説明

セメント製造装置の運転方法

【課題】
セメント製造装置の仮焼炉において、燃料として塩素成分を含有した廃棄物をできるだけ多く利用する手段と方法を見出す。
【解決手段】
セメント製造装置のプレヒーターの最下段サイクロンの下部排出シュートを流れる固形物中の塩素濃度を測定し、測定した塩素濃度に基づいて、仮焼炉に供給するために別々に貯蔵した高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物の供給量を制御する。また、前記測定した塩素濃度に基づいて、仮焼炉に供給するために別々に貯蔵した高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物の供給量と、仮焼炉に供給する微粉炭の供給量とを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造装置において、塩素含有廃棄物を大量に有効に利用するためのセメント製造装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、社会的に廃棄物のリサイクルへ要請が高まっている。廃プラスチック類を主とした可燃性の燃料廃棄物が世の中には多く存在しており、マテリアル・リサイクルや熱リサイクルが進められている。しかし、異種の廃プラスチックが混在したもので、特に、塩化ビニール樹脂等の塩素が高いものは、リサイクルが進められておらず埋立て処分されているものも多い。
【0003】
環境問題に寄与するセメント産業におけるセメント製造装置は、その中でもトップクラスの廃棄物処分装置としてだけでなく、セメント原料へのリサイクルや、熱リサイクルへの貢献を行っている。
【0004】
図2は、従来におけるセメント製造装置において、塩素系廃棄物を燃焼処理する方法を示す全体図である。燃料による燃焼位置は2箇所に存在し、仮焼炉4の仮焼炉バーナー6と、ロータリーキルン1の窯前バーナー7である。殆どの燃焼用空気はクリンカクーラー3から吹き込まれ、燃焼後の排気ガスは、ロータリーキルン1、プレヒーター2、調湿塔16を通って、プレヒーター排気ファン14からセメント製造装置の炉外へ排出される。
【0005】
セメント原料はプレヒーター2の上部にある原料送入位置12から投入され、複数のサイクロンを経由しながら、急激に予熱される。仮焼炉4では燃料を燃焼し、セメント原料の仮焼に必要な熱量が供給される。仮焼炉での燃焼用空気は、クリンカクーラー3から抽気された高温の空気が利用される。
仮焼炉4と最下段サイクロン5において、セメント原料は800乃至900℃程度で仮焼される。その後、ロータリーキルン1に投入され、約1,500℃で焼成され高温のセメントクリンカとなる。さらにその後、クリンカクーラー3で急冷されて、クリンカ排出位置15からセメント半製品であるクリンカとなって系外の次工程へ送り出される。
【0006】
図2に示すような、従来のロータリーキルン1で塩素系廃棄物を処理する方法において、塩素系化合物や硫黄系化合物を原燃料として増加させると、プレヒーター2の下段部にて、装置の内部炉壁へコーティングが付着し始め、一定の時間が経過すると連続操業に支障が生じる。この場合、操業中にコーティングを落とす機械的操作を行うが、最悪の場合には、セメント製造装置を停止させて付着物を除去しなければ操業の再開ができない事態に陥る。従って、一般に、塩素を多く含有する廃棄物は、従来からセメント産業でのセメント製造装置で処理することが避けられてきた。
【0007】
また、塩素を含む廃棄物をセメント製造装置で処理する場合に、受入れロットごとの発熱量の変動や塩素成分値の変動への対応が重要である。塩素成分値が大きく変動する場合には、セメント製品への塩素成分値の上限を一時的に越える恐れがある。そのため、塩素成分値の変動幅を考慮してセメント製造装置に供給する塩素含有廃棄物の供給量を制限せざるを得ない状況が生じる(図3)。
【0008】
クリンカクーラー3の出口における塩素成分値を参考にして、プレヒーター2の原料入口部に投入する原料の塩素成分の制限を行う方法がある。しかし、原料成分の調合からプレヒーター2へ投入するまでには、6乃至10時間かかるため、プレヒーター2に投入する塩素含有廃棄物中の塩素成分が大きく変動した場合、塩素成分の調節が間に合わない。また、ロータリーキルン1の入口からクリンカクーラー3の出口にまでには30乃至50分程度の時間がかかるため、廃棄物の変動を成分値分析するまでの時間遅れが生じる。その結果、プレヒーター2の下段部の内部炉壁におけるコーティング付着を進行させ、セメンキルンの連続安定の運転操業に支障を来たす原因になってしまう。
