cと中空部Bとの間の軽量化用中空部における踏込み側とは反対側の肉厚、例えばz5は特に制限されず、前記z2と同様の範囲内であることが好ましい。そのような肉厚は通常、8〜15mm、特に9〜14mmである。
【0025】
踏板部2は、踏込み面5が傾斜を有していてよい。すなわち、踏板部2は図3に示すように、先端に近づくほど、厚みが小さくなるような傾斜を踏込み面5aに有していてよい。これによって、ヒトの上り下りがより円滑に行える。図3は本発明の段板1の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示す。図3における、図1と同じ符号は、図1と同じ意味内容を示すため、それらの説明を省略する。
【0026】
踏板部2が有する軽量化用中空部4の間隔は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではない。
【0027】
踏板部2が有する軽量化用中空部4の形状は、図1に示すような円形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、または図4に示すような略正方形状、略長方形状、略三角形状等の多角形状であってもよい。軽量化用中空部4の形状は各中空部において独立して選択されてよい。軽量化用中空部4の形状が方形または三角形の場合、各コーナー部は図4に示すように丸みを有していてよい。このときのx1〜x5、y1〜y5およびz1〜z5等の寸法は、丸みがなかったときの値を用いるものとする。
【0028】
踏板部2は、上記したような軽量化用中空部のほかに、補強芯材用中空部を有してもよい。補強芯材用中空部は図1中、6で示されるもので、補強芯材としては、例えば、異形棒鋼等の鉄筋、金属製の補強パイプ等が使用可能である。補強芯材は段板1の製造時において押出成形と同時に挿入されてもよいし、または補強芯材用中空部を有する段板1を製造した後において挿入されてもよい。補強芯材用中空部および補強芯材の垂直断面における最大長は通常、10〜25mm、特に15〜23mmである。
【0029】
踏板部2における厚みt1は通常、40〜70mmに設定され、好ましくは45〜60mmである。
踏板部2における幅L1は特に制限されず、通常、200〜350mmに設定され、好ましくは250〜300mmである。
【0030】
踏板部2における軽量化用中空部の数は特に制限されるものではなく、例えば踏板部2における幅L1が250〜300mmの場合で、通常は2以上、特に3〜7、好ましくは4〜6である。
【0031】
本発明は、垂直断面において、踏板部2における軽量化用中空部4の総中空率を30%以上、特に30〜40%という比較的大きな値に設定しても、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果を発揮できる。
【0032】
蹴込み板部3は押出方向に軽量化用中空部8を有することが好ましい。軽量化をより一層、有効に達成できるとともに、蹴込み板部3による踏板部2の補強効果をより一層、有効に得ることができるためである。
【0033】
蹴込み板部3における中空部8の位置は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は蹴込み板部3の厚み方向において蹴込み板部3の略中央である。
【0034】
蹴込み板部3が有する軽量化用中空部8の形状は、図1に示すような円形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、または図4に示すような略正方形状、略長方形状、略三角形状等の多角形状であってもよい。軽量化用中空部8の形状は各中空部において独立して選択されてよい。
【0035】
蹴込み板部3は、上記したような軽量化用中空部8のほかに、踏板部2においてと同様の補強芯材用中空部(図示せず)を有してもよい。
【0036】
垂直断面において、蹴込み板部3における軽量化用中空部8の総中空率は特に制限されず、通常は5%以上、特に8〜20%である。
【0037】
(水硬性セメント組成物)
本発明の段板は水硬性セメント組成物から製造されてなる無機系硬化体であり、好ましくは曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する高い靭性を有するものである。
【0038】
