説明

セラミックフィルタを製造する方法

【課題】多孔質セラミックハニカム材料、特に、モノリスからセラミックハニカムフィルタを製造するための新しい方法を提案する。
【解決手段】本発明の方法は、a)孔あきフィルムをハニカム材料の各端面に提供する工程であって、該孔あきフィルムの孔は、材料を貫通するチャネルが、それらの端面の一方または他方において交互に開であり、その結果、一方の端面における各チャネルの開部に対して、その隣接するチャネルは閉であるようになっている、工程と、b)各端面に貼り付けられたフィルムの孔を通じた吸引によって、チャネルにシール材料を導入し、端面の一方においてチャネルがシールされておらず、他方の端面においてシールされている、セラミックフィルタが得られる工程とを少なくとも包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液またはガス状の流出物をろ過するために用いられるセラミック材料の分野に関する。より詳細には、本発明は、場合によっては、ディーゼルエンジンからの排気ガス用の粒子フィルタ(particle filter:PF)として、より具体的には、液体流出物、特に水をろ過するための膜として用いられるセラミックフィルタを、多孔質セラミックハニカム材料から製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純粋でない液またはガス状の流出物は、これらが、例えば、精油装置または石油化学装置からの炭化水素流出物または排気ガス等のガス状の流出物である場合には、放出される前にろ過されなければならず、あるいは、純度の高い流出物、例えば水を必要とする用途に用いられる前にろ過されなければならない。
【0003】
セラミックフィルタ(一般的には、このタイプの適用において膜と称される)において行われる接線分離(tangential separation)によって水をろ過することが知られている。
【0004】
内燃エンジンからの排気ガス、特に、ディーゼルエンジンからの排気ガスに対しては、このようなガスは、大気を汚染し、かつ、健康に深刻なダメージを引き起こし得る煤煙または粒子を含んでおり、この問題を克服することを試みる種々の方法が構想されてきた。特に、多孔質材料によって構成されたフィルタをエンジンの排気口内に配置し、このフィルタ上にこれらの粒子を集めることが提案された。従来技術には、コーディエライト、炭化ケイ素等の耐火性材料から形成されたハニカムタイプのモノリスからなるフィルタが記載されている。このモノリスは、多孔質壁によって分けられた複数のチャネルを含み、それらのチャネルは、それらの壁を通して拡散するようガス流れを抑制するようにそれらの端部の一方または他方において交互にシールされている。従来技術において、シール材料をチャネルに導入することによって、モノリスの各端面において交互にチャネルをシールすることが知られている。シール材料は、一般的には、減圧(under-pressure)下に(特許文献1および2)および/または振動(特許文献3)によって導入される。シール材料のレオロジー特性は、注意して制御されなければならない。シールが流れるのを防止し、他方で、注入ノズル(単数または複数)が詰まることも防止するために、粘度が高く維持されなければならないからである。
【特許文献1】米国特許第4559193号明細書
【特許文献2】米国特許第4293357号明細書
【特許文献3】米国特許第4293357号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多孔質セラミックハニカム材料、特に、モノリスからセラミックハニカムフィルタを製造するための新しい方法を提案することであり、本発明の方法を用いて得られたフィルタは、シール材料とモノリスの壁との非常に良好な接着を生じさせ、その結果、チャネルのそれぞれの端部の一方において、シールの優れた保持が形成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、一方の端面から他方の端面にわたって延びる複数のチャネルを含む多孔質セラミックハニカム材料からセラミックハニカムフィルタを製造する方法であって、a)ハニカム材料の各端面に孔あきフィルムを設ける工程であって、該孔あきフィルムの孔は、該フィルムの望みの位置にエネルギー放射することによって生じさせられるものであり、該孔は、該材料を貫通するチャネルが、それらの端面の一方または他方において交互に開であり、しかも、一方の端面における各チャネルの開に対して、その隣接するチャネルは閉になっているようにされる、工程と、b)各端面に貼り付けられたフィルムの孔を通じた吸引によって、開チャネルにシール材料を導入し、一方の端面においてチャネルがシールされておらず、他方の端面においてシールされているセラミックフィルタを得る工程とを少なくとも包含するものである。
【0007】
工程a)に先行して、セラミック材料の端面のそれぞれに無孔フィルムを貼り付けることとからなる工程と、これに続く、前記無孔フィルムの望みの位置に孔あけすることからなる工程とが行われることが好ましい。
【0008】
フィルムは、レーザタイプの照射を用いて前記フィルムの望みの位置に照射することによって孔あけされることが好ましい。
【0009】
前記孔あけ工程に先行して、デジタルカメラを用いた孔あけされるべき端面の視覚認識のための工程が行われることが好ましい。
【0010】
シール材料はセメントであることが好ましい。
【0011】
吸引は、真空ポンプを介して前記材料内に減圧をつくり出すことによって行われることが好ましい。
【0012】
前記セラミック材料は、コーディエライト、ムライト、炭化ケイ素、アルファアルミナ、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、またはリン酸ジルコニウムから形成されることが好ましい。
【0013】
シール材料によって構成されるシールは、基本的に、チャネルのそれぞれの終端部に位置することが好ましい。
【0014】
工程b)は、最初に、第一端面の端部におけるチャネルにシール材料を導入し、前記チャネル内にこうして形成されたシールを乾燥させ、次いで、前記第二端面の端部におけるチャネルにシール材料を導入することによって行われることが好ましい。
【0015】
上記方法において、焼成工程からなる工程c)を包含することが好ましい。
【0016】
工程b)を行った後に、セラミックフィルタに触媒的に活性な相を導入する工程を包含することが好ましい。
【0017】
前記多孔質セラミックハニカム材料は、焼成された押出物の形態を有していることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、ディーゼルエンジン排気システム用の粒子フィルタとしての、上記のいずれか1つの方法にしたがって調製されたセラミックフィルタの使用に関する。
【0019】
また、本発明は、液またはガス状の流出物をろ過するための膜としての、上記のいずれか1つに記載の方法を用いて調製されたセラミックフィルタの使用に関する。
【0020】
本発明は、一方の端面から他方の端面にわたって延びる複数のチャネルを含む多孔質セラミックハニカム材料からセラミックハニカムフィルタを製造する方法に関する。本発明の方法は、a)ハニカム材料の各端面に孔あきフィルムを提供する工程であって、該孔あきフィルムの孔は、該材料を貫通するチャネルがそれらの端面の一方または他方において交互に開であり、しかも、一方の端面における各チャネルの開に対して、その隣接チャネルが閉であるようになっている、工程と、b)各端面に貼り付けられたフィルムの孔を通した吸引により、シール材料をチャネルに導入して、該フィルタのチャネルは、端面の一方においてシールされていないが、他方の端面においてシールされているセラミックフィルタを得る工程とを少なくとも包含する。本発明の方法を用いて得られたセラミックフィルタは、有利には、ディーゼルエンジンからの排気ガス用の粒子フィルタ(PF)またはガスまたは液状の流出物、特に水をろ過するための膜として用いられる。
【0021】
本発明によると、孔あけされるべき位置を決定するために端面の視覚認識のためのデジタル工程を行った後に偏光レーザビームを用いて材料の各端面を被覆するフィルムに孔あけすることが有利である。このデジタル認識工程は、種々のチャネル形状への迅速な適合を可能にし、また、孔あけされるべき多孔質セラミック材料のネットワークに存在する非画一性(空洞)を可能にする。
【0022】
シール材料をチャネルに浸透させるための方法としての吸引技術は、多孔質セラミック材料のチャネルの全部において減圧およびその結果としての、前記材料の壁の細孔内の減圧をつくり出す利点を有する。この減圧は、シール材料を含む懸濁液を、懸濁液と壁との界面に位置する壁の細孔に吸引する。シール材料を含む懸濁液と壁との間の接触はより密着性であり、乾燥およびその後のか焼の後、シールと壁との界面に位置する壁の細孔へのシール材料、一般的にはセメントの最良の浸透がもたらされ、これにより、前記シールがより良好に固定され、それ故に、従来技術の方法を用いて得られたフィルタ、特に、シール材料を含む懸濁液またはペーストを注入することからなる方法によるフィルタの強度と比較して強度がより強くなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、一方の端面から他方の端面にわたって延びる複数のチャネルを含む多孔質セラミックハニカム材料からセラミックハニカムフィルタを製造する方法に関する。本発明の方法は、a)孔あきフィルムをハニカム材料の各端面に提供する工程であって、該孔あきフィルムの孔は、材料を貫通するチャネルが、それらの端面の一方または他方において交互に開であり、その結果、一方の端面における各チャネルの開部に対して、その隣接するチャネルは閉であるようになっている、工程と、b)各端面に貼り付けられたフィルムの孔を通じた吸引によって、チャネルにシール材料を導入し、端面の一方においてチャネルがシールされておらず、他方の端面においてシールされている、セラミックフィルタが得られる工程とを少なくとも包含し、これにより、多孔質セラミックハニカム材料、特に、モノリスからセラミックハニカムフィルタを製造するための新しい方法を提案することができ、本発明の方法を用いて得られたフィルタは、シール材料とモノリスの壁との非常に良好な接着を生じさせ、その結果、チャネルのそれぞれの端部の一方において、シールの優れた保持が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、一方の端面から他方の端面にわたって延びる複数のチャネルを含む多孔質セラミックハニカム材料からセラミックハニカムフィルタを製造する方法であって、
a)孔あきフィルムをハニカム材料の各端面に提供する工程であって、該孔あきフィルムの孔は、該材料を貫通するチャネルが、それらの端面の一方または他方において交互に開であり、しかも、一方の端面における各チャネルの開に対して、その隣接するチャネルは閉であるようになっている、工程と、
b)各端面に貼り付けられたフィルムの孔を通した吸引によって、チャネルにシール材料を導入して、端面の一方においてチャネルがシールされていないが、他方の端面においてシールされているセラミックフィルタを得る工程と
を少なくとも包含する方法を提供する。
【0025】
本発明の方法の有利な実施形態では、前記方法の工程a)に先行して、セラミック材料の端面のそれぞれに孔があけられていないフィルムを貼り付けることからなる工程と、これに続く、前記孔があけられていないフィルムの所望の位置に孔あけすることからなる工程とが行われる。それ故に、孔あけが行われるのは、フィルムがすでにセラミック材料の端面のそれぞれに貼り付けられている時である。事前に孔あけされたフィルムを直接的に端面のそれぞれに貼り付けることも可能である。
【0026】
本発明によると、フィルムの孔あけは、多孔質セラミックハニカム材料の端面における所与のチャネル開口部に対応する位置になされる。フィルムの孔あけは、一方の端面における各開(すなわち、フィルムにより被覆されていない)チャネルに対して、その隣接するチャネルが閉(すなわちフィルムが被覆されている)になるようにされる。この仕方において、セラミック材料の端面上に配置された孔があけられるまたは事前に孔があけられたフィルムは、前記面のそれぞれ上にマスクを形成する:本発明の方法の工程b)の間に開チャネルのみがシール材料によってふさがれることになる。端面の一方において開であるチャネルが他方の端面において閉であり、逆に、その結果、セラミック材料を貫通するチャネルが端面の一方または他方において交互に開であることも必須である。本発明の方法の工程b)を行った後、すなわち、セラミック材料の各端面における開チャネルにシール材料を導入した後に、一方の端面においてシールされたチャネルが、他方の面においてシールされず、それ故に、チャネルは、セラミックフィルタの端面の一方または他方上に交互にシールされることが明らかになる。この仕方で、端面のそれぞれからフィルムを、例えば、機械的除去または250〜400℃の温度でのか焼によって取り除いた後、セラミックフィルタが得られる。前記セラミックフィルタは、煤塵および/または汚染粒子を含むガス流がその内部を移動する粒子フィルタとして用いられ得る。前記セラミックフィルタはまた、液またはガスの流れ、好ましくは液の流れ、より好ましくは水性であって、有機または無機物質、例えば、微生物(幼生、細菌、胞子等)、有機高分子、コロイドまたは無機塵埃を懸濁状に含有する液がその内部を移動させられる膜として有用である。想定される用途が何であれ、液またはガスの流れは、セラミックフィルタの一方の端面の未シールチャネルへの入口に導入され、チャネルを分ける多孔質壁を通って拡散し、他方の端面の未シールチャネルを経て出る。
【0027】
セラミック材料の端面に機械的に貼り付けられたフィルムは、前記フィルムの孔を通した吸引によってシール材料が導入される時に破裂させられないように十分に強くなければならない。フィルムはまた、シール材料を含む懸濁液の化学的性質に抵抗しなければならない;特に、フィルムは、水の存在下または懸濁液の酸−塩基条件に応じて劣化してはならない。有利には、それは高分子材料から形成されたフィルム、例えば、ポリエステルである。非常に有利には、50μmの厚さを有する粘着性のポリプロピレンフィルムまたは伸縮性ポリエチレンフィルムが、セラミック材料の周囲表面上で、それをシールし、チャネルおよびこれらのチャネルの壁の細孔内により良好な真空度を提供するために用いられる。本発明の特定の実施形態において、フィルムは、フィルムのそれぞれが一旦端面のそれぞれに貼り付けられると、それが50℃近くの温度で、例えば、連続オーブンにおいて連続的に行われる収縮工程の間に重ね合わせられ、かつ、シールされ得るように熱収縮材料から製造される。次いで、多孔質セラミックハニカム材料は、熱収縮性の鞘状物(sheath)に置かれる。それは、有利には、厚さ120μmのポリエチレンの熱伸縮性鞘状物であり得る。
【0028】
各端部に貼り付けられたフィルムは、種々の手段によって孔あけされてよい。例えば、それらは、少なくとも1つの針を用いて孔あけされてよい。針は、好ましくは50〜250℃、より好ましくは75〜125℃の温度に加熱され、その後に、一端における各チャネルの開に対して、その隣接するチャネルが閉になるような方法でフィルムが孔あけされる。フィルムが孔あけされた時、針はフィルムから引き抜かれる。針の形状および/または針の配置は、有利には、チャネルの形状および/配置に合わせられる。孔あけ工程を行うために、フィルムになされるべき孔と同数程度に多くの針を含む孔あけシステムが用いられ得る。非常に有利には、端面のそれぞれを覆うフィルムは、エネルギー放射、有利には、レーザタイプのビーム、非常に有利にはCOレーザを用いて前記フィルムの所望の位置に光照射することによって孔あけされる。明らかに、前記エネルギー放射は、孔あけされるべきフィルムの化学的性質と融和性である。COレーザは、特に、ポリエステルフィルムと融和性である。フィルム光照射工程に先行して、アルゴリズムを含むデジタル法を用いて、シールされるべきチャネルを視認するための、デジタルカメラ、特に電荷転送素子(CCD(coupled charged device)カメラ)を用いる孔あけされるべき端面の視覚認識工程を行うことが好ましい。有利には、Renaud Lasersによって販売されている装置が用いられ、その特徴は、フランス特許FR-A-2 842 131またはUS-A-2005/205539に与えられる。これらの特許出願の内容は、本明細書において、参考として援用される。化学的に孔あけ工程を行う、特に、孔あけされるべきフィルム上の領域に微液滴を蒸着させることも可能である。前記微液滴は、溶液または溶媒、例えば、エチルエーテル、濃硝酸、濃硫酸等によって形成される。
【0029】
多孔質セラミックハニカム材料は、好ましくはモノリスである。それは、複数のチャネルにより交差させられており、チャネルは、相互に平行であり、一方の端面から他方の端面に延び、場合によっては、正方形、長方形、三角形、六角形または多角形の形状を有する。あらゆるセラミック材料が適し得るが、特に、コーディエライト、ムライト、炭化ケイ素SiC、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウムまたはアルファアルミナが挙げられる。それは、純粋なセラミック材料(すなわち単一のセラミック組成物から形成される)であってよく、または、複合セラミック材料由来(すなわち複数の異なるセラミック組成物から形成される)であってもよい。
【0030】
粒子フィルタとして用いられる場合、前記の多孔質セラミックハニカム材料は、一般的には、35〜65容積%、好ましくは40〜60容積%の多孔率を有する。好ましくは、細孔分布は原則的に単分布であり、例えば、5〜60マイクロメータ、好ましくは10〜40マイクロメータ、より好ましくは15〜35マイクロメータに集中してよい。
【0031】
フィルタを構成する前記材料を貫通するチャネルは、交互に開である。すなわち、一方の端部において開である各チャネルに対して、それに隣接するチャネルがシールされるように各端面においてシールされており、液またはガスの流れは、本発明の方法を用いて得られたフィルタ中を通り、それ故に、チャネルを分ける多孔質の壁を通じて拡散するように制約される。例えば、好ましくは正方形状の断面のチャネルを有する粒子フィルタ(PF)の場合では、モノリスの端面は、市松模様の外観を有する。PFは、1平方インチ当たり約50〜500チャネル(すなわち、約7.7〜77.5チャネル/cm)、より特定的には1平方インチ当たり約150〜300チャネル(すなわち、約23.5〜46.5チャネル/cm)を有してよい。これは、チャネル断面:約0.5〜9mm、より特定的には1.4〜4mm、チャネルを分ける壁の厚さ:約0.2〜1.5mm、より特定的には0.3〜0.6mmにほぼ相当する。
【0032】
本発明によると、チャネルに導入されるシール材料はチキソトロピック材料である。それは、好ましくはセメントであり、その配合は、セラミックフィルタの使用の条件、多孔質セラミックハニカム材料の配合および機械的性質に合わせられる。チキソトロピック挙動を有するセメントは、応力下に置かれた場合に高い即時粘着性を有しており、それは、応力に応じて10〜40Pa・sで安定化し、この現象は可逆的である。好ましくは、セメントは、他の要素、例えば、添加剤、可塑剤、界面活性剤、結合剤、安定化剤等と混合される。セメントの調製は当業者に周知である。一般に、セメントのための物質として用いられる鉱物塊、例えば、炭化ケイ素は分散させられ、有機添加剤は、それらが最終の配合中に存在する場合に加水分解される。多孔質セラミックハニカム材料の2つの端面のそれぞれのチャネルの端部において形成されるシールは、好ましくは、85〜95重量%のシャモットおよび5〜15重量%のセラミック結合剤によって構成される。シャモットは、好ましくは、多孔質セラミックハニカム材料の平均細孔サイズの三分の一に等しい平均寸法を有し、かつ多孔質セラミックハニカム材料と同一の配合を有する少なくとも30重量%の粒子によって形成される。好ましくは、シール材料は、多孔質セラミックハニカム材料の熱膨張係数より低い熱膨張係数を有する。多孔質セラミックハニカム材料の熱膨張係数は、有利には、シール材料の熱膨張係数より5%高い。
【0033】
本発明の方法の工程b)において、シール材料(好ましくはセメント)は、一方の第一の端面、次いで、第一の端面の反対側の第二の端面のフィルム内の孔を通じた吸引によって導入される。最初に、セラミック材料の第一の端部の2〜30mm、好ましくは3〜20mmが、シール材料を含む懸濁液中に浸されて、本発明の方法の工程a)におけるような孔あきフィルムを備えた一方の第一端面の開チャネルがシールされるが、その間、第一端部に対して反対側にあるセラミック材料の他端は、セラミック材料内に減圧をつくり出すことができる手段に接続され、そして、これにより、前記第一端面のフィルムの孔を通じてシール材料を吸引する。セラミック材料内の減圧は、有利には、真空ポンプの手段によってつくり出される。一般に、10−3バールまでの主要な真空が十分である。より高い真空、例えば、10−6バールまでの高真空を用いることも可能である。吸引シール技術は、行うのが非常に簡単であるという利点および安価であるという利点並びに、あらゆるチャネル形状に容易に適合されるという利点を有している。第一の端面のチャネルが正しくシールされた時、真空は解除され、減圧をつくり出す手段に接続された材料の端部は、当該手段から放される。続いて、か焼することによってまたは機械的に、前記第一端面上のフィルムは取り除かれる。シール材料を含む懸濁液のレオロジー特性に応じて、20〜120℃の温度で第一の前面の端部におけるチャネル中に形成されたシールの中間乾燥が行われて、その後に、吸引によって多孔質セラミックハニカム材料(好ましくはモノリス)の第二面の端部におけるチャネルにシール材料を導入してもよい。その後、シール操作は、第一端面のために採用された方法に類似の方法で、材料の第二端面において繰り返される。シール材料を含有し、各端面が浸される懸濁液の量は、開始時に、交互の仕方で各端面のチャネルに導入されるシール材料によって構成されるシールが、原則として、チャネルのそれぞれの終端部分に位置するように調節される。好ましくは、各シールの長さは、3〜10mmであり、一般的にはフィルタの長さの0.1〜13%、好ましくは0.2〜5%を示す。シールの長さは、シールの内接直径の有利には1〜5倍、非常に有利には2〜3倍を示す。
【0034】
有利には、端面のそれぞれからオーバーフローしているシール材料の表面部分は取り除かれる。特に、シールは、下部が水につかる回転発泡体ストリップによって構成されたスリップ・ストリッパを用いて終了させられてよい。
【0035】
本発明の方法の工程b)において、最初に、シール材料は、好ましくは、第一の端面におけるチャネルに導入され、前記チャネル内に形成されたシールは、場合によっては、好ましくは20〜120℃の温度で乾燥させられ、次いで、シール材料は、前記第二端面におけるチャネルに導入され、第一の端面上にシールされていないチャネルが、第二の端面上でシールされる。前記第二端面の端部におけるチャネルへのシール材料の導入に続いて、有利には、シールを乾燥させる工程が行われ、その際の温度は、好ましくは70〜120℃である。
【0036】
本発明の方法の工程b)を行った後、1000〜1650℃の温度で焼成して、シールを焼結させる工程からなる工程c)を行うことが有利である。この焼成工程は、例えば、連続加熱炉で行われる。
【0037】
本発明の方法の工程b)および工程c)を行った後、セラミックフィルタに触媒的に活性な相を導入することが、粒子フィルタとして用いられる特に場合に有利である。
【0038】
本発明の方法によると、セラミックフィルタを製造するために用いられるモノリスの形態である多孔質セラミックハニカム材料は押出成形され、押出物は焼成され、次いで、適切な場合には組み立てられる。特に、モノリスの形態である多孔質セラミックハニカム材料は、構成物質を混合して、結果として、固定されたペーストの形態にある均一物を生じさせる工程と、適切な金型を通じて前記均一物を押し出し、前記材料をハニカム型のモノリスの形状に成形する工程と、乾燥させる工程と、一般的には1000〜1650℃である温度で得られたモノリスを焼成する工程とを包含するあらゆる適切な様式によって製造され得る。
【0039】
押出工程において、ペーストは、例えば、真空条件で押し出され、この場合、一般的には、15〜20mm水銀柱の圧力で、スクリュー押出機(単軸または二軸)またはピストン押出機において行われ、ハニカムモノリスの形態にある未焼成セラミックブロックが得られる。前記セラミックブロックは、次いで、制御された湿潤雰囲気において、化学的に結合していない水の含有量(遊離状態の水)が1重量%未満になるのに十分な時間にわたり乾燥させられ、乾燥は、約12時間で終了し、次いで、焼成される。モノリスの構造は基本モノリスからなってよく、これらは、当業者に知られるあらゆる方法を用いてセラミック結合によって集められて、例えば、ディーゼルエンジンの排気ラインまたはろ過膜に設置され得る所望の幾何学的形状を有する粒子フィルタが構成される。複数の基本モノリス構造が集められた時、押出物を焼成した後に集合化は行われる。非常の有利には、それはまた、その用途に適合された形状、例えば、円形または長方形断面を有する単一ブロックの基本モノリスを直接的に用いてよい。
【0040】
本発明の方法を用いて得られたセラミックフィルタは、シール材料(すなわち、シール)、チャネルを分ける多孔質壁、並びに、前記壁に浸透するシール材料の部分の間の緊密な接触を証明することができる走査電子顕微鏡によって特徴付けられる。シール材料(すなわちシール)と、チャネルを分ける多孔質壁との間の接触面領域は、少なくとも80%、好ましくは90〜100%である;すなわち、チャネル形状に一致するシールの周辺の少なくとも80%、好ましくは90〜100%が、チャネル壁と緊密に接触している。
【0041】
下記実施例は、本発明を例示する目的で与えられ、その範囲を制限しない。
【0042】
(実施例1:炭化ケイ素から形成されたハニカムモノリスをベースとするセラミックフィルタの調製)
炭化ケイ素ハニカムモノリスが用いられた。このモノリスは、正方形状断面のチャネルを有しており、各チャネルは、0.4mm厚さの多孔質壁によって互いに分けられていた。前記モノリスは、1平方インチ当たり200チャネル(すなわち、31チャネル/cm)を有していた。このモノリスは、押出物の形態を有しており、110℃で乾燥させられ、次いで、空気中1450℃の温度で焼成された。端面をデジタル化するための最初の工程が行われた。該工程は、デジタルカメラの下にセラミックモノリスを配置することからなる。撮像された画像はデジタル処理され、シールされるべきチャネルの中心が決定された。次いで、無孔の粘着性のポリプロピレンフィルムが、モノリスの端面のそれぞれに貼り付けられた。前記フィルムにより被覆された第一の端面は、面デジタル化工程の間に決定された位置にCOレーザを照射することによって孔あけされた。COレーザは、その波長が10640nmであり、パルス周波数が100Hz〜10kHzであり、最大100Wまで出力増量が調整可能であった。端面の視覚デジタル認識のための工程およびレーザ孔あけ工程の両方を行うために用いられた装置は、Renaud Laserによって販売されており、特許出願FR-A-2 842 131またはUS-A-2005/205539に記載されている。これら特許出願の内容は、本明細書において、参考として援用される。前記第一端面を被覆する前記フィルムが正しく孔あけされた時、モノリスは、多関節アームを用いてひっくり返され、セラミックモノリスの第二端面を被覆するフィルムが孔あけされた。この孔あけには、第一面を被覆するフィルムを孔あけするために用いられた手順が用いられた。
【0043】
シール材料として用いられたセメントは、89.5重量%の炭化ケイ素(ここで、組成物の30重量%は、6〜8マイクロメータの平均直径を有する粒状物によって構成されていた)、10重量%の混合物(50部のアルミナ、5部のジルコニア、45部のシリカ)、0.2重量%のセルロース可塑剤(カルボキシメチルセルロース)および0.3重量%のチキソトロピック剤(キサンタン)を含んでいた。セメントおよび水を含有する懸濁液(水はセメントの無機物の20重量%を示し、35Pa・sの粘度を有する)がるつぼ(crucible)中に置かれた。シールされるべき端部の反対側のモノリスの端部は、膨張性シールを備えるピックアップヘッドによって把持され、前記モノリスの端部を取り巻くモノリスのへりの部分がシールされた。ピックアップヘッドは、真空ポンプに接続されており、真空ポンプを介して、モノリス内に減圧がつくり出された(5×10−3バール)。モノリスは、セメントスラリーを含有するるつぼに下ろされ、容量分析的にドーピングされ、そして、バイブレータの手段によって均一に分散された。チャネルをシールするための吸引工程自体は約5秒で終わった。真空が解除され、真空ポンプに接続されたピックアップヘッドからモノリスが取り除かれた;端面における、セメントによりシールされたフィルムは、取り除かれた。この温度により、モノリスの端部において形成されたシールは硬化した。モノリスはひっくり返され、モノリスの他方の端面上にシール操作が繰り返された。るつぼは、再度、上記に示された組成を有するセメントと水とを含有する懸濁液により満たされた。モノリスのシールされた端部は、真空ポンプに接続されたピックアップヘッドによって把持され、この真空ポンプを介して、モノリス内に減圧がつくり出された(5×10−3バール)。この第二の吸引工程の後、真空が解除され、モノリスは、ピックアップヘッドから離され、フィルムは、手作業により抜き出された。シールは、スリップストリッパを用いて終了させられた。次いで、モノリスは、ノッチ付きコンベヤーベルト上に置かれ、その端面が赤外線ランプに共され(70℃)、連続的な方法で5分にわたりシールが乾燥させられた。乾燥の後、1200℃で2時間にわたり、連続加熱炉において焼成工程が行われ、シールおよびセメントが焼結させられた。5mm程度の長さを有するチャネルの一端または他端にシールを有するセラミックフィルタが得られた。このフィルタは、走査電子顕微鏡(SEM)によって分析された。SEM画像は、シールとチャネルを分ける多孔質壁との間の接触面が92%であることを示した。
【0044】
(実施例2:ディーゼルエンジンからの排気ガス中に含まれる炭素質粒子をろ過する際の、実施例1に記載されたようにして調製された炭化ケイ素から形成されたハニカムモノリスをベースとするセラミックフィルタの評価)
炭化ケイ素ハニカムモノリスが用いられた。このモノリスは、正方形状断面のチャネルを有し、各チャネルは、0.4mm厚の多孔質壁によって互いに分けられ、該モノリスのチャネルは、実施例1に記載された方法を用いてシールされていた。前記モノリスは、円筒(cylinder)の形態を有しており、長さ:6インチ(すなわち15.24cm)×直径:5.66インチ(すなわち、14.38cm)であり、その面には、1平方インチ当たり200チャネル、すなわち、31チャネル/cmのチャネルが構成されていた。試験対象のモノリスは、断熱層によって取り囲まれ(しばらくの間(interim))、包み(または被覆)内に置かれた。次いで、包みは、酸化触媒の下流の排気システム上に取り付けられた。酸化触媒は、順に、ディーゼルエンジンの下流に置かれた。
【0045】
試験のために、2リットル容量のディーゼルエンジンが用いられた。このエンジンは、一般的な鉄道高圧燃料噴射装置を備えていた。用いられた燃料は市販の軽油であり、350ppmの硫黄を含有しており、400ppmのOctel Octimax 4810添加剤が補給されていた。エンジンおよび排気システムによって形成された集合体が試験台に載せられた。粒子フィルタ(PF)は、多量の炭素質粒子を発生させるレベルで機能するディーゼルエンジン排気システム中に存在する汚染炭素質粒子により給気(charge)された。PF再生は、PFの上流に配置された酸化触媒の存在によって助けられた。前記触媒は、注入後炭化水素の酸化によって、前記粒子の接触酸化に十分な温度に達する一時的な発熱をつくり出し、これにより、PFは再生させられる。試験台および(粒子/PF再生を伴う自動的給気PF)往復運動装置(swing)は、MORPHEEソフトウェアを用いて制御された。
【0046】
ディーゼルエンジンからの排気システム中に存在する汚染炭素質粒子の量は、排気煙を測定することによってアクセスされ、容易に自動化され、かつ、粒子量によく相関させられ得た。排気煙は、PFの下流に配置されたAVL 415Sスモークメータを用いて測定され、Bosch指数によって0〜10のスケールで与えられた。この測定は、PFの下流で多量の排気ガスをサンプリングすることと、セルがフィルタ上に得られた色(灰色のレベルの測定)を検出し得るようにフィルタペーパ上にサンプルを通過させることとからなっていた。この測定は、PFのろ過収率が測定されることを可能にした。
【0047】
PFの各給気/再生サイクルにおいて、排気煙は、PFの下流で測定された。排気煙測定の全ては、0または極度に低い排気レベルを示していた。セルによって測定されたBosch指数の相対値は、0〜10のスケールで0〜0.14であった。0の値はフィルタ紙上の色の欠失に相当し、10の値は、不透明な排気煙の漏れを有する黒色に相当する。
【0048】
PFのための給気/再生サイクルの全体にわたって、排気煙測定によって示されたBosch指数の値の全ては、0.01に等しかった。これは、全体的なろ過効率が約99.8%であることに相当する。53回にわたる負荷サイクルおよび続く再生の試験台でのフィルタの働き具合は、10g/Lであった。7g/Lの負荷が約800kmの移動距離の等しいと仮定すると、それ故に、このPFは、シールが劣化することなく、負荷期間の間の200℃から再生期間の間の1100℃にわたる温度条件下に約61000kmの距離に耐えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面から他方の端面にわたって延びる複数のチャネルを含む多孔質セラミックハニカム材料からセラミックハニカムフィルタを製造する方法であって、
a)ハニカム材料の各端面に孔あきフィルムを設ける工程であって、該孔あきフィルムの孔は、該フィルムの望みの位置にエネルギー放射することによって生じさせられるものであり、該孔は、該材料を貫通するチャネルが、それらの端面の一方または他方において交互に開であり、しかも、一方の端面における各チャネルの開に対して、その隣接するチャネルは閉になっているようにされる、工程と、
b)各端面に貼り付けられたフィルムの孔を通じた吸引によって、開チャネルにシール材料を導入し、一方の端面においてチャネルがシールされておらず、他方の端面においてシールされているセラミックフィルタを得る工程と
を少なくとも包含する方法。
【請求項2】
工程a)に先行して、セラミック材料の端面のそれぞれに無孔フィルムを貼り付けることとからなる工程と、これに続く、前記無孔フィルムの望みの位置に孔あけすることからなる工程とが行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フィルムは、レーザタイプの照射を用いて前記フィルムの望みの位置に照射することによって孔あけされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記孔あけ工程に先行して、デジタルカメラを用いた孔あけされるべき端面の視覚認識のための工程が行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
シール材料はセメントである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
吸引は、真空ポンプを介して前記材料内に減圧をつくり出すことによって行われる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記セラミック材料は、コーディエライト、ムライト、炭化ケイ素、アルファアルミナ、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、またはリン酸ジルコニウムから形成される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
シール材料によって構成されるシールは、基本的に、チャネルのそれぞれの終端部に位置する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
工程b)は、最初に、第一端面の端部におけるチャネルにシール材料を導入し、前記チャネル内にこうして形成されたシールを乾燥させ、次いで、前記第二端面の端部におけるチャネルにシール材料を導入することによって行われる、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
焼成工程からなる工程c)を包含する、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
工程b)を行った後に、セラミックフィルタに触媒的に活性な相を導入する工程を包含する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記多孔質セラミックハニカム材料は、焼成された押出物の形態を有している、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
ディーゼルエンジン排気システム用の粒子フィルタとしての、請求項1〜12のいずれか1つの方法にしたがって調製されたセラミックフィルタの使用。
【請求項14】
液またはガス状の流出物をろ過するための膜としての、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法を用いて調製されたセラミックフィルタの使用。

【公開番号】特開2007−167848(P2007−167848A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343652(P2006−343652)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【出願人】(500341104)セラミク テクニク エ アーンデュストリエル エス ア (1)
【Fターム(参考)】