【0009】
特許文献1には、発熱量が異なる可燃性廃棄物を分別して、熱リサイクルの手段としているガス化炉が記載されている。また、特許文献2には、発熱量が異なる産業廃棄物を分別して、熱リサイクルの手段としている燃焼炉が記載されている。しかし、いずれの特許文献においても、受入れる廃棄物の塩素成分値については一切の言及はない。
【特許文献1】特開2006−342240号公報
【特許文献2】特開平10−132247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、セメント製造装置の仮焼炉4において、燃料として塩素成分を含有する廃棄物をできる限り多く利用するセメント製造装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、セメント製造装置のプレヒーターの最下段サイクロンの下部排出シュートを流れる固形物中の塩素濃度を測定し、測定した塩素濃度に基づいて、仮焼炉に供給するために別々に貯蔵した高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物の供給量を制御することを特徴とするセメント製造装置の運転方法である。
また、前記測定した塩素濃度に基づいて、仮焼炉に供給するために別々に貯蔵した高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物の供給量と、仮焼炉に供給する微粉炭の供給量とを制御するセメント製造装置の運転方法である。
さらに、セメント製造装置のプレヒーターの最下段サイクロンにおける下部排出シュートの温度又は上部出口ダクトの温度を測定し、測定した温度と前記測定した塩素濃度に基づいて、仮焼炉に供給するために別々に貯蔵した高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物の供給量と、仮焼炉に供給する微粉炭の供給量を制御するセメント製造装置の運転方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大量の塩素含有廃棄物をセメント製造装置で処理することができ、セメント製造装置の長期連続安定運転操業が可能となった。また従来では、処分がダイオキシン発生問題などで困難であった高塩素成分を含有の燃料廃棄物を、環境汚染がなく熱量として多量に有効使用することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明におけるセメント製造装置で塩素含有廃棄物を燃焼処理する方法を示す全体図である。図2の従来の全体図と異なる部分は、燃料の種類が増加しており、高塩素燃料廃棄物タンク10が増設されている。
燃料による燃焼位置は2箇所に存在し、仮焼炉4の仮焼炉バーナー6と、ロータリーキルン1の窯前バーナー7である。殆どの燃焼用空気はクリンカクーラー3から吹き込まれ、燃焼後の排気ガスは、ロータリーキルン1、プレヒーター2、調湿塔16を通って、プレヒーター排気ファン14からセメント製造装置の炉外へ排出される。
【0014】
セメント原料はプレヒーター2の上部にある原料送入位置12から投入され、複数のサイクロンを経由しながら、急激に予熱される。仮焼炉4では燃料を燃焼し、セメント原料の仮焼に必要な熱量が供給される。仮焼炉での燃焼用空気は、クリンカクーラー3から抽気された高温の空気が利用される。
仮焼炉4と最下段サイクロン5において、セメント原料は800乃至900℃程度で仮焼される。その後、ロータリーキルン1に投入され、約1,500℃で焼成され高温のセメントクリンカとなる。さらにその後、クリンカクーラー3で急冷されて、クリンカ排出位置15からセメント半製品であるクリンカとなって系外の次工程へ送り出される。
【0015】
主燃料タンク8には微粉炭を貯留する。また、仮焼炉に供給するための高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物は、タンク9、10に別々に貯蔵される。高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物は、セメント工場に受入れる前に予め分別されていることが好ましいが、受入れた後にサンプリングして塩素成分の分析などの方法によって分別しタンクに受入れても良い。ここで、低塩素含有廃棄物は一般の廃プラスチックや木屑など塩素成分値が5,000ppm未満、好ましくは500ppm以下、高塩素含有廃棄物は塩化ビニール樹脂や、都市ゴミ固形燃料あるRDFなどで塩素成分値が5,000乃至30,000ppmのものを対象とする。