本発明において、「多重亀裂」とは次のことを意味する。曲げ応力が印加されてセメント硬化体に最初の亀裂が入った段階で、その亀裂部に応力が集中して、通常のセメント硬化体ではそのまま破断に至る。すなわち応力−歪曲線が直線となる弾性変形の段階で破断に至る。そのためエネルギー吸収能が低く、脆性破壊を呈する。これに対して最初の亀裂が入ったのちも、直ちに材料全体の破断に至らず、最初の亀裂に続いて複数の亀裂が発生する現象が存在する。これを多重亀裂という。多重亀裂が発生すると、応力が分散されるため、最初の亀裂発生後も増加する荷重に耐えて大きな歪に至るまで破壊せず、高いエネルギー吸収能と高い靭性を示す。
【0039】
そのような多重亀裂が起こる本発明の段板を構成する水硬性セメント組成物は、少なくとも水硬性セメントを含むマトリックスに繊維を配合・補強してなる繊維補強水硬性組成物である。マトリックスは好ましくはさらにシリカ質原料、パルプおよび水溶性セルロースを含み、減水剤などの混和剤、鉱物繊維および軽量骨材が配合されてもよい。
【0040】
本発明において配合される繊維は、配合によって、水硬性組成物を硬化させてなる硬化体に、曲げ載荷時の多重亀裂を起こさせ得る補強繊維であれば、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系繊維(PVA繊維)、ポリプロピレン系繊維(PP繊維)、ポリエチレン系繊維(PE繊維)、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリベンゾオキサゾール系繊維、レーヨン系繊維、ガラス繊維、スチール繊維等が挙げられる。製造コストを低減し、多重亀裂をより有効に起こす観点から好ましくはPVA繊維、PE繊維、PP繊維、アラミド繊維であり、特にPVA繊維である。
【0041】
これらの繊維は繊維長が3〜100mm、繊維径が5〜200μm、アスペクト比が150〜1000である。繊維長がより短い、繊維径がより大きい、またはアスペクト比がより小さい場合は、曲げ応力が負荷された状態において、最初に亀裂が生じたときに、繊維が架橋しても応力を負担することができず、すぐに引き抜け、多重亀裂を発生する前に破壊してしまう。
一方、繊維長がより長い、繊維径がより小さい、またはアスペクト比がより大きい場合は、曲げ応力が負荷された状態において、繊維の引き抜けよりも先に、繊維自体が破断してしまうために多重亀裂が発生しない。
【0042】
本発明において、繊維の「アスペクト比」とは、繊維長を繊維断面の面積と同面積を有する相当円の直径で除した値である。
【0043】
PVA繊維は通称ビニロン繊維とも呼ばれているもので、PVA繊維を使用する場合は、繊維長が3〜50mm、好ましくは3〜15mm、特に6〜12mm、繊維径が10〜100μm、好ましくは20〜50μm、アスペクト比が100〜400、好ましくは150〜300であることが望ましい。
【0044】
最も好ましいPVA繊維は特に、繊度2〜150dtex、特に4〜25dtex、引張強度4cN/dtex以上、特に6〜20cN/dtexを有する。
繊度は、繊維状物の一定糸長の重量を測定して見掛け繊度をn=5以上で測定した平均値を用いている。なお、一定糸長の重量測定により繊度が測定できないもの(細デニール繊維)はバイブロスコ−プにより測定している。
強度は、予め温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下で24時間繊維を放置して調湿したのち、単繊維を糸長20cm、引張速度10cm/分として万能試験機 島津製作所製「オートグラフ」にて測定した値を用いている。なお繊維長が20cmより短い場合は、そのサンプルの可能な範囲での最大長さを把持長として測定することとしている。
【0045】
そのような好ましいPVA繊維として、市販のクラロンK―II 「パワロン」(クラレ社製)が入手可能である。
【0046】
またPP繊維を使用する場合は、繊維長が3〜15mm、好ましくは6〜12mm、繊維径が5〜40μm、好ましくは10〜30μm、アスペクト比が150〜1000、好ましくは200〜700であることが望ましい。
【0047】
またPE繊維を使用する場合は、繊維長が3〜15mm、好ましくは6〜12mm、繊維径が5〜40μm、好ましくは10〜30μm、アスペクト比が150〜1000、好ましくは200〜700であることが望ましい。
【0048】
上記繊維は硬化後の硬化体における体積混入率が0.1〜10%、好ましくは2〜7%となるように配合される。繊維の体積混入率がより小さいと亀裂が入ったときにそこに集中する応力を支えることができないで架橋作用を発揮できない。また体積混入率がより大きいと繊維同士の接触部分が増加してセメントとの一体化を妨害するため十分な補強効果が得られなくなる。
【0049】
繊維の「体積混入率」とは、以下の方法によって測定された値を用いている。セメント硬化体を押出方向に対して直角方向に裁断し、その裁断面を走査電子顕微鏡を用いて、加速電圧25kVで反射電子像を観察した。セメント硬化体中の繊維混入率Vfは、顕微鏡の視野にある観察面の繊維の断面積の合計を、電子顕微鏡の視野の面積で除した値として求めた。繊維混入率Vfは、試験片の裁断面中の異なる3つの視野について測定した値の平均値を採用した。
【0050】
本発明において使用される水硬性セメントは、水との反応により硬化体を形成できる限り、特に限定されず、例えば、各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、シリカセメント、マグネシアセメント、硫酸塩セメント等をすべて含む。
【0051】
シリカ質原料としては、珪石粉、高炉スラグ、珪砂、フライアッシュ、珪藻土、シリカヒューム、非晶質シリカ等を使用することができる。好ましくは、段板の強度向上および寸法安定性に寄与する点から、珪石粉、珪砂である。これらのシリカ質原料として好ましくは比表面積(JIS R 5201に記載の方法による)が3000〜15000cm2/gのものを使用する。シリカ質原料は水硬性セメント100重量部に対して40〜100重量部、好ましくは50〜80重量部の割合で配合される。シリカ質原料が40重量部より少ないと段板の強度が低下する上に、エフロレッセンスが発生し易くなり、100重量部より多くても段板の強度が低下する。
【0052】
パルプは、綿パルプまたは木材パルプ等の天然パルプが好ましい。天然パルプであれば特に限定されず、バージンパルプのみならず古紙からの再生パルプも使用できる。また木材パルプの場合、木材の組織からリグニンを化学的に取り除いた化学パルプ、木材を機械的に処理した機械パルプのいずれも使用できる。パルプは繊維長が0.05〜10mmのものが好ましい。パルプは水硬性セメント100重量部に対して0.5〜80重量部、好ましくは1〜30重量部の割合で配合される。0.5重量部より少ないと補強効果を発揮できず、また80重量部より多いと分散不良となり、段板の表面平滑性が悪化したりする。
【0053】
水溶性セルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。水溶性セルロースは、水硬性組成物の各成分を混合・混練し、押出成形する際に、混練物に粘性を付与し、成形性を向上させるものである。水溶性セルロースは水硬性セメント100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは1〜6重量部の割合で配合される。0.1重量部より少ないと可塑性がなく成形できない。一方10重量部より多い場合にはコストの上昇を招くだけであり、これ以上の効果の向上は期待できない。
【0054】
鉱物繊維としては、セピオライト、ワラストナイト、タルク、アタパルジャイト、ロックウール等を例示することができる。鉱物繊維は水硬性セメント100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは3〜25重量部の割合で配合される。鉱物繊維が40重量部より多いと段板の強度が低下する。
【0055】
軽量骨材としては、火山れきなどの天然軽量骨材、焼成フライアッシュバルーンなどの人工軽量骨材、真珠岩パーライト、黒曜石パーライト、バーミキュライトなどの超軽量骨材、膨張スラグなどの副産物軽量骨材を使用することができる。好ましくは、比重を0.06〜0.5に設定できる真珠岩パーライト、黒曜石パーライト、バーミキュライトである。
【0056】
本発明の水硬性組成物には、上記以外の添加剤として、必要に応じて、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム等のシリカ以外の無機質材料、減水剤、界面活性剤、増粘剤、硬化促進剤等を配合することもできる。
【0057】
本発明の段板は、水硬性セメント組成物を構成する上記成分の混合物に水を加え、押出成形・硬化することによって得られる。押出成形することにより、補強繊維が押出方向により支配的に配向するため、押出方向に直角な方向からの曲げ応力または押出方向に対する引張応力に対して繊維の架橋作用による補強効果をより効果的に発揮することができる。さらに押出成形することにより、一般により緻密な成形体が得られ、結果として前記したような比較的複雑な形状の本発明の段板を容易に成形できる。水の配合量は一般に水硬性セメント100重量部に対して40〜90重量部が好適である。押出成形時において押出物に、所定の断面形状を有する金型を通過させることによって、本発明の段板を製造できる。
【実施例】
【0058】
実施例1
普通ポルトランドセメント100重量部に、長さ6mm、繊維径40μm(アスペクト比150)のPVA短繊維(クラレ社製、商品名「クラロンK-II“パワロン”)5.1重量部、珪石粉(比表面積4000cm2/g)60重量部、パルプ(広葉樹系パルプ)3重量部、メチルセルロース(信越化学工業社製)6重量部を加えて、ミキサーにより粉体混合した。粉体混合を続けながらこれに水70.0重量部を混合したのちニーダーに移して混練してセメントペーストを練り上げた。得られたセメントペーストをシリンダー式真空押出成形機から金型を通して押出成形した。金型は、吐出口の寸法および形状が図6に示す断面形状に対応したものを用いた。金型から吐出された押出物はトレーに受け、蒸気養生し、硬化させ、段板を製造した。
【0059】
得られた段板の曲げ強度を以下に示す方法により評価し、結果を図8に示した。段板(セメント硬化体)は曲げ試験において多重亀裂破壊を起し、高い物性値を示現した。また硬化体中のPVA繊維の体積混入率は4.0%であった。段板の垂直断面において、中空率を求め、表1に示した。
【0060】
(曲げ強度の評価法)
押出方向長約1000mmの2点載荷の単純曲げ試験用の試験体を切り出した。図9に示すように、直径100mm、厚み20mmの加圧治具120を用い、そこにクロスヘッド速度は5.0mm/minにて荷重を印加し、曲げ荷重を測定した。なお、支点間距離は800mmであった。図9において矢印は集中荷重、三角は支点を示す。
【0061】
比較例1
図7に示す断面形状に対応した寸法および形状を有する吐出口を備えた金型を用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、段板を製造し、評価を行った。
【0062】
図6〜図7において、補強芯材用中空部は斜線で示す。ただし、上記曲げ強度試験は、鉄筋を挿入しないサンプルにて試験を行った。軽量化用中空部は、斜線なしの輪郭で示した。
【0063】
参考例1
中空部を有さない段板を流込み法で製造したこと、直径13mmの鉄筋を2本含む状態で流込み成形をしたこと以外、実施例1と同様の方法により、段板を製造し、評価を行った。なお、曲げ強度試験は、鉄筋2本を含む状態にて試験を行った。
【0064】
実施例1/比較例1/参考例1において採用した段板の断面形状を示す図面番号、中空率の測定結果を表1に示し、曲げ強度の評価結果を図8に示した。
実施例1の段板は、曲げ強度評価後において、図10に示すように、蹴込み板部3で破断13を示し、踏板部2と蹴込み板部3との境界部分10では破断を示さなかった。
比較例1の段板は、曲げ強度評価後において、図11に示すように、踏板部102と蹴込み板部103との境界部分110で破断113を示した。
【0065】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】左図は本発明の階段用段板の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示し、右図は左図において階段用段板を左側から見たときの概略見取り図を示す。
【図2】本発明の階段用段板の一例における踏板部と蹴込み板部との境界部分の垂直断面図である。
【図3】本発明の階段用段板の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示す。
【図4】本発明の階段用段板の一例の押出方向Dに対する垂直断面図を示す。
【図5】本発明の階段用段板の使用例を示す模式図である。
【図6】実施例1で製造した階段用段板の垂直断面図を示す。
【図7】比較例1で製造した階段用段板の垂直断面図を示す。
【図8】曲げ強度の評価結果を示すグラフである。
【図9】曲げ強度の評価法を説明するための模式図である。
【図10】実施例1で製造した階段用段板を曲げ強度評価した後の破壊の状況を示す模式図である。
【図11】比較例1で製造した階段用段板を曲げ強度評価した後の破壊の状況を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1:段板、2:踏板部、3:蹴込み板部、4:踏板部における軽量化用中空部、A:蹴込み板部に最も近い中空部、B:踏板部の中心に最も近い中空部、C:蹴込み板部に最も遠い中空部、5:5a:踏込み面、6:補強芯材用中空部、8:蹴込み板部における軽量化用中空部、10:ささら桁、13:破断、20:踏板部の端面、30:踏板部と蹴込み板部との境界線、120:加圧治具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の踏板部および該踏板部の一側より踏板部端面と当接して立ち上がる平板状の蹴込み板部が一体的に押出成形されてなるセメント系階段用段板であって、
踏板部が押出方向に沿って2以上の軽量化用中空部を有し、押出方向に対する垂直断面において、該中空部のうち蹴込み板部に最も近い中空部Aにおける踏込み側の肉厚が、踏板部の中心に最も近い中空部Bにおける踏込み側の肉厚より厚いことを特徴とするセメント系階段用段板。
【請求項2】
踏板部が、押出方向に対する垂直断面において、中空部Aと中空部Bとの間に軽量化用中空部を有し、該中空部における踏込み側の肉厚より、中空部Aにおける踏込み側の肉厚が厚いことを特徴とする請求項1に記載のセメント系階段用段板。
【請求項3】
踏板部が、押出方向に対する垂直断面において、中空部Bよりも先端側に1以上の軽量化用中空部をさらに有し、該中空部のうち蹴込み板部に最も遠い中空部Cにおける踏込み側の肉厚が、中空部Bにおける踏込み側の肉厚より厚いことを特徴とする請求項1または2に記載のセメント系階段用段板。
【請求項4】
蹴込み板部が押出方向に軽量化用中空部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセメント系階段用段板。
【請求項5】
セメント系階段用段板が、水硬性セメント100重量部、シリカ質原料40〜100重量部、パルプ0.5〜80重量部および水溶性セルロース0.1〜10重量部を含んでなるマトリックスに繊維を配合した水硬性セメント組成物から製造されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のセメント系階段用段板。
【請求項1】
平板状の踏板部および該踏板部の一側より踏板部端面と当接して立ち上がる平板状の蹴込み板部が一体的に押出成形されてなるセメント系階段用段板であって、
踏板部が押出方向に沿って2以上の軽量化用中空部を有し、押出方向に対する垂直断面において、該中空部のうち蹴込み板部に最も近い中空部Aにおける踏込み側の肉厚が、踏板部の中心に最も近い中空部Bにおける踏込み側の肉厚より厚いことを特徴とするセメント系階段用段板。
【請求項2】
踏板部が、押出方向に対する垂直断面において、中空部Aと中空部Bとの間に軽量化用中空部を有し、該中空部における踏込み側の肉厚より、中空部Aにおける踏込み側の肉厚が厚いことを特徴とする請求項1に記載のセメント系階段用段板。
【請求項3】
踏板部が、押出方向に対する垂直断面において、中空部Bよりも先端側に1以上の軽量化用中空部をさらに有し、該中空部のうち蹴込み板部に最も遠い中空部Cにおける踏込み側の肉厚が、中空部Bにおける踏込み側の肉厚より厚いことを特徴とする請求項1または2に記載のセメント系階段用段板。
【請求項4】
蹴込み板部が押出方向に軽量化用中空部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセメント系階段用段板。
【請求項5】
セメント系階段用段板が、水硬性セメント100重量部、シリカ質原料40〜100重量部、パルプ0.5〜80重量部および水溶性セルロース0.1〜10重量部を含んでなるマトリックスに繊維を配合した水硬性セメント組成物から製造されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のセメント系階段用段板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−65441(P2010−65441A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232367(P2008−232367)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
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