説明

セラミックス中空粒子の製造方法、及び、セラミックス中空粒子

【課題】簡便に実施でき、樹脂鋳型の使用量を削減し、不必要な成分を含有せず、多量生産が可能なセラミックス中空粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリスチレンの有機溶媒溶液に、水と疎水化されたセラミックス粒子とを添加して分散させた拡散相液を得る拡散相調製工程、前記拡散相液を、水中に分散させてエマルションを得るエマルション調製工程、前記エマルションから溶媒を除去、乾燥させてポリスチレンとセラミックスとからなるポリスチレン−セラミックス中空粒子を得る粒子形成工程、及び、前記ポリスチレン−セラミックス中空粒子を酸化雰囲気中で加熱してセラミックス中空粒子を得る焼成工程を備えたセラミックス中空粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料などにフィラーとして添加されて、母材に様々な機能を付与する事ができるセラミックス中空粒子の製造方法及びセラミックス中空粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料などに添加されて、母材に様々な機能を付与するフィラーの開発が進められている。このなかで、低誘電率、低熱伝導性、軽量といった特性を付与できるセラミックス中空粒子は、様々な分野での応用が期待されている。しかしながら、現在市販されているセラミックス系中空粒子のほとんどは、製造に当たって複雑な調製プロセス、高価な装置もしくは大量の樹脂鋳型を必要とし、結果として多量生産に適していない。
【0003】
一方、複雑な調製プロセスや装置を必要としないシラスバルーン等の火山ガラス質資源からなるシリカ系中空粒子においては、成形物においては不必要な成分が多量に含まれていたり、加熱発泡の制御が困難なことから、壁厚などの品質が安定しないなどの問題点がある。さらに、これら中空粒子のほとんどが、幅広い粒度分布を示し、応用範囲が限られてしまうと云った問題がある。
【0004】
セラミックス中空粒子の調製は、材料および用途等に応じてさまざまな手法が存在する。すなわち、溶融セラミックスに高圧空気を吹き付ける溶融吹付法、発泡成分の発泡による加熱発泡法、融点の低い樹脂等の表面にセラミックス層をコーティングし、加熱焼成すると同時に芯材を除去し、中空を形成させる芯材溶融・溶出法、ノズル液滴法、噴霧熱分解法、界面反応法に代表されるが、高度な技術と複雑な装置が必要となり、また、品質の制御が困難で、簡便かつ量産に適した技術が確立されているとは言い難い。特に、溶融溶出法(特許文献1)では、多量の樹脂鋳型が必要となり、材料コストが高くなると云う問題があり、噴霧熱分解法(特許文献2〜4)では多量生産が困難となるなどの問題点が挙げられる。
【特許文献1】特開2003−160330公報
【特許文献2】特開2003−89519公報
【特許文献3】特開2003−160331公報
【特許文献4】特開2005−126309公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、簡便に実施でき、樹脂鋳型の使用量を削減し、不必要な成分を含有させず、多量生産が可能なセラミックス中空粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセラミックス中空粒子の製造方法は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、ポリスチレンの有機溶媒溶液に、水と疎水化されたセラミックス粒子とを添加して分散させた拡散相液を得る拡散相調製工程、前記拡散相液を、水中に分散させてエマルションを得るエマルション調製工程、前記エマルションから溶媒を除去、乾燥させてポリスチレンとセラミックスとからなるポリスチレン−セラミックス中空粒子を得る粒子形成工程、及び、前記ポリスチレン−セラミックス中空粒子を酸化雰囲気中で加熱してセラミックス中空粒子を得る焼成工程を備えたことを特徴とするセラミックス中空粒子の製造方法である。
【0007】
また、本発明のセラミックス中空粒子の製造方法は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載のセラミックス中空粒子の製造方法において、前記エマルション調製工程で用いる前記水に高分子分散安定剤が添加されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のセラミックス中空粒子は、上記請求項1または請求項2に記載のセラミックス中空粒子の製造方法により製造されたことを特徴とするセラミックス中空粒子である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセラミックス中空粒子の製造方法は簡便に実施でき、樹脂鋳型の使用量を削減し、不必要な成分を含有させず、多量生産が可能な優れたセラミックス中空粒子の製造方法である。
【0010】
また、請求項2に記載のセラミックス中空粒子の製造方法によれば、前記エマルション調製工程で用いる前記水に高分子分散安定剤が添加されているために、形成されるエマルションの中の液滴の分散が安定し、最終的に得られるセラミックス中空粒子の大きさのばらつきが小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、拡散相調製工程では、ポリスチレンの有機溶媒溶液に、水と疎水化されたセラミックス粒子とを添加して分散させた拡散相液を得る。このことを図1中、拡散相調製工程でモデル的に示した。図中符号1は水であり、セラミックス粒子3が分散されたポリスチレンの有機溶媒溶液2中に注ぎ込まれる直前の状態と拡散相調製工程後に、ポリスチレンの有機溶媒溶液2にセラミックス粒子3と水1とが分散された状態を示す。
【0012】
用いる有機溶媒としては、ポリスチレンを溶解し、かつ、水に不溶なものであれば良く、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどが挙げられ、必要に応じて混合して用いることもできる。
【0013】
用いるポリスチレンは市販のもの(ペレット状のもの)を用いれば良く、必要に応じて粉末としてから上記有機溶媒に溶解させても良い。溶解に際しては、必要に応じて攪拌、加熱などを行っても良い。拡散相の粘度が高すぎると、エマルション調整工程において、安定した球状の液滴が形成できないために、ポリスチレンとセラミックス粉末と溶媒の添加量を調整し、安定した球状の液滴が形成できるように拡散相の粘度を調整する。このとき、ポリスチレンは後の工程で除去することを考慮すると、ポリスチレンの添加量は極力少ないことが好ましい。本発明ではこのようにポリスチレンをセラミックスのバインダーとして用いているために粒子形成工程で得られるポリスチレン−セラミックス中空粒子は焼成前でも強度が高く、破壊する可能性が非常に少ないので、理想的には中空粒子が効率よく得られる。
【0014】
用いる疎水化セラミックスは、市販の疎水性セラミックス粒子(例えば、疎水性アルミナは日本アエロジル株式会社等から入手可能)を用いても、あるいは、疎水化剤で表面改質し、疎水化処理したセラミックスを用いても良い。ここで、疎水化剤としては、脂肪酸、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びシリコーンオイルなどを上げることができ、これらから1種以上選択して使用する。
【0015】
シランカップリング剤としては、特に、限定されるものではないが、例えば、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシシラン)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトシキシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトシキシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を上げることができる。このようなシランカップリング剤は、通常、親水性のセラミックス粒子に対して、0.1重量%以上5重量%以下、好ましくは0.3重量%以上1重量%以下の範囲で用いられる。
【0016】
また、疎水化が目的であるために、シランカップリング剤以外のカップリング剤、例えば、チタネート系カップリング剤やアルミニウム系カップリング剤もシランカップリング剤同様に用いることができる。
【0017】
また、脂肪酸としては、疎水化用途に用いるものであるために、水に多量に溶けないものであることが必要で、このようなものとして例えば、酪酸、吉草酸、ブチル酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、マーガリン酸、アラギリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ウンデシル酸、ノナデカン酸、アラキン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、ソルビン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸などから選択された1種以上で、飽和、不飽和を問わず挙げられるが、好ましくは炭素数14以上24以下の飽和又は不飽和の高級脂肪酸が好ましく、例えば、オレイン酸やステアリン酸を挙げることができる。このような脂肪酸は、通常、0.5重量%以上5重量%以下、好ましくは1重量%以上3重量%以下の範囲で用いられる。また、上記脂肪酸の塩もまた使用できる。
【0018】
シリコーンオイル類も疎水化剤として用いることができ、そのようなものとしては例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。
【0019】
これら疎水化剤のうち、カップリング剤ではそのカップリング反応条件でセラミックス粒子と反応させて、表面処理を行って疎水化処理する。その他の疎水化剤では、セラミックス粒子表面にこれら疎水化剤が良好に塗布される条件で疎水化処理を行う。
【0020】
ここでセラミックスとしては非金属無機材料のBaTiO、BaNaNbO15、PbZrO、PbTiO、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrOとPbTiOの固溶体))、PLZT(PZTにLaを添加した金属酸化物)、LiTaO、LiNbO、CaO、CaAs、CaWO、Bi、Bi(GeO、SiO、SiC、Si、ZnO、ZnS、ThO、KO、LaCrO、SnO、ZrO、LaB、BeO、WC、BC、In、TiN、TiO、TiC、LaF、YS、YAl12、YIG(イットリウム鉄ガーネット3Y・5Fe)、HAp(Ca10(PO(OH)ヒドロキシアパタイト)、TCP(Ca(POリン酸三カルシウム)、TTCP(CaO(POリン酸四カルシウム)、VOやV等のバナジウム酸化物、Feやフェライト等の鉄族酸化物などが挙げられる。
【0021】
また、用いるセラミックス粒子の大きさは、小さ過ぎると拡散相中で多数の凝集体が発生し、かつ、作業性が悪くなり、一方、大き過ぎると拡散相中で沈降が起こり、分散性が低下するために、通常0.01μm以上10μm以下のものを用いることが好ましい。
【0022】
疎水化されたセラミックス粒子は、ポリスチレンの有機溶媒溶液に均一になるように分散させるが、このとき、スターラーやミキサーなどを用いて、ポリスチレンの有機溶媒溶液を攪拌しながら、徐々に添加することが好ましい。疎水化されたセラミックス粒子の配合量は、エマルション中の液滴の形状、安定性に影響を与えるためにポリスチレン100重量部に対して、5重量部以上1000重量部以下の範囲になるように配合することが好ましい。より好ましい範囲は10重量部以上200重量部以下である。
【0023】
このようにして得られたポリスチレンの有機溶媒溶液に、水と疎水化されたセラミックス粒子とを添加して分散させた拡散相液を得る。このときの水の添加量は得られる中空粒子の中空部の大きさを決定するパラメータの一つであり、添加量が少なすぎると、中空ではなく中実の粒子が増加し、添加量が多すぎると、エマルションを形成させることができない。このため、水を拡散相に対して、1容積%以上30容積%以下の範囲になるように添加することが好ましい。また、水粒子が充分に均一に拡散するようにスターラーやミキサーなどを用いて攪拌させながら添加することが好ましい。さらに、このときの水に高分子分散安定剤を添加すると、拡散相中の水の凝集(合一)が防止され、拡散相中での分散が安定する。高分子分散安定剤の添加により、水は成形されるエマルションの液滴中に安定して存在し、最終的に得られるセラミックス粒子は高い確率で中空体となる。
【0024】
このようにして拡散相調製工程では、疎水化されたセラミックス粒子を添加し分散させたポリスチレンの有機溶媒溶液に水粒子が拡散した拡散相が形成される。このとき、セラミックス粒子は疎水化されているために、この水粒子内、および水相内には近づかず、ポリスチレンの有機溶媒溶液内に存在する。
【0025】
次いで、前記拡散相液を、水中に分散させてエマルションを得るエマルション調製工程を行う。図1では、水1と疎水化されたセラミックス粒子3とが拡散したポリスチレンの有機溶媒溶液2が水中に分散される直前の状態とエマルション調製工程後に、エマルション粒子5が形成されること、このエマルション粒子5中には疎水化されたセラミックス粒子3が分散されたポリスチレンの有機溶媒溶液中に水分子が分散されていることがモデル的に示されている。
【0026】
ここで用いる水に高分子分散安定剤が添加されていると分散が安定するので好ましい。用いる高分子分散安定剤としてはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これら高分子分散安定剤の水中への添加濃度としては、分散安定効果を得るために、水100重量部に対して、0.5重量部以上3重量部以下の範囲になるように添加することが好ましい。
【0027】
このように調製された水に前記拡散相液を分散させる。このとき水に対して前記拡散相液があまりに多いと、拡散相液同士が接触する機会が増加して、高分子分散安定剤存在下においても、凝集体となってしまう可能性が高まる。このため、水100重量部に対して、前記拡散相液は30重量部以下、好ましくは10重量部以下とする。また、スターラー、ミキサー(回転羽根、ホモミキサー)などを用いて、適当な液滴径となるまで、撹拌(懸濁)すると共に、液滴の良好な分散状態を維持するために撹拌を継続する。
【0028】
このとき、エマルションを適当な温度に保つことで、液滴中の溶剤が蒸発除去され、ポリスチレンが析出し、液滴が固化する。また、溶剤蒸気は回収し、再利用することができる。このようにして、内部に水を持つポリスチレンとアルミナとからなるポリスチレンーアルミナ粒子が形成される。
【0029】
このようなエマルション調製工程では、内部に水粒子を有する、疎水化されたセラミックス粒子を添加し分散させたポリスチレンの有機溶媒溶液からなる液状粒子が、水中に分散された状態が形成される。さらに、このエマルション調製工程ではエマルションを形成するために攪拌を行うが、この攪拌は最終的に得られるセラミックス中空粒子の外径を決定する重要なファクターとなる。
【0030】
また、上記液状粒子中のポリスチレンの有機溶媒溶液では内部に水分子があるために、液状粒子の大きさに比べ、ポリスチレンの必要量は少なくて済み、従来の芯材溶融・溶出法と比べてもその必要量が少なくなるので最終的に低コスト化が可能となる。
【0031】
次いで、前記エマルションから粒子を分離し、粒子表面に物理吸着した高分子分散安定剤を除去、その後粒子を乾燥させて内部の水を除去することでポリスチレンとアルミナとからなるポリスチレンーアルミナ中空粒子を得る粒子形成工程を行う。
図1では水4中に分散したエマルション粒子5が粒子形成工程後に水中から取り出されていることがモデル的に示されている。
【0032】
粒子の分離は例えば濾過や遠心分離などの手段で行う。その後粒子表面に物理吸着した高分子分散安定剤を、80℃程度の水で洗浄する。
【0033】
この粒子形成工程では、水が除去されて、ポリスチレン−セラミックス中空粒子(図1中ではポリスチレン−セラミックス中空粒子5’)が形成される。このときポリスチレン成分はセラミックス粒子同士をさらに大きい中空粒子状に保持するバインダーとして機能する。
【0034】
その後、前記ポリスチレン−セラミックス中空粒子を酸化雰囲気中で加熱してセラミックス中空粒子を得る焼成工程を行う。図1ではポリスチレン−セラミックス中空粒子5’からポリスチレン成分が焼成工程により除去されて、セラミックス中空粒子6が形成されていることがモデル的に示されている。
【0035】
この焼成により、ポリスチレン成分が燃えて除去されると共に、残留するセラミックス粒子同士が結合してセラミックスからなる中空粒子が得られる。酸化雰囲気は通常空気を用いるが、必要に応じて、窒素などを混合するなど、酸化条件を調整しても良い。
【0036】
焼成温度としては、最終的にポリスチレン−セラミックス中空粒子が中空状形状を保ちながら、この中空粒子内の隣接するセラミックス粒子同士が互いに融合し焼結状態となるか、焼結には至らないものの、互いに部分的に結合し合う状態となる温度であることが必要であり、例えば1400℃以上1800℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0037】
このように、本製造方法で必要な設備は、各種溶液等の容器、恒温槽、撹拌用のスターラーあるいはミキサー、それに、電気炉だけであり、非常に簡便かつ拡張が容易なプロセスである。
【0038】
さらに、エマルション調製工程での攪拌力に依存するエマルションの大きさで粒径の制御を行うため、発泡材が必要な手法などと比較すると、粒径のばらつきが少ない。また、拡散相調製工程での水の量を調製することで、使用するポリスチレン量の削減や、壁厚の制御が可能となるなどの応用性にも優れる。
【実施例】
【0039】
以下に本発明のセラミックス中空粒子の製造方法の実施例について具体的に説明する。
【0040】
<拡散相調製工程>
和光純薬工業社製ポリスチレン(n=2500品)10gをジクロロメタン60gに溶解して得たポリスチレンのジクロロメタン溶液にスターラーによって攪拌しながら、疎水化されたアルミナ粒子(日本アエロジル社製AluC805、粒径:15μm)3g、水(イオン交換水を蒸留したもの)5g、この順で添加し、均一分散させて拡散相液を得た。
【0041】
<エマルション調製工程>
上記で得た拡散相液を、水900mLにポリビニルアルコール12gを添加し溶解させた溶液中にミキサー(攪拌羽根)により100rpmで攪拌しながら注ぎ入れ、その後240分間継続して攪拌して、ジクロロメタンを蒸発除去させ、内部に水を持つポリスチレンとアルミナとからなるポリスチレン−アルミナ粒子を得た。
【0042】
<粒子形成工程>
上記エマルション中の粒子を減圧濾過により分離し採取し、80℃の温水により充分に洗浄した後、乾燥炉により40℃で3時間乾燥させてポリスチレンとアルミナとからなるポリスチレン−アルミナ中空粒子を得た。得られたポリスチレン−アルミナ中空粒子の走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真を図2(a)に、ポリスチレン−アルミナ中空粒子を圧縮によって破断させ、中空部が確認できるようにした状態の顕微鏡写真を図2(b)に示す。
【0043】
<焼成工程>
上記ポリスチレン−アルミナ中空粒子を電気炉内で1600℃、3時間の焼成(空気中)を行い、アルミナ中空粒子を得た。
【0044】
得られたアルミナ中空粒子の走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真、及び、その表面の一部拡大写真を図2(c)に、アルミナ中空粒子を圧縮によって破断させ、中空部が確認できるように状態の顕微鏡写真を図2(d)に示す。これら写真より、得られたアルミナ中空粒子において、膜厚が均一で真球状の中空粒子となっていることが確認できる。図2(c)での拡大写真は粒子表面に形成された気孔であり、
内部の水が蒸発する際に形成された開気孔が、焼成処理後も残留しているものであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のセラミックス中空粒子の製造方法をモデル的に示した図である。
【図2】(a)実施例で得られたポリスチレン−アルミナ中空粒子を示す走査型電子顕微鏡写真である。(b)(a)の粒子を破断させた状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。(c)実施例で得られたアルミナ中空粒子を示す走査型電子顕微鏡写真である。(d)(b)の粒子を破断させた状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0046】
1 水
2 ポリスチレンの有機溶媒溶液
3 疎水化されたセラミックス粒子
4 水
5 エマルション粒子
5’ ポリスチレン−アルミナ中空粒子
6 アルミナ中空粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレンの有機溶媒溶液に、水と疎水化されたセラミックス粒子とを添加して分散させた拡散相液を得る拡散相調製工程、
前記拡散相液を、水中に分散させてエマルションを得るエマルション調製工程、
前記エマルションから溶媒を除去、乾燥させてポリスチレンとセラミックスとからなるポリスチレン−セラミックス中空粒子を得る粒子形成工程、及び、
前記ポリスチレン−セラミックス中空粒子を酸化雰囲気中で加熱してセラミックス中空粒子を得る焼成工程を
備えたことを特徴とするセラミックス中空粒子の製造方法。
【請求項2】
前記エマルション調製工程で用いる前記水に高分子分散安定剤が添加されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス中空粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセラミックス中空粒子の製造方法により製造されたことを特徴とするセラミックス中空粒子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−274934(P2009−274934A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129487(P2008−129487)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】