【0016】
3種類の燃料は、それぞれの該タンク8,9,10から所定の重量を抜出して、仮焼炉4へ送る。各燃料は、仮焼炉4への微粉炭燃料の吹込み近辺に位置に向けて2種類の燃料廃棄物を投入または吹込みを行う。該タンク8,9,10から仮焼炉4までの燃料合送配管11は、各々が独立配管でもよく、また一本の配管で3種類の燃料を混合した後、圧送する配管であってもよいが、好ましくは、微粉炭は専用の空気輸送ラインを設け、高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物は相互に混合して空気輸送するラインを設ける方がよい。混合輸送を行うのは、混合特性がよい燃料の場合や、3種類の燃料の燃焼速度が同程度である場合、一般的に選択することができる。
【0017】
次に、仮焼原料の塩素成分値の各燃料配合調整による運転調節について説明する。まず、仮焼原料の塩素成分値の測定は、プレヒーターの最下段サイクロン5の下部排出シュート18の途中に原料のサンプリング口を設け、下部排出シュート18を流れる固形物を取得する。ここを塩素成分値測定位置12とする。サンプリング口の位置は、固形物が整流され、かつ安全にサンプリングすることができる観点から、下部排出シュート18の途中に設置されているフラップダンパーの下流位置であることが好ましい。このサンプリング操作は自動でも手動でも良く、一定時間の間隔(1乃至30分)でサンプリングし縮分する。サンプリングした原料は、蛍光X線分析計などの機器分析または手分析によって、塩素濃度を測定する。塩素成分値の分析操作は、30乃至240分の間隔で行う。好ましくは、自動サンプリングによる蛍光X線分析計によって30乃至60分の間隔で塩素成分値測定を行う。
【0018】
測定された塩素成分値が、管理目標の塩素成分値範囲から外れていたら、測定した塩素濃度に基づいて、仮焼炉に供給するために別々に貯蔵した高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物の供給量を制御し、管理目標値の範囲に入る操作を行う。例えば、塩素成分値の測定値が目標範囲より低い時、高塩素含有廃棄物を増加し、また低塩素含有廃棄物を相当量ほど減少させ、2種類の廃棄物の投入合計量が一定になるように調節する。また逆に、塩素成分値の測定値が目標範囲より高い時、高塩素含有廃棄物を減少させ、低塩素含有廃棄物を相当量ほど増加させる。このように調節操作は高塩素含有と低塩素含有廃棄物の両方を比率調節や制御を行った方が好ましいが、高塩素燃料廃棄物のみの増減操作によって運転調節や自動制御を行ってもよい。また、これらの運転調節や自動制御の動作については、自動制御装置を利用して実施してもよいし、手動操作を行ってもよい。
【0019】
仮焼原料の塩素成分値の管理目標値はプレヒーター2下部でのコーティングの付着等による運転への影響が少ない範囲を設定する。セメント製造装置の形状、又はプレヒーター2の下部から塩素を抜き出す塩素バイパス装置の設置の有無によって異なるが、6,000乃至20,000ppmが設定される。しかし、塩素を含む燃料廃棄物をより多く使用することと同時に、廃棄物中の塩素の変動に余裕を持つには、9,000乃至15,000ppmが好ましく、さらには安定運転操業の面からは、11,000乃至13,000ppmがより好ましい。
【0020】
最下段サイクロン5の塩素成分値の測定値を利用することによって、迅速な操作アクションを行うことができ、ロータリーキルン1の入口における塩素成分を迅速に一定にすることができる。このことは、特に一時的な塩素成分値を上昇させないですみ、プレヒーター2の内部の炉壁にアルカリ塩化物のコーティングを付着させないで安定した運転操業を行うことができる。このときの塩素成分値の運転調節や制御結果に関する模式的グラフは図4の通りで、適切な運転調節や自動制御によって塩素成分値の変動幅が従来よりも小さくできるので、塩素成分の運転調節目標や制御目標を上げることが可能となる。塩素成分値の平均値も品質規格値を越えない範囲で上げることができ、塩素系廃棄物を増量することができる。
【0021】
さらに、全ての燃料によって自動制御を行う場合、2種類の廃棄物の量や、仮焼炉に供給する微粉炭との量的比率を調整する。この調整は、燃料廃棄物が微粉炭に較べて燃焼し難い傾向の場合には、廃棄物の量的比率を減少させる。廃棄物が微粉炭に較べて燃焼し易い傾向の場合には、燃料廃棄物の量的比率を増加させる。なお、燃料廃棄物の燃焼の難易状況は、最下段サイクロン5の上部出口ダクト17に設置したガス分析計で酸素成分値と一酸化炭素成分値の変化傾向から判断できる。酸素成分値が上昇し、一酸化炭素成分値が低下する傾向がある場合は、燃焼が容易になっている。逆に、酸素成分値が低下し、一酸化炭素成分値が上昇する傾向がある場合は、燃焼が困難になっている。微粉炭による塩素成分値制御のための供給量の比率操作は、制御系から分離してもよいが、好ましくは、3種類の燃料を供給比率制御によって、併用した方がよい。
【0022】
次に、仮焼炉4の温度の制御は、最下段サイクロン5の上部出口ダクト17に温度検出器を設け、仮焼炉4から排気されるガス温度を連続的に計測する。この温度の制御方法については、計測された該温度が制御目標値より高い場合は、3種類の燃料総供給量を減少させる。また逆に、該温度が制御目標値よりも低い場合は、3種類の燃料総供給量を増加させる。この動作については連続的に操作することによって、該温度が制御目標の一定値になるような燃料総供給量の増減動作を行う。該温度の制御目標値は850乃至950℃である。この制御によって、燃料廃棄物の発熱量の変動を燃料総供給量によって補正することになる。また、ロータリーキルン1に導入される原料の仮焼の進捗度合である仮焼率を一定にし、最終的には、ロータリーキルン1でのクリンカ焼成物を一定の品質に保つような運転とすることが可能となるものである。この原料温度制御は、微粉炭の増減操作による単独の制御でもよいが、好ましくは、各燃料廃棄物を含んだ微粉炭との比率連動制御を行った方がよい。
【0023】
前記のガス温度制御については、ガス温度に替えて最下段サイクロン5の下部シュート18の原料温度であってもよい。下部シュート18内に温度検出器として熱電対を挿入して原料温度を計測する。この場合の温度制御ロジックは全て同じロジックである。原料温度の制御目標値が異なるのみで、800乃至900℃の原料温度の制御目標値を設定する。
【0024】
前記制御方法の全ては、分散型ディジタル制御装置(DCS)のソフトロジックで組立て構成させてもよいし、また、制御用コンピュータやパーソナルコンピュータでのソフトウェアにてロジックを構築してもよい。また、以上の制御動作においては、これらをそのままプラントオペレータにおける手動操作による運転調節であってもよい。
【実施例】
【0025】
運転管理方法の一実施例を図1によって説明する。セメント工場に受入れた廃プラスチックは、塩素成分値が高いものと低いものに事前の品質試験値によって大まかに分別した。燃料廃棄物は低塩素含有廃棄物の塩素成分値が1,000ppm以下の廃プラスチック、高塩素含有廃棄物は塩素成分値が3,000乃至10,000ppmのRDF及び塩化ビニール樹脂を含む建築廃材等の破砕品である。
低塩素燃料廃棄物タンク9に貯蔵し、高塩素燃料廃棄物タンク10に貯蔵した。それぞれの燃料廃棄物は貯蔵タンク下部から計量されて抜き出され、その後混合して空気輸送ラインによりセメント製造装置の仮焼炉4へ投入された。また、セメント製造装置の主燃料としては、微粉炭を使用した。
【0026】
最下段サイクロン5で捕集されたセメント仮焼原料中の塩素成分値の測定は、プレヒーター2における最下段サイクロン5の下部排出シュート18の塩素成分値測定位置12にて、3分毎の周期で仮焼原料をサンプリング採取し、縮分した後、蛍光X線分析計にて2時間毎の周期で塩素成分値の成分分析を行った。測定された塩素成分値は、セメント製造装置が安定運転できる管理範囲の8,000乃至15,000ppmに収めることができるように、セメント製造オペレータが高塩素燃料廃棄物タンク10からの抜出し量を調節した。
【0027】
仮焼原料中の塩素成分値が10,000ppm以下であれば高塩素含有廃棄物を増量させ、逆に、塩素成分値が13,000ppm以上であれば高塩素含有廃棄物を減量させた。
高塩素含有廃棄物の増減操作については、少量の操作であれば単独の操作でも良好であるが、燃料廃棄物の使用量を減量しないために、増減操作を行う際には、ほぼ同時に低塩素含有廃棄物の増減操作を実施し、総供給量がほぼ一定になるように補正操作を行った。
【0028】
このような運転操作を行うことによって、従来における1台の廃棄物燃料タンクによる運転と比較して、最下段サイクロン5の下部排出シュート18における仮焼原料中の塩素成分値のバラツキは約1/2の大きさに低減し、一段と製品品質の安定化を行うことができた。このときの塩素成分値の平均値は約12,000ppmであって、バラツキが少なくなることによって、従来よりも約1,000ppmほど、平均の塩素成分値を増加させることができた。また、高塩素含有廃棄物の使用量は10重量%程度ほど増加し、同時にセメント製造装置が安定的に運転操業できるようになった。
【0029】
上記の運転時における制御方法の一実施例を図1と図5によって説明する。燃料廃棄物は低塩素含有廃棄物の塩素成分値が0.1%以下の廃プラスチック、高塩素含有廃棄物は塩素成分値が0.3乃至1.0%のRDF及び塩化ビニール樹脂を含む建築廃材等の破砕品である。(図5の制御演算ブロック接続図では、低塩素含有廃棄物を『低塩素品』、高塩素含有廃棄物を『高塩素品』と略記する。)また、一般燃料としては、微粉炭を使用している。
【0030】
最下段サイクロン5で捕集された仮焼原料中の塩素成分値の測定は、プレヒーター2における最下段サイクロン5の下部排出シュート18の塩素成分値測定位置12にて、3分毎の周期で仮焼原料をサンプリング採取し、縮分した後、蛍光X線分析計にて30分毎の周期で塩素成分値を分析操作にて行う。測定された塩素成分値は、分散型ディジタル制御装置(DCS)に読み込み、DCS内部のソフトブロックによるロジックにて30分毎の周期で演算する。以下は、DCS内部ソフトブロックの連結による制御システムを構築している。
【0031】
塩素調節器Cへの入力値Pとして取り込み、塩素成分値の設定値Sと比較しギャップPI制御演算を行って、出力値Mとして廃プラ比率設定R1を設定する。なお、該ギャップの幅は、塩素成分値換算で、1,000乃至5,000ppm相当に設定する。この廃プラ比率R1は、全燃料のうち、低塩素含有廃棄物と高塩素含有廃棄物を合計した量的比率を表すもので、次の演算式(1)で定義される。
【0032】
【数1】

【0033】
従って、微粉炭比率は、微粉炭演算(1−R1)にて求められる。ここにR1は、通常、10乃至60重量%(実際の演算単位は、0.0乃至1.0の比率値)である。
【0034】
次に、高塩素品比率設定R2を設定する。この高塩素品比率設定R2は、使用している全ての燃料廃棄物中における高塩素含有廃棄物の量的比率を演算するもので、次の演算式(2)で定義される。
【0035】
【数2】

【0036】
従って、低塩素含有廃棄物の比率は低塩素品演算(1−R2)にて求められる。ここに、R2は、通常、5乃至20重量%(実際の演算単位は、0.0乃至1.0の比率値)である。
【0037】
一方、プレヒーター2における最下段サイクロン5の上部出口ダクト17において、挿入された温度検出器である熱電対によって測定されたガス温度は、温度調節器Cの入力値Pが、温度設定値Sと比較され、PID制御演算されて出力値Mとして、燃料の総量設定値Σへ送られる。ここに温度設定値Sは、通常900℃である。
【0038】
さらに、高塩素品比率設定R2は、高塩素品比率演算ブロックの設定値Sとして送り、同時に、総量設定器Σの信号を入力値Pとして高塩素品比率演算ブロックへ取り込む。高塩素品廃比率演算ブロックは、S×Pの乗算を行って、高塩素含有廃棄物の輸送量へ換算する。その値は、高塩素品調節器Cの設定値Sとなる。高塩素品調節器Cは出力値Mを送って、高塩素含有廃棄物供給機の輸送量制御を行う。
【0039】
また、低塩素品演算(1−R2)は、低塩素品比率演算ブロックの設定値Sとして送り、同時に、総量設定器Σの信号を入力値Pとして低塩素品比率演算ブロックへ取り込む。低塩素品比率演算ブロックは、S×Pの乗算を行って、低塩素含有廃棄物の輸送量へ換算する。その値は、低塩素品調節器Cの設定値Sとなる。低塩素品調節器Cは出力値Mを送って、低塩素含有廃棄物の供給機の輸送量制御を行う。
【0040】
そして同時に、微粉炭演算(1−R1)は、微粉炭比率演算ブロックの設定値Sとして送り、同時に、総量設定器Σの信号を入力値Pとして微粉炭比率演算ブロックへ取り込む。微粉炭比率演算ブロックは、S×Pの乗算を行って、微粉炭の輸送量へ換算する。その値は、微粉炭調節器Cの設定値Sとなる。微粉炭調節器Cは出力値Mを送って、微粉炭供給機の輸送量制御を行う。
【0041】
このように、本発明の図1と図5に示すような運転調節や自動制御方法を構築すれば、原料仮焼率の制御である原料温度制御を安定的に行いながら、同時に原料中の塩素成分値制御を実施することができる。しかも、できるだけ塩素成分の多い廃プラスチックを使用し、微粉炭はできるだけ少なく使用するように制御動作を行うことができる。これらの方法は、プラントオペレータによる手動操作で一部または、全面的に行うことも可能であるが、好ましくは、全面的に自動制御を行う方法がよい。
【0042】
本発明の運転調節や自動制御方法を使用することによって、燃料消費コストを低くするための燃料廃棄物としての高塩素含有廃棄物の使用を増加させると同時に、ロータリーキルン1とプレヒーター2の安定操業を実現することが可能となった。従来の1つの燃料廃棄物タンクによる手動操作に比較して、最下段サイクロン5の下部排出シュート18における仮焼原料中の塩素成分値のバラツキは、従来の方法に較べて約1/4とさらに少なくなった。そのため、制御目標値を約2,500ppm上げ、約13,500ppmとすることができ、平均の塩素系燃料廃棄物の使用量が15%増加した。そして一段と塩素成分の安定化を行うことができるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、高塩素成分を含有する燃料廃棄物を熱量として有効に活用する産業分野において、セメント産業以外のいずれにおいても使用することができる技術である。また、焼却炉などでの焼却処分においても、環境への影響を低減することが可能であるので、有効に適用できる技術である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のセメント製造装置の焼成工程の全体構成を示す概略的な模式図である。
【図2】従来のセメント製造装置の焼成工程の全体構成を示す概略的な模式図である。
【図3】従来の高塩素燃料廃棄物を減少させて塩素成分を低減して運転していることを示す模式的グラフである。
【図4】本発明において、最下段サイクロンの下部排出シュートの塩素成分値が燃料廃棄物の供給比率で調整し制御されている状態を示す模式的グラフである。
【図5】本発明の実施例において、仮焼炉での各燃焼制御系の制御演算ブロック接続図を示す模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ロータリーキルン
2 プレヒーター
3 クリンカクーラー
4 仮焼炉
5 最下段サイクロン
6 仮焼炉バーナー
7 窯前バーナー
8 主燃料タンク
9 低塩素燃料廃棄物タンク
10 高塩素燃料廃棄物タンク
11 燃料合送配管
12 塩素成分値測定位置
13 セメント原料送入位置
14 プレヒーター排気ファン
15 クリンカ排出位置
16 調湿塔
17 上部出口ダクト
18 下部排出シュート
19 クーラー抽気ダクト
C 調節器
R1 低塩素品比率設定
R2 高塩素品比率設定
Σ 総量設定器
S 設定値
P 入力値
M 出力値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント製造装置のプレヒーターの最下段サイクロンの下部排出シュートを流れる固形物中の塩素濃度を測定し、測定した塩素濃度に基づいて、仮焼炉に供給するために別々に貯蔵した高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物の供給量を制御することを特徴とするセメント製造装置の運転方法。
【請求項2】
前記測定した塩素濃度に基づいて、仮焼炉に供給するために別々に貯蔵した高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物の供給量と、仮焼炉に供給する微粉炭の供給量とを制御する請求項1記載のセメント製造装置の運転方法。
【請求項3】
セメント製造装置のプレヒーターの最下段サイクロンにおける下部排出シュートの温度又は上部出口ダクトの温度を測定し、測定した温度と前記測定した塩素濃度に基づいて、仮焼炉に供給するために別々に貯蔵した高塩素含有廃棄物と低塩素含有廃棄物の供給量と、仮焼炉に供給する微粉炭の供給量を制御する請求項1または2記載のセメント製造装置の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate