説明

セラミック多層基板へのベアチップICの実装構造

【目的】 サーマルビアの突出部とベアチップICの裏面との接触を避け、サーマルビアの突出に関係なく、安定したベアチップICのダイボンディングを可能にする。
【構成】 放熱用サーマルビアを有するセラミック多層基板において、サーマルビア12の突出高さのばらつきを吸収できるように、最上層を穴抜きしたキャビティ部14を設け、しかもキャビティ部14の外形はベアチップIC17の外形より小さくし、キャビティ内部へダイペースト16を塗布し、ベアチップIC17と基板を固着すると同時に、キャビティ上面外周部とベアチップIC下面外周を密着させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、放熱用サーマルビアを有するセラミック多層基板へのベアチップICの実装構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、例えば、以下に示すようなものがあった。図2はかかる従来のセラミック多層基板上のサーマルビア上にベアチップICをダイボンディングした状態を示す断面図である。
【0003】この図に示すように、各層のグリーンシート1へサーマルビア用のスルーホールをパンチングにより形成し、サーマルビア2にペーストを印刷により充填した後、信号用配線パターン3を印刷により形成し、各層を熱圧着してラミネーションを行い、バーンアウト、焼成され完成されたセラミック多層基板7上に高熱伝導性のダイペースト4を印刷またはディスペンサにより塗布し、ベアチップIC5を搭載後、ダイペースト4中のボイド等を除去するためにスクラブを行ってから、熱硬化することにより、ベアチップIC5がセラミック多層基板7上に接着固定される。
【0004】ベアチップIC5とセラミック多層基板7との電気的な接続は、ワイヤボンディング法により行われ、Auワイヤ6をボール状に形成し、ベアチップIC5側の電極に熱、荷重及び超音波を加えて接続した後(1stボンド)、図2に示されるようなループを形成しながらセラミック多層基板7側の電極に熱、荷重及び超音波を加えて接続する(2ndボンド)。
【0005】このような構造をとることにより、動作時にベアチップIC5が発生する熱を効率良くセラミック多層基板裏面に伝導することが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来のセラミック多層基板へのベアチップICのダイボンディング構造では、基板焼成時の誘電体材料であるグリーンシート1の収縮率がサーマルビア2のペーストの収縮率より大きいため、基板焼成後では、図3に示すように、基板に対しサーマルビア2が突出してしまい、しかも、それらのサーマルビア2aと2bの突出高さがばらついてしまう。
【0007】このような状態で、ベアチップIC5をダイボンディングすると、図4に示すように、サーマルビア2aと2bの突出のばらつきにより、ダイボンディングされるベアチップIC5に傾きが生じてしまい、1stボンド時の加圧条件や超音波条件等にばらつきが生じ、ワイヤボンディングされなかったり、ベアチップIC5が欠けてしまうという問題点があった。
【0008】また、ダイペースト4の塗布量のばらつきにより、図4のA部に示すように、ベアチップIC5の周辺部にダイペースト4が広がらない部分(ペーストぬけ)が生じ、ワイヤボンディング時にツールから基板へ超音波が伝わらず、1stボンディングされないという問題点があった。本発明は、上記したベアチップICのダイボンディング時に発生するベアチップICの傾きとダイペーストが広がりきらず、ベアチップICの周辺部下のペーストぬけの部分が生じないようにし、ワイヤボンディング時の加圧条件や超音波条件を安定させ、良好なワイヤボンディングを可能にするために、サーマルビアの突出部とベアチップICの裏面との接触を避け、サーマルビアの突出に関係なく安定したベアチップICのダイボンディングを可能にするセラミック多層基板へのベアチップICの実装構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、放熱用サーマルビアを有するセラミック多層基板へのベアチップICの実装構造において、サーマルビア形成層の最上部にキャビティ部を有する多層のグリーンシートからなる基板と、前記キャビティ部内に塗布されるダイペーストと、該ダイペースト上に搭載される前記キャビティ部の外形より大きい外形を有するベアチップICとを設け、前記サーマルビアの突出高さのばらつきを前記キャビティ部で吸収すると共に、前記キャビティ上面外周部とベアチップIC下面外周を密着させて固着させるようにしたものである。
【0010】
【作用】本発明によれば、上記したように、放熱用サーマルビアを有するセラミック多層基板において、サーマルビアの突出高さのばらつきを吸収できるように、最上層を穴抜きしたキャビティ部を設け、しかもキャビティ部の外形はベアチップIC外形より小さくし、キャビティ内部へダイペーストを塗布し、ベアチップICと基板を固着すると同時に、キャビティ上面外周部とベアチップIC下面外周を密着させる。
【0011】したがって、基板材料とサーマルビアの焼成時の収縮率の違いにより、サーマルビアが突出してもサーマルビアの高さ方向に関係なく、ベアチップICは傾きを生じない。更に、このような安定したダイボンディングが行われるため、ベアチップICへのワイヤボンディング時の加圧条件、超音波条件の変化に伴って発生するばらつきが減少するため、良好なワイヤボンディングを行うことができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例について図を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施例を示すセラミック多層基板へのベアチップICの実装状態を示す断面図である。この図に示すように、11は各層の誘電体材料であるグリーンシート(例えば、ガラスセラミックス)、12はサーマルビア(例えば、金であり、銀又は銅を用いることもできる。)、13は各層上の信号用配線パターン、15はキャビティ部14を有するグリーンシート(例えば、ガラスセラミックス)であり、このキャビティ部14は、セラミック多層基板17焼成前に形成される。16はダイペーストであり、サーマルビアと同様に例えば、金であり、銀又は銅を用いることもできる。18はベアチップIC、19はAuワイヤである。ここで、キャビティの外形は、例えば、9mm角であり、ベアチップICの外形(例えば、11mm角)より小さくし、ベアチップICの下面外周部が基板に密着する構造となっている。
【0013】以下、その実装工程について説明する。焼成前の各層の誘電体材料であるグリーンシート11に、サーマルビア12となるビアペーストを充填するため、パンチングによりビアホールを形成し、高熱伝導性のビアペーストを、印刷により先に設けたビアホールに充填し、ビアペースト乾燥後、グリーンシート11上に各層の信号用配線パターン13を厚膜印刷により形成し、乾燥を行う。
【0014】前記キャビティ部14は、この後、各層のグリーンシート15ごとパンチングにより、サーマルビアより上層部に角状で誘電体を窓抜きにする。その場合、キャビティ部14の外形(例えば、9mm角)はベアチップIC外形(例えば、11mm角)より小さくする。また、そのパンチング層数はサーマルビアの突出高さで決定される。例えば、過去のデータよりサーマルビア12が8層で形成された場合、基板上面に突出するサーマルビアの高さは50μm程度であるので、1層の誘電体厚さは焼成後で約100μmであることから、キャビティ形成のためのパンチングは1層で対応することができる。
【0015】次に、キャビティ部14をパンチング後、各層のグリーンシート11を重ね、熱圧着によりラミネーションを行い、バーンアウト後、焼成を行ってセラミック多層基板17が完成される。このようにして製造されたセラミック多層基板17において、先に形成されたキャビティ部14の中に、高熱伝導性のダイペースト16をディスペンサにより塗布し、ベアチップIC18をキャビティ上部に搭載し硬化する。ここで、キャビティ部上面外周部と、ベアチップICの下面外周部を密着させる。
【0016】このように、ベアチップIC18はキャビティ上部に接着されるため、サーマルビアの突出によるベアチップIC18が傾くこともなく、セラミック多層基板17に対して平行に確実にダイボンディングすることができる。したがって、ワイヤボンディング時にはツールから基板へ超音波が十分に伝わり、1stボンディングを確実に行うことができる。
【0017】なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0018】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、放熱用サーマルビアを有するセラミック多層基板において、サーマルビアの突出高さのばらつきを吸収できるように最上層を穴抜きしたキャビティ部を設け、しかもキャビティの外形はベアチップICの外形より小さくし、ベアチップICの下面外周部を基板に密着するようにしたので、基板材料とサーマルビアの焼成時の収縮率の違いにより、サーマルビアが突出しても、サーマルビアの高さ方向に関係なく、ベアチップICは傾きが生じることはない。
【0019】更に、上記した安定したダイボンディングが行われるため、ベアチップICへのワイヤボンディング時の加圧条件、超音波条件の変化に伴って発生するばらつきが減少するため、良好なワイヤボンディングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すセラミック多層基板へのベアチップICの実装状態を示す断面図である。
【図2】従来のセラミック多層基板へのベアチップICの実装状態を示す断面図である。
【図3】従来のサーマルビアの突出状態を示す断面図である。
【図4】従来のセラミック多層基板へのベアチップICの実装時の問題点説明図である。
【符号の説明】
11,15 グリーンシート
12 サーマルビア
13 信号用配線パターン
14 キャビティ部
16 ダイペースト
17 セラミック多層基板
18 ベアチップIC
19 Auワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 放熱用サーマルビアを有するセラミック多層基板へのベアチップICの実装構造において、(a)サーマルビア形成層の最上部にキャビティ部を有する多層のグリーンシートからなる基板と、(b)前記キャビティ部内に塗布されるダイペーストと、(c)該ダイペースト上に搭載される前記キャビティ部の外形より大きい外形を有するベアチップICとを有し、(d)前記サーマルビアの突出高さのばらつきを前記キャビティ部で吸収すると共に、前記キャビティ上面外周部とベアチップIC下面外周部を密着させて固着させることを特徴とするセラミック多層基板へのベアチップICの実装構造。